説明

密閉筒状電解装置

【課題】逆反応の進行を抑制することにより電力消費量を低減させ、かつ簡単に分解することができる構造としメンテナンス性を向上させた、アンモニア態の窒素あるいは硝酸態窒素の分解に好適に使用することができる密閉筒状電解装置を提供する。
【解決手段】密閉筒状電解装置1は、両端にフランジ5を備え、両端部に液入口3、液出口4を有する外筒2に同心的に内筒6を設置し筒状陽極及び筒状陰極を狭い間隙を以て交互に同心的に配置し、かつ内筒と最も内側の電極間の間隙及び外筒と最も外側の電極間の間隙を狭く配置し、両電極端部に形成されたフランジ状給電板12,14,16と外筒両端のフランジとを貫通孔20にボルトを通してナットにより結合して組立たことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力消費量が少なく、かつメンテナンス性に優れた筒状電解装置に関する。
より詳しくは、逆反応の進行を抑制することにより電力消費量を低減させ、かつ簡単に分解することができる構造とすることによりメンテナンス性を向上させた、アンモニア態の窒素あるいは硝酸態窒素の分解に好適に使用することができる密閉筒状電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア態窒素成分を含む排水は、凝集沈殿法その他の薬剤添加による処理が難しく、専ら嫌気性細菌による生物処理が行われるのが現状である。
その生物処理方法は、アンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する硝化工程と、硝酸態窒素を窒素ガスに変換する脱窒工程の2工程により行われるため、2つの異なる反応槽が必要となると共に、著しく長い処理時間を要するため、処理効率が著しく悪いという問題があった。
【0003】
また、この生物処理方法では、脱窒素細菌を保有するために、大容量の嫌気槽が必要となり、設備建設コスト高騰、装置設置面積の増大を招くという問題もある。
さらに、この脱窒素細菌の活動は、周囲の温度環境、被処理水中に含有される成分等により著しく影響される。
そのため、特に温度が低くなる冬場になると活動が低下し、その結果脱窒素作用が低下し処理効率が不安定となるという問題もある。
【0004】
このようなことに加えて、近年排水中の窒素の総量が規制されるなど排水処理基準の厳格化などとあいまって有効、かつ、簡易な処理方法の開発機運が高まっており、特に、高濃度、小規模の排水処理ニーズに対応できる処理方法が求められている。
近年、それに対処する方法として電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法が提案されている(特許文献1ないし4、及び非特許文献1)
その方法は、電解槽の陰極において硝酸イオン(NO3-)を還元して亞硝酸イオン(NO2-)を生成し、次いでそのNO2-を更に還元してアンモニアを生成し、他方陽極においては塩素あるいは活性酸素を生成し、それら生成したアンモニアと塩素あるいは活性酸素とを反応させて、アンモニアを窒素にすることにより排水を脱窒するものである。
【0005】
[先行技術文献]
【特許文献1】特許第3524894号明細書
【特許文献2】特許第3530511号明細書
【特許文献3】特開2003−88871
【特許文献4】特開2003−230883
【非特許文献1】Electrochemistry,70,No.2(2002)、N HIRO,T KOIZUMI,T RAKUMA,D TAKAOKA,K TAKIZAWA
【非特許文献2】「ラテックス・エマルジョンの最新応用技術」 ケミカル先端技術シリーズ3、第9〜21頁、株式会社 中日社 1991年6月25日発行
【0006】
その提案されている電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法においては、陽極側で塩素あるいは活性酸素の生成に加えて、陰極側で生成した亞硝酸イオンが陽極側に拡散し、そこにおいて酸化して硝酸イオンを生成する逆反応も副次的に発生し、窒素除去効率を低下させるという問題が生じている。
さらに、陰極側においても、陽極で生成した塩素が陰極側に拡散し、そこにおいて還元されて塩素イオンを生成する逆反応も副次的に発生し、窒素除去効率を低下させるという問題が生じている。
【0007】
以上のとおりであり、この硝酸性窒素含有排水の処理方法においては、電気エネルギーが副次反応にも消費され非効率となっている。
この問題を解消するための技術も前記特許文献2で既に提案されており、それはイオン交換膜を隔膜として陰極室と陽極室とに区画した電解槽を用いて、硝酸性窒素を含有する排水を陰極室に供給して電解を行い、アンモニアを生成した後、そのアンモニアを溶存する排水を陽極室に移動させ、アンモニアと陽極室で生成した次亜塩素酸又は酸素とを反応させて窒素を生成させて脱窒する方法である。
【0008】
ところで、この特許文献2で提案されたイオン交換膜を隔膜として用いる電解による脱窒方法では、電解とアンモニアからの窒素の生成反応とが交互に行われており、その硝酸性窒素含有排水の処理は、間欠的で不連続なものとなっている。
また、この方法では、前記したとおり隔膜が存在し、陰極室と陽極室の間では、陰極室から陽極室に処理液を移送するためのポンプが設置されている。
以上のとおりであり、隔膜を使用して電解により脱窒する場合には、装置構造及び処理操作が複雑となることが避けられず、十分に満足すべきものではなかった。
【0009】
そこで、本発明者らは、前記した電解による排水処理の長所を生かし、かつ無隔膜で電解を用いて硝酸性窒素を含有する排水を脱窒する方法の簡単な構造及び単純操作等の利点を生かしつつ、電気エネルギーの浪費を極力低減できる、効率的な硝酸性窒素含有排水の処理方法を開発し、既に特許出願した(特願2005−247964、特願2005−300531)。
この方法においては、陰極に、前者の特許出願においてはアルミニウム、後者の特許出願においては鉄を利用するものである。
【0010】
前記したとおり、この方法においては、陰極にアルミニウム又は鉄を使用するものであり、これが溶解して電子を放出すると共に合わせて硝酸性窒素成分をも還元し、それにより硝酸イオンを生成する逆反応あるいは塩素イオンを生成する逆反応により浪費した電気量を見掛上補填でき、電気エネルギーの浪費を低減するものである。
また、その際にはスクラップを利用することにより一層コストダウンを図ることも配慮されている。
【0011】
以上の硝酸性窒素含有排水の電解による脱窒処理においては、途中において形成されたアンモニアを電解により分解することは行われるものの、あくまでも硝酸性窒素含有排水を脱窒する技術に関するものである。
そのような中において、本発明者は、最近高濃度でアンモニアを含有する排水が存在することを知り、この排水に対し電解によるアンモニアの低減を試みた。
すなわち、ゴムの樹から採取された新鮮なラテックスは、変質を回避するために農園において凝固防止剤としてアンモニアが添加されている(農園ラテックスといわれる)。
【0012】
この農園ラテックスは、その後現地の工場にて濃縮されて濃縮ラテックスが製造され、この濃縮ラテックスは、通常消費地に近い海外の製品製造工場に搬送され、その後製品化されることになる。
そのため搬送工程においても変質しないことが求められ、その安定保存のために保存剤が使用されており、その保存剤にもアンモニアが用いられている(非特許文献2)。
そのようなことから、その製品製造工程及び濃縮ラテックス製造工程においては、それぞれ凝固防止剤及び保存剤がラテックス成分から分離され、アンモニア及びCOD成分を含有する排水が排出されることになる。
【0013】
本発明者は、このアンモニア及びCOD成分含有排水からアンモニア及びCOD成分を除去する処理技術を開発し既に特許出願した(特願2006−131552)。
その処理技術においては、アンモニアは電解により分解されており、その分解時には電解液中に食塩を添加し、生成した次亜塩素酸塩と反応させて酸化し窒素にすることになる。
なお、その際には、硝酸態窒素の場合と同様に陽極で生成した塩素が陰極側に拡散し、そこにおいて還元されて塩素イオンを生成する逆反応も副次的に発生する。
さらに、アンモニアは電気的な吸引力により陰極側に移動し、そのため陽極において生成した次亜塩素酸塩との反応が抑制させることになる。
【0014】
前記のとおりであり、電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法においては、陰極側で生成した亞硝酸イオンが陽極側へ拡散することによる逆反応の発生、及び陽極で生成した塩素の陰極側への拡散により起こる逆反応である塩素イオン発生により電気エネルギーが浪費されており、有効に利用されていない。
これを解決するために本発明が出願した特許も見掛け上電気エネルギーの有効利用に貢献するものではあるが、本質的な解決策を提供するものではない。
【0015】
また、電解を利用したアンモニア含有排水の処理方法においても、前記したとおり陽極で生成した塩素の陰極側への拡散により起こる逆反応である塩素イオン発生により電気エネルギーが浪費されており、有効に利用されていない。
さらに、アンモニアは電気的な吸引力により陰極側に移動し、陽極において生成した次亜塩素酸塩との反応を生ずる機会が低減されることになり、この点も電気エネルギーの有効利用上短所となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、本発明者は、前記問題点を根本的に解消すべく、鋭意研究開発に努め、その結果開発に成功したのが本発明である。
すなわち、本発明は、前記した電解を利用した硝酸性窒素含有排水の処理方法における亞硝酸イオンが陽極側へ拡散することによる逆反応の発生、及び陽極で生成した塩素の陰極側への拡散により起こる逆反応の発生、並びに電解を利用したアンモニア含有排水の処理方法における、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散により起こる逆反応の発生、及びアンモニアの陰極側への移動を抑制することができる電解装置の研究開発に鋭意努め、その結果開発に成功したのが本発明である。
【0017】
その際には、これら問題点を根本的、かつ構造的に解消することができる電解装置の研究開発に鋭意努め、その結果開発に成功したのが本発明である
さらに、その際には、主として排水処理に利用することを狙いとしていたことから、メンテナンス性に優れた構造とすることも重要な狙いとした。
したがって、本発明は、前記問題点を根本的、かつ構造的に解消することができる電解装置を提供することを解決すべき課題、すなわち目的とするものであり、メンテナンス性に優れた構造の電解装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記課題を達成するための密閉筒状電解装置を提供するものであり、それは両端にフランジを備え、一端部に液入口、他端部に液出口を備えた外筒、前記外筒内に同心的に配置された内筒、狭い間隙を以て交互に同心的に配置された筒状陽極及び筒状陰極、前記陽極の一方の端部に形成されたフランジ状給電板、前記一方の端部とは反対側の筒状陰極の端部に形成されたフランジ状給電板、並びに内筒と最も内側の電極間の間隙及び外筒と最も外側の電極間の間隙を狭くし、かつ前記陽極のフランジ状給電板及び前記陰極のフランジ状給電板を前記外筒両端の対応するフランジと結合して組立てたことを特徴とする。
【0019】
そして、その密閉筒状電解装置は、筒状陽極のフランジ状給電板及び筒状陰極のフランジ状給電板と、外筒両端の対応するフランジの同一の位置に貫通孔を形成し、それらの孔にボルトを通してナットにより筒状陽極のフランジ状給電板及び筒状陰極のフランジ状給電板と外筒両端の対応するフランジとを結合したものであるのが好ましい。
また、液入口及び液出口を外筒の接線方向に結合したものであるのが好ましい
さらに、筒状陽極と筒状陰極との間に絶縁ネットを配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の密閉筒状電解装置においては、外筒内に内筒を配置しており、これにより内筒が存在しない場合に比し被処理液が通過する断面が小さくなり、かつ電極間の距離も狭いので、電解処理液は電極間を高速で通過することができる。
その結果、硝酸性窒素含有排水の処理の場合においては、陰極側で生成した亞硝酸イオンの陽極側への拡散、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散を抑制することができる。
さらに、電解を利用したアンモニア含有排水の処理の場合においては、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散、アンモニウムイオンの陰極側への移動を抑制することもできる。
【0021】
そのため、従前の電解装置を使用して、硝酸性窒素含有排水の電解処理した場合のように、亞硝酸イオンの陽極側への拡散による逆反応の発生、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散による逆反応の発生、アンモニア含有排水を電解処理した場合のように、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散による逆反応の発生、及びアンモニウムイオンの陰極側への移動によるアンモニア分解の低減を抑制することができる。
【0022】
そして、本発明の密閉筒状電解装置は、隔膜を具備しておらず、そのためこれを用いて硝酸性窒素を含む排水を電解処理する場合には、前記した隔膜を使用する電解処理の場合に比し、装置構造が簡単で、処理操作が単純である。
さらに、本発明では、前記したアルミニウムの溶解に伴って硝酸性窒素成分を還元し、硝酸イオンを生成する逆反応あるいは塩素イオンを生成する逆反応により浪費した電気量を見掛上補填する場合に比し、本質的に電流効率を向上させることができる優れたものである。
また、本発明の密閉筒状電解装置は、前記したとおりの構造であるから、組み立て、分解が簡単であり、排水処理に利用するのに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下において、本発明について発明を実施するための最良の形態を含む実施の形態に関し図1ないし図3を用いて詳述するが、本発明は、この実施の形態によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲によって特定されるものであることはいうまでもない。
その図1は、本発明の好ましい密閉筒状電解装置の全体像を図示し、図2は同装置に使用する好ましい筒状陽極(アノード)及び筒状陰極(カソード)を図示するものである。
また、図3は、本発明の密閉筒状電解装置を組み立てる際に使用する内筒、外筒、絶縁ネット、筒状陽極及び筒状陰極等の全構成部品を図示するものである。
【0024】
その図示された密閉筒状電解装置1は、円筒状外筒2の中心部に円筒状内筒6を同心的に配置しており、それら両筒の間に外側から円筒状の外側陰極13、円筒状の陽極11及び円筒状の内側陰極15が外筒2内に同心的に順に配置されている。
さらに、外側陰極13と陽極11との間及び内側陰極15と陽極11との間には、それぞれ外側絶縁ネット18及び内側絶縁ネット19が配置されており、これらにより陽極と陰極とが短絡することを防止する構造となっている。
【0025】
外筒2には両端部にフランジ5が付設されており、外側陰極13及び内側陰極15の上端部にはそれぞれフランジ状外側給電板14及びフランジ状内側給電板16が付設され、更に陽極11の下端にはフランジ状給電板12が付設されている。
その外筒2の上端部のフランジ5、外側陰極のフランジ状外側給電板14及び内側陰極のフランジ状内側給電板16には同じ位置に貫通孔20が形成されており、さらに外筒2の下端部のフランジ5及び陽極のフランジ状給電板12にも同じ位置に貫通孔20が形成されている。
【0026】
その図示された密閉筒状電解装置1においては、それら貫通孔20にボルトを貫通させて、ナットにより締め付けることにより、内筒、絶縁ネット、筒状陽極及び筒状陰極等を外筒に固定することになる。
前記固定には、図示した密閉筒状電解装置1においては、ボルトとナットとの組み合わせることにより行われており、本発明の電解装置においてはこれが好ましい。
【0027】
前記のとおりではあるものの、その固定手段は前記したものに特に制限されることはなく、内筒等を外筒に着脱可能に装着することができるものであれば、各種のものを使用することができる。
それには、例えばクランプ、ねじ込みあるいはセンターボルト等を例示することができる。
前記のとおりであるから、密閉筒状電解装置1においては、各部分を簡単に着脱することができ、その結果容易にメンテナンスを行うことができる。
【0028】
その固定の際には、それら部品を安定的に固定するために、前記以外にパッキン7、エンドプレート8、Oリング9、押さえ板10及び接合リング17等を利用している。
具体的には、フランジ5とフランジ状外側給電板14との間、フランジ状外側給電板14とフランジ状内側給電板16との間、及びフランジ5と陽極のフランジ状給電板12との間には、それぞれパッキン7が挿入されている。
さらに、フランジ状内側給電板16の外側及び陽極のフランジ状給電板12の外側にはエンドプレート8が取り付けられており、それら給電板とエンドプレート8との間にもパッキン7が挿入されている。
【0029】
また、エンドプレート8の外側には押さえ板10を取り付け、内筒6を外筒2に安定的に固定する構造となっており、具体的には内筒6と押さえ板10との間には、Oリング9が挿入され、それにより内筒6は外筒内に安定的に固定される。
その押さえ板10には、ビス貫通用孔が形成されており、この孔にビスを貫通させた後、エンドプレート8に形成されている孔にねじ込むことにより、押さえ板10をエンドプレート8に固定し、内筒を外筒に安定的に固定する。
その際には、Oリング9が内筒とエンドプレート8との間に挿入され、それにより内筒は安定的に固定される。
【0030】
そして、図示された密閉筒状電解装置1においては、外筒2外側に被処理液の流入口3及び流出口4が外筒の接線方向に取り付けれており、被処理液は流入口3から外筒2内に流入し、流入後外筒2と内筒6との間に配置された陽極と陰極との電極間、内筒と内側陰極との間、外筒と外側陰極との間を高速で上昇し、流出口4から密閉筒状電解装置1外に流出する。
また、フランジ状給電板には、電源ケーブル端子取り付け穴21が形成されており、ここに電源ケーブルを取り付けることにより両電極に電気が供給され、被処理液は陽極と陰極との電極間を上昇する際に電解されることになる。
【0031】
例えば、食塩を添加したアンモニア含有排水を電解処理する場合には、陽極で生成した次亜塩素酸塩と、排水が含有するアンモニアとを反応させてアンモニアを酸化し窒素にすることになる。
その際には、被処理液が電解槽内を高速で移動するので、陽極で生成した塩素の陰極側への拡散、含有するアンモニウムイオンの陰極側への移動を抑制することができ、その結果前記拡散による逆反応の発生、前記アンモニウムイオンの移動によるアンモニア分解の低減を抑制することができる。
【0032】
本発明においては、外筒は円筒であるのがよいが、筒状であれば特に形状は限定されることはなく、断面形状が楕円あるいは多角形でもよく、多角形の場合には5角形以上がよい。
外筒内に配置される内筒、絶縁ネット、筒状陽極及び筒状陰極については、外筒と同様に円筒であるのがよく、外筒内に同心的に配置されることが必要である。
外筒の断面が円以外の場合には、内筒、絶縁ネット、筒状陽極及び筒状陰極に断面が外筒と相似形であるのがよく、その場合にも、それらは外筒内に同心的に配置されることが必要である。
【0033】
本発明においては、被処理液が筒状陽極と筒状陰極との間を高速で通過することが必要であり、そのために被処理液の通過断面積を減少させるべく、外筒内に内筒を設置しているものであるから、内筒の断面の径は外筒の断面の径の4/5〜1/5程度がよくかつ外筒の断面の径が大きくなるほど大きくするのがよい。
具体的には、外筒の断面の直径は、0.1〜1m、内筒の断面の直径は0.05〜0.8mがよく、外筒の断面の直径は、0.2〜0.3m、内筒の断面の直径は0.1〜0.2mが好ましい。
【0034】
また、外筒及び内筒の材料については特に制限されることはないが、断面径が前記範囲内にある限り市販の金属パイプあるいはプラスチックパイプが利用でき、金属パイプの場合にはチタン等の弁金属類、あるいは内壁を合成樹脂でライニングしたステンレス鋼等が例示でき、プラスチックパイプの場合には塩化ビニル樹脂、あるいはアクリル樹脂等が例示できる。
なお、それらのパイプの中では電極との短絡防止を配慮する必要がないことからプラスチックパイプがよく特に塩化ビニル管が安価であることから好ましい。
【0035】
そのプラスチックパイプの場合には、高価ではあるものの、透明のパイプを用いることにより特殊な作用効果を得ることができる。
すなわち、その場合には内筒内に照明器具を配置することにより、両パイプが透明であることから、内外筒間を内筒内の照明により照らすことができ、電解状態を観察することができるという利点がある。
さらに、筒状陽極と筒状陰極との間隔については、両電極が短絡せず、被処理液の移動が円滑である限り狭い方がよく、具体的には3〜6mm程度がよい。
【0036】
筒状陽極と筒状陰極との間には、両者の短絡を防止するために絶縁ネットを配置するのがよく、その絶縁ネットは、合成樹脂製の網状体がよい。
その網状体は、平行に伸びる多数の合成樹脂製の線と、それとは異なる方向に伸びる多数の合成樹脂製の線とを交差させて結合させたものがよい。
その結合の際には、異なる2方向に伸びる合成樹脂製の線は、同一平面を形成するように結合するではなく、両線が段差を有するように結合させるのがよい。
その理由は、このようにすることにより合成樹脂製の線と、電極の間に被処理液を通過させ易い空間を確保することができるからである。
【0037】
外筒に形成される流入口及び流出口の構造及び設置位置については、被処理液が両電極間を円滑に通過することができる限り特に制限されることなく各種の態様を採用可能であるが、外筒の接線方向に設置することにより、被処理液が電解装置内に円滑に流入し、円滑に通過し、その後円滑に流出することができるのでよい。
なお、前記以外の構造等については、スリットあるいは多孔板を利用したディストリビビュータ等が例示できる。
【0038】
また、筒状陽極及び筒状陰極の設置位置についても特に限定されることはなく、図示された密閉筒状電解装置1においては、外筒及び内筒の両筒に陰極が面しているが逆であってもよい。
さらに、外筒内に配置される筒状陽極と筒状陰極の設置数についても特に限定されることはないが、被処理液が両電極間を円滑、かつ高速で通過できる範囲内であることがよく、それには3〜7の範囲がよい。
なお、図示された密閉筒状電解装置1においては、陰極の数が一つ多いが両極が交互に配置されている限り勿論同数でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の密閉筒状電解装置の組立られた状態における全体概要を示す。
【図2】本発明の密閉筒状電解装置に使用する筒状陽極及び筒状陰極を示す。
【図3】本発明の密閉筒状電解装置に使用する全部品を示すと共に、外筒及び内筒については両筒が挿入された状態を図示し、外側陰極、内側陰極及び陽極については、それが挿入された状態を図示する。
【符号の説明】
【0040】
1 密閉筒状電解装置
2 円筒状外筒
3 流入口
4 流出口
5 フランジ
6 円筒状内筒
7 パッキン
8 エンドプレート
9 Oリング
10 押さえ板
11 円筒状の陽極
12 フランジ状給電板
13 外側陰極
14 フランジ状内側給電板
15 内側陰極
16 フランジ状内側給電板
17 接合リング
18 外側絶縁ネット
19 内側絶縁ネット
20 貫通孔
21 電源ケーブル取り付け孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にフランジを備え、一端部に液入口、他端部に液出口を備えた外筒、前記外筒内に同心的に配置された内筒、狭い間隙を以て交互に同心的に配置された筒状陽極及び筒状陰極、前記陽極の一方の端部に形成されたフランジ状給電板、前記一方の端部とは反対側の筒状陰極の端部に形成されたフランジ状給電板、並びに内筒と最も内側の電極間の間隙及び外筒と最も外側の電極間の間隙を狭くし、かつ前記陽極のフランジ状給電板及び前記陰極のフランジ状給電板を前記外筒両端の対応するフランジと結合して組立てたことを特徴とする密閉筒状電解装置。
【請求項2】
筒状陽極のフランジ状給電板及び筒状陰極のフランジ状給電板と、外筒両端の対応するフランジの同一の位置に貫通孔を形成し、それらの孔にボルトを通してナットにより筒状陽極のフランジ状給電板及び筒状陰極のフランジ状給電板と外筒両端の対応するフランジとを結合した請求項1記載の密閉筒状電解装置。
【請求項3】
液入口及び液出口を外筒の接線方向に結合した請求項1又は2記載の密閉筒状電解装置。
【請求項4】
筒状陽極と筒状陰極との間に絶縁ネットを配置した請求項1、2又は3記載の密閉筒状電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−43891(P2008−43891A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222790(P2006−222790)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000227250)日鉄鉱業株式会社 (82)
【Fターム(参考)】