説明

寝衣

【課題】外観上も良好であり、着心地もよい寝衣を提供する。
【解決手段】身体の前で右前身頃12と左前身頃14を打ち合わせて着用する。打ち合わせの身体側となる一方の前身頃に、1枚の布で作られたマチ44を備える。マチ44は、縦方向の長さは裾から腹部付近に達し、縦方向の一端縁部は前身頃12の前側端部に縫い合わされている。他方の端縁部には、マチ44が設けられた前身頃12と反対側の前身頃14の内側脇部に、着脱自在に係止される紐体46を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、簡単に着脱する浴衣形の寝衣に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体の前で右前身頃と左前身頃を打ち合わせて簡単に着用する浴衣形の寝衣は、病院や福祉施設等で、入院患者に着用されている。このような寝衣は、前身頃の前側の先端と、反対側の前身頃の脇部に、紐体が縫い付けられている。この一対の紐体を、互いを結んだり外したりして寝衣を着脱する。
【0003】
また、ベッドに寝たきりで療養している患者に寝衣を着替えさせるときは、まず介助者が体を横向きに寝返りさせて左半身または右半身をベッドから浮かせ、この浮いている半身に寝衣を着せ、次に体を反対の横向きに寝返りさせて残りの半分を着用させていた。しかし、体を寝返りさせるために肩や背中を押すと、押されている部分に痛みが生じることがある。これを防ぐために、体の下に小さいタオルケットを敷き、このタオルケットの端部を引き上げて寝返りさせるなどの工夫がされていた。
【0004】
その他、特許文献1,2に開示されているように、前合わせ部位外の開閉部を備えた介護用寝間着も提案されている。
【特許文献1】特開平10−130917号公報
【特許文献2】特開2002−138312号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、浴衣形の寝衣は、洋服のように身体に密着せず、身体の前側で前身頃を巻き付けて、紐体を結んで係止されているだけなので、寝ている間に裾付近の合わせ幅が浅くなり、はだけて足が冷えたり、めくれ上がって足元がごろついたりして不快なことがある。
【0006】
この発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、外観上も良好であり、着心地もよい寝衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、身体の前で右前身頃と左前身頃を打ち合わせて着用する浴衣形であり、打ち合わせの身体側となる一方の前身頃に1枚の布で作られたマチが連接して設けられている。上記マチは、縦方向の長さは裾から腹部付近に達し、縦方向の一端縁部は前身頃の前側端部に縫い合わされている。他方の端縁部には上記マチが設けられた前身頃と反対側の前身頃の内側脇部に着脱自在に係止される係合手段が設けられている。この係合手段は、例えば一対の紐体である。
【0008】
この発明の寝衣は、前身頃にはマチが設けられ、前身頃の打ち合わせから足が露出することを防ぐようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の寝衣は、前身頃にマチが連接して設けられ、裾がはだけても足が露出せず、外観上及び、着心地が好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1〜図3は、この発明の一実施形態を示すものであり、この実施形態の寝衣10は、右前身頃12、左前身頃14、右後身頃16、左後身頃18が縫い合わされて設けられている。右前身頃12と右後身頃16には右袖部20が、また左前身頃14と左後身頃18には左袖部22が縫い合わされている。首の後から右前身頃12、左前身頃14の腹部付近にかけて、帯状の襟部24が連続して設けられている。
【0011】
襟24の、左前身頃14に取り付けられた部分には、下端部付近と胸の位置付近に、側方へ突出する紐体26,28が縫い付けられて設けられている。右前身頃12の外側の脇部には、紐体26,28に対向する位置に紐体30,32が設けられている。襟24の、右前身頃12に取り付けられた部分には、下端部付近と胸の位置付近に、側方へ突出する紐体34,36が縫い付けられて設けられている。左前身頃14の内側の脇部には、紐体34,36に対向する位置に紐体38,40が設けられている。
【0012】
右後身頃16、左後身頃18の外側面には、図2に示すように右袖部20、左袖部22のわずかに下から、着用状態で太ももの中央付近までを覆う補強用生地42が取り付けられている。補強用生地42は右後身頃16、左後身頃18と同じ生地で作られ、着用状態で身長方向に沿う両方の端部42a,42bが縫い付けられている。端部42a,42bに対して直角な端部42c,42dは右後身頃16または左後身頃18との間が開口され、補強用生地42の内側に挿通可能となっている。補強用生地42の中心は、端部42a,42bに対して平行に、右後身頃16と左後身頃18の境目付近に縫い合わされている。
【0013】
右前身頃12の前側縁部12aには、下半身にマチ44が設けられている。マチ44は、柔らかい生地を矩形に切断して設けられ、一方の端部44aが右前身頃12の前側縁部12aに縫い合わせられ、側縁部12a内側に縦の二つ折りにされて収容されている。マチ44の上端部44bは、襟24の下端部の内側に縫いとめられている。マチ44の、端部44aに対して平行な他端部44cには、中間よりもやや下寄りに、紐体46が縫い付けられて設けられている。左前身頃14の内側の脇部には、紐体46に対向する位置に紐体48が設けられている。なお、このマチ44は、男女で左右の位置が逆に形成される。
【0014】
右前身頃12と右後身頃16で作られた肩部は、肩の長手方向に分割され、右袖部20と襟24も連続して分割されている。分割された一対の端縁部50には、互いに着脱自在な面ファスナー52が設けられている。右前身頃12側の襟24には、端縁部50よりも襟24の延長方向に突出する連結部54が一体に形成されている。連結部54の内側面には面ファスナー56が設けられている。右後身頃16側の襟24には、面ファスナー56に着脱自在な面ファスナー58が外側面に設けられている。
【0015】
左前身頃14と左後身頃18で作られた肩部は、肩の長手方向に分割され、左袖部22と襟24も連続して分割されている。分割された一対の端縁部60には、互いに着脱自在な面ファスナー62が設けられている。左前身頃14の襟24は、端縁部60よりも襟24の延長方向に突出する連結部64が一体に形成されている。連結部64の内側面には面ファスナー66が設けられている。左後身頃18側の襟24には、連結部64の面ファスナー66に着脱自在な図示しない面ファスナーが外側面に設けられている。
【0016】
次に、寝衣10の着脱方法について説明する。着用者68が寝衣を着た状態を図3に示す。右前身頃12の襟24に取り付けられた紐体34,36と、左前身頃14の内側の脇部に位置する紐体38,40を結び、マチ44の紐体46と左前身頃14の内側の脇部に位置する紐体48を結ぶ。右前身頃12の外側に左前身頃14を被せ、左前身頃14の襟24に取りつけられた紐体26,28と、右前身頃12の外側の脇部に位置する紐体30,32を結ぶ。
【0017】
次に、仰向きに寝ている着用者68から、介護者70が寝衣10を脱がせる方法について説明する。まず、右前身頃12の襟24に連続する連結部54の面ファスナー56を、右後身頃16の面ファスナー58から外す。そして肩の一対の面ファスナー52を互いに外して一対の端縁部50を分離させ、右前身頃12と右後身頃16を離し、右袖部20を展開して着用者の右肩と右腕を露出させる。同様に左前身頃14の襟24に連続する連結部64の面ファスナー66を左後身頃18の面ファスナーから外す。そして肩の一対の面ファスナー62を互いに外して一対の端縁部60を分離させ、着用者68の左肩と左腕を露出させる。
【0018】
次に、紐体28,32等、互いに結んである五対の紐体をそれぞれ解く。次に介護者70は両手を着用者68の左側から背中に手を回し、補強用生地42の端部42c,42dから補強用生地42と左後身頃18の間に手を深く差し込む。この状態で手を引き上げると、寝衣10の左側とともに着用者68の左半身が持ち上がり右向きに寝返りを半周させることができる。着用者68の左半身から左前身頃14,左後身頃18,左袖22を脱がせて背中の中心側に寄せる。一旦着用者68を仰向けに戻してから、次に着用者68の右側から背中に手を回し、補強用生地42の端部42c,42dから補強用生地42と右後身頃16の間に手を深く差し込む。この状態で手を引き上げると、寝衣10の右側とともに着用者68の右半身が持ち上げられて左向きに寝返りを半周させることができる。着用者68の背中の下から寝衣10の左半身を引き出し、右前身頃12,右後身頃16,右袖部20を外して寝衣10を脱がせる。
【0019】
着用者68に寝たまま寝衣10を着せる場合は、右向きに寝返りを打っているときに寝衣10の右半身を着せ、左向きに寝返りを打っているときに寝衣10の左半身を着せ、最後に各面ファスナーと各紐体を閉めて着用させる。また、左右を逆の順で着脱させてもよい。
【0020】
着用者68が寝ているときに寝衣10の裾が広げられた場合、図3に示すようにマチ44の紐体46が左前身頃14の内側の脇部に設けられた紐体48に引かれて左前身頃14の側方へ広がり、足を覆う。着用者68が起きて運動する際も、足の動きに伴いマチ44が広がる。
【0021】
この実施形態の寝衣10によれば、簡単な構造であり、着替えやすくて着心地が良好である。また、寝たきりの着用者68を介護する際にも容易に着替えをさせることができ便利である。介護者70が、補強用生地42と右後身頃16または左後身頃18の間に手を差し込んで腕を上に移動させるだけで着用者68を簡単に寝返りさせることができる。これにより、介護者70は少ない力で確実に寝返りや着替えをさせることができ、着用者68も寝返りのときに体を押される苦痛を受けることがない。また介護者70の手が外れることがなく、安全である。着替え以外に、床ずれを防ぐための寝がえりや、移動の補助も簡単に行うことができる。補強用生地42は、右後身頃16や左後身頃18と同じ布で作られているため、外見に違和感がない。また、補強用生地42は背中を広く覆っているため、段差や継ぎ目がなく、寝ているときやいすの背もたれに寄りかかるときにごろつき感がない。また、右前身頃12の裾にはマチ44が設けられて足を覆っているため、足がはだけて冷えたり、また寝ているときにめくれてごろつくことがなく、快適に着用することができる。両肩は面ファスナー52,62で簡単に展開したり閉じたりすることができ、肩や手が動き難い着用者68の着替えを手伝う際に、肩や手を無理に曲げたりすることがなく、着用者68も介護者70も楽に行うことができる。襟24には、端縁部50,60よりも突出して襟24の外側に重ねられて係止される連結部54,64が設けられているため、不用意に外れることがなくしっかりと着用することができる。
【0022】
なお、この発明の寝衣は上記実施の形態に限定されるものではなく、紐体は面ファスナーやボタン、ホック等の他の係合手段でもよい。マチは、ギャザーでも良く、ゆとりを設けたものであればよい。肩を分割する位置は、肩の上面以外に肩のやや前側などでもよい。肩の分割や、背中の補強用生地は、浴衣形の寝衣の他に、ガウン形やパジャマ形など、いろいろなデザインの寝衣にも利用することができる。また、寝衣のマチは、介護用の寝衣の他に、宿泊施設で使用される浴衣に設けてもよく、動き易く着心地が良好なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態衣の寝衣の正面図である。
【図2】この実施形態の寝衣の背面図である。
【図3】この実施形態の寝衣の着用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 寝衣
12 右前身頃
14 左前身頃
16 右後身頃
18 左後身頃
20 右袖部
22 左袖部
24 襟
26,28,30,32,34,36,38,40,46,48 紐体
42 補強用生地
44 マチ
50,60 端縁部
52,56,58,62,66 面ファスナー
54,64 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の前で右前身頃と左前身頃を打ち合わせて着用する浴衣形であり、打ち合わせの身体側となる一方の前身頃にマチが連接して設けられ、上記マチは、縦方向に二つ折りにされた布地から成り、縦方向の長さが腹部から上記前身頃の裾に達し、上記マチの縦方向の一端縁部は上記前身頃の前側端部に連接して腹部から裾まで設けられ、他方の縦方向端縁部は自由端となり、上記他方の縦方向端縁部には、上記マチが設けられた前身頃と反対側の前身頃の内側に着脱自在に係止される係合手段が設けられていることを特徴とする寝衣。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−184730(P2008−184730A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75454(P2008−75454)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【分割の表示】特願2003−91413(P2003−91413)の分割
【原出願日】平成15年3月28日(2003.3.28)
【出願人】(598031202)
【Fターム(参考)】