説明

容器への充填方法及び充填システム

【課題】容易な手段で、かつ、コストを削減して、充填量を制御しつつ充填する方法及びその充填システムを提供すること。
【解決手段】それぞれ1つの流量制御弁13,14を備えた複数の充填要素3,4を用いた、液状製品を貯留するリザーバ又はタンク6から複数の容器2への液状製品の充填方法において、1つのグループを形成する少なくとも2つの前記充填要素3,4における該充填要素に設けられた前記容器2に流入する液状製品の総流量を流量計9で測定し、該流量計9から送出される測定信号と、前記各充填要素3,4での充填速度の差を補正する時間調整とを考慮して、充填プロセス後に前記各容器2に必要量の液状製品が充填されているよう前記流量制御弁13,14の開弁及び/又は閉弁を時間的にずらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び請求項2に記載の2つの充填方法並びに請求項7に記載の充填システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状製品を容器等に充填する方法及びその充填システムについては、様々な形態が知られている。特に、当該充填装置の軸中心線回りに回転駆動されるロータにおける複数の充填要素によって充填量を制御しつつ容器に充填するための回転式充填システムあるいは回転式充填装置が知られている。
【0003】
ここで、各充填要素には例えば電磁流量計(magnetischer induktiver Durchflussmesser(MID))である流量計が設けられており、この流量計は、充填プロセス中、すなわち各充填要素に設けられた流量制御弁の開弁後に、容器へ流入する液状製品の流量を測定し、特に、この流量に応じた測定信号を制御ユニットに定常的に伝達するものである。なお、この制御ユニットは、所望の充填量に達すると、流量制御弁を閉弁し、充填プロセスを終了させるものとなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、容易な手段で、かつ、コストを削減して、充填量を制御しつつ充填する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1記載の方法により達成される。また、充填システムは、請求項7記載の発明の対象である。
【0006】
本発明の特徴は、各充填段階において、それぞれ共通の流量計に接続された少なくとも2つの充填箇所(充填要素)で少なくとも2つの容器に同時に又はほぼ同時に充填を行うとともに、このとき、例えば充填要素又は流量制御弁の開弁及び/又は閉弁をそれぞれ時間的にずらして、各充填要素間での充填速度を時間的に調整するようにしている点にある。なお、充填速度差により様々な不都合が生じる。
【0007】
特に、液状製品の静水圧すなわちタンク内の液状製品の液面レベルと充填箇所の高さの差によって容器への充填がなされる充填システムあるいは充填装置においては、充填箇所へ接続された管路における流れについての様々な抵抗及び上記高さの差により充填速度差が引き起こされることとなる。
【0008】
これについて、いわゆる背圧充填法においては、すべての充填過程において圧力の下に充填がなされるが、このような方法についても、充填速度は、基本的に静水圧によって決まってしまう。さらに、液状製品の流出を加速するために軽い圧力が負荷されるような、例えばシロップの移し替えなどの特定の自由噴流充填法についても同様である。
【0009】
本発明の一実施形態においては、共通の充填要素群あるいは共通の流量計に接続されたそれぞれ異なる高さ位置に複数の充填箇所又は充填要素が設けられている(すなわち垂直方向に並んでいる)。これにより、ロータの径を大きくすることなく充填装置の軸中心回りに回転駆動されるロータの周囲に設ける充填箇所あるいは充填要素の数量を増加させる(例えば2倍)ことが可能である。
【0010】
本発明の他の実施形態、効果及び利用可能性については、以下の実施形態の説明及び図面の記載において説明する。ここで、明細書におけるすべての記載及び/又は図面の記載並びにこの組み合わせは、基本的に本発明の対象となるものであり、請求項の概要及び引用請求項との関係から独立したものである。なお、特許請求の範囲の内容は、明細書の内容の一部である。
【発明の効果】
【0011】
容易な手段で、かつ、コストを削減して、充填量を制御しつつ充填する方法及びその充填システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による充填システムを簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
図1中において符号1で示す充填システムは、容器2に液状製品を充填する回転式の充填装置の一部を構成している。図示の実施形態において、この充填システム1は、高さ方向位置が互いに異なり(すなわち垂直方向に並んでいる)、かつ、充填装置の垂直方向軸中心線VM回りに回転駆動されるロータ5に設けられた2つの充填要素(充填箇所)3,4で構成されている。なお、充填要素3が充填要素4よりも高い位置に配置されている。
【0015】
また、各充填要素3,4にはそれぞれ不図示の容器支持部材が設けられており、この容器支持部材は、充填プロセスのために、各充填要素3,4において、垂直軸線方向に配置された各容器2における開口部2.1を把持するものである。なお、充填プロセスは、例えば、充填要素又はその開口部から間隔をもって行う自由噴流(フリージェット)充填又は間隔をもって行わない密な充填である。
【0016】
さらに、ロータ5の周囲には、それぞれ充填要素3,4及びこれらに設けられた容器支持部材から成る複数の充填要素対が設けられている。また、充填装置は、ロータ5の回転時に、容器流入部において容器2を搬入させるとともに、充填された容器2を容器流出部においてロータ5又は容器支持部材から搬出させるものである。
【0017】
ところで、充填すべき製品を用意しておくために、ロータ5にはタンク6が設けられており、このタンク6において、少なくとも充填プロセス中にはその液面レベルが所定の液面レベルNとなるよう制御されているとともに、液面の上方及び下方にそれぞれ気体空間6.1及び液体空間6.2が形成されている。さらに、このタンク6は、当該タンク自身又はその底部が上側の充填要素3の充填用開口部よりも大幅に高い位置にくるよう配置されている。
【0018】
また、それぞれ充填要素3,4から成る各充填要素対又は充填要素群は、タンク6の底部において該タンク6に対して開口する分配装置7を介して固有の管路8で接続されている。そして、この管路8には両充填要素3,4共通の流量計9(例えば電磁流量計)が設けられており、タンク6からの液状製品は容器2に製品の充填がなされる間この流量計9を通過し、この流量計9は、液状製品の両充填要素3,4への総流量に対応する信号を充填装置の制御装置10(中央制御装置、例えばコンピュータ)へ送出する。
【0019】
そして、流量計9を通過した後の液状製品の流通方向は、管路8から分岐管路11,12へ分岐し、分岐管路11,12は、それぞれ流量計9と充填要素3及び流量計9と充填要素4を接続している。また、分岐管路11,12にはそれぞれ流量制御弁13,14が設けられており、これら流量制御弁13,14は、充填要素3,4用の通常の流量制御弁であり、制御装置10によって個々に制御可能である。さらに、分岐管路12には少なくとも1つの可変絞り弁15が設けられている。
【0020】
充填システム1あるいは充填装置の制御は、基本的に、各容器2の充填要素3及び充填要素4への位置決め後に流量制御弁13,14を同時に開弁することにより、両充填要素3,4における充填が同時に行われるようになされる。そして、充填要素群の各容器2へ流入する製品の総流量が流量計9によって測定され、この測定値に対応する信号が制御装置10へ伝達される。流量制御弁13,14が開状態にあるときに液状製品が各容器2へ流入する速度である充填速度は、特に、タンク6内の液面レベルNと充填要素3又は充填要素4の充填用開口部の間の高さの差に比例する。ここでは、充填要素4が充填要素3よりも下方に位置しているため、充填要素4における充填速度は充填要素3における充填速度よりも大きくなる。
【0021】
そのため、充填プロセスの最後には、制御装置10にメモリされた適当な制御プログラムにより、流量計9で測定された流量が充填後において各容器2へ均等に分配されるように、すなわち、充填後において各容器2に必要量が収容されるように、流量制御弁14の閉弁が流量制御弁13の閉弁よりも先になされる。
【0022】
流量制御弁13のこのような時間的な遅れは、例えば試運転によって得られる。すなわち、例えば、充填要素4での容器2への正確な所定量の充填にかかる時間を測定し、これをスイッチオフ時間として制御装置10のメモリに記憶させる。そして、このスイッチオフ時間と、流量計9によって送出された総流量に対応する信号とを考慮して、この総流量があらかじめ定めた所定の値となったら流量制御弁13を閉弁する。なお、流量制御弁13,14について他の制御方法を用いることも可能である。
【0023】
しかして、下側の充填要素4における流通速度あるいは充填速度は、充填要素3における流通速度あるいは充填速度と同じか、又は少なくともほぼ同じとなるように、分岐管路12における可変絞り弁15によって調整される。こうすることで、流量制御弁13,14を同時に、又はほぼ同時に閉弁することが可能となる。
【0024】
また、様々な充填方法を可能にするために充填要素3,4は制御可能な通常の気体通路によって形成されており、この気体通路は、両充填要素3,4に対して共通であり、かつ、ロータ5に設けられたリングダクト16,17に接続されている。ここで、リングダクト16は管路18を介してタンク6の気体空間6.1に接続されており、リングダクト17は管路19を介して大気中又は真空源若しくは負圧源に接続されている。
【0025】
充填システム1又はこれを備える充填装置の利点は、流量計9の数量を大幅に削減することができる点にある。すなわち、2つの充填要素3,4を備える上述の実施形態によれば、各充填要素群ごとに、流量計9の数量を従来の充填システム又は充填装置に比して50%削減することが可能である。これは、充填装置の総コストの大幅な削減に寄与するものである。
【0026】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変更及びバリエーションが考えられる。
【0027】
また、上記実施形態は、各充填プロセスの最終段階において流量制御弁13,14を閉弁する際に、異なる充填速度を補正する時間調整がなされることを前提としている。これに代えて、又はこれに加えて、適当な時間調整を充填要素3,4への充填の初期段階に行うようにしてもよい。すなわち、流量制御弁13の開弁を流量制御弁14の開弁前に行うようにしてもよい。
【0028】
さらに、充填要素群における両容器支持部材のうち少なくともいずれか(例えば充填要素3に割り当てられた容器支持部材)を、計量装置又は適当なセンサを備えて形成し、容器2に充填される液状製品の重量を連続的に検出してこれに対応する信号を制御装置10へ送出することも可能である。そして、この重量に対応する信号により、流量計9の信号を考慮しつつ、両充填要素3,4への正確な量の充填をするために流量制御弁13,14を制御することが可能である。
【0029】
さらに、充填時間及び充填量のばらつきを補正するために、充填装置の流出部において例えばセンサ、画像処理システムを備えたカメラなどの検出手段を設け、流量計9の使用の下で充填された容器2の充填高さ及び/又は充填量を測定し、比較する。そして、流量制御弁13,14の閉弁についての時間調整に後続の充填プロセスにおいて介入することにより、検出された偏差を補正することが可能である。
【0030】
また、他の実施形態においては、上記のような偏差を、少なくとも1つの可変絞り弁15への前記検出手段による作用によって補正することも考えられる。
【符号の説明】
【0031】
1 充填システム
2 容器
2.1 容器開口部
3,4 充填要素
5 ロータ
6 タンク
6.1 気体空間
6.2 液体空間
7 分配装置
8 管路
9 流量計
10 制御装置
11,12 分岐管路
13,14 流量制御弁
15 可変絞り弁
16,17 リングダクト
18,19 管路
N 液面レベル
VM 充填装置の垂直方向軸中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ1つの流量制御弁(13,14)を備えた複数の充填要素(3,4)を用いた、液状製品を貯留するリザーバ又はタンク(6)から複数の容器(2)への液状製品の充填方法において、
1つのグループを形成する少なくとも2つの前記充填要素(3,4)における該充填要素に設けられた前記容器(2)に流入する液状製品の総流量を流量計(9)で測定し、該流量計(9)から送出される測定信号と、前記各充填要素(3,4)での充填速度の差を補正する時間調整とを考慮して、充填プロセス後に前記各容器(2)に必要量の液状製品が充填されているよう前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁を時間的にずらすことを特徴とする充填方法。
【請求項2】
それぞれ1つの流量制御弁(13,14)を備えた複数の充填要素(3,4)を用いた、液状製品を貯留するリザーバ又はタンク(6)から容器への液状製品の充填方法において、
1つのグループを形成する少なくとも2つの前記充填要素(3,4)における該充填要素に設けられた前記容器(2)に流入する液状製品の総流量を流量計(9)で測定し、該流量計(9)から送出される測定信号を考慮して、充填プロセス後に前記各容器(2)に必要量の液状製品が充填されるとともに前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁が同時又はほぼ同時になされるよう少なくとも1つの可変絞り弁(15)を制御することを特徴とする充填方法。
【請求項3】
前記流量計(9)から送出される測定信号と、前記各充填要素(3,4)での充填速度の差を補正する時間調整とを考慮した前記充填要素(3,4)における前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁を、充填プロセス後に前記各容器(2)に同量又はほぼ同量の液状製品が充填されているように時間をずらして行うことを特徴とする請求項1又は2記載の充填方法。
【請求項4】
それぞれ異なる高さに配置された前記2つの充填要素(3,4)における時間的な補正がなされた前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁を、前記タンク(6)における液面レベル(N)と前記各充填要素(3,4)あるいはその充填開口部との高さの差に応じて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項5】
前記各充填要素(3,4)での充填速度差の補正を、充填速度の大きい側の前記充填要素(4)において液状製品の流入を絞ることにより行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項6】
前記各容器(2)に同一充填プロセスにおいて充填された充填量及び/又は充填高さを検出し、検出された充填量及び/又は充填高さの差を、前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁についての時間調整に介入することにより補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の充填方法。
【請求項7】
流量制御弁(13,14)を有するとともに制御装置(10)によって制御される複数の充填要素(3,4)を備えた、液状製品を貯留するリザーバ又はタンク(6)から複数の容器(2)への液状製品の充填システムにおいて、
少なくとも2つの前記充填要素(3,4)によって少なくとも1つの充填要素群を形成したこと、
充填プロセスにおいて前記充填要素(3,4)を介して供給される液状製品の総流量を測定するために流量計(9)を前記充填要素群に設けたこと、
前記流量計(9)から送出される測定信号と、前記各充填要素(3,4)での充填速度の差を補正する時間調整とを考慮して、前記制御装置(10)により前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁を制御するよう構成したこと、並びに
充填プロセス後に前記各容器(2)に必要量の液状製品が充填されているよう可変絞り弁(15)を制御するよう構成したこと
のうち少なくともいずれかの構成を有することを特徴とする充填システム。
【請求項8】
前記各充填要素群に1つずつ前記流量計(9)を設けたことを特徴とする請求項7記載の充填システム。
【請求項9】
前記流量計(9)から送出される測定信号と、前記各充填要素(3,4)での充填速度の差を補正する時間調整とを考慮して、充填プロセス後に前記各容器(2)に同量又はほぼ同量の液状製品が充填されているよう前記制御装置(10)により前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁を時間をずらして行うよう構成したことを特徴とする請求項7又は8記載の充填システム。
【請求項10】
互いに高さ位置が異なる少なくとも2つの充填要素(3,4)を少なくとも1つの前記充填要素群に設けたことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の充填システム。
【請求項11】
少なくとも1つの前記充填要素群における前記各充填要素(3,4)間の充填速度差を補正するために、充填速度が大きい側の前記充填要素(4)の充填用管路に少なくとも1つの可変絞り弁(15)を設けたことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の充填システム。
【請求項12】
前記各容器(2)に同一充填プロセスにおいて充填された充填量及び/又は充填高さを所定の手段によって検出し、検出された充填量及び/又は充填高さの差を、前記流量制御弁(13,14)の開弁及び/又は閉弁についての時間調整に介入することにより補正するよう構成したことを特徴とする請求項7〜11のいずれか1項に記載の充填システム。
【請求項13】
前記各容器(2)に同一充填プロセスにおいて充填された充填量及び/又は充填高さを所定の手段によって検出し、検出された充填量及び/又は充填高さの差を、少なくとも1つの前記可変絞り弁(15)を制御することにより補正するよう構成したことを特徴とする請求項7〜12のいずれか1項に記載の充填システム。
【請求項14】
充填装置の回転軸(VM)回りに回転するロータ(5)における複数の充填要素群を有する該充填装置の一部を構成することを特徴とする請求項7〜13のいずれか1項に記載の充填システム。

【図1】
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【公表番号】特表2010−531782(P2010−531782A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513720(P2010−513720)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004882
【国際公開番号】WO2009/003582
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(598125028)カーハーエス・アクチエンゲゼルシヤフト (125)
【Fターム(参考)】