説明

容量可変の容器

【課題】内容物に触れる外気の置換量を少なくし、使いやすい可変容器を可能にする。
【解決手段】円筒容器15の内側面に円環状のシーリング材17で密着させながら上下に移動される可動蓋16で容量可変の空間が形成され、内容物を出すための口24に開閉の栓体19を有する長い管状部21が中心軸と一致させて可動蓋に設けられ、円筒容器の上部の開口部23を密閉して覆い管状部に密着する孔20を中央に有する弾性変形蓋18と可動蓋で第2の空間が形成される。容量可変の空間と第2の空間の間のシーリング材による密着を上下移動しやすい固さに抑え、弾性変形蓋の剛性と管状部との摩擦を比較的小さくする。容量可変の空間から管状部に内容物が移動しやすいように可動蓋の下面が下方向に径が連続的に大きくなる曲面にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容量を可変して密閉できる容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コーヒーなどの粉体を密閉して保存するには、蓋を容器に密着させるシーリング材と固定機構を有してガラス材で構成された容器が一般に使用されている。広い面積でシーリング材を上下から強く挟むことで密閉性に優れているが、内容物を出し入れする時に口が大きく開くことで外気が多く入り、また、内容物が減っただけ容器の中での空気の量が増える。容器から内容物を出すには通常スプーンを必要とする。
【0003】
粉体などの量に応じて内容量を可変して密閉保存する容器として、特許文献1で示されるものがある。図3で示すように、円筒状の容器1に内接し、ねじが切られた管状の軸2に貫通されて上下に移動する底上げ盤3で内容量を可変する。内容物を出し入れし、密閉するための中蓋4、プレート5、および上蓋6、さらに底上げ盤3にシーリング材のリング7を配置する。しかし、内容物を出し入れする時に口8が大きく開いて外気との置換量が大きく、構造が複雑で、底上げ盤3を回して内容量を可変するための操作が煩わしい。また、内容物を直接出すと量がばらつく。
【0004】
また、内容量を可変して密閉保存する容器として、特許文献2で示されるものがある。ねじが上の外側部と下の内側部に切られた円筒状の外容器の中に上下に変形可能な蛇腹状内容器が配置され、下の外側部のねじに合わして回転される底蓋で蛇腹状容器の底を上下させて内容量を変化させ、上の外周部のねじに合わした上蓋で密閉する。この構成においても、内容物を出し入れする時に口が全開して外気との置換量が大きく、構造が複雑で、内容量を可変するための操作が煩わしい。また、内容物を直接出すと量がばらつく。
【0005】
また、内容量を可変して密閉保存する容器として、特許文献3で示されるものがある。図4で示すように、円筒状の容器9の内周面にパッキン10、11を密着させて可動する移動蓋12が設けられ、移動蓋12の中央部には開口13が形成されている。移動蓋12が中心軸から傾くと密閉が破れるため、パッキン10、11の箇所を増やして傾きにくくしたり、密閉性を上げるためにパッキン10、11で固く密閉すると移動蓋12の移動させるのに大きい力が必要になる。また移動蓋12が容器9の底に近くなると、開口13が容器9に隠れ、内容物を出しにくくなり、移動蓋12の上に出来る大きな窪みに埃などが入りやすくなる。移動蓋12を容器9から外れさせないためだけに、ストッパーリング14が容器に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3076298号
【0007】
【特許文献2】特開2000−190976
【0008】
【特許文献3】公開実用新案公報 昭58−55028
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の容量可変の容器は、密閉する蓋の移動を固くしなくても密閉が破れにくく、外気との置換量が少なく、容器から直接に必要量の内容物を出すことができる、という複数の課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1においては、上部と下部に開口部と底が形成された円筒容器の内側面に密着しながら上下に移動する可動蓋と円筒容器の底との間の空間の内容量を可変する。可動蓋には中心軸の位置に管状部が形成され、容量可変の空間を外気に開放する。管状部の上部の口に栓部を設けることで容量可変の空間を外気から閉じる。
【0011】
可動蓋の下部の円形状の外形部にシーリング材が密着して配置される。円筒容器の上部の開口部が弾性変形蓋で覆われ、可動蓋が軸方向に移動できるように弾性変形蓋の中央に孔が形成されて管状部が通され、管状部の外側に密着される。可動蓋と弾性変形蓋の間に外気から閉じた第2の空間が形成される。
【0012】
請求項2においては、弾性変形蓋の厚さを中央の孔の近傍で相対的に薄くすることで、動く管状部との摩擦を小さくし、変形しやすくする。
【0013】
請求項3においては、管状部が上部の口の近傍から下方向に同じ外径の円筒形状にされて、弾性変形蓋の中央の孔と管状部との摩擦と密閉を同じにする。
【0014】
請求項4においては、管状部の上部に同心円状の突出部を設け、栓体による密着性の向上と、可動蓋の手による移動を容易にする。
【0015】
請求項5においては、密着性と移動しやすさを確保するため、円環状のシーリング材の中心軸を含む面での断面形状をW字形状にする。W字形状の上側が中心方向に向くように90度回転された形状にされる。W字形状の中間の凸部が、移動蓋の外形部の中間の円形状の凹部に嵌め込まれ、外形部の上下の面がW字形状の内側の面で密着される。W字形状のシーリング材は比較的薄くされる。
【0016】
請求項6においては、粉体などの内容物が管状部に入り易いように、管状部の内面から連続する可動蓋の下面が下方向に連続的に径が大きくなる中心軸を回転対称軸とする曲面形状にされる。
【0017】
請求項7においては、構成を強固にする。長い管状部が傾いても大きい力が全て弾性変形する部分に加わらないように、中央に孔が設けられて中央近傍で弾性変形蓋が弾性変形できるための間隔を有する樹脂などの固いカバー蓋が弾性変形蓋に重ねられて配置される。
【発明の効果】
【0018】
2箇所のシールで密閉性を向上し、細長く径の小さい管の口から内容物を出すことで外気と容器内の気体との置換量を少なくして、コーヒー粉などの内容物の酸化や吸湿、および香りの変化を抑えて保存できる。
【0019】
内容量を変える可動蓋を動かす操作が固すぎず、傾けて管状部の口から直接内容物を出すことができ、出す量を制御できることで扱いが簡単になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の容量可変の容器の構成を斜視図で示す。
【図2】本発明の容量可変の容器の断面図を示す。
【図3】従来の内容量を可変する容器の断面図を示す。
【図4】従来の内容量を可変する容器の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の容量可変の容器を説明するため、以下の実施例で記述する。
【実施例】
【0022】
図1は、本発明の容量可変の容器の構成を斜視図で示すものである。円筒容器15、可動蓋16、シーリング材17、弾性変形蓋18、および栓体19で構成される。円筒容器15の内側にシーリング材17を密着させて、可動蓋16が上下に移動可能に配置される。
【0023】
弾性材の弾性変形蓋18に中央の孔20が形成され、移動蓋16の中心軸の位置に形成された管状部21が孔20に通される。形状変化する孔20と管状部21の外面は密着されて相互に移動可能にされる。また、弾性変形蓋18の円環状の外縁部22が円筒容器15の上部に嵌められ、密着して開口部23を覆う。栓体19は、可動蓋16の管状部21の口24を開閉するように配置される。
【0024】
円筒容器15はガラスで作られることで、円筒状の側面や底25において空気や香りの分子が遮断される。また、可動蓋16がガラスで構成されることで同様に遮断する。シーリング材17や、栓体19による密閉が優れると、円筒容器15と可動蓋16で形成される内側の空間が外部から遮断される。
【0025】
弾性変形蓋18の外縁部22が延伸されて円筒容器15の上縁部に広い面積で密着して固定されることで、外縁部22による密閉は十分なされる。弾性変形蓋18の孔20は、円筒容器15の内側面に較べて円周長が小さくされることで、管状部21の外側面に移動可能に密着されても密閉性が確保され易い。シーリング材17の密閉の箇所との2箇所で密閉することで、可動蓋16と底25を有する部分の円筒容器15とで形成される容量可変の空間と外部との間における空気や香りの分子の出入りが充分に遮断される。栓体19による管状部21の口24が十分に密閉されること、およびフッ素系ゴムなどで作られる弾性変形蓋18の分子の遮断が前提になる。
【0026】
図2は、本発明の容量可変の容器を断面図で示すものである。図1と共通する部分は同じ符号で示される。円筒容器15の内側面をシーリング材17で密着させて、可動蓋16が上下に移動されることで容量可変の空間26の容積が変化する。シーリング材17の密着を図るほど、円筒容器15との摩擦が大きくなり、可動蓋16を移動するのに強い力が必要になり、扱いに苦労する。
【0027】
密閉性を確保しながら移動蓋16を比較的小さい力で動かすことを可能にするため、2つの構成をとる。ひとつは、本発明の構成となる、円筒容器15の上部の開口部23を弾性変形蓋18で覆い、可動蓋16と円筒容器15の内側面とで形成される第2の空間27を外気から可能なかぎり密閉することである。弾性変形蓋18の中央の孔20の径を可動蓋16の管状部の外径より小さくする。また、孔20の近傍が相対的に薄くされる。上下に移動する可動蓋16の管状部21に、弾性変形蓋18の孔20の近傍が変形して追従しながら密閉する。
【0028】
ふたつめは、円環状のシーリング材17の構成を工夫して円筒容器15の内側面との摩擦を小さくしながら密閉性をできるだけ確保する。シーリング材17の中心軸を含む面での断面形状が、中心方向に上部を有する90度回転されたW字形状にされる。フッ素系ゴムなどの分子の非透過性に優れた弾性材で比較的薄くW字形状にすることで円筒容器と密着するときに変形しやすくし、遮断性も確保する。
【0029】
可動蓋16の円形状の外形部28の中間に円形状の凹部29が形成され、この凹部29にW字形状の中間の凸部30が嵌め込まれ、W字形状の内側の面が外形部28の上下の面に密着される。密着する箇所も多くなる。比較的容易にW字形状が屈曲変形しながら、外形部28と円筒容器15の内側面に密着する。また、弾性変形蓋18の孔20の部分も薄く、管状部21に密着する部分の円周長が円筒容器の内径長の数分の1で摩擦が相対的に小さく、可動蓋16を移動させる際の力を比較的小さくできる。
【0030】
可動蓋16の上下移動を容易にするためにシーリング材17は強い力で密着されず、シーリング材17が密着する1箇所では空気や香りの分子を完全に遮断できない。比較的大きい容積の第2の空間27を介して別の箇所である弾性変形蓋18の孔20の部分で管状部21に密着させることにより、2箇所のシーリング部を間にした容量可変の空間26と外部とでは完全に近く空気や香りの分子は遮断される。
【0031】
コーヒー粉などの内容物を出した後、可動蓋16を下に移動してから栓体19で管状部21の口を閉じてもよい。移動して容量可変の空間26が小さくされた体積だけ弾性変形蓋18が変形して第2の空間27の容積を一定に維持しようとするが、外部の圧力が相対的に高くなるため、弾性変形蓋18の孔20近傍の薄い部分の密閉が破れて外部からの空気を引き入れる。使用時の内容物の減少量は少なく、可動蓋16の下方への変位量は小さいため、第2の空間27に引き込まれる空気の量は少なく、容量可変の空間26には殆ど入らない。
【0032】
また、内容物を出した後、栓体19で管状部21の口24を閉じて容量可変の空間26と外部を遮断し、可動蓋16を下に移動してもよい。この場合には、可動蓋16が下に移動されて容量可変の空間26が減った容積だけ、高い圧力になる容量可変の空間26の空気や香り分子がシーリング材17と円筒容器15の間から第2の空間27に入り込む。第2の空間27の容積は増えるが、弾性変形蓋18は殆ど変形しないですむ。可動蓋16を下に移動させる前後で栓体19を閉じるいずれ場合でも、外部の空気と置換される容量可変の空間26の空気や香り分子の量は少ない。
【0033】
可動蓋16を上下に移動させる際、シーリング材17の近接した上下の部分が密着することで、ある程度傾くのを抑えながら、弾性変形蓋16中央の孔で管状部21を支えて中心軸から傾き過ぎるのを防ぐ。結果、容量可変の空間26の密閉が破れにくい。
【0034】
弾性変形蓋18に重ね、外縁部22から孔20の近傍までカバー蓋(図示されず)を配置してもよい。カバー蓋には、管状部21の外径より少し大きい孔が中央に形成される。また、中央の孔の近傍を弾性変形蓋18から間隔をもって離すとよい。管状部21が中心軸から傾いても、弾性材の弾性変形蓋18に過度な力を加えず、樹脂のカバー蓋の孔の内周部で管状部21の傾きを抑える。管状部21の上方向への移動に伴う弾性変形蓋18の変形は、孔20近傍の弾性変形蓋18とカバー蓋の間隔の間で生じることになる。また、カバー蓋と弾性変形蓋18を一体化した構成で、カバー蓋の外縁部を円筒容器15の上部の外側部に密着して遮蔽してもよい。
【0035】
容量可変の空間26に入れられた内容物を外に出す場合、細く長い管状部21を通すため、全体を傾けて直接出しても一度に大量に出ることはなく、必要な量を確認しながら出すことができる。また、内容物が管状部21に移動し易くするため、管状部21の内面から連続する可動蓋16の下面31を下方向に連続的に径が大きくされて中心軸を回転対称軸とする曲面形状にされる。
【0036】
容量可変の空間26の内容物が少なくなり、可動蓋16が円筒容器15の底25に近接しても管状部21の上部の口24が弾性変形蓋18から出るようにする。全体を傾けて内容物を直接出すことができる。
【0037】
管状部21の上部の口24の近傍に同心円状の突出部32を設ける。手で可動蓋16を引き上げる際の滑り止めにすることができる。また、栓体19に弾性材を用いた場合、管状部21の内管の部分と突出部32の外縁部で容量可変の空間26と外部の間の密閉をより確かなものにできる。
【符号の説明】
【0038】
15 円筒容器
16 可動蓋
17 シーリング材
18 弾性変形蓋
19 栓体
20 孔
21 管状部
23 開口部
24 口
25 底
26 容量可変の空間
27 第2の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部、下部に底が形成された円筒容器と、管状部を中心軸の位置に有して前記円筒容器の中を上下に移動可能にされた可動蓋と、前記円筒容器の内側面に密着して前記可動蓋の下部の円形状外形部に配置された円環状のシーリング材と、前記管状部を密着させて通す孔を中央に有して前記開口部を覆う弾性変形蓋、および前記管状部の上部の口を開閉する栓部で構成され、前記管状部の上部の前記口が前記弾性変形蓋より外に位置する容量可変の容器。
【請求項2】
前記弾性変形蓋の中央の前記孔の近傍が相対的に薄くされた請求項1に記載の容量可変の容器。
【請求項3】
前記管状部が、前記口の近傍から下方向に同じ外径を有する円筒形状にされた請求項1または請求項2のいずれかに記載の容量可変の容器。
【請求項4】
前記管状部の前記口の近傍に同心円状の突出部が設けられた請求項1から請求項3までのいずれかに記載の容量可変の容器。
【請求項5】
前記シーリング材が、中心軸を含む面での断面形状が中心方向に90度回転された上部を有するW字形状にされ、前記可動蓋の前記外形部の中間に設けられた円形状の凹部に前記W字形状の中間の凸部が嵌め込まれ、前記W字形状の内側の面が前記外形部の上下の面に密着された請求項1から請求項4までのいずれかに記載の容量可変の容器。
【請求項6】
前記管状部の内面から連続する前記可動蓋の下面が、下方向に連続的に径が大きくなる中心軸を回転対称軸とする曲面形状にされた請求項1から請求項5までのいずれかに記載の容量可変の容器。
【請求項7】
前記管状部の外径より大きい孔が中央に形成され、中央近傍が前記弾性変形蓋と間隔を有する構成にされたカバー蓋が前記弾性変形蓋に重ねられた請求項1から請求項4までのいずれかに記載の容量可変の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213357(P2011−213357A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80395(P2010−80395)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(597026685)エーシーイーテック有限会社 (8)
【Fターム(参考)】