説明

容器

【課題】多角形状の開口部を有す容器体に嵌着される多角形状の蓋体においても片手による操作で簡単に容器本体から蓋体を取り外すことができる構造を備えた容器を提供する。
【解決手段】上面11を開口し、開口縁12にはフランジ部13が形成された合成樹脂シート製の多角形状の容器本体10と、その容器本体に開閉可能に設けられ、容器本体に対する閉鎖状態でフランジ部に外嵌可能な嵌合部21を外周縁22に有する合成樹脂シート製の多角形状の蓋体20とを備えた容器1であり、蓋体の嵌合部の周壁23には、平面視において嵌合部から外側へはみ出しかつ外方へ向かって膨らむ単一の屈曲可能な膨出部30が嵌合部の周壁の角部24に形成され、膨出部の下端両側縁31,32と嵌合部の周壁下端縁33,34との間には多角形状蓋体の外周方向の隣接する角部25,26に延びる平面視三角形状の一対のヒレ部35,36が接続形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関し、特に開口部を多角形状とする容器本体と蓋体とからなり片手で簡単に蓋体を外すことができる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、惣菜等の食品、その他の加工食品類を収容する包装用容器においては、多様な形状の容器とこれに対応した蓋体の形状が提案されている。包装容器とこれに被せられる蓋体の一般的な特徴として、包装容器本体の開口部にフランジ部が形成される。そして、蓋体の側に包装容器本体のフランジ部に係合可能な突部が設けられる。蓋体の突部が容器本体のフランジ部と係合して挟み込むことより、蓋体が容器本体に嵌着する構造である(特許文献1等参照)。通常、包装容器と蓋体の構造においては、流通、販売時の取り扱いを考慮して比較的強固に蓋体は容器本体に嵌着されている。そのため、喫食時に蓋体を容器本体から取り外そうとする際、片手で容器本体を握持しながら、蓋体を残りの手で掴んで剥がす動作が必要となっていた。
【0003】
しかし、事故や疾病等を考慮すると片手しか使うことができない状況は決して少ないことではない。また、高齢化に伴う身体能力の低下も問題視される。さらに、介護の現場を考えると、介護者も常時両手を自由に使えるとは限らない。そこで、近年のバリアフリー化への取り組みより、密着性を維持しながらもなるべく簡単に蓋体を容器本体から取り外すことができる容器の要望が高まっている。そして、できることなら片手の操作により蓋体を容器本体から取り外せればなお良いとされている。このような経緯から、密着性を維持しつつ片手だけでも蓋体を簡単に取り外すことができる容器の提案がなされている。
【0004】
例えば、蓋体の縁につまみを設けるとともに、つまみに対応する位置の蓋体にくぼみを設けた蓋体の容器がある(特許文献2参照)。あるいは、蓋体に設けられるつまみ(膨出部)の構造を改良することにより操作しやすくした容器も提案されている(特許文献3参照)。
【0005】
引用文献2、3等に代表される蓋体の構造を採用することにより、片手で蓋体を容器本体から取り外すという目的を達し得た。しかしながら、容器本体とこれに嵌着される蓋体との関係において、引用文献2では容器本体の開口部を円形または楕円形とする容器に形状が限られていた。引用文献3においては、開口部を円形とする形状の容器において一定の効果を発揮するものの、他の形状においては必ずしも満足する開けやすさには至っていなかった。ここで問題となるのが、容器本体と蓋体の形状である。昨今の多様な消費動向に対応するため、できるだけ多種類の容器や蓋体の形状が望まれる。これは内容物や容量等の多彩な商品展開、他商品との差別化、購入者や販売者への訴求性を重視する必要性によるためである。現状、片手で簡単に開けることが可能な容器はほとんど開口部が円形であり、開口部を多角形あるいは複雑な形状とする容器では十分に浸透していなかった。
【0006】
そこで、容器形状の多様化を図ると同時に、多角形容器に見られる複雑な形状の蓋体においても片手で簡単に取り外すことができる容器の構造の改善が急務となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−122315号公報
【特許文献2】特開2005−162302号公報
【特許文献3】特開2005−247320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、多角形状の開口部を有す容器体に嵌着される多角形状の蓋体においても片手による操作で簡単に容器本体から蓋体を取り外すことができる構造を備えた容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、請求項1の発明は、上面を開口し、開口縁にはフランジ部が形成された合成樹脂シート製の多角形状の容器本体と、その容器本体に開閉可能に設けられ、容器本体に対する閉鎖状態で前記フランジ部に外嵌可能な嵌合部を外周縁に有する合成樹脂シート製の多角形状の蓋体とを備えた容器において、前記蓋体の嵌合部の周壁には、平面視において前記嵌合部から外側へはみ出しかつ外方へ向かって膨らむ単一の屈曲可能な膨出部が前記嵌合部の周壁の角部に形成されているとともに、前記膨出部の下端両側縁と前記嵌合部の周壁下端縁との間には前記多角形状蓋体の外周方向の隣接する角部に延びる平面視三角形状の一対のヒレ部が接続形成されていることを特徴とする容器に係る。
【0010】
請求項2の発明は、前記膨出部の外面には、その内部空間に向かって突出する窪み部が形成されている請求項1に記載の容器に係る。
【0011】
請求項3の発明は、前記膨出部の前記蓋体中央部側には、その膨出部の頂部よりも高い頂部を有するとともに、前記膨出部より小さい小膨出部が形成されている請求項1または2に記載の容器に係る。
【0012】
請求項4の発明は、前記膨出部に近接して、前記膨出部よりも前記蓋体中央側には、ノッチ状の凹部が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0013】
請求項5の発明は、前記フランジ部に外嵌する前記嵌合部は複数の突状部を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器に係る。
【0014】
請求項6の発明は、前記突状部の突出量が前記嵌合部に応じて異なる突出量としている請求項5に記載の容器に係る。
【0015】
請求項7の発明は、前記突状部の突出量が該突状部の端に向けてテーパー状に減少している請求項5または6に記載の容器に係る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係る容器によると、上面を開口し、開口縁にはフランジ部が形成された合成樹脂シート製の多角形状の容器本体と、その容器本体に開閉可能に設けられ、容器本体に対する閉鎖状態で前記フランジ部に外嵌可能な嵌合部を外周縁に有する合成樹脂シート製の多角形状の蓋体とを備えた容器において、前記蓋体の嵌合部の周壁には、平面視において前記嵌合部から外側へはみ出しかつ外方へ向かって膨らむ単一の屈曲可能な膨出部が前記嵌合部の周壁の角部に形成されているとともに、前記膨出部の下端両側縁と前記嵌合部の周壁下端縁との間には前記多角形状蓋体の外周方向の隣接する角部に延びる平面視三角形状の一対のヒレ部が接続形成されているため、多角形状の開口部を有す複雑な形状の容器本体に嵌着される多角形状の蓋体においても片手による操作で簡単に容器本体から蓋体を取り外すことが可能である。そして、昨今の多様な消費動向に対応し、内容物や容量等の多彩な商品展開、他商品との差別化、購入者や販売者への訴求性につながる容器や蓋体の形状においても蓋体の開けやすさを実現することができる。
【0017】
請求項2の発明に係る容器によると、請求項1の発明において、前記膨出部の外面には、その内部空間に向かって突出する窪み部が形成されているため、膨出部の構造強度が確保される。加えて、窪み部は膨出部の表裏双方における指の乗せ位置を示すとともに、膨出部を指でつまみ上げるときのつまみ部位となる。
【0018】
請求項3の発明に係る容器によると、請求項1または2の発明において、前記膨出部の前記蓋体中央部側には、その膨出部の頂部よりも高い頂部を有するとともに、前記膨出部より小さい小膨出部が形成されているため、膨出部を屈曲させるための力を加えるべき位置を示唆するとともに屈曲時の始点ともなる。
【0019】
請求項4の発明に係る容器によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記膨出部に近接して、前記膨出部よりも前記蓋体中央側には、ノッチ状の凹部が形成されているため、ノッチ状の凹部が蓋体の応力を集中させる部位となり、蓋体を撓ませて屈曲変形させやすくすることができる。
【0020】
請求項5の発明に係る容器によると、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発明において、前記フランジ部に外嵌する前記嵌合部は複数の突状部を有するため、容器本体と蓋体の嵌め合わせが強固となり不用意な脱離が回避される。
【0021】
請求項6の発明に係る容器によると、請求項5の発明において、前記突状部の突出量が前記嵌合部に応じて異なる突出量としているため、蓋体を取り外す際に容器本体のフランジ部から蓋体の嵌合部を離れやすくすることができる。
【0022】
請求項7の発明に係る容器によると、請求項5または6の発明において、前記突状部の突出量が該突状部の端に向けてテーパー状に減少しているため、蓋体を容器本体から取り外す際、蓋体が容器本体から離れようとする順番を考慮して嵌合部の突状部と容器本体のフランジ部との間の接触抵抗を徐々に減らすことができ、総じて容器本体から円滑に蓋体を離脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係る容器の斜視図である。
【図2】膨出部の拡大平面図である。
【図3】膨出部の拡大斜視図である。
【図4】容器本体と蓋体の嵌合状態を示す断面図である。
【図5】蓋体の横断面図である。
【図6】蓋体の平面図である。
【図7】図6のX−X線の断面図である。
【図8】蓋体を取り外すときの平面図である。
【図9】図8のY−Y線の断面図である。
【図10】他の実施例に係る容器の蓋体の平面図である。
【図11】さらに他の実施例に係る容器の蓋体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1の全体斜視図を用い、請求項1をはじめとする発明に規定した容器について説明する。容器1とは、多角形状の容器本体10とこれに嵌合される多角形状の蓋体20とを備える。すなわち、容器本体と蓋体はともに平面視において多角形状を成す。図示実施例では多角形状として平面視で四角形の長方形形状を成す容器を開示する。なお、多角形状とは角部分が辺同士により接合されている形態に加え、辺同士の接合部分が湾曲状に面取りされた形態も含まれる。
【0025】
容器本体10は上面11を開口して開口部17を成し、開口部17の開口縁12にはフランジ部13が形成される。フランジ部13の周囲には該フランジ部の外側を囲むフランジ壁部18も設けられる。符号14は容器本体の内部、15は容器壁部、16は容器底部であり、容器構造を成している。多角形状の蓋体20は容器本体10と開閉可能に設けられており、容器本体10に対し蓋体が閉鎖状態であるとき、容器本体のフランジ部に外嵌可能な嵌合部21を外周縁22に有する。
【0026】
多角形状の容器本体10及び多角形状の蓋体20は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等、さらにはポリ乳酸等の生分解性樹脂の熱可塑性樹脂のシート(合成樹脂シート)を真空成形により所定形状に成形して得ることができる。樹脂シートの厚さは適宜ではあるものの、概ね1mm以下の厚さである。容器本体と蓋体の組み合わせにおいて、合成樹脂シートの原料樹脂を同一種類としても異なる種類としてもよい。樹脂の種類は用途、内容物、包装対象により適宜選択される。
【0027】
蓋体20の嵌合部21に設けられた周壁23には、平面視において嵌合部21から外側(紙面手前側)へはみ出し、かつ蓋体の外方へ向かって膨らむ膨出部30が備えられる。蓋体20は合成樹脂シートから成形されるため、当該蓋体に備えられる膨出部30も樹脂弾性により屈曲変形可能に構成される。膨出部30は、本発明の蓋体20において嵌合部21の周壁23,23同士の接合箇所となる角部24に一箇所のみ形成される。膨出部30の作用は後記するように、蓋体20を容器本体10から取り外すときに用いられる。特に、片手で簡単に容器を開けやすくすることが本発明の主眼であることから膨出部30の配置数を単一としている。膨出部30は蓋体の取り外し時に供されることから操作部ということもできる。
【0028】
膨出部30の下端両側縁(左側縁31,右側縁32)と嵌合部21の周壁下端縁(下端縁33,34)との間には、平面視三角形状の一対のヒレ部(左ヒレ部35,右ヒレ部36)が接続形成される。より詳しく述べると、図示のとおり膨出部30の左側縁31から多角形状蓋体20の左周り外周方向の隣接する角部25に向かう下端縁33に左ヒレ部35が形成される。同様に膨出部30の右側延32から同蓋体20の右周り外周方向の隣接する角部26に向かう下端縁34に右ヒレ部36が形成される。
【0029】
蓋体20において膨出部30が設けられている角部24とその両側(外周方向左右)の角部25,26との間に形成されたヒレ部35,36の大きさについては膨出部30の下端両側縁を包含しつつ平面視三角形状を構成することが望まれる。そのため、膨出部左右のヒレ部35,36は膨出部30の動きに合わせて角部24とその両側の角部25,26を引き寄せることができる。なお、ヒレ部の大きさを過大とすると、単位面積当たりの合成樹脂シートからの蓋体の生産量が減少するため、蓋体及び膨出部の大きさ並びに形状を考慮して設定される。
【0030】
図示の蓋体20の例では、中央部には蓋面部27が形成され蓋段部28により嵌合部21からかさ上げされている。蓋段部28と外周縁22には周壁面部29が設けられる。さらに、蓋段部28と周壁面部29との間に装飾性とともに構造強度を高めるための周設段部50が備えられる。また、嵌合部21の周壁23には後記する突状部60が形成されている。
【0031】
図2及び図3の主要部拡大図を用い、膨出部30の詳細を説明する。実施例の膨出部30は側面視において蓋体20の蓋面部27側(蓋体上側)に突出した半球形状に形成される。そして、請求項2の発明に規定するように、膨出部30の外面40には、当該膨出部の内部空間(蓋体下側)に向かって突出する窪み部41が形成されている。膨出部30の突出方向と窪み部41の突出方向は互いに異なることから、膨出部30の構造強度が確保される。加えて、窪み部41は膨出部30の表裏双方における指の乗せ位置を示す役目を有する。同時に、膨出部30を指でつまみ上げるときのつまみ部位となる。
【0032】
次に、請求項3の発明に規定するように、膨出部30の蓋体20の中央部側となる蓋面部27側には、膨出部30の頂部42よりも高い頂部43を有するとともに、当該膨出部30よりも小さい小膨出部44が形成されている。膨出部30に小膨出部44を設けた理由は、膨出部30の操作の円滑化のためである。当該容器1において蓋体20を取り外そうとするとき、蓋体20の膨出部30を操作する。この場合、膨出部30に小膨出部44がある場合、心理的に人は指を小膨出部44に乗せるとともに、突状物である同小膨出部44を押さえ込もうとする。そこで、蓋体20を取り外そうとする人に対し、小膨出部44は膨出部30を屈曲させるための力を加えるべき位置を示唆するとともに屈曲時の支点(起点)ともなり得る。
【0033】
さらに、請求項4の発明に規定するように、膨出部30に近接して、当該膨出部よりも蓋体20の中央部側となる蓋面部27側には、ノッチ状(V字状)の凹部51が形成されている。この実施例にあっては、ノッチ状の凹部51は、蓋段部28と周壁面部29との間に設けられた周設段部50において膨出部30との最短位置に形成される。蓋体20を取り外そうとして膨出部30を操作する場合、前述のとおり小膨出部44を押し込む等により、膨出部30自体を上方に反らすこととなる。この場合、ノッチ状の凹部51の位置が蓋体の応力を集中させる部位に形成されたため、蓋体を撓ませて屈曲変形させることが比較的容易となる。屈曲の様子は後出の図8等が参照される。
【0034】
容器1の容器本体10と蓋体20との嵌合について、図4の拡大断面図を用い説明する。実施例の構造では、蓋体20の周壁面部29が容器本体10のフランジ部13の上面となるフランジ面部13sに面接している。そこで、蓋体20の外周縁22の嵌合部21に立設されている周壁23はフランジ部13のフランジ壁部18に外側から被さり外嵌している。ここで、請求項5の発明に規定するように、フランジ部13に外嵌する嵌合部21(周壁23)には、複数の突状部60が備えられる(後記図5参照)。図示のように、突状部60の突出部69はフランジ壁部18の下端18eに達することにより、蓋体20は容器本体10に嵌着される。こうして容器本体と蓋体の嵌め合わせは強固となり不用意な脱離が回避される。突状部60は蓋体の外周方向に沿って直線状に形成されているため突条部ということができる。
【0035】
しかしながら、容器本体10と蓋体20との嵌合を単に強固とするだけでは、必要な際、特には片手による操作で簡単に容器本体10から蓋体20を取り外すことが困難である。そこで、発明の目的に合致させるべく、図5の蓋体20の横断面図に開示するように、蓋体20の形状に対応して複数の突状部60(突条部)を周壁に設けている。
【0036】
図5の例では、複数ある突状部60は四角形状の蓋体20の形状を考慮して蓋体の角部に設けられる。むろん、蓋体の多角形状によっては周壁の角部の他に中央とすることもできる。嵌合部21の周壁23に形成される複数の突状部60の突出量(突出部69の高さ)はいずれも同様とすることに加え、請求項6の発明に規定するように、突状部60が設けられている嵌合部21の周壁23の位置に応じて異なる突出量としている。そして、膨出部30が形成された角部24に設けられている第1突状部61の突出量Dp1及び同角部と対角方向側の角部24iに設けられている第3突状部63の突出量Dp3は、角部24の両側(外周方向左右側)の角部25,26に設けられている第2突状部62の突出量Dp2よりも大とされている(Dp1>Dp2,Dp3>Dp2)。この例では第1突状部61の突出量Dp1と第3突状部63の突出量Dp3を同一としている。
【0037】
実施例の四角形状の蓋体20の場合、膨出部30から蓋体は持ち上げられ、容器本体10から取り外される。後記するように、膨出部30付近の角部24に形成されている第1突状部61は最初にフランジ部13から離れる。次に角部24の左右の第2突状部62がフランジ部13から離れる。最後に角部24i付近の周壁23に形成された第1突状部61がフランジ部13から離れる。
【0038】
四角形状の蓋体20における突状部60がフランジ部13から離れる順番を勘案すると、第3突状部63は蓋体20自体の回動の支点となるため、同第3突状部63は長くフランジ部13との係合状態を維持させる必要がある。これに対し各第2突状部62,62は素早くフランジ部13から離れる必要があるため、第1突状部61並びに第3突状部63よりも突状部の突出量を抑えて浅く形成している。このように、個々の突状部の突出量は、多角形状の蓋体の形状に応じ蓋体の取り外しやすさ、容器の大きさ等を考慮して具体的に規定される。
【0039】
さらに、請求項7の発明に規定するように、突状部の突出量を当該突状部の端に向けてテーパー状に減少させている。図示実施例では、前述の突状部の突出量の大小と合わせて第2突状部62,62のそれぞれについて、膨出部30を向く突状部の突条端部62e,62eに角度T1で傾斜する傾斜部65,65が形成される。突状部にテーパー状の傾斜部65,65を形成することにより、蓋体20を容器本体10から取り外す際、蓋体20が容器本体10から離れようとする順番を考慮して蓋体20の嵌合部21に設けられた突状部60と容器本体のフランジ部13との間の接触抵抗を徐々に減らすことができ、容器本体10からの蓋体20の円滑な離脱が可能となる。
【0040】
図6ないし図9を用い、膨出部の操作とこれに連動するヒレ部の動きを説明する。図6の平面図は容器本体10に蓋体20が外嵌しており、未だ膨出部30が操作されていない状態の蓋体20である。図7は図6の凹部51、小膨出部44、及び膨出部30を左右方向に二分割する位置(X−X線)における縦断面図である。図9のY−Y線における縦断面図もX−X線の分割と同様である。図4の開示と同様に、図7でも蓋体20の嵌合部21の周壁面部29は容器本体10のフランジ部13の上面となるフランジ面部13sに面接しており、容器1の上面11(開口部17)が封止される。同図の縦断面図の向きのとおり、突状部60のうち第1突状部61の突出部69がフランジ部13の周囲に備えられたフランジ壁部18の下端18eに係合している。
【0041】
図8の平面図は蓋体20を容器本体10から取り外そうとする場合、膨出部30の窪み部41を目安に当該膨出部は上下から指で挟まれ、矢印F1の向きに膨出部30の端部39が引き上げられる。また矢印F1の膨出部30の動きとともに小膨出部44を押し込むことにより、矢印F2に従い周壁面部29の凹部51と小膨出部44をつなぐ屈曲部位29oに応力が集中して同部位は谷折れとなる。そこで、図9の断面図からわかるように、屈曲部位29oを回動の支点にして膨出部30はつまみ上げられ、第1突状部61の突出部69はフランジ壁部18から離れる(矢印F1,F2参照)。
【0042】
図示実施例の蓋体20は、撓み変形に対応するため周設段部50を備えている。このため、蓋体上部の蓋面部27から下方の周壁23にかけて多段状の構成である(図4参照)。蓋体自体の樹脂弾性を考慮しても膨出部30の操作に連動して蓋体の多段の部位は曲がりにくい。そこで、膨出部30及び屈曲部位29o近傍であり、階段状を成す周設段部50にも応力が集中する。周設段部50にノッチ状の凹部51が設けられたことにより周設段部50は膨出部30の屈曲に応じて谷折れ容易となる。つまり、凹部51は意図的に応力を集中させる部位となる。
【0043】
蓋体20の外周縁22は既述の矢印F1,F2の動きにより屈曲部位29oで谷折れとなることに伴い、外周縁22に設けられた嵌合部21の周壁23,23及び周壁面部29にも変形が生じる。ここで前述のとおり、膨出部30の下端両側縁(左側縁31,右側縁32)と嵌合部21の周壁下端縁(下端縁33,34)との間に接続形成された平面視三角形状の一対のヒレ部(左ヒレ部35,右ヒレ部36)に膨出部30の屈曲変形が伝わり、図8,9の矢印F3の向きのとおり、当該一対のヒレ部35,36は膨出部30側に引っ張られる。そして、左ヒレ部35と接続している下端縁33を通じて角部24の左側の角部25と、右ヒレ部36と接続している下端縁34を通じて角部24の右側の角部26の両方も同調して膨出部30側に引き寄せられる(矢印F4参照)。
【0044】
屈曲部としての単一の膨出部30を指で持ち上げて蓋体20を容器本体10から取り外そうとする際、膨出部30が屈曲されて上向きの力が生じ、当該膨出部における蓋体20と容器本体10との嵌合は解除される。当該上向きの力は多角形状の蓋体20(実施例では四角形)の周壁23,23に形成された平面視三角形状の一対のヒレ部35,36を介して蓋体の外周方向に一気に伝播される。そこで蓋体20の外周縁22や周壁面部29に変形が生じ、容器本体10のフランジ部13と蓋体20の嵌合部21との嵌合係着は嵌合部21がある周壁23の角部24を始点に容器本体の周方向にフランジ部13を伝わりながら連続的に解除される。こうして、片手の一回の操作によりワンタッチで容器1は簡単に開封され、蓋体20は容易に取り外される。
【0045】
図10は第2実施例に係る蓋体20Aの平面図である。同実施例は多角形状として五角形を開示する。蓋体20Aが嵌合する容器本体(図示せず)は蓋体の形状に合わせて上面を五角形状の開口とする容器形状であり鉢型や椀型、あるいは寸胴型である。蓋体20Aの単一の屈曲可能な膨出部30は角部24aに設けられている。同膨出部30の下端両側縁31,32と嵌合部21の周壁下端縁33,34との間にも、角部24aから、当該蓋体20Aの外周方向の隣接する角部25a,26aに延びる平面視三角形状の一対のヒレ部35a,36aが接続形成されている。
【0046】
また、蓋体20Aの嵌合部21aの周壁23aにおいて、図示しない容器本体のフランジ部に外嵌する突状部60として第1突状部61a、第2突状部62a、第3突状部63aが形成される。第2実施例の蓋体20Aでは、第2突状部62aの突出量をその端に向けてテーパー状に減少させて形成している。また同実施例では、蓋面部27と周壁面部29との間に周設段部50aが備えられ、そのうち、膨出部30に近接して同膨出部よりも蓋体中央側にノッチ状の凹部51aが形成されている。膨出部30及び小膨出部44等の構造は、既述の第1実施例の蓋体20と同様である。当該蓋体20Aを容器本体から取り外す際の膨出部30並びにその周囲のヒレ部、周壁等の動作態様は既述の第1実施例に準ずる。
【0047】
図11は第3実施例に係る蓋体20Bの平面図である。同実施例は多角形状として三角形を開示する。中でも、ルーロー多角形とした三角形の開示である。蓋体20Bが嵌合する容器本体(図示せず)は蓋体の形状に合わせて上面を三角形状の開口とする容器形状であり鉢型や椀型、あるいは寸胴型である。蓋体20Bの単一の屈曲可能な膨出部30は角部24bに設けられている。同膨出部30の下端両側縁31,32と嵌合部21bの周壁下端縁33,34との間にも、角部24bから、当該蓋体20Bの外周方向の隣接する角部25b,26bに延びる湾曲した平面視三角形状の一対のヒレ部35b,36bが接続形成されている。
【0048】
また、蓋体20Bの嵌合部21bの周壁23bにおいて、図示しない容器本体のフランジ部に外嵌する突状部60として第1突状部61b及び第2突状部62bが形成される。この例の周設段部50bは、蓋面部27と周壁面部29との間に備えられているのではなく、外周縁22bに沿う周壁面部29に形成されている。ノッチ状の凹部51bは、膨出部30に近接して同膨出部よりも蓋体中央側に形成されている。膨出部30及び小膨出部44等の構造は、既述の第1実施例の蓋体20と同様である。当該蓋体20Bを容器本体から取り外す際の膨出部30並びにその周囲のヒレ部、周壁等の動作態様は既述の第1実施例に準ずる。
【0049】
これまでに図示し、詳述した第1ないし第3実施例の容器における蓋体20,20A,20Bの構造を適用すると、多角形状の開口部を有す複雑な形状の容器本体に嵌着される多角形状の蓋体においても片手による操作で簡単に容器本体から蓋体を取り外すことができる。それゆえ、包装容器のバリアフリー化に叶う。そして、蓋体の開けやすさを実現しつつ、昨今の多様な消費動向に対応し、内容物や容量等の多彩な商品展開、他商品との差別化、購入者や販売者への訴求性につながる容器や蓋体の提案が可能である。なお、ノッチ状の凹部の位置、突状部の位置及び個数、突状部の突出量、突状部のテーパー状の減少部位の形成等は、容器の形状、大きさ、用途等を勘案して最適に選択され適用される。このため、図示し詳述した実施例の構成のみには限定されない。
【符号の説明】
【0050】
1 容器
10 容器本体
11 上面
12 開口縁
13 フランジ部
18 フランジ壁部
20 蓋体
21 嵌合部
22 外周縁
23 周壁
24,25,26 角部
30 膨出部
31 左側縁(下端両側縁)
32 右側縁(下端両側縁)
33,34 周壁下端縁(下端縁)
35 左ヒレ部(ヒレ部)
36 右ヒレ部(ヒレ部)
40 膨出部の外面
41 窪み部
44 小膨出部
50 周設段部
51 凹部
60 突状部(突条部)
61 第1突状部
62 第2突状部
63 第3突状部
65 傾斜部
69 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開口し、開口縁にはフランジ部が形成された合成樹脂シート製の多角形状の容器本体と、その容器本体に開閉可能に設けられ、容器本体に対する閉鎖状態で前記フランジ部に外嵌可能な嵌合部を外周縁に有する合成樹脂シート製の多角形状の蓋体とを備えた容器において、
前記蓋体の嵌合部の周壁には、平面視において前記嵌合部から外側へはみ出しかつ外方へ向かって膨らむ単一の屈曲可能な膨出部が前記嵌合部の周壁の角部に形成されているとともに、前記膨出部の下端両側縁と前記嵌合部の周壁下端縁との間には前記多角形状蓋体の外周方向の隣接する角部に延びる平面視三角形状の一対のヒレ部が接続形成されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記膨出部の外面には、その内部空間に向かって突出する窪み部が形成されている請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記膨出部の前記蓋体中央部側には、その膨出部の頂部よりも高い頂部を有するとともに、前記膨出部より小さい小膨出部が形成されている請求項1または2に記載の容器。
【請求項4】
前記膨出部に近接して、前記膨出部よりも前記蓋体中央側には、ノッチ状の凹部が形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の容器。
【請求項5】
前記フランジ部に外嵌する前記嵌合部は複数の突状部を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の容器。
【請求項6】
前記突状部の突出量が前記嵌合部に応じて異なる突出量としている請求項5に記載の容器。
【請求項7】
前記突状部の突出量が該突状部の端に向けてテーパー状に減少している請求項5または6に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−91832(P2012−91832A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241140(P2010−241140)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(593215829)アテナ工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】