説明

容器装置および調理方法

【課題】シュウマイ等の食材の加熱が極めて簡単に行なえる技術を提供することである。
【解決手段】 電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置であって、容器本体部1と、前記容器本体部1に該容器本体部1の底面から浮き上がって設けられた中敷体2と、前記中敷体2の上側と下側とを連通する該中敷体2に設けられた開口部3と、前記中敷体2の下側の容器本体部1内に配された水、塩および増粘剤とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器装置および調理方法に関する。特に、電子レンジ(マイクロウェイブオーブン)と言った電磁波応用装置を用いて食材を調理(加熱:特に蒸気照射加熱)するに際して用いられる技術である。
【背景技術】
【0002】
シュウマイなどの食材を、今日、電子レンジを用いて加熱(蒸気照射加熱)することが行なわれている。例えば、中敷より下側の容器内に水を入れ、かつ、中敷上には冷えたシュウマイ等を載せ、このような水および食材を入れた容器を電子レンジ内に置いてスイッチをオンにすると、電磁波の作用によって水が加熱蒸気となり、これによってシュウマイが加熱される。このようにして暖まったシュウマイが食卓に供される。
【0003】
さて、上記作業を簡便なものとする為、今日、シュウマイが容器(トレー)に入れられて販売されている。そして、調理に際して、ユーザーが水を添加すると言った手間を省く為、販売者側が、予め、容器内に水を入れておくことが提案されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、例えばシュウマイは中敷上に置かれ、そして水が中敷下に入れられた状態で販売されるとは謂うものの、このような状態で輸送された場合には、中敷下に在る水が中敷上に飛び散ることを避けることが出来ない。
【0005】
このような問題を解決する為、水を薄い樹脂製(フィルム製)袋内に入れ、この水が充填された袋を中敷下に配することが提案されている。
【0006】
しかしながら、水を袋内に入れていると、電子レンジのスイッチオンによっても、袋が、中々、破裂せず、水蒸気が、中々、発生し難い。このようなことから、上記の案になる商品は現実には市販されるまでに至って無い。
【0007】
従って、本発明が解決しようとする課題は、例えばシュウマイ等の食材の加熱が極めて簡単に行なえる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、
電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置であって、
容器本体部と、
前記容器本体部に該容器本体部の底面から浮き上がって設けられた中敷体と、
前記中敷体の上側と下側とを連通する該中敷体に設けられた開口部と、
前記中敷体の下側の容器本体部内に配された水および増粘剤
とを具備することを容器装置によって解決される。
【0009】
特に、電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置であって、
容器本体部と、
前記容器本体部に該容器本体部の底面から浮き上がって設けられた中敷体と、
前記中敷体の上側と下側とを連通する該中敷体に設けられた開口部と、
前記中敷体の下側の容器本体部内に配された水、塩および増粘剤
とを具備することを特徴とする容器装置によって解決される。
【0010】
中でも、上記の容器装置であって、増粘剤がゼラチンである
ことを特徴とする容器装置によって解決される。
【0011】
又、上記の容器装置であって、開口部は中敷体の周辺部にのみ設けられてなる
ことを特徴とする容器装置によって解決される。
【0012】
又、電磁波応用装置を用いて食材を加熱する調理方法であって、
水と塩と増粘剤との混合物、及び食材が入れられた容器を電磁波応用装置内に配する工程と、
前記工程の後で、電磁波応用装置を動作させて電磁波を前記水と塩と増粘剤との混合物に照射し、蒸気を発生させる工程
とを具備することを特徴とする調理方法によって解決される。
【0013】
特に、電磁波応用装置を用いて食材を加熱する調理方法であって、
水と塩とゼラチンとの混合物、及び食材が入れられた容器を電磁波応用装置内に配する工程と、
前記工程の後で、電磁波応用装置を動作させて電磁波を前記水と塩とゼラチンとの混合物に照射し、蒸気を発生させる工程
とを具備することを特徴とする調理方法によって解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明にあっては、単に、水を入れておくと言うのでは無く、水にゼラチン等の増粘剤を加え、水をシャブシャブ状態のものから力が作用しても飛び散り難い粘調質な状態のものとし、これを容器内に入れておくものとした。
【0015】
その結果、上記水含有粘調物と食材とを別室に分けて入れた容器が輸送に供され、その時に外力が作用しても、水が飛び散り難いことから、食材が水で濡れる恐れは非常に小さい。従って、食材が変性し難いものとなる。
【0016】
又、調理に際して、即ち、食卓に供するに際して、水を加えて電子レンジに入れると言った手間を大きく省くことが出来る。すなわち、ユーザーにしてみると非常に手軽に使用できる。
【0017】
さて、電子レンジで水蒸気を早く発生させる為には、水に塩を加えていると、蒸気が速く発生すると言われている。本発明者によっても、このことが確認された。ところが、塩を添加していると、電子レンジによる作業中にパチパチと言った破裂音が発生し、かつ、火花が飛び散るような現象も認められた。これでは、使用者にしてみると、不安感を与えるものとなるであろう。
【0018】
ところが、塩と共にゼラチン等の増粘剤が用いられていると、前記の如きの現象は起きないものであった。従って、食材を電子レンジで加熱(蒸気照射加熱)するに際して、食材と共に容器内に入れるものを、水と塩とゼラチン等の増粘剤との混合物の形態のものとしたならば、非常に好都合であった。すなわち、蒸気発生速度が速く、短時間の中に多量の蒸気が発生した。かつ、パチパチと言った破裂音(異音)が発生することなく、又、火花が飛び散るような現象も起きなくなった。更には、前記のものが入れられた容器が輸送に供されても、中に入れられている食材に水が飛び散って、食材が濡れると言った問題点も解決できた。
【0019】
ところで、電磁波の照射によって、蒸気が発生する。この発生した蒸気は開口部を通り抜けて中敷体上に上がって来る。この時、ゼラチン等の増粘剤も泡のようになって中敷体上に移行しようとする。この為、食材が載せられている中敷体の中央部に開口部が形成されていると、食材にゼラチン等の増粘剤が付着し易い。しかしながら、開口部が中敷体の周辺部のみであると、このような問題が起き難いものであった。従って、開口部は中敷体の周辺部にのみ設けられてなることが好ましいものであった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明になる容器装置は、電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置である。そして、容器本体部と、前記容器本体部に該容器本体部の底面から浮き上がって設けられた中敷体とを具備する。前記中敷体には、その上側と下側とを連通する開口部が設けられている。そして、前記中敷体の下側の容器本体部内には水と増粘剤(例えば、ゼラチン)とが配されている。例えば、水と増粘剤(例えば、ゼラチン)との混合物が配されている。特に、水と塩と増粘剤(例えば、ゼラチン)とが配されている。例えば、水と塩と増粘剤(例えば、ゼラチン)との混合物が配されている。尚、ゼラチン等の増粘剤の含有量は、好ましくは約0.05〜10%である。又、塩の含有量は、好ましくは約0.05〜5%である。上記中敷体は、好ましくは、開口部が中敷体の周辺部にのみ設けられたものである。
【0021】
本発明になる調理方法は、電磁波応用装置を用いて食材を加熱する調理方法である。そして、水と塩と増粘剤(特に、ゼラチン)との混合物、及び食材が入れられた容器を電磁波応用装置内に配する工程と、前記工程の後で、電磁波応用装置を動作させて電磁波を前記水と塩と増粘剤(特に、ゼラチン)との混合物に照射し、蒸気を発生させる工程とを具備する。
【0022】
以下、更に、詳しく説明する。
図1は本発明で用いられる容器の断面図、図2は中敷体の斜視図である。
図1,2中、1はプラスチック製の容器本体部、2は容器本体部1内に底面部から浮き上がって取り付けられた(溶着された)プラスチック製の中敷体である。図2からも判る通り、中敷体2は、その周辺部にのみ開口部(切欠部)3が形成されている。そして、中敷体2の下側で発生した蒸気は、開口部3を介して、中敷体2の上側空間1aに移行して来る。そして、中敷体2の上に載せられているシュウマイ等の食材4が蒸気で加熱される。尚、中敷体2の下側空間1bと中敷体2の上側空間1aとは、上記開口部3のみで繋がっている。
【0023】
さて、中敷体2の下側の容器本体部1内の下側空間1bには、下記の表−1に示される水、食塩水、又は本発明になる混合物5が入れられている。
表−1
備考
(1) 水道水20g 本発明外1
(2) 水道水20g+食塩0.1gの食塩水 本発明外2
(3) 水道水20g+食塩0.2gの食塩水 本発明外3
(4) 水道水20g+食塩0.4gの食塩水 本発明外4
(5) 水道水20g+ゼラチン1gの混合物 本発明1
(6) 水道水20g+食塩0.1g+ゼラチン0.2gの混合物 本発明2
(7) 水道水20g+食塩0.1g+ゼラチン0.4gの混合物 本発明3
(8) 水道水20g+食塩0.2g+ゼラチン0.4gの混合物 本発明4
(9) 水道水20g+食塩0.4g+ゼラチン0.4gの混合物 本発明5
(10) 水道水20g+食塩0.2g+ゼラチン0.5gの混合物 本発明6
(11) 水道水20g+食塩0.2g+ゼラチン1gの混合物 本発明7
【0024】
そして、上記11例の容器を500Wの電子レンジに入れ、蒸気発生量を調べたので、その結果を表−2に示す。
表−2
試料 電子レンジスイッチオン後における蒸気発生量(%)
30秒後 60秒後 90秒後 120秒後
本発明外1 0% 15% 25% 25%
本発明外2 10% 25% 45% 60%
本発明外3 10% 25% 45% 60%
本発明外4 10% 25% 50% 70%
本発明1 10% 20% 30% 45%
本発明2 10% 25% 50% 70%
本発明3 10% 25% 50% 70%
本発明4 10% 25% 55% 80%
本発明5 10% 30% 55% 80%
本発明6 10% 30% 55% 80%
本発明7 10% 30% 55% 80%
【0025】
表−2から判る通り、真水の場合に比べて、食塩水を用いた場合の方が、短時間で蒸気の得られていることが判る。しかも、120秒後における蒸気になった量も多いことが判る。
従って、電子レンジで加熱(蒸気照射)するに際して、水として真水を用いるよりも食塩水を用いた方が、加熱効率が高いことを納得できる。
【0026】
しかしながら、前述した通り、本発明外2,3,4の如きの食塩水を用いた場合、パチパチと言った異音が発生した。又、水が跳ねるようにもなった。更には、火花が飛び散るような現象も認められた。これでは、この現象を知らない使用者は不安になってしまう。
【0027】
ところが、本発明2,3,4,5,6,7に示される食塩+ゼラチン+水の混合物が用いられた場合には、食塩水を用いた場合の如きの異音が発生することも無く、かつ、水が跳ねるような現象も起きず、更には火花が飛び散るような現象も認められなかった。
かつ、蒸気発生量も多いものであった。同じ塩分量の場合でも、例えば本発明外2と本発明2,3との対比から判る通り、又、本発明外3と本発明4,6,7との対比から判る通り、又、本発明外4と本発明5との対比から判る通り、ゼラチンの併用によって蒸気発生量が多くなっていることが判る。
【0028】
又、食塩が添加されていない水道水+ゼラチンの本発明1の場合でも、水道水のみの場合に比べると、蒸気発生量が多くなっていることが判る。しかも、この場合も、食塩水を用いた場合の如きの異音が発生することも無く、かつ、水が跳ねるような現象も起きず、更には火花が飛び散るような現象も認められなかった。
【0029】
そして、ゼラチン等の増粘剤が併用されると、水のみの場合に比べて、粘性が増し、従って外力が作用しても水が飛び散る恐れが少なくなった。この場合、食塩が添加されていても、飛び散ることが無いので、中敷体2上に置かれた食材に塩分が付着する恐れも小さい。
【0030】
又、ゼラチンが仮に食材に付着しても、これが食品衛生上問題になることも無い。
【0031】
尚、上記においては、電子レンジによる加熱時間は120秒までしか検証していないが、電子レンジによる調理(加熱)時間は、約2分以内のことが多いことから、上記検証で十分である。すなわち、電子レンジの作動が約2分以内での加熱によって、如何にして多くの蒸気を発生させるかが本発明では問題になるから、上記120秒以内の検証で十分である。
【0032】
ゼラチン量は約0.5〜5%であれば十分である。特に好ましくは約1〜3%程度である。すなわち、シュウマイ等の場合には、ゼラチン量が多くても、大きな問題は無い。すなわち、ゼラチン臭の問題は無い。しかしながら、ゼラチンの臭いが問題になるような場合には、ゼラチン量は少ない方が好ましい。このような観点から、又、蒸気発生量の観点から、又、水の飛散性の観点から、約1〜3%程度が好ましいものであった。更には1〜2%程度が特に好ましいものであった。
【0033】
食塩が用いられた方が蒸気発生量は多くなっている。但し、食塩が食材に付着する恐れが皆無と言う訳では無いであろうから、食塩量は0.3〜2%が好ましいものであった。特に好ましくは約0.5〜2%程度である。
【0034】
上記実施形態では増粘剤としてゼラチンの場合で説明した。増粘剤として寒天なども周知である。寒天の場合でも改善が認められたが、ゼラチンの場合に比べると劣っていた。従って、ゼラチンが特に好ましいものであった。
【0035】
尚、本発明で対象となる食材は、例えば室温以下の温度、所謂、クール(冷蔵)と言った温度下で保管・保存されているものが多い。例えば、0℃を越えて10℃以下の温度下で保管・保存されているものが多い。このような温度下であれば、上記増粘剤の添加量が1〜5%程度であっても、輸送中に水が飛び散ると言ったことは無い。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明で用いられる容器の断面図
【図2】本発明で用いられる中敷体の斜視図
【符号の説明】
【0037】
1 容器本体部
1a 容器本体部における上側空間
1b 容器本体部における下側空間
2 中敷体
3 開口部
4 食材
5 混合物

代 理 人 宇 高 克 己


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置であって、
容器本体部と、
前記容器本体部に該容器本体部の底面から浮き上がって設けられた中敷体と、
前記中敷体の上側と下側とを連通する該中敷体に設けられた開口部と、
前記中敷体の下側の容器本体部内に配された水および増粘剤
とを具備することを特徴とする容器装置。
【請求項2】
電磁波応用装置を用いて加熱する場合に用いられる容器装置であって、
容器本体部と、
前記容器本体部に該容器本体部の底面から浮き上がって設けられた中敷体と、
前記中敷体の上側と下側とを連通する該中敷体に設けられた開口部と、
前記中敷体の下側の容器本体部内に配された水、塩および増粘剤
とを具備することを特徴とする容器装置。
【請求項3】
増粘剤がゼラチンである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の容器装置。
【請求項4】
開口部は中敷体の周辺部にのみ設けられてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の容器装置。
【請求項5】
電磁波応用装置を用いて食材を加熱する調理方法であって、
水と塩と増粘剤との混合物、及び食材が入れられた容器を電磁波応用装置内に配する工程と、
前記工程の後で、電磁波応用装置を動作させて電磁波を前記水と塩と増粘剤との混合物に照射し、蒸気を発生させる工程
とを具備することを特徴とする調理方法。
【請求項6】
電磁波応用装置を用いて食材を加熱する調理方法であって、
水と塩とゼラチンとの混合物、及び食材が入れられた容器を電磁波応用装置内に配する工程と、
前記工程の後で、電磁波応用装置を動作させて電磁波を前記水と塩とゼラチンとの混合物に照射し、蒸気を発生させる工程
とを具備することを特徴とする調理方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−184707(P2009−184707A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27064(P2008−27064)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(391024250)第一プラスチック工業株式会社 (7)