説明

容器及びその製造方法

【課題】識別コードを正確に認識し、読み取りエラーを招くのを抑制することができる容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚の半導体ウェーハを整列収納する透明の収納容器1と、この収納容器1を構成する容器本体2と蓋体5とにそれぞれ部分的に形成されて光線の光線透過率を減衰させる防幻領域10と、この防幻領域10に設けられて収納容器1と半導体ウェーハの少なくともいずれか一方の情報を表示し、リーダにより読み込まれる2次元の識別コード20とを備える。容器本体2と蓋体5とに防幻領域10をそれぞれ部分的に形成して防幻効果を発揮させるので、例え容器本体2や蓋体5が透明でも、識別コード20の影部が識別コード20と共にリーダに読み取られてしまうおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやガラスウェーハに代表される基板等からなる各種の物品を収納して保管、搬送等される容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを収納する従来の容器、すなわち基板収納容器は、図示しないが、例えばφ300mmの大型の半導体ウェーハを複数枚整列収納するフロントオープンボックスタイプの容器本体と、この容器本体の開口した正面部を開閉する着脱自在の蓋体と、蓋体の外部からの操作により容器本体の正面部に嵌合された蓋体を施錠する施錠機構とを備えて構成され、半導体ウェーハの製造工場や半導体の製造工程で使用されている。
【0003】
容器本体と蓋体とは、高剛性のポリカーボネート等からなる透明な樹脂を含む成形材料によりそれぞれ射出成形され、半導体ウェーハの視認性が確保されている。これらの容器本体あるいは蓋体には、2次元の識別コードが設けられ、この2次元の識別コードには、基板収納容器の製造ロット番号や製品の仕様等を示す各種の情報が入力されている(特許文献1、2参照)。
【0004】
識別コードは、例えば容器本体あるいは蓋体に半導体レーザマーカで直接的に設けられたり、ラベル化されたバーコードの貼着により形成される。このような識別コードは、半導体ウェーハの製造工程等で備え付けのリーダにより読み込まれることにより、工程管理、基板収納容器の出荷管理や製造履歴の確認等に使用される。
【特許文献1】特開平11−233606号公報
【特許文献2】特開2000−21966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における基板収納容器は、以上のように構成され、2次元の識別コードがリーダにより読み込まれ、製造工程におけるID確認に使用されているので、識別コードとリーダとの角度により、識別コードが設けられた容器本体あるいは蓋体の内側の面から反射した識別コードの影部が識別コードと共にリーダに読み取られてしまうおそれがある。この結果、識別コードが正確に認識されなかったり、読み取りエラーを招くという問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、識別コードを正確に認識し、読み取りエラーを招くのを抑制することのできる容器及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、透明の収納容器に物品を収納するものであって、
収納容器に部分的に形成されて光線の光線透過率を低下させる防幻領域と、この防幻領域に設けられて収納容器と物品の少なくともいずれか一方の情報を表示し、読取装置に読み取られる識別コードとを含んでなることを特徴としている。
【0008】
なお、収納容器は、基板を収納する透明の容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを含み、これら容器本体と蓋体の少なくともいずれか一方に防幻領域を形成し、この防幻領域に識別コードを設けることができる。
また、防幻領域を、収納容器に形成されるしぼ加工面とし、このしぼ加工面の最大高さ(Ry)を識別コードの設けられる深さよりも浅くすることができる。
【0009】
また、防幻領域を、収納容器に一体形成される透明の防幻フィルムと、収納容器に貼り付けられる透明の防幻フィルムのいずれかとし、防幻フィルムに微細な凹凸を形成することができる。
また、識別コードを2次元のバーコードとし、このバーコードを防幻領域にレーザマーキングにより形成することが可能である。
また、識別コードを、収納容器の表面よりも内側に設けることが可能である。
【0010】
また、本発明においては上記課題を解決するため、金型に成形材料を充填して請求項1ないし6いずれかに記載の容器を成形する容器の製造方法であって、
金型に成形材料を充填して透明の収納容器を成形する際に防幻領域を形成し、その後、防幻領域に識別コードを形成することを特徴としている。
【0011】
なお、金型の製品面に防幻領域用の転写部を形成し、この転写部により、収納容器の成形時に防幻領域を併せて成形することができる。
また、金型から収納容器を取り出して冷却する際、収納容器の防幻領域に識別コードをマーキングすることができる。
【0012】
ここで、特許請求の範囲における透明の収納容器は、物品を収納、位置決め、保管、搬送、輸送等するフロントオープンボックスタイプ(FOUPやFOSB等)、トップオープンボックスタイプ、ボトムオープンボックスタイプ、カセットタイプ、トレイタイプのいずれでも良く、蓋体の有無を問わない。この収納容器は、全部が透明でも良いし、一部(例えば容器本体と蓋体のうち、容器本体のみ)が透明でも良く、物品を密封状態に収納する容器でも良いし、そうでなくても良い。
【0013】
物品には、少なくとも単数複数の半導体ウェーハ(例えば、φ200mm、φ300mm、φ450mm)、ガラスウェーハ、化合物半導体、太陽電池用ウェーハ、ガラス基板、フォトマスク、アルミディスク、記録媒体からなる基板、衣類、塵、雑貨、食材、書籍、台所用品等が含まれる。この物品は、収納容器に直接収納されても良いし、カセット等を介し間接的に収納されても良い。
【0014】
防幻領域は、円形、楕円形、三角形、矩形、多角形等に形成することができる。また、読取装置には、少なくともリーダやCCDが含まれる。識別コードには、少なくとも数字や文字からなる文字コード、棒形のバーコード、PDF、QR、DATA、MATRIX等からなる2次元的なバーコードが含まれる。さらに、金型には、防幻領域用の転写部を形成することができるが、この防幻領域用の転写部は、金型に微細な梨地やしぼ加工等を施すことにより形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、収納容器に部分的に形成されて光線の光線透過率を低下させる防幻領域と、この防幻領域に設けられて収納容器と物品の少なくともいずれか一方の情報を表示し、読取装置に読み取られる識別コードとを含むので、読取装置の読み取り精度が向上し、識別コードを正確に認識し、読み取りエラーを招くのを防ぐことができるという効果がある。
また、防幻領域を、収納容器に形成されるしぼ加工面とし、このしぼ加工面の最大高さを識別コードの設けられる深さよりも浅くすれば、識別コードが設けられる面の反対側の面から反射する識別コードの影の映り込みを抑制することができる。
【0016】
また、防幻領域を、収納容器に一体形成される透明の防幻フィルムと、収納容器に貼り付けられる透明の防幻フィルムのいずれかとし、防幻フィルムに微細な凹凸を形成すれば、作業効率、生産性、精密性の向上や製造方法の多様化を図ることができ、ユーザの仕様に速やかに対応したり、印字用の用具等を省略してコストダウンを図ることができる。また、識別コードの形成後に防幻フィルムを設けることもできるので、識別コードを保護して損傷を効果的に防ぐことが可能になる。
【0017】
また、識別コードを2次元のバーコードとし、このバーコードを防幻領域にレーザマーキングにより形成すれば、金型や版下等に対する加工が不要になるので、製造作業の生産性や作業効率を向上させ、コストダウンを図ることが可能になる。また、レーザ加工により複雑な識別コードを容易に形成することも可能になる。
また、識別コードを収納容器の表面よりも内側に設ければ、識別コードの構成の多様化を図りつつ、識別コードを正確に認識したり、読み取りエラーの防止を図ることが可能になる。
【0018】
さらに、金型に成形材料を充填して透明の収納容器を成形する際に防幻領域を形成すれば、収納容器の一連の成形過程で防幻領域を一緒に形成することができるので、生産性や応用性の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る容器の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における容器は、図1ないし図3に示すように、複数枚の半導体ウェーハを収納する透明の収納容器1と、この透明の収納容器1に部分的に形成されて読取装置であるリーダから照射される光線の光線透過率を5%以上、好ましくは10%以上減衰させる防幻領域10と、この防幻領域10に設けられて透明の収納容器1と半導体ウェーハの少なくともいずれか一方の情報を表示し、リーダにより読み取られる2次元の識別コード20とを備えるようにしている。
【0020】
半導体ウェーハは、図示しないが、例えば薄く丸いφ300mmのシリコンタイプからなり、回路パターンの形成される表面が鏡面に形成され、周縁部に位置合わせや識別用のノッチが選択的に形成されており、専用のロボットにより収納容器1に水平に収納されたり、収納容器1から水平に取り出される。
【0021】
透明の収納容器1は、半導体ウェーハを複数枚収納するフロントオープンボックスタイプで透明の容器本体2と、この容器本体2の開口した正面部を開閉する一部透明の蓋体5と、蓋体5の外部からの操作により容器本体2の正面部に嵌合された蓋体5を施錠・解錠する施錠機構とを備えて構成され、半導体ウェーハの製造工場や半導体の製造工程で使用される。
【0022】
容器本体2と蓋体5とは、高剛性、耐衝撃性、耐熱性のポリカーボネート等からなる透明な樹脂を含む成形材料によりそれぞれ射出成形され、蓋体5を取り外すことなく半導体ウェーハを確認できるよう成形されている。成形材料には、カーボン、カーボン繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、導電性ポリマー、帯電防止剤、難燃剤等が選択的に添加される。
【0023】
容器本体2は、図1に示すように、25枚の半導体ウェーハを上下に並べて整列収納するフロントオープンボックスに射出成形され、開口した正面部に同形の蓋体5がエンドレスのガスケットを介し着脱自在に嵌合されており、図示しない半導体加工装置や気体置換装置に位置決めして搭載される。
【0024】
容器本体2の相対向する内部両側には、半導体ウェーハの周縁部両側を水平に支持する左右一対のティースが対設され、この一対のティースが容器本体2の上下方向に間隔をおいて複数配列される。また、容器本体2の内部背面には、半導体ウェーハの周縁部後端を仕切るリヤリテーナが突設され、このリヤリテーナが容器本体2の上下方向に間隔をおいて複数配列される。
【0025】
容器本体2の底部には略台形のボトムプレートが取付具を介し一体的に装着され、このボトムプレートには、複数の取付孔が穿孔されており、この複数の取付孔に着脱自在の識別パッドが選択的に挿入されることにより、半導体加工装置や気体置換装置の検知センサに基板収納容器の種類等が検知される。また、ボトムプレートの中央部には、半導体加工装置や気体置換装置上に容器本体2を固定するためのクランプ孔が穿孔され、ボトムプレートの前部両側と後部中央とには、半導体加工装置や気体置換装置の位置決めピンに容器本体2を位置決めする複数の位置決め具がそれぞれ配設される。
【0026】
容器本体2の天井の中央部には同図に示すように、着脱自在のロボティックハンドル3が装着され、このロボティックハンドル3がOHT(オーバーヘッドホイストトランスファー)と呼ばれる自動の搬送機に保持されることにより、基板収納容器が工程内外の搬送に供される。また、容器本体2の正面部の周縁は、外方向に膨出形成されて蓋体5嵌合用のリム部4を形成し、このリム部4の内周面の上下両側には、蓋体5を係止する係止溝がそれぞれ凹み形成される。
【0027】
蓋体5は、図1に示すように、容器本体2の正面部、換言すれば、リム部4内に着脱自在に嵌合され、施錠機構を内蔵する筐体と、この筐体の開口した正面部(表面部)に装着されて被覆する透明の表面プレート6とを備えて構成され、容器本体2に対して半導体加工装置の蓋体開閉装置により取り付け・取り外しされる。
【0028】
筐体は、四隅部が丸く面取りされた正面視略矩形に成形され、裏面中央部には、複数の半導体ウェーハの周縁部前端を弾性片により弾発的に保持するフロントリテーナが装着される。この筐体の裏面周縁部には、枠形の嵌合溝が切り欠かれ、この嵌合溝には、容器本体2のリム部4との間に介在する弾性のガスケットが嵌合される。このガスケットは、例えば耐熱性、難燃性、耐寒性、圧縮特性に優れるシリコーンゴム、フッ素ゴム、各種の熱可塑性エラストマー(例えば、オレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン等)等を成形材料として弾性変形可能な枠形に成形される。
【0029】
施錠機構は、図示しないが、筐体表面の両側部中央にそれぞれ回転可能に軸支されて外部から操作される一対の回転プレートと、各回転プレートに連結されて筐体の上下内外方向にスライド可能な一対のスライドプレートと、筐体周壁の出没孔に出没可能に軸支されてスライドプレートの先端部に連結支持され、容器本体2の係止溝に嵌合して干渉する揺動可能な一対の係止爪とを備え、SEMI規格E62に準拠して構成される。この施錠機構は、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、環状オレフィン樹脂等を含む成形材料により成形される。
【0030】
防幻領域10は、図1ないし図3に示すように、容器本体2の一側部下方と蓋体5の表面プレート6とにそれぞれ略矩形に配設される。この防幻領域10は容器本体2の一側部下方における表面(外面)と表面プレート6の表面(外面)下部とにそれぞれ一体成形されるしぼ(texture)加工面からなり、このしぼ加工面の表面粗さ、換言すれば、最大高さ(Ry(基準長さ毎の最低谷底から最大山頂までの高さ))は識別コード20の設けられる深さ(10〜50μm)よりも浅くされる。
【0031】
しぼ加工面の最大高さ(Ry)は、識別コード20の加工深さよりも浅ければ良く、通常は0.5〜50μmの範囲が好ましい。これは、0.5μm以上の場合には、識別コード20の裏写りを十分に低減することができ、識別コード20の正確な認識が期待できるからである。逆に、50μm以下の場合には、金型からの脱型時の不具合や金型からの脱型時の損傷を防止することができ、さらにはパーティクルが付着しやすくなったり、洗浄後の乾燥処理に長時間を要するのを抑制することができるからである。
【0032】
防幻領域10が以上のように設けられることにより、識別コード20が図示しないリーダにより読み込まれる際、リーダによる検出側と反対側に位置する内面側の識別コード20の裏写りに伴う幻影の発生が防止され、識別コード20の確実な読み込みが期待できる。
【0033】
識別コード20は、図1ないし図3に示すように、例えば2次元のバーコード等からなり、防幻領域10の投影部11にレーザ照射装置により直接レーザマーキングされる。この識別コード20は、レーザマーキングの際、防幻領域10のしぼ加工面の最大高さ(Ry)よりも深く加工される。この識別コード20の深い加工により、識別コード20がレーザマーキングされる表面と相対する反対側の面から反射する識別コード20の影の映り込みが防止される。レーザ照射装置としては、例えばCOレーザ、YAGレーザ、YVOレーザ等のレーザ光を照射する装置があげられる。
【0034】
上記構成において、容器本体2を製造する場合には、先ず、容器本体2を成形する専用の金型を型締めして成形材料を射出・充填し、保圧して透明の収納容器1を射出成形する。金型の製品面には、防幻領域10用の転写部が予め微細なしぼ地により凹凸形成され、この転写部により、容器本体2を射出成形する際、容器本体2の一側部下方に防幻効果の防幻領域10が併せて一体成形される。
【0035】
防幻領域10は、容器本体2の一側部下方の内外面のいずれにも成形することができるが、少なくとも識別コード20の読み取り側である容器本体2の一側部下方の外面(表面)に成形することが好ましい。より好ましくは、容器本体2の一側部下方の内外面のいずれにも成形して防幻効果を増大させるのが良い。
【0036】
容器本体2と防幻領域10とを併せて成形したら、金型から容器本体2を脱型して冷却するが、この際、冷却された防幻領域10の投影部11に、基板収納容器の製造ロット番号や製品の仕様等のID情報を有する2次元の識別コード20を位置決めしてレーザマーキングし、その後、金型を型開きして容器本体2を脱型すれば、容器本体2を製造することができる。
【0037】
また、蓋体5の表面プレート6を成形する場合には、先ず、表面プレート6を成形する専用の金型を型締めして成形材料を射出・充填し、保圧して透明の表面プレート6を射出成形する。金型の製品面には、防幻領域10用の転写部が予め微細なしぼ地により凹凸形成され、この転写部により、表面プレート6の射出成形時に防幻領域10が併せて一体成形される。
【0038】
防幻領域10は、表面プレート6の内外面のいずれにも成形することができるが、少なくとも識別コード20の読み取り側である表面プレート6の外面(表面)に成形することが好ましい。より好ましくは、表面プレート6の内外面のいずれにも成形して防幻効果を増大させると良い。
【0039】
表面プレート6に防幻領域10を併せて成形したら、金型や表面プレート6を冷却するが、この際、冷却された防幻領域10の投影部11に、基板収納容器の製造ロット番号や製品の仕様等のID情報を有する2次元の識別コード20を位置決めしてレーザマーキングし、その後、金型を型開きして表面プレート6を脱型すれば、表面プレート6を製造することができる。こうして表面プレート6を製造したら、表面プレート6を筐体や施錠機構と組み合わることにより、蓋体5を製造することができる。
【0040】
上記構成によれば、収納容器1の容器本体2と蓋体5とに防幻領域10をそれぞれ部分的に形成して防幻効果を発揮させるので、識別コード20の明暗が鮮明になり、例え容器本体2や蓋体5の一部が透明でも、識別コード20の影部が識別コード20と共にリーダに読み取られてしまうおそれがない。したがって、半導体ウェーハの収納の有無にかかわらず、識別コード20を正確に認識し、読み取りエラーを招くことがない。
【0041】
また、識別コード20を正確に認識するため、容器本体2や蓋体5の大部分を不透明に成形する必要がないので、半導体ウェーハに容器本体2を介して光線を照射し、半導体ウェーハの有無を検出する別工場の検出センサの機能障害等を有効に抑制防止することができる。さらに、金型の製品面のしぼ地により、容器本体2や表面プレート6の成形時に防幻領域10を共に成形するので、容器本体2や表面プレート6の成形工程と別の工程で防幻領域10を設ける必要がなく、生産性、品質安定性、応用性の著しい向上が期待できる。
【0042】
次に、図4は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、金型の転写部により、容器本体2や表面プレート6を射出成形する際に防幻領域10を共に成形し、この防幻領域10の投影部11に2次元の識別コード20をレーザマーキングするとともに、この識別コード20を容器本体2や表面プレート6の表面よりも内側に形成するようにしている。
【0043】
この場合、容器本体2の防幻領域10は容器本体2の一側部下方の内面に形成され、容器本体2の識別コード20は容器本体2の一側部下方の内外面の間の中間部に形成される。また、表面プレート6の防幻領域10は表面プレート6の内面に形成され、表面プレート6の識別コード20は表面プレート6の内外面の間の中間部に形成される。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0044】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、防幻領域10や識別コード20の構成の多様化を図りつつ、識別コード20を正確かつ安定して認識したり、読み取りエラーの防止を図ることができるのは明らかである。
【0045】
次に、図5は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、防幻領域10を、収納容器1の容器本体2と蓋体5とにそれぞれ一体形成されて反射防止機能を発揮する透明の防幻フィルム12と、容器本体2と蓋体5とにそれぞれ貼着されて反射防止機能を発揮する透明の防幻フィルム12のいずれかとするようにしている。
【0046】
防幻フィルム12は、例えば可視光線に対して透過性を有する透明のフィルムからなり、表面に微細な凹凸が形成されており、ヘイズ値が1〜20%の範囲とされる。この防幻フィルム12は、例えばアクリル樹脂やウレタン系の樹脂に、シリカ、メラミン、アクリル等の無機化合物や有機化合物の粒子を分散させたインキを透明のフィルム上にバーコート法やグラビアコート法等の方法により塗布硬化させることにより形成される。またこれ以外にも、薬剤処理により形成される。
【0047】
防幻フィルム12のヘイズ値が1〜20%の範囲なのは、ヘイズ値が1%以上の場合には、防幻効果を得ることができ、逆に20%以下の場合には、光線透過率が小さくなるのを防ぐことができるからである。このヘイズ値の上限管理は、識別コード20が容器本体2や表面プレート6の内外面の間の中間部に形成される場合に重要である。
【0048】
上記構成において、収納容器1に透明の防幻フィルム12を成形して防幻領域10とする場合には、容器本体2や表面プレート6を成形する専用の金型に透明の防幻フィルム12をインサートして型締めし、この金型に成形材料を射出・充填して保圧すれば、収納容器1に透明の防幻フィルム12を成形して防幻領域10とすることができる。こうして防幻領域10を得たら、この防幻領域10の投影部11に識別コード20を位置決めしてレーザマーキングすれば良い。
【0049】
また、収納容器1に透明の防幻フィルム12を成形ではなく、貼着して防幻領域10とする場合には、成形された容器本体2と蓋体5とに透明の防幻フィルム12を接着、熱溶着、超音波溶着等の方法により貼着すれば、防幻領域10を得ることができる。こうして防幻領域10を得たら、この防幻領域10の投影部11に識別コード20を位置決めしてレーザマーキングすれば良い。
【0050】
また、上記以外にも、成形された容器本体2と蓋体5とに識別コード20をレーザマーキングし、この識別コード20上に防幻フィルム12を貼着して防幻領域10を得ることもできる。その他の部分については、上記実施形態と略同様であるので説明を省略する。
【0051】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、防幻フィルム12を用いるので、作業効率、生産性、精密性の向上や製造方法の多様化を図ることができる他、ユーザの仕様に迅速に対応したり、印字用の版下等を省略してコストダウンを図ることができるのは明らかである。また、識別コード20のレーザマーキング後に防幻フィルム12を貼着することができるので、識別コード20の損傷を効果的に防止することができる。
【0052】
なお、上記実施形態では容器本体2と蓋体5とをポリカーボネート等からなる透明な樹脂を含む成形材料によりそれぞれ射出成形したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、光学特性や透明性に優れるシクロオレフィンポリマーやポリエーテルイミドを含む成形材料によりそれぞれ射出成形しても良い。また、蓋体5の施錠機構は省略しても良い。
【0053】
また、防幻領域10は、識別コード20を検出するリーダの光線が照射側と反対側の面から反射されて輪郭がぼやけるのを散光、遮蔽して適切に抑制防止できるのを条件に収納容器1の上部、下部、前部、後部等に形成しても良い。例えば、容器本体2の底部と天井、及び蓋体5の表面プレート6に防幻領域10をそれぞれ配設しても良いし、容器本体2の底部と天井とに防幻領域10をそれぞれ配設しても良い。
【0054】
また、金型の転写部を利用して防幻領域10を併せて成形しても良いが、容器本体2や表面プレート6を成形した後に、サンドブラスト処理やレーザ加工により防幻領域10を形成することもできる。さらに、防幻領域10をしぼ加工面とするのではなく、エッチングや加熱転写等による微小な凹凸面、光散乱面、光不透過面とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る容器及びその製造方法の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る容器及びその製造方法の実施形態を模式的に示す要部拡大説明図である。
【図3】図2の厚さ方向を模式的に示す説明図である。
【図4】本発明に係る容器及びその製造方法の第2の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明に係る容器及びその製造方法の第3の実施形態を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 収納容器
2 容器本体
5 蓋体
10 防幻領域
11 投影部
12 防幻フィルム
20 識別コード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明の収納容器に物品を収納する容器であって、収納容器に部分的に形成されて光線の光線透過率を低下させる防幻領域と、この防幻領域に設けられて収納容器と物品の少なくともいずれか一方の情報を表示し、読取装置に読み取られる識別コードとを含んでなることを特徴とする容器。
【請求項2】
収納容器は、基板を収納する透明の容器本体と、この容器本体の開口部を開閉する蓋体とを含み、これら容器本体と蓋体の少なくともいずれか一方に防幻領域を形成し、この防幻領域に識別コードを設けた請求項1記載の容器。
【請求項3】
防幻領域を、収納容器に形成されるしぼ加工面とし、このしぼ加工面の最大高さを識別コードの設けられる深さよりも浅くした請求項1又は2記載の容器。
【請求項4】
防幻領域を、収納容器に一体形成される透明の防幻フィルムと、収納容器に貼り付けられる透明の防幻フィルムのいずれかとし、防幻フィルムの表面に微細な凹凸を形成した請求項1又は2記載の容器。
【請求項5】
識別コードを2次元のバーコードとし、このバーコードを防幻領域にレーザマーキングにより形成した請求項1ないし4いずれかに記載の容器。
【請求項6】
識別コードを、収納容器の表面よりも内側に設けた請求項1ないし5いずれかに記載の容器。
【請求項7】
金型に成形材料を充填して請求項1ないし6いずれかに記載の容器を成形する容器の製造方法であって、
金型に成形材料を充填して透明の収納容器を成形する際に防幻領域を形成し、その後、防幻領域に識別コードを形成することを特徴とする容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−274743(P2009−274743A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127848(P2008−127848)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】