説明

密閉監視装置

【課題】 従来、開閉器等の密閉容器の密閉状態の点検は、作業者にとって煩わしい作業を必要とした。また、外観目視による点検では、正確な判断ができなかった。超音波を用いた浸水検出装置では、予防保全の効果はなかった。
【解決手段】 本発明の密閉監視装置では、密閉容器1の内部に湿度センサ3及び温度センサ4と、検出回路5と、表示部6とを備える。前記検出回路5は、前記湿度センサ3及び前記温度センサ4からの出力信号から求めた温度に依存しない量と予め求めておいた基準量とを比較し、警報信号を出力する。前記表示部6は、前記警報信号を表示する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高圧架空配電線に使用される開閉器等の密閉状態を監視する密閉監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】高圧架空配電線に使用される開閉器は、長期間の信頼性を維持するため、密閉容器に収納されて設置される。密閉容器は、表面処理が施された鋼板で構成されているが、雨水、海塩粒子、紫外線照射等の種々の劣化因子により、長年使用していると、表面処理が劣化し、鋼板が腐食する。このため、容器内に雨水が侵入し、開閉器内部の絶縁材料が吸湿により劣化し、開閉器本体の寿命が短くなる。さらに、短絡事故等の恐れもある。従来は、外観目視又は超音波を用いた浸水検出装置等により定期的な点検が行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記点検は、以下のような煩わしい作業を必要とした。即ち、作業者は、活線からの感電防止や転落防止のための装備を装着しなければならなかった。作業者および作業者が使用する器具の落下を防止するネットを設置しなければならなかった。また、車両の侵入が困難な地域では、作業者にとって定期的な点検が負担となっていた。
【0004】さらに、従来の外観目視による点検では、結露や雨水浸水の有無を正確に判断できないという問題点を有していた。超音波を用いた浸水検出装置による点検では、開閉器内部に浸水があってはじめて検出ができるため、予防保全の効果はなく、遅きに失する感があった。
【0005】そこで本発明は、上述した煩わしい作業を不要とし、簡易かつ正確に密閉容器の密閉状態を監視することができる密閉監視装置を提供せんとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、密閉容器の内部に設置された湿度センサ及び温度センサと、前記湿度センサ及び前記温度センサからの出力信号から求めた温度に依存しない量と予め求めておいた基準量とを比較し、警報信号を出力する検出回路と、前記警報信号により作動する表示部とを備えることを特徴とする。
【0007】請求項2記載の発明は、請求項1記載の密閉監視装置において、前記警報信号を配電線搬送信号に変換し、配電線路を介して伝送可能とする搬送伝送回路を備えることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態の構成図であり、本発明を開閉器の密閉容器1の密閉監視に適用した例である。
【0009】電源回路2は、前記密閉容器1の内部に設けられており、後述する各回路に電源を供給する。電源回路2は、開閉器の主回路からコンデンサ2a、変成器2bを介して、AC/DC変換回路により所定の電源を得る。
【0010】電子式湿度センサ3は、密閉容器1の内部の相対湿度を検出し、相対湿度信号を検出回路5に送信する。電子式温度センサ4は、密閉容器1の内部の温度を検出し、温度信号を検出回路5に送信する。
【0011】電子式湿度センサ3が検出する相対湿度fは、数式1により与えられる。
【0012】
【数1】f=100×e/E
【0013】上記数式1において、eは、水蒸気圧である。Eは、飽和水蒸気圧であり、温度によって決まる量である。したがって、相対湿度fは、Eを含むため温度に依存し変化する。
【0014】検出回路5は、電子式湿度センサ3から得られた相対湿度と電子式温度センサ4から得られた温度とから、密閉容器1内の水蒸気を表し、かつ温度に依存しない量を求める。上記温度に依存しない量としては、前記水蒸気圧eがある。密閉容器1の密閉状態が維持されている場合には、密閉容器1内の水蒸気量は一定であるから、前記温度に依存しない量は一定である。検出回路5は、予め密閉容器1の密閉状態が維持されている場合の前記温度に依存しない量を求め、この値を基準量として記憶する。もし密閉容器1の密閉状態が破れると、密閉容器に外気又は水が侵入し、密閉容器1内の水蒸気量は変化し、前記温度に依存しない量は変化する。したがって、検出回路5は、前記温度に依存しない量と前記基準量とを常時比較することによって、密閉容器1の密閉状態を監視することができる。
【0015】検出回路5等の回路構成のブロック図を図2R>2に示す。演算回路10では、取り込んだ相対湿度信号と温度信号をDC電圧に変換し、上記温度信号に応じた補正係数を前記相対湿度のDC電圧に乗じて、温度に依存しない量を表すDC電圧を求める。上記補正係数は、前記飽和水蒸気圧Eに対応した係数であり、予め演算回路10に入力されている。
【0016】比較回路11では、予め記憶されている前記基準量のDC電圧と、前記温度に依存しない量を表すDC電圧とを比較する。もし、密閉容器1に外気の侵入や雨水の浸水があると、前記温度に依存しない量は前記基準量を上回る。このとき、出力回路12は警報信号を表示回路13に送信する。
【0017】表示回路を含む表示部6(図1参照)は、ダイオード等を発光させ、表示する。なお、表示部6の電源は、前記電源回路2から直接取ることができる。また、前記電源回路2の内部に、バッテリー、コンデンサ等の蓄電素子を別途設け、これらから電源を取ることも可能である。
【0018】さらに、搬送信号伝送回路14は、前記出力回路12から出力された前記警報信号を配電線搬送信号に変換し、配電線路を介して、中央監視所に伝送することを可能とする。
【0019】図1に示した実施形態では、表示部6を除いた全ての回路は密閉用器1の内部に設置されているが、これに限られるものではなく、電源回路2、電子式温度センサ4と電子式湿度センサ3のみを密閉容器内部に設置し、その他の回路、素子等を箱状のユニットに納め、当該ユニットを密閉容器1の下部に別途取り付けることも可能である。
【0020】また、図3に示すように、電子式温度センサ4と電子式湿度センサ3のみを密閉容器内部に設置し、電源回路2、その他の回路、素子等を表示箱7として収め、当該表示箱7を密閉容器1と分離し、電源は外部の既設電源(例えば、100V低圧配電線8A)から供給するようにし、電源回路を簡素化して取り付けることも可能である。なお、8Bは高圧配電線、9は電柱を示す。
【0021】
【発明の効果】以上のように請求項1又は2記載の発明によれば、作業者は表示部の表示を確認するだけで済むため、従来のような煩雑な作業を必要とせず、簡易かつ正確に密閉容器の密閉状態を監視することができる。したがって、開閉器を構成する絶縁材料が劣化する前に密閉状態の破れを見つけることができるため、改修作業が計画的に行え、配電系全体の信頼性を向上することができる。
【0022】請求項2記載の発明によれば、中央監視所で集中管理ができるため、車両の侵入が困難な地域でも、常時監視ができ、作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成図である。
【図2】回路構成のブロック図である。
【図3】本発明の他の実施形態の構成図である。
【符号の説明】
1 密閉容器
2 電源回路
2a コンデンサ
2b 変成器
3 電子式湿度センサ
4 電子式温度センサ
5 検出回路
6 表示部
7 表示箱
8A 低圧配電線
8B 高圧配電線
9 電柱
10 演算回路
11 比較回路
12 出力回路
13 表示回路
14 搬送信号伝送回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】 密閉容器の内部に設置された湿度センサ及び温度センサと、前記湿度センサ及び前記温度センサからの出力信号から求めた温度に依存しない量と予め求めておいた基準量とを比較し、警報信号を出力する検出回路と、前記警報信号により作動する表示部とを備えることを特徴とする密閉監視装置。
【請求項2】 請求項1記載の密閉監視装置において、前記警報信号を配電線搬送信号に変換し、配電線路を介して伝送可能とする搬送信号伝送回路を備えることを特徴とする密閉監視装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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