封じ込められた誘電体電極を有するマイクロキャビティプラズマ素子からなるアレイ
【課題】安価に作ることができるマイクロキャビティプラズマ素子からなる大きなアレイを提供する。
【解決手段】本発明のマイクロキャビティプラズマ素子の構造は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティ(12)のパターンが金属薄膜内に形成される。その後、酸化物が、該金属薄膜上及び(そこにプラズマが生成される)該マイクロキャビティ内に成長され、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁する。又、第2の金属薄膜も酸化物で封じ込められ、第1の封じ込められた金属薄膜に接合される。本発明のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた金属薄膜の接合中に、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層又は真空パッケージングは、放電媒質を該アレイ内に密封することができる。
【解決手段】本発明のマイクロキャビティプラズマ素子の構造は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティ(12)のパターンが金属薄膜内に形成される。その後、酸化物が、該金属薄膜上及び(そこにプラズマが生成される)該マイクロキャビティ内に成長され、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁する。又、第2の金属薄膜も酸化物で封じ込められ、第1の封じ込められた金属薄膜に接合される。本発明のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた金属薄膜の接合中に、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層又は真空パッケージングは、放電媒質を該アレイ内に密封することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ放電素子またはマイクロプラズマ素子として知られてもいるマイクロキャビティプラズマ素子の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
マイクロキャビティプラズマ素子は、従来の放電に優るいくつかのはっきりした利点を有する。マイクロキャビティプラズマ素子の小さな物理的寸法は、該素子が、従来の肉眼で見える放電が利用しやすい圧力よりもかなり高い圧力で作動することを可能にする。円筒形マイクロキャビティプラズマ素子の直径が、例えば、200〜300μm以下程度である場合、該素子は、大気圧以上の高い圧力で作動する。対照的に、例えば、標準的な蛍光灯は、典型的には、大気圧の1%未満の圧力で作動する。マイクロキャビティプラズマ素子は、可視及び非可視(例えば、紫外線、真空紫外線及び赤外線)波長範囲で出力を提供するのに異なる放電媒体(ガスまたは蒸気またはこれらの混合物)で作動させることができる。マイクロキャビティプラズマ素子は、他の従来の放電システムよりも効率的に光を発出することができ、微視的スケールで光を発出する。
【0003】
過去10年の間に開発されたマイクロキャビティプラズマ素子は、幅広い用途に適していることが実証されている。マイクロキャビティプラズマ素子の例示的な用途は、ディスプレイ用である。単一の円筒形マイクロキャビティプラズマ素子の直径は、例えば典型的には、400〜500μm未満であるため、素子または素子群は、ディスプレイの画素にとって好ましい空間分解能を示す。加えて、マイクロキャビティプラズマ素子の効率は、高解像度テレビに用いられている従来のプラズマディスプレイパネルの効率を超えている。
【0004】
初期のマイクロキャビティプラズマ素子は、初期のDC駆動素子に用いられていた金属電極にダメージを与えるスパッタリングのため、短い寿命を呈していた。多結晶シリコン及びタングステン電極は寿命を延ばすが、高コストの材料であり、現在の技術で製造するのが困難である。
【0005】
本発明者等及びイリノイ大学の同僚による研究は、マイクロ放電素子の状況を開拓して進展させた。この進展は、1つ以上の重要な特徴及び構造を含む実用的な素子をもたらした。例えば、マイクロキャビティプラズマ素子は、100kW/cm3を超える電力負荷において、1気圧を超えるガス圧力で連続的に作動することができる。半導体素子において、e−h+プラズマを伴うガスまたは気相中のプラズマと調和する能力が実証されている。MEMS及び半導体プロセスは、素子及びアレイの製造に適用されている。
【0006】
本発明者等及びイリノイ大学の同僚によるこの研究は、例示的な実用的素子をもたらした。例えば、半導体製造プロセスは、均一なマイクロキャビティプラズマ素子からなる例示的な高密度アレイを作り出した。シリコンで製造された例示的なアレイは、25cm2の活性化領域内で、250,000個の放電素子を実証した。該アレイを、プラズマディスプレイパネルと同様の方法ではあるが、従来のプラズマディスプレイパネルでは達成不可能な発光効率レベルで、蛍光体を励起するのに用いることができることが実証されている。別の重要な素子は、高感度を呈するマイクロキャビティプラズマ光検知器である。マイクロキャビティプラズマ素子の位相固定も実証されている。素子は、セラミック材質のシステムで製造されている。
【0007】
次の米国特許及び特許出願は、これらの研究活動から生じたマイクロキャビティプラズマ素子について記載している。公開された出願:US2005/0148270号明細書(Microdischarge devices and arrays)、US2004/0160162号明細書(Microdischarge devices and arrays)、US2004/0100194号明細書(Microdischarge photodetectors)、US2003/0132693号明細書(Microdischarge devices and arrays having tapered microcavities)、米国特許:米国特許第6,867,548号明細書(Microdischarge devices and arrays)、米国特許第6,828,730号明細書(Microdischarge photodetectors)、米国特許第6,815,891号明細書(Method and apparatus for exciting a microdischarge)、米国特許第6,695,664号明細書(Microdischarge devices and arrays)、米国特許第6,563,257号明細書(Multilayer ceramic microdischarge device)、米国特許第6,541,915号明細書(High pressure arc lamp assisted start up device and method)、米国特許第6,194,833号明細書(Microdischarge lamp and array)、米国特許第6,139,384号明細書(Microdiscaharge lamp formation process)及び米国特許第6,016,027号明細書(Microdischarge lamp)。
【0008】
米国特許第6,541,915号明細書は、個々の素子が、セラミックを含む材料から機械加工されるアセンブリで製造されるマイクロキャビティプラズマ素子からなるアレイを開示している。金属製電極は、マイクロキャビティ内、及び該電極間で生成されるプラズマ媒質にさらされる。また、米国特許第6,194,833号明細書は、基板がセラミックであり、シリコンまたは金属の膜が形成されるアレイを含むマイクロキャビティプラズマ素子からなるアレイを開示している。キャビティの上部及び底部で形成される電極、ならびにシリコン、セラミックまたはガラスのマイクロキャビティ自体は、プラズマ媒質に接触する。公開された米国特許出願2003/0230983号明細書は、低温セラミック構造で作られたマイクロキャビティプラズマ素子を開示している。その積層されたセラミック層は、キャビティを形成するように配列及び微小機械加工され、介在導電層がプラズマ媒質を励起する。公開された米国特許出願2002/0036461号明細書は、電極がプラズマ/放電媒質に接触する中空陰極プラズマ素子を開示している。
【0009】
追加的で例示的なマイクロキャビティプラズマ素子が、“Phase Locked Microdischarge Array and AC,RF,or Pulse Excited Microdischarge”というタイトルの公開された米国特許出願2005/0269953号明細書、“Microplasma Devices Excited by Interdigitated Electrodes”というタイトルの公開された米国特許出願第2006/0038490号明細書、2004年10月4日に提出された“Microdischarge Devices with Encapsulated Electrodes”というタイトルの米国特許出願第10/958,174号明細書、2004年10月4日に提出された“Metal/Dielectric Multilayer Microdischarge Devices and Arrays”というタイトルの米国特許出願第10/958,175号明細書及び“AC−Excited Microcavity Discharge Device and Method”というタイトルの米国特許出願第11/042,228号明細書に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属酸化物誘電体によって保護された薄膜金属電極を有するマイクロキャビティプラズマ素子及びアレイに関する。本発明の素子は、大量生産技術の影響を受けやすく、また、例えば、ロールトゥロール処理で製造することができる。本発明の例示的な素子はフレキシブルである。本発明の実施形態は、安価に作ることができるマイクロキャビティプラズマ素子からなる大きなアレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の構造及び材料は、任意の大きなサイズのアレイを実現できるようにする。本発明の素子は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティのパターンを有する薄膜は、電極パターンを画成する。該薄膜の表面上及び該マイクロキャビティ内の酸化物は、該薄膜を封じ込める。該酸化物は、素子の作動中に、該薄膜をプラズマから保護し、該マイクロキャビティへのプラズマを大幅に制限する。
【0012】
第2の金属薄膜も酸化物で封じ込めており、該第1の封じ込められた薄膜に接合されている。本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた薄膜の接合中には、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層は、該アレイを真空シールすることができる。
【0013】
本発明の形成方法においては、マイクロキャビティのパターンが第1の金属薄膜内に生成される。その後、酸化物が、(そこに、プラズマが生成される)該マイクロキャビティの内壁上を含む該薄膜上に成長される。該酸化物は、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁する。そして、第2の封じ込められた金属薄膜が該第2の金属薄膜に接合され、アレイ全体を、ロールトゥロール処理によって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、薄膜金属電極が、金属酸化物誘電体によって保護されているマイクロキャビティプラズマ素子及び素子のアレイに関する。本発明の素子は、大量生産技術の影響を受けやすく、また、例えば、ロールトゥロール処理で製造することができる。本発明の例示的な素子はフレキシブルである。本発明の実施形態は、安価に作ることができるマイクロキャビティプラズマ素子からなる大きなアレイを提供する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の構造は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティのパターンが金属薄膜内に生成される。続いて、(中にプラズマが生成される)酸化物が封じ込められたマイクロキャビティを画成するために、酸化物が、該マイクロキャビティ内を含む該箔上に成長する。該酸化物は、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁し、このことが、第1の電極を形成する。
【0016】
好ましい実施形態における、マイクロキャビティを有していない第2の金属薄膜も酸化物で封じ込められており、該第1の封じ込められた薄膜に接合されている。該第2の金属薄膜は、第2の電極を形成する。本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた薄膜の接合中には、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層は、完成したアレイをシールすることができる。
【0017】
マイクロキャビティプラズマアレイを形成する好ましい実施形態方法においては、両方ともAl2O3で封じ込めているAlからなる2つの薄膜が互いに接合されている。これら2つの封じ込められた薄膜のうちの一方のみが、(ミクロンスケールの特徴寸法を有する)マイクロキャビティを有する。円筒形マイクロキャビティの場合、例えば、該特徴寸法は、その直径になる。これらのマイクロキャビティは、幅広い形状をとることができ、また、該封じ込められた金属薄膜を完全に貫通していても、貫通していなくてもよい。菱形及び円筒形のマイクロキャビティを用いて本発明を実証するために、実験を行った。高密度のマイクロキャビティプラズマ素子が可能であり、驚くべきレベル(>80%)の例示的な実験上の「充填率」(アレイの放射領域と全体領域の比)が得られた。該マイクロキャビティの形状(断面形状及び深さ)ならびに該マイクロキャビティ内のガスまたは蒸気の識別は、特定の原子または分子エミッタの場合のプラズマ構成及び放射効率を決める。本発明の例示的なマイクロプラズマアレイ構造の全体の厚さは、例えば、200μm以下として、非常にフレキシブルかつ安価にすることができる。
【0018】
本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイにおいては、2つの電極が、該アレイ内の全てのマイクロキャビティプラズマ素子を同時に励起する。第2の電極は、単純な薄膜電極とすることができ、製造中に、この電極を第1の電極と正確に位置合わせする必要はない。本発明の他の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子においては、複数の第2の電極薄膜が、複数のマイクロキャビティを有するより大きな第1の電極の異なる部分に適合されている。このようにして、該マイクロプラズマ素子の別々の部分の励起が実現される。該第2の電極薄膜のサイズ及び該第2の電極薄膜間の間隔により、製造中のアラインメントの考慮も大目に見ることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、アレイ内のマイクロキャビティプラズマ素子の独立したアドレッシングを実現できる。例えば、電極ラインは、単純なマスキングまたはフォトリソグラフィ法を用いた選択的酸化により、第1のスクリーン電極及び第2の薄膜電極の両方に形成することができる。該選択的酸化の後、該電極を封じ込める第2の酸化が実行され、それによって該電極をシーリングする。
【0020】
次に、好ましい実施形態を図面を参照して論じる。図面は、正確ではない縮尺の概略図を含み、当業者によって、添付図面を参照して充分に理解される。特徴は、説明のため誇張している可能性がある。好ましい実施形態によって、当業者は、本発明の広範な態様を認識するであろう。
【0021】
図1Aは、例示的なマイクロキャビティプラズマ素子アレイ10の断面図である。マイクロキャビティ12は、第1の電極16を構成する金属薄膜内に画成されている。酸化物15は、マイクロキャビティ12の壁部を含む該金属薄膜を封じ込めている。マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10における第1の電極16は、中にマイクロキャビティのパターンが、様々な方法、例えば、微小穿孔、機械的打ち抜き、レーザアブレーションまたは化学的エッチングのうちのいずれかによって形成されている導電性薄膜である。該導電性薄膜の封じ込め及び(該薄膜を完全に貫通して伸びていても伸びていなくてもよい)そのマイクロキャビティ12は、該マイクロキャビティの壁部及び該導電性薄膜の表面が酸化物15で被覆されているため、金属16を保護する。酸化物15は、第1の電極16を、作動中のスパッタリングから保護し、それによって、アレイ10及び絶縁電極16の寿命を増進する。
【0022】
マイクロキャビティ12の公称深さは、第1の電極16の厚さに近いが、該マイクロキャビティは、金属薄膜16を完全に貫通して伸びている必要はない。第2の電極18は、固体導電性薄膜とすることができる。第2の電極18もまた、酸化物19内に封じ込められている。放電媒質(ガス、蒸気、またはこれらの組合せ)は、該マイクロキャビティ内に収容できる。アレイ10は、マイクロプラズマによって生じる放射波長に対して完全に透過性である、または、例えば、特定のスペクトル領域内の放射のみを通すように、マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10の出力波長をフィルタリングすることができる何らかの適切な材料によって密封することができる。
【0023】
各マイクロキャビティ12内には、プラズマ(放電)が形成されることになる。第1及び第2の電極16、18は、少なくとも該酸化物層のそれぞれの厚さだけ、マイクロキャビティ12から離間している。それにより、該酸化物は、該第1及び第2の電極16、18を、マイクロキャビティ12内に収容されている放電媒質(プラズマ)から隔てている。この構成は、電極16、18間の時変(AC、RF、バイポーラまたはパルス状DC等)電位の印加を可能にし、ガス状媒質または蒸気媒質を励起して、各マイクロキャビティ12内にマイクロプラズマを生成する。
【0024】
電極16、18及び酸化物15、19のための代表的な導電性材料は、金属/金属酸化物材料、例えば、Al/Al2O3を含む。別の例示的な金属/金属酸化物材料系はTi/TiO2である。他の導電性材料/酸化物材料系は、当業者には明白であろう。好ましい材料系は、ロールトゥロール処理等の安価な大量生産技術による本発明のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの形成を可能にする。
【0025】
製造の好ましい方法は、ロールトゥロール処理である。該好ましい方法において、第1の電極16は、所望の断面形状を有するマイクロキャビティと共に、予め形成される。様々な断面形状の貫通孔のかたちでマイクロキャビティを有する適切な金属薄膜、例えば、Al箔は、バッテリー業界での用途が見出されているため、市販されている。マイクロキャビティを有し、かつ酸化物で封じ込めている予め形成されたスクリーン状の金属薄膜、例えばAlは、電極パターンを画成し、別の酸化物で封じ込められた金属薄膜、例えばAlに接合することができる。第2の金属薄膜は、固体膜とすることができる。該製造の好ましい方法においては、該接合処理中のこれら2つの金属薄膜の間では、正確なアラインメントは必要ない。従って、完成された素子における第1の電極16及び第2の電極18を形成する該酸化物が封じ込めた金属薄膜は、関連する何らかのアラインメントを伴うことなく、一緒に接合することができる。ロールトゥロール処理を用いることができる。Al2O3が被覆するAl膜内にマイクロキャビティを形成すること(両方とも本明細書に参照によって組み込まれる、2004年10月4日に提出された“Microdischarge Device with Encapsulated Electrodes”というタイトルの米国特許出願第10/958,174号明細書及び2004年10月4日に提出された“Metal/Dielectric Multilayer Microdischarge Devices and Arrays”というタイトルの米国特許出願第10/958,175号明細書を参照)が可能であるが、既に存在するマイクロキャビティをAl(または、他の導電性薄膜材料)に設けた後、該導電性薄膜を酸化物で封じ込めて、封じ込められたマイクロキャビティからなるアレイを備えた、酸化物で封じ込められた電極を形成することがより好ましい。導電性薄膜にマイクロキャビティを設けることは、様々なプロセス(レーザアブレーション、化学的エッチング等)のいずれかによって、導電性薄膜内にキャビティを製造すること、または、予め製造されたマイクロキャビティを備えた導電性薄膜を供給者から得ることのいずれかを含む。様々なマイクロキャビティ形状(断面形状)を導電性薄膜内に形成することができる。
【0026】
図1Aのアレイ10によるプロトタイプの素子が製造されてきた。例示的な実験的プロトタイプのアレイは、概して菱形のマイクロキャビティが金属Al薄膜を貫通して伸びている、該薄膜から形成された第1の電極を有していた。該マイクロキャビティを有する該第1の金属薄膜上での多孔質Al2O3膜の成長は、まず、Alが、公称15℃で、0.1〜0.3Mのシュウ酸溶液中で陽極酸化されるマルチステップ湿式化学プロセスによって遂行された。クロム酸/リン酸溶液中で、ほとんどの酸化物を除去した後、第2の陽極酸化プロセスが、ナノ細孔の寸法及び間隔を制御することができる正しく配列されたナノ多孔質Al2O3膜を成長させる。実験において、該Al2O3ナノ多孔質膜の最終的な厚さは、典型的には、5〜30μmであった。一般的に、該マイクロキャビティ内の該Al2O3膜の厚さは、該薄膜の表面を覆う酸化物膜よりも薄い5〜20μmに維持された。(該マイクロキャビティアレイを有する)第1の電極は、後に、第2の封じ込められた電極に接合される。該第2の電極は、陽極Al2O3膜が、その上に成長される、キャビティを有していない別の金属薄膜であった。該第2の電極は、マイクロキャビティを有していないため、該接合プロセス中の該第1の電極と第2の電極の正確なアラインメントは必要なく、それによって、製造プロセス全体が単純化される。実施例の実験的アレイは、400トール〜800トールの圧力、Neガス並びにNe/Xe混合物で作動された。2つの封じ込められた電極を一緒に接合した後、該アレイは、アレイの剛性が想定される用途に対して許容できるものであれば、陽極接合またはガラスフリット等のいくつかのプロセスのうちの1つによって、2つのガラスからなる薄いシートの間に密封される。アレイの柔軟性が所望される場合には、該アレイは、一般的に食物を密封するのに用いられるシート等のプラスチックからなる薄いシートの間に密封することができる。ガスの寿命を縮める、ポリマーのプラズマ中へのガス放出を最小限にするために、SiO2等の材料からなる薄膜を、ポリマーシーリング膜の内面に堆積することができる。該シーリング法に関係なく、所望のガスまたはガス/蒸気混合物の存在下で、該アレイを密封することが可能であり(それによって、該アレイ内のガスを密封する)、または、素子全体が製造され、かつ脱気された後に、該アレイにガスを充填することが可能である。後者の方法は、該アレイをガス処理/真空システムと接続する小径管によって遂行することができ、このことは、該アレイを脱気した後、所望のガスを再充填できるようにする。
【0027】
400トールの圧力で、Neガス中で作動する例示的なアレイの光学顕微鏡写真は、第1の電極16上のAl2O3膜の厚さが10μmであり、第2の電極18上の該膜も10μmであることを示した。該写真は、電極を重ねた状態で該アレイを見下ろすCCDカメラ及び光学テレスコープを用いて得た。該顕微鏡写真に見られるように、菱形形状のマイクロキャビティは、500μmの長さ(端から端まで)と250μmの幅とを有し、これらの作動条件の場合、プラズマが、各マイクロキャビティの中心付近に存在することが観察される。本実施形態の該マイクロプラズマアレイの構造は、強力な軸方向電界をもたらす(軸方向とは、該マイクロキャビティの“菱形”開口の平面及び該“菱形”の中心に直角な方向を指す)。
【0028】
図1Bは、アレイ内の素子を描いた別の例示的実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の断面図である。図1Bの素子における類似の部材を識別するために、図1Aの参照数字が用いられている。図1Bの素子は、図1Aのアレイを形成する素子と同様であるが、第2の電極は、変更構造を有する。キャパシタの基本的コンセプトを有するため、第2の電極18は、3つの層と、誘電層18cを包囲する2つの導電層18a及び18bを含む。誘電層18cは、例えば、Al2O3とすることができ、また、該導電層は、例えば、Alとすることができる。絶縁層18cの厚さは、具体的な用途に必要なキャパシタンスに従って選定することができる。誘電層18cは、数百μmの厚さとすることができる。
【0029】
図2は、400トール、500トール、600トール及び700トールの圧力で、ネオン中で作動する例示的な実施形態のプロトタイプのマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の励起電圧の関数としての輝度をプロットしたグラフである。これらの全ての圧力において、電圧及び放射の関数として概して増加した輝度は、該菱形形状のマイクロキャビティのサイズのため、400トールにおいて最も強かった。より小さなマイクロキャビティの場合、ピーク放射は、より高いガス圧力で観測されるであろう。
【0030】
図3は、別の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイ22の一部の断面図である。素子アレイ22は、図1Aのアレイ10と同様もものである。該マイクロキャビティプラズマ素子アレイの類似の部材に符号を付すために、図1Aの参照数字が用いられている。この素子22において、第2の電極18は、第1の電極におけるマイクロキャビティと同じかまたは異なるキャビティ寸法を有するマイクロキャビティによってパターン化されている。アレイ22は、薄いガラス層またはプラスチック層24で密封されている。ガラスが用いられていようが、プラスチックが用いられていようが、該アレイの全体の厚さは、該アレイをフレキシブルにするのに十分な小ささにすることができる。例示的な実施形態において、図3のアレイ22または図1のアレイ10によるアレイの全体の厚さは、100μm未満とすることができ、また、素子全体はフレキシブルである。図3は、酸化物15及び19上に堆積された誘電体からなる追加的な薄膜25も示す。好ましい実施形態において、追加的な誘電体薄膜25はガラスである。ナノ多孔質酸化物膜15、19が成長された後、スクリーン上に堆積されたガラスからなる最終的な膜が、電極の寿命及び機能を改善することが分かっている。このガラス層は、標準的な浸漬プロセスによって溶液から堆積することができる。
【0031】
図4は、700トールで、ネオン中で作動する例示的な実験的プロトタイプの10×10マイクロキャビティプラズマ素子アレイの可視光における放電スペクトルを示す。波長500〜800nmの領域が、最も強い放射が観測される領域であるため、該領域における放射を図示してある。しかし、他のガス及びガス混合物を該アレイに導入することにより、広範な他の波長における放射が得られる。第2の実施例として、図5は、400トールの総圧で、アルゴン/窒素ガス混合物中で作動する例示的な実験的プロトタイプの5×5マイクロキャビティプラズマ素子アレイによる、近紫外線で生じる放射スペクトルを示す。このアレイの場合の駆動電圧は、440V RMSの電圧を有する10kHzの正弦波AC波形であった。該アレイによって引き出された電流は、約68mAであった。これらのアレイから利用可能な波長の他の実施例は、(OHラジカルからの)308nm、様々な希ガスハロゲン化物分子からの193、248、308、351、222及び282nm、H2またはD2からの250〜400nm領域における連続スペクトル、及び原子状ヨウ素からの206nmを含む。多くの他の放射波長が、他の活性種から利用可能である。
【0032】
図6は、例示的な実験的プロトタイプの大規模Al2O3/Alマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の電圧及び電流の波形を示す。該アレイは、500μmの長さと250μm幅の菱形断面とを有するマイクロキャビティを有する約4,800の素子を備えており、これらの波形は、700トールのNeでの動作の場合に得られた。図6の波形に関連するI−V特性は、プラズマが容量モードによって生成される誘電体バリア放電に特有のものである。
【0033】
図7は、本発明の真空シールしたフラットランプの実施形態26の実施例を示す。素子26は、図1の素子と同様のものであり、図7における類似の部材に符号を付すために、図1からの参照数字が用いられている。ランプ26は、ガラスまたはプラスチックからなるウィンドウ28と、パターン化されていない第2の電極18とを用いる。素子26は、石英窓の公称厚さ(≧1mm)のためだけではないが、一般的にフレキシブルではない。しかし、該ランプの厚さ(マイナス該ウィンドウの厚さ)は、たった170μmであるため、該ランプは、ウィンドウ28自体がフレキシブルである場合にはフレキシブルとなる。シーリング材30は、該素子が真空気密であることを確実にし、また、排気管32が図示されているが、製造プロセスの一部として取り除き、または密封することができる。所望の分光透過率またはフィルタリングを実現し、かつ特定の所望の放射波長を生成するために、異なる材料をウィンドウ28に用いることができる。既に論じたように、Al2O3層15及び19に加えて、Al電極16及び18を、ガラスからなる薄い層(図7において、第2の電極に対しては図示されていない追加的な層)で封じ込めることがアレイの寿命にとって有利である可能性がある。
【0034】
図7による実験的素子は、10μmのAl2O3及び5μmのガラスの封じ込めで封じ込められたアルミニウムによって構成された。図8は、400〜600トールのNeで作動するAl2O3マイクロキャビティプラズマアレイの場合のRMS駆動電圧に対する放射強度の依存性を示す。放射強度は、印加される電圧が増加するにつれて急勾配で増加した。
【0035】
図9は、Ar中の1%D2からなるガス混合物によって作動する、図7による2インチ四方の実験的真空シールフラットランプからの紫外線(UV)放射強度を示す。図8に示すNe放射の場合と同様に、この放射は、電圧が増加し、かつ1mW/cm2までの強度が達成されるにつれて上昇する。1mW/cm2は、図7による実験的実施形態のランプの出力の最大値を表していないことを強調しておかなければならない。代わりに、この出力は、このテスト電圧範囲内でこれまでに得られた最高値である。図9のデータは、300〜600トールのAr/1%D2ガス混合物圧力によって得られ、該マイクロプラズマから生じる放射は、250〜400nmの範囲である。
【0036】
図10は、マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ別の実施形態のランプを示す。また、図10は、該ランプをテストするための実験的構成を示している。図10の素子において、例えば、図1または図3による第1及び第2の電極16、18(このうちの一方または両方がマイクロキャビティ12を有する)は、マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10を形成するために、後に酸化物で封じ込められる、予め形成された金属薄膜スクリーンであり、該アレイは、フレキシブルになるように(数百μm未満または程度の)十分な薄さにすることができる。2つの封じ込められた電極16、18(このうちの一方または両方はスクリーンである)は、一般的に、ポリマー接着剤で互いに接合されるが、接合は必須ではない。真空シール後に、高レベルのフレキシビリティを維持するために、アレイ10は、ポリマー真空パッケージング34でパッケージされる。電極16、18のエクステンション部は、実験的実施形態においては、電力供給/コントローラ36への接続のために、パッケージング34を越えて伸びている。マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10は、大気圧(または、大気圧付近)で作動することができ、その結果、該ランプの内側と外側の間には(あるとしたら)わずかな圧力差があるだけであるため、ポリマーパッケージングにおける真空シーリングが可能である。実験的実施形態の真空シールランプは、745トールのHe中で作動した。該素子の放射面積は5cm2であり、該素子は、(パッケージング34を含んで)約35μmの全厚を有していた。該実験的素子は、該ランプにダメージを与えることなく(フラットランプの面に対して)40°より大きな角度で曲げることができた。
【0037】
本発明のアレイは、多くの用途を有する。アレイの1つの用途は、例えば、液晶ディスプレイパネル用の光源(バックライトユニット)としてである。本発明の実施形態は、蛍光灯を用いるという現在の実施に好ましい軽量で薄い分散型光源を実現できる。該ランプからの光をディスプレイ全体にわたって一様に分散させるには、高度な光学系を要する。また、本発明のアレイは、例えば、クロマトグラフィー装置及び(光線力学療法を含む)光線治療法等の検出及び検知機器における用途を有する。後者は、約308nmの紫外線を要する乾癬、光線角化症及びボーエン病または基底細胞癌の治療を含む。従って、ガラスまたはプラスチックでシールされた安価なアレイは、患者に非臨床的環境で(すなわち、家庭で)治療される機会、及び治療の完了後の該アレイの処分の機会を与える。また、これらのアレイは、紫外線の放射を要するポリマーの光硬化にも適している。
【0038】
本発明の様々な実施形態を示し、かつ説明してきたが、当業者は、他の変更、置換及び代替が明白であることを理解すべきである。そのような変更、置換及び代替は、添付の特許請求の範囲によって判断すべき本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
本発明の様々な特徴は、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図2】400トール、500トール、600トール及び700トールの圧力で、ネオンで作動する例示的な実験的プロトタイプのマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の励起電圧の関数としての輝度をプロットした図である。
【図3】本発明の別の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図4】700トールで、ネオンで作動する例示的な実験的プロトタイプの10×10マイクロキャビティプラズマ素子アレイの放電スペクトルを示す図である。
【図5】総圧400トールで、及び440VのRMS電圧を用いて10KHzAC波形で励起された、アルゴンとN2の混合物で作動するプロトタイプの5×5マイクロキャビティプラズマ素子アレイによって生じる近紫外でのスペクトルを示す図である。
【図6】実験的実施形態の大規模フレキシブルAl2O3/Alマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の電圧と電流の波形を示す図である。
【図7】マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ例示的な実施形態のフラットランプの断面図を示す。
【図8】400〜600トールのNeで作動する(図7による)マイクロキャビティプラズマ素子アレイを含む実験的実施形態のAl2O3/Alランプの場合のRMS駆動電圧に対する放射強度の依存性を示す図である。
【図9】300、400及び600トールのAr/1%D2のガス混合物で作動する(図7による)マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ実験的実施形態のAl2O3/Alランプの場合のRMS駆動電圧に対するUV放射強度の依存性を示す図である。
【図10】マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ例示的実施形態のフレキシブルランプの断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ放電素子またはマイクロプラズマ素子として知られてもいるマイクロキャビティプラズマ素子の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
マイクロキャビティプラズマ素子は、従来の放電に優るいくつかのはっきりした利点を有する。マイクロキャビティプラズマ素子の小さな物理的寸法は、該素子が、従来の肉眼で見える放電が利用しやすい圧力よりもかなり高い圧力で作動することを可能にする。円筒形マイクロキャビティプラズマ素子の直径が、例えば、200〜300μm以下程度である場合、該素子は、大気圧以上の高い圧力で作動する。対照的に、例えば、標準的な蛍光灯は、典型的には、大気圧の1%未満の圧力で作動する。マイクロキャビティプラズマ素子は、可視及び非可視(例えば、紫外線、真空紫外線及び赤外線)波長範囲で出力を提供するのに異なる放電媒体(ガスまたは蒸気またはこれらの混合物)で作動させることができる。マイクロキャビティプラズマ素子は、他の従来の放電システムよりも効率的に光を発出することができ、微視的スケールで光を発出する。
【0003】
過去10年の間に開発されたマイクロキャビティプラズマ素子は、幅広い用途に適していることが実証されている。マイクロキャビティプラズマ素子の例示的な用途は、ディスプレイ用である。単一の円筒形マイクロキャビティプラズマ素子の直径は、例えば典型的には、400〜500μm未満であるため、素子または素子群は、ディスプレイの画素にとって好ましい空間分解能を示す。加えて、マイクロキャビティプラズマ素子の効率は、高解像度テレビに用いられている従来のプラズマディスプレイパネルの効率を超えている。
【0004】
初期のマイクロキャビティプラズマ素子は、初期のDC駆動素子に用いられていた金属電極にダメージを与えるスパッタリングのため、短い寿命を呈していた。多結晶シリコン及びタングステン電極は寿命を延ばすが、高コストの材料であり、現在の技術で製造するのが困難である。
【0005】
本発明者等及びイリノイ大学の同僚による研究は、マイクロ放電素子の状況を開拓して進展させた。この進展は、1つ以上の重要な特徴及び構造を含む実用的な素子をもたらした。例えば、マイクロキャビティプラズマ素子は、100kW/cm3を超える電力負荷において、1気圧を超えるガス圧力で連続的に作動することができる。半導体素子において、e−h+プラズマを伴うガスまたは気相中のプラズマと調和する能力が実証されている。MEMS及び半導体プロセスは、素子及びアレイの製造に適用されている。
【0006】
本発明者等及びイリノイ大学の同僚によるこの研究は、例示的な実用的素子をもたらした。例えば、半導体製造プロセスは、均一なマイクロキャビティプラズマ素子からなる例示的な高密度アレイを作り出した。シリコンで製造された例示的なアレイは、25cm2の活性化領域内で、250,000個の放電素子を実証した。該アレイを、プラズマディスプレイパネルと同様の方法ではあるが、従来のプラズマディスプレイパネルでは達成不可能な発光効率レベルで、蛍光体を励起するのに用いることができることが実証されている。別の重要な素子は、高感度を呈するマイクロキャビティプラズマ光検知器である。マイクロキャビティプラズマ素子の位相固定も実証されている。素子は、セラミック材質のシステムで製造されている。
【0007】
次の米国特許及び特許出願は、これらの研究活動から生じたマイクロキャビティプラズマ素子について記載している。公開された出願:US2005/0148270号明細書(Microdischarge devices and arrays)、US2004/0160162号明細書(Microdischarge devices and arrays)、US2004/0100194号明細書(Microdischarge photodetectors)、US2003/0132693号明細書(Microdischarge devices and arrays having tapered microcavities)、米国特許:米国特許第6,867,548号明細書(Microdischarge devices and arrays)、米国特許第6,828,730号明細書(Microdischarge photodetectors)、米国特許第6,815,891号明細書(Method and apparatus for exciting a microdischarge)、米国特許第6,695,664号明細書(Microdischarge devices and arrays)、米国特許第6,563,257号明細書(Multilayer ceramic microdischarge device)、米国特許第6,541,915号明細書(High pressure arc lamp assisted start up device and method)、米国特許第6,194,833号明細書(Microdischarge lamp and array)、米国特許第6,139,384号明細書(Microdiscaharge lamp formation process)及び米国特許第6,016,027号明細書(Microdischarge lamp)。
【0008】
米国特許第6,541,915号明細書は、個々の素子が、セラミックを含む材料から機械加工されるアセンブリで製造されるマイクロキャビティプラズマ素子からなるアレイを開示している。金属製電極は、マイクロキャビティ内、及び該電極間で生成されるプラズマ媒質にさらされる。また、米国特許第6,194,833号明細書は、基板がセラミックであり、シリコンまたは金属の膜が形成されるアレイを含むマイクロキャビティプラズマ素子からなるアレイを開示している。キャビティの上部及び底部で形成される電極、ならびにシリコン、セラミックまたはガラスのマイクロキャビティ自体は、プラズマ媒質に接触する。公開された米国特許出願2003/0230983号明細書は、低温セラミック構造で作られたマイクロキャビティプラズマ素子を開示している。その積層されたセラミック層は、キャビティを形成するように配列及び微小機械加工され、介在導電層がプラズマ媒質を励起する。公開された米国特許出願2002/0036461号明細書は、電極がプラズマ/放電媒質に接触する中空陰極プラズマ素子を開示している。
【0009】
追加的で例示的なマイクロキャビティプラズマ素子が、“Phase Locked Microdischarge Array and AC,RF,or Pulse Excited Microdischarge”というタイトルの公開された米国特許出願2005/0269953号明細書、“Microplasma Devices Excited by Interdigitated Electrodes”というタイトルの公開された米国特許出願第2006/0038490号明細書、2004年10月4日に提出された“Microdischarge Devices with Encapsulated Electrodes”というタイトルの米国特許出願第10/958,174号明細書、2004年10月4日に提出された“Metal/Dielectric Multilayer Microdischarge Devices and Arrays”というタイトルの米国特許出願第10/958,175号明細書及び“AC−Excited Microcavity Discharge Device and Method”というタイトルの米国特許出願第11/042,228号明細書に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、金属酸化物誘電体によって保護された薄膜金属電極を有するマイクロキャビティプラズマ素子及びアレイに関する。本発明の素子は、大量生産技術の影響を受けやすく、また、例えば、ロールトゥロール処理で製造することができる。本発明の例示的な素子はフレキシブルである。本発明の実施形態は、安価に作ることができるマイクロキャビティプラズマ素子からなる大きなアレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の構造及び材料は、任意の大きなサイズのアレイを実現できるようにする。本発明の素子は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティのパターンを有する薄膜は、電極パターンを画成する。該薄膜の表面上及び該マイクロキャビティ内の酸化物は、該薄膜を封じ込める。該酸化物は、素子の作動中に、該薄膜をプラズマから保護し、該マイクロキャビティへのプラズマを大幅に制限する。
【0012】
第2の金属薄膜も酸化物で封じ込めており、該第1の封じ込められた薄膜に接合されている。本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた薄膜の接合中には、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層は、該アレイを真空シールすることができる。
【0013】
本発明の形成方法においては、マイクロキャビティのパターンが第1の金属薄膜内に生成される。その後、酸化物が、(そこに、プラズマが生成される)該マイクロキャビティの内壁上を含む該薄膜上に成長される。該酸化物は、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁する。そして、第2の封じ込められた金属薄膜が該第2の金属薄膜に接合され、アレイ全体を、ロールトゥロール処理によって製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、薄膜金属電極が、金属酸化物誘電体によって保護されているマイクロキャビティプラズマ素子及び素子のアレイに関する。本発明の素子は、大量生産技術の影響を受けやすく、また、例えば、ロールトゥロール処理で製造することができる。本発明の例示的な素子はフレキシブルである。本発明の実施形態は、安価に作ることができるマイクロキャビティプラズマ素子からなる大きなアレイを提供する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の構造は、任意の長さで、例えば、ロールで利用することができる、または製造することができる金属の薄膜に基づいている。本発明の素子において、マイクロキャビティのパターンが金属薄膜内に生成される。続いて、(中にプラズマが生成される)酸化物が封じ込められたマイクロキャビティを画成するために、酸化物が、該マイクロキャビティ内を含む該箔上に成長する。該酸化物は、該マイクロキャビティを保護し、該薄膜を電気的に絶縁し、このことが、第1の電極を形成する。
【0016】
好ましい実施形態における、マイクロキャビティを有していない第2の金属薄膜も酸化物で封じ込められており、該第1の封じ込められた薄膜に接合されている。該第2の金属薄膜は、第2の電極を形成する。本発明の好ましい実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合、これら2つの封じ込められた薄膜の接合中には、特別なアラインメントは必要ない。例えば、薄いガラス層は、完成したアレイをシールすることができる。
【0017】
マイクロキャビティプラズマアレイを形成する好ましい実施形態方法においては、両方ともAl2O3で封じ込めているAlからなる2つの薄膜が互いに接合されている。これら2つの封じ込められた薄膜のうちの一方のみが、(ミクロンスケールの特徴寸法を有する)マイクロキャビティを有する。円筒形マイクロキャビティの場合、例えば、該特徴寸法は、その直径になる。これらのマイクロキャビティは、幅広い形状をとることができ、また、該封じ込められた金属薄膜を完全に貫通していても、貫通していなくてもよい。菱形及び円筒形のマイクロキャビティを用いて本発明を実証するために、実験を行った。高密度のマイクロキャビティプラズマ素子が可能であり、驚くべきレベル(>80%)の例示的な実験上の「充填率」(アレイの放射領域と全体領域の比)が得られた。該マイクロキャビティの形状(断面形状及び深さ)ならびに該マイクロキャビティ内のガスまたは蒸気の識別は、特定の原子または分子エミッタの場合のプラズマ構成及び放射効率を決める。本発明の例示的なマイクロプラズマアレイ構造の全体の厚さは、例えば、200μm以下として、非常にフレキシブルかつ安価にすることができる。
【0018】
本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイにおいては、2つの電極が、該アレイ内の全てのマイクロキャビティプラズマ素子を同時に励起する。第2の電極は、単純な薄膜電極とすることができ、製造中に、この電極を第1の電極と正確に位置合わせする必要はない。本発明の他の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子においては、複数の第2の電極薄膜が、複数のマイクロキャビティを有するより大きな第1の電極の異なる部分に適合されている。このようにして、該マイクロプラズマ素子の別々の部分の励起が実現される。該第2の電極薄膜のサイズ及び該第2の電極薄膜間の間隔により、製造中のアラインメントの考慮も大目に見ることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、アレイ内のマイクロキャビティプラズマ素子の独立したアドレッシングを実現できる。例えば、電極ラインは、単純なマスキングまたはフォトリソグラフィ法を用いた選択的酸化により、第1のスクリーン電極及び第2の薄膜電極の両方に形成することができる。該選択的酸化の後、該電極を封じ込める第2の酸化が実行され、それによって該電極をシーリングする。
【0020】
次に、好ましい実施形態を図面を参照して論じる。図面は、正確ではない縮尺の概略図を含み、当業者によって、添付図面を参照して充分に理解される。特徴は、説明のため誇張している可能性がある。好ましい実施形態によって、当業者は、本発明の広範な態様を認識するであろう。
【0021】
図1Aは、例示的なマイクロキャビティプラズマ素子アレイ10の断面図である。マイクロキャビティ12は、第1の電極16を構成する金属薄膜内に画成されている。酸化物15は、マイクロキャビティ12の壁部を含む該金属薄膜を封じ込めている。マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10における第1の電極16は、中にマイクロキャビティのパターンが、様々な方法、例えば、微小穿孔、機械的打ち抜き、レーザアブレーションまたは化学的エッチングのうちのいずれかによって形成されている導電性薄膜である。該導電性薄膜の封じ込め及び(該薄膜を完全に貫通して伸びていても伸びていなくてもよい)そのマイクロキャビティ12は、該マイクロキャビティの壁部及び該導電性薄膜の表面が酸化物15で被覆されているため、金属16を保護する。酸化物15は、第1の電極16を、作動中のスパッタリングから保護し、それによって、アレイ10及び絶縁電極16の寿命を増進する。
【0022】
マイクロキャビティ12の公称深さは、第1の電極16の厚さに近いが、該マイクロキャビティは、金属薄膜16を完全に貫通して伸びている必要はない。第2の電極18は、固体導電性薄膜とすることができる。第2の電極18もまた、酸化物19内に封じ込められている。放電媒質(ガス、蒸気、またはこれらの組合せ)は、該マイクロキャビティ内に収容できる。アレイ10は、マイクロプラズマによって生じる放射波長に対して完全に透過性である、または、例えば、特定のスペクトル領域内の放射のみを通すように、マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10の出力波長をフィルタリングすることができる何らかの適切な材料によって密封することができる。
【0023】
各マイクロキャビティ12内には、プラズマ(放電)が形成されることになる。第1及び第2の電極16、18は、少なくとも該酸化物層のそれぞれの厚さだけ、マイクロキャビティ12から離間している。それにより、該酸化物は、該第1及び第2の電極16、18を、マイクロキャビティ12内に収容されている放電媒質(プラズマ)から隔てている。この構成は、電極16、18間の時変(AC、RF、バイポーラまたはパルス状DC等)電位の印加を可能にし、ガス状媒質または蒸気媒質を励起して、各マイクロキャビティ12内にマイクロプラズマを生成する。
【0024】
電極16、18及び酸化物15、19のための代表的な導電性材料は、金属/金属酸化物材料、例えば、Al/Al2O3を含む。別の例示的な金属/金属酸化物材料系はTi/TiO2である。他の導電性材料/酸化物材料系は、当業者には明白であろう。好ましい材料系は、ロールトゥロール処理等の安価な大量生産技術による本発明のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの形成を可能にする。
【0025】
製造の好ましい方法は、ロールトゥロール処理である。該好ましい方法において、第1の電極16は、所望の断面形状を有するマイクロキャビティと共に、予め形成される。様々な断面形状の貫通孔のかたちでマイクロキャビティを有する適切な金属薄膜、例えば、Al箔は、バッテリー業界での用途が見出されているため、市販されている。マイクロキャビティを有し、かつ酸化物で封じ込めている予め形成されたスクリーン状の金属薄膜、例えばAlは、電極パターンを画成し、別の酸化物で封じ込められた金属薄膜、例えばAlに接合することができる。第2の金属薄膜は、固体膜とすることができる。該製造の好ましい方法においては、該接合処理中のこれら2つの金属薄膜の間では、正確なアラインメントは必要ない。従って、完成された素子における第1の電極16及び第2の電極18を形成する該酸化物が封じ込めた金属薄膜は、関連する何らかのアラインメントを伴うことなく、一緒に接合することができる。ロールトゥロール処理を用いることができる。Al2O3が被覆するAl膜内にマイクロキャビティを形成すること(両方とも本明細書に参照によって組み込まれる、2004年10月4日に提出された“Microdischarge Device with Encapsulated Electrodes”というタイトルの米国特許出願第10/958,174号明細書及び2004年10月4日に提出された“Metal/Dielectric Multilayer Microdischarge Devices and Arrays”というタイトルの米国特許出願第10/958,175号明細書を参照)が可能であるが、既に存在するマイクロキャビティをAl(または、他の導電性薄膜材料)に設けた後、該導電性薄膜を酸化物で封じ込めて、封じ込められたマイクロキャビティからなるアレイを備えた、酸化物で封じ込められた電極を形成することがより好ましい。導電性薄膜にマイクロキャビティを設けることは、様々なプロセス(レーザアブレーション、化学的エッチング等)のいずれかによって、導電性薄膜内にキャビティを製造すること、または、予め製造されたマイクロキャビティを備えた導電性薄膜を供給者から得ることのいずれかを含む。様々なマイクロキャビティ形状(断面形状)を導電性薄膜内に形成することができる。
【0026】
図1Aのアレイ10によるプロトタイプの素子が製造されてきた。例示的な実験的プロトタイプのアレイは、概して菱形のマイクロキャビティが金属Al薄膜を貫通して伸びている、該薄膜から形成された第1の電極を有していた。該マイクロキャビティを有する該第1の金属薄膜上での多孔質Al2O3膜の成長は、まず、Alが、公称15℃で、0.1〜0.3Mのシュウ酸溶液中で陽極酸化されるマルチステップ湿式化学プロセスによって遂行された。クロム酸/リン酸溶液中で、ほとんどの酸化物を除去した後、第2の陽極酸化プロセスが、ナノ細孔の寸法及び間隔を制御することができる正しく配列されたナノ多孔質Al2O3膜を成長させる。実験において、該Al2O3ナノ多孔質膜の最終的な厚さは、典型的には、5〜30μmであった。一般的に、該マイクロキャビティ内の該Al2O3膜の厚さは、該薄膜の表面を覆う酸化物膜よりも薄い5〜20μmに維持された。(該マイクロキャビティアレイを有する)第1の電極は、後に、第2の封じ込められた電極に接合される。該第2の電極は、陽極Al2O3膜が、その上に成長される、キャビティを有していない別の金属薄膜であった。該第2の電極は、マイクロキャビティを有していないため、該接合プロセス中の該第1の電極と第2の電極の正確なアラインメントは必要なく、それによって、製造プロセス全体が単純化される。実施例の実験的アレイは、400トール〜800トールの圧力、Neガス並びにNe/Xe混合物で作動された。2つの封じ込められた電極を一緒に接合した後、該アレイは、アレイの剛性が想定される用途に対して許容できるものであれば、陽極接合またはガラスフリット等のいくつかのプロセスのうちの1つによって、2つのガラスからなる薄いシートの間に密封される。アレイの柔軟性が所望される場合には、該アレイは、一般的に食物を密封するのに用いられるシート等のプラスチックからなる薄いシートの間に密封することができる。ガスの寿命を縮める、ポリマーのプラズマ中へのガス放出を最小限にするために、SiO2等の材料からなる薄膜を、ポリマーシーリング膜の内面に堆積することができる。該シーリング法に関係なく、所望のガスまたはガス/蒸気混合物の存在下で、該アレイを密封することが可能であり(それによって、該アレイ内のガスを密封する)、または、素子全体が製造され、かつ脱気された後に、該アレイにガスを充填することが可能である。後者の方法は、該アレイをガス処理/真空システムと接続する小径管によって遂行することができ、このことは、該アレイを脱気した後、所望のガスを再充填できるようにする。
【0027】
400トールの圧力で、Neガス中で作動する例示的なアレイの光学顕微鏡写真は、第1の電極16上のAl2O3膜の厚さが10μmであり、第2の電極18上の該膜も10μmであることを示した。該写真は、電極を重ねた状態で該アレイを見下ろすCCDカメラ及び光学テレスコープを用いて得た。該顕微鏡写真に見られるように、菱形形状のマイクロキャビティは、500μmの長さ(端から端まで)と250μmの幅とを有し、これらの作動条件の場合、プラズマが、各マイクロキャビティの中心付近に存在することが観察される。本実施形態の該マイクロプラズマアレイの構造は、強力な軸方向電界をもたらす(軸方向とは、該マイクロキャビティの“菱形”開口の平面及び該“菱形”の中心に直角な方向を指す)。
【0028】
図1Bは、アレイ内の素子を描いた別の例示的実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子の断面図である。図1Bの素子における類似の部材を識別するために、図1Aの参照数字が用いられている。図1Bの素子は、図1Aのアレイを形成する素子と同様であるが、第2の電極は、変更構造を有する。キャパシタの基本的コンセプトを有するため、第2の電極18は、3つの層と、誘電層18cを包囲する2つの導電層18a及び18bを含む。誘電層18cは、例えば、Al2O3とすることができ、また、該導電層は、例えば、Alとすることができる。絶縁層18cの厚さは、具体的な用途に必要なキャパシタンスに従って選定することができる。誘電層18cは、数百μmの厚さとすることができる。
【0029】
図2は、400トール、500トール、600トール及び700トールの圧力で、ネオン中で作動する例示的な実施形態のプロトタイプのマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の励起電圧の関数としての輝度をプロットしたグラフである。これらの全ての圧力において、電圧及び放射の関数として概して増加した輝度は、該菱形形状のマイクロキャビティのサイズのため、400トールにおいて最も強かった。より小さなマイクロキャビティの場合、ピーク放射は、より高いガス圧力で観測されるであろう。
【0030】
図3は、別の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイ22の一部の断面図である。素子アレイ22は、図1Aのアレイ10と同様もものである。該マイクロキャビティプラズマ素子アレイの類似の部材に符号を付すために、図1Aの参照数字が用いられている。この素子22において、第2の電極18は、第1の電極におけるマイクロキャビティと同じかまたは異なるキャビティ寸法を有するマイクロキャビティによってパターン化されている。アレイ22は、薄いガラス層またはプラスチック層24で密封されている。ガラスが用いられていようが、プラスチックが用いられていようが、該アレイの全体の厚さは、該アレイをフレキシブルにするのに十分な小ささにすることができる。例示的な実施形態において、図3のアレイ22または図1のアレイ10によるアレイの全体の厚さは、100μm未満とすることができ、また、素子全体はフレキシブルである。図3は、酸化物15及び19上に堆積された誘電体からなる追加的な薄膜25も示す。好ましい実施形態において、追加的な誘電体薄膜25はガラスである。ナノ多孔質酸化物膜15、19が成長された後、スクリーン上に堆積されたガラスからなる最終的な膜が、電極の寿命及び機能を改善することが分かっている。このガラス層は、標準的な浸漬プロセスによって溶液から堆積することができる。
【0031】
図4は、700トールで、ネオン中で作動する例示的な実験的プロトタイプの10×10マイクロキャビティプラズマ素子アレイの可視光における放電スペクトルを示す。波長500〜800nmの領域が、最も強い放射が観測される領域であるため、該領域における放射を図示してある。しかし、他のガス及びガス混合物を該アレイに導入することにより、広範な他の波長における放射が得られる。第2の実施例として、図5は、400トールの総圧で、アルゴン/窒素ガス混合物中で作動する例示的な実験的プロトタイプの5×5マイクロキャビティプラズマ素子アレイによる、近紫外線で生じる放射スペクトルを示す。このアレイの場合の駆動電圧は、440V RMSの電圧を有する10kHzの正弦波AC波形であった。該アレイによって引き出された電流は、約68mAであった。これらのアレイから利用可能な波長の他の実施例は、(OHラジカルからの)308nm、様々な希ガスハロゲン化物分子からの193、248、308、351、222及び282nm、H2またはD2からの250〜400nm領域における連続スペクトル、及び原子状ヨウ素からの206nmを含む。多くの他の放射波長が、他の活性種から利用可能である。
【0032】
図6は、例示的な実験的プロトタイプの大規模Al2O3/Alマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の電圧及び電流の波形を示す。該アレイは、500μmの長さと250μm幅の菱形断面とを有するマイクロキャビティを有する約4,800の素子を備えており、これらの波形は、700トールのNeでの動作の場合に得られた。図6の波形に関連するI−V特性は、プラズマが容量モードによって生成される誘電体バリア放電に特有のものである。
【0033】
図7は、本発明の真空シールしたフラットランプの実施形態26の実施例を示す。素子26は、図1の素子と同様のものであり、図7における類似の部材に符号を付すために、図1からの参照数字が用いられている。ランプ26は、ガラスまたはプラスチックからなるウィンドウ28と、パターン化されていない第2の電極18とを用いる。素子26は、石英窓の公称厚さ(≧1mm)のためだけではないが、一般的にフレキシブルではない。しかし、該ランプの厚さ(マイナス該ウィンドウの厚さ)は、たった170μmであるため、該ランプは、ウィンドウ28自体がフレキシブルである場合にはフレキシブルとなる。シーリング材30は、該素子が真空気密であることを確実にし、また、排気管32が図示されているが、製造プロセスの一部として取り除き、または密封することができる。所望の分光透過率またはフィルタリングを実現し、かつ特定の所望の放射波長を生成するために、異なる材料をウィンドウ28に用いることができる。既に論じたように、Al2O3層15及び19に加えて、Al電極16及び18を、ガラスからなる薄い層(図7において、第2の電極に対しては図示されていない追加的な層)で封じ込めることがアレイの寿命にとって有利である可能性がある。
【0034】
図7による実験的素子は、10μmのAl2O3及び5μmのガラスの封じ込めで封じ込められたアルミニウムによって構成された。図8は、400〜600トールのNeで作動するAl2O3マイクロキャビティプラズマアレイの場合のRMS駆動電圧に対する放射強度の依存性を示す。放射強度は、印加される電圧が増加するにつれて急勾配で増加した。
【0035】
図9は、Ar中の1%D2からなるガス混合物によって作動する、図7による2インチ四方の実験的真空シールフラットランプからの紫外線(UV)放射強度を示す。図8に示すNe放射の場合と同様に、この放射は、電圧が増加し、かつ1mW/cm2までの強度が達成されるにつれて上昇する。1mW/cm2は、図7による実験的実施形態のランプの出力の最大値を表していないことを強調しておかなければならない。代わりに、この出力は、このテスト電圧範囲内でこれまでに得られた最高値である。図9のデータは、300〜600トールのAr/1%D2ガス混合物圧力によって得られ、該マイクロプラズマから生じる放射は、250〜400nmの範囲である。
【0036】
図10は、マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ別の実施形態のランプを示す。また、図10は、該ランプをテストするための実験的構成を示している。図10の素子において、例えば、図1または図3による第1及び第2の電極16、18(このうちの一方または両方がマイクロキャビティ12を有する)は、マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10を形成するために、後に酸化物で封じ込められる、予め形成された金属薄膜スクリーンであり、該アレイは、フレキシブルになるように(数百μm未満または程度の)十分な薄さにすることができる。2つの封じ込められた電極16、18(このうちの一方または両方はスクリーンである)は、一般的に、ポリマー接着剤で互いに接合されるが、接合は必須ではない。真空シール後に、高レベルのフレキシビリティを維持するために、アレイ10は、ポリマー真空パッケージング34でパッケージされる。電極16、18のエクステンション部は、実験的実施形態においては、電力供給/コントローラ36への接続のために、パッケージング34を越えて伸びている。マイクロキャビティプラズマ素子アレイ10は、大気圧(または、大気圧付近)で作動することができ、その結果、該ランプの内側と外側の間には(あるとしたら)わずかな圧力差があるだけであるため、ポリマーパッケージングにおける真空シーリングが可能である。実験的実施形態の真空シールランプは、745トールのHe中で作動した。該素子の放射面積は5cm2であり、該素子は、(パッケージング34を含んで)約35μmの全厚を有していた。該実験的素子は、該ランプにダメージを与えることなく(フラットランプの面に対して)40°より大きな角度で曲げることができた。
【0037】
本発明のアレイは、多くの用途を有する。アレイの1つの用途は、例えば、液晶ディスプレイパネル用の光源(バックライトユニット)としてである。本発明の実施形態は、蛍光灯を用いるという現在の実施に好ましい軽量で薄い分散型光源を実現できる。該ランプからの光をディスプレイ全体にわたって一様に分散させるには、高度な光学系を要する。また、本発明のアレイは、例えば、クロマトグラフィー装置及び(光線力学療法を含む)光線治療法等の検出及び検知機器における用途を有する。後者は、約308nmの紫外線を要する乾癬、光線角化症及びボーエン病または基底細胞癌の治療を含む。従って、ガラスまたはプラスチックでシールされた安価なアレイは、患者に非臨床的環境で(すなわち、家庭で)治療される機会、及び治療の完了後の該アレイの処分の機会を与える。また、これらのアレイは、紫外線の放射を要するポリマーの光硬化にも適している。
【0038】
本発明の様々な実施形態を示し、かつ説明してきたが、当業者は、他の変更、置換及び代替が明白であることを理解すべきである。そのような変更、置換及び代替は、添付の特許請求の範囲によって判断すべき本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
本発明の様々な特徴は、特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1A】本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図1B】本発明の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図2】400トール、500トール、600トール及び700トールの圧力で、ネオンで作動する例示的な実験的プロトタイプのマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の励起電圧の関数としての輝度をプロットした図である。
【図3】本発明の別の例示的な実施形態のマイクロキャビティプラズマ素子アレイの概略断面図である。
【図4】700トールで、ネオンで作動する例示的な実験的プロトタイプの10×10マイクロキャビティプラズマ素子アレイの放電スペクトルを示す図である。
【図5】総圧400トールで、及び440VのRMS電圧を用いて10KHzAC波形で励起された、アルゴンとN2の混合物で作動するプロトタイプの5×5マイクロキャビティプラズマ素子アレイによって生じる近紫外でのスペクトルを示す図である。
【図6】実験的実施形態の大規模フレキシブルAl2O3/Alマイクロキャビティプラズマ素子アレイの場合の電圧と電流の波形を示す図である。
【図7】マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ例示的な実施形態のフラットランプの断面図を示す。
【図8】400〜600トールのNeで作動する(図7による)マイクロキャビティプラズマ素子アレイを含む実験的実施形態のAl2O3/Alランプの場合のRMS駆動電圧に対する放射強度の依存性を示す図である。
【図9】300、400及び600トールのAr/1%D2のガス混合物で作動する(図7による)マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ実験的実施形態のAl2O3/Alランプの場合のRMS駆動電圧に対するUV放射強度の依存性を示す図である。
【図10】マイクロキャビティプラズマ素子アレイを組み込んだ例示的実施形態のフレキシブルランプの断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中に複数のマイクロキャビティ(12)を含む導電性薄膜であり、酸化物(15)で封じ込めている第1の電極(16)と、
酸化物(19)で封じ込められた導電性薄膜である第2の電極(18)であって、前記第1及び第2の電極が一緒に接合され、酸化物が両電極間の接触を防いでいる前記第2の電極と、
前記マイクロキャビティ内に放電媒質を収容できる収容層(24、28、34)と、
を備える、マイクロキャビティプラズマ素子。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極、酸化物及び収容層は、前記アレイをフレキシブルにするのに十分な薄さである、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極がアルミニウム箔を備え、前記酸化物が酸化アルミニウムを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極がチタン箔を備え、前記酸化物が酸化チタンを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項5】
前記収容層が、可視光スペクトル内で実質的に透過性である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項6】
前記収容層が光学フィルタを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項7】
前記第1及び第2の電極の各々内にマイクロキャビティを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項8】
前記収容層がガラスを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
前記収容層がポリマー真空パッケージングを備え、前記放電媒質が、略大気圧で前記アレイ内に収容されている、請求項1に記載のアレイ。
【請求項10】
前記第1の電極の酸化物上に第1の誘電体薄膜をさらに備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項11】
前記第2の電極の酸化物上に第2の誘電体薄膜をさらに備える、請求項10に記載のアレイ。
【請求項12】
前記第1及び第2の誘電体薄膜がガラスを備える、請求項11に記載のアレイ。
【請求項13】
前記第2の電極がキャパシタ(18a、18b、18c)を備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項14】
マイクロキャビティプラズマ素子アレイを製造する方法であって、
複数のマイクロキャビティを有する第1の導電性薄膜を酸化物で封じ込めて第1の電極を形成するステップと、
第2の導電性薄膜を酸化物で封じ込めて第2の電極を形成するステップと、
前記第1及び第2の電極を一緒に接合するステップと、
放電媒質を前記アレイ内に収容するステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記ステップ方法がロールトゥロールプロセスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の薄膜がアルミニウム箔を備え、前記酸化物が酸化アルミニウムを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の薄膜がチタン箔を備え、前記酸化物が酸化チタンを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の導電性薄膜の酸化物が、誘電体薄膜で追加的に被覆される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記誘電体薄膜がガラスを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記収容するステップが、前記アレイ内に放電媒質を収容するために、前記第1及び第2の電極を真空パッケージングすることを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項1】
中に複数のマイクロキャビティ(12)を含む導電性薄膜であり、酸化物(15)で封じ込めている第1の電極(16)と、
酸化物(19)で封じ込められた導電性薄膜である第2の電極(18)であって、前記第1及び第2の電極が一緒に接合され、酸化物が両電極間の接触を防いでいる前記第2の電極と、
前記マイクロキャビティ内に放電媒質を収容できる収容層(24、28、34)と、
を備える、マイクロキャビティプラズマ素子。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極、酸化物及び収容層は、前記アレイをフレキシブルにするのに十分な薄さである、請求項1に記載のアレイ。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極がアルミニウム箔を備え、前記酸化物が酸化アルミニウムを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項4】
前記第1及び第2の電極がチタン箔を備え、前記酸化物が酸化チタンを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項5】
前記収容層が、可視光スペクトル内で実質的に透過性である、請求項1に記載のアレイ。
【請求項6】
前記収容層が光学フィルタを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項7】
前記第1及び第2の電極の各々内にマイクロキャビティを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項8】
前記収容層がガラスを備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項9】
前記収容層がポリマー真空パッケージングを備え、前記放電媒質が、略大気圧で前記アレイ内に収容されている、請求項1に記載のアレイ。
【請求項10】
前記第1の電極の酸化物上に第1の誘電体薄膜をさらに備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項11】
前記第2の電極の酸化物上に第2の誘電体薄膜をさらに備える、請求項10に記載のアレイ。
【請求項12】
前記第1及び第2の誘電体薄膜がガラスを備える、請求項11に記載のアレイ。
【請求項13】
前記第2の電極がキャパシタ(18a、18b、18c)を備える、請求項1に記載のアレイ。
【請求項14】
マイクロキャビティプラズマ素子アレイを製造する方法であって、
複数のマイクロキャビティを有する第1の導電性薄膜を酸化物で封じ込めて第1の電極を形成するステップと、
第2の導電性薄膜を酸化物で封じ込めて第2の電極を形成するステップと、
前記第1及び第2の電極を一緒に接合するステップと、
放電媒質を前記アレイ内に収容するステップと、
を備える方法。
【請求項15】
前記ステップ方法がロールトゥロールプロセスである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1及び第2の薄膜がアルミニウム箔を備え、前記酸化物が酸化アルミニウムを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記第1及び第2の薄膜がチタン箔を備え、前記酸化物が酸化チタンを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の導電性薄膜の酸化物が、誘電体薄膜で追加的に被覆される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記誘電体薄膜がガラスを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記収容するステップが、前記アレイ内に放電媒質を収容するために、前記第1及び第2の電極を真空パッケージングすることを備える、請求項14に記載の方法。
【図1B】
【図3】
【図7】
【図1A】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図3】
【図7】
【図1A】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2009−502010(P2009−502010A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521697(P2008−521697)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027667
【国際公開番号】WO2007/011865
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/027667
【国際公開番号】WO2007/011865
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503060525)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ イリノイ (25)
[ Back to top ]