説明

容器

【課題】蓋体を全閉状態だけでなく全開状態でも確実に保持することができ、しかも、小さな力で手早く開閉することができ、長期間にわたって損傷,破損等することのない容器を提供する。
【解決手段】容器本体1と蓋体3と、容器本体1と蓋体3とを回動自在に連結するヒンジ手段4とを備え、このヒンジ手段4が、容器本体1に回動不能に固定される第1ヒンジ部21と、蓋体3に回動不能に固定され上記第1ヒンジ部21に相対回動自在に連結される第2ヒンジ部22と、第1ヒンジ部21内に摺動自在に配設される可動部24と、この可動部24を第2ヒンジ部22に向かって弾圧付勢するコイルばねとで構成され、第2ヒンジ部22と可動部24とが、互いに相対向する対向面を有し、一方の対向面に複数の半球状の凸部が突設され、他方の対向面に、閉状態および開状態で上記各凸部が位置決めされる複数の凹部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料容器等の容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ファンデーション等の化粧料を収容する各種の化粧料容器として、図35に示すようなコンパクト容器が提案されている。このコンパクト容器は、上面に化粧皿収容凹部71aが形成された容器本体71と、この容器本体71の上面を蓋する蓋体72と、開蓋用フックピース73とを備えており、上記容器本体71の前端部中央に、奥面に係合突起74aが突設された切欠き凹部74を形成し、この切欠き凹部74にフックピース73を回動自在に固定している。また、上記蓋体72の前端部中央から、上記係合突起74aに着脱自在に係合する係合爪72aを垂設している。そして、閉蓋時には上記係合突起74aと係合爪72aとの係合により閉蓋状態を保持し、開蓋時にはフックピース73の下部を奥側に押圧してフックピース73を回動させることにより、上記係合を解除するようにしている。
【0003】
ところが、上記のコンパクト容器では、容器本体71の係合突起74a,蓋体72の係合爪72aおよびフックピース73の構造が複雑で、成形による寸法誤差が生じやすい。そのため、上記係合が強固になりすぎて開蓋しにくいものや、緩すぎて簡単に開蓋しすぎるものができる。特に上記係合が強固なコンパクト容器では、蓋体72の開閉を繰り返すと、係合爪72aに無理な力が加わって材質疲労が蓄積し、使用途中で係合爪72aが折損するという事態が生じる。また、上記係合が緩すぎて簡単に開蓋するコンパクト容器では、バッグ等に入れて携帯している際に、不用意に開蓋して化粧料でバッグ等の内部を汚すという事態を生じたりする。しかも、容器本体71,蓋体72およびフックピース73の3部品が必要であり、部品点数が多く、在庫管理等の管理面が煩雑になる。
【0004】
そこで、フックピース73を不要としたものとして、図36に示すようなコンパクト容器が提案されている。このコンパクト容器は、容器本体76と、この容器本体76の上面を蓋する蓋体77と、上記容器本体76と蓋体77とを回動自在に連結するヒンジ装置78を備えたものであり、このヒンジ装置78は、図37に示すように、上記容器本体76に回り止め状態で装着されるケース本体80と、上記蓋体77に回り止め状態で装着され上記ケース本体80にシャフト82を介して回動自在に連結されるファスナー81と、上記ケース本体80に摺動自在に収納された回動摺動カム体83と、上記ケース本体80に収納され上記回動摺動カム体83をファスナー81側に付勢するコンプレッションスプリング84と、ファスナー81に固定された回動カム体85とを備えている。
【0005】
また、上記回動摺動カム体83と回動カム体85とは、図38に示すように、互いに摺動するフラット部を有しており、上記回動摺動カム体83のフラット部の一側から突設されたカム凸部83aが、上記回動カム体85のフラット部の一側に形成されたカム凹部85aに係入もしくは離脱することにより、カム作用を行う構造になっている。このようなカム凸部83aは、その下部が断面形状略扇形の角柱形状に形成されており、カム凹部85aは、上記カム凸部83aの下部を収容しうる形状(平面視略扇形)に形成されている。
【0006】
そして、上記蓋体77の開放動作中および全開状態では、回動摺動カム体83のカム凸部83aが回動カム体85のフラット部に当接し、コンプレッションスプリング84の弾性力により両カム体83,85の相対的な回動が抑制されており、これにより、全開と全閉間の状態および全開状態において上記蓋体77はその状態に保持されている。一方、上記蓋体77が全閉状態にあるときには、回動摺動カム体83のカム凸部83aが回動カム体85のカム凹部85aに位置し、その状態でコンプレッションスプリング84の弾性力により閉蓋方向に付勢され、閉蓋状態が保持されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−201955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のコンパクト容器では、蓋体77が全閉状態であると、上記カム作用により位置決め固定されているが、全開状態であると、回動摺動カム体83のカム凸部83aが回動カム体85のフラット部に当接した状態で、コンプレッションスプリング84の弾性力により付勢されているだけであるため、蓋体77が不用意に閉じるおそれがある。しかも、回動摺動カム体83のカム凸部83aの下部を断面形状略扇形の角柱形状に形成することで、これを回動カム体85のフラット部の任意の位置に固定しやすくしているが、その分、回動摺動カム体83のカム凸部83aが回動カム体85のフラット部上を摺動しにくく、大きな力で蓋体77を開閉しなければならないうえ、この開閉動作に時間がかかる。しかも、回動摺動カム体83のフラット部の一側からカム凸部83aを突設しているため、蓋体77の開放動作中等にコンプレッションスプリング84で付勢されたカム凸部83aの下端面(のうち摺動方向前端縁部)が回動カム体85のフラット部に片当たり状に当接しながらフラット部上を摺動するため、カム凸部83aの下端面や回動カム体85のフラット部が早期に損傷,破損等しやすくなる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、蓋体を全閉状態だけでなく全開状態でも確実に保持することができ、しかも、小さない力で手早く開閉することができ、長期間にわたって損傷,破損等することのない容器の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の容器は、上面に物品収容部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記容器本体と蓋体とを回動自在に連結するヒンジ手段とを備え、上記ヒンジ手段が、上記容器本体と蓋体とのいずれか一方に回動不能に固定される筒状の第1連結部と、上記容器本体と蓋体とのいずれか他方に回動不能に固定され上記第1連結部に相対回動自在に連結されかつ相対向状に配設される第2連結部と、上記第1連結部内にその軸心方向に沿って摺動自在にかつ上記第1連結部に回動不能に配設される可動部と、この可動部を第2連結部に向かって弾圧付勢する弾圧付勢部とで構成され、上記第2連結部と可動部とが、互いに相対向する対向面を有し、一方の対向面に複数の半球状の凸部が所定の間隔をあけて突設され、他方の対向面に、上記容器本体の上面を蓋体で閉蓋した閉状態および上記容器本体に対し蓋体を所定の角度回動させて開蓋した開状態で上記可動部の各凸部が着脱自在に位置決めされる複数の凹部が形成されているという構成をとる。
【発明の効果】
【0010】
すなわち、本発明の容器は、上面に物品収容部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記容器本体と蓋体とを回動自在に連結するヒンジ手段とを備えている。また、上記ヒンジ手段が、上記容器本体と蓋体とのいずれか一方に回動不能に固定される筒状の第1連結部と、上記容器本体と蓋体とのいずれか他方に回動不能に固定され上記第1連結部に相対回動自在に連結されかつ相対向状に配設される第2連結部と、上記第1連結部内にその軸心方向に沿って摺動自在にかつ上記第1連結部に回動不能に配設される可動部と、この可動部を第2連結部に向かって弾圧付勢する弾圧付勢部とで構成されている。そして、上記第2連結部と可動部とが、互いに相対向する対向面を有し、一方の対向面に複数の半球状の凸部が所定の間隔をあけて突設され、他方の対向面に、上記容器本体の上面を蓋体で閉蓋した閉状態および上記容器本体に対し蓋体を所定の角度回動させて開蓋した開状態で上記可動部の各凸部が着脱自在に位置決めされる複数の凹部が形成されている。したがって、本発明の容器では、蓋体を、上記容器本体の上面を蓋体で閉蓋した閉状態だけではなく、上記容器本体に対し蓋体を所定の角度回動させて開蓋した開状態でも位置決め固定することができ、開状態の蓋体が不用意に閉じることがなく、開状態を確実に保持することができる。しかも、上記一方の対向面に突設された各凸部は半球状に形成されているため、蓋体を閉状態から開状態に開蓋するときにも、また開状態から閉状態に閉蓋するときにも、上記各凸部が上記他方の対向面をスムーズに摺動し、上記蓋体を小さない力で手早く開閉することができる。しかも、弾圧付勢部による弾圧付勢力を、所定の間隔をあけて突設された複数の凸部で受け止めているため、各凸部に作用する弾圧付勢力を低減(少なくとも半減する)ことができるうえ、半球状の各凸部が上記他方の対向面をスムーズに摺動して上記各凸部や他方の対向面が長期にわたって損傷,破損等することがなく、耐久性が向上する。
【0011】
また、上記一方の対向面に突設された各凸部が、上記一方の対向面を有する可動部もしくは第2連結部を金型成形する際に、上記一方の対向面に上記所定の間隔をあけて複数の半球状の凹部を形成するとともに、インサート成形を利用して上記各凹部にそれぞれ球体を一体化したものであると、球体として、可動部もしくは第2連結部とは別体のもの、例えば金属製等の硬質のものを用いることができ、耐久性がさらに向上する。
【0012】
また、上記他方の対向面に形成された各凹部が、上記閉状態にあるときに上記各凸部を位置決めするための第1領域と、上記開状態にあるときに上記各凸部を位置決めするための第2領域とを有していると、上記両領域間の距離を適宜設定することで、上記閉状態と開状態間の回動角度を適宜設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。ただし、これに限定されるわけではない。
【0014】
図1および図2は本発明の容器の一実施の形態を示している。この実施の形態では、容器として、非フックピース型の化粧料容器を用いている。これらの図において、1は上面に平面視略四角形状の化粧皿収容凹部(物品収容部)1aと平面視略四角形状の化粧用具収容凹部1bとが左右並設状に形成されたプラスチック製の容器本体であり、上記化粧皿収容凹部1aに、化粧料2aが充填された化粧皿2が着脱自在に収容され、上記化粧用具収容凹部1bにパフ等の化粧用具(図示せず)が収容されている。
【0015】
また、上記容器本体1には、その後側壁11に、その左右両側壁部分11a,11bを残した状態で、後側面および上下両側面が開放された切欠き部12が切欠き形成されており、この切欠き部12に、後述する蓋体3の連結部16が回動自在に配設されている。上記後側壁11の右側壁部分11aには、これを貫通するようにして右側挿通孔13(図3参照)が穿設されており、この右側挿通孔13に、上記連結部16の連結ピン挿通孔16aに挿通されて上記連結部16を回動自在に支受する連結ピン6の一側部が挿通,固定されている(図4参照)。また、上記後側壁11の左側壁部分11bには、これを貫通するようにして左側挿通孔14(図5参照)が穿設されており、この左側挿通孔14に、後述するヒンジ手段4の第1ヒンジ部21が挿通,固定されている(図6参照)。
【0016】
3は上記容器本体1の上面を開閉自在に蓋するプラスチック製の蓋体であり、薄肉平板状の蓋板部15と、この蓋板部15の後端部から垂設される連結部16とからなっている(図7参照)。この連結部16の右端部には、その右側端面から延びる連結ピン挿通孔16aが形成されており、この連結ピン挿通孔16aに、上記連結ピン6の他側部が回動自在に挿通されている。また、上記連結部16には、その左端部に、その左端面から延びる係合孔17が形成されており、この係合孔17に、上記ヒンジ手段4の第2ヒンジ部22が挿通,固定されている。
【0017】
このような蓋体3は、その下面(閉蓋したときに、容器本体1の上面に対向する面)が上記容器本体1の上面に当接する閉位置(閉状態)と、上記容器本体1に対して所定の角度(この実施の形態では、約170°)に開蓋した開位置(開状態)とに姿勢保持することができ、これら両位置の間で回動自在になっている。
【0018】
上記容器本体1の後側壁11の左側挿通孔14,上記蓋体3の連結部16の係合孔17および上記ヒンジ手段4について、より詳しく説明すると、上記左側挿通孔14は円柱形状に形成されており、その内周面には、左側挿通孔14の軸心に沿って、右側開口から左右方向中間部付近まで延びる4本の係合用突条14a〜14dが突設されている(図8および図9参照)。これら各係合用突条14a〜14dは、上記左側挿通孔14の軸心を中心としてその周方向に略180°離れた一対の係合用突条14a,14bと、同様に、上記周方向に略180°離れた一対の係合用突条14c,14dとからなり、これら両対の係合用突条14a,14bおよび14c,14d同士を結ぶ仮想線(図8において、一点鎖線で表す)が直交していない。このような各係合用突条14a〜14dは、上記ヒンジ手段4の第1ヒンジ部21の各溝部27a(図12参照)に摺動自在に係合している。なお、この実施の形態では、上記各係合用突条14a〜14dは、上記周方向に等間隔に形成されていないが、等間隔に形成されていてもよい。
【0019】
また、上記係合孔17は略円柱形状に形成されており、上記連結部16の左端面から延びる円柱形状の外側孔部17aと、この外側孔部17aの右側端面の外周縁部近傍(外周縁部よりやや内側に入った部分)から内側に向かって先窄まり状に延びる略円錐台形状の連結孔部17bと、それ自体の左側端面に上記連結孔部17bが接続する円柱形状の内側孔部17c とからなっている。これら各孔部17a〜17c の軸心は同じに形成されている。
【0020】
上記外側孔部17aの内周面には、その軸心に沿って、右側開口から左右方向中間部より外側寄り部分まで延びる4本の係合用突条18a〜18dが突設されている(図10および図11参照)。これら各係合用突条18a〜18dは、上記左側挿通孔14の各係合用突条14a〜14dに対応する部分に突設されており、上記ヒンジ手段4の第2ヒンジ部22の各溝部34bに摺動自在に係合している。また、上記内側孔部17c の左端面には、上記ヒンジ手段4の第2ヒンジ部22の連結固定部45が係合,固定されている(図12参照)。
【0021】
上記ヒンジ手段4は、容器本体1と蓋体3とを相対回動自在に連結するものであり、図13〜図16に示すように、上記容器本体1の後側壁11の左側挿通孔14に回動不能に固定される第1ヒンジ部(第1連結部)21と、上記蓋体3の連結部16の係合孔17に回動不能に固定される第2ヒンジ部(第2連結部)22と、上記両ヒンジ部21,22を回動自在に連結するヒンジ軸23と、上記第1ヒンジ部21内に摺動自在に配設される可動部24と、上記第2ヒンジ部22に固定される固定部25と、上記第1ヒンジ部21内に配設されるコイルばね(弾圧付勢部)26とを備えている。また、上記両ヒンジ部21,22は、互いの軸心を一致させた状態で、かつ互いの開口部(すなわち、第1ヒンジ部21の右端開口部と第2ヒンジ部22の左端開口部)を対向させた状態で配置されている。
【0022】
上記第1ヒンジ部21は、上記容器本体1の後側壁11に回動不能に固定される円筒部27と、この円筒部27の左側開口部の内周面から突設された円環状突出部28とからなっており、上記円筒部27の外周面に、上記後側壁11の左側挿通孔14の各係合用突条14a〜14dに摺動自在に、かつ回動不能に係合する4本の溝部27aが、上記外周面の全長にわたって、かつ上記円筒部27の軸心方向に沿うようにして延びている。また、上記円筒部27には、その右側開口部から上記軸心方向に沿って延びる一対のガイド溝部29が相対向状に切欠き形成されており、上記可動部24の両ガイド部31に摺動自在にかつ回動不能に係合している。
【0023】
上記ヒンジ軸23は、互いの軸心を一致させて左端側から右端側へ向かって順次形成された頭部23a,大径部23b,中径部23c,小径部23dおよび加締め部23e(いずれも断面円形に形成されている)を有している。上記頭部23aは、第1ヒンジ部21の円環状突出部28の外部に、この円環状突出部28の外側面に当接するようにして配設されており、上記大径部23bは、円環状突出部28の中孔28aに回動自在に挿通されている。また、上記中径部23cは、上記可動部24の中央挿通孔24aの内径とほぼ同じ外径に形成されてこの中央挿通孔24aに摺動自在にかつ回動自在に挿通されており、上記小径部23dは、上記第2ヒンジ部22の本体部34の中央挿通孔34a,固定部25の中央挿通孔25aの内径とほぼ同一の外径に形成されている。
【0024】
また、上記加締め部23eは、その先端部分が上記本体部34の中央挿通孔34aから突出しているとともに、この中央挿通孔34aの先端テーパ孔部に対応した形状に加締められている。これにより、第2ヒンジ部22がヒンジ軸23に固定されており、その結果第1ヒンジ部21がヒンジ軸23の頭部23aと第2ヒンジ部22とによってヒンジ軸23から抜け止めされているとともに、上記両ヒンジ部21,22がヒンジ軸23を介して回動自在に連結されている。
【0025】
上記円筒部27内には、それ自体の中央にヒンジ軸23が挿通されたコイルばね26が左側に、それ自体の中央挿通孔24aにヒンジ軸23が挿通された可動部24が右側に配設されており、上記コイルばね26の左端を円環状突出部28の内側面に当接させるとともに右端を可動部24の左端面に当接させることにより、上記可動部24を第2ヒンジ部22側に弾圧付勢している。
【0026】
上記可動部24は略円柱形状に形成されており、その外周面から、上記第1ヒンジ部21の両ガイド溝部29に摺動自在にかつ回動不能に挿入される一対のガイド部41が相対向状に突設されている。これにより、上記可動部24が上記両ガイド溝部29内の範囲で第1ヒンジ部21の軸心方向に摺動自在になっている。
【0027】
また、上記可動部24には、その右端面(上記固定部25の左端面に対向する対向面)に一対の半球状凸部32,33が突設されている。これら両凸部32,33は、上記可動部24の軸心(すなわち、第2ヒンジ部22の軸心)を中心とする仮想円周上にあり、上記軸心を中心として周方向に180°離れて配置形成されている。この実施の形態では、上記両凸部32,33は、上記可動部24の右端面に形成した一対の半球状凹部24bにそれぞれ金属製等の球体32a,33aを固定したもので構成されている。このような両凸部32,33は、例えばインサート成形により成形することができる。すなわち、上記可動部24を成形する際に、これを成形するための金型(図示せず)内の所定の2個所(上記両凹部24bに対応する個所)にそれぞれ球体32a,33aを予めセットしておく。そして、金型内に溶融樹脂を充填する。これにより、上記可動部24を成形すると同時に、その両凹部24bに球体32a,33aを一体化し固定することができる。なお、インサート成形によらず、単に金型成形により、それ自体の右端面から両凸部32,33が一体的に突設された可動部24を成形してもよい。
【0028】
上記第2ヒンジ部22は、円柱状に形成された本体部34と、この本体部34の右端面から突設された一対の爪状の連結固定部35とを有している。これら両連結固定部35は径方向に拡縮可能になっており、上記連結固定部35の先端を上記係合孔17の内側孔部17c (の左側端面の開口部)に挿通することで、この内側孔部17c に係合,固定可能になっている。
【0029】
上記本体部34には、その外周面に、上記連結部16の係合孔17の各係合用突条18a〜18dに摺動自在にかつ回動不能に係合する4本の溝部34bが、上記外周面の全長にわたって、かつ上記本体部34の軸心方向に沿うようにして延びている。また、上記本体部34には、その左端面に、上記固定部25を収容しうる凹部36(すなわち、上記本体部34の左端部に円筒部36a)が形成されており、この円筒部36aに、その左側開口部からその軸心方向に沿って延びる一対のガイド溝部37が相対向状に切欠き形成されている。そして、これら両ガイド溝部37に上記固定部25のガイド部38が回動不能に係合している。また、上記本体部34には、その凹部36の奥面に一対の係合凹部34cが形成されており、これら両係合凹部34cに、上記固定部25の係合凸部25bが嵌合している。
【0030】
上記固定部25には、その外周面から、上記本体部34の両ガイド溝部37に回動不能に挿入される一対のガイド部38が相対向するようにして突設されており、これにより、上記固定部25が第2ヒンジ部22に回動不能に連結されている。また、上記固定部25には、その右端面から、上記本体部34の両係合凹部34cに嵌合する一対の係合凸部25bが突設されている。
【0031】
また、上記固定部25には、その左端面(すなわち、上記可動部24の右端面に対向する対向面)に、同一形状,同一寸法に形成された一対の凹部39,40が形成されている。これら両凹部39,40は、上記固定部25の軸心(すなわち、第2ヒンジ部22の軸心)を中心とする仮想円周上にあり、上記軸心を中心として周方向に180°離れて配置形成されている。また、上記両凹部39,40は、その中央底部に形成された断面円形のストレート孔部41,42と、このストレート孔部41,42の上端開口から開口部(上記左端面)へ向かうにつれて拡径する拡径部43,44とを備えており、これら各拡径部43,44は、外側に膨出する凸曲面状に形成されているとともに、一端がストレート孔部41,42の上端開口に滑らかに接し、他端が上記左端面に滑らかに接している。
【0032】
また、上記両凹部39,40が配置された仮想円周と、上記両球体32a,33aが配置された仮想円周とは同一に形成されている。したがって、上記両ヒンジ部21,22が所定の回動位置に回動すると、上記両球体32a,33aが両凹部39,40の拡径部43,44に接触する。ここで、所定の回動位置とは、上記蓋体3の閉位置と開位置とであり、上記両ヒンジ部21,22が閉位置に位置すると球体32aは拡径部43b(第1領域)に、球体33aは拡径部44a(第1領域)にそれぞれ位置決め状に係合し、開位置に位置すると球体32aは拡径部44b(第2領域)に、球体33aは拡径部43a(第2領域)にそれぞれ位置決め状に係合する。
【0033】
上記の構成において、上記容器本体1に対し蓋体3を(すなわち、上記第1ヒンジ部21に対し第2ヒンジ部22を)開位置側から閉位置側に(図17の矢印A方向参照)回動し、閉位置(図17に示す状態)にすると、両球体32a,33aの矢印A方向前方側の部分32b,33bが拡径部43b,44aに当接して位置決め状に係合し(図18および図19参照)、その状態でコイルばね26の付勢力で閉位置に保持される。つぎに、上記蓋体3を開蓋して閉位置から開位置側に(図20の矢印B方向参照)回動すると、上記係合が外れて両球体32a,33aが拡径部43,44から出て、コイルばね26の付勢力で付勢されながら本体部34の左端面を摺動する。そののち、上記蓋体3を開位置(図20に示す状態)にすると、両球体32a,33aが、上記と同様にして拡径部43a,44bに当接して位置決め状に係合し、その状態でコイルばね26の付勢力で開位置に保持される。
【0034】
このように、上記実施の形態では、上記蓋体3を閉位置だけではなく開位置でも位置決め固定することができるため、開蓋状態の蓋体3が不用意に閉じることがなく、開蓋状態を確実に保持することができる。しかも、上記可動部24の右端面に突設された両凸部32,33は半球状に形成されているため、蓋体3を開閉するときに上記両凸部32,33が上記右端面をスムーズに摺動し、上記蓋体3を小さな力で手早く開閉することができる。しかも、コイルばね26による弾圧付勢力を上記両凸部32,33で受け止めているため、上記両凸部32,33に作用する弾圧付勢力を半減することができるうえ、半球状の両凸部32,33がスムーズに摺動して上記両凸部32,33や右端面が長期にわたって損傷,破損等することがなくなる。しかも、上記両凸部32,33が、上記可動部24の右端面に形成した一対の半球状凹部24bに両球体32a,33aを固定したもので構成されているため、上記両球体32a,33aとして、金属製等の硬質のものを使用することができる。しかも、上記固定部25の左端面に形成した両凹部39,40に第1領域と第2領域を設けているため、上記両領域間の距離を適宜設定することで、上記閉状態と開状態間の回動角度を適宜設定することができる。
【0035】
図21は本発明の容器の他の実施の形態を示している。この実施の形態でも、容器として、非フックピース型の化粧料容器を用いている。図において、50は上面に中枠収容凹部50aが形成された(皿状に形成された)平面視略四角形状の容器本体であり、図22〜図26に示すように、略四角形枠状の周側壁51と、略四角形状の底壁52とを備えている。上記周側壁51には、その後壁に、左右両側壁部分51a,51b(すなわち、上記後壁の左右両端部から後方に向かって相対向状に延びる左右一対の側壁部分)と前側壁部分51cとを残した状態で上下貫通状に切欠かれた切欠き部53が形成されており、この切欠き部53に、後述する蓋体54の連結部60および後述する中枠55の支受壁68,69が収容されている。
【0036】
また、上記周側壁51は、その上面内周部が切欠き形成されており、この切欠き形成部56に、上記中枠55の鍔部63cが載置,支受されている。また、上記容器本体50の周側壁51には、その左右両側壁の内周面に、上記中枠55の周側壁63の左右両側面の各係合用凸部66に着脱自在に係合する複数個の係合用凹部57(右側側壁の2個の係合用凹部57と左側側壁の2個の係合用凹部57)(図21および図24では、左右両側壁にそれぞれ1つの係合用凹部57しか図示せず)が相対向状に形成されている。図22および図26において、58は上記容器本体50の後壁の上面から立設された凸条であり、その左右両側(上記凸条58の左右両側面と上記左右両側壁部分51a,51bの内側面との間の部分)に、上記中枠55の両連結片63aを挿通しうる隙間58aが形成されている。
【0037】
54は上記容器本体50の上面を開閉自在に蓋するプラスチック製の蓋体であり、図27〜図29に示すように、上記容器本体50の上面を覆う略四角形状の蓋本体59と、この蓋本体59の後端部から垂設される連結部60とからなっており、この連結部60が上記容器本体50の後端部の切欠き部53に回動自在に配設されている。
【0038】
上記連結部60には、その右端部にその右端面から内側に向かって一直線状に帯びるピン挿通孔60aが形成されており、このピン挿通孔60aに連結ピン(図示せず)の一側部が挿通されている。また、上記連結部60には、その左端部に係合孔17が形成されている。この係合孔17は、上記実施の形態における係合孔17と同様の構造をしており、その説明を省略する。図27において、61は上記蓋本体59の裏面に設けた凹部59aに接着,固定された鏡である。
【0039】
55は上記容器本体50の凹部50aに収容される中枠であり、図30〜図34に示すように、略四角形枠状に形成された周側壁63と、略四角形状に形成された底壁64と、上記周側壁63の内部を、化粧皿(図示せず)を収容する左側の化粧皿収容凹部63aと、化粧用具(図示せず)を収容する右側の化粧用具収容凹部63bとに仕切る仕切壁65とを備えている。上記周側壁63には、その上端部外周面から鍔部63cが突設されており、上記容器本体50の周側壁51の切欠き形成部56に載置,支受されている。また、上記周側壁63の左右両側面には、上記容器本体50の左右両側壁の各係合用凹部57に着脱自在に係合する複数個の係合用凸部66(右側面の2個の係合用凸部66と左側面の2個の係合用凸部66)が突設されている。
【0040】
上記化粧皿収容凹部63aには、その周側壁63のうちの左側壁の内側面から、上記化粧皿の左側壁に形成された凹部に着脱自在に係合する2つの凸部67aが突設されている。これら両凸部67aは、上記左側壁に形成された窓部67bの上面から垂下する2個の弾性片67cの下端部に突設されている。また、上記仕切壁65の左側面から、上記化粧皿の右側壁に形成された凹部に着脱自在に係合する2つ凸部67dが、上記両凸部67aと相対向状に突設されている。
【0041】
また、上記周側壁63のうちの後端壁には、その左右両端部から後方に向かって延びる左右一対の連結片63dを介して、相対向状に配設される左右一対の支受壁68,69が連結されている。上記両連結片63dは、上記容器本体50の後端部の両隙間58aに挿通されており、上記両支受壁68,69は、上記蓋体54の連結部60と上記容器本体50の左右両側壁部分51a,51bとの間に配設されている。このような両支受壁68,69のうち右側の支受壁68には、上記蓋体54の連結部60のピン挿通孔60aに対応する部分に、左右方向に貫通するピン挿通孔68aが穿設されており、上記連結ピンの他側部が挿通されている。
【0042】
また、左側の支受壁69には、上記係合孔17に対応する部分に、左右方向に貫通する左側挿通孔14が穿設されている。この左側挿通孔14は、上記実施の形態における左側挿通孔14と同様の構造をしており、その説明を省略する。そして、上記係合孔17および左側挿通孔14に、上記実施の形態におけるヒンジ手段4と同様の構造のヒンジ手段4が固定されている。この実施の形態の場合にも、上記実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0043】
なお、上記両実施の形態では、物品収容部として、上記容器本体1に化粧皿収容凹部1aを形成し、これに化粧皿を収容しているが、これに限定するものではなく、物品収容部として、各種形状のものを形成し、これにどのような物品を収容してもよい。また、図1〜図20に示す実施の形態では、上記容器本体1に化粧皿収容凹部1aを形成し、この化粧皿収容凹部1aに化粧皿2を収容しているが、上記容器本体1に化粧皿収容用の貫通孔を穿設し、この貫通孔に化粧皿2を着脱自在に収容してもよい。また、上記化粧皿収容凹部1aに化粧料2aを直接充填してもよい。図21〜図34に示す実施の形態でも、同様である。
【0044】
また、上記両実施の形態では、上記ヒンジ手段4を容器本体1の後側壁11の左右両側壁部分11a,11bのうち、左側壁部分11bにだけ設けているが、右側壁部分11aにだけ設けてもよいし、左右両側壁部分11a,11bの双方に設けてもよい。また、上記両実施の形態において、上記可動部24の右端面に一対の凹部39,40を形成し、上記固定部25の左端面に一対の凸部32,33を突設してもよい。また、上記固定部25を省略し、上記第2ヒンジ部22の本体部34に直接凹部39,40もしくは凸部32,33を形成してもよい。また、上記凸部32,33および上記凹部39,40は3個以上でもよい。
【0045】
また、上記両実施の形態では、上記両凹部39,40にそれぞれ第1領域および第2領域を設け、上記蓋体3を170°開蓋した位置を開位置としているが、上記両凹部39,40をストレート孔部41,42だけで構成し、上記蓋体3を180°開蓋した位置が開位置となるようにしてもよい。また、上記両実施の形態では、上記第1ヒンジ部21に、これとは別体に作製したコイルばね26を収容しているが、上記第1ヒンジ部21に、上記コイルばね26と同様の作用をする弾圧付勢部を一体成形してもよい。
【0046】
また、上記両実施の形態では、上記ヒンジ手段4として、図13〜図20に示す構造のものを用いているが、第1ヒンジ部(第1連結部)21,第2ヒンジ部(第2連結部)22,可動部24,コイルばね(弾圧付勢部)26等を備え、可動部24と固定部25とが対向する対向面の一方に一対の半球状の凸部32,33を形成し、他方に、上記両凸部32,33を位置決めしうる一対の凹部39,40を形成し、閉状態と開状態で上記両凸部32,33を両凹部39,40に位置決めするようにしたものであれば、どのような構造のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の容器の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】上記容器の平面図である。
【図3】容器本体の要部の断面図である。
【図4】上記容器本体と蓋体との連結状態を示す要部の断面図である。
【図5】上記容器本体の他の要部の断面図である。
【図6】上記容器本体と蓋体との連結状態を示す他の要部の断面図である。
【図7】蓋体の正面図である。
【図8】上記容器本体の要部の説明図である
【図9】上記容器本体の要部の断面図である。
【図10】上記蓋体の要部の説明図である。
【図11】上記蓋体の要部の断面図である。
【図12】上記容器本体と蓋体との連結状態を示す要部の説明図である。
【図13】ヒンジ手段の斜視図である。
【図14】上記ヒンジ手段の正面図である。
【図15】上記ヒンジ手段の側面図である。
【図16】上記ヒンジ手段の断面図である。
【図17】上記ヒンジ手段の作用を示す説明図である。
【図18】上記ヒンジ手段の作用を示す説明図である。
【図19】上記ヒンジ手段の作用を示す説明図である。
【図20】上記ヒンジ手段の作用を示す説明図である。
【図21】本発明の容器の他の実施の形態を示す断面図である
【図22】容器本体の平面図である。
【図23】上記容器本体の正面図である。
【図24】上記容器本体の断面図である。
【図25】上記容器本体の要部の断面図である。
【図26】上記容器本体の他の要部の断面図である。
【図27】蓋体の断面図である。
【図28】上記蓋体の右側面図である。
【図29】上記蓋体の左側面図である。
【図30】中枠の平面図である。
【図31】上記中枠の裏面図である。
【図32】上記中枠の右側面図である。
【図33】上記中枠の左側面図である。
【図34】上記中枠の断面図である。
【図35】従来例を示す斜視図である。
【図36】他の従来例を示す斜視図である。
【図37】ヒンジ装置を示す断面図である。
【図38】回動摺動カム体と回動カム体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1 容器本体
3 蓋体
4 ヒンジ手段
21 第1ヒンジ部
22 第2ヒンジ部
24 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に物品収容部が形成された容器本体と、上記容器本体の上面を蓋する蓋体と、上記容器本体と蓋体とを回動自在に連結するヒンジ手段とを備え、上記ヒンジ手段が、上記容器本体と蓋体とのいずれか一方に回動不能に固定される筒状の第1連結部と、上記容器本体と蓋体とのいずれか他方に回動不能に固定され上記第1連結部に相対回動自在に連結されかつ相対向状に配設される第2連結部と、上記第1連結部内にその軸心方向に沿って摺動自在にかつ上記第1連結部に回動不能に配設される可動部と、この可動部を第2連結部に向かって弾圧付勢する弾圧付勢部とで構成され、上記第2連結部と可動部とが、互いに相対向する対向面を有し、一方の対向面に複数の半球状の凸部が所定の間隔をあけて突設され、他方の対向面に、上記容器本体の上面を蓋体で閉蓋した閉状態および上記容器本体に対し蓋体を所定の角度回動させて開蓋した開状態で上記可動部の各凸部が着脱自在に位置決めされる複数の凹部が形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
上記一方の対向面に突設された各凸部が、上記一方の対向面を有する可動部もしくは第2連結部を金型成形する際に、上記一方の対向面に上記所定の間隔をあけて複数の半球状の凹部を形成するとともに、インサート成形を利用して上記各凹部にそれぞれ球体を一体化したものである請求項1記載の容器。
【請求項3】
上記他方の対向面に形成された各凹部が、上記閉状態にあるときに上記各凸部を位置決めするための第1領域と、上記開状態にあるときに上記各凸部を位置決めするための第2領域とを有している請求項1または2記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2007−143639(P2007−143639A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339128(P2005−339128)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000158781)紀伊産業株式会社 (327)