説明

封入型酸素検知剤

【課題】必要な酸素検知能力を備えると共に、色素の転写を防ぎ、外観上の課題を解決可能な酸素検知剤を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、酸素検知材を封入するフィルム包装材は、厚さ方向に積層された内面側フィルムと外面側フィルムとを少なくとも備え、酸素透過率が500ml/(m・24hr)〜3000ml/(m・24hr)であり、前記内面側フィルムと外面側フィルムとは、イミン系接着剤を用いてラミネート加工により接着させた積層フィルムとし、このフィルム包装材を用いて酸素検知材をフィルム包装材に封入した封入型酸素検知剤を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素検知剤に関し、特に、酸素検知剤組成物の色素が包装フィルムに色移りすることを防ぐ酸素検知剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、薬剤等を保存する際、包装材内部を無酸素状態とし、被保存物の品質の劣化を抑えて保存する技術が普及している。このような無酸素状態での保存が望ましい場合に、被保存物の包装に酸素検知材を同封した酸素検知剤を用いて、包装材内部の酸素状態を管理している。
【0003】
酸素検知剤は、アルカリ金属化合物、還元性糖類及び還元性糖類によって還元される色素を含有する酸素検知剤組成物を用い、雰囲気中の酸素と酸素検知剤組成物とが反応して還元性の色素が変色する作用を利用して、酸素検知剤の変色によって、包装材内部の酸素状態をモニターできるものである。この酸素検知剤は、錠剤、粉体、ペースト、シート状等各種形態の酸素検知材が、外部から色素の変化が視認可能であり、酸素透過性を有するフィルム等の包装材により包装されてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−34332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
酸素検知剤の使用過程において、酸素検知材に含有する色素成分が、酸素検知材から浸出することがある。そして、酸素検知材と包装フィルムとが接触すると、酸素検知材に含有する色素成分が包装フィルムの内側に付着しやすく、その結果、付着した色素成分がフィルム包装材に浸透し、包装材の内側において、ムラになって着色した状態が生じていた。この色素成分は、安全性の高い成分からなるものであり、被保存品の品質には問題は無いが、酸素検知剤の用途は経口品の保存用途が多いので、酸素検知材の成分が浸出してフィルム包装材に転写した状態にあると外観上の問題となる。そのため、色素転写の発生しない酸素検知剤が望まれていた。
【0006】
このような課題に対し、例えば、特許文献1には、酸素検知ペーストをパルプ/PE混抄紙上に塗布した酸素検知シートを、押出ラミネート法によって作成したガスバリヤー性フィルムでラミネートしたシート状酸素検知剤とすることで、色素の転写を防ぐ技術が開示されている。
【0007】
しかし、特許文献1に開示の技術は、ペースト状の酸素検知剤であり、取り扱い性の制約が大きいため、使用方法が限定されるという点が課題となる。また、色素の転写を防ぐ具体的なものではなかった。そこで、必要な酸素検知能力を備えると共に、色素の転写を防ぎ、外観上の上述の課題を解決可能な酸素検知剤が検討されてきた。
【0008】
そこで、本件発明は、酸素検知剤において、包装材に対する色素の転写を防ぐことができる封入型酸素検知剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の封入型酸素検知剤を採用することで上記課題を達成するに到った。
【0010】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、酸素検知材をフィルム包装材に封入した封入型酸素検知剤であって、前記フィルム包装材は、厚さ方向に積層された内面側フィルムと外面側フィルムとを少なくとも備え、当該フィルム包装材は、酸素透過率が500ml/(m・24hr)〜3000ml/(m・24hr)であり、前記内面側フィルムと外面側フィルムとは、イミン系接着剤を用いてラミネート加工により接着させた積層フィルムであることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記フィルム包装材は、内面側フィルムが、低密度ポリエチレンフィルムまたは無延伸ポリプロピレンフィルムからなることがより好ましい。
【0012】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、外面側フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは、貫通孔を有するポリエステルフィルムからなるものがより好ましい。
【0013】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記外面側フィルムが厚さ12μm〜20μmであることがより好ましい。
【0014】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記内面側フィルムが厚さ15μm〜120μmであることがより好ましい。
【0015】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記ラミネート加工は、押出ラミネート加工またはドライラミネート加工であることがより好ましい。
【0016】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記酸素検知材が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、還元性糖類、還元性糖類によって還元される色素、セルロース性物質を含む酸素検知剤組成物からなることがより好ましい。
【0017】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、前記酸素検知材は、錠剤、シートまたは粉末であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、フィルム包装材における色素の浸み込みを防ぐ構成として、フィルム包装材への色素の転写を防ぎ、外観上の品質に優れた酸素検知剤を提供できる。特に、シート状酸素検知剤は、酸素検知能力の維持、形状安定性等の点で、他の形態の酸素検知剤より優れるが、酸素検知剤組成物が浸み出し易かったので、本発明の封入型酸素検知剤により上記課題を解決できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る封入型酸素検知剤の最良の実施の形態に関して説明する。
【0020】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、酸素検知材を、通気性を備えるフィルム包装材に封入した状態で使用するものである。まず、酸素検知剤組成物について説明する。
【0021】
酸素検知剤組成物: 酸素検知剤組成物は、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、還元性糖類、還元性糖類によって還元される色素、セルロース性物質を含む。以下、酸素検知剤組成物について説明する。
【0022】
アルカリ金属化合物は、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、炭酸塩等が例示されるが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等である。
【0023】
還元性糖類としては、D−マンノース、D−グルコース、D−フラクトース、D−エリスロール、D−アラビノース等の単糖類、又はマルトース、ラクトース等の単糖類分子からなるもの等が挙げられる。還元性の糖類の使用量は特に制限はないが、アルカリ金属化合物100重量部に対して、0.1〜1000重量部が好ましく、特に好ましくは1〜100重量部である。
【0024】
還元性糖類によって還元される色素としては、メチレンブルー、ニューメチレンブルー、ラウスバイオレット、メチレングリーン等が挙げられる。また、還元性糖類によって還元される色素のみでは還元状態が無色となって肉眼では判定しづらい場合には、酸素の有無を肉眼でより判定しやすくするために、還元性糖類によって還元されない色素であるサフラニンT、フェノサフラニン等を還元される色素と共に用いても良い。
【0025】
上述の酸素検知剤組成物を、担持体に含浸させて、シート、錠剤、粉体、ペースト等の酸素検知材とする。本発明に係る封入型酸素検知剤では、フィルム包装材で包装、封入して用いる酸素検知材であれば、シート、錠剤、粉体、ペースト等、いかなる形態でも良い。しかし、以下に示すシート状の酸素検知材を用いると、酸素検知能力を高精度且つ長期的に維持できる点で好ましい。
【0026】
シート状の酸素検知材は、紙、織布等のシート状担体に酸素検知剤溶液を担持させるものである。酸素検知剤組成物は、アルカリ金属化合物、還元性糖類及び還元性糖類によって還元される色素を含有する。この酸素検知剤組成物を、水又はアルコール溶液に混合した溶液を、含浸紙(シート状担体)に含浸させた後、適当な水分含有量となるように乾燥し、又は乾燥後湿潤させる方法で、シート状酸素検知材を作成する。乾燥方法は、自然乾燥でも良いが、生産性をより向上させるためには真空乾燥を採用することがより好ましい。
【0027】
フィルム包装材:フィルム包装材は、少なくとも酸素検知材の部分の変色が視認可能なようにフィルムの少なくとも一部が透明となっているフィルムを使用し、且つ、酸素を検知するために、酸素透過性を備えるものである必要がある。
【0028】
また、フィルム包装材は、酸素透過性を有し、かつ、水、油、アルコール等の液不透過性であることが必要である。そのため、フィルム包装材は、厚さ方向に積層された内面側フィルムと外面側フィルムとを少なくとも備えるものを用いる。こうすることで、酸素検知材を封入したフィルム包装材の酸素透過性等、酸素検知材が良好な状態で性能を発揮できるような雰囲気を保持可能とするとともに、フィルム包装材の外部との液遮断性を保ち、酸素検知剤組成物による被保存物への影響を無くすための条件に対応可能となる。
【0029】
フィルム包装材は、その積層フィルムの酸素透過率が500ml/(m・24hr)〜3000ml/(m・24hr)が好適である。酸素透過率が、500ml/(m・24hr)を下回ると、フィルム包装材内部への酸素透過量が少なすぎて、酸素の存在を検知し難くなる。一方、酸素透過率が、3000ml/(m・24hr)を上回ると、その分、封入型酸素検知剤の包装材内部の通気性が高くなるので、酸素検知材が乾燥しやすくなり、長期使用が難しくなる。
【0030】
フィルム包装材の内面側フィルムは、低密度ポリエチレンフィルムまたは無延伸ポリプロピレンフィルムからなる。内面側フィルムは、酸素透過性に優れ、そして、内面側フィルムの厚さは15μm〜120μmであることが好ましい。内面側フィルムの厚さが15μmより薄いと、透過性が高くなるため内面側フィルム内に色素成分が染み出し易くなるため適さない。一方、内面側フィルムの厚さを120μmより厚くすると、バリア性が高くなり酸素が透過し難くなるので酸素検知機能の妨げとなる。
【0031】
フィルム包装材の外面側フィルムは、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは、貫通孔を有するポリエステルフィルムからなるものが好ましい。そして、外面側フィルムの厚さは12μm〜20μmの範囲で設定することが好ましい。外面側フィルムの厚さが12μmより薄いと、十分な形状安定性等が得られない。一方、外面側フィルムの厚さを20μmより厚くしても、不要な厚さとなるうえに、形状の柔軟性が損なわれ、酸素透過性が低下する。
【0032】
また、フィルム包装材は、内面側フィルムと外面側フィルムとを、イミン系接着剤を用いてラミネート加工により接着させた積層フィルムである。ラミネートに用いる接着剤は、イミン系接着剤が好適である。イミン系接着剤は、フィルムとの密着性を向上させられる上に、酸素検知材に含まれる色素が溶出した場合も、フィルムへの色素の転写が無い。ラミネート加工は、押出ラミネート加工またはドライラミネート加工を用いることが好ましい。なお、押出ラミネート加工法では、接着剤をアンカーコート剤(下塗剤)と呼ぶ。したがって、本発明に係るイミン系接着剤とは、押出ラミネート加工におけるアンカーコート剤と、ドライラミネート加工における接着剤とを含むものである。
【0033】
押出しラミネート法は、フィルム第1層(外面側フィルム)上に、溶融樹脂であるアンカーコート剤(接着剤)を塗工する。これを乾燥させることにより、塗工したアンカーコート剤の溶剤を乾燥除去させる。乾燥後のフィルム第1層を、押出スクリューにより300℃で押出し、これにフィルム第2層(内面側フィルム)を構成する樹脂をTダイを用いてフィルム状に押出す。次に、冷却ロールでフィルム状の積層体を冷却して、積層フィルムを作製する方法である。
【0034】
押出ラミネート加工又はドライラミネート加工に用いるイミン系接着剤(アンカーコート剤)としては、ポリエチレンイミン又はその変性物を主成分とするものが好ましい。
【0035】
ドライラミネート法は、フィルム第1層(外面側フィルム)表面に、有機溶剤を溶かした接着剤を塗布する。この接着剤中の溶剤を熱風で蒸発乾燥させた後、フィルム第2層(内面側フィルム)を貼り合わせ、冷却させて巻き取って積層フィルムとする方法である。ドライラミネート加工は接着剤によりフィルム等を接着させるので、ヒートラミネート加工のような加熱が不要であり、熱により各層間の通気性を損なうことがなく、通気性を確保できる。
【0036】
なお、本発明に係る封入型酸素検知剤は、フィルム包装材の厚さ方向に貫通する孔を設けても設けなくても良い。上述のフィルム包装材は、貫通孔を設けなくても、酸素検知に望まれる十分な酸素透過率を確保できる。したがって、ケーキ等の被保存物の油分等が、封入型酸素検知剤の内部に浸み込むことがなく、良好な酸素検知能力を保持することができる。
【0037】
次に、酸素検知材の使用態様について説明する。酸素検知剤は、それ自体を単体で使用する場合の他に、脱酸素剤と併用して包装容器内に封入する場合がある。すなわち、包装容器内の酸素を除去するために脱酸素剤を用い、この包装容器内から酸素が除去された状態が保たれているかどうかを確認するために酸素検知剤を同封するのである。
【0038】
ここで、脱酸素剤には、酸素吸収反応により、アルコールを発生させるタイプと、アルコールを発生させないタイプがある。アルコールを発生させるタイプの脱酸素剤は、酸素吸収反応により、酸素を除去すると共にアルコールを発生させる。一方、アルコールを発生させないタイプの脱酸素剤は、単に酸素を除去するものである。
【0039】
そして、脱酸素剤と酸素検知剤とを併用する場合に、脱酸素剤が、アルコールを発生させるタイプのものと、アルコールを発生させないタイプのものとでは、酸素検知剤の包装条件が異なり、また、色素転写の状態も異なる。すなわち、アルコールを発生させるタイプの脱酸素剤と併用する酸素検知剤では、浸出した酸素検知材の色素成分は、包装材内部だけでなく、包装材外部への色素転写の影響が生じるという課題がある。これに対し、アルコールを発生させることのない脱酸素剤と併用する酸素検知剤では、包装材内部における色素成分の付着が課題となっている。この違いは、包装容器内における脱酸素後の雰囲気中のアルコールの有無又はアルコール量の違いが影響していると考えられる。
【0040】
本件発明に係る封入型脱酸素剤は、主に、アルコールを発生させないタイプの脱酸素剤と併用する場合を想定するものであり、特に、酸素検知材から浸出した色素成分が包装材に付着することを防ぐことが出来るものである。
【0041】
以下、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。なお、本件発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0042】
フィルム包装材は、外面側が二軸延伸ポリプロピレンであり、内面側が低密度ポリエチレンであり、押出ラミネート加工により積層させた積層フィルムを使用した。すなわち、外面側フィルムに二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、その表面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤(東洋モートン社製 EL420)を塗工後、乾燥機で乾燥させ、次に、溶融させた低密度ポリエチレンをTダイでアンカーコート剤上に押出し、その後、冷却ロールで冷却させて、フィルム包装材とした。なお、外面側フィルムには、予めパッケージ印刷を施した。すなわち、中央部分のみ透明にし、その他の部分は白、銀、白の順に三段印刷したものを用いた。このフィルム包装材は、外面側フィルムが厚さ25μmであり、内面側フィルムが厚さ30μmであり、酸素透過率が1500ml/(m・24hr)を使用した。なお、フィルム包装材には、貫通孔を設けなかった。
【0043】
酸素検知剤組成物:1.0%ニューメチレンブルー水溶液15重量部、3.0%サフラニンT水溶液40重量部、40%D−マンノース水溶液50重量部及び10%水酸化ナトリウム水様液を混合し、これを酸素検知剤水溶液とした。この後、酸素検知剤水溶液を、紙に含浸させ、適当な水分量となるまで乾燥させて、酸素検知材とした。
【0044】
酸素検知材を、15mm×20mmにカットして、30mm×40mmの上述のフィルム包装材に封入してシールし、封入型酸素検知剤とした。
【0045】
得られた封入型酸素検知剤を、無酸素雰囲気、10℃、25℃、35℃の温度下に、それぞれ15週間保管し、その経時変化を肉眼で観察した。観察対象の酸素検知剤のうち、積層フィルムに青色が浸出した個数を以下の表1に示す。その結果、実施例の酸素検知剤は、15週間、フィルム包装材の透明部分に青色が付着した状態を確認することはなかった。
【0046】
【表1】

【0047】
また、実施例の封入型酸素検知剤のうち、色素転写が生じたもののフィルム包装材の断面を観察すると、色素の浸透は、アンカーコート剤層であるポリエチレンイミンの部分までとなっていた。したがって、外面側フィルムに色素が染み込むことがないので、外面側フィルムを本実施例の銀色等、青色を遮色する色でパッケージ印刷すると、より色素の転写を視認されにくくすることができる。
【比較例】
【0048】
比較例は、押出しラミネートのアンカーコート剤をイソシアネートとした例を示す。すなわち、実施例と同じく、外面側フィルムに二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用し、内面側フィルムに低密度ポリエチレンを用い、これをアンカーコート剤としてのイソシアネート(東洋モートン社製 EL557A/B)で接着させた押出しラミネートフィルムを作成した。また、外面側フィルムのパッケージ印刷は、中央部分のみ透明フィルムとし、その他の部分は、白の二段印刷したものを用いた。比較例のフィルム包装材は、外面側フィルム及び内面側フィルムの厚さは同じであり、酸素透過率は、1500ml/(m・24hr)のものを使用した。酸素検知材は、実施例と同じ条件で、酸素検知剤溶液を紙に含浸させたものを用いた。酸素検知材のフィルム包装材への封入条件も実施例と同じとした。
【0049】
比較例で得られた酸素検知剤を、実施例と同じ条件で、無酸素雰囲気下で経過観察した。その結果、実施例の封入型酸素検知剤は、15週間、フィルム包装材の透明部分に、青色が付着した状態を確認することはなかった。一方、比較例の酸素検知剤は、表1に示す通り、フィルム包装材の透明部分に青色が付着した。10℃では、1週目〜4週目に各1個確認でき、5週目及び6週目は各3個確認できた。更に、10週目では、9個発生し、15週目には10個発生した。また、25℃並びに35℃では、2週目以降、10個の酸素検知剤において、色素の付着が見られた。
【0050】
次に、実施例ならびに比較例で得られた封入型酸素検知剤の酸素検知能力を測定した。すなわち、無酸素雰囲気に置いた封入型酸素検知剤を、酸素雰囲気下に晒して、酸素検知材が、無酸素状態を示す赤色から、有酸素状態を示す青色に変色する時間を測定した。また、酸素検知剤の保管を有酸素雰囲気から無酸素雰囲気に変更して、酸素検知材が青色から赤色に変色する時間を測定した。この結果、実施例の酸素検知剤及び比較例の酸素検知剤は、ほぼ同じ時間を要し、酸素検知能力は同等である結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る封入型酸素検知剤は、酸素検知能力を維持しながら、酸素検知剤組成物に含まれる色素が、酸素検知材から浸出して、フィルム包装材へ浸透する色素の転写を防ぐことができる。したがって、外観上の品質を損なうことがないので、食品等の経口品の保存管理にも使用者に不安を与えることなく使用することができる。本件発明に係る封入型脱酸素剤は、特に、酸素吸収反応に伴うアルコール発生のない脱酸素剤と共に酸素検知剤を用いる場合において、好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素検知材をフィルム包装材に封入した封入型酸素検知剤であって、
前記フィルム包装材は、厚さ方向に積層された内面側フィルムと外面側フィルムとを少なくとも備え、当該フィルム包装材は、酸素透過率が500ml/(m・24hr)〜3000ml/(m・24hr)であり、
前記内面側フィルムと外面側フィルムとは、イミン系接着剤を用いてラミネート加工により接着させた積層フィルムであることを特徴とする封入型酸素検知剤。
【請求項2】
前記フィルム包装材は、内面側フィルムが、低密度ポリエチレンフィルムまたは無延伸ポリプロピレンフィルムからなる請求項1に記載の封入型酸素検知剤。
【請求項3】
前記フィルム包装材は、外面側フィルムが、二軸延伸ポリプロピレンフィルムまたは、貫通孔を有するポリエステルフィルムからなる請求項1又は請求項2に記載の封入型酸素検知剤。
【請求項4】
前記外面側フィルムが厚さ12μm〜20μmである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の封入型酸素検知剤。
【請求項5】
前記内面側フィルムが厚さ15μm〜120μmである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の封入型酸素検知剤。
【請求項6】
前記ラミネート加工は、押出ラミネート加工またはドライラミネート加工である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の封入型酸素検知剤。
【請求項7】
前記酸素検知材が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、還元性糖類、還元性糖類によって還元される色素、還元性糖類によって還元されない色素、セルロース性物質を含む酸素検知剤組成物からなる請求項1〜請求項6のいずれかに記載の封入型酸素検知剤。
【請求項8】
前記酸素検知材は、シート、錠剤または粉末である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の封入型酸素検知剤。