容量性負荷駆動装置、液体噴射装置
【課題】ダミー負荷による電力消費を回避しながら平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制する。
【解決手段】駆動波形信号WCOMと帰還信号Refの差分信号Diffをパルス変調し、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅し、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルター28で平滑化して、圧電素子などの容量性負荷からなるアクチュエーター19に駆動信号COMを印加する場合に、例えば周波数特性の異なる2つの帰還回路201、202を設け、駆動されるアクチュエーター19の数に応じて2つの帰還回路201、202を切替えることで帰還回路の周波数特性を調整し、平滑フィルター29と駆動されるアクチュエーター19の容量で構成されるフィルターの周波数特性変化を抑制する。
【解決手段】駆動波形信号WCOMと帰還信号Refの差分信号Diffをパルス変調し、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅し、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルター28で平滑化して、圧電素子などの容量性負荷からなるアクチュエーター19に駆動信号COMを印加する場合に、例えば周波数特性の異なる2つの帰還回路201、202を設け、駆動されるアクチュエーター19の数に応じて2つの帰還回路201、202を切替えることで帰還回路の周波数特性を調整し、平滑フィルター29と駆動されるアクチュエーター19の容量で構成されるフィルターの周波数特性変化を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などの容量性負荷に駆動信号を印加して駆動する容量性負荷駆動装置に関し、容量性負荷をアクチュエーターとし、当該アクチュエーターに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば所定の電圧波形からなる駆動波形信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して容量性負荷からなるアクチュエーターへの駆動信号とする場合、駆動波形信号を変調回路でパルス変調して変調信号とし、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して電力増幅変調信号とし、その電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して駆動信号としている。
【0003】
この種の駆動回路に、例えば圧電素子などの容量性負荷をアクチュエーターとして複数接続し、それらのアクチュエーターのうち、駆動されるアクチュエーターの数が変化する場合、前記平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの静電容量で構成されるフィルターの周波数特性が変化し、その結果、駆動信号の波形が変化してしまう場合がある。この問題を解消するため、例えば下記特許文献1では、アクチュエーターの静電容量と同等の容量(以下、ダミー負荷とも記す)を各アクチュエーター毎に並列に配設し、駆動されるアクチュエーターは駆動回路に、アクチュエーターが駆動されない場合にはダミー負荷を駆動回路に接続し、トータルの容量が変化しないようにすることによって平滑フィルターとで構成されるフィルターの周波数特定を一定とするようにしている。なお、変調回路によるパルス変調の周波数を変調周波数、或いはキャリア周波数と呼んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−131990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1では、アクチュエーターを駆動しない場合でも、ダミー負荷で電力が消費されてしまうため、電力消費量が大きいという問題がある。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、ダミー負荷による電力消費を回避しながら平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することが可能な容量性負荷駆動装置、液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記諸問題を解決するため、本発明の容量性負荷駆動装置は、駆動波形信号を生成する駆動波形信号生成回路と、前記駆動波形信号と帰還信号との差分信号を出力する減算器と、前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性負荷の駆動信号とする平滑フィルターと、前記駆動信号を減算器への帰還信号とする帰還回路と、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記帰還回路の周波数特性を調整する帰還回路特性調整手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
この容量性負荷駆動装置によれば、減算器から出力される駆動波形信号と帰還信号との差分信号をパルス変調して変調信号とし、変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して電力増幅変調信号とし、電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して容量性負荷の駆動信号とし、駆動信号を帰還回路から帰還して帰還信号とするにあたり、駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて帰還回路の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷が必要なくなると共に、ダミー負荷に起因する電力を削減することができる。また、平滑フィルターと駆動される容量性負荷の容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができる。
【0008】
また、周波数特性の異なる前記帰還回路を複数備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の帰還回路を切替えることを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、切替えられる複数の帰還回路の周波数特性を大きく変化させることが可能となるので、平滑フィルターと駆動される容量性負荷の容量で構成されるフィルターの大幅な周波数特性の変化も抑制することができる。
【0009】
また、周波数特性を変更するための複数の素子を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の素子を切替えることを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0010】
また、周波数に対するゲイン特性を調整するゲイン特性調整回路を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記ゲイン特性調整回路によるゲイン特性を調整することで前記帰還回路の周波数特性を調整することを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の液体噴射装置は、前述した容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷であるアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置である。
この液体噴射装置によれば、駆動信号で駆動されるアクチュエーターの容量に応じて帰還回路の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷による電力消費を回避することができると共に、平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができ、より高精度な液体噴射が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の容量性負荷駆動装置を用いたインクジェットプリンターの第1実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンターに用いられるインクジェットヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1のインクジェットプリンターの制御装置のブロック図である。
【図4】容量性負荷からなるアクチュエーターの駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラーのブロック図である。
【図6】アクチュエーター駆動回路の第1実施例を示すブロック図である。
【図7】図6の調整部で行われる演算処理のフローチャートである。
【図8】駆動アクチュエーター数及び帰還回路選択信号のタイミングチャートである。
【図9】図6の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図10】帰還回路を設けない場合の駆動回路の周波数特性図である。
【図11】帰還回路が1つだけの場合の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図12】図11の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図13】駆動アクチュエーター数が変化する場合の平滑回路とアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性図である。
【図14】駆動アクチュエーター数が変化した場合の図11の駆動回路の作用を示す周波数特性図である。
【図15】駆動アクチュエーター数が変化した場合の図11の駆動回路の作用を示す周波数特性図である。
【図16】アクチュエーター駆動回路の第2実施例を示すブロック図である。
【図17】帰還回路を設計する説明図である。
【図18】アクチュエーター駆動回路の第3及び第4実施例を示すブロック図である。
【図19】アクチュエーター駆動回路の第5実施例を示すブロック図である。
【図20】図19の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図21】アクチュエーター駆動回路の第6実施例を示すブロック図である。
【図22】図21の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図23】アクチュエーター駆動回路の第7実施例を示すブロック図である。
【図24】アクチュエーター駆動回路の第8実施例を示すブロック図である。
【図25】図24のアクチュエーター駆動回路で電流を検出する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の容量性負荷駆動装置の第1実施形態として、インクジェットプリンターに適用されたものについて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンターの概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型インクジェットプリンターである。
【0014】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数のインクジェットヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート7に固定されている。各インクジェットヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射するインクの色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全てのインクジェットヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。
【0015】
インクジェットヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクが、図示しないインクタンクからインク供給チューブを介して供給される。そして、インクジェットヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量のインクを噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。本実施形態では、インクジェットヘッド2のノズルからインクを噴射する方法としてピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエーターである圧電素子に駆動信号を与えると、圧力室内の振動板が変位して圧力室内の容積が変化し、そのときに生じる圧力変化によって圧力室内のインクがノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでインクの噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外のインク噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0016】
インクジェットヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラー8及び従動ローラー9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラー8には図示しない電動モーターが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラー5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モーターによって駆動ローラー8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、インクジェットヘッド2からインクを噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダーなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられており、この印刷基準信号出力装置から出力される要求解像度相当のパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエーターに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色のインクを噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0017】
本実施形態のインクジェットプリンター内には、インクジェットプリンターを制御するための制御装置11が設けられている。この制御装置11は、図3に示すように、ホストコンピューター12から入力された印刷データを読込み、その印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するコンピューターシステムで構成される制御部13と、前記給紙ローラー5に接続されている給紙ローラーモーター14を駆動制御する給紙ローラーモータードライバー15と、インクジェットヘッド2を駆動制御するヘッドドライバー16と、前記駆動ローラー8に接続されている電動モーター17を駆動制御する電動モータードライバー18とを備えて構成される。
【0018】
制御部13は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)13aと、入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)13bと、CPU13aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)13cを備えている。この制御部13は、ホストコンピューター12から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU13aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインクを噴射するか或いはどの程度のインクを噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラーモータードライバー15、ヘッドドライバー16、電動モータードライバー18に制御信号及び駆動信号を出力する。これらの制御信号及び駆動信号により、給紙ローラーモーター14、電動モーター17、インクジェットヘッド2内のアクチュエーターなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0019】
図4には、前記制御装置11内のヘッドドライバー16からインクジェットヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエーターを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエーターを駆動してインクを噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通する圧力室の容積を拡大してインクを引込む段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分が圧力室の容積を縮小してインクを押出す段階であり、インクを押出した結果、インクがノズルから噴射される。
【0020】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることができ、これによりインクの噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、インクが乾かないうちに複数のインクを同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインクを噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インクを噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0021】
インクジェットヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて駆動パルスPCOMのうちどの駆動パルスPCOMを選択するかを示す駆動パルス選択特定データSIと、全ノズルにノズル選択データが入力された後に、駆動パルス選択特定データSIに基づいて駆動信号COMとインクジェットヘッド2のアクチュエーターとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHと、駆動パルス選択特定データSIをシリアル信号としてインクジェットヘッド2に送信するためのクロック信号SCKとが入力されている。なお、これ以後、アクチュエーター19を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0022】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエーター19に供給するためにインクジェットヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラーの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラーは、インクを噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエーター19を指定するための駆動パルス選択特定データSIを保存するレジスター20と、レジスター20のデータを一時的に保存するラッチ回路21と、ラッチ回路21の出力をレベル変換して選択スイッチ23に供給することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を圧電素子からなるアクチュエーター19に接続するレベルシフター22とを備えて構成されている。
【0023】
レベルシフター22は選択スイッチ23をオンオフできる電圧レベルに変換する。これは、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が、ラッチ回路21の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ23の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフター22によって選択スイッチ23が閉じられるアクチュエーター19は、駆動パルス選択特定データSIに基づき所定の接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、レジスター20の駆動パルス選択特定データSIがラッチ回路21に保存された後、次の印刷情報をレジスター20に入力し、インクの噴射タイミングに合わせてラッチ回路21の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエーター19のグランド端である。また、この選択スイッチ23により、圧電素子などのアクチュエーター19を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後(選択スイッチ23がオフ)も、当該アクチュエーター19の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。すなわち、前記圧電素子からなるアクチュエーター19は、容量性負荷である。
【0024】
図6には、アクチュエーター19の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエーター駆動回路は、前記制御装置11のヘッドドライバー16内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエーター19の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号生成回路24と、駆動波形信号生成回路24で生成された駆動波形信号WCOMから帰還信号Refを減じて差分信号Diffを出力する減算器25と、減算器25から出力された差分信号Diffをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号PWMを電力増幅するデジタル電力増幅回路27と、デジタル電力増幅回路27で電力増幅された電力増幅変調信号APWMを平滑化して、圧電素子からなるアクチュエーター19に駆動信号COMとして出力する平滑フィルター28と、前記平滑フィルター28の出力である駆動信号COMを前記減算器25に帰還する第1帰還回路201と、前記駆動信号COMを前記減算器25に帰還する第2帰還回路202と、前記第1帰還回路201又は第2帰還回路202の何れかを前記減算器25に接続する切替えスイッチ203と、前記駆動パルス選択特定データSIに応じて前記切換えスイッチ203の切替えを行う調整部204とを備えて構成される。なお、本実施形態では、第1帰還回路201と第2帰還回路202の2つの帰還回路しか設けていないが、後述する理由から、帰還回路の数はこれに限定されるものではなく、本発明では2以上の複数の帰還回路を備えることが可能である。
【0025】
駆動波形信号生成回路24は、デジタルデータからなる駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールド出力する。減算器25は、例えば比例定数用の抵抗を介装した一般的なアナログ減算回路である。変調回路26には、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、所定周波数の三角波信号を出力する三角波生成回路31と、三角波信号と差分信号Diffを比較し、例えば差分信号Diffが三角波信号より大きいときにオンデューティーとなるパルスデューティーの変調信号PWMを出力する比較器32とを備えて構成される。なお、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。また、駆動波形信号生成回路24、減算器25、変調回路26は、演算処理によって構築することもでき、その場合には、例えば前記制御装置11の制御部13内にプログラミングによって構築することができる。
【0026】
デジタル電力増幅回路27は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段33と、変調回路26からの変調信号PWMに基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成されている。デジタル電力増幅回路27では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段33の出力電圧Vaは、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは0となる。
【0027】
このようにハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅回路27の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
【0028】
平滑フィルター28は、図6に示すように、1つのインダクタLと、1つのコンデンサーCとで構成される2次のローパスフィルターからなる。本実施形態では、この平滑フィルター28によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分の信号振幅を減衰して除去し、アクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を出力する。
【0029】
第1帰還回路201及び第2帰還回路202は、後段に詳述するように、例えば1つのコンデンサーと1つの接地抵抗から構成されるハイパスフィルターと、1つの抵抗と1つの接地コンデンサーから構成されるローパスフィルターを直列に接続したものであり、周知のように回路素子の抵抗値や容量値を変更することにより周波数特性を変えることができる。本実施形態では、第1帰還回路201の周波数特性と、第2帰還回路202の周波数特性を意図的に異なるものとしている。それら帰還回路の周波数特性の設定手法については後段に詳述する。切換えスイッチ203は、第1帰還回路201又は第2帰還回路202を調整部204からの第1帰還回路選択信号又は第2帰還回路選択信号に応じて選択して切替え、前記減算器25の負帰還端子に接続する。
【0030】
前記調整部204は、例えば図7に示す演算処理を行い、前記切換えスイッチ203の切替えを行うものであり、必要に応じて、例えば前記制御装置11の制御部13内にプログラミングによって構築してもよい。図7の演算処理は、次回の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力タイミングに先駆けて行われ、ステップS1では、前記駆動パルス選択特定データSIから駆動アクチュエーター数nを算出する。前述したように、駆動パルス選択特定データSIは、どのノズルのアクチュエーター19に駆動パルスPCOMを印加するかを特定するものであるから、この駆動パルス選択特定データSIから駆動パルスPCOMの印加される、つまり駆動されるアクチュエーター19の数を求めることができる。
【0031】
次にステップS2に移行して、予め記憶されている周波数特性切替え所定値Aを読込む。本実施形態の場合、周波数特性切替え所定値Aには、例えば全アクチュエーター数の半分に相当する数値が適用される。
次にステップS3に移行して、前記ステップS1で算出した駆動アクチュエーター数nが前記周波数特性切替え所定値A以下であるか否かを判定し、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0032】
前記ステップS4では、第1帰還回路選択信号をオン状態(ハイレベル)とすると共に第2帰還回路選択信号をオフ状態(ローレベル)としてからメインプログラムに復帰する。
前記ステップS5では、第2帰還回路選択信号をオン状態(ハイレベル)とすると共に第1帰還回路選択信号をオフ状態(ローレベル)としてからメインプログラムに復帰する。
【0033】
この演算処理によれば、駆動アクチュエーター数nが図8のように経時変化する場合、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下である場合には第1帰還回路選択信号がハイレベル(第2帰還回路選択信号はローレベル)となり、第1帰還回路201が減算器25の負帰還端子に接続され、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aを超える場合には第2帰還回路選択信号がハイレベル(第1帰還回路選択信号はローレベル)となり、第2帰還回路202が減算器25の負帰還端子に接続される。
【0034】
図9aには、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下のときの出力ゲイン(周波数特性)を実線で、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)を二点鎖線で、選択される第1帰還回路201のゲイン(周波数特性)を一点鎖線で示す。同様に、図9bには、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aより大きいときの出力ゲイン(周波数特性)を実線で、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)を二点鎖線で、選択される第2帰還回路202のゲイン(周波数特性)を一点鎖線で示す。
【0035】
図9の場合は、図9aのように駆動アクチュエーター数が小さい場合には高周波数寄りに振幅の大きな共振が存在し、図9bのように駆動アクチュエーター数が大きい場合には低周波数寄りに振幅の小さな共振が存在する。本実施形態では、図9aに示すように、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下のときに選択される第1帰還回路201の周波数特性を、ハイパス領域のゲインを大きく設定し、且つローカット領域を高周波数帯域側に広げることで、振幅が大きく且つ高周波数寄りに存在する共振を減衰して、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのハイカット領域の直前まで出力ゲインをフラットにしている。また、図9bに示すように、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aより大きいときに選択される第2帰還回路202の周波数特性を、ハイパス領域のゲインを小さく設定し、且つローカット領域を低周波数帯域に抑えることで、振幅が小さく且つ低周波数寄りに存在する共振を減衰して、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのハイカット領域の直前まで出力ゲインをフラットにしている。
【0036】
以下に、各帰還回路の設定手法を述べる。前記平滑フィルター28を構成する2次のローパスフィルターでは、所謂ダンピング抵抗を介装していないので、図10に示すように、ハイカットする周波数帯域の低周波数側に共振が存在する。この共振は、例えば図11に示すような1つの帰還回路で減衰することができる。この場合は、例えば図12に一点鎖線で示すように帰還回路のゲイン(周波数特性)を設定することで、二点鎖線で示す平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)の共振を減衰し、実線で示すようにピークのない、フラットな出力ゲイン(周波数特性)を得ることができる。
【0037】
一方、前述したように、アクチュエーター19は、図2に示すノズル全てに設けられており、図5に示す選択スイッチ23が閉じられたアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が印加され、そのアクチュエーター19が駆動される。圧電素子からなるアクチュエーター19は、容量性負荷、即ち静電容量を有する。つまり、平滑フィルター28には、駆動されるアクチュエーター19の数分の静電容量が、当該平滑フィルター28のコンデンサーCに並列に接続される。当然ながら、駆動アクチュエーター数が変化すると、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性も変化する。
【0038】
図13には、駆動アクチュエーター数が変化したときの平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を示す。前述したように、本実施形態では、駆動アクチュエーター数が小さい場合には高周波数寄りに振幅の大きな共振が存在し、駆動アクチュエーター数が大きい場合には低周波数寄りに振幅の小さな共振が存在する。このような周波数特性の変化に対し、図11のように帰還回路が1つしかない場合、図14aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が小さいときの共振に合わせて、実線で示す出力ゲインが得られるように、一点鎖線で示すような帰還回路の周波数特性を設定すると、図14bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が大きいときの共振を、実線の出力ゲインのように減衰することができなくなってしまう。逆に、図15aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が大きいときの共振に合わせて、実線で示す出力ゲインが得られるように、一点鎖線で示すような帰還回路の周波数特性を設定すると、図15bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が小さいときの共振を、実線の出力ゲインのように減衰することができなくなると共に、出力ゲインがフラットでなくなってしまう。
【0039】
そこで、本実施形態では、周波数特性の異なる第1帰還回路201と第2帰還回路202の2つの帰還回路を設け、駆動アクチュエーター数に応じて、それらの帰還回路を切替えることで帰還回路全体の周波数特性を調整し、駆動アクチュエーター数の大きいときも小さいときも共振を減衰し、フラットな出力ゲインを得ることができる。なお、前記図6のアクチュエーター駆動回路に代えて、図16に示す第2実施例のアクチュエーター駆動回路を用いることもできる。この図16のアクチュエーター駆動回路は、前記図6のアクチュエーター駆動回路の切換えスイッチ203が減算器25側からアクチュエーター19側に移動しただけのものであり、図6のアクチュエーター駆動回路と同等の効果がある。但し、図6のアクチュエーター駆動回路と比べて、耐圧の大きな切換えスイッチ203が必要となる。
【0040】
次に、帰還回路の周波数特性の設定手法について説明する。例えば、帰還回路中の素子を、図17aに示すように、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC1、接地抵抗R1、ローパスフィルターを構成する抵抗R2、接地コンデンサーC2のように表すと、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC1の容量、接地抵抗R1の抵抗値を大きくすると、図17bに示すようにゲインが大きくなり、コンデンサーC1の容量、接地抵抗R1の抵抗値を小さくするとゲインが小さくなる。一方、ローパスフィルターを構成する抵抗R2の抵抗値、接地コンデンサーC2の容量を大きくすると高周波数帯域のゲインが小さくなり、抵抗R2の抵抗値、接地コンデンサーC2の容量を小さくすると高周波数帯域のゲインが大きくなる。この帰還回路の周波数特性と、前述した平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性を組合せたとき、所定の出力ゲインが得られるように、帰還回路の素子を設定すればよい。このように、前記第1及び第2実施例では、切替えられる複数の帰還回路の周波数特性を大きく変化させることが可能となるので、平滑フィルター28と駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの大幅な周波数特性の変化も抑制することができる。
【0041】
以下に他の実施例を示す。他の実施例の説明においては、前述の実施例と同様の構成については前述の実施例と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図18aは、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第3実施例を示すブロック図であり、図18bは、同じく第4実施例を示すブロック図である。これらの実施例では、帰還回路自体は、前記第1実施例及び第2実施例の第1帰還回路201しか設けていないが、例えば図18aの第3実施例では、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーをC11、C12、C13と3つ備え、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにし、図18bの第4実施例では、ハイパスフィルターを構成する接地抵抗をR11、R12、R13と3つ備え、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにしてある。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204によって行う。
【0042】
前述したように、第1帰還回路201では、例えばハイパスフィルターやローパスフィルターを構成する素子の抵抗値や容量、或いはインダクタを用いる場合には、そのインダクタ成分を調整・変更することで、当該第1帰還回路201の周波数特性(ゲイン)を調整・変更することができる。従って、例えば図18aの場合には、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC11、C12、C13の容量を異なるものとし、図18bの場合には、ハイパスフィルターを構成する接地抵抗R11、R12、R13の抵抗値を異なるものとし、調整部204が、駆動アクチュエーター数nに応じて、それらの素子を切替え接続すれば、第1帰還回路201の周波数特性を切替えて調整・変更することができる。
【0043】
図19は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第5実施例を示すブロック図である。本実施例では、前記図18のハイパスフィルターに代えて、ローパスフィルターを構成する接地コンデンサーの部分に、2つの接地コンデンサーC21、C22、及び1つの接地抵抗R21を並列に配設し、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにしてある。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204で行う。2つの接地コンデンサーC21、C22は容量が異なり、接地抵抗R21は高抵抗値のものを用いた。調整部204は、駆動パルス選択特定データSIから求められる駆動アクチュエーター数nが大きいときには、2つの接地コンデンサーC21、C22の何れかを接続し、駆動アクチュエーター数nが小さいときには高抵抗値の接地抵抗R21を接続するように切替え制御を行う。
【0044】
前述したように、駆動アクチュエーター数nが大きいときには、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性は共振が低周波数寄りに存在し、その振幅は小さい。従って、第1帰還回路201の周波数特性としては、前記共振を減衰すると共に、共振周波数以上の周波数帯域は帰還しすぎないようにする、つまり帰還信号によってハイカットされすぎないようにする必要があるからローパスフィルターを介装し、前記図17cで説明したように、ローパスフィルターの接地コンデンサーの容量を設定する。その結果、図20aに一点鎖線で示すように第1帰還回路201の周波数特性(ゲイン)を設定することで、図20aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの大きいときの共振を減衰すると共に、図20aに実線で示すように共振周波数より高い周波数帯域の出力ゲインを大きくして、ゲイン特性をフラットにすることができる。
【0045】
一方、駆動アクチュエーター数nが小さいときには、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性は共振が高周波数寄りに存在し、その振幅も大きい。従って、第1帰還回路201の周波数特性としては、前記共振を含め、共振周波数以上の周波数帯域を十分に帰還してハイカットされるようにすればよいので、場合によってはローパスフィルターは必要がない。そこで、本実施例では、駆動アクチュエーター数nが小さいときには第1帰還回路201のハイパスフィルターの接地コンデンサーを高抵抗値の接地抵抗R21に切替え接続し、図20bに一点鎖線で示すように第1帰還回路201の高周波数帯域のゲインを高め、図20bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの大きいときの共振周波数以上の帯域を十分に減衰し、図20bに実線で示すように出力ゲインをフラットなものとする。このように、前記第3〜第5実施例では、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0046】
図21は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第6実施例を示すブロック図である。本実施例では、前記第3〜第5実施例と同様に帰還回路は第1帰還回路201しか設けていない。また、第1帰還回路201には、1つのコンデンサーC1と1つの接地抵抗R1からなるハイパスフィルターと、1つの抵抗R2と1つの接地コンデンサーC2からなるローパスフィルターしか設けていない。本実施例では、これらハイパスフィルター及びローパスフィルターの組合せの減算器25側に第1帰還回路201のゲインを調整するゲイン調整器206を介装した。このゲイン調整器206は、抵抗値の異なる2つの抵抗R31、R32を並列に配設し、それらのうちの何れかを切換えスイッチ203で切替えて減算器25に接続する。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204で行う。接続される抵抗R31、R32の抵抗値が大きくなれば、第1帰還回路201のゲインが小さくなる。
【0047】
例えば、抵抗R31、R32のうち、何れか抵抗値の大きい方が接続された場合の第1帰還回路201の周波数特性が図22aに一点鎖線で示すようなものであり、このとき、図22aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの小さいときの共振を適正に減衰し、図22aに実線で示すようなフラットな出力ゲインが得られている場合、第1帰還回路201の周波数特性がそのままで駆動アクチュエーター数nが大きくなると、前述のように共振が低周波数寄りに移動し、その共振を第1帰還回路201のゲインで減衰しきれなくなる恐れがある。そこで、駆動アクチュエーター数nが大きいときには抵抗R31、R32のうち、何れか抵抗値の小さい方を接続し、図22bに一点鎖線で示すように第1帰還回路201のゲインを大きくする。これにより、図22bに二点鎖線で示すように低周波数寄りに移動した共振を適正に減衰することができ、図22bに実線で示すようなフラットな出力ゲインが得られる。このように、本実施例では、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0048】
図23は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第7実施例を示すブロック図である。本実施例では、アクチュエーター19が2個であり、夫々の容量が異なる場合に適用される。2個のアクチュエーター19のうち、何れか一方が選択スイッチ23によって駆動回路に接続される。なお、本実施例では、アクチュエーター1個が1つのインクジェットヘッドに対応するように示したが、1つのインクジェットヘッドが複数のアクチュエーターを有していても良い。例えば、容量の大きく異なる複数のインクジェットヘッドを付け替えたり、切り替えたりして使用する場合がこれに当たる。本実施例でも、前記第1実施例と同様に、周波数特性の異なる2つの第1帰還回路201、第2帰還回路202を備え、調整部204は、何れのアクチュエーター19が選択されたかを示すアクチュエーター選択情報に応じて切換えスイッチ203の切替え制御を行う。第1帰還回路201、第2帰還回路202の周波数特性の設定手法は、アクチュエーター19の容量の大きい方が、前記駆動アクチュエーター数nの大きい場合に、アクチュエーター19の容量の小さい方が、前記駆動アクチュエーター数nの小さい場合に相当する。
【0049】
図24は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第8実施例を示すブロック図である。本実施例の回路構成は、前記第7実施例のものと同等であるが、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力端には電流検出用抵抗Rwが介装され、その両端に生じる電流を電流検出回路205で検出し、調整部204は、前記電流検出回路205で検出された電流値に応じて切換えスイッチ203の切替え制御を行う。電流検出回路205で駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の電流を検出するため、本実施例では、駆動波形信号生成回路24から、電流検出のために図25aに示すような三角波電圧信号を出力する。三角波電圧信号では、図25bに示すように、電圧が増加しているときの電流値は正値一定、電圧が減少しているときの電流値は負値一定であるから、その何れか一方、又は絶対値を閾値Bと比較して接続されているアクチュエーター19の容量を検出することができる。閾値Bの設定手法としては、例えばアクチュエーター19の容量の負荷の公差が±30%、一方の容量をCα、他方の容量をCβとし、Cα<Cβである場合、Cα×1.3×dV/dt<B<Cβ×0.7×dV/dtの範囲に設定すればよい。この場合、検出された電流値がBより大きければ容量Cβが接続されており、Bより小さければ容量Cαが接続されている。
【0050】
このように本実施形態の容量性負荷駆動装置並びにインクジェットプリンターでは、圧電素子などの容量性負荷からなるアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を印加するとインクジェットヘッド2の圧力室の容積が縮小されて当該圧力室内のインクを噴射し、その噴射されたインクで印刷媒体1に印刷を行うにあたり、減算器25から出力される駆動波形信号WCOMと帰還信号Refとの差分信号Diffをパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルター28で平滑化してアクチュエーター19の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とし、その駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を帰還回路201、202から帰還して帰還信号Refとするにあたり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)で駆動されるアクチュエーター19の容量に応じて帰還回路201、202の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷が必要なくなると共に、ダミー負荷に起因した電力消費を回避することができる。また、平滑フィルター28と駆動されるアクチュエーター19の容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができ、高精度な印刷が可能となる。
なお、前記実施形態では、本発明の容量性負荷駆動装置をラインヘッド型のインクジェットプリンターに用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の容量性負荷駆動装置は、マルチパス型のインクジェットプリンターにも同様に適用可能である。
【0051】
また、前述の実施形態では、本発明の容量性負荷駆動回路をインクジェットプリンターの容量性負荷であるアクチュエーターの駆動に適用した場合についてのみ詳述したが、その他の流体噴射を行う装置に用いる容量性負荷の駆動にも同様に適用可能である。 例えば、容量性負荷を用いた流体噴射装置として、血管内に挿入し、血栓などを除去する目的で用いるカテーテルの先端に設置することに適したウォーターパルスメス、或いは生体組織を切開又は切除することに好適なウォーターパルスメスが挙げられる。これらのウォーターパルスメスにて用いる流体は、水又は生理食塩水であり、以降、これらを総称して液体と表す。
【0052】
上記のウォーターパルスメスでは、ポンプから供給される高圧の液体をパルス流として噴射する。そして、パルス流を噴射するにあたっては、容量性負荷である圧電素子を駆動させることによって流体室を構成するダイヤフラムを変位させ、パルス流を生成する。ウォーターパルスメスにおいても、容量性負荷である圧電素子と圧電素子を制御する流体噴射制御部とは、分離・離間して設けられる。従って、本発明の容量性負荷回路を上記のウォーターパルスメスに適用することによって、容量性負荷の駆動信号の精度を確保することができるため、高精度な流体噴射が可能になる。
【0053】
また、本発明の容量性負荷駆動装置を用いた流体噴射装置は、前記インクや生理食塩水以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する流体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1は印刷媒体、2はインクジェットヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラー、6は搬送ベルト、7はヘッド固定プレート、8は駆動ローラー、9は従動ローラー、10は排紙部、11は制御装置、13は制御部、16はヘッドドライバー、19はアクチュエーター(容量性負荷)、24は駆動波形信号生成回路、25は減算器、26は変調回路、27はデジタル電力増幅回路、28は平滑フィルター、29は補償器、30は減衰器、31は三角波生成回路、32は比較器、33はハーフブリッジ出力段、34はゲートドライブ回路、35は配線、201は第1帰還回路、202は第2帰還回路、203は切換えスイッチ、204は調整部、205は電流検出回路、206はゲイン調整器、C、C1、C2、C11、C12、C21、C22はコンデンサー、R、R1、R2、R11、R12、R21、R22は抵抗、Rwは電流検出用抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などの容量性負荷に駆動信号を印加して駆動する容量性負荷駆動装置に関し、容量性負荷をアクチュエーターとし、当該アクチュエーターに駆動信号を印加して液体を噴射する液体噴射装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば所定の電圧波形からなる駆動波形信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して容量性負荷からなるアクチュエーターへの駆動信号とする場合、駆動波形信号を変調回路でパルス変調して変調信号とし、その変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して電力増幅変調信号とし、その電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して駆動信号としている。
【0003】
この種の駆動回路に、例えば圧電素子などの容量性負荷をアクチュエーターとして複数接続し、それらのアクチュエーターのうち、駆動されるアクチュエーターの数が変化する場合、前記平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの静電容量で構成されるフィルターの周波数特性が変化し、その結果、駆動信号の波形が変化してしまう場合がある。この問題を解消するため、例えば下記特許文献1では、アクチュエーターの静電容量と同等の容量(以下、ダミー負荷とも記す)を各アクチュエーター毎に並列に配設し、駆動されるアクチュエーターは駆動回路に、アクチュエーターが駆動されない場合にはダミー負荷を駆動回路に接続し、トータルの容量が変化しないようにすることによって平滑フィルターとで構成されるフィルターの周波数特定を一定とするようにしている。なお、変調回路によるパルス変調の周波数を変調周波数、或いはキャリア周波数と呼んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−131990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1では、アクチュエーターを駆動しない場合でも、ダミー負荷で電力が消費されてしまうため、電力消費量が大きいという問題がある。
本発明は、これらの諸問題に着目して開発されたものであり、ダミー負荷による電力消費を回避しながら平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することが可能な容量性負荷駆動装置、液体噴射装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記諸問題を解決するため、本発明の容量性負荷駆動装置は、駆動波形信号を生成する駆動波形信号生成回路と、前記駆動波形信号と帰還信号との差分信号を出力する減算器と、前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性負荷の駆動信号とする平滑フィルターと、前記駆動信号を減算器への帰還信号とする帰還回路と、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記帰還回路の周波数特性を調整する帰還回路特性調整手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
この容量性負荷駆動装置によれば、減算器から出力される駆動波形信号と帰還信号との差分信号をパルス変調して変調信号とし、変調信号をデジタル電力増幅回路で電力増幅して電力増幅変調信号とし、電力増幅変調信号を平滑フィルターで平滑化して容量性負荷の駆動信号とし、駆動信号を帰還回路から帰還して帰還信号とするにあたり、駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて帰還回路の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷が必要なくなると共に、ダミー負荷に起因する電力を削減することができる。また、平滑フィルターと駆動される容量性負荷の容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができる。
【0008】
また、周波数特性の異なる前記帰還回路を複数備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の帰還回路を切替えることを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、切替えられる複数の帰還回路の周波数特性を大きく変化させることが可能となるので、平滑フィルターと駆動される容量性負荷の容量で構成されるフィルターの大幅な周波数特性の変化も抑制することができる。
【0009】
また、周波数特性を変更するための複数の素子を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の素子を切替えることを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0010】
また、周波数に対するゲイン特性を調整するゲイン特性調整回路を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記ゲイン特性調整回路によるゲイン特性を調整することで前記帰還回路の周波数特性を調整することを特徴とするものである。
この容量性負荷駆動装置によれば、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0011】
また、本発明の液体噴射装置は、前述した容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷であるアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置である。
この液体噴射装置によれば、駆動信号で駆動されるアクチュエーターの容量に応じて帰還回路の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷による電力消費を回避することができると共に、平滑フィルターと駆動されるアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができ、より高精度な液体噴射が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の容量性負荷駆動装置を用いたインクジェットプリンターの第1実施形態を示す概略構成正面図である。
【図2】図1のインクジェットプリンターに用いられるインクジェットヘッド近傍の平面図である。
【図3】図1のインクジェットプリンターの制御装置のブロック図である。
【図4】容量性負荷からなるアクチュエーターの駆動信号の説明図である。
【図5】スイッチングコントローラーのブロック図である。
【図6】アクチュエーター駆動回路の第1実施例を示すブロック図である。
【図7】図6の調整部で行われる演算処理のフローチャートである。
【図8】駆動アクチュエーター数及び帰還回路選択信号のタイミングチャートである。
【図9】図6の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図10】帰還回路を設けない場合の駆動回路の周波数特性図である。
【図11】帰還回路が1つだけの場合の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【図12】図11の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図13】駆動アクチュエーター数が変化する場合の平滑回路とアクチュエーターの容量で構成されるフィルターの周波数特性図である。
【図14】駆動アクチュエーター数が変化した場合の図11の駆動回路の作用を示す周波数特性図である。
【図15】駆動アクチュエーター数が変化した場合の図11の駆動回路の作用を示す周波数特性図である。
【図16】アクチュエーター駆動回路の第2実施例を示すブロック図である。
【図17】帰還回路を設計する説明図である。
【図18】アクチュエーター駆動回路の第3及び第4実施例を示すブロック図である。
【図19】アクチュエーター駆動回路の第5実施例を示すブロック図である。
【図20】図19の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図21】アクチュエーター駆動回路の第6実施例を示すブロック図である。
【図22】図21の駆動回路の作用を説明する周波数特性図である。
【図23】アクチュエーター駆動回路の第7実施例を示すブロック図である。
【図24】アクチュエーター駆動回路の第8実施例を示すブロック図である。
【図25】図24のアクチュエーター駆動回路で電流を検出する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の容量性負荷駆動装置の第1実施形態として、インクジェットプリンターに適用されたものについて説明する。
図1は、本実施形態のインクジェットプリンターの概略構成図であり、図1において、印刷媒体1は、図の左から右に向けて矢印方向に搬送され、その搬送途中の印刷領域で印刷される、ラインヘッド型インクジェットプリンターである。
【0014】
図1中の符号2は、印刷媒体1の搬送ライン上方に設けられた複数のインクジェットヘッドであり、印刷媒体搬送方向に2列になるように且つ印刷媒体搬送方向と交差する方向に並べて配設されて、夫々、ヘッド固定プレート7に固定されている。各インクジェットヘッド2の最下面には、多数のノズルが形成されており、この面がノズル面と呼ばれている。ノズルは、図2に示すように、噴射するインクの色毎に、印刷媒体搬送方向と交差する方向に列状に配設されており、その列をノズル列と呼んだり、その列方向をノズル列方向と呼んだりする。そして、印刷媒体搬送方向と交差する方向に配設された全てのインクジェットヘッド2のノズル列によって、印刷媒体1の搬送方向と交差する方向の幅全長に及ぶラインヘッドが形成されている。
【0015】
インクジェットヘッド2には、例えばイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクが、図示しないインクタンクからインク供給チューブを介して供給される。そして、インクジェットヘッド2に形成されているノズルから同時に必要箇所に必要量のインクを噴射することにより、印刷媒体1上に微小なドットを形成する。これを各色毎に行うことにより、搬送部4で搬送される印刷媒体1を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。本実施形態では、インクジェットヘッド2のノズルからインクを噴射する方法としてピエゾ方式を用いた。ピエゾ方式は、アクチュエーターである圧電素子に駆動信号を与えると、圧力室内の振動板が変位して圧力室内の容積が変化し、そのときに生じる圧力変化によって圧力室内のインクがノズルから噴射されるというものである。そして、駆動信号の波高値や電圧増減傾きを調整することでインクの噴射量を調整することが可能となる。なお、本発明は、ピエゾ方式以外のインク噴射方法にも、同様に適用可能である。
【0016】
インクジェットヘッド2の下方には、印刷媒体1を搬送方向に搬送するための搬送部4が設けられている。搬送部4は、駆動ローラー8及び従動ローラー9に搬送ベルト6を巻回して構成され、駆動ローラー8には図示しない電動モーターが接続されている。また、搬送ベルト6の内側には、当該搬送ベルト6の表面に印刷媒体1を吸着するための図示しない吸着装置が設けられている。この吸着装置には、例えば負圧によって印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する空気吸引装置や、静電気力で印刷媒体1を搬送ベルト6に吸着する静電吸着装置などが用いられる。従って、給紙ローラー5によって給紙部3から印刷媒体1を一枚だけ搬送ベルト6上に送給し、電動モーターによって駆動ローラー8を回転駆動すると、搬送ベルト6が印刷媒体搬送方向に回転され、吸着装置によって搬送ベルト6に印刷媒体1が吸着されて搬送される。この印刷媒体1の搬送中に、インクジェットヘッド2からインクを噴射して印刷を行う。印刷の終了した印刷媒体1は、搬送方向下流側の排紙部10に排紙される。なお、前記搬送ベルト6には、例えばリニアエンコーダーなどで構成される印刷基準信号出力装置が取付けられており、この印刷基準信号出力装置から出力される要求解像度相当のパルス信号に応じて、後述する駆動回路から駆動信号をアクチュエーターに出力することで印刷媒体1上の所定位置に所定の色のインクを噴射し、そのドットによって印刷媒体1上に所定の画像を描画する。
【0017】
本実施形態のインクジェットプリンター内には、インクジェットプリンターを制御するための制御装置11が設けられている。この制御装置11は、図3に示すように、ホストコンピューター12から入力された印刷データを読込み、その印刷データに基づいて印刷処理等の演算処理を実行するコンピューターシステムで構成される制御部13と、前記給紙ローラー5に接続されている給紙ローラーモーター14を駆動制御する給紙ローラーモータードライバー15と、インクジェットヘッド2を駆動制御するヘッドドライバー16と、前記駆動ローラー8に接続されている電動モーター17を駆動制御する電動モータードライバー18とを備えて構成される。
【0018】
制御部13は、印刷処理等の各種処理を実行するCPU(Central Processing Unit)13aと、入力された印刷データ或いは当該印刷データ印刷処理等を実行する際の各種データを一時的に格納し、或いは印刷処理等のプログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)13bと、CPU13aで実行する制御プログラム等を格納する不揮発性半導体メモリで構成されるROM(Read-Only Memory)13cを備えている。この制御部13は、ホストコンピューター12から印刷データ(画像データ)を入手すると、CPU13aが、この印刷データに所定の処理を実行して、何れのノズルからインクを噴射するか或いはどの程度のインクを噴射するかというノズル選択データ(駆動パルス選択データ)を算出し、この印刷データや駆動パルス選択データ及び各種センサからの入力データに基づいて、給紙ローラーモータードライバー15、ヘッドドライバー16、電動モータードライバー18に制御信号及び駆動信号を出力する。これらの制御信号及び駆動信号により、給紙ローラーモーター14、電動モーター17、インクジェットヘッド2内のアクチュエーターなどが夫々作動して、印刷媒体1の給紙及び搬送及び排紙、並びに印刷媒体1への印刷処理が実行される。なお、制御部62内の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0019】
図4には、前記制御装置11内のヘッドドライバー16からインクジェットヘッド2に供給され、圧電素子からなるアクチュエーターを駆動するための駆動信号COMの一例を示す。本実施形態では、中間電圧を中心に電圧が変化する信号とした。この駆動信号COMは、アクチュエーターを駆動してインクを噴射する単位駆動信号としての駆動パルスPCOMを時系列的に接続したものであり、駆動パルスPCOMの立上がり部分がノズルに連通する圧力室の容積を拡大してインクを引込む段階であり、駆動パルスPCOMの立下がり部分が圧力室の容積を縮小してインクを押出す段階であり、インクを押出した結果、インクがノズルから噴射される。
【0020】
この電圧台形波からなる駆動パルスPCOMの電圧増減傾きや波高値を種々に変更することにより、インクの引込量や引込速度、インクの押出量や押出速度を変化させることができ、これによりインクの噴射量を変化させて異なる大きさのドットを得ることができる。従って、複数の駆動パルスPCOMを時系列的に連結する場合でも、そのうちから単独の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを噴射したり、複数の駆動パルスPCOMを選択してアクチュエーター19に供給し、インクを複数回噴射したりすることで種々の大きさのドットを得ることができる。即ち、インクが乾かないうちに複数のインクを同じ位置に着弾すると、実質的に大きなインクを噴射するのと同じことになり、ドットの大きさを大きくすることができるのである。このような技術の組合せによって多階調化を図ることが可能となる。なお、図4の左端の駆動パルスPCOM1は、インクを引込むだけで押出していない。これは、微振動と呼ばれ、インクを噴射せずに、ノズルの増粘を抑制防止したりするのに用いられる。
【0021】
インクジェットヘッド2には、前記駆動信号COMの他、前記図3の制御装置から制御信号として、印刷データに基づいて駆動パルスPCOMのうちどの駆動パルスPCOMを選択するかを示す駆動パルス選択特定データSIと、全ノズルにノズル選択データが入力された後に、駆動パルス選択特定データSIに基づいて駆動信号COMとインクジェットヘッド2のアクチュエーターとを接続させるラッチ信号LAT及びチャンネル信号CHと、駆動パルス選択特定データSIをシリアル信号としてインクジェットヘッド2に送信するためのクロック信号SCKとが入力されている。なお、これ以後、アクチュエーター19を駆動する駆動信号の最小単位を駆動パルスPCOMとし、駆動パルスPCOMが時系列的に連結された信号全体を駆動信号COMと記す。即ち、ラッチ信号LATで一連の駆動信号COMが出力され始め、チャンネル信号CH毎に駆動パルスPCOMが出力されることになる。
【0022】
図5には、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)をアクチュエーター19に供給するためにインクジェットヘッド2内に構築されたスイッチングコントローラーの具体的な構成を示す。このスイッチングコントローラーは、インクを噴射させるノズルに対応した圧電素子などのアクチュエーター19を指定するための駆動パルス選択特定データSIを保存するレジスター20と、レジスター20のデータを一時的に保存するラッチ回路21と、ラッチ回路21の出力をレベル変換して選択スイッチ23に供給することにより、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を圧電素子からなるアクチュエーター19に接続するレベルシフター22とを備えて構成されている。
【0023】
レベルシフター22は選択スイッチ23をオンオフできる電圧レベルに変換する。これは、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が、ラッチ回路21の出力電圧に比べて高い電圧であり、これに合わせて選択スイッチ23の動作電圧範囲も高く設定されているためである。従って、レベルシフター22によって選択スイッチ23が閉じられるアクチュエーター19は、駆動パルス選択特定データSIに基づき所定の接続タイミングで駆動信号COM(駆動パルスPCOM)に接続される。また、レジスター20の駆動パルス選択特定データSIがラッチ回路21に保存された後、次の印刷情報をレジスター20に入力し、インクの噴射タイミングに合わせてラッチ回路21の保存データを順次更新する。なお、図中の符号HGNDは、圧電素子などのアクチュエーター19のグランド端である。また、この選択スイッチ23により、圧電素子などのアクチュエーター19を駆動信号COM(駆動パルスPCOM)から切り離した後(選択スイッチ23がオフ)も、当該アクチュエーター19の入力電圧は、切り離す直前の電圧に維持される。すなわち、前記圧電素子からなるアクチュエーター19は、容量性負荷である。
【0024】
図6には、アクチュエーター19の駆動回路の概略構成を示す。このアクチュエーター駆動回路は、前記制御装置11のヘッドドライバー16内に構築されている。本実施形態の駆動回路は、予め記憶されている駆動波形データDWCOMに基づいて、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の元、つまりアクチュエーター19の駆動を制御する信号の基準となる駆動波形信号WCOMを生成する駆動波形信号生成回路24と、駆動波形信号生成回路24で生成された駆動波形信号WCOMから帰還信号Refを減じて差分信号Diffを出力する減算器25と、減算器25から出力された差分信号Diffをパルス変調する変調回路26と、変調回路26でパルス変調された変調信号PWMを電力増幅するデジタル電力増幅回路27と、デジタル電力増幅回路27で電力増幅された電力増幅変調信号APWMを平滑化して、圧電素子からなるアクチュエーター19に駆動信号COMとして出力する平滑フィルター28と、前記平滑フィルター28の出力である駆動信号COMを前記減算器25に帰還する第1帰還回路201と、前記駆動信号COMを前記減算器25に帰還する第2帰還回路202と、前記第1帰還回路201又は第2帰還回路202の何れかを前記減算器25に接続する切替えスイッチ203と、前記駆動パルス選択特定データSIに応じて前記切換えスイッチ203の切替えを行う調整部204とを備えて構成される。なお、本実施形態では、第1帰還回路201と第2帰還回路202の2つの帰還回路しか設けていないが、後述する理由から、帰還回路の数はこれに限定されるものではなく、本発明では2以上の複数の帰還回路を備えることが可能である。
【0025】
駆動波形信号生成回路24は、デジタルデータからなる駆動波形データDWCOMを電圧信号に変換して所定サンプリング周期分ホールド出力する。減算器25は、例えば比例定数用の抵抗を介装した一般的なアナログ減算回路である。変調回路26には、周知のパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)回路を用いた。パルス幅変調は、所定周波数の三角波信号を出力する三角波生成回路31と、三角波信号と差分信号Diffを比較し、例えば差分信号Diffが三角波信号より大きいときにオンデューティーとなるパルスデューティーの変調信号PWMを出力する比較器32とを備えて構成される。なお、変調回路26には、この他にパルス密度変調(PDM)回路などの周知のパルス変調回路を用いることができる。また、駆動波形信号生成回路24、減算器25、変調回路26は、演算処理によって構築することもでき、その場合には、例えば前記制御装置11の制御部13内にプログラミングによって構築することができる。
【0026】
デジタル電力増幅回路27は、図8に示すように、実質的に電力を増幅するためのハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2からなるハーフブリッジ出力段33と、変調回路26からの変調信号PWMに基づいて、ハイサイド側スイッチング素子Q1、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GH、GLを調整するためのゲートドライブ回路34とを備えて構成されている。デジタル電力増幅回路27では、変調信号がハイレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはハイレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはローレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオン状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオフ状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段33の出力電圧Vaは、供給電圧VDDとなる。一方、変調信号がローレベルであるとき、ハイサイド側スイッチング素子Q1のゲート−ソース間信号GHはローレベルとなり、ローサイド側スイッチング素子Q2のゲート−ソース間信号GLはハイレベルとなるので、ハイサイド側スイッチング素子Q1はオフ状態となり、ローサイド側スイッチング素子Q2はオン状態となり、その結果、ハーフブリッジ出力段21の出力電圧Vaは0となる。
【0027】
このようにハイサイド側スイッチング素子Q1及びローサイド側スイッチング素子Q2がデジタル駆動される場合には、オン状態のスイッチング素子に電流が流れるが、ドレイン−ソース間の抵抗値は非常に小さく、損失は殆ど発生しない。また、オフ状態のスイッチング素子には電流が流れないので損失は発生しない。従って、このデジタル電力増幅回路27の損失そのものは極めて小さく、小型のMOSFET等のスイッチング素子を使用することができる。
【0028】
平滑フィルター28は、図6に示すように、1つのインダクタLと、1つのコンデンサーCとで構成される2次のローパスフィルターからなる。本実施形態では、この平滑フィルター28によって、前記変調回路26で生じた変調周波数、即ちパルス変調の周波数成分の信号振幅を減衰して除去し、アクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を出力する。
【0029】
第1帰還回路201及び第2帰還回路202は、後段に詳述するように、例えば1つのコンデンサーと1つの接地抵抗から構成されるハイパスフィルターと、1つの抵抗と1つの接地コンデンサーから構成されるローパスフィルターを直列に接続したものであり、周知のように回路素子の抵抗値や容量値を変更することにより周波数特性を変えることができる。本実施形態では、第1帰還回路201の周波数特性と、第2帰還回路202の周波数特性を意図的に異なるものとしている。それら帰還回路の周波数特性の設定手法については後段に詳述する。切換えスイッチ203は、第1帰還回路201又は第2帰還回路202を調整部204からの第1帰還回路選択信号又は第2帰還回路選択信号に応じて選択して切替え、前記減算器25の負帰還端子に接続する。
【0030】
前記調整部204は、例えば図7に示す演算処理を行い、前記切換えスイッチ203の切替えを行うものであり、必要に応じて、例えば前記制御装置11の制御部13内にプログラミングによって構築してもよい。図7の演算処理は、次回の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力タイミングに先駆けて行われ、ステップS1では、前記駆動パルス選択特定データSIから駆動アクチュエーター数nを算出する。前述したように、駆動パルス選択特定データSIは、どのノズルのアクチュエーター19に駆動パルスPCOMを印加するかを特定するものであるから、この駆動パルス選択特定データSIから駆動パルスPCOMの印加される、つまり駆動されるアクチュエーター19の数を求めることができる。
【0031】
次にステップS2に移行して、予め記憶されている周波数特性切替え所定値Aを読込む。本実施形態の場合、周波数特性切替え所定値Aには、例えば全アクチュエーター数の半分に相当する数値が適用される。
次にステップS3に移行して、前記ステップS1で算出した駆動アクチュエーター数nが前記周波数特性切替え所定値A以下であるか否かを判定し、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。
【0032】
前記ステップS4では、第1帰還回路選択信号をオン状態(ハイレベル)とすると共に第2帰還回路選択信号をオフ状態(ローレベル)としてからメインプログラムに復帰する。
前記ステップS5では、第2帰還回路選択信号をオン状態(ハイレベル)とすると共に第1帰還回路選択信号をオフ状態(ローレベル)としてからメインプログラムに復帰する。
【0033】
この演算処理によれば、駆動アクチュエーター数nが図8のように経時変化する場合、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下である場合には第1帰還回路選択信号がハイレベル(第2帰還回路選択信号はローレベル)となり、第1帰還回路201が減算器25の負帰還端子に接続され、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aを超える場合には第2帰還回路選択信号がハイレベル(第1帰還回路選択信号はローレベル)となり、第2帰還回路202が減算器25の負帰還端子に接続される。
【0034】
図9aには、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下のときの出力ゲイン(周波数特性)を実線で、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)を二点鎖線で、選択される第1帰還回路201のゲイン(周波数特性)を一点鎖線で示す。同様に、図9bには、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aより大きいときの出力ゲイン(周波数特性)を実線で、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)を二点鎖線で、選択される第2帰還回路202のゲイン(周波数特性)を一点鎖線で示す。
【0035】
図9の場合は、図9aのように駆動アクチュエーター数が小さい場合には高周波数寄りに振幅の大きな共振が存在し、図9bのように駆動アクチュエーター数が大きい場合には低周波数寄りに振幅の小さな共振が存在する。本実施形態では、図9aに示すように、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値A以下のときに選択される第1帰還回路201の周波数特性を、ハイパス領域のゲインを大きく設定し、且つローカット領域を高周波数帯域側に広げることで、振幅が大きく且つ高周波数寄りに存在する共振を減衰して、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのハイカット領域の直前まで出力ゲインをフラットにしている。また、図9bに示すように、駆動アクチュエーター数nが周波数特性切替え所定値Aより大きいときに選択される第2帰還回路202の周波数特性を、ハイパス領域のゲインを小さく設定し、且つローカット領域を低周波数帯域に抑えることで、振幅が小さく且つ低周波数寄りに存在する共振を減衰して、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのハイカット領域の直前まで出力ゲインをフラットにしている。
【0036】
以下に、各帰還回路の設定手法を述べる。前記平滑フィルター28を構成する2次のローパスフィルターでは、所謂ダンピング抵抗を介装していないので、図10に示すように、ハイカットする周波数帯域の低周波数側に共振が存在する。この共振は、例えば図11に示すような1つの帰還回路で減衰することができる。この場合は、例えば図12に一点鎖線で示すように帰還回路のゲイン(周波数特性)を設定することで、二点鎖線で示す平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターのゲイン(周波数特性)の共振を減衰し、実線で示すようにピークのない、フラットな出力ゲイン(周波数特性)を得ることができる。
【0037】
一方、前述したように、アクチュエーター19は、図2に示すノズル全てに設けられており、図5に示す選択スイッチ23が閉じられたアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)が印加され、そのアクチュエーター19が駆動される。圧電素子からなるアクチュエーター19は、容量性負荷、即ち静電容量を有する。つまり、平滑フィルター28には、駆動されるアクチュエーター19の数分の静電容量が、当該平滑フィルター28のコンデンサーCに並列に接続される。当然ながら、駆動アクチュエーター数が変化すると、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性も変化する。
【0038】
図13には、駆動アクチュエーター数が変化したときの平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を示す。前述したように、本実施形態では、駆動アクチュエーター数が小さい場合には高周波数寄りに振幅の大きな共振が存在し、駆動アクチュエーター数が大きい場合には低周波数寄りに振幅の小さな共振が存在する。このような周波数特性の変化に対し、図11のように帰還回路が1つしかない場合、図14aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が小さいときの共振に合わせて、実線で示す出力ゲインが得られるように、一点鎖線で示すような帰還回路の周波数特性を設定すると、図14bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が大きいときの共振を、実線の出力ゲインのように減衰することができなくなってしまう。逆に、図15aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が大きいときの共振に合わせて、実線で示す出力ゲインが得られるように、一点鎖線で示すような帰還回路の周波数特性を設定すると、図15bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数が小さいときの共振を、実線の出力ゲインのように減衰することができなくなると共に、出力ゲインがフラットでなくなってしまう。
【0039】
そこで、本実施形態では、周波数特性の異なる第1帰還回路201と第2帰還回路202の2つの帰還回路を設け、駆動アクチュエーター数に応じて、それらの帰還回路を切替えることで帰還回路全体の周波数特性を調整し、駆動アクチュエーター数の大きいときも小さいときも共振を減衰し、フラットな出力ゲインを得ることができる。なお、前記図6のアクチュエーター駆動回路に代えて、図16に示す第2実施例のアクチュエーター駆動回路を用いることもできる。この図16のアクチュエーター駆動回路は、前記図6のアクチュエーター駆動回路の切換えスイッチ203が減算器25側からアクチュエーター19側に移動しただけのものであり、図6のアクチュエーター駆動回路と同等の効果がある。但し、図6のアクチュエーター駆動回路と比べて、耐圧の大きな切換えスイッチ203が必要となる。
【0040】
次に、帰還回路の周波数特性の設定手法について説明する。例えば、帰還回路中の素子を、図17aに示すように、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC1、接地抵抗R1、ローパスフィルターを構成する抵抗R2、接地コンデンサーC2のように表すと、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC1の容量、接地抵抗R1の抵抗値を大きくすると、図17bに示すようにゲインが大きくなり、コンデンサーC1の容量、接地抵抗R1の抵抗値を小さくするとゲインが小さくなる。一方、ローパスフィルターを構成する抵抗R2の抵抗値、接地コンデンサーC2の容量を大きくすると高周波数帯域のゲインが小さくなり、抵抗R2の抵抗値、接地コンデンサーC2の容量を小さくすると高周波数帯域のゲインが大きくなる。この帰還回路の周波数特性と、前述した平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性を組合せたとき、所定の出力ゲインが得られるように、帰還回路の素子を設定すればよい。このように、前記第1及び第2実施例では、切替えられる複数の帰還回路の周波数特性を大きく変化させることが可能となるので、平滑フィルター28と駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの大幅な周波数特性の変化も抑制することができる。
【0041】
以下に他の実施例を示す。他の実施例の説明においては、前述の実施例と同様の構成については前述の実施例と同じ符号を付し、その説明を省略する。
図18aは、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第3実施例を示すブロック図であり、図18bは、同じく第4実施例を示すブロック図である。これらの実施例では、帰還回路自体は、前記第1実施例及び第2実施例の第1帰還回路201しか設けていないが、例えば図18aの第3実施例では、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーをC11、C12、C13と3つ備え、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにし、図18bの第4実施例では、ハイパスフィルターを構成する接地抵抗をR11、R12、R13と3つ備え、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにしてある。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204によって行う。
【0042】
前述したように、第1帰還回路201では、例えばハイパスフィルターやローパスフィルターを構成する素子の抵抗値や容量、或いはインダクタを用いる場合には、そのインダクタ成分を調整・変更することで、当該第1帰還回路201の周波数特性(ゲイン)を調整・変更することができる。従って、例えば図18aの場合には、ハイパスフィルターを構成するコンデンサーC11、C12、C13の容量を異なるものとし、図18bの場合には、ハイパスフィルターを構成する接地抵抗R11、R12、R13の抵抗値を異なるものとし、調整部204が、駆動アクチュエーター数nに応じて、それらの素子を切替え接続すれば、第1帰還回路201の周波数特性を切替えて調整・変更することができる。
【0043】
図19は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第5実施例を示すブロック図である。本実施例では、前記図18のハイパスフィルターに代えて、ローパスフィルターを構成する接地コンデンサーの部分に、2つの接地コンデンサーC21、C22、及び1つの接地抵抗R21を並列に配設し、それらを切換えスイッチ203で切替え接続できるようにしてある。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204で行う。2つの接地コンデンサーC21、C22は容量が異なり、接地抵抗R21は高抵抗値のものを用いた。調整部204は、駆動パルス選択特定データSIから求められる駆動アクチュエーター数nが大きいときには、2つの接地コンデンサーC21、C22の何れかを接続し、駆動アクチュエーター数nが小さいときには高抵抗値の接地抵抗R21を接続するように切替え制御を行う。
【0044】
前述したように、駆動アクチュエーター数nが大きいときには、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性は共振が低周波数寄りに存在し、その振幅は小さい。従って、第1帰還回路201の周波数特性としては、前記共振を減衰すると共に、共振周波数以上の周波数帯域は帰還しすぎないようにする、つまり帰還信号によってハイカットされすぎないようにする必要があるからローパスフィルターを介装し、前記図17cで説明したように、ローパスフィルターの接地コンデンサーの容量を設定する。その結果、図20aに一点鎖線で示すように第1帰還回路201の周波数特性(ゲイン)を設定することで、図20aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの大きいときの共振を減衰すると共に、図20aに実線で示すように共振周波数より高い周波数帯域の出力ゲインを大きくして、ゲイン特性をフラットにすることができる。
【0045】
一方、駆動アクチュエーター数nが小さいときには、平滑フィルター28及び駆動されるアクチュエーター19の静電容量で構成されるフィルターの周波数特性は共振が高周波数寄りに存在し、その振幅も大きい。従って、第1帰還回路201の周波数特性としては、前記共振を含め、共振周波数以上の周波数帯域を十分に帰還してハイカットされるようにすればよいので、場合によってはローパスフィルターは必要がない。そこで、本実施例では、駆動アクチュエーター数nが小さいときには第1帰還回路201のハイパスフィルターの接地コンデンサーを高抵抗値の接地抵抗R21に切替え接続し、図20bに一点鎖線で示すように第1帰還回路201の高周波数帯域のゲインを高め、図20bに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの大きいときの共振周波数以上の帯域を十分に減衰し、図20bに実線で示すように出力ゲインをフラットなものとする。このように、前記第3〜第5実施例では、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0046】
図21は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第6実施例を示すブロック図である。本実施例では、前記第3〜第5実施例と同様に帰還回路は第1帰還回路201しか設けていない。また、第1帰還回路201には、1つのコンデンサーC1と1つの接地抵抗R1からなるハイパスフィルターと、1つの抵抗R2と1つの接地コンデンサーC2からなるローパスフィルターしか設けていない。本実施例では、これらハイパスフィルター及びローパスフィルターの組合せの減算器25側に第1帰還回路201のゲインを調整するゲイン調整器206を介装した。このゲイン調整器206は、抵抗値の異なる2つの抵抗R31、R32を並列に配設し、それらのうちの何れかを切換えスイッチ203で切替えて減算器25に接続する。切換えスイッチ203の切替え制御は調整部204で行う。接続される抵抗R31、R32の抵抗値が大きくなれば、第1帰還回路201のゲインが小さくなる。
【0047】
例えば、抵抗R31、R32のうち、何れか抵抗値の大きい方が接続された場合の第1帰還回路201の周波数特性が図22aに一点鎖線で示すようなものであり、このとき、図22aに二点鎖線で示す駆動アクチュエーター数nの小さいときの共振を適正に減衰し、図22aに実線で示すようなフラットな出力ゲインが得られている場合、第1帰還回路201の周波数特性がそのままで駆動アクチュエーター数nが大きくなると、前述のように共振が低周波数寄りに移動し、その共振を第1帰還回路201のゲインで減衰しきれなくなる恐れがある。そこで、駆動アクチュエーター数nが大きいときには抵抗R31、R32のうち、何れか抵抗値の小さい方を接続し、図22bに一点鎖線で示すように第1帰還回路201のゲインを大きくする。これにより、図22bに二点鎖線で示すように低周波数寄りに移動した共振を適正に減衰することができ、図22bに実線で示すようなフラットな出力ゲインが得られる。このように、本実施例では、帰還回路の数を低減して回路規模を小さくすることが可能となる。
【0048】
図23は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第7実施例を示すブロック図である。本実施例では、アクチュエーター19が2個であり、夫々の容量が異なる場合に適用される。2個のアクチュエーター19のうち、何れか一方が選択スイッチ23によって駆動回路に接続される。なお、本実施例では、アクチュエーター1個が1つのインクジェットヘッドに対応するように示したが、1つのインクジェットヘッドが複数のアクチュエーターを有していても良い。例えば、容量の大きく異なる複数のインクジェットヘッドを付け替えたり、切り替えたりして使用する場合がこれに当たる。本実施例でも、前記第1実施例と同様に、周波数特性の異なる2つの第1帰還回路201、第2帰還回路202を備え、調整部204は、何れのアクチュエーター19が選択されたかを示すアクチュエーター選択情報に応じて切換えスイッチ203の切替え制御を行う。第1帰還回路201、第2帰還回路202の周波数特性の設定手法は、アクチュエーター19の容量の大きい方が、前記駆動アクチュエーター数nの大きい場合に、アクチュエーター19の容量の小さい方が、前記駆動アクチュエーター数nの小さい場合に相当する。
【0049】
図24は、前記図3のヘッドドライバー内に構築されたアクチュエーター駆動回路の第8実施例を示すブロック図である。本実施例の回路構成は、前記第7実施例のものと同等であるが、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の出力端には電流検出用抵抗Rwが介装され、その両端に生じる電流を電流検出回路205で検出し、調整部204は、前記電流検出回路205で検出された電流値に応じて切換えスイッチ203の切替え制御を行う。電流検出回路205で駆動信号COM(駆動パルスPCOM)の電流を検出するため、本実施例では、駆動波形信号生成回路24から、電流検出のために図25aに示すような三角波電圧信号を出力する。三角波電圧信号では、図25bに示すように、電圧が増加しているときの電流値は正値一定、電圧が減少しているときの電流値は負値一定であるから、その何れか一方、又は絶対値を閾値Bと比較して接続されているアクチュエーター19の容量を検出することができる。閾値Bの設定手法としては、例えばアクチュエーター19の容量の負荷の公差が±30%、一方の容量をCα、他方の容量をCβとし、Cα<Cβである場合、Cα×1.3×dV/dt<B<Cβ×0.7×dV/dtの範囲に設定すればよい。この場合、検出された電流値がBより大きければ容量Cβが接続されており、Bより小さければ容量Cαが接続されている。
【0050】
このように本実施形態の容量性負荷駆動装置並びにインクジェットプリンターでは、圧電素子などの容量性負荷からなるアクチュエーター19に駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を印加するとインクジェットヘッド2の圧力室の容積が縮小されて当該圧力室内のインクを噴射し、その噴射されたインクで印刷媒体1に印刷を行うにあたり、減算器25から出力される駆動波形信号WCOMと帰還信号Refとの差分信号Diffをパルス変調して変調信号PWMとし、その変調信号PWMをデジタル電力増幅回路27で電力増幅して電力増幅変調信号APWMとし、その電力増幅変調信号APWMを平滑フィルター28で平滑化してアクチュエーター19の駆動信号COM(駆動パルスPCOM)とし、その駆動信号COM(駆動パルスPCOM)を帰還回路201、202から帰還して帰還信号Refとするにあたり、駆動信号COM(駆動パルスPCOM)で駆動されるアクチュエーター19の容量に応じて帰還回路201、202の周波数特性を調整することにより、ダミー負荷が必要なくなると共に、ダミー負荷に起因した電力消費を回避することができる。また、平滑フィルター28と駆動されるアクチュエーター19の容量で構成されるフィルターの周波数特性の変化を抑制することができ、高精度な印刷が可能となる。
なお、前記実施形態では、本発明の容量性負荷駆動装置をラインヘッド型のインクジェットプリンターに用いた場合についてのみ詳述したが、本発明の容量性負荷駆動装置は、マルチパス型のインクジェットプリンターにも同様に適用可能である。
【0051】
また、前述の実施形態では、本発明の容量性負荷駆動回路をインクジェットプリンターの容量性負荷であるアクチュエーターの駆動に適用した場合についてのみ詳述したが、その他の流体噴射を行う装置に用いる容量性負荷の駆動にも同様に適用可能である。 例えば、容量性負荷を用いた流体噴射装置として、血管内に挿入し、血栓などを除去する目的で用いるカテーテルの先端に設置することに適したウォーターパルスメス、或いは生体組織を切開又は切除することに好適なウォーターパルスメスが挙げられる。これらのウォーターパルスメスにて用いる流体は、水又は生理食塩水であり、以降、これらを総称して液体と表す。
【0052】
上記のウォーターパルスメスでは、ポンプから供給される高圧の液体をパルス流として噴射する。そして、パルス流を噴射するにあたっては、容量性負荷である圧電素子を駆動させることによって流体室を構成するダイヤフラムを変位させ、パルス流を生成する。ウォーターパルスメスにおいても、容量性負荷である圧電素子と圧電素子を制御する流体噴射制御部とは、分離・離間して設けられる。従って、本発明の容量性負荷回路を上記のウォーターパルスメスに適用することによって、容量性負荷の駆動信号の精度を確保することができるため、高精度な流体噴射が可能になる。
【0053】
また、本発明の容量性負荷駆動装置を用いた流体噴射装置は、前記インクや生理食塩水以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルなどの流状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体など)を噴射する流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッサンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解の形態で含む液状体を噴射する液状体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられて試料となる液体を噴射する流体噴射装置であってもよい。更に、時計やカメラなどの精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子などに用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するための紫外線硬化樹脂などの透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリなどのエッチング液を噴射する流体噴射装置、ジェルを噴射する流状体噴射装置、トナーなどの粉体を例とする固体を噴射する流体噴射式記録装置であってもよい。そして、これらのうち何れか一種の噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1は印刷媒体、2はインクジェットヘッド、3は給紙部、4は搬送部、5は給紙ローラー、6は搬送ベルト、7はヘッド固定プレート、8は駆動ローラー、9は従動ローラー、10は排紙部、11は制御装置、13は制御部、16はヘッドドライバー、19はアクチュエーター(容量性負荷)、24は駆動波形信号生成回路、25は減算器、26は変調回路、27はデジタル電力増幅回路、28は平滑フィルター、29は補償器、30は減衰器、31は三角波生成回路、32は比較器、33はハーフブリッジ出力段、34はゲートドライブ回路、35は配線、201は第1帰還回路、202は第2帰還回路、203は切換えスイッチ、204は調整部、205は電流検出回路、206はゲイン調整器、C、C1、C2、C11、C12、C21、C22はコンデンサー、R、R1、R2、R11、R12、R21、R22は抵抗、Rwは電流検出用抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動波形信号を生成する駆動波形信号生成回路と、
前記駆動波形信号と帰還信号との差分信号を出力する減算器と、
前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性負荷の駆動信号とする平滑フィルターと、
前記駆動信号を減算器への帰還信号とする帰還回路と、
前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記帰還回路の周波数特性を調整する帰還回路特性調整手段とを備えたことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項2】
周波数特性の異なる前記帰還回路を複数備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の帰還回路を切替えることを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項3】
周波数特性を変更するための複数の素子を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の素子を切替えることを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項4】
周波数に対するゲイン特性を調整するゲイン特性調整回路を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記ゲイン特性調整回路によるゲイン特性を調整することで前記帰還回路の周波数特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷であるアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置。
【請求項1】
駆動波形信号を生成する駆動波形信号生成回路と、
前記駆動波形信号と帰還信号との差分信号を出力する減算器と、
前記差分信号をパルス変調して変調信号とする変調回路と、
前記変調信号を電力増幅して電力増幅変調信号とするデジタル電力増幅回路と、
前記電力増幅変調信号を平滑化して容量性負荷の駆動信号とする平滑フィルターと、
前記駆動信号を減算器への帰還信号とする帰還回路と、
前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記帰還回路の周波数特性を調整する帰還回路特性調整手段とを備えたことを特徴とする容量性負荷駆動装置。
【請求項2】
周波数特性の異なる前記帰還回路を複数備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の帰還回路を切替えることを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項3】
周波数特性を変更するための複数の素子を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記複数の素子を切替えることを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項4】
周波数に対するゲイン特性を調整するゲイン特性調整回路を前記帰還回路内に備え、前記帰還回路特性調整手段は、前記駆動信号で駆動される容量性負荷の容量に応じて前記ゲイン特性調整回路によるゲイン特性を調整することで前記帰還回路の周波数特性を調整することを特徴とする請求項1に記載の容量性負荷駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の容量性負荷駆動装置を用いて前記容量性負荷であるアクチュエーターを駆動することによって、液体を噴射する液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−224784(P2011−224784A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93756(P2010−93756)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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