説明

密閉型給湯器の膨張水処理装置

【課題】密閉型給湯器に生じる膨張水やリーク湯の温度を常に安全な温度まで下げることで樹脂製排水管の損傷を防止する密閉型給湯器の膨張水処理装置を提供する。
【解決手段】密閉型給湯器の貯湯タンク1に設けられた給湯用配管3より高い位置に、貯湯タンク1内で発生したエアを排出せしめるエア抜き管4を設置する。エア抜き管4の排出口がわに定期的に開放する電磁弁5を配設する。エア抜き管4の途中に冷却用配管6を接続してエア抜き管4内に冷却水を供給するように構成する。エア抜き管4の電磁弁5付近の温度を検知するサーモスタットを装着する。該温度が一定以上の温度の場合は電磁弁5を強制開放するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型給湯器に生じる膨張水が、圧力調整時に高温のリーク湯となって排出される現象を防止することができる密閉型給湯器の膨張水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉タンクを使用した給湯器において、密閉タンク内の湯水を沸かし上げると、水に溶存していた空気が溶存できなくなり、一部ガス状態(以下“エア”とする)になる。また、タンク内の湯水が膨張して密閉タンク内の内圧が上昇する。そこで、密閉タンクの内圧を一定に保つために、一定圧力を超えるエアや膨張水を自動的に開放する圧力逃し弁や、エア等を定期的に排出する開放弁などを密閉タンクの上部に取付けていた。
【0003】
ところが、圧力逃し弁にて膨張した湯水およびエアを開放すると、沸かし上げた高温の湯も同時に排出することになり、貯湯エネルギーのロスが生じることになる。そこで特許文献1では、このような膨張水によるエネルギーロスを解消するため、膨張水やエアを適切に排出できるようにした貯湯式給湯器が提案されている。
【0004】
特許文献1によると、出湯管とは異なる配管で、かつこの出湯管よりも高い位置に圧力逃し弁を設ける構成を採用している。更に、特許文献1では、この圧力逃し弁に加えて混合弁やフロート弁、あるいは気液を分離する分離膜等を組み合わせて使用することで、出湯動作と膨張水排出処理とを独立して行うことで、エネルギーロスを解消したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐243813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来使用されている圧力逃し弁は、スプリングやゴムを使用した機械的な構造のため、エアや膨張水が圧力逃し弁の許容圧力を超えると圧力逃し弁が自動的に開放される。特許文献1では、この圧力逃し弁を設ける配管に、冷却用の給水管を接続することで、膨張水の温度を下げようとしている。
【0007】
一方、圧力逃し弁の替わりに、エアや膨張水を定期的に開放する開放弁を使用する選択もある。これら圧力逃し弁や開放弁は、長期間に亘って開放と閉塞を繰り返すものなので経年により開放弁の弁体が破損したり、弁体のシール面に異物が挟まったりすることがある。このような症状が生じると、閉塞したはずの弁から高温の膨張水がリーク湯となって連続的に排出されることになる。そこで、このリーク湯の温度を下げるために、開放弁を設ける配管に冷却用の給水管を接続することが必要になる。
【0008】
ところが、発明者がリーク湯を研究した結果、膨張水の温度を下げるために冷却用の給水管を接続しても、リーク湯の量が僅かな場合には、膨張水は給水管からの冷却水と混合されずに高温の膨張水が僅かに流れ続ける現象が生じることを明らかにした。すなわち、冷却水は、開放弁が開いて膨張水が排出されると同時に給水されるが、開放弁が閉じている場合は移動しない。そこで、僅かなリーク湯があると、リーク湯の排出ルートだけに高温の膨張水が流れ続くことになり、冷却水による温度低下は生じないことになる。
【0009】
このように、給湯器から圧力逃し弁や開放弁を介して外部に排出された高温のリーク湯は、一般の排水路である樹脂製の排水管に排出されることになる。ところが、一般の樹脂製排管は高温の湯が連続排出される場合の耐久性は考慮されていないので、僅かな量のリーク湯であっても、高温で連続排出される場合は、一般の樹脂製排水管が損傷するといった思わぬ不都合が生じていた。
【0010】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、密閉型給湯器から高温の膨張水が連続排出される現象を防止することで、樹脂製排管の損傷を防止すると共に、安全な使用が可能になる密閉型給湯器の膨張水処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、密閉型給湯器において、貯湯タンク1に設けられた給湯用配管3より高い位置に、貯湯タンク1内で発生したエアを排出せしめるエア抜き管4を別体で設置し、該エア抜き管4の排出口がわに定期的に開放する電磁弁5を配設すると共に、エア抜き管4の途中に冷却用配管6を接続してエア抜き管4内に冷却水を供給するように構成し、該エア抜き管4の電磁弁5付近の温度を検知する温度検知装置を装着し、該温度が一定以上の温度の場合は電磁弁5を強制開放することで前記冷却用配管6から前記エア抜き管4に冷却水が供給されるように構成したことにある。
【0012】
第2の手段において、前記電磁弁5の強制開放は、前記エア抜き管4を銅管とし、該エア抜き管4における冷却用配管6と電磁弁5との間の管の表面に温度検知装置としてサーモスタット7を装着し、該管の表面温度が一定以上の場合に電磁弁5に通電して強制開放するように構成する。
【0013】
第3の手段において、前記温度検知装置は作動温度55℃付近の自動復帰バイメタルを使用したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1の如く、該エア抜き管4の電磁弁5付近の温度を検知する温度検知装置を装着し、該温度が一定以上の温度の場合は電磁弁5を強制開放することで、前記冷却用配管6から前記エア抜き管4に冷却水が供給されるように構成したことにより、リーク湯が僅かな場合に膨張水が冷却水と混合されず、高温の膨張水が流れ続けるおそれは解消された。
【0015】
請求項2により、前記電磁弁5の強制開放は、前記エア抜き管4における冷却用配管6と電磁弁5との間の管の表面にサーモスタット7を装着し、該管の表面温度が一定以上の場合に強制開放するように構成することで、電磁弁5付近の温度検知を簡略化し、しかも確実に検知することができる。
【0016】
請求項3の如く、温度検知装置として作動温度55℃付近のバイメタルを使用することで、リーク湯の温度を約60℃以下に抑えることが可能になった。この結果、一般の樹脂製排水管を損傷させることなく長期に亘って安全に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の一実施例を示す要部斜視図である。
【図3】本発明のエア抜き管にサーモスタットを装着した状態を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によると、密閉型給湯器に生じる膨張水がリーク湯となって高温の膨張水が流れ続ける現象を防止して安全な使用が可能になり、しかも、排出される膨張水やリーク湯の温度を常に安全な温度まで下げることで樹脂製排水管の損傷を防止するなどといった当初の目的を実現した。
【実施例】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。本発明処理装置は密閉型給湯器に使用される。この密閉型給湯器は、主に飲み物や洗い物用の給湯に用いられるタイプで、図示例では、約90℃の湯を給湯する飲用の給湯用配管3、約50℃の湯を給湯する混合用の給湯用配管10、二次給水配管11を備えている(図2参照)。また、水道管から貯湯タンク1に給水する給水管2に、温度調整用のバイパス管8を連結し、前述の給湯用配管3、給湯用配管10、二次給水配管11に接続している。更に、この給水管2には、圧力逃し弁12を介して膨出水排出管9を接続し、貯湯タンク1内で膨張した膨張水を給水管2の水と共に排出している(図1参照)。尚、この密閉型給湯器は図示例に限定されず密閉式の貯湯タンク1を使用する全ての給湯器を対象とすることができる。
【0020】
このような給湯器に装着する本発明処理装置の基本構成は、エア抜き管4、電磁弁5、冷却用配管6、温度検知装置で構成される。
【0021】
エア抜き管4は、貯湯タンク1に設けられた給湯用配管3より高い位置に設置され、貯湯タンク1内で膨張した膨張エアを独立して排出するように構成している。貯湯タンク1内で発生したエアや膨張水は、貯湯タンク1の上部からこのエア抜き管4を介して外部に排出される。
【0022】
電磁弁5は、エア抜き管4の排出口がわに配設されており、エア抜き管4の内部に溜まったエアや膨張水を定期的に開放する。
【0023】
冷却用配管6は、エア抜き管4の途中に接続するもので、エア抜き管4内に冷却水を供給してエア抜き管4内の温度を下げるように構成している。通常、エア抜き管4は密閉状態にあり、電磁弁5により定期的に開放される際に冷却用配管6からエア抜き管4内に冷却水が供給される。
【0024】
ところが、電磁弁5から僅かなリーク湯が流出している状態では、冷却水の移動がなく高温の膨張水として僅かに流れ続ける現象がある。そこで、エア抜き管4の電磁弁5付近の温度を検知し、該温度が一定以上の温度の場合は電磁弁5を強制開放することで、冷却用配管6からエア抜き管4に冷却水が供給されるように構成している。
【0025】
エア抜き管4の電磁弁5付近の温度を検知するには、サーモスタット7や温度センサ等の温度検知装置の使用が可能である。例えば、エア抜き管4内部に温度センサを設置してエア抜き管4内部の温度を直接測定することが可能である。またエア抜き管4の表面温度を検知して内部温度の目安にすることもできる。
【0026】
図示例では、エア抜き管4に銅管を使用し、冷却用配管6と電磁弁5との間の銅管の表面にサーモスタット7を装着し、該管の表面温度が一定以上の場合に強制開放するように構成している(図3参照)。サーモスタット7としては、例えば、バイメタルや形状記憶合金による機械式検知、ワックス粒の膨張による検知、サーミスタによる電気式検知、熱電対による電気式検知などがある。
【0027】
実験では、サーモスタット7として作動温度55℃付近の自動復帰バイメタルを使用した。すなわち、リーク湯温が55℃を超えたときに自動復帰バイメタルが検知すると、電磁弁5に通電して強制開放する。そうすると冷却用配管6からエア抜き管4に冷却水が給水され、電磁弁5付近の温度は低下する。エア抜き管4の温度が低下したことを自動復帰バイメタルが検知すると、自動復帰バイメタルが復帰して電磁弁5の通電を遮断し、電磁弁5が閉じられる。この結果、リーク湯の温度を60℃以下に調整することが可能になった。この60℃以下の温度は、水道用硬質塩ビライニング鋼管等の樹脂製排水管において連続使用可能な温度になっている。尚、図中、符号4Aはエア抜き管4に設けた逆支弁、符号6Aは冷却用配管6に設けた逆支弁を示す。
【0028】
リーク湯が続いている場合、サーモスタット7が検知して電磁弁5が強制開放する動作が繰り返されることになる。作業者はこのような動作を確認することで、リーク湯の存在に気づくことになる。また、より積極的にリーク湯の存在を知らせる手段として、サーモスタット7の検知時に、エラー表示を表示するように構成し、あるいは電磁弁5を遮断すると共に、ヒーターの電源も遮断することなどによって、リーク湯の存在、すなわち電磁弁5の不具合を知らせることが可能である。
【0029】
本発明処理装置において、電磁弁5、あるいは温度検知器の装着位置、冷却用配管6の接続位置などは実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での設計変更は自由である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明によると、主に飲み物や洗い物用の密閉型給湯器として説明しているが、給湯器の容量や使用目的等はこのタイプに限定されるものではなく、密閉型給湯器の構成を備え且つ沸かし上げ温度が高いものであればどのような給湯器でもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 貯湯タンク
2 給水管
3 給湯用配管
4 エア抜き管
4A 逆支弁
5 電磁弁
6 冷却用配管
6A 逆支弁
7 サーモスタット
8 バイパス管
9 膨出水排出管
10 給湯用配管
11 二次給水配管
12 圧力逃し弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉型給湯器において、貯湯タンクに設けられた給湯用配管より高い位置に、貯湯タンク内で発生したエアを排出せしめるエア抜き管を別体で設置し、該エア抜き管の排出口がわに定期的に開放する電磁弁を配設すると共に、エア抜き管の途中に冷却用配管を接続してエア抜き管内に冷却水を供給するように構成し、該エア抜き管の電磁弁付近の温度を検知する温度検知装置を装着し、該温度が一定以上の温度の場合は電磁弁を強制開放することで、前記冷却用配管から前記エア抜き管に冷却水が供給されるように構成したことを特徴とする密閉型給湯器の膨張水処理装置。
【請求項2】
前記電磁弁の強制開放は、前記エア抜き管を銅管とし、該エア抜き管における冷却用配管と電磁弁との間の管の表面に温度検知装置としてサーモスタットを装着し、該管の表面温度が一定以上の場合に電磁弁に通電して強制開放するように構成した請求項1記載の密閉型給湯器の膨張水処理装置。
【請求項3】
前記温度検知装置は作動温度55℃付近の自動復帰バイメタルを使用した請求項1記載の密閉型給湯器の膨張水処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−67987(P2012−67987A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214809(P2010−214809)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【特許番号】特許第4688054号(P4688054)
【特許公報発行日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(390019666)株式会社日本イトミック (9)
【Fターム(参考)】