説明

容器キャップのロック構造

【課題】 リップ部を有する容器の口部に確実かつ容易に着脱することができる容器キャップのロック構造を提供する。
【解決手段】 容器キャップ11は、天板12と周壁13とからなり、周壁の内周面には雌ねじ部15が設けられている。周壁には雌ねじ部に螺合する複数のロック部材31が設けられており、少なくとも一つのロック部材を周壁の周方向に移動させることにより、雌ねじ部との螺合によってロック部材を天板側に移動させ、螺合部の天板側を容器口部外周のリップ部23に圧接させて容器キャップを容器口部22に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器キャップのロック構造に関し、特に、科学研究用機器に試料容器を接続する際に使用する容器キャップのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
容器口部に対して着脱可能に被着される容器キャップは、一般的にねじこみ式のキャップが多く用いられている。しかし、ねじこみ式のキャップは、容器やキャップの製作費が高く、また、キャップを着脱する際に回転させなければならないという難点がある。一方、口部外周にリップ部を設け、キャップの周壁内周に設けた突条を係合させる嵌合式のキャップも多く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
科学研究用機器に試料容器を接続する際に使用する容器キャップにも種々の被着方式が採用されているが、比較的大きな開口を有するガラス製の容器では、その口部にリップ部を設けるとともに、該リップ部に係合する突条を周壁に設けたキャップをゴムで形成し、ゴムの弾力性を利用して突条をリップ部に係合させている。
【特許文献1】特開平8−276949号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム製のキャップは、弾力性によって十分な密閉力を得られるという利点はあるが、ゴムの周壁をめくりながら口部に強く押し付けて装着したり、周壁をめくりあげるようにして引っ張って口部から取り外したりするという、面倒で力のいる操作が必要であり、また、低温時には、ゴムが硬くなって着脱性が悪くなるという問題もあった。特に、科学研究用機器の試料容器の容器キャップは、着脱を何回も繰り返して使用されるため、一般の飲料用容器等に用いられる容器キャップとは異なり、長期間の安定した着脱性や密閉性が求められている。
【0005】
そこで本発明は、リップ部を有する容器の口部に確実かつ容易に着脱することができる容器キャップのロック構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の容器キャップのロック構造は、リップ部を有する容器の口部に着脱可能に被着される容器キャップのロック構造において、前記容器キャップは、容器の口部端面に当接して口部を密閉する天板と、該天板の外周から容器外周面に沿う方向に延出した周壁と、該周壁の内周面に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合する螺合部及び周壁から突出する操作部を有し、前記螺合部が前記雌ねじ部に螺合した状態で周壁の周方向に移動可能な複数のロック部材とを有し、該複数のロック部材を近接する位置に移動させた状態で容器キャップを容器の口部に被着した後、複数のロック部材の内の少なくとも一つのロック部材を周壁の周方向に移動させることにより、前記雌ねじ部との螺合によってロック部材を前記天板側に移動させ、前記螺合部の天板側を前記リップ部に圧接させて容器キャップを容器口部に固定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の容器キャップのロック構造によれば、ロック部材を移動させるだけの簡単な操作で容器キャップを容器の口部に確実に固定することができる。特に、ロック部材が天板側に移動してリップ部に圧接するので、天板を口部側に引き寄せて天板内面を口部端面に密着させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図は本発明の容器キャップのロック構造における一形態例を示すもので、図1は容器と容器キャップとの関係を示す断面正面図、図2は容器口部に容器キャップを被着して固定した状態を示す断面正面図、図3はロック部材が非ロック位置にある状態を示す容器キャップの底面図、図4はロック部材がロック位置に移動した状態を示す容器キャップの底面図、図5は容器口部に容器キャップを被着した状態を示す要部の拡大断面図、図6はロック部材で容器キャップをロックした状態を示す要部の拡大断面図である。
【0009】
まず、容器キャップ11を被着する容器21は、口部22の外周にリップ部23を環状に突設したガラス製容器であって、容器21内の試料を冷却して凍結させるとともに、容器21内を減圧状態にして試料を乾燥させる凍結乾燥機の試料瓶として用いられるものである。また、容器キャップ11は、ゴム等の弾力性を有する材料からなるものであって、容器21の口部端面に当接して口部22を密閉する天板12と、該天板12の外周から容器21の外周面に沿う方向に延出した周壁13と、天板12の中央部に設けられた管接続部14とを有している。前記周壁13の内径は、前記リップ部23の外形よりも大きく形成されており、さらに、この周壁13には、その内周面に凹溝を螺旋状に形成した雌ねじ部15が、外周面に環状のガイド溝16がそれぞれ設けられるとともに、2個のロック部材31,41が周壁13の周方向に移動可能な状態で取り付けられている。また、天板12の内面外周部には、容器21の口部端面に当接するパッキン17が装着されている。
【0010】
ロック部材31,41は、前記周壁13の内周側に位置する螺合部32,42と、周壁13の外周側に位置する操作部33,43とを結合した略U字状のものであって、螺合部32,42には前記雌ねじ部15の凹溝に螺合する螺合突起34,44が設けられ、操作部33,43には前記ガイド溝16の溝幅より小さな係合突起35,45が設けられている。
【0011】
一方のロック部材31は半固定状態で用いられるものであり、このロック部材31には、他方のロック部材41の移動量を規制するための移動量規制部36が、操作部33の両側から周壁13の外周面に沿うようにして略半周にわたって設けられている。この移動量規制部36は、ロック部材31が軽い力で移動してしまうことを防止する機能も有している。また、ロック部材31における螺合突起34から螺合部32の天板側端面までの距離は、ロック部材41の螺合突起44から螺合部42の天板側端面までの距離に比べて長くなっている。したがって、両螺合突起34,44の位置関係から、両ロック部材31,41が近接する位置にあるときには、螺合部32の天板側端面は高い位置に、螺合部42の天板側端面は低い位置になる。
【0012】
半固定状態で使用される一方のロック部材31の周壁周方向の位置は、容器キャップ11を容器21の口部22に被せた状態で、その螺合部32の天板側端面がリップ部23の下部に圧接する位置に調節される。このロック部材31の位置調節は、移動量規制部36が周壁13の外周面に摺接する抵抗に対して、比較的強い力でロック部材31を移動させることによって行うことができる。
【0013】
このようにロック部材31の位置調節を行った状態の容器キャップ11を容器21に取り付けるときには、ロック部材31の近くまで他方のロック部材41を移動させた状態で行う。この状態で容器キャップ11を口部22に被せると、ロック部材31は、螺合部32の天板側端面がリップ部23の下部に当接した状態となり、口部端面にパッキン17を押し付けた状態となる。他方のロック部材41は、その位置では螺合部42の天板側端面がリップ部23から僅かに離れた状態となっている。また、図5に示すように、ロック部材31,41に対向する位置の周壁13は、その内周がリップ部23の外周に軽く接触した状態となる。
【0014】
次に、他方のロック部材41を周壁13の周方向に移動させると、螺合突起44が雌ねじ部15の凹溝の傾斜にガイドされてロック部材41が次第に天板側に移動し、図6に示すように、螺合部42の天板側端面42aがリップ部23の下部に圧接した状態となり、口部端面にパッキン17を押し付けた状態となる。これにより、容器キャップ11は、両方のロック部材31,41によって引っ張られて口部22に固定された状態となり、口部22の全体にパッキン17を押し付けて密閉した状態となる。このとき、両ロック部材31,41が180度の位置になるようにしておくことにより、両ロック部材31,41で口部22を挟んだ状態になるので、容器キャップ11を口部22に確実に固定することができ、外れ難い状態とすることができる。
【0015】
また、容器キャップ11を口部22から取り外すときには、ロック部材41を一方のロック部材31に近接する位置まで移動させることにより、ロック部材31,41によるロック状態を解除できるので、軽い力で容器キャップ11を取り外すことができる。
【0016】
さらに、前記移動量規制部36を設けておくことにより、ロック部材41を確実にロック位置と非ロック位置とに移動させることができ、過剰な締付状態となることも防止できる。
【0017】
繰り返しの使用によってパッキン17の弾力性が弱くなった来たときには。半固定側のロック部材31を天板12に近付く方向に移動させることにより、パッキン17を再び口部22の端面に押し付けた状態にすることができ、同時に移動量規制部36の移動によって他方のロック部材41の移動範囲も天板12に近い位置になるので、ロック部材41によるロック、すなわち、口部端面へのパッキン17の押し付けを確実に行うことができる。
【0018】
したがって、従来のゴム製キャップのように、周壁をめくりながら着脱するものに比べて容器キャップの着脱操作を容易に行うことができ、作業時間の短縮が図れるとともに、キャップ装着状態のばらつきもなくなる。
【0019】
なお、上記形態例では、容器として凍結乾燥機のガラス製試料瓶を例示したが、これに限るものではなく、口部外周にリップ部を有する種々の容器に対応することができる。また、容器キャップは、ある程度の弾力性を有していればよく、各種材料で形成することができ、天板の形状は任意である。
【0020】
さらに、ロック部材は、硬質な材料、例えば硬質合成樹脂によって形成することができるが、周壁に沿った移動を円滑に行えるように、低摩擦係数の材料で形成することが好ましい。また、容器口部の口径によっては、ロック部材を3個以上使用することも可能であり、例えば3個のロック部材を使用したときには、それぞれ120度の位置に移動させたときに前述のロック状態になるような形状に各ロック部を形成すればよい。さらに、複数のロック部材の中の一つのロック部材を周壁に固定しておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】容器と容器キャップとの関係を示す断面正面図である。
【図2】容器口部に容器キャップを被着して固定した状態を示す断面正面図である。
【図3】ロック部材が非ロック位置にある状態を示す容器キャップの底面図である。
【図4】ロック部材がロック位置に移動した状態を示す容器キャップの底面図である。
【図5】容器口部に容器キャップを被着した状態を示す要部の拡大断面図である。
【図6】ロック部材で容器キャップをロックした状態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0022】
11…容器キャップ、12…天板、13…周壁、14…管接続部、15…雌ねじ部、16…ガイド溝、17…パッキン、21…容器、22…口部、23…リップ部、31,41…ロック部材、32,42…螺合部、33,43…操作部、34,44…螺合突起、35,45…係合突起、36…移動量規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リップ部を有する容器の口部に着脱可能に被着される容器キャップのロック構造において、前記容器キャップは、容器の口部端面に当接して口部を密閉する天板と、該天板の外周から容器外周面に沿う方向に延出した周壁と、該周壁の内周面に設けられた雌ねじ部と、該雌ねじ部に螺合する螺合部及び周壁から突出する操作部を有し、前記螺合部が前記雌ねじ部に螺合した状態で周壁の周方向に移動可能な複数のロック部材とを有し、該複数のロック部材を近接する位置に移動させた状態で容器キャップを容器の口部に被着した後、複数のロック部材の内の少なくとも一つのロック部材を周壁の周方向に移動させることにより、前記雌ねじ部との螺合によってロック部材を前記天板側に移動させ、前記螺合部の天板側を前記リップ部に圧接させて容器キャップを容器口部に固定することを特徴とする容器キャップのロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−315702(P2006−315702A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138233(P2005−138233)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(591245543)東京理化器械株式会社 (36)
【Fターム(参考)】