説明

対物レンズユニットおよび眼科撮影装置

【課題】眼科撮影装置の穴あきミラーの埃の問題を回避し、かつ眼科撮影装置の組立、調整、あるいは保守作業時における対物レンズの反射を防止する黒点板と光学系の位置関係の問題を解決する。
【解決手段】対物レンズ8を通過する撮影光または観察光を中央の開口から出射させる開口を有するとともに、主光学系の光軸に対して傾斜して配置され、照明光学系からの照明光を反射面で反射させる穴あきミラーM3と、穴あきミラーM3の開口を通過した撮影光または観察光を通過させる撮影絞り32と、穴あきミラーM3の反射面に入射される照明光の光軸上に照明光の対物レンズ8の表面での反射を防止する黒点31a、31bを配置する黒点板30と、対物レンズ8を収容する鏡筒と、黒点板30を固定した鏡筒をV字型に組合せた形状の鏡筒ユニットとして対物レンズユニット100を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対物レンズを含む主光学系と、前記対物レンズを主光学系と共有する照明光学系とを有する眼科撮影装置に用いられる対物レンズユニット、および該対物レンズユニットを用いる眼底カメラなどの眼科撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼底カメラなどの眼科撮影装置において、被検眼を照明するために、ハロゲンランプやフラッシュのような照明光源を用い、観察および撮影のための主光学系対物レンズを共有する照明光源部を配置する構成が知られている。
【0003】
蛍光撮影時には強い照明光が必要であり、また秒1コマ程度のインターバルで撮影が行なわれるため、照明光源およびその近辺は非常に高温になり、そのため本体筐体に熱による歪みを発生させるなどの問題がある。
【0004】
この問題に鑑み、照明光源部を眼科撮影装置の本体上部に配置する構成が提案されている(下記の特許文献1)。さらに、この特許文献1では照明光を反射させる穴あきミラーの反射面を装置の下方を向くように配置すべく、撮影光路と照明光路を交差させた複雑な光路配置を採用している。
【0005】
特許文献1では、このように撮影光路と照明光路を交差させた光路配置を採用する理由として、照明光源部を眼科撮影装置の本体上部に配置するために照明光を反射させる穴あきミラーの反射面を単純に装置の上方に向けただけの構成では、埃によって穴あきミラーの反射が損なわれる問題が認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−272105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
照明光源部を眼科撮影装置の本体上部に配置するのは、上述の熱の問題の回避、および埃の問題の回避に有効であると考えられるが、特許文献1のような穴あきミラーを下向きにして再度照明光学系を折り曲げて照明光源を上部に配置する構成は複雑高価になりがちで、また、特許文献1のように撮影光路と照明光路を交差させた光路配置では撮影光や観察光にフレアなどが入り易い、という問題がある。
【0008】
また、眼底カメラなどの眼科撮影装置では、眼底撮影時の撮影光が対物レンズで反射してその反射光が撮影および観察に影響するのを防止するために、遮光部材から成る黒点を設けた黒点板を照明光路中に配置することが行なわれている。この黒点板の対物レンズや撮影絞り、穴あきミラーなどの光学系に対する相対位置関係は精密に行なう必要があり、眼科撮影装置の組立、調整、あるいは保守作業時において、たとえば対物レンズ廻りの部品を取り外した場合には再度黒点板の位置を精密に調整し直さなければならない、という問題があった。
【0009】
本実施例の課題は、照明光源部を眼科撮影装置の本体上部に配置する構成において、照明光を反射させる穴あきミラーの反射面を装置の上方に向ける単純な光路配置を用いながら、穴あきミラーの埃の問題を回避し、かつ眼科撮影装置の組立、調整、あるいは保守作業時における対物レンズの反射を防止する黒点板と光学系の位置関係の問題を解決し、眼科撮影装置を簡単安価に構成でき、安定した眼科撮影を行なえるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明においては、対物レンズを含む主光学系と、前記対物レンズを主光学系と共有する照明光学系とを有する眼科撮影装置に用いられる対物レンズユニットにおいて、前記対物レンズを通過する撮影光または観察光を中央の開口から出射させる開口を有するとともに、前記主光学系の光軸に対して傾斜して配置され、前記照明光学系からの照明光を反射面で反射させる穴あきミラーと、前記穴あきミラーの開口を通過した撮影光または観察光を通過させる撮影絞りと、前記穴あきミラーの反射面に照明光を入射させるための照明光学系の光軸上に前記照明光の前記対物レンズ表面での反射を防止する黒点を配置するための黒点板と、前記対物レンズを収容する第1の鏡筒と、前記黒点板を固定した第2の鏡筒を前記主光学系と前記照明光学系の光軸が交差するように屈曲した姿勢で一体に組合せた形状の鏡筒ユニットを含み、前記対物レンズ、前記穴あきミラー、前記撮影絞り、および前記黒点板が前記鏡筒ユニットに組み付けられて一体化されることによりこれらの各部材の位置関係が保証される構成を採用した。
【0011】
また、眼科撮影装置に上記対物レンズユニットを装着する場合、前記穴あきミラーの反射面で反射される照明光を照射する照明光源部が装置本体の上部に配置されるとともに、装置本体の上方を向くように前記対物レンズユニットが装置本体に装着され、上方から入射する前記照明光源部の照明光が前記穴あきミラーの反射面で前記対物レンズの方向に反射される構成を採用した。
【発明の効果】
【0012】
上記対物レンズユニットにおいては、前記対物レンズ、前記穴あきミラー、前記撮影絞り、および前記黒点板が前記鏡筒ユニットに組み付けられて一体化される構成となっているため、精密な位置決めの必要な反射防止用の黒点板と、他の主光学系の部材、すなわち対物レンズ、穴あきミラー、あるいはさらに撮影絞りとの位置関係を保証することができ、眼底カメラの組立、調整、あるいは保守作業は極めて容易になる。
【0013】
また、上記眼科撮影装置においては、発熱の問題を回避すべく照明光源部を眼底カメラ本体の上部に配置するための穴あきミラーの反射面を装置の上方に向ける単純な光路配置を用いながら、穴あきミラーの埃の問題を回避し、眼科撮影装置を簡単安価に構成でき、安定した眼科撮影を行なえる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を採用した眼科撮影装置の概略構成を示した説明図である。
【図2】図1のレンズユニットの構成を示した説明図である。
【図3】図1および図2のレンズユニットの黒点板の装着機構を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に示す眼底カメラの一実施例に基づき、本発明を実施するための好適な実施形態につき詳細に説明する。本実施例の眼底カメラは対物レンズを含む主光学系と、前記対物レンズを主光学系と共有する照明光学系とを有する。
【実施例】
【0016】
図1〜図3は本発明を採用した眼科撮影装置として眼底カメラの一実施例の概略構成を示しており、図1は本発明を採用した眼底カメラの主に光学系の概略構成を、図2は図1のレンズユニットの構成を、図3は図1および図2のレンズユニットの黒点板の装着機構をそれぞれ示している。
【0017】
本実施例において、特徴的なのは観察・撮影のための主光学系の対物レンズと主光学系の光軸と同軸の照明光を反射させる穴あきミラー、および照明光の対物レンズ境界面での反射を除去する黒点板、撮影絞りなどを1つのレンズユニットの筐体内に一体化した構成を採用している点である。
【0018】
以下、本実施例の光学系につき、図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
図1において符号Cは眼底カメラ本体の筐体の外形を示しており、図1は眼底カメラの光学系の断面構成を概略的に示している。
【0020】
主光学系の光軸と同軸の照明光を照射する照明光源部のユニットは、図1では眼底カメラ本体から分離した形で示してあるが、実際には筐体Cの上部の空間内の所定の装着位置に装着される。このように照明光源部を筐体Cの上部に配置するのは、上述の発熱の問題を回避するためである。
【0021】
照明光源部内には、観察用光源であるランプLA、撮影光源としてのストロボSR、赤外光を透過させ可視光をカットする挿脱自在のフィルタF、コンデンサーレンズ1、主光学系の方向に照明光を反射させるミラーM2、コンデンサーレンズ2bなどが配置される。
【0022】
照明光源部の装着状態において、ランプLAはミラーM2の中心を向けて配置され、このランプLAから発せられた光は、フィルタFの挿脱位置、ストロボSRの位置を経てコンデンサーレンズ1、全反射ミラーM2により反射され、コンデンサーレンズ2bを経て、眼底カメラの筐体Cの下方に向けて照射される。
【0023】
図中の符号2aは、上記のコンデンサーレンズ2bと同じもので、照明光源部の装着状態におけるコンデンサーレンズ2bの配置位置を示している。
【0024】
照明光源部の照明光は、リング状照明を形成するためのリングスリット4a、レンズ5を経て、さらに下方に進む。リングスリット4a、レンズ5は筐体C内に設けられる。リングスリット4aは、不図示のターレット機構などを用いて、異なるスリット形状を有するいくつかの別のリングスリット4bと撮影モードに応じて交換できるようになっている。
【0025】
さらに照明光源部の照明光は、眼底カメラの筐体下部の所定位置に装着される対物レンズユニット100に入射する。
【0026】
対物レンズユニット100は、主に対物レンズ8、穴あきミラーM3、および対物レンズ8の境界面での反射を除去する黒点板30、リレーレンズ7、撮影絞りなどを1つのレンズユニットの筐体内に一体化して構成されている。
【0027】
対物レンズユニット100は、図1および図2に示すように対物レンズ8を収容する第1の鏡筒(図中の水平部分)と、黒点板30を固定する第2の鏡筒(図中の上方を向く部分)を前記主光学系と前記照明光学系の光軸が交差するように屈曲した姿勢で一体に組合せた形状、すなわちほぼV字型の形状を有する、鏡筒ユニットを含む。
【0028】
そして、対物レンズユニット100は、対物レンズ8を収容した第1の鏡筒の部分を水平方向に向け、また、黒点板30を固定する第2の鏡筒の光軸が装置上方の照明光源部からの照明光学系の光軸と一致するように眼底カメラの筐体C下部の所定位置に装着される。
【0029】
レンズ5を経た照明光源部の照明光は、対物レンズ8の反射を除去するための黒点(遮光部材)31を備えた黒点板30、リレーレンズ7を通過し、中心に穴の開いた穴あきミラー(反射部材)M3で反射されてから対物レンズ8を経て、不図示の被検眼の瞳からその眼底に入射される。被検眼は、観察・撮影時に、不図示のアライメント機構により対物レンズ8の光軸上に位置決めされる。
【0030】
対物レンズユニット100の構成については、より詳細に後述する。
【0031】
不図示の被検眼の眼底からの反射光(観察光または撮影光)は再び被検眼の瞳から対物レンズ8を介して受光され、穴あきミラーM3の中央の開口から出射され、穴あきミラーM3の背後に配置された撮影絞り32で絞られ、合焦レンズ9、変倍レンズ10aを通過して、ミラーM5に入射し、筐体C内上方に反射される。変倍レンズ10aは、不図示のターレット機構などを介して他の倍率のいくつかの変倍レンズ10bと交換することができる。あるいは変倍レンズ10aはズーム系などから構成してもよい。
【0032】
ミラーM5により反射された観察・撮影光はリターンミラーM6の位置を通過する。リターンミラーM6、不図示の駆動手段を介して光路から外せるように構成されており、リターンミラーM6が光路に挿入されている場合には接眼レンズ50を介して検者が被検眼の眼底の映像を観察することができる。なお、リターンミラーM6の位置には、後述のCCDカメラ26ないし24での撮影時の視野を規制する視野絞り(不図示)を挿入できるようにしておいてもよい。
【0033】
リターンミラーM6が光路から除去されている場合には、観察・撮影光はフィールドレンズ21を経て、リターン式のミラーM7(あるいはダイクロイックミラーなどを用いることもできる)で反射され、観察用の(赤外)CCDカメラ26に入射する。ミラーM7が光路から離脱される場合は、観察・撮影光はレンズ23、ミラーM8を経てCCDカメラ24に入射し、眼底像が撮影される。(カラー)CCDカメラ24は、既成のデジタルカメラハードウェアなどを用いたもので、当該カメラ24の仕様と合致したレンズマウント24aを介して眼底カメラに装着される。
【0034】
CCDカメラ(ユニット)24、26で撮像された眼底の動画あるいは静止画は、記録装置やモニタ(いずれも不図示)に記録したりあるいは表示される。
【0035】
このような眼底カメラでは、全反射ミラー(反射部材)である穴あきミラーM3と被検眼の間で照明光路の一部と観察撮影光路の一部が共通化されており、眼底観察時には、照明光源部に赤外光を透過させ可視光をカットするフィルタFが光路に挿入され、眼底が照明光学系により照明される。なおフィルタFは可視光で眼底観察を行う時には光路から離脱できるように構成されている。
【0036】
眼底からの反射光が、撮影光学系を介して(赤外)CCDカメラ26に入射し眼底画像が動画像として観察される。アライメントや合焦が終了すると、ミラーM6が光路から離脱されるとともに、ストロボSRが発光し、眼底画像が(カラー)CCDカメラ24で撮影される。CCDカメラ24で撮影される場合には、ミラーM6のみならずミラーM7も光路から離脱される。
【0037】
次に、本実施例の対物レンズユニット100に係る構成につき詳細に説明する。
【0038】
眼底カメラでは、眼底撮影時の撮影光が対物レンズ8で反射してその反射光が撮影画像上に写り込んでしまうために、これを防止するために、照明光路中に遮光部材(後述の黒点31)を、対物レンズの各面の反射光によって生じる撮影絞り像の位置にほぼ共役な位置に配置する。
【0039】
たとえば、図2、図3に示したように、表裏に黒点31a、31bを設けた平面ガラスから成る黒点板30を配置することによって、対物レンズ8の表裏それぞれの面からの反射光によって撮影絞り像が生じることを防止する。黒点31a、31bは不透明材料を黒点板30の表面に付着させることなどにより構成するが、円筒状の不透明材を黒点板30に貫通させる、など公知の他の構造を採用してもよい。
【0040】
黒点31a、31bは、対物レンズ8の表裏面の反射を各々除去するために、対物レンズ8および撮影絞り32を含む光学系において撮影絞り32と共役な位置に正確に配置する必要がある。
【0041】
本実施例では、図2に示すようにV字型の対物レンズユニット100の上部の入射部に黒点板30を組み込んで対物レンズユニット100と一体化することにより、対物レンズ8との位置関係を予め固定化することができる。
【0042】
さらに、本実施例では、黒点板30の光軸に対する位置を調節するために図3のような調節機構を設けている。このような調節機構を設けておくことにより、個々の対物レンズユニット100ごとに黒点板30の光軸に対する位置関係を正確に調節した上、予め固定化することができ、黒点板30の正確な配置位置を保証することができる。
【0043】
図3に示した黒点板30の調節機構300は、対物レンズユニット100の上部鏡筒(第2の鏡筒)に装着され、黒点板30を保持する黒点板マウント304を含む。
【0044】
黒点板マウント304は、その下端のスクリユー部309において、対物レンズユニット100の上部鏡筒に捻じ込まれており、黒点板マウント304を回転させることにより黒点板マウント304の高さ(Q方向に関する位置)を調節することができる。たとえばスクリユー部309のねじ山ピッチを1mm以内程度としておけば、1回転の範囲内で黒点板マウント304の高さは精密に調節することができる。
【0045】
黒点板マウント304の高さ方向(Q)が決まったら、その位置は、対物レンズユニット100の上部鏡筒のネジ穴301に捻じ込まれたセットビス302により黒点板マウント304を固定することができる。黒点板マウント304下部の鏡筒部分の周囲には、セットビス302の固定範囲を上下方向(Q)に規制できるようにリング状の溝303を切っておいてもよい。
【0046】
また、黒点板マウント304上部の皿状に形成された部分には黒点板30が載置され、その光軸と交差する方向(P)の位置は黒点板マウント304上部のフランジに設けたネジ穴307に捻じ込まれたセットビス308により調整できる。ここでは、簡略化のためセットビス308は図中に1本しか示していないが、もちろん、この1本のみならず、黒点板マウント304上部のフランジ周囲に規則的に3〜4本配置しておく構成を採用してもよく、これにより、これらのセットビスを用いて黒点板30の照明光軸と交差する方向(P)の位置の調整(芯出し)を精密に行なうことができる。
【0047】
この黒点板30の照明光軸と交差する方向(P)の位置の調整(芯出し)が終了したら、その黒点板30の位置は、黒点板30の貫通穴306を貫通するロックビス305により固定することができる。
【0048】
上記のQおよびP方向の黒点板30の位置の調節は、たとえば不図示の所定の調整用光学系に対物レンズユニット100を装着した上で、調整用光学系を介して黒点31a、31bの位置を確認しながら行なうことができる。
【0049】
黒点板30の黒点31a、31bの対物レンズ8および撮影絞り32を含む光学系における配置位置は、光学系の倍率の関係から精密に調節する必要がある。本実施例のように黒点板30、対物レンズ8、撮影絞り32を一体化した対物レンズユニット100を用いず、眼底カメラ内に黒点板30を配置する従来構成では、眼底カメラの組立、調整、あるいは保守作業時に眼底カメラごとに黒点板30の配置位置を調整しなければならず煩雑な作業が必要であった。
【0050】
これに対して、本実施例のような黒点板30、対物レンズ8、穴あきミラーM3、撮影絞り32を一体化した対物レンズユニット100を用いることにより、正確に配置した黒点板30を有する対物レンズユニット100を予め組立てておくことができる。また、保守(あるいは修理)作業時などに対物レンズを取り外す必要が生じても、本実施例では対物レンズユニット100全体を眼底カメラから取り外せばよく、再度対物レンズ8および撮影絞り32を含む光学系に対する黒点板30の配置位置が狂わなくて済む。
【0051】
以上のように、本実施例のように黒点板30、対物レンズ8、穴あきミラーM3、撮影絞り32を一体化した対物レンズユニット100を用いることにより、対物レンズユニット100を眼底カメラの所定位置に組み込むだけで精密な黒点31a、31bの位置を保証することができる。
【0052】
また、本実施例においては、照明光を反射させる穴あきミラーM3と、撮影絞り32が対物レンズユニット100に一体的に組み込まれているので、これら穴あきミラーM3および撮影絞り32の対物レンズ8に対する位置も固定的に保証することができる。これにより、眼底カメラの組立、調整、あるいは保守作業は極めて容易になる。
【0053】
また、特に、穴あきミラーM3を対物レンズユニット100に一体的に封入しておくことにより、防塵効果を期待することができ、埃によって穴あきミラーM3の反射効率が損なわれたり、黒点やリングスリットの結像状態が悪化する問題を大きく軽減することができる。なお、撮影絞り32には中心部に絞り穴が設けられるが、通常この直径は2mm前後(あるいはそれ以下)であり、本実施例の対物レンズユニット100は、穴あきミラーM3や撮影絞り32を眼底カメラ内にオープン配置する構成に比してかなり大きな防塵効果を発揮することができる。
【0054】
また、上記のように、撮影絞り32の開口は通常2mm前後(あるいはそれ以下)と小さく、そのままでもかなりの防塵効果を期待できるが、撮影絞り32の背面に、破線(図1)で示したように、防塵ガラス32aを配置し、対物レンズユニット100のV字型鏡筒全体をより密閉性の高い防塵構造とすることもできる。
【0055】
以上のように、本実施例によれば、眼底カメラに対物レンズ8、撮影絞り32、および黒点板30を一体化した対物レンズユニット100を用いることにより、精密な位置決めの必要な黒点板30と、他の主光学系の部材、すなわち対物レンズ8、撮影絞り32との位置関係を保証することができ、眼底カメラの組立、調整、あるいは保守作業は極めて容易になる。
【0056】
また、発熱の問題を回避すべく照明光源部を眼底カメラ本体の上部に配置するための穴あきミラーM3の反射面を装置の上方に向ける単純な光路配置を用いながら、穴あきミラーの埃の問題を回避し、眼科撮影装置を簡単安価に構成でき、安定した眼科撮影を行なえる、という優れた効果がある。
【0057】
また、図3に示すような黒点板30の位置を調節し、所定位置に固定するための調節機構300を設けることにより、あらかじめ対物レンズユニット100を組み立てる際に、予め対物レンズユニット100ごとに黒点板30の位置を正確に決定することができ、対物レンズユニット100を所定位置に組み込むだけで精密な位置決めの必要な黒点板30と、他の主光学系の部材、すなわちレンズ8、撮影絞り32との位置関係を保証することができ、眼科撮影装置の保守や修理のために対物レンズ廻りの分解が必要になって対物レンズユニット100を着脱しても、再度黒点板30の位置を調節する必要がない、という大きな利点がある。
【0058】
なお、黒点板30の相対位置を精密に調整しなければならないのは対物レンズ8、穴あきミラーM3、撮影絞り32などに対してであり、一方、対物レンズユニット100全体と他の光学系部分の組み付け精度は黒点板30の相対位置ほどには要求されないため、本実施例の対物レンズユニット100のような一体構造を採用することよって、眼底カメラの組立、調整、あるいは保守作業を簡略化し、しかも黒点板30の相対位置の精度を保てる、という大きな利点がある。
【0059】
なお、以上では表裏に遮光部材から成る黒点31a、31bをそれぞれ付着させた1枚のガラス板から成る黒点板(あるいは円筒状の黒点を貫通させた黒点板)を例示したが、対物レンズ8の表裏(あるいは接合レンズの場合は他の境界面)にそれぞれ対応してそれぞれ黒点を付着させた黒点板を2枚(あるいはそれ以上)配置するような構成を用いてもよい。その場合、2枚(あるいはそれ以上)の黒点ガラスは、それぞれ独立して照明光軸に対する配置位置を調節できるような調整機構を用いるようにすると良い。要するに、照明光の対物レンズ8の境界面における反射の影響を除去する黒点板の構成、およびその位置の調節機構は任意であり、対物レンズユニット100の鏡筒ユニットに対する黒点板の固定位置を調整する調整機構を設けることによって本発明の構成を実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
C 筐体
1 コンデンサーレンズ
2 ミラーM
M3 穴あきミラー
4a、4b リングスリット
5 レンズ
M6 リターンミラー
7 リレーレンズ
M7 ミラー
8 対物レンズ
9 合焦レンズ
23 レンズ
24 CCDカメラ
30 黒点板
31 黒点(遮光部材)
32 撮影絞り
32a 防塵ガラス
50 接眼レンズ
100 対物レンズユニット
300 調節機構
301 ネジ穴
302 セットビス
303 溝
304 黒点板マウント
305 ロックビス
306 貫通穴
307 ネジ穴
308 セットビス
309 スクリユー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズを含む主光学系と、前記対物レンズを主光学系と共有する照明光学系とを有する眼科撮影装置に用いられる対物レンズユニットにおいて、
前記対物レンズを通過する撮影光または観察光を中央の開口から出射させる開口を有するとともに、前記主光学系の光軸に対して傾斜して配置され、前記照明光学系からの照明光を反射面で反射させる穴あきミラーと、
前記穴あきミラーの開口を通過した撮影光または観察光を通過させる撮影絞りと、
前記穴あきミラーの反射面に入射される照明光の光軸上に前記照明光の前記対物レンズ表面での反射を防止する黒点を配置するための黒点板と、
前記対物レンズを収容する第1の鏡筒と、前記黒点板を固定した第2の鏡筒を前記主光学系と前記照明光学系の光軸が交差するように屈曲した姿勢で一体に組合せた形状の鏡筒ユニットを含み、
前記対物レンズ、前記穴あきミラー、前記撮影絞り、および前記黒点板が前記鏡筒ユニットに組み付けられて一体化されることによりこれらの各部材の位置関係が保証されることを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の対物レンズユニットにおいて、前記黒点板の前記第2の鏡筒に対する固定位置を調節する調節機構を備えたことを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の対物レンズユニットにおいて、前記撮影絞りの後方に防塵ガラスを配置して対物レンズから穴あきミラー、および前記第2の鏡筒に至る光学系を構成する空間を密閉状態としたことを特徴とする対物レンズユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の対物レンズユニットを装着して用いる眼科撮影装置において、前記穴あきミラーの反射面で反射される照明光を照射する照明光源部が装置本体の上部に配置されるとともに、装置本体の上方を向くように前記対物レンズユニットが装置本体に装着され、上方から入射する前記照明光源部の照明光が前記穴あきミラーの反射面で前記対物レンズの方向に反射されることを特徴とする眼科撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−50760(P2012−50760A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197268(P2010−197268)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)