説明

容量性負荷駆動装置、液体噴射装置

【課題】容量性負荷からなるアクチュエーターを駆動するための駆動信号の波形精度を十
分に補償する。
【解決手段】駆動波形信号WCOMと帰還信号Refの差分信号Diffをパルス変調し
、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅し、その電力増幅変調信号
APWMを平滑フィルター28で平滑化して、圧電素子などの容量性負荷からなるアクチ
ュエーター19に駆動信号COMを印加する場合に、駆動信号COMそのものを第1帰還
信号として減算部25に帰還すると共に、駆動信号COMの位相を進めて第2帰還信号と
して減算部に帰還する。その際、平滑フィルター28のコンデンサーCに電流検出器であ
る接地抵抗Rを接続し、当該電流検出器である接地抵抗Rの出力を第2帰還信号として減
算部25に帰還する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などの容量性負荷に駆動信号を印加して駆動する容量性負荷駆動装
置に関し、容量性負荷をアクチュエーターとし、当該アクチュエーターに駆動信号を印加
して液体を噴射する液体噴射装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば所定の電圧波形からなる駆動波形信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して容
量性負荷からなるアクチュエーターへの駆動信号とする場合、駆動波形信号を変調部でパ
ルス変調して変調信号とし、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して電力増
幅変調信号とし、その電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して駆動信号としてい
る。
【0003】
駆動信号の波形が重要な場合、当該駆動信号の位相を進めて帰還信号とし、減算部で得
られた帰還信号と駆動波形信号との差分値を変調部への入力信号とすることがある。例え
ば下記特許文献1では、2次のローパスフィルターからなる平滑フィルターの出力、つま
り駆動信号を第1帰還信号として帰還すると共に、デジタル電力増幅回路の出力、つまり
電力増幅変調信号を1次のローパスフィルターに通し、それを第2帰還信号として帰還す
るようにしている。1次のローパスフィルターは2次のローパスフィルターよりも位相が
進んでいるので、この位相進み成分により駆動信号の波形を補償しようとしている。なお
、変調部によるパルス変調の周波数を変調周波数、或いはキャリア周波数と呼んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−329710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1で位相を進めて帰還しているのは、アクチュエーターに
印加される駆動信号ではなく、デジタル電力増幅回路の出力である電力増幅変調信号であ
ることから、駆動信号の波形を十分に補償することができない。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、駆動信号の波形を十分に
補償することが可能な容量性負荷駆動装置、液体噴射装置を提供することを目的とするも
のである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記諸問題を解決するため、本発明の容量性負荷駆動装置は、駆動波形信号を生成する
駆動波形信号生成部と、前記駆動波形信号と2つの帰還信号との差分信号を出力する減算
部と、前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調部と、前記変調信号を電力増幅
して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、インダクタ及びコンデンサーで構
成され且つ前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性負荷の駆動信号とする平滑フィルタ
ーと、前記駆動信号を減算部への第1帰還信号とする第1帰還回路と、前記駆動信号の位
相を進めて前記減算部への第2帰還信号とする第2帰還回路とを備えたことを特徴とする
ものである。
【0007】
この容量性負荷駆動装置によれば、減算部から出力される駆動波形信号と2つの帰還信
号との差分信号をパルス変調して変調信号とし、変調信号をデジタル電力増幅回路で電力
増幅して電力増幅変調信号とし、電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して容量性
負荷の駆動信号とするにあたり、駆動信号そのものを第1帰還信号として減算部に帰還す
ると共に、駆動信号の位相を進めて第2帰還信号として減算部に帰還することにより、駆
動信号の比例・微分フィードバックが可能となり、駆動信号の波形を十分に補償すること
ができる。
【0008】
また、前記平滑フィルターのコンデンサーに接続する電流検出器をさらに備え、前記第
2帰還回路は、前記電流検出器の出力を前記第2帰還信号としてもよい。
この容量性負荷駆動装置によれば、電圧信号からなる駆動信号に対し、当該駆動信号よ
りも位相の進んだ平滑フィルターのコンデンサーの電流を第2帰還信号として減算部に帰
還することができるので、簡易な構成にして駆動信号の波形を十分に補償することができ
る第2帰還信号を帰還することができる。
【0009】
また、前記平滑フィルターの出力側に接続する当該平滑フィルターのコンデンサーより
も容量の小さい第2コンデンサーと、当該第2コンデンサーに接続する電流検出器とをさ
らに備え、前記第2帰還回路は、前記電流検出器の出力を前記第2帰還信号としてもよい

この容量性負荷駆動装置によれば、電圧信号からなる駆動信号に対し、当該駆動信号よ
りも位相の進んだ平滑フィルターのコンデンサーの電流を第2帰還信号として減算部に帰
還することができるので、駆動信号の波形を十分に補償することができる第2帰還信号を
帰還することができると共に、容量の小さい、即ちインピーダンスの大きい第2コンデン
サーを用いることで電力損失を小さくすることができる。
【0010】
また、前記駆動波形信号生成部と減算部との間に介装され、駆動する容量性負荷の数に
よって前記平滑フィルター及び前記容量性負荷の静電容量の周波数特性が変化しても所望
する駆動信号を得ることができる逆フィルターをさらに備えてもよい。
この容量性負荷駆動装置によれば、駆動する容量性負荷の数に応じて逆フィルターで駆
動波形信号を補正することにより、第1帰還信号による駆動信号の補償を軽減することが
でき、これにより減算部から駆動信号までのオープンループ特性のゲイン余裕、位相余裕
を大きくして容量性負荷駆動装置をより安定して動作させることができる。
【0011】
また、前記変調部は、前記減算部の差分信号と三角波信号との比較によって前記変調信
号に変換する比較部を備えてもよい。
この容量性負荷駆動装置によれば、簡易な構成により変調信号を得ることができる。
また、前記変調部は、積分部と、前記積分部の出力を前記変調信号に変換する比較部と
を備え、前記積分部は、前記減算部の差分信号と前記変調信号との差分を積分して出力す
る構成としてもよい。
この容量性負荷駆動装置によれば、変調信号を帰還することにより、駆動信号の波形精
度をより向上させることができる。
【0012】
また、前記変調部は、積分部と、前記積分部の出力を前記変調信号に変換する比較部と
を備え、前記積分部は、前記減算部の差分信号と前記電力増幅変調信号との差分を積分し
て出力する構成としてもよい。
この容量性負荷駆動装置によれば、位相遅れのない電力増幅変調信号を帰還することに
より容量性負荷駆動装置を安定して動作させることができる。また、デジタル電力増幅回
路の電源電圧の変動を含んだ電力増幅変調信号を帰還するため、デジタル電力増幅回路の
電源電圧の変動を補償して、駆動信号の波形精度をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明の液体噴射装置は、前述した容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷
であるアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置である。
この液体噴射装置によれば、容量性負荷であるアクチュエーターの駆動信号の波形を十
分に補償することができ、より精度の高い液体噴射が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の容量性負荷駆動装置を用いたインクジェットプリンターの第1実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンターに用いられるインクジェットヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1のインクジェットプリンターの制御装置のブロック図である。
【図4】容量性負荷からなるアクチュエーターの駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラーのブロック図である。
【図6】アクチュエーター駆動回路の第1実施例を示すブロック図である。
【図7】図6の変調部のブロック図である。
【図8】図6のデジタル電力増幅回路のブロック図である。
【図9】図6の駆動回路の作用の説明図であり、(a)は周波数特性図、(b)はオープンループ特性図である。
【図10】帰還回路を設けない場合の駆動回路の周波数特性図である。
【図11】図6の第2帰還回路がない場合の作用の説明図であり、(a)は周波数特性図、(b)はオープンループ特性図である。
【図12】アクチュエーター駆動回路の第2実施例を示すブロック図である。
【図13】アクチュエーター駆動回路の第3実施例を示すブロック図である。
【図14】図13の駆動回路の作用の説明図であり、(a)は周波数特性図、(b)はオープンループ特性図である。
【図15】アクチュエーター駆動回路の第4実施例を示すブロック図である。
【図16】アクチュエーター駆動回路の第5実施例を示すブロック図である。
【図17】アクチュエーター駆動回路の第6実施例を示すブロック図である。
【図18】アクチュエーター駆動回路の第7実施例を示すブロック図である。
【図19】アクチュエーター駆動回路の第8実施例を示すブロック図である。
【図20】アクチュエーター駆動回路の第9実施例を示すブロック図である。
【図21】本発明の容量性負荷駆動装置を用いた液体噴射装置の第2実施形態を示す概略構成図である。
【図22】図21の液体噴射部の断面図である。
【図23】図21の液体噴射装置の制御装置のブロック図である。
【図24】容量性負荷からなるアクチュエーターの駆動信号の説明図である。
【図25】本発明の容量性負荷駆動装置を用いた液体噴射装置の第3実施形態を示す概略構成図である。
【図26】図25の脈動発生機構の構成を示す縦断面図である。
【図27】図25の液体噴射装置の制御装置のブロック図である。
【図28】容量性負荷からなるアクチュエーターの駆動信号の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の容量性負荷駆動装置の第1実施形態として、インクジェットプリンター
に適用されたものについて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンターの概略構成図であり、図1において、
印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印
刷される、ラインヘッド型インクジェットプリンターである。
【0016】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数のインクジェットヘ
ッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向
に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート7に固定されている。各インクジェット
ヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれてい
る。ノズルは、図2に示すように、噴射するインクの色毎に、印刷媒体搬送方向と交差す
る方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方
向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全てのインク
ジェットヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に
及ぶラインヘッドが形成されている。
【0017】
インクジェットヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)
、ブラック(K)の4色のインクが、図示しないインクタンクからインク供給チューブを
介して供給される。そして、インクジェットヘッド2に形成されているノズルから同時に
必要箇所に必要量のインクを噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成す
る。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させる
だけで、1パスによる印刷を行うことができる。本実施形態では、インクジェットヘッド
2のノズルからインクを噴射する方法としてピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチ
ュエーターである圧電素子に駆動信号を与えると、圧力室内の振動板が変位して圧力室内
の容積が変化し、そのときに生じる圧力変化によって圧力室内のインクがノズルから噴射
されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでイ
ンクの噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外のインク噴
射方法にも、同様に適用可能である。
【0018】
インクジェットヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4
が設けられている。搬送部4は、駆動ローラー8及び従動ローラー9に搬送ベルト6を巻
回して構成され、駆動ローラー8には図示しない電動モーターが接続されている。また、
搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示し
ない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬
送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する
静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラー5によって給紙部3から印刷媒体
1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モーターによって駆動ローラー8を回転駆動
すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に
印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、インクジェットヘッド
2からインクを噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排
紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダーなどで
構成される印刷基準信号出力装置が取付けられており、この印刷基準信号出力装置から出
力される要求解像度相当のパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチ
ュエーターに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色のインクを噴射し、その
ドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0019】
本実施形態のインクジェットプリンター内には、インクジェットプリンターを制御する
ための制御装置11が設けられている。この制御装置11は、図3に示すように、ホスト
コンピューター12から入力された印刷データを読込み、その印刷データに基づいて印刷
処理等の演算処理を実行するコンピューターシステムで構成される制御部13を備える。
また、制御装置11は、前記給紙ローラー5に接続されている給紙ローラーモーター14
を駆動制御する給紙ローラーモータードライバー15を備える。また、制御装置11は、
インクジェットヘッド2を駆動制御するヘッドドライバー16と、前記駆動ローラー8に
接続されている電動モーター17を駆動制御する電動モータードライバー18とを備えて
構成される。
【0020】
制御部13は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)
13aを備える。また、制御部13は、入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷
処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一
時的に展開するRAM(Random Access Memory)13bと、CPU13aで実行する制御
プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read Only Memory)
13cを備えている。この制御部13は、ホストコンピューター12から印刷データ(画
像データ)を入手すると、CPU13aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何
れのノズルからインクを噴射するか或いはどの程度のインクを噴射するかというノズル選
択データ(駆動パルス選択データ)を算出する。そして、この印刷データや駆動パルス選
択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラーモータードライバー
15、ヘッドドライバー16、電動モータードライバー18に制御信号及び駆動信号を出
力する。これらの制御信号及び駆動信号により、給紙ローラーモーター14、電動モータ
ー17、インクジェットヘッド2内のアクチュエーターなどが夫々作動して、印刷媒体1
の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部1
3内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0021】
図4には、前記制御装置11内のヘッドドライバー16からインクジェットヘッド2に
供給され、圧電素子からなるアクチュエーターを駆動するための駆動信号COMの一例を
示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号CO
Mは、アクチュエーターを駆動してインクを噴射する単位駆動信号としての駆動パルスP
COMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに
連通する圧力室の容積を拡大してインクを引込む段階であり、駆動パルスPCOMの立下
がり部分が圧力室の容積を縮小してインクを押出す段階であり、インクを押出した結果、
インクがノズルから噴射される。
【0022】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更する
ことにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることが
でき、これによりインクの噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる
。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独
の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを噴射したり、
複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを複数回噴
射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、インクが乾かない
うちに複数のインクを同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインクを噴射するのと同じ
ことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合
せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1
は、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インクを噴射せず
に、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0023】
インクジェットヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御
信号として、印刷データに基づいて駆動パルスPCOMのうちどの駆動パルスPCOMを
選択するかを示す駆動パルス選択特定データSIが入力されている。また、インクジェッ
トヘッド2には、全ノズルにノズル選択データが入力された後に、駆動パルス選択特定デ
ータSIに基づいて駆動信号COMとインクジェットヘッド2のアクチュエーターとを接
続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHと、駆動パルス選択特定データSIを
シリアル信号としてインクジェットヘッド2に送信するためのクロック信号SCKとが入
力されている。なお、これ以後、アクチュエーター19を駆動する駆動信号の最小単位を
駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信
号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャ
ンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0024】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエーター19に供給する
ためにインクジェットヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラーの具体的な構
成を示す。このスイッチングコントローラーは、インクを噴射させるノズルに対応した圧
電素子などのアクチュエーター19を指定するための駆動パルス選択特定データSIを保
存するレジスター20と、レジスター20のデータを一時的に保存するラッチ回路21と
を備えている。また、このスイッチングコントローラーは、ラッチ回路21の出力をレベ
ル変換して選択スイッチ23に供給することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCO
M)を圧電素子からなるアクチュエーター19に接続するレベルシフター22を備えて構
成されている。
【0025】
レベルシフター22は選択スイッチ23をオンオフできる電圧レベルに変換する。これ
は、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が、ラッチ回路21の出力電圧に比べて高い
電圧であり、これに合わせて選択スイッチ23の動作電圧範囲も高く設定されているため
である。従って、レベルシフター22によって選択スイッチ23が閉じられるアクチュエ
ーター19は、駆動パルス選択特定データSIに基づき所定の接続タイミングで駆動信号
COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、レジスター20の駆動パルス選択特
定データSIがラッチ回路21に保存された後、次の印刷情報をレジスター20に入力し
、インクの噴射タイミングに合わせてラッチ回路21の保存データを順次更新する。なお
、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエーター19のグランド端である。ま
た、この選択スイッチ23により、圧電素子などのアクチュエーター19を駆動信号CO
M(駆動パルスPCOM)から切り離した後(選択スイッチ23がオフ)も、当該アクチ
ュエーター19の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。すなわち、前記圧電素
子からなるアクチュエーター19は、容量性負荷である。
【0026】
図6には、アクチュエーター19の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエーター
駆動回路は、前記制御装置11のヘッドドライバー16内に構築されている。本実施形態
の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号CO
M(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエーター19の駆動を制御する信号の基
準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号生成部24を備えている。また、
本実施形態の駆動回路は、駆動波形信号生成部24で生成された駆動波形信号WCOMか
ら帰還信号Refを減じて差分信号Diffを出力する減算部25と、減算部25から出
力された差分信号Diffをパルス変調する変調部26と、変調部26でパルス変調され
た変調信号PWMを電力増幅するデジタル電力増幅回路27とを備えている。また、本実
施形態の駆動回路は、デジタル電力増幅回路27で電力増幅された電力増幅変調信号AP
WMを平滑化して、圧電素子からなるアクチュエーター19に駆動信号COMとして出力
する平滑フィルター28と、前記平滑フィルター28の出力である駆動信号COMを前記
減算部25に帰還する第1帰還回路201と、前記駆動信号COMの位相を進めて前記減
算部25に帰還する第2帰還回路202とを備えて構成される。
【0027】
駆動波形信号生成部24は、デジタルデータからなる駆動波形データDWCOMを電圧
信号に変換して所定サンプリング周期分ホールド出力する。減算部25は、比例定数用の
抵抗を介装した一般的なアナログ減算回路である。変調部26には、図7に示すように、
周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調回
路は、例えば、所定周波数の三角波信号を出力する三角波生成部31と、三角波信号と差
分信号Diffを比較し、例えば差分信号Diffが三角波信号より大きいときにオンデ
ューティーとなるパルスデューティーの変調信号PWMを出力する比較部32とを備えて
構成される。なお、変調部26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知
のパルス変調部を用いることができる。また、駆動波形信号生成部24、減算部25、変
調部26は、演算処理によって構築することもでき、その場合には、例えば前記制御装置
11の制御部13内にプログラミングによって構築することができる。
【0028】
デジタル電力増幅回路27は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイ
サイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブ
リッジ出力段33と、変調部26からの変調信号PWMに基づいて、ハイサイド側スイッ
チング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GL
を調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成されている。デジタル電力増幅
回路27では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1の
ゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲ
ート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1は
オン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハー
フブリッジ出力段33の出力電圧Vaは、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がロー
レベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはロ
ーレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイ
レベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側
スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段33の出力電
圧Vaは0となる。
【0029】
このようにハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2
がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイ
ン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッ
チング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅回
路27の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用
することができる。
【0030】
平滑フィルター28は、図6に示すように、1つのインダクタLと、1つのコンデンサ
ーCとで構成される2次のローパスフィルターからなる。本実施形態では、この平滑フィ
ルター28によって、前記変調部26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分
の信号振幅を減衰して除去し、アクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPC
OM)を出力する。
【0031】
前述したように、アクチュエーター19は、図2に示すノズル全てに設けられており、
図5に示す選択スイッチ23が閉じられたアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動
パルスPCOM)が印加され、そのアクチュエーター19が駆動される。アクチュエータ
ー19は、容量性負荷、即ち静電容量を有する。つまり、平滑フィルター28には、駆動
されるアクチュエーター19数(以下、駆動アクチュエーター数とも記す)分の静電容量
が、当該平滑フィルター28のコンデンサーCに並列に接続される。当然ながら、駆動ア
クチュエーター数が変化すると、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター1
9の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性も変化する。この平滑フィルター28
及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性の
変化を補償するために、図6のアクチュエーター駆動回路には、駆動信号COM(駆動パ
ルスPCOM)をそのまま第1帰還信号として減算部25に帰還する第1帰還回路201
と、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の位相を進めて第2帰還信号として減算部2
5に帰還する第2帰還回路202とを備える。
【0032】
第2帰還回路202として、前記平滑フィルター28のコンデンサーCの電流を電流検
出器で検出し、その電流検出器の出力を第2帰還信号とする構成が好適である。電流検出
器は接地抵抗Rで構成される。周知のように電流は電圧よりも位相が進んでおり、前述の
ように駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が台形波電圧信号であるから、検出される
コンデンサーCの電流信号は駆動信号COM(駆動パルスPCOM)よりも位相が早い。
このことは、コンデンサーCと接地抵抗Rが、1次のハイパスフィルターを構成している
ことからも明らかである。このように駆動信号COM(駆動パルスPCOM)からなる第
1帰還信号と、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の位相を進めた第2帰還信号によ
り、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の比例・微分フィードバックが可能となり、
駆動アクチュエーター数の変化に伴う平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエータ
ー19の静電容量からなるフィルターの周波数特性を補償することができる。なお、本実
施形態の平滑フィルター28のようにダンピング抵抗を介装していない2次のローパスフ
ィルターには、周知のように共振特性があるが、第1帰還信号及び第2帰還信号を帰還す
ることにより、当該平滑フィルター28を構成する2次のローパスフィルターの共振特性
を補償することもできる。
【0033】
図9には、前記第1帰還回路201及び第2帰還回路202を備えた本実施形態のアク
チュエーター駆動回路の周波数特性を示す。図9aは、平滑フィルター28及び駆動され
るアクチュエーター19の静電容量からなるフィルター、つまり駆動信号COM(駆動パ
ルスPCOM)の周波数特性であり、図中のfrefは駆動信号COM(駆動パルスPC
OM)の波形を歪ませないために必要な所定周波数である。つまり、少なくともこの所定
周波数fref以下の周波数帯域ではフィルターのゲインを0dBとする必要がある。図
から明らかなように、駆動アクチュエーター数(図ではノズル数)が大きくなると高周波
数帯域側のゲインが小さくなる傾向にあるが、所定周波数fref以下の周波数帯域でフ
ィルターのゲインがほぼ0dBとなっている。
【0034】
また、図9bは、図6のアクチュエーター駆動回路のオープンループ特性である。帰還
が係っている駆動回路のオープンループ特性は、帰還入力、つまり本実施例では減算部2
5の入力側からアクチュエーター19までの周波数特性であり、ゲインが0dBより大き
いということは帰還入力より出力が大きいということであり、ゲインが0dBより小さい
ということは帰還入力より出力が小さいということである。また、位相が−180°にな
るということは入力の反転信号である。帰還が係っている駆動回路のオープンループ特性
では、周知のように、位相が−180°且つゲインが0dB以上であるとき、無限の利得
が発生して発振する、つまり不安定になることから、系の安定性を確かめる際には、ゲイ
ンが0dBのときの位相の−180°との差である位相余裕や、逆に位相が−180°の
ときのゲインの0dBとの差であるゲイン余裕を測ればよい。本実施形態では、駆動アク
チュエーター数が小さいときのゲイン余裕、位相余裕が共に小さい傾向にあるが、それで
も系が安定的に動作するのに十分な余裕がある。
【0035】
図10は、第1帰還信号の帰還も第2帰還信号の帰還も行わない、いわば平滑フィルタ
ー28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量からなるフィルターの周波数特性
である(ダンピング抵抗を介装しているものであり、このダンピング抵抗によって共振は
抑制されている)。前記図9aと同じく、駆動アクチュエーター数が大きいほど、高周波
数帯域のゲインが小さくなる傾向にあるが、この場合は、前記所定周波数frefでゲイ
ンが0dBより小さくなり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形が歪んでしま
う(高周波数帯域成分が除去されてしまう)。図11は、第1帰還信号の帰還のみを行う
場合の周波数特性である。図11aに示す平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエ
ーター19の静電容量からなるフィルター、つまり駆動信号COM(駆動パルスPCOM
)の周波数特性では、駆動アクチュエーター数が大きい場合の所定周波数frefでのゲ
インは改善されている。しかしながら、図11bに示すオープンループ特性では、前記図
9bに示すオープンループ特性と比較して、ゲイン余裕、位相余裕共に小さくなっており
、系が安定的に動作するのに十分な余裕が無い。
【0036】
このように本実施形態の容量性負荷駆動装置及びインクジェットプリンターでは、圧電
素子のような容量性負荷からなるアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスP
COM)を印加するとインクジェットヘッド2の圧力室の容積が縮小されて当該圧力室内
のインクを噴射する。その噴射されたインクで印刷媒体1に印刷を行うにあたり、減算部
25から出力される駆動波形信号WCOMと2つの帰還信号Refとの差分信号Diff
をパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27
で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フ
ィルター28で平滑化してアクチュエーター19の駆動信号COM(駆動パルスPCOM
)とする。そして、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)そのものを第1帰還信号とし
て減算部25に帰還すると共に、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の位相を進めて
第2帰還信号として減算部に帰還することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM
)の比例・微分フィードバックが可能となり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の
波形を十分に補償することができ、高精度な印刷が可能となる。
【0037】
また、平滑フィルター28のコンデンサーCに電流検出器である接地抵抗Rを接続し、
当該電流検出器である接地抵抗Rの出力を第2帰還信号として減算部25に帰還すること
により、電圧信号からなる駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に対し、それよりも位
相の進んだ平滑フィルター28のコンデンサーCの電流を第2帰還信号として減算部25
に帰還することができるので、簡易な構成にして適正な第2帰還信号を帰還することがで
きる。
また、変調部26を、減算部25の差分信号Diffと三角波信号との比較によって変
調信号PWMに変換する比較部32で構成することにより、簡易な構成により発明の実施
が容易となる。
【0038】
以下に他の実施例を示す。他の実施例の説明においては、第1実施例と同様の構成につ
いては第1実施例と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図12には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第2実施例を示す。前記第1実
施例では、平滑フィルター28のコンデンサーCの電流を電流検出器である接地抵抗Rで
直接的に検出したが、本実施例では、平滑フィルター28のコンデンサーCと並列に第2
コンデンサーC2を接続し、このコンデンサーC2の電流を電流検出器である第2接地抵
抗R2で検出し、その電流検出器の出力を第2帰還信号とする。この場合も、検出すべき
なのは駆動信号COM(駆動パルスPCOM)よりも位相の進んだ平滑フィルター28の
コンデンサーCの電流であるから、例えば第1実施例の図6のコンデンサーCの容量と接
地抵抗Rの抵抗の積値と、第2実施例の第2コンデンサーC2の容量と第2接地抵抗R2
の抵抗の積値が同じ値であれば、第2コンデンサーC2の電流値は平滑フィルター28の
コンデンサーCの電流値に等しい。このとき、平滑フィルター28のコンデンサーCの容
量よりも第2コンデンサーC2の容量を小さくする、即ちインピーダンスを大きくするこ
とにより、第2接地抵抗R2の電力消費を低減することができる。また、第2コンデンサ
ーC2の容量を小さくすることにより、相対的に電流検出器である第2接地抵抗R2の抵
抗値が大きくなるため、第2コンデンサーC2の等価直列抵抗を無視することができ、設
計が容易になる。
【0039】
本実施形態の容量性負荷駆動装置及びインクジェットプリンターでは、平滑フィルター
28の出力側に、当該平滑フィルター28のコンデンサーCよりも容量の小さい第2コン
デンサーC2を接続する。そして、当該第2コンデンサーC2に平滑フィルター28のコ
ンデンサーCの電流を検出するための電流検出器として接地抵抗R2を接続し、当該第2
コンデンサーC2に接続された電流検出器である接地抵抗R2の出力を第2帰還信号とし
て減算部25に帰還する。これにより、電圧信号からなる駆動信号COM(駆動パルスP
COM)に対し、それよりも位相の進んだ平滑フィルター28のコンデンサーCの電流を
第2帰還信号として減算部25に帰還することができる。従って、適正な第2帰還信号を
帰還することができると共に、容量の小さい、即ちインピーダンスの大きい第2コンデン
サーC2を用いることで電力損失が小さく、電流検出器である接地抵抗R2の抵抗値が大
きくなるため、等価直列抵抗を無視することができ、設計が容易になる。
【0040】
図13には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第3実施例を示す。この実施例
では、前記第1実施例のアクチュエーター駆動回路の駆動波形信号生成部24と減算部2
5との間に逆フィルター203を介装した。この逆フィルター203は、例えば平滑フィ
ルター28及びアクチュエーター19の静電容量からなるフィルターの周波数特性が、駆
動されるアクチュエーター19の数によって変化しても、所望する駆動信号COM(駆動
パルスPCOM)を得ることができるという性質を有するものである。本実施形態では、
前述のように駆動されるアクチュエーター19の数が大きいほど、高周波数帯域のゲイン
が小さくなる傾向にある。従って、例えば駆動されるアクチュエーター19の数が最小、
つまり1つであるときに駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形が設計通りになる
ように平滑フィルター28及び1つのアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィ
ルターの周波数特性を設定した場合、駆動されるアクチュエーター19の数に応じて、ゲ
インの減少によって減衰されてしまう成分を強調するように逆フィルター203で駆動波
形信号WCOMを補正する。なお、逆フィルター203の設定手法については、本出願人
が先に提案した国際公開公報WO2007/083669に詳しく記載されている。
【0041】
このように逆フィルター203によって駆動波形信号WCOMをおおよそ補正すること
ができるが、駆動されるアクチュエーター19の数によって変わってしまう、平滑フィル
ター28及びアクチュエーター19の静電容量からなるフィルターの周波数特性を完全に
カバーできるわけではない。そこで、この逆フィルター203と、前述した第1帰還信号
及び第2帰還信号によって更なる駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の補償を行う。
図14は、本実施例の周波数特性である。平滑フィルター28及びアクチュエーター19
の静電容量からなるフィルターの周波数特性を示す図14aでも駆動アクチュエーター数
が大きいときのゲインを駆動アクチュエーター数が小さいときのそれに近づけることがで
きている。また、駆動アクチュエーター数に応じて駆動波形信号WCOMを予め補正する
ことにより、特に第1帰還信号による補償量を低減することができ、図14bに示すオー
プンループ特性では、ゲイン余裕、位相余裕とも大きくなり、更なる安定化が図られてい
る。
【0042】
本実施形態の容量性負荷駆動装置及びインクジェットプリンターでは、駆動波形信号生
成部24と減算部25との間に、平滑フィルター28及び容量性負荷からなるアクチュエ
ーター19の静電容量の周波数特性が、駆動するアクチュエーター19の数によって変化
しても所望する駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を得ることができる逆フィルター
203を介装している。これによって、駆動するアクチュエーター19の数に応じて逆フ
ィルター203で駆動波形信号WCOMを補正することにより、第1帰還信号による駆動
信号COM(駆動パルスPCOM)の補償を軽減することができ、減算部25から駆動信
号COM(駆動パルスPCOM)までのオープンループ特性のゲイン余裕、位相余裕を大
きくして系を安定化することができる。
【0043】
図15には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第4実施例を示す。本実施例で
は、変調部26に積分器204(積分部)を用い、この積分器204の出力を比較器20
5で大小の規制値と比較してパルス幅変調信号PWMを出力する、所謂自励発振型パルス
幅変調回路を構成した。本実施例では、変調部26の出力である変調信号PWMを積分器
204に帰還し、積分器204では、差分信号Diffと変調信号PWMの差分値を積分
するように設定することで、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形精度を向上す
ることができる。
【0044】
本実施形態の容量性負荷駆動装置及びインクジェットプリンターでは、変調部26に、
積分器204と、積分器204の出力を変調信号PWMに変換する比較器205とを備え
、積分器204が、減算部25の差分信号Diffと変調信号PWMとの差分を積分して
出力するように構成したことにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の波形精度
が向上する。
【0045】
図16には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第5実施例を示す。本実施例で
も、前記第4実施例と同様に、変調部26に積分器204(積分部)を用い、この積分器
204の出力を比較器205で大小の規制と比較してパルス幅変調信号PWMを出力する
自励発振型パルス幅変調回路を構成した。そして、前記積分器204には、デジタル電力
増幅回路27の出力である電力増幅変調信号APWMを帰還し、積分器204では、差分
信号Diffと電力増幅変調信号APWMとの差分値を積分するように設定した。この電
力増幅変調信号APWMは、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に対して位相遅れが
ないので系が更に安定すると共に、電源電圧VDDの変動によって変化してしまう電力増
幅変調信号APWMを補償することが可能となり、電源電圧VDDの変動に伴う駆動信号
COM(駆動パルスPCOM)の波形精度を確保することができる。
【0046】
本実施形態の容量性負荷駆動装置及びインクジェットプリンターでは、変調部26に、
積分器204と、積分器204の出力を変調信号PWMに変換する比較器205とを備え
、積分器204が、減算部25の差分信号Diffと電力増幅変調信号APWMとの差分
を積分して出力するように構成している。これによって、位相遅れのない電力増幅変調信
号APWMを帰還することにより系が更に安定すると共に、デジタル電力増幅回路27へ
の電源電圧VDDの変動を補償することができる。
【0047】
図17には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第6実施例を示す。本実施例で
は、前述したように駆動波形信号生成部24から変調部26までを演算処理によって構築
する。具体的には、前記図3の制御装置11の制御部13内にプログラミングによって構
築する。なお、これ以後、本実施形態では、何れの実施例でも駆動波形信号生成部24か
ら変調部26までを演算処理によって構築する。図17の第1帰還回路201及び第2帰
還回路の構成は、前記第1実施形態のそれと同様であるが、夫々に、演算処理に必要なデ
ジタル化のためのアナログ−デジタル変換器(A/D変換器)206が介装されている。
第1帰還回路201では、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をデジタル値に変換し
て帰還し、それを減算部25で駆動波形信号WCOMから減算し、更にその減算値から、
第2帰還回路202から帰還された平滑フィルター28のコンデンサーCの電流値のデジ
タル値を減算し、その減算値を差分信号Diffとして変調部26に入力する。変調部2
6も、デジタル値を用いたプログラミングで構成されており、前記差分信号Diffをパ
ルス変調して変調信号PWMを出力する。このように、駆動波形信号生成部24から変調
部26までをデジタル化することにより、実質的な回路構成を簡略化することができる。
【0048】
図18には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第7実施例を示す。本実施例で
は、前記図7の第6実施例のアクチュエーター駆動回路の駆動波形信号生成部24と減算
部25の間に前述した逆フィルター203を介装した。逆フィルター203をプログラミ
ングによって構築する手法も、前記国際公開公報WO2007/083669に詳細に記
載されている。本実施例のアクチュエーター駆動回路では、前記第3実施形態の効果及び
第6実施形態の効果を合わせて得ることができる。
【0049】
図19には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第8実施例を示す。本実施例で
は、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)だけを帰還し、この駆動信号COM(駆動パ
ルスPCOM)をA/D変換器206でデジタル値に変換する。このデジタル値に変換さ
れた駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をそのまま第1帰還信号として減算部25に
帰還するのが第1帰還回路201となる。一方、デジタル値に変換された駆動信号COM
(駆動パルスPCOM)を位相進み部207で位相を進ませ、その信号を第2帰還信号と
して減算部25に帰還するのが第2帰還回路202となる。本実施例のアクチュエーター
駆動回路では、より一層、実質的な回路構成を簡略化することができる。
【0050】
図20には、本実施形態のアクチュエーター駆動回路の第9実施例を示す。本実施例で
は、前記図19の第8実施例のアクチュエーター駆動回路の駆動波形信号生成部24と減
算部25の間に前述した逆フィルター203を介装した。本実施例のアクチュエーター駆
動回路では、前記第3実施例の効果及び第8実施例の効果を合わせて得ることができる。
なお、前記実施形態では、本発明の容量性負荷駆動装置をラインヘッド型のインクジェ
ットプリンターに用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の容量性負荷駆動装置は、
マルチパス型のインクジェットプリンターにも同様に適用可能である。
【0051】
次に、本発明の容量性負荷駆動装置の第2実施形態として、液体噴射装置に適用された
ものについて説明する。以下の実施形態の説明において、第1実施形態と同様の構成につ
いては第1実施形態と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図21は、本実施形態に係る液体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図である。本実
施形態の液体噴射装置は、例えば細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メスなど様々に採
用可能であるが、以下に説明する実施形態では、血管内に挿入し、血栓などを除去する目
的で用いるカテーテルの先端に設置することに適した液体噴射装置、或いは生体組織を切
開又は切除することに好適な液体噴射装置を例示して説明する。従って、実施形態にて用
いる液体は、水又は生理食塩水であり、以降、これらを総称して液体と表す。
【0052】
図21において、液体噴射装置36は、基本構成として液体を一定圧力で供給する液体
供給部としてのポンプを含む液体噴射制御部37と、液体を脈動に変化させる液体噴射部
38と、液体噴射制御部37と液体噴射部38とを連通するチューブ39とを備えている
。液体噴射部38は、液体を脈動に変化させて液滴40としてパルス状に高速噴射させる
。後述するように、液体噴射部38の内部にはアクチュエーターとして容量性負荷からな
る圧電素子を備え、圧電素子に駆動信号を入力する接続線が接続され、その接続線がチュ
ーブ39内に挿通されている。接続線は、液体噴射制御部37の近傍又は内部において、
分岐部41によってチューブ39から分岐され、接続配線42として液体噴射制御部37
の駆動回路部に接続される。また、チューブ39は、液体噴射制御部37に含まれるポン
プに接続されている。
【0053】
続いて、液体噴射部38の構成について図22用いて説明する。図22は液体噴射部3
8の縦断面図である。液体噴射部38の先端部47には液体を噴射する液体噴射開口部4
8が開口され、基端部49には柔軟性を有するチューブ39が嵌着されている。液体噴射
部38の内部には、その壁面の一部がダイヤフラム52、63にて構成された液体室71
が設けられている。液体室71は、出口流路75を介して液体噴射開口部48に接続され
、入口流路74を介してチューブ39と接続されている。また、ダイヤフラム52、63
には、それぞれ圧電素子53、64が接合されている。圧電素子53、64に駆動信号が
入力されると、圧電素子53、64の伸縮によってダイヤフラムが変形し、液体室71の
容積が変更されるように構成されている。
【0054】
続いて、液体噴射装置36の液体流動について図21、図22を用いて説明する。液体
噴射制御部37には、図示しない液体容器と、液体容器に接続されたポンプを有している
。ポンプは、液体をチューブ39に送出する。液体容器に収容されている液体は、ポンプ
によって一定の圧力でチューブ39、入口流路74を介して液体室71に供給される。こ
こで、圧電素子53、64に駆動信号を入力し、圧電素子53、64を伸縮させると、ダ
イヤフラム52、63は液体室71の容積を変形させる。その結果、液体室71内の圧力
が変動するため、出口流路75を通じて液体噴射開口部48からパルス状の液体吐出、つ
まり高速のパルス状液滴の噴射が発生する。
【0055】
図23には、前記液体噴射制御部37内に設けられたアクチュエーター駆動制御装置7
7を示す。本実施形態の液体噴射装置のアクチュエーターは圧電素子53、64であり、
前記第1実施形態と同様に容量性負荷でもある。このアクチュエーター駆動制御装置77
は、前記第1実施形態の制御装置と同様に、ホストコンピューター12から入力された入
力データやコマンドを読込み、その入力データやコマンドに基づいて所定の演算処理を実
行するコンピューターシステムで構成される制御部13と、制御部13からの制御信号に
応じて圧電素子53、64を駆動制御するアクチュエータードライバー78とを備えて構
成される。制御部13は、前記第1実施形態と同様に、CPU13a、RAM13b、R
OM13cを備えている。
【0056】
図24には、前記アクチュエーター駆動制御装置77内のアクチュエータードライバー
78から圧電素子53、64に供給され、それら圧電素子53、64からなるアクチュエ
ーターを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態のような液体噴射装置
では、前述の説明から分かるように、種々の駆動信号を用いることが可能であるが、本実
施形態では、前記第1実施形態と同様に、中間電圧を中心に電圧が変化する台形波電圧信
号とした。この駆動信号COMは、電圧の立上がり部分が液体室71の容積を拡大して液
体を引込む段階であり、電圧の立下がり部分が液体室71の容積を縮小して液体を押出す
段階である。
【0057】
従って、前記アクチュエータードライバー78内に構築されたアクチュエーター駆動回
路には、前記第1実施形態の第1〜第9実施例のアクチュエーター駆動回路を、アクチュ
エーターを圧電素子53、64に変更して、そのまま用いることができる。その場合、前
述したように2次のローパスフィルターで構成される平滑フィルター28の共振を、第1
帰還信号及び第2帰還信号により有効に減衰することができる。また、1つのアクチュエ
ーター駆動回路に対し、それぞれ静電容量の異なる圧電素子53、64をランダムに接続
し、駆動される場合には、前記第1実施形態と同様に、平滑フィルター28に接続される
圧電素子53、64によって平滑フィルター28及び駆動される圧電素子53、64の静
電容量からなるフィルターの周波数特性が変化し、駆動信号COMの波形に歪みが生じる
。そのような場合に、前記第1実施形態の第1〜第9実施例のアクチュエーター駆動回路
では、駆動信号COMの波形歪みを抑制防止することができる。また、個々の実施例に応
じた効果も同様に得られる。尚、前記第1実施形態の第3、第7、第9実施例については
、接続される圧電素子53、64の静電容量に応じて、ゲインの減少によって減衰されて
しまう成分を強調するように逆フィルター203で駆動波形信号WCOMを補正する。
【0058】
このように、本実施形態の容量性負荷駆動装置を用いた液体噴射装置でも、容量性負荷
である圧電素子53、64に駆動信号COMを印加するとダイヤフラム52、63を介し
て液体室71の容積が縮小されて当該液体室71内の液体を噴射する。この場合に、減算
部25から出力される駆動波形信号WCOMと2つの帰還信号Refとの差分信号Dif
fをパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路2
7で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑
フィルター28で平滑化して圧電素子53、64の駆動信号COMとする。そして、駆動
信号COMそのものを第1帰還信号として減算部25に帰還すると共に、駆動信号COM
の位相を進めて第2帰還信号として減算部25に帰還することにより、駆動信号COMの
比例・微分フィードバックが可能となり、駆動信号COMの波形を十分に補償することが
でき、高精度な液体噴射が可能となる。
【0059】
次に、本発明の容量性負荷駆動装置の第3実施形態として、前記第2実施形態の液体噴
射装置とは異なるタイプの液体噴射装置に適用されたものについて説明する。以下の実施
形態の説明において、第1実施形態または第2実施形態と同様の構成については同じ符号
を付し、その説明を省略する。
図25は、本実施形態に係る液体噴射装置の概略構成の一例を示す説明図である。本実
施形態の液体噴射装置は、例えば細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メスなど様々に採
用可能であるが、以下に説明する実施形態では、生体組織を切開又は切除することに好適
な液体噴射装置を例示して説明する。従って、実施形態にて用いる液体は、水又は生理食
塩水であり、以降、これらを総称して液体と表す。
【0060】
図25において、液体噴射システム79は、基本構成として、図示しない液体を収容す
る液体容器と圧力発生部としてのポンプとを含む液体噴射制御部37と、ポンプから供給
される液体を脈動噴射する液体噴射部38と、液体噴射部38とポンプを連通するチュー
ブ39とから構成されている。液体噴射部38は、供給された液体を高圧、高い周波数で
脈動噴射する脈動発生機構80と、脈動発生機構80に接続される接続流路管81とを有
し、接続流路管81の先端部には流路の断面積が縮小された液体噴射開口部48を有する
ノズル82が装着されている。
【0061】
次に、この液体噴射システム79における液体の流動について説明する。液体噴射制御
部37に備えられる液体容器に収容された液体は、ポンプにより一定の圧力でチューブ3
9を介して脈動発生機構80に供給される。脈動発生機構80には、後述する液体室71
と、この液体室71の容積変更手段とを備えており、容積変更手段を駆動し、脈動発生し
て液体噴射開口部48から液体を高速でパルス状に噴射する。脈動発生機構80の詳しい
説明については、図26を用いて後述する。なお、この液体噴射システム79を用いて手
術する際には、術者が把持する主たる部位は脈動発生機構80である。
【0062】
続いて、前記液体噴射部38の構成について説明する。図26は、本実施形態に係る脈
動発生機構80の主たる構成を液体の流路方向に沿って切断した断面図である。液体噴射
部38は、液体の脈動発生手段を含む脈動発生機構80と、液体を噴射する出口接続流路
83とノズル82とを有する接続流路管81と、から構成されている。脈動発生機構80
は、その内部に液体室71を有しており、液体室71の壁面の一部がダイヤフラム85に
よって構成されている。そして、ダイヤフラム85には、容積変更手段である積層型圧電
素子98が上板106を介して固着されている。すなわち、圧電素子98に駆動信号が入
力されると、圧電素子98の伸縮によってダイヤフラム85が変形し、液体室71の容積
が変更される。このように、脈動発生機構80は、供給された液体を液体噴射開口部48
からパルス状に噴射可能に構成されている。
【0063】
図27には、前記液体噴射制御部37内に設けられたアクチュエーター駆動制御装置7
7を示す。本実施形態の液体噴射装置のアクチュエーターは圧電素子98であり、前記第
2実施形態と同様に容量性負荷である。このアクチュエーター駆動制御装置77は、前記
第2実施形態の制御装置と同様に、ホストコンピューター12から入力された入力データ
やコマンドを読込み、その入力データやコマンドに基づいて所定の演算処理を実行するコ
ンピューターシステムで構成される制御部13と、制御部13からの制御信号に応じて圧
電素子98を駆動制御するアクチュエータードライバー78とを備えて構成される。制御
部13は、前記第1及び第2実施形態と同様に、CPU13a、RAM13b、ROM1
3cを備えている。また、図28には、前記アクチュエーター駆動制御装置77内のアク
チュエータードライバー78から圧電素子98に供給され、それら圧電素子98からなる
アクチュエーターを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態のような液
体噴射装置では、前述の説明から分かるように、種々の駆動信号を用いることが可能であ
るが、本実施形態では、前記第2実施形態と同様に、中間電圧を中心に電圧が変化する台
形波電圧信号とした。この駆動信号COMは、電圧の立上がり部分が液体室71の容積を
拡大して液体を引込む段階であり、電圧の立下がり部分が液体室71の容積を縮小して液
体を押出す段階である。
【0064】
従って、前記アクチュエータードライバー78内に構築されたアクチュエーター駆動回
路には、前記第1実施形態の第1〜第9実施例のアクチュエーター駆動回路を、アクチュ
エーターを圧電素子98に変更して、そのまま用いることができる。その場合、前述した
ように2次のローパスフィルターで構成される平滑フィルター28の共振を、第1帰還信
号及び第2帰還信号により有効に減衰することができる。また、1つのアクチュエーター
駆動回路に対し、それぞれ静電容量の異なる圧電素子98をランダムに接続し、駆動され
る場合には、前記第1実施形態と同様に、接続される圧電素子98によって平滑フィルタ
ー28及び駆動される圧電素子98の静電容量からなるフィルターの周波数特性が変化し
、駆動信号COMの波形に歪みが生じる。そのような場合に、前記第1実施形態の第1〜
第9実施例のアクチュエーター駆動回路では、駆動信号COMの波形歪みを抑制防止する
ことができる。また、個々の実施例に応じた効果も同様に得られる。尚、前記第1実施形
態の第3、第7、第9実施例については、接続される圧電素子98の静電容量に応じて、
ゲインの減少によって減衰されてしまう成分を強調するように逆フィルター203で駆動
波形信号WCOMを補正する。
【0065】
このように、本実施形態の容量性負荷駆動装置を用いた液体噴射装置でも、容量性負荷
である圧電素子98に駆動信号COMを印加するとダイヤフラム85を介して液体室71
の容積が縮小されて当該液体室71内の液体を噴射する。この場合に、減算部25から出
力される駆動波形信号WCOMと2つの帰還信号Refとの差分信号Diffをパルス変
調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅
して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルター2
8で平滑化して圧電素子98の駆動信号COMとする。そして、駆動信号COMそのもの
を第1帰還信号として減算部25に帰還すると共に、駆動信号COMの位相を進めて第2
帰還信号として減算部25に帰還することにより、駆動信号COMの比例・微分フィード
バックが可能となり、駆動信号COMの波形を十分に補償することができ、高精度な液体
噴射が可能となる。
【0066】
なお、本発明の容量性負荷駆動装置を用いた液体噴射装置は、前記インクや生理食塩水
以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの
流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する流
体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロル
ミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用い
られる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射
装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペット
として用いられて試料となる液体を噴射する液体噴射装置であってもよい。更に、時計や
カメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子など
に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの
透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置であってもよい。また、基板などをエッチン
グするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射
する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する液体噴射式記録装置で
あってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することがで
きる。
【符号の説明】
【0067】
1は印刷媒体、2はインクジェットヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラ
ー、6は搬送ベルト、7はヘッド固定プレート、8は駆動ローラー、9は従動ローラー、
10は排紙部、11は制御装置、13は制御部、16はヘッドドライバー、19はアクチ
ュエーター(容量性負荷)、24は駆動波形信号生成部、25は減算部、26は変調部、
27はデジタル電力増幅回路、28は平滑フィルター、29は補償器、30は減衰器、3
1は三角波生成部、32は比較部、33はハーフブリッジ出力段、34はゲートドライブ
回路、35は配線、36は液体噴射装置、37は制御部、38は液体噴射部、39はチュ
ーブ、40は液滴、52はダイヤフラム、53は圧電素子(容量性負荷、アクチュエータ
ー)、63はダイヤフラム、64は圧電素子(容量性負荷、アクチュエーター)、71は
液体室、74は入口流路、75は出口流路、77はアクチュエーター駆動制御装置、78
はアクチュエータードライバー、79は液体噴射システム、80は脈動発生機構、81は
接続流路管、82はノズル、85はダイヤフラム、98は圧電素子(容量性負荷、アクチ
ュエーター)、Cはコンデンサー、C2は第2コンデンサー、Rは接地抵抗(電流検出器
)、R2は第2接地抵抗(電流検出器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動波形信号を生成する駆動波形信号生成部と、
前記駆動波形信号と2つの帰還信号との差分信号を出力する減算部と、
前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調部と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
インダクタ及びコンデンサーで構成され且つ前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性
負荷の駆動信号とする平滑フィルターと、
前記駆動信号を減算部への第1帰還信号とする第1帰還回路と、
前記駆動信号の位相を進めて前記減算部への第2帰還信号とする第2帰還回路とを備え
たことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記平滑フィルターのコンデンサーに接続する電流検出器をさらに備え、
前記第2帰還回路は、前記電流検出器の出力を前記第2帰還信号とすることを特徴とす
る請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記平滑フィルターの出力側に接続する当該平滑フィルターのコンデンサーよりも容量
の小さい第2コンデンサーと、
当該第2コンデンサーに接続する電流検出器とをさらに備え、
前記第2帰還回路は、前記電流検出器の出力を前記第2帰還信号とすることを特徴とす
る請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項4】
前記駆動波形信号生成部と減算部との間に介装され、駆動する容量性負荷の数によって
前記平滑フィルター及び前記容量性負荷の静電容量の周波数特性が変化しても所望する駆
動信号を得ることができる逆フィルターをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3
の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項5】
前記変調部は、前記減算部の差分信号と三角波信号との比較によって前記変調信号に変
換する比較部を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の容量性負荷
駆動装置。
【請求項6】
前記変調部は、積分部と、前記積分部の出力を前記変調信号に変換する比較部とを備え
、前記積分部は、前記減算部の差分信号と前記変調信号との差分を積分して出力すること
を特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項7】
前記変調部は、積分部と、前記積分部の出力を前記変調信号に変換する比較部とを備え
、前記積分部は、前記減算部の差分信号と前記電力増幅変調信号との差分を積分して出力
することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷であ
るアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−201218(P2011−201218A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72406(P2010−72406)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】