説明

密閉式振動垂直輸送機

【課題】垂直な中心の軸の周りに設ける螺旋の輸送路を外部環境から隔離可能にして振動垂直輸送機の使用規制を緩和し、輸送機の機能向上策を併用する上での自由度も高めることを課題としている。
【解決手段】ばね3に支えられた可動ベース4と、その可動ベース4にねじり振動を付与する振動発生機5と、中心の軸Cを垂直にして可動ベース4上に設ける輸送路6とを具備した振動垂直輸送機の前記輸送路6を、管路材、好ましくは樹脂で形成されたフレキシブルホースで構成して密閉構造にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、起立した軸の周りに螺旋形状の輸送路を形成し、その輸送路にねじり振動を加えて粉体、砂、小石などの輸送物を垂直方向に輸送する振動垂直輸送機(スパイラル振動コンベヤ或いはスパイラルエレベータとも称される)に関する。
【背景技術】
【0002】
首記の振動垂直輸送機の従来技術として、例えば、下記特許文献1,2に記載されたものがある。これらの文献に開示された振動垂直輸送機は、一定の傾斜角をもって一定径の円を描きながら上方に向って延びる螺旋の輸送路をスプリングで支持して設け、その輸送路にアンバランスウエイトを用いた振動発生機で上下変位を伴うねじり振動を加えて路上の輸送物に送りを掛ける。振動発生機は、輸送路を水平面に対して所定の角度傾いた方向に振動させる。このときの輸送路の振動方向と輸送路の傾斜角との間に角度差を生じさせ(水平面基準での振動方向の傾き角が輸送路の傾斜角よりも大きい)、輸送物を輸送方向前方に投げ出すような動作を繰り返して輸送を行う。
【0003】
この振動垂直輸送機は、市販品があり、それはインターネットでも紹介されている。
【特許文献1】実公平6−20748号公報
【特許文献2】特開平7−300238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動垂直輸送機は、コンベヤなどと違って摩耗を生じるメカニズム箇所が少ないため管理やメンテナンスが容易であり、静粛性にも優れる利点があるが、解決すべき下記の欠点を併せ持っている。すなわち、従来の振動垂直輸送機は、輸送路を上部の開放されたスパイラルトラフで構成しており、そのために、輸送路を外部環境から隔離することが難しく、密閉構造が要求される場合には、輸送機の全体をカバーで覆うなどの大掛かりな対策が必要になる。また、完全密閉ができないため、焼却灰などの飛散しやすい粉体の輸送には適さず、使用規制を受ける。
【0005】
さらに、螺旋の輸送路をスパイラルトラフで構成したものは強制通風による乾燥、冷却や気流による輸送の助成などができず、輸送機の機能向上に有効な策を併用することに関しての自由度も低い。
【0006】
また、金属製のスパイラルトラフを用いた従来の振動垂直輸送機は、輸送路の重量が大きく、それに見合う能力の大きな振動発生機を必要とするため、価格とランニングコストが高くなる不具合もあった。
【0007】
この発明は、従来の振動垂直輸送機に見られる上記の不具合を解消すること、すなわち、使用規制の緩和と、輸送機の機能向上策を併用する上での自由度の向上を図ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、この発明においては、複数のばねに支えられた水平配置の可動ベースと、その可動ベースに上下変位を伴ったねじり振動を付与する振動発生機と、中心の軸を垂直にして前記可動ベース上に設ける所定の傾斜角度を有した螺旋の輸送路とを具備し、前記輸送路を前記可動ベースと共に振動させて輸送路上の輸送物に送りを掛ける振動垂直輸送機の前記輸送路を、管路材で形成して密閉する。
【0009】
また、製造の容易化、低価格化、ランニングコストの削減を併せて図る輸送機については、軟質な樹脂で形成されたフレキシブルホース(これも管路材)で前記輸送路を構成し、前記可動ベース上に螺旋状に加工されたホース支持部材を設けてそのホース支持部材で前記フレキシブルホースの長手方向の各部を支持する。
【0010】
管路材で形成する輸送路は、高さ方向に重ねて複数並設することができる。また、輸送路をフレキシブルホースで形成する輸送機は、可動ベースに支持される連結部材を起立状態にして設け、その連結部材を介して前記ホース支持部材の螺旋のピッチがずれた部位を互いに連結すると好ましい。そのような構造にしたものは、ホース支持部材によるフレキシブルホースの支持安定性が高まり、結果的に輸送の安定性も高まる。この構造で使用する連結部材は、ロッドやホース支持部材の内側に適合して嵌る円筒の管体などがよい。
【0011】
輸送路を形成する樹脂製のフレキシブルホースは、補強材によってホースの保形性と軸方向の強度が高められたもの、中でも、ホース長手方向に連続して延びるコイリングされた補強材をホース周壁に埋設したものが好ましい。
【0012】
また、前記可動ベースと輸送路に上昇輸送用の振動を加える第1振動発生機と下降輸送用の振動を加える第2振動発生機を1台の輸送機に設けてその第1振動発生機と第2振動発生機を使い分けることもできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の輸送機は、螺旋の輸送路を管路材で構成したので、その輸送路が完全密閉構造になって外部環境から隔離され、そのために使用規制が緩和されて飛散しやすい粉体なども問題なく輸送することが可能になる。
【0014】
また、輸送路が密閉されているので、気流による輸送の助成なども可能になり、機能向上策を併用する上での自由度も高まる。輸送の助成に用いる気流は、飛散防止が必要な焼却飛灰等の輸送では大気圧以下の気流がよい。大気圧以上の気流を用いる圧送方式の輸送では、輸送路の途中に空気漏れ箇所があるとそこから輸送物が外部に飛散するが、大気圧以下の気流を用いる真空輸送であればその不具合を回避できる。
【0015】
なお、輸送路を構成する管路材は、硬質のパイプでもよいが、輸送に適した直径(輸送効率を考えると最低でも40〜50mmあるのがよい)を有するパイプを定ピッチで螺旋形状に成形するのは簡単でなく、振動垂直輸送機の製造に要する手間と時間が多くなって輸送機のコストが上昇する。
【0016】
フレキシブルホースで輸送路を形成した輸送機は、その問題も同時に解決される。可動ベース上に設けるホース支持部材は、パイプよりも成形し易いロッドや板材で形成することができ、所望の螺旋形状への成形が簡単である。そのホース支持部材にフレキシブルホースを添わせて適当な間隔で固定すればホース支持部材がガイド兼補強材になってフレキシブルホースが螺旋形状に成形されるので、輸送路を簡単に安価に形成することができ、振動垂直輸送機の製造の容易化とコストの低減も併せて実現することができる。また、フレキシブルホースで形成した輸送路は、金属製で形成された輸送路に比べて重量が大きく軽減され、そのために、使用する振動発生機の能力が小さくて済み、このこともコスト低減の効果をもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の振動垂直輸送機の実施の形態を添付図面の図1〜図8に基づいて説明する。図1は第1実施形態の側面図、図3は第2実施形態の側面図である。これらの振動垂直輸送機1は、定位置に固定されるコモンベース2と、そのコモンベース2上に設ける複数のばね3と、そのばね3で支える水平配置の可動ベース4と、その可動ベース4に上下変位を伴ったねじり振動を付与する振動発生機5と、中心の軸Cを垂直にして可動ベース4上に設ける螺旋の輸送路6を備えてなる。
【0018】
コモンベース2と可動ベース4は、平面視方形の平板を例示したが、H型鋼、C型鋼、角パイプなどを例えば平面視十字状に組み合わせたようなものであってもよい。
【0019】
振動発生機5は、アンバランスウエイト(重錘)をモータで回転させてモータ軸と直交する方向の振動を発生させる周知の器機である。この振動発生機5が可動ベース4の一側縁と他側縁にそれぞれ取り付けられている。その振動発生機5には、図2に示すように、水平面に対して所定の傾斜角αの傾きが付与されている。図の輸送機に設けた2台の振動発生機5,5は、相反する向きに傾斜させて可動ベース4の中心を間に挟む位置に設置されており、その2台の振動発生機5,5が、可動ベース4に、軸Cを中心にしたねじり振動を加える。その振動は水平面に対してβ(=90−α)度傾いた方向の成分が含まれる(上下変位を伴う)ものになる。例示の輸送機では、振動発生機5の傾斜角αを45度に設定しており(この角度に限定されるものではない)、従って、水平面に対して45度傾いた方向の振動が発生する。
【0020】
輸送路6は、管路材で形成されている。図1の振動垂直輸送機1は、その管路材として金属のパイプ7を使用しており、そのパイプ7を、軸Cを中心とする基準円(直径Dの円)上で一定の螺旋ピッチをもつように成形して螺旋管を形成し、螺旋のピッチがずれた部分を補助フレーム8で連結して補強したその螺旋管で螺旋の輸送路6を構成している。
【0021】
また、図3の振動垂直輸送機1は、管路材として耐摩性のあるフレキシブルホース9を使用しており、そのフレキシブルホース9を、軸Cを中心とする基準円(直径Dの円)上で一定の螺旋ピッチをもつように成形して螺旋管を形成し、その螺旋管で輸送路6を構成している。軟質樹脂で形成されたフレキシブルホースは、安価で螺旋に成形するのも簡単であり、輸送機の製造の容易化、コスト低減が図れる。また、フレキシブルホースは金属トラフや金属パイプに比べると重量が小さく、輸送路6の軽量化、それによる振動発生機5の能力低減が図れる。
【0022】
例示の振動垂直輸送機1は、パイプ7やフレキシブルホース9で形成された輸送路6の下側の開口端を投入口10、上側の開口端を排出口11にして粉体などの輸送を下から上に向けて行う(これを上昇輸送と言う)ようにしたが、投入口と排出口の位置を入れ替えて上から下に向けて輸送を行う(これを下降輸送と言う)ことも可能である。下降輸送を行うときには、振動発生機5を、輸送路6に対して水平振動を加えるものに交換する。振動発生機5以外の要素は、上昇輸送用のものをそのまま使用することができる。
上昇輸送用の2台の振動発生機(第1振動発生機)と下降輸送用の2台の振動発生機(第2振動発生機)を、可動ベースに対する取り付け位置を例えば90°異ならせて同一輸送機に設けると、その第1振動発生機と第2振動発生機を使い分けることで1台の振動垂直輸送機を、上昇輸送用だけでなく、下降輸送用としても使用することが可能になり、同輸送機の用途が拡大する。
【0023】
パイプ7によって形成された図1の輸送路6と、フレキシブルホース9によって形成された図3の輸送路6は、水平面に対してγの傾きをもつ。傾斜角γは、前述の振動の方向の傾き角βよりも小さく、実施形態の輸送機では、その傾斜角γが15度に設定されている。
【0024】
上記のフレキシブルホース9は、軟質樹脂で形成された市販品のホースであって変形や伸びによる輸送効率の低下や輸送停止などのトラブルを防止するために、図9に示す構造のもの、すなわち、定ピッチでコイリング加工された螺旋の補強材9aを周壁9bに埋設して保形性と軸方向の強度が高められたものを使用している。螺旋の補強材9aは、鋼線で形成されたもののほかに高強度樹脂の線材で形成されたものなども採用されており、材料を問わずに利用できる。なお、このフレキシブルホース9は、周壁9bの内面が凹凸の無いフラット面になっているものが輸送物の滞留防止の効果が高くて好ましい。また、クリアホースであると内部の状況を外部から目視確認することができる。内面に帯電防止層15を設けたフレキシブルホースで輸送路6を構成することも考えられる。粉体の輸送では静電気対策が要求されることがあり、この構造はそのときに有効である。
【0025】
フレキシブルホース9は、補強材を有していても、自己保持能によって輸送路6の螺旋形状を保持するのは困難である。そこで、自己保持能の不足を補うホース支持部材12を設けている。そのホース支持部材12は、輸送路6と同一ピッチで螺旋状に成形されており、図4に示す帯板12aや、帯板に近似した材料、例えば、継ぎ足して使用する複数のねじれた板材のパーツ、平行配置の複数条の線材を横桟で連結して構成される部材などで形成される。このホース支持部材12を設置することで、振動垂直輸送機用の螺旋の輸送路を、安価かつ軽量で螺旋形状への成形も容易な樹脂製フレキシブルホース9で形成することを可能にしている。
【0026】
ホース支持部材12は、各部を規定位置に位置決めして保持する必要があり、その要求に応えられる自己保持能をもたせようとすると高剛性の材料が必要になって経済的に不利になることから、ここでは、図3、図5、図6に示すような連結部材13を設け、ホース支持部材12をその連結部材13で支持して定位置に保つようにしている。
【0027】
連結部材13は、可動ベース4上に起立状態にして設けられている。図3、図5、図6に示した連結部材13は、ホース支持部材12の内側に適合して嵌る円筒体13aを用いており、その円筒体13aの外周にホース支持部材12の内径側の縁を接合してホース支持部材12の所定の螺旋形状を保つようにしている。
【0028】
連結部材13は、円筒体13aが好ましい。円筒体であれば、外周にホース支持部材の取り付け位置を予め表示することができ、表示箇所にホース支持部材12を取り付けることでそのホース支持部材12を楽に正確に螺旋形状に仕上げることができる。ただし、図7に示すように、複数本のロッド13bなどでそれぞれホース支持部材12の螺旋のピッチがずれた部位を互いに連結する構造でも、安定性のよいホース支持部材12を構成することができる。
【0029】
図3の輸送機は、上記構成のホース支持部材12上に輸送路6を構成するフレキシブルホース9を配置してホース9の各部をホース支持部材12で支持するようにしている。そのホース9のホース支持部材12に対する固定は、図6に示すような固定具14を用いてホース長手方向に適当な間隔をあけて行ってもよいし、ホースの全長をホース支持部材12に接着して振動発生機5からの振動がホースの各部に確実にロス無く伝わるようにしてもよい。接着と固定具による固定を併用すれば、ホース固定の信頼性はより高まる。なお、ホース支持部材12と連結部材13は、金属などで形成して必要強度を確保する。輸送路の高さなどによっては硬質樹脂などの軽量材で形成された連結部材も使用できる。また、フレキシブルホース9は、図8に示すように、複数本を高さ方向に重ねて並設することができ(ホース支持部材12に支持されたホースの上に別のホースを重ねる)、その並設によって、同一輸送機内に輸送路6が複数形成される。この構造の振動垂直輸送機1は、輸送路の数を増減して輸送能力を変化させることが可能になる。また、異種輸送物を同一輸送機で同時に個別に輸送することも可能になる。
【0030】
以上のように構成されたこの発明の振動垂直輸送機1は、振動発生機5によって輸送路6にねじり振動が加えられ、投入口10から輸送路6に導入された輸送物が排出口11に向けて送られていく。輸送物は、粉体に限らず、砂、小石、ペレットなどの粒状物の輸送も可能である。この輸送機は、輸送路6が密閉されているので、強制通風による輸送物の乾燥、冷却や、気流による輸送の助成が可能である。また、図3、図8の輸送機は、フレキシブルホースからなる輸送路を簡単に安価に形成することができ、製造の容易化とコストの低減が図れる。また、金属トラフや金属パイプを用いるものに比べて輸送路が軽量化されるため、振動発生機の能力削減、それによるコスト低減も可能になる。
【0031】
以下に、実施例を挙げる。
−実施例1−
直径60.5mmの金属パイプで図1に示す基準円径D=500mm、傾斜角γ=15度の螺旋の管路を構成し、その管路をホース支持部材12で支持して高さ2mの輸送路6を構成した。
そして、その輸送路6を、4個のばね3によって4隅が支持された一辺の長さがL=500mmの平面視正方形の可動ベース4上に設置し、2台の振動発生機を有する振動垂直輸送機1を構成した。4個のばね3は、中心間ピッチP=420mmにしてコモンベース2上に取り付けている。
振動発生機5は、アンバランスウエイトを回転制御が可能なモータで回転させて振動を発生させるものであり、モータ出力0.35kw(最大起振力約5000N)である。その振動発生機5を傾斜角α=45度にして中心対称位置に設けた。
【0032】
以上の諸元の試作振動垂直輸送機を下記の条件で運転して性能を評価した。
運転条件 振動数:20〜40Hz
振幅:1〜3mm
輸送物:A:焼却飛灰、B:平均粒径約1mm、嵩比重1.5の砂、C:平均 粒径約1mm、嵩比重1.5の小石
【0033】
この評価試験の結果、例示の3種類の輸送物が安定して輸送されることを確認した。
【0034】
−実施例2−
螺旋の補強材によって補強された軟質樹脂で形成された直径60.5mmのフレキシブルホース9(市販品のサクションホース)で基準円径D=500mm、傾斜角γ=15度の螺旋の管路を構成し、その管路を円筒体のホース支持部材12で支持して高さ2mの輸送路6を構成し、その輸送路6を4隅がばね3によって支持された可動ベース4上に設置して図3に示す振動垂直輸送機1を構成した。可動ベース4のサイズとばね3の設置ピッチPは、実施例1の輸送機と同一である。振動発生機5は、輸送路が軽量化されたのでモータ出力を0.13kw(最大起振力約3000N)にし、傾斜角は実施例1の輸送機と同一にした。
【0035】
この振動垂直輸送機を、振動数:20〜40Hz、振幅:6〜10mmの条件で運転して実施例1と同一輸送物の輸送実験を行った。その結果、この輸送機でも安定した輸送がなされた。この実施例2の輸送機は、樹脂のフレキシブルホースで形成した輸送路の重量が、金属パイプで形成した実施例1の輸送路に比べて1/4程度に軽減され、そのために、振動発生機は能力の小さなものでよかった。
【0036】
−実施例3−
実施例2で用いたものと同一仕様のフレキシブルホース9を用いて図8に示す基準円径D=380mm、傾斜角γ=15度の螺旋の輸送路6を構成し、その輸送路を円筒体の連結部材13に固定したホース支持部材12で支持して4隅がばね3によって支持された可動ベース(これは十字フレーム)4上に設置し、高さ6m、ばね3の設置ピッチ1330mm、振動発生機5のモータ出力0.6kw(最大起振力約9000N)、振動発生機5の傾斜角45度の振動垂直輸送機を構成した。
【0037】
この振動垂直輸送機を、振動数:20〜40Hz、振幅:4〜10mmの条件で運転して実施例1と同一輸送物の輸送実験を行った。その結果、この輸送機でも安定した輸送がなされた。
【0038】
なお、実施例3の振動垂直輸送機は、2本のフレキシブルホースを上下に重ねて2つの輸送路を構成したが、その2つの輸送路とも問題のない輸送がなされた。また、このケースでは、並設するフレキシブルホースの数(すなわち輸送路の数)は3本まで可能であった。
【0039】
なお、輸送路6は、直径40mm、75mmのパイプとフレキシブルホースで形成したものも利用可能であった。また、その輸送路6の傾斜角γは、その角度を変更して行った評価試験では5〜15度程度が輸送の安定性が高くて好ましかった。この傾斜角γは小さすぎると輸送路の距離が長くなって輸送効率が低下するので良好な輸送が保障される範囲でできるだけ大きくするのがよい。輸送物によっては傾斜角γが15度以上でも良好な輸送がなされると考えられる。その傾斜角γが振動の向きの傾き角βよりも大きくなると輸送物を投げ出す効果が得られず、また、輸送物が滑り落ちようとする力も強まるので、傾斜角の上限は、輸送物の性状なども考慮して適切な値に設定する。
【0040】
上述したように、この発明の振動垂直輸送機は、砂や小石などの輸送も可能であるが、密閉構造の輸送路を有するので、飛散を嫌う焼却飛灰等の輸送に利用すると特に効果的である。焼却飛灰等は、水分を含むと流れ難くなるが、輸送路が密閉されているので強制通風による乾燥を行って流れ性を向上させることができる。また、その強制通風によって熱をもった輸送物を冷却することもできる。さらに、輸送路内に気流(既に述べた理由から、大気圧以上の圧力の気流よりも大気圧以下の圧力の気流が好ましい)を発生させて輸送の助成を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の振動垂直輸送機の実施の形態を示す側面図
【図2】図1の輸送機を図1とは90度異なる方向から見た側面図
【図3】この発明の振動垂直輸送機の他の実施の形態を示す側面図
【図4】図3の輸送機に採用した螺旋の支持部材を示す斜視図
【図5】図4の支持部材に円筒の連結部材を組み合わせた状態の部分破断側面図
【図6】支持部材に対するフレキシブルホースの固定法の一例を示す断面図
【図7】図3の支持部材の他の補強形態を示す斜視図
【図8】この発明の振動垂直輸送機のさらに他の実施の形態を示す側面図
【図9】フレキシブルホースの一例を示す部分破断側面図
【符号の説明】
【0042】
1 振動垂直輸送機
2 コモンベース
3 ばね
4 可動ベース
5 振動発生機
6 輸送路
7 パイプ
8 補助フレーム
9 フレキシブルホース
9a 補強材
9b 周壁
10 投入口
11 排出口
12 ホース支持部材
12a 帯板
13 連結部材
13a 円筒体
13b ロッド
14 固定具
15 帯電防止層
C 中心の軸
D 基準円直径
α 振動発生機の傾斜角
β 振動の方向の傾き角
γ 輸送路の傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のばね(3)に支えられた水平配置の可動ベース(4)と、その可動ベース(4)に上下変位を伴ったねじり振動を付与する振動発生機(5)と、中心の軸(C)を垂直にして前記可動ベース(4)上に設ける所定の傾斜角度を有した螺旋の輸送路(6)とを具備し、前記輸送路(6)を前記可動ベース(4)と共に振動させて輸送路上の輸送物に送りを掛ける振動垂直輸送機であって、
前記輸送路(6)を、管路材で構成して密閉構造にしたことを特徴とする密閉式振動垂直輸送機。
【請求項2】
管路材で形成される前記輸送路(6)を、高さ方向に重ねて複数並設したことを特徴とする請求項1に記載の密閉式振動垂直輸送機。
【請求項3】
前記輸送路(6)を樹脂で形成されたフレキシブルホース(9)で形成し、前記可動ベース(4)上に螺旋状に加工されたホース支持部材(12)を設けてそのホース支持部材(12)で前記フレキシブルホース(9)を支持したことを特徴とする請求項1又は2に記載の密閉式振動垂直輸送機。
【請求項4】
前記可動ベース(4)に支持される連結部材(13)を起立状態にして設け、その連結部材(13)を介して前記ホース支持部材(12)の螺旋のピッチがずれた部位を互いに連結した請求項3に記載の密閉式振動垂直輸送機。
【請求項5】
前記フレキシブルホース(9)として、コイリング加工された螺旋の補強材(9a)が周壁(9b)に埋設されて保形性と軸方向の強度が高められているホースを用いることを特徴とする請求項3又は4に記載の密閉式振動垂直輸送機。
【請求項6】
前記フレキシブルホース(9)として、内面に帯電防止層(15)を設けたものを用いることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の密閉式振動垂直輸送機。
【請求項7】
前記可動ベース(4)と輸送路(6)に上昇輸送用の振動を加える第1振動発生機(5)と下降輸送用の振動を加える第2振動発生機を1台の輸送機に設け、その第1振動発生機(5)と第2振動発生機を使い分けて輸送方向を切換えられるようにした請求項1〜6のいずれかに記載の密閉式振動垂直輸送機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−113961(P2009−113961A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290877(P2007−290877)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(593202483)株式会社阿部鐵工所 (4)
【Fターム(参考)】