説明

封入複合体を収容する繊維構造体

(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容および/または固定された粉体粒子
を含むデバイスであって、前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含むデバイス;このデバイスを用いて、揮発性化合物を分子封入複合体から放出させる方法;並びにこの方法を行うための装置もしくはシステムが提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
揮発性化合物の取り扱いは様々な問題を生じさせる。揮発性化合物の取り扱いをより容易にする1つの方法は、分子封入剤が揮発性化合物の分子を封入している分子封入複合体を形成することである。揮発性化合物の使用が望まれる場合には、1つの一般的な方法は分子封入複合体を放出化合物と接触させることを伴い、この放出化合物は封入複合体と接触する際に、分子封入複合体からの揮発性化合物の放出を促進しもしくは引き起こす。
【0002】
ある場合には、分子封入複合体は粉体の形態であり、この粉体は場合によっては他の材料の他の固体粒子とブレンドされることができ、ブレンドされた粉体を形成することができる。この粉体は概して、純粋な揮発性化合物よりも貯蔵し、輸送し、および/または使用するのが容易である。
【0003】
しかし、この粉体は揮発性化合物の使用に関連する全ての課題を解決するわけではない。例えば、この粉体から揮発性化合物を放出させるために放出化合物を使用する場合には、この粉体と放出化合物との間の接触が緊密ではなく、そして揮発性化合物の放出を増強させる何らかの手立てをとる必要がある。この手立てには、例えば、揮発性化合物を放出させるために望ましくない長時間待つこと、もしくは何らかの機械的補助(例えば、振とう、攪拌、発泡作用など)を提供することが挙げられる。米国特許第6,426,319号は、水吸収剤材料と混合された、分子封入剤とシクロプロペン化合物との分子封入複合体を含む組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,426,319号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
交換用化合物と分子封入複合体との間の緊密な接触を向上させるデバイスを提供することが望まれる。
【0006】
さらに、粉体は流動しかつほこりを立てるので、粉体は取り扱いの困難性をもたらす。よって、分子封入剤を収容し、かつ一定の構造を有するデバイスを提供することも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態においては、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容および/または固定された粉体粒子
を含むデバイスであって、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含む、
デバイスが提供される。
【0008】
本発明の第2の形態においては、揮発性化合物を放出させる方法が提供される。この方法は、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容および/または固定された粉体粒子
を含む放出デバイスであって、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含む、
放出デバイスを提供することを含む。この方法は、分子封入複合体が揮発性化合物を放出するように所定の放出複合体を分子封入複合体と接触させることをさらに含む。
【0009】
本発明の第3の形態においては、揮発性化合物をターゲットに送達するための装置またはシステムが提供される。この装置またはシステムは、ターゲットを受け入れるように構成された内部空間を画定する容器と、少なくとも1つの放出デバイスとを含み、前記放出デバイスは、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容および/または固定された粉体粒子を含み、
前記粉体粒子は1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含み、前記分子封入剤は、前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記揮発性化合物を放出するように選択されかつ構成されており、
前記少なくとも1つの放出デバイスは前記内部空間の雰囲気と流体連通しているように配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において使用される場合、「周囲温度範囲」とは−40℃〜40℃の温度の範囲を意味する。
【0011】
本明細書において使用される場合、ある比率が「X以上:1」であると記載される場合には、その比率はY:1(YはX以上である)である。同様に、ある比率が「R以下:1」であると記載される場合には、その比率はS:1(SはR以下である)である。
【0012】
本明細書において使用される場合、「繊維」は周囲温度範囲にわたって固体であり、他の2つの寸法よりもかなり長い1つの寸法を有し、典型的に(しかし必須ではない)、実質的に均一な形状の(長い寸法に対して垂直の方向での)断面を有し、かつ4mm以下の断面積を有する材料である。繊維は10以上:1のアスペクト比(長さを断面積の平方根で割ることにより測定した場合)を有する。
【0013】
本明細書において使用される場合、「繊維構造体」は一緒になって多孔体を形成している繊維の集合体(collection)である。繊維の集合体は織物であっても良いし、または不織物であっても良く、いずれの場合でも、多孔体の構造的一体性は、繊維を互いに結合することによっておよび/またはシースのような格納構造によって維持される。結合した繊維構造体は、間隔のあいた接触点で互いに結合した非常に分散した繊維の相互接続ネットワークを含む熱可塑性繊維状材料のウェブから形成される。繊維の特性および繊維間の結合に応じて、これら構造体は実質的に自己支持性の三次元多孔体であることができ、これは蛇行した流体フロー経路、高い繊維表面積および多孔度を提供し、かつ様々なサイズおよび形状に形成されうる。
【0014】
本明細書において使用される場合、「多成分繊維」は2種以上の異なる化学物質(成分)がこの繊維体の別個の部分に配置されている繊維である。正確に2成分が存在する場合には、この繊維は本明細書において「2成分繊維」と称される。本明細書においては、単一の化学物質から製造される繊維は「1成分繊維」と称される。
【0015】
本明細書において使用され、Textbook of Polymer Science(テキストブックオブポリマーサイエンス)第2版、1971においてFW Billmeyer(ビルメイヤー),Jr.によって定義されるように、「ポリマー」は、より小さな化学繰り返し単位の反応生成物からなる相対的に大きな分子である。ポリマーは線状、分岐、星形、ループ、超分岐、架橋またはこれらの組み合わせである構造を有することができ;ポリマーは単一種の繰り返し単位を有することができ(ホモポリマー)、またはポリマーは2種以上の繰り返し単位を有することができる(コポリマー)。コポリマーはランダム、シークエンス、ブロック、他の配列で、またはこれらの混合もしくは組み合わせで配列された様々な種類の繰り返し単位を有することができる。
【0016】
ポリマー分子量は標準の方法、例えば、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC、ゲル浸透クロマトグラフィ、すなわちGPCとも称される)によって測定されうる。概して、ポリマーは1,000以上の重量平均分子量(Mw)を有する。ポリマーは極端に高いMwを有することができ;あるポリマーは1,000,000を超えるMwを有し;典型的なポリマーは1,000,000以下のMwを有する。あるポリマーは架橋されており、架橋ポリマーは無限のMwを有すると見なされる。あるポリマーはMn(数平均分子量)によって特徴付けられる。
【0017】
本明細書においては、互いに反応してポリマーの繰り返し単位を形成することができる分子は「モノマー」と称される。
【0018】
ポリマーを特徴付ける2つの方法はガラス転移温度(Tg)および融点(Tm)である。両方とも示差走査熱量測定によって測定される。
【0019】
本明細書において使用される場合、「軟化点」は、(本明細書において以下に記載されるような)結合した不織ウェブを製造するのに使用されるダイによってもたらされる圧力または重力のような穏やかな圧力下でポリマーが容易に変形するのに充分柔らかくなる温度である。ポリマーが融点を有する場合には、融点はその軟化点である。熱可塑性ポリマーが融点を有しない場合には、そのポリマーの軟化点は、穏やかな圧力下でそのポリマーが容易に変形する、そのポリマーのTgより高い温度である。典型的な熱可塑性ポリマーについては、Tgと軟化点との間の差はそのポリマーのMwに応じて変化しうる。充分に架橋したポリマーは、そのTgが室温未満であるとしても、流動せず、よって全ての充分に架橋したポリマーは、ポリマー処理に使用されるどの温度よりも高い軟化点を有すると見なされる。
【0020】
本明細書においては、その軟化点より低い温度にあるポリマーは「固体」ポリマーと称される。
本明細書において使用される場合、「流体」は気体または液体である。
【0021】
本明細書において使用される場合、「親水性」表面は水を引き付ける表面である。すなわち、親水性表面上の水滴は浸潤(wet out)し、小さな接触角を有し、および比較的容易に広がる。親水性化合物は表面上に存在する場合に、通常、その表面をより親水性にするであろう化合物である。疎水性表面は水をはじき、浸潤せず、および大きな接触角を有する表面であって、疎水性化合物は、表面上に存在する場合に、通常、その表面をより疎水性にするであろう。
【0022】
本発明は1種以上のシクロプロペン化合物の使用を伴う。本明細書において使用される場合、シクロプロペン化合物は下記式:
【化1】

(式中、各R、R、RおよびRは独立して、Hおよび式:
【化2】

の化学基からなる群から選択され;nは0〜12の整数である)
を有する化合物である。各Lは2価の基である。適するL基には、例えば、H、B、C、N、O、P、S、Siまたはこれらの混合から選択される1種以上の原子を含む基が挙げられる。L基内の原子は互いに、単結合、二重結合、三重結合またはこれらの混合によって連結されうる。各L基は線状、分岐、環式、またはこれらの組み合わせであることができる。いずれか1つのR基(すなわち、R、R、RおよびRのいずれか1つ)においては、ヘテロ原子(すなわち、HでもCでもない原子)の総数は0〜6である。
【0023】
独立して、いずれか1つのR基においては、非水素原子の総数が50以下である。
【0024】
各Zは1価の基である。各Zは独立に、水素、ハロ、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラート(chlorate)、ブロマート(bromate)、ヨーダート(iodate)、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオおよび化学基G(Gは3〜14員環系である)からなる群から選択される。
【0025】
、R、RおよびR基は、独立して、適する基から選択される。R、R、RおよびR基は互いに同じであってよく、または任意の数のそれらは他のものと異なっていてよい。R、R、RおよびRの1以上として使用するのに適する基は、シクロプロペン環に直接結合されていてよく、または介在する基、例えば、ヘテロ原子含有基などを介してシクロプロペン環に結合されていてよい。
【0026】
本明細書において使用される場合、着目した化学基の1以上の水素原子が置換基によって置き換えられている場合には、着目した化学基は「置換」されていると称される。適する置換基には、例えば、アルキル、アルケニル、アセチルアミノ、アルコキシ、アルコキシアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルコキシイミノ、カルボキシ、ハロ、ハロアルコキシ、ヒドロキシ、アルキルスルホニル、アルキルチオ、トリアルキルシリル、ジアルキルアミノ、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
適するR、R、RおよびR基には、例えば、下記の基のいずれかの置換体または非置換体が挙げられる:脂肪族、脂肪族−オキシ、アルキルカルボニル、アルキルホスホナト、アルキルホスファト、アルキルアミノ、アルキルスルホニル、アルキルカルボキシル、アルキルアミノスルホニル、シクロアルキルスルホニル、シクロアルキルアミノ、ヘテロサイクリル(すなわち、少なくとも1つのヘテロ原子を環内に有する芳香族もしくは非芳香族環式基)、アリール、水素、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、シアノ、ニトロ、ニトロソ、アジド、クロラト、ブロマト、ヨーダト、イソシアナト、イソシアニド、イソチオシアナト、ペンタフルオロチオ、アセトキシ、カルボエトキシ、シアナト、ニトラト、ニトリト、ペルクロラト、アレニル;ブチルメルカプト、ジエチルホスホナト、ジメチルフェニルシリル、イソキノリル、メルカプト、ナフチル、フェノキシ、フェニル、ピペリジノ、ピリジル、キノリル、トリエチルシリル、およびトリメチルシリル。
【0028】
適するR、R、RおよびR基には、1以上のイオン化可能な置換基を含むものが挙げられる。このようなイオン化可能な基は非イオン化形態または塩形態であることができる。
【0029】
およびRが一緒になって、二重結合によってシクロプロペン環の第3番炭素原子に結合されている単一の基になっている実施形態も意図される。このような化合物のいくつかは米国特許出願公開第2005/0288189号に記載されている。
【0030】
ある実施形態においては、R、R、RおよびRの1以上が水素である1種以上のシクロプロペンが使用される。ある実施形態においては、R、R、RおよびRのそれぞれが水素またはメチルである。ある実施形態においては、Rが(C−C)アルキルであり、R、RおよびRのそれぞれが水素である。ある実施形態に置いては、Rがメチルであり、R、RおよびRのそれぞれが水素であり、このシクロプロペン化合物は、本明細書において「1−MCP」と称される。
【0031】
ある実施形態においては、1気圧で50℃以下;または25℃以下;または15℃以下の沸点を有するシクロプロペン化合物が使用される。独立に、ある実施形態においては、1気圧で−100℃以上;−50℃以上;または25℃以上;または0℃以上の沸点を有するシクロプロペン化合物が使用される。
【0032】
本発明の実施は、1種以上の分子封入剤(molecular encapsulating agent)を伴う。適する分子封入剤には、例えば、有機および無機分子封入剤が挙げられる。適する有機分子封入剤には、例えば、置換シクロデキストリン、非置換シクロデキストリン、およびクラウンエーテルが挙げられる。適する無機分子封入剤には、例えば、ゼオライトが挙げられる。適する分子封入剤の混合物も適する。本発明のある実施形態においては、この封入剤は、アルファシクロデキストリン、ベータシクロデキストリン、ガンマシクロデキストリン、またはこれらの混合物である。本発明のある実施形態においては、特に、揮発性化合物が1−メチルシクロプロペンの場合には、封入剤はアルファシクロデキストリンである。好ましい封入剤は、使用される揮発性化合物(単一種または複数種)の構造に応じて変化するであろう。シクロデキストリン、もしくはシクロデキストリンの混合物、シクロデキストリンポリマー、修飾シクロデキストリン、またはその混合物も本発明に従って使用されうる。
【0033】
少なくとも1種の分子封入剤が1種以上の揮発性化合物を封入する。分子封入剤の分子中に封入されている揮発性化合物分子は、本明細書において「封入複合体」と称される。この封入複合体は任意の手段によって製造されうる。製造の一方法においては、例えば、揮発性化合物を分子封入剤の溶液またはスラリーと接触させ、次いで、この複合体を単離することによって、このような複合体は製造される。
【0034】
分子封入剤の量は、分子封入剤のモル数:揮発性化合物のモル数の比率によって有用に特徴づけられうる。ある実施形態においては、分子封入剤のモル数:揮発性化合物のモル数の比率は0.3以上:1、もしくは0.9以上:1、もしくは0.92以上:1、もしくは0.95以上:1である。独立して、このような実施形態のいくつかにおいては、分子封入剤のモル数:揮発性化合物のモル数の比率は2以下:1、もしくは1.5以下:1である。ある実施形態においては、分子封入剤のモル数:揮発性化合物のモル数の比率は0.95:1〜1.5:1である。
【0035】
ある実施形態においては、1種以上の分子封入剤は1種以上のシクロプロペン化合物を封入する。
【0036】
ある実施形態においては、封入複合体は粉体の形態である。粉体は他の材料とブレンドされてブレンドされた粉体を形成することができる。適する他の材料には、例えば、水吸収性材料、保湿剤、モレキュラーシーブ、糖、シクロデキストリン、鉱物およびこれらの混合物が挙げられる。ある実施形態においては、1種以上の糖、例えば、デキストロースなどが使用される。ある実施形態においては、1種以上の鉱物、例えば、アルカリ炭酸塩、アルカリ重炭酸塩、アルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類重炭酸塩、およびこれらの混合物などが使用される。ある実施形態においては、封入複合体を含む粉体はデキストロース、重炭酸ナトリウム、またはこれらの混合物を含む。ある実施形態においては、水吸収性材料が使用される。水吸収性材料が使用される実施形態においては、様々な水吸収性材料が適していると考えられる。例えば、水吸収性材料として適する材料のある種類はエチレングリコールポリマー(PEG)である。様々なPEG、例えば、様々な分子量のPEGなどが適していると考えられる。
【0037】
ある実施形態においては、三次元構造体を製造するのに使用される粉体は、2以上:1、5以上:1、または8以上:1の、他の粒子状材料の重量:封入複合体の重量の比率を有する。ある実施形態においては、三次元構造体を製造するのに使用される粉体は、50以下:1、または20以下:1の、他の粒子状材料の重量:封入複合体の重量の比率を有する。
【0038】
本発明のある実施形態は放出化合物の使用を伴う。放出化合物の選択は分子封入剤の性質および揮発性化合物の性質に応じて変化しうる。ある実施形態においては、放出化合物は、分子封入剤と分子封入複合体を形成し、ひいては揮発性化合物と置き換わり、そして揮発性化合物を雰囲気に放出させることにより、揮発性化合物の放出を引き起こす。
【0039】
本発明は特定の理論に限定される訳ではないが、放出化合物が働くメカニズムが考えられる。ある場合には、放出化合物は分子封入剤と共に分子封入複合体を形成し、これは揮発性化合物と分子封入剤とによって形成される分子封入複合体よりも安定であることが考えられる。他の場合においては、放出化合物によって形成される分子封入複合体は、揮発性化合物によって形成される分子封入複合体よりも安定ではないかもしれないが、放出化合物は揮発性化合物よりも低揮発性であることができ、その結果、放出剤による揮発性化合物の置き換えが起こる場合には、置き換えられた揮発性化合物は雰囲気中に拡散しやすく、そして時間の経過と共に、揮発性化合物のほとんどもしくは全てが分子封入複合体から放出されるであろうことが考えられる。
【0040】
分子封入複合体が存在する平衡条件をはじめとする、ほとんど全ての条件下で、揮発性化合物および放出化合物(それが存在する場合には)は、分子封入剤との分子封入複合体を出たり入ったりして常に拡散するので、このような置き換えが起こりうると考えられる。
【0041】
シクロデキストリンを伴うある封入複合体については、いくつかの有効な放出化合物は、例えば、水、界面活性剤、アルコールおよびこれらの混合物である。適する界面活性剤には、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびこれらの混合物が挙げられる。適するアルコールには、例えば、1〜10個の炭素原子を有するアルキルアルコールが挙げられる。ある実施形態においては、水が放出化合物として、液体形態もしくは気体形態もしくはこの混合で使用される。ある実施形態においては、気体の水が放出化合物として使用される。放出剤の選択は、通常、使用される具体的な分子カプセル化複合体に応じて決まる。
【0042】
ある実施形態においては、放出化合物は他の化合物との混合物の部分として使用されうる。例えば、液体の水が放出化合物として使用される実施形態においては、この水は純水としてまたは何らかの水系組成物として存在していてよい。別の例については、気体の水が放出化合物として使用される実施形態においては、この水は他の気体との混合物で存在していてよい。この他の気体は、例えば、空気中に通常認められる気体のいずれかもしくは全てであってよく、または別の例については、植物もしくは植物の部分の制御雰囲気貯蔵において使用される気体のいずれかもしくは全てであってよい。
【0043】
本発明の実施は、記載される封入剤のための担体として使用されうる繊維構造体を形成するのに使用されうる1種以上の繊維の使用を伴う。これら繊維は典型的には多成分繊維であるが、1成分繊維が使用されてもよい。多成分繊維中の成分は任意の形態に配置されうる。繊維は任意の断面形状、例えば、円形、楕円形、長円形、矩形またはより複雑な形状(例えば、マルチローバル(multi−lobal)および小円鋸歯(crenulated)形状、並びに1以上の平坦面、1以上の角、1以上の凸面、1以上の凹面、またはこれらの組み合わせを有する形状)などを有することができる。
【0044】
ある実施形態においては、繊維の成分の1種以上はポリマーである。ある実施形態においては、各成分がポリマーである繊維が使用され、本明細書においてその繊維は「ポリマー繊維」と称される。
【0045】
ポリマー繊維中の成分としての使用に適するポリマーには、周囲温度範囲にわたって固体であるポリマーが挙げられる。ある適するポリマーは、例えば、炭化水素樹脂、ポリエステル、ポリアミド、フルオロポリマー、炭化水素樹脂以外のビニルポリマー、ポリエーテルおよびこれらのブレンドである。
【0046】
適する炭化水素樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ジエン樹脂のポリマーおよびこれらのコポリマーが挙げられる。適するポリエステルには、例えば、ポリアルキレンテレフタラートポリマーおよびコポリマー(ここで、アルキレン基は、例えば、エチレンもしくはブチレンであり得る)、並びにポリカルボナートが挙げられる。適するポリアミドには、例えば、ナイロン6、ナイロン66およびこれらのコポリマーが挙げられる。適するポリエーテルには、例えば、アセタールホモポリマーおよびコポリマー、並びにポリアルキレングリコール(ここで、アルキレン基は、例えば、エチレンもしくはプロピレンであり得る)が挙げられる。
【0047】
炭化水素樹脂以外の適するビニルポリマーには、例えば、アクリラートポリマー、スチレンのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルアルコールのポリマーおよびコポリマー(例えば、エチレンとビニルアルコールとのコポリマーなど)、ジエンモノマーのコポリマー、塩化ビニルのポリマーおよびコポリマー、並びに酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマーが挙げられる。ある適するアクリルポリマーには、例えば、(メタ)アクリル酸のポリマーおよびコポリマー、(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリル酸のアミド、アクリロニトリル、1種以上のアクリル系モノマーと、スチレン、置換スチレン、エチレン、酢酸ビニル、他の非アクリル系モノマー、並びにこれらの混合物から選択される1種以上のモノマーとのコポリマーが挙げられる。
【0048】
ある実施形態においては、繊維は1種以上の2成分繊維を含む。2成分繊維中の成分の好適な形態には、例えば、サイドバイサイド(side−by−side)形態およびコア−シース形態が挙げられる。サイドバイサイド繊維は、各成分が1つの連続領域を形成し、その連続領域が他の成分とおよびその繊維の外部境界と接触している均一な断面を有する。コア−シース繊維は1成分が他のものを取り囲んでいる均一な断面を有する。
【0049】
2種より多い成分を有する多成分繊維は、例えば、サイドバイサイド形態、コア−シース形態、またはこれらの組み合わせで成分を有しうる。多成分繊維は、マトリックス成分が繊維の外部表面を画定し、複数の繊維成分(島)がマトリックス成分(海)内に配置されている「海中島型(islands−in−the−sea)」形態を有することもできる。
【0050】
様々な成分が様々な理由のために選択されうる。例えば、あるポリマーは他のものより高価であってよく、安価なポリマーは繊維の質量の大部分を提供するように選択されることができ、同時に、繊維に何らかの望ましい特性をもたらすので、少量の高価なポリマーが含まれうる。別の例については、比較的高い軟化点を有するストロング(strong)ポリマーはコア−シース繊維のコアのために選択されることができ、一方で、繊維結合性を増強するために、比較的低い軟化点を有するポリマーがその繊維のシースのために選択されうる。
【0051】
コア−シースポリマー2成分繊維に関するある実施形態においては、コアポリマーおよびシースポリマーの以下の組み合わせの1以上が使用される:ポリプロピレンのコア、並びに3〜8個の炭素を有する1種以上のアルケンモノマーとエチレンとのコポリマーおよびポリエチレンから選択されるシース;ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、または他のポリエステルのコア、並びにエチレンと他のモノマーとのコポリマー、もしくはポリエチレンのシース;ポリプロピレン、もしくはポリブチレンテレフタラートのコア、およびポリエチレンテレフタラートもしくはそのコポリマーのシース;ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、もしくは他のポリエステルのコア、並びにポリエチレンテレフタラートもしくは他のコポリエステルのコポリマーのシース。
【0052】
ある適する多成分繊維(本明細書においては、「軟質表面」繊維と称される)は多成分ポリマー繊維であり、その繊維中の全ての成分の最も低い軟化点を有する成分は、その成分がその繊維の外部境界の全てもしくは一部分を画定する形態で存在する。例えば、最も低い軟化点を有する成分はサイドバイサイド2成分繊維の1成分であり得る。別の例については、最も低い軟化点を有する成分はコア−シース2成分繊維における最外成分でありうる。
【0053】
軟質表面繊維においては、成分の中の最も低い軟化点と成分の中の最も高い軟化点との間の軟化点の差に留意することが有用である。ある実施形態においては、この差は10℃、もしくは20℃、もしくは50℃、もしくは100℃である。
【0054】
本発明の実施においては、繊維は三次元構造体を形成するあらゆる方法によって形成され、および一緒にされることができる。この三次元構造体は繊維の織物もしくは不織ウェブであり得る。特定の実施形態においては、この三次元構造体は接触点で互いに結合した高分散繊維の不織ウェブである。
【0055】
三次元構造体中の繊維は、それが形成された後では、全てが同一平面に横たわっている以外の、空間中の何らかの配置状態にある。空間を占め、よって三次元的である構造体を繊維が形成するように繊維は分散される。ある実施形態においては、三次元繊維構造体は比較的厚い(すなわち、3mm以上の最小寸法を有する)。別の実施形態においては、三次元構造体は比較的薄くて(すなわち、3mm未満の最小寸法を有する)よく;この構造体は、例えば、織物もしくは不織物であり得るファブリック(fabric)であり得る。
【0056】
本発明において使用される繊維は多成分繊維であってよく、または多成分繊維でなくてもよい。組成に関係なく、適するファブリック中の繊維は接触点で互いに結合されていて良いし、結合されていなくても良い。繊維が接触点で互いに結合されていない実施形態は、本明細書においては、「未結合」実施形態と称される。繊維が接触点で互いに結合されていない場合には、それらは織物ファブリックの部分であるか、またはそうでなければ(例えば、ポリマーシースによって)他の繊維に対する空間的関係で制約されると考えられ、よって、本明細書においては、繊維構造体の部分であると見なされる。
【0057】
未結合実施形態以外で、形成された後の三次元構造体全体にわたるほとんどもしくは全ての位置において、繊維は繊維間の接触点で互いに結合され、そして他の繊維と接触しておらずかつ他の繊維との結合に関与していない繊維の表面積の広がりが存在する。この構造体については、本明細書においては、この結合は「間隔があいた(spaced apart)」結合と称される。
【0058】
三次元構造体は、それが形成された後は、多孔性であることができ、すなわち、それは繊維表面間に構造体内の有意な空隙体積を有するであろうことが考えられる。この構造体は高表面積の繊維を提供すると考えられる。繊維のない体積が互いにつながって、流体が通って動きうる経路を形成するであろうことも考えられる。ある実施形態においては、この経路は蛇行していてよい。
【0059】
ある実施形態においては、軟質表面繊維は最初に接触してウェブを形成し、そのウェブにおいては繊維は結合していないかまたは、緩く結合されているだけである。次いで、このウェブは、その繊維の外部表面の少なくとも一部分を画定する結合性繊維成分の軟化点を超える高温に曝露される。ある実施形態においては、この高温は、その繊維の1種以上の他の成分の軟化点未満であるように定められる場合がある。このウェブは、高温に曝露されるのと同じ時間、場合によって、圧力がかけられる。この高温では、結合性繊維成分の一部分もしくは全部が、それ自体および/または他の繊維との接触点で変形する場合があり、そして結合性繊維成分がその軟化点未満まで冷える際に、その接触点での繊維結合を形成しうることが考えられる。
【0060】
三次元構造体を製造するのに使用される繊維はステープル(staple)もしくはフィラメント繊維、またはこの混合物であり得る。この繊維は、既知の技術、例えば、これに限定されないが、メルトスピニング、スパンボンディング、ドライスピニング、ウェットスピニング、およびメルトブローイングによって形成されうる。これらプロセスによって生じる繊維は、直ちに、結合もしくは未結合ウェブに形成されることができ、またはカード処理され(carded)/スルーエアボンドされ(through air bonded)、カード処理され/ニードルパンチされうる。
【0061】
繊維を形成し集合させるある適する方法においては、複数の軟質表面多成分ポリマー繊維がメルトブローされて、高度に分散しランダムに間隔があいた繊維のネットワークを形成する。メルトブロースピンビームからの押出の際に繊維をドローし、細くするために高温空気が使用され;次いで、これら繊維は集められ、冷却されて、ランダムに分布し緩く結合した繊維のウェブを形成する。
【0062】
軟質表面ポリマー繊維を一緒にする別の適する方法においては、カーディング/スルーエアボンディング技術、カーディング/ニードルパンチング技術、エアレイイング技術、またはウエットレイイング技術のいずれかによってステープル繊維の不織ウェブが形成される。
【0063】
繊維が(繊維を一緒にする何らかの方法、例えば、本明細書において上述の方法のいずれかなどによって)一緒にされた後で、繊維のウェブは、例えば、様々な方法のいずれかによって適切に処理されうる。三次元結合繊維構造体が望まれる実施形態においては、未結合もしくは軽度に結合した繊維ウェブが加熱され、形成ダイを通されて、繊維をその接触点で互いに結合し、次いで冷却されて最終的な三次元結合繊維構造体を提供することができる。
【0064】
繊維の配置、密度および材料、並びに繊維構造体は望まれる全体的なエレメント多孔度および繊維表面積を提供するように調節されうる。繊維の材料および形態は、その繊維が特定の流体を引き付けるもしくは反発する程度も決定することができる。特定の実施形態においては、三次元構造体は親水性表面を提供する繊維を含む。例えば、三次元構造体は、シースが親水性であるコア−シース繊維を含むことができる。例えば、ブロープロセスの前に溶融物に添加される親水性もしくは疎水性添加剤の使用によって、または他の方法によって、メルトブローされた繊維は多かれ少なかれ親水性に製造されうる。ある繊維は、例えば、表面仕上げ剤、溶融添加剤、またはその組み合わせの使用によって多かれ少なかれ親水性にされうる。ある適切な表面仕上げ剤には、例えば、界面活性剤、潤滑流体およびこれらの混合物が挙げられる。
【0065】
ある実施形態においては、三次元繊維構造体は実質的には等方性であり;すなわち、その構造的特性および得られる特性(例えば、密度、多孔度、表面積、表面エネルギーなど)は構造体全体にわたって実質的に均一である。
【0066】
しかし、あるいは、繊維構造体は、その構造体にわたって変化している特性を有していてもよい。特に、繊維構造体は、各要素が他の要素の1種以上とは異なる実質的に均一な特性を有する2種以上の別個の要素を含んでなることができる。この種のある繊維構造体が、2006年1月17日に出願された米国特許出願第11/333,499号に記載されており、その明細書はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。各要素における材料を、または時には繊維の種類および/または特性を変えることにより、異方性三次元構造体が造り出されうる。これら要素については、様々な特性、これに限定されないが、材料、密度、多孔度、表面積、表面エネルギー、仕上げ処理、微粒子添加量などが異なっていてよい。
【0067】
封入複合体を含む粉体粒子は、繊維および繊維構造体の形成中もしくは形成後に繊維と接触することができる。粉体粒子はこの構造体の繊維の一部分もしくは全部に固定されうるか、またはそうでなければ繊維構造体内に収容されうる。粉体粒子はあらゆる方法によって繊維に固定されうる。ある実施形態においては、粉体粒子は熱結合によって繊維に固定される。
【0068】
粉体を繊維構造体にもたらすある方法は、例えば、以下の通りである。粉体は未結合もしくは軽度に結合した繊維のウェブ上に分布させられることができ、次いで、このウェブは、好ましくは加熱空気を用いて、または好ましさは低いが水蒸気を用いて、加熱されたダイを通してドローされ、多孔性で結合した繊維ロッドを形成し、次いでこのロッドが冷却され、所望の長さに切断される。ある実施形態においては、この繊維に捕捉される粉体は、熱による軟化によってこの繊維の露出した成分に結合され、そして次いで繊維表面上のその成分の冷却によって再固化される。ある実施形態においては、粉体の全部もしくは一部分がその繊維に結合されない場合でさえ、粉体は繊維構造体内に留まることができる。
【0069】
ある実施形態においては、粉体粒子の一部分もしくは全部は、三次元構造体に結合されているが、何らかの材料によって完全に囲まれているわけではないと考えられる。すなわち、粉体粒子の一部分もしくは全部については、個々の粒子の一部分は、例えば、同じ粒子の他の部分が何らかの他の固体材料、例えば、多成分繊維の成分の1種の一部分などの下に埋められうるか、もしくはそれによって囲まれうる場合であってさえ、雰囲気に曝されているであろう。
【0070】
繊維のウェブの具体的な形状に関係なく、粉体は何らかの方法によってウェブ上もしくはウェブ内に分布させられうる。ある実施形態においては、封入複合体を含む粉体は、製造されたままのその形態でウェブに適用されてよく、またはそれは別の粉体(本明細書においては、「希釈粉体」と称される)と混合されうる。適切な希釈粉体は本明細書において上述されている。1種以上の希釈粉体の使用の1つの目的は、例えば、封入複合体が均一および/または正確な量でウェブに分布させられうることである。例えば、特定の量の揮発性化合物を放出するデバイスを造り出すことが望まれる場合には、設計者はそのデバイスの繊維に結合されるべき封入複合体の量を計算するであろう。封入複合体のその量が比較的少ない場合には、それが製造されたままの粉体の形態で封入複合体を適用するのは困難であるとわかることができ、そして粉体を繊維に徐々に適用する方法が、多量の粉体が適用される場合の制御をより容易にしうるので、その粉体が希釈粉体と充分にブレンドされる場合には正確性および/または均一性を制御するのがより容易でありうる。
【0071】
例えば、特定のデバイスが1ppmの濃度の揮発性化合物を1リットルの一定体積中に放出する目的に使用されることが知られている場合には、設計者はそのデバイス中にどのくらいの量の封入複合体が含まれなければならないかを計算することができる。小サイズの量のせいでその所望の量を正確に提供することが困難な場合には、その粉体を希釈し、次いでその希釈された粉体の所望の量を繊維に正確に適用することができるのがより容易でありうる。
【0072】
別の例については、より大きな一定体積(例えば、30リットル)中に特定量の揮発性化合物を生じさせることが望まれる場合、またはデバイス中により多くの量の封入複合体が望まれる場合には、繊維に適用されなければならないブレンド粉体の量が多くなりすぎないように、希釈粉体をより少ししか使用しないことが簡単である場合がある。また、最終的に放出される所望の量の揮発性化合物を生じさせるように、粉体の量は調節されうる。
【0073】
あるいは、適用される粉体の量を変えること、もしくは使用される粉体希釈剤の量を変えることに代えて、またはこれらに加えて、単位体積あたりの封入複合体もしくは希釈された封入複合体の相対量を維持しつつ、より多いもしくはより少ない体積の繊維構造体を使用することが簡単である場合がある。この場合には、例えば、より小さな体積の結合した繊維構造体を使用することにより、より小さな一定体積の容器に対処することができた。逆に、より大きな一定体積の容器は、より大きな体積の繊維構造体の使用によって対応できた。繊維構造体の体積を増大させることは、単一の繊維構造体のサイズを増大させることにより、または複数の繊維構造体を提供することにより達成されうることが理解される。
【0074】
ある実施形態においては、雰囲気に対して開放されているかまたは雰囲気に対して部分的に開放されている容器に揮発性化合物を放出することが望まれる場合がある。この場合には、揮発性化合物を徐々に、デバイス付近の空気中に揮発性化合物の特定のターゲット濃度を所定の条件下で維持するように設計され、かつほぼ一定である速度で放出することが望まれる場合がある。もしあれば希釈粉体の量、およびデバイスの繊維マトリックスに結合する粉体の量の選択をはじめとするこの実施形態に適したデバイスが設計されうると考えられる。
【0075】
様々な実施形態においては、デバイスを液体の放出化合物に曝すこと、デバイスを気体の放出化合物に曝すこと、またはデバイスを液体および気体の放出化合物の混合物に曝すことが意図されうる。意図される放出化合物の性質を考慮すると、所望の量の放出された揮発性化合物を提供するように、希釈粉体の種類および量、並びに粉体の全体量が選択されうることが考えられる。
【0076】
ある実施形態においては、封入複合体は三次元繊維構造体の一部分に配置されており、三次元繊維構造体の全体にわたって配置されていない。
【0077】
例えば、異なる特性(例えば、密度、多孔度、繊維表面エネルギーなど)を有する複数の構造体要素(structural components)を有する三次元繊維構造体においては、封入複合体はいくつかの構造体要素内に配置され、他のものには配置されないことが可能である。特定の例においては、繊維構造体は、封入複合体が含まれる少なくとも1つの内層とは異なる特性を有する外側繊維層を有する複数の層を有することができる。
【0078】
ある実施形態(本明細書においては「パッチ」実施形態と称される)においては、直線固体のように形作られ、かつ1つの寸法が相対的に小さく(すなわち、5mm未満)、他の2つの寸法のそれぞれが相対的に大きい(すなわち、少なくとも2cm)の三次元繊維構造体が形成されうる。あるパッチ実施形態においては、組成物の層が比較的大きな平坦面の1以上(すなわち、短い寸法に対して垂直な面の1以上)に適用されうる。この組成物は周囲温度(すなわち、約23℃)でまたは高温で適用されうる。組成物の層は、それが適用された後は、それが適用された温度より高く加熱されてもよいし、されなくてもよい。この組成物は固体塊として、粒子状固体として、液体として(例えば、25℃で固体である組成物の溶融液体として、溶液として、もしくは分散物として、またはそのいくつかの組み合わせとして)適用されうる。ある実施形態においては、組成物は繊維構造体の平坦面の一部分に適用され、平坦面全体に適用されない。組成物が適用された平坦面の部分は、本明細書においては、その組成物の「ストライプ」と称される。
【0079】
あるパッチ実施形態においては、封入複合体を含む組成物の層は繊維構造体の比較的大きな平坦面に適用される。例えば、封入複合体が溶解されもしくは分散されている液体組成物が繊維構造体の面に適用されることができ、その組成物の液体部分は乾燥されうるか、または乾燥可能にされうる。この実施形態のいくつかにおいては、封入複合体は繊維構造体の平坦面上のストライプに残る。
【0080】
ある実施形態においては、繊維構造体の平坦面は、封入複合体を含む組成物の層に加えて、1種以上の他の材料を含む組成物の層も受け入れる。ある適切な「他の材料」は、例えば、粉体において封入複合体とブレンドするのに適する材料に関して上述した材料である。好ましい他の材料は水吸収性材料である。好ましい水吸収性材料は潮解性である。潮解性材料は、25℃でかつある相対湿度の範囲で、雰囲気から気体状の水を吸収することができ、かつ水中でそれ自体の液体溶液を形成することができる。ある適切な潮解性材料は、例えば、無機潮解性塩、有機潮解性化合物、およびその混合物である。適切な無機潮解性塩には、例えば、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸、リン酸の潮解性塩、ピロリン酸四ナトリウム、およびこれらの混合物が挙げられる。適切な有機潮解性化合物には、例えば、尿素、ソルビトール、潮解性糖(例えば、単糖、二糖、オリゴ糖および多糖、例えば、マルトデキストリンなど)、クエン酸、クエン酸の潮解性塩(例えば、クエン酸ナトリウム)、安息香酸、ホウ酸およびこれらの混合物が挙げられる。好ましい潮解性化合物は尿素と第2の潮解性化合物とのブレンド、並びにPEGであり;より好ましいのは尿素と、ソルビトール、クエン酸およびクエン酸ナトリウムの1種以上とのブレンドであり;より好ましいのは尿素とソルビトールとの混合物である。
【0081】
封入複合体を含む組成物の層の上に、封入複合体を含む組成物の層の下に、またはこれらの組み合わせで、(封入複合体を含む層を適用する前に繊維構造体の表面に他の材料の層を適用することにより)他の材料(すなわち、封入複合体以外の材料)の層が配置されうる。他の材料の層が繊維構造体の平坦面のある部分上にあり、かつ封入複合体を含む組成物の層もその繊維構造体の同じ面のある部分上に存在し、かつ他の材料の層の少なくとも一部分は封入複合体が存在しない繊維構造体の表面上の場所にある実施形態も適切である。
【0082】
第1のパッチが形成され、組成物の1以上の層が第1のパッチの1つの平坦面(「コーティングされた」面)の一部分もしくは全部に適用され、次いで第2のパッチが第1のパッチに適用され、第2のパッチの1つの平坦面が第1のパッチのコーティングされた面と向かい合い、高温、圧力、接着剤組成物もしくはその組み合わせの適用によってこれらパッチが一緒に接着される実施形態も意図される。場合によっては、各パッチの平坦面の1以上の一部分もしくは全部に適用された1種以上の組成物を用いて一緒に結合された3つ以上のパッチから、構造体が同様に製造される実施形態も意図される。
【0083】
複数パッチ構造体の各パッチは、全体で一体的に形成された結合繊維構造体の結合繊維要素でありうる。先に記載した通り、この構造体の各要素は材料および流体フロー特性(これはその構造体の他の要素の特性とは異なっていてよい)のそれ自体のセットを有する。上述のような(粉体粒子の形態の)封入複合体の適用は、封入複合体がその構造体の内部の領域に配置される多要素構造体を生じさせる。より具体的には、封入複合体は、この構造体の2つの結合繊維要素間で界面に隣り合った体積領域内に配置される。この粉体粒子は、結合繊維要素のいずれかもしくは双方に属する繊維間に配置されることができ、またはその繊維に接着されることができる。
【0084】
他の材料の組成物の層が存在する場合には、それは様々な目的のいずれかを果たすことができる。本発明は何らかのメカニズムに限定されるものではないが、潮解性化合物を含む組成物の層は水を吸収し、それ自体の水溶液を形成し、そしてその水溶液と封入複合体との間の接触によって分子封入剤からの揮発性化合物の放出を促進することにより機能することが考えられる。水を吸収しかつ水を隔離する他の材料が使用される実施形態も考えられ、そのような他の材料は、水が封入複合体に接触することを一時的に妨げることにより揮発性化合物の放出を遅らせることができると考えられる。
【0085】
本発明のデバイスを使用するある方法は放出化合物を本発明の三次元繊維構造体と接触させることを伴う。この方法を考慮する際には、放出化合物と繊維構造体との間の相互作用の性質を考慮することが有用である。例えば、放出化合物が液体である場合には、繊維構造体は、例えば、芯として働くことができ、並びにその液体を吸収しおよび/または輸送することができる。この場合には、繊維構造体が液体を吸収する速度(ウィッキング(wicking)速度)は、そのデバイスの繊維構造体が液体を吸収する(毛細管吸引(capillary draw))傾向に関連すると考えられる。本発明は特定の理論に限定されないが、繊維構造体の毛細管吸引は液体放出化合物が封入複合体と接触する速度に関連し、よって封入複合体からの揮発性化合物の放出の時間依存性にも関連するであろうことが考えられる。
【0086】
本発明の繊維構造体の毛細管吸引は、様々な可変事項、例えば、繊維の断面の形状、繊維の断面の面積、繊維の長さおよびこの組み合わせなどに応じて変化すると考えられる。例えば、ある場合には、より小さな面積の繊維断面を有する繊維はより高い毛細管吸引を有するであろうことが考えられる。
【0087】
放出化合物が液体であるかまたは気体であるかに関わらず、繊維構造体が放出化合物を空隙に受け入れるおよび/または吸引する傾向は、その放出化合物と繊維の表面との間の相互作用に関連すると考えられる。多くの場合には、この相互作用は繊維の表面エネルギーから予想されうる。例えば、放出化合物が水である場合には、繊維が比較的高い表面エネルギーを有する場合に、水(液体もしくは気体またはその組み合わせのいずれでも)は繊維構造体によってより容易に取り込まれうることが考えられる。繊維の表面エネルギーは以下の可変事項もしくはその組み合わせのいずれかによって制御されうる:表面コーティング、添加剤、およびポリマーの選択。
【0088】
例えば、表面コーティングは使用されてよいし、または使用されなくてもよい。表面コーティングが使用される場合には、そのコーティングは所望の表面エネルギーを有する表面を生じさせる様に選択されもしくは設計されうる。別の例については、繊維におけるポリマーのいずれか1種以上は1種以上の添加剤と共に、または添加剤なしで使用されうる。添加剤が使用される場合には、繊維に所望の表面エネルギーを付与する様に選択されうる。別の例については、あるポリマーは本来的に、他のものよりも高い表面エネルギーを有するので、そのポリマーもしくはポリマーブレンドは所望の表面エネルギーを有する繊維を生じさせるように選択されうる。
【0089】
本発明の繊維構造体の別の特性は多孔度(すなわち、繊維構造体の全体積と比較した空隙体積)である。多孔度は繊維構造体のウィッキング特性もしくは気体放出速度(揮発性化合物が繊維構造体から出る速度)またはその両方に影響を及ぼすことができると考えられる。よって、繊維構造体は、所望のウィッキング特性および/または所望の気体放出速度をもたらす多孔度を有するように設計されうる。使用される方法に応じて、多孔度は、製造プロセス中に繊維構造体に粉体を組み込む能力に影響を及ぼすこともできる。
【0090】
繊維構造体の設計においては、最終繊維構造体の所望の特性の全てを制御するために、様々な設計可変事項が互いに独立して選択されうると考えられる。例えば、繊維構造体の利用可能な表面積および多孔度の双方を制御するために、繊維の断面積が選択されることができ、そして繊維が一緒にされる密度も選択されることができると考えられる。
【0091】
ある実施形態においては、封入複合体のほとんどまたは全ては繊維の表面に結合されるうか、または複数の繊維間の接合点の表面に結合されうる。この実施形態においては、繊維構造体の内側の表面積は、放出化合物と接触させられることができ、それにより揮発性化合物を放出することができる封入複合体の量に関連すると考えられる。
【0092】
独立して、一般に、より高い多孔度は繊維構造体を通る気体のより容易な輸送を可能にし、このことは封入複合体から放出された後での繊維構造体の外への揮発性化合物の輸送をより容易にすることをもたらすとさらに考えられる。
【0093】
揮発性化合物の放出の速度が繊維構造体特性に応じて変えられうることが考えられる。よって、様々な速度での送達を提供するために、1つの装置において複数の繊維構造体が使用されうることがさらに考えられる。このことは指定時間に作動する放出アプローチを可能にすることができる。複数の構造体は、例えば、1つの一体的な結合繊維構造体で、単一のデバイスを形成するように一緒に結合された別々の構造体で、または複数のデバイスで提供されうる。
【0094】
デバイスが製造された後で、放出化合物との接触を妨げるようにデバイスを貯蔵するのが好ましい。例えば、水が特定の封入複合体のための放出化合物である場合には、その封入複合体を収容したデバイスを、揮発性化合物の放出が望まれるまで水との接触を妨げる容器内に貯蔵することが好ましい。
【0095】
ある実施形態においては、本発明の繊維構造体は揮発性化合物をターゲットに送達する装置もしくはシステムの部分として使用されうる。揮発性化合物をターゲットに送達する装置は本発明のデバイスを保持し、ターゲットを受け入れおよび/またはターゲットを保持し、並びに放出化合物をそのデバイスと接触させるように設計されうると考えられる。例えば、この装置は容器および本発明の1以上のデバイスの双方を含むことができる。ある実施形態においては、1以上のデバイスが容器内に配置されるであろう。その容器は、例えば、ターゲットを受け入れるように構成され、かつ揮発性化合物が放出された際に揮発性化合物をターゲットと接触できるようにも構成された体積を画定することができる。揮発性化合物がターゲットと接触できるようにするために、容器は、例えば、完全にもしくは部分的にある体積を取り囲むことができる。
【0096】
例えば、ある実施形態においては、本発明の繊維構造体を収容する(または含む)1以上のデバイスはファスナーを用いて容器の内側に固定されることができる。このデバイスは蓋に、壁に、底にまたはその組み合わせに固定されることができる。デバイスのための適切な位置は、蓋の外に取り付けられるラベルの裏で、容器の蓋の内側にそれを貼ることであろうし、よって、このデバイスは視覚的に目立たない場所にある。また、代替的にもしくは追加的に、このデバイスの1以上は固定されずに、このような容器内に配置されることができる。本発明の1以上のデバイスを保持するであろう1以上のホルダもしくは囲いを伴って容器が製造される実施形態も考えられる。容器の部分として製造された本発明の1以上のデバイスを伴って容器が製造された実施形態も考えられる。
【0097】
本発明の揮発性化合物送達装置において使用される容器は輸送、貯蔵、展示もしくは販売のためのターゲット材料の包装のために構成されうる。容器材料の例には、これに限定されないが、プラスチック、板紙、および複数の積層物および構造体の複合材料が挙げられる。
【0098】
ある実施形態においては、本発明の1以上の揮発性化合物送達デバイスはターゲット材料を保持するために構成された容器の外側に配置されうる。この実施形態においては、容器の壁の一部分が有孔状であるように構成されることができる。このことは、容器の内側から容器の外側まで壁を貫通して延びる孔を提供することにより達成されうる。1以上のデバイスは容器の外側で、容器壁の有孔領域(これが、包装内部の雰囲気を1以上の化合物送達デバイスと相互作用させる)を覆って取り付けられる。
【0099】
使用においては、1以上の化合物送達デバイスは容器の雰囲気およびその中に含まれる放出化合物に曝露される。放出化合物の充分な量と揮発性化合物送達デバイスとの間の相互作用は、ターゲット材料との相互作用のために容器の内側へ戻る揮発性化合物の放出をもたらす。
【0100】
プラスチック膜もしくは他の水不透過膜のような追加の層または材料は、容器の外の雰囲気への揮発性化合物の曝露を妨げるために、1以上の送達デバイスの繊維構造体の外に面した表面上に配置されうる。これら追加の層もしくは材料は、例えば、ラベルもしくは他の二次包装層に組み込まれうる。
【0101】
ある実施形態においては、除去可能な膜もしくは材料層が容器壁の有孔部分の内側に適用されうる。これは、除去可能な膜もしくは材料層が除去されるまで、容器の外側の揮発性化合物送達デバイスを容器の内側雰囲気から隔離する。これは送達デバイスの曝露もしくは汚染の懸念なしに、容器のあらかじめの組み立ておよび貯蔵を可能にするであろう。容器が使用される場合には、ターゲット材料は容器内側に配置され、除去可能な膜もしくは材料層は除去され、そして容器が密閉される。
【0102】
本発明のデバイスは、このような容器内への配置の前に、例えば、放出化合物のない環境において貯蔵されることができる。また、このデバイスは(本明細書において上述した方法のいずれかによって、またはその組み合わせによって)このような容器内に配置されることができ、そしてその容器は放出化合物がない環境において貯蔵されることができる。揮発性化合物を放出するのが望まれる場合には、このようなデバイスもしくは容器は放出化合物がない環境から取り出されることができる。
【0103】
ある典型的な実施形態(本明細書においては、「生産」実施形態と称される)においては、揮発性化合物送達デバイスに組み込まれる揮発性化合物はシクロプロペン化合物であり、かつターゲットは植物もしくは植物の部分を含む。ある生産実施形態においては、本発明の1以上の送達デバイスがは植物もしくは植物の部分と共に容器内に配置されることができ、その植物もしくは植物の部分はその容器内の雰囲気中に気体状の水を放出するであろうし、そしてその気体状の水は放出剤として機能して、シクロプロペン化合物を容器の雰囲気中に放出させることができ、そこでそれが植物もしくは植物の部分と接触するであろうことが考えられる。
【0104】
ある生産実施形態においては、植物もしくは植物の部分は、例えば、植物全体(例えば、顕花植物など)、切り花、野菜全体、切断された野菜、果実全体、切断された果実またはこれらの組み合わせでありうる。
【0105】
ある生産実施形態においては、容器は密閉されることができるか、または容器は空気が周囲雰囲気と交換しうる。
【0106】
生産実施形態についての容器のある適切な種類は、クラムシェル容器と称される剛性プラスチック容器である。
【0107】
ある製造実施形態においては、切り花が箱の中に入れられる。本発明の1以上のデバイスは放出剤を含まない雰囲気(例えば、密閉されたホイルポーチの内側など)から取り出され、花を収容している箱の中に配置されることができる。周囲湿分はシクロプロペン化合物を箱の雰囲気中に放出させるための放出剤として機能でき、箱の中ではシクロプロペン化合物は切り花と接触することができる。
【0108】
本発明の実施形態は、放出化合物がデバイスと接触し、揮発性化合物が1以上のターゲットと接触することを可能にするように揮発性化合物を放出する状況での、本発明の1以上のデバイスのあらゆる配置を含むと考えられる。
【0109】
本発明の方法はあらゆる温度で行われうると考えられる。ある実施形態においては、室温(20℃)が使用される。ある実施形態においては、他の温度で本発明の方法を実施することが望まれる。例えば、ある生産実施形態においては、植物もしくは植物の部分が室温未満の温度で貯蔵されつつ、植物もしくは植物の部分に近接してシクロプロペン化合物を放出させることが望ましい場合があり、その実施形態においては、その温度は植物もしくは植物の部分の貯蔵寿命を長くする様に選択されうる。
【0110】
ある実施形態においては、三次元構造体を含むデバイスは放出化合物と接触させられ、そして揮発性化合物は封入複合体から放出され、雰囲気に入る。例えば、揮発性化合物がシクロプロペン化合物であり、かつ分子封入剤がシクロデキストリンである場合には、水(液体もしくは気体状態のいずれでも)が有効な放出化合物の1つである。本発明のこのデバイスが水と接触させられる場合には、シクロプロペンは雰囲気に放出されるであろう。水は純水の形態で、または水性組成物の形態(すなわち、水性組成物の重量を基準にして25重量%以上の水を含む組成物)で存在しうる。
【0111】
シクロプロペン化合物を雰囲気中に放出する目的の1つは植物または植物の部分の処理である。シクロプロペン化合物は植物もしくは植物の部分のエチレン応答を阻害することが知られている。植物もしくは植物の部分とシクロプロペン化合物との接触のいくつかの有利な効果には、例えば、作物生産および/またはストレス耐性の向上(植物全体が接触させられる場合)、並びに植物の部分が良好な品質を維持する貯蔵期間の延長(植物の部分が接触させられる場合)が挙げられる。
【0112】
植物または植物の部分を、本発明のデバイスから放出される1種以上のシクロプロペン化合物と接触させることが望まれる場合には、その植物または植物の部分はシクロプロペンが放出される際にデバイスの近くにあるべきである。「近く」とは、その雰囲気からなくなる前に、有意な量のシクロプロペン化合物が植物と接触することを意味する。近くはデバイスおよび植物もしくは植物の部分の双方を同じ閉じた容器内に配置することにより、またはデバイスおよび植物もしくは植物の部分を、比較的小さな開口を有する同じ容器内に配置することにより、または植物もしくは植物の部分をデバイスの充分接近して配置することにより達成されうる。
【0113】
植物もしくは植物の部分の近くでの、デバイスと水性組成物との間の接触はあらゆる方法によって行われうる。例えば、ある好適な方法には以下のことが挙げられる:揮発性シクロプロペン化合物を放出させるのに充分な湿度を有する雰囲気を含む容器内にデバイスおよび植物もしくは植物の部分を配置すること;デバイスを液体水性組成物と接触させ、次いで濡れたデバイスおよび植物もしくは植物の部分を同じ容器内に配置すること;植物もしくは植物の部分も収容しているより大きな容器内に存在する小さな容器内の水性液体組成物中にデバイスを配置し維持すること。
【0114】
任意の植物もしくは植物の部分が本発明における使用に適しており、例えば、穀類、根および根茎植物、糖料作物、豆類(例えば、豆、ヒヨコ豆、ガルバンゾー、ササゲ、キマメ、レンティル豆および他の豆類など)、ナッツ、刺激性作物(例えば、コーヒー、カカオ豆、茶およびマテ茶など)並びに含油穀類(例えば、落花生およびダイズなど)をはじめとするカテゴリーからの植物全体もしくは収穫された植物の部分が挙げられる。
【0115】
適切な植物または植物の部分のさらなる例には、例えば、野菜、例えば、キャベツ、アーティチョーク、アスパラガス、レタス、ホウレンソウ、キャッサバの葉、トマト、カリフラワー、カボチャ、キュウリおよびガーキン、ナス、トウガラシおよびピーマン、ネギ、タマネギ、ニンニク、リーキ、他のネギ属野菜、サヤマメ、グリーンピース、ソラマメ、サヤインゲン、ニンジン、オクラ、青トウモロコシ、マッシュルーム、スイカ、カンタロープメロン、タケノコ、ビート、チャード、ケイパー、カルドン、セロリ、チャービル、クレス、フェンネル、西洋ワサビ、マジョラム、オイスタープラント、パセリ、パースニップ、ラディッシュ、ルバーブ、ルタバガ、セイボリー、スコルツォネッラ、スイバ、クレソンおよび他の野菜などが挙げられる。
【0116】
植物もしくは植物の部分のさらなる例には、例えば、果実、例えば、バナナおよびプランテンなど;柑橘類果実;仁果類果実;核果類果実;ベリー類;ブドウ;トロピカルフルーツ;様々な果実および他の果実が挙げられる。
【0117】
選択される実施形態の説明:
本発明の実施形態の中で、いくつかの例は以下の通りである:
第1の実施形態においては、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子
を含むデバイスであって、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含む、
デバイスがある。
【0118】
第2の実施形態においては、前記繊維が複数の多成分ポリマー繊維、複数の1成分繊維、および多成分繊維と1成分繊維との組み合わせからなるセットのうちの1つを含む、第1の実施形態のデバイスがある。
【0119】
第3の実施形態においては、前記繊維が間隔のあいた接触点で互いに結合して、自己支持性の流体透過体を形成し、集合的に前記繊維が、前記流体透過体を貫通する蛇行した流体フロー経路を画定している、第1の実施形態のデバイスがある。
【0120】
第4の実施形態においては、前記粉体粒子が三次元構造体全体にわたって分布させられている、第2の実施形態のデバイスがある。
【0121】
第5の実施形態においては、前記三次元構造体が、一体的に形成された構造体要素を複数含み、この要素のそれぞれが流体透過性三次元構造体であり、この構造体は間隔のあいた接触点で互いに結合した複数の繊維を含み、前記結合繊維は集合的に蛇行した流体フロー経路を画定しており、並びにそれぞれの流体透過性要素は実質的に均一な流体フロー特性を有する、第1の実施形態のデバイスがある。
【0122】
第6の実施形態においては、複数の一体的に形成された構造体要素のうちの少なくとも1つの全体にわたって前記粉体粒子が分布させられている、第5の実施形態のデバイスがある。
【0123】
第7の実施形態においては、複数の一体的に形成された構造体要素のうちの2つの間の界面の近くの体積領域(volumetric region)に前記粉体粒子が配置されている、第5の実施形態のデバイスがある。
【0124】
第8の実施形態においては、前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記封入化合物が揮発性化合物を放出するように選択されかつ構成されている、第1の実施形態のデバイスがある。
【0125】
第9の実施形態においては、前記所定の放出化合物が液体の水もしくは気体の水であり、前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、第8の実施形態のデバイスがある。
【0126】
第10の実施形態においては、前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触する際に、前記三次元構造体が所定の放出化合物をウィッキングするように、前記三次元構造体が構成されかつ前記繊維の少なくとも一部分が選択される、第8の実施形態のデバイスがある。
【0127】
第11の実施形態においては、前記繊維によって画定される表面の少なくとも一部分が親水性である、第1の実施形態のデバイスがある。
【0128】
第12の実施形態においては、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子
を含む放出デバイスを提供することを含み、前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含む、揮発性化合物を放出させる方法がある。当該方法は、分子封入複合体が揮発性化合物を放出するように所定の放出複合体を分子封入複合体と接触させることをさらに含む。
【0129】
第13の実施形態においては、前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触する際に、前記三次元構造体が所定の放出化合物をウィッキングするように、前記三次元構造体が構成されてかつ前記繊維の少なくとも一部分が選択され、並びに前記所定の放出複合体を前記分子封入複合体と接触させる行為が、前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触することを引き起こすかもしくは可能にすることを含む、第12の実施形態の方法がある。
【0130】
第14の実施形態においては、前記所定の放出化合物が水を含む、第12の実施形態の方法がある。
【0131】
第15の実施形態においては、植物または植物の部分の近くに前記放出デバイスを配置することをさらに含む、第14の実施形態の方法がある。
【0132】
第16の実施形態においては、前記所定の放出複合体を前記分子封入複合体と接触させる行為が、植物または植物の部分を容器の内部空間に配置し、かつ前記内部空間の雰囲気と流体連通しているように前記放出デバイスを配置することを含む、第14の実施形態の方法がある。
【0133】
第17の実施形態においては、前記放出デバイスを配置する行為が前記容器の内部空間に前記放出デバイスを配置することを含む、第16の実施形態の方法がある。
【0134】
第18の実施形態においては、前記容器の壁の少なくとも一部分が有孔状であって、それを通る流体連通を可能にしており、かつ前記放出デバイスを配置する行為が壁の少なくとも一部分の外側表面に前記放出デバイスを取り付けることを含む、第16の実施形態の方法がある。
【0135】
第19の実施形態においては、前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、第12の実施形態の方法がある。
【0136】
第20の実施形態においては、揮発性化合物をターゲットに送達するための装置があり、
当該装置が容器および少なくとも1つの放出デバイスを含み、
前記容器はターゲットを受け入れるように構成された内部空間を画定しており、
前記放出デバイスが、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子を含み、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含み、
前記分子封入剤は、前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記揮発性化合物を放出するように選択されかつ構成されており、並びに
前記少なくとも1つの放出デバイスが前記内部空間の雰囲気と流体連通しているように配置されている。
【0137】
第21の実施形態においては、前記放出デバイスが前記容器の内部空間に配置されている、第20の実施形態の装置がある。
【0138】
第22の実施形態においては、前記容器の壁の少なくとも一部分が有孔状であって、それを通る流体連通を可能にしており、かつ前記放出デバイスが壁の少なくとも一部分の外側表面に取り付けられている、第20の実施形態の装置がある。
【0139】
第23の実施形態においては、前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、第20の実施形態の装置がある。
【実施例】
【0140】
以下の実施例においては、デバイスは2成分ポリエチレン(シース)/ポリプロピレン(コア)繊維および粉体を使用して形成された。この繊維は三次元構造体に形成され、この粉体が適用され、そしてこの構造体が加熱処理された。
修飾されていない粉体(本明細書においては「std」粉体と称される)は、1−メチルシクロプロペン(1−MCP)とアルファ−シクロデキストリンとの封入複合体、並びに少量のアルファ−シクロデキストリンを含んでいた。std粉体における1−MCPの量は粉体の重量を基準にして4.7重量%であった。
【0141】
水蒸気での加熱は高温空気加熱よりも、最終的に放出できた1−MCPの量を低減する傾向をより有していた。以下の実施例は高温空気加熱を使用した。
三次元構造体は連続円柱ロッドに形成され、次いで寸法に切断された。
以下の化学的試験手順が使用された。この化学的試験手順は室温(約20℃)で行われた。
【0142】
化学的試験手順−合計放出
試験されるデバイスは隔壁シールを備えたガラスボトルの底に配置された。脱イオン水が注入され、デバイスを充分に濡らした。このデバイスからの放出に影響を及ぼし、かつ溶解した1−メチルシクロプロペンをボトル中の空気と平行化させるために、このボトルは1時間攪拌された。既知の濃度の外部標準を使用するガスクロマトグラフィによって、1−メチルシクロプロペンの濃度が分析され、定量化された。
【0143】
化学的試験手順−湿分による放出
試験されるデバイスは隔壁シールを備えたガラスボトルの首の内側に(テープまたは接着剤−ドットで)取り付けられた。デバイスを濡らさないように注意して、脱イオン水が注入された。このボトルは試験温度で保管された。適切な時間間隔で、既知の濃度の外部標準を使用するガスクロマトグラフィによって、1−メチルシクロプロペンの濃度が分析され、定量化された。
【0144】
実施例1:湿分による放出
各デバイスは直径5mmおよび長さ6mmであった。いくつかのデバイスにおいては、繊維構造体への粉体の分布前に、PEG−1000(ポリエチレングリコール、分子量1000)が粉体に添加され、PEG−1000の量は粉体の重量を基準にして10重量%であった。
【0145】
【表1】

【0146】
より高い湿度水準で、およびPEG1000が使用された場合に、より高い1−MCP放出パーセンテージが得られた。
【0147】
実施例2:1−MCPの合計放出
デバイスは上述のように製造された。いくつかの場合には、「std」粉体(本明細書において上で定義された)が使用され(メジアン粒子サイズ20マイクロメートル)、および他の場合にはそれは使用前にエアミルされた(「AM」得られたメジアン粒子サイズ5マイクロメートル)。いくつかのサンプルにおいては、このstd粉体が希釈粉体で、1部のstd粉体に対して10部の希釈粉体の重量比で希釈された。希釈粉体は炭酸水素ナトリウム(BS)または3−オングストロームサイズのモレキュラーシーブ(MS3)であった。いくつかのサンプルにおいては、粉体の重量を基準にして10%PEG−1000で、PEG−1000が粉体に添加された。
【0148】
いくつかのデバイスについては、合計放出(デバイスあたりの1−MCPのマイクログラム単位)が本明細書において上で記載されるように測定された。各デバイスが7重に試験され、平均が報告される。
【0149】
【表2】

【0150】
実施例3:1−MCPの合計回収
デバイスは実施例2におけるように製造され試験された。粉体はStd;Std(2重量部)とPEG(1重量部)とMS4(8重量部)とのあらかじめ混合されたブレンド(PB3−3);およびStd(2重量部)とPEG(1重量部)とMS3(8重量部)とのあらかじめ混合されたブレンド(PB3−4)であった。希釈剤はBSまたはポリビニルアルコール(PVA)または4−オングストロームモレキュラーシーブ(MS4)であった。
デバイスは1−MCPの合計放出について試験された。結果(7重のサンプルの平均)は表3に示される。
【0151】
【表3】

【0152】
実施例4:西洋ナシでの試験
バートレット西洋ナシが箱(0.5m×0.23m×0.3m)の中に包装せずにルーズに配置された。使用されたデバイスは実施例2−Aであった。西洋ナシは0、1または2つのデバイスと共に箱の中に配置され、蓋が閉められた。この箱は、一方の端で微小孔を有して開いたプラスチック袋の中に入れられた。温度は室温、約20℃であった。この西洋ナシは箱に入れられる際に冷却され(1℃〜5℃)、箱の中で結露が起こった。その配置は9日間は一定に保持され、その後すぐにデバイスは取り除かれた。この西洋ナシは9日目、15日目、および22日目に色相角(緑色から黄色への変化、ミノルタ比色計を使用)について、および8mm直径のチップを取り付けたフルーツテクスチャアナライザー(Guss Manufacturing Ltd,南アフリカより)を用いて果肉硬度について評価された。それぞれの箱から25個の西洋ナシが試験された。
硬度の結果はkg単位で示され、丸括弧内は標準偏差を示す。
【0153】
【表4】

【0154】
実施例5:西洋ナシでの第2の試験
西洋ナシは実施例4におけるように試験された。1つのサンプルにおいては、1つのデバイスが使用されたが、結露からデバイスを隔離するために、それは小さなビーカー内に配置され、次いで箱の内側に入れられた。また、1組の西洋ナシ(「Comp」すなわち、比較)がスマートフレッシュ(SmartFresh(商標))システム(アグロフレッシュインコーポレーティド)で処理され、これは閉鎖された部屋もしくは容器内で24時間の間、10億あたり600部(雰囲気の体積に基づく体積で)の気体1−MCPとの接触を伴い;次いで、この西洋ナシは他のサンプルと同様であるが、デバイスを使用することなく箱および袋の中に配置された。全てのサンプルは7日目および14日目に評価された。
【0155】
【表5】

【0156】
実施例6:西洋ナシでの第3の試験
西洋ナシは実施例4におけるように試験されたが、ただし、西洋ナシがティッシュペーパーに包まれ、そして西洋ナシが箱に入れられた後7日間はプラスチック袋が密封された。1つの箱においては、1つのデバイスが水1mlと共に箱の中に配置された。
【0157】
【表6】

【0158】
実施例7:カーネーションでの試験
カーネーションが実施例2−Aと同等のデバイスを用いて、またはエチルブロック(EthylBloc(商標))テクノロジー(アグロフレッシュインコーポレーティドから)の小袋を用いて処理された。エチルブロック(商標)サンプルは比較である。切り花カーネーションは箱(170リットル)の中に配置され、この箱およびベントが閉じられた。4つの処理は以下ものであった:デバイスなし;箱あたり3つの乾燥デバイス;箱あたり3つのデバイスで、それぞれ1mlの水と共にビーカー内に配置された(湿潤デバイス);並びに製造者の指示に従ったエチルブロック(商標)小袋。デバイスまたは小袋を備えたこれらの箱は、交叉汚染を防止するために、密閉チャンパー(900リットル)内に入れられた。
【0159】
3℃で1日の貯蔵後、湿潤デバイスおよびエチルブロック小袋は箱から取り出された。花のサンプルはそれぞれの箱から取り出され(エチレンチャレンジ試験のために)、そしてこれらの箱は3℃で7日間の貯蔵に戻された。デバイスもしくは小袋のない箱、並びに乾燥デバイスを含む箱は、交叉汚染を妨げるために密閉チャンバー内で保持された。
【0160】
3℃で1日の貯蔵後に取り出された花は、市販の花持ち(vase life)液中で花瓶に入れられ、この花瓶は、2ppm(雰囲気の体積を基準にした体積で)のエチレンを含む雰囲気の密閉チャンバー内に20℃で、36時間置かれた。これらの花は花持ち(それぞれの花について20℃で許容できなくなるまでにかかる平均日数)について評価された。それぞれの処理は、それぞれ25本の花の4重繰り返しを有していた。結果は以下の通りであった:
【0161】
【表7】

【0162】
統計解析は「なし」が1つのカテゴリーであり、他の3つの処理が第2のカテゴリーであったことを示した。
【0163】
別の群のカーネーションが3℃で7日間貯蔵され(花の典型的な輸送期間を模倣するため)、20℃で2日間保持され、次いでエチレンチャレンジのために20℃で24時間の間、西洋ナシ熟成室内に置かれた。この群も上述のと同じ手順を用いた花持ちについて評価された。それぞれの処理はそれぞれ25本の花の10重繰り返しを有していた。結果は以下の通りであった:
【0164】
【表8】

【0165】
統計解析は「なし」が1つの結果のカテゴリーであり、他の3つの処理が第2のカテゴリーであったこと、並びに湿潤デバイスが乾燥デバイスよりも良好に機能したことを示した。
【0166】
実施例8:デバイスの保存
いくつかのデバイスを形成し、切り出したすぐ後に、それらはシリカ乾燥剤を含む金属化プラスチックポーチの中に入れられた。使用された粉体は、Std:BSの比率が1:10または1:15の、BSで希釈されたStd粉体であった。
【0167】
デバイスを製造し、そしてそのデバイス上に粉体を分布させるために使用される装置の駆動速度に基づいて、並びに粉体の組成に基づいて、各デバイスにおける1−MCPの量が計算された。このデバイスはこのポーチから後に取り出され、水にさらされて、デバイスあたりの放出された全1−MCPが測定された。結果は以下の通りであった:
【0168】
【表9】

【0169】
放出された1−MCPの量は存在すると計算される量に非常に近い。計算されたおよび測定された1−MCPの量の差は、計算された量の計算に影響を及ぼす不確実さに大部分は起因すると考えられる。
【0170】
実施例9:尿素/ソルビトールの使用
デバイスは、std粉体を用いて実施例1〜8におけるように製造され、三次元繊維構造体はパッチの形態であった。尿素およびソルビトールの溶融混合物が100〜130℃で製造され、パッチに適用された。溶融混合物:std粉体の重量比は3:1であった。もう一つの方法として、PEGが溶融され、3:1の比率でパッチに適用された。
パッチは、上述のように湿分による放出について試験された。試験は4℃および80%RHで行われた。結果は以下の通りであった:
溶液1=尿素:ソルビトール、重量で80:20
溶液2=尿素:ソルビトール、重量で60:40
【0171】
【表10】

【0172】
さらに、老化安定性は、水吸収性材料のストライプを有するパッチを54℃で一定期間保管し、次いで上述のように全1−MCP放出を試験することによるものであった。結果は以下の通りであった:
【0173】
【表11】

【0174】
実施例10:PEGの配置
デバイスは、粉体を使用せずに実施例1〜8におけるように製造され、三次元繊維構造体はパッチの形態であった。それぞれのパッチは2つのストライプを受け入れていた:一方はstd粉体を含んでおり、他方はPEG(分子量1,000)を含んでいた。2つのストライプはいずれか一方を他方の上に、または相でなければサイドバイサイドで適用された。サンプルは以下のように製造された:
【0175】
【表12】

【0176】
4℃および80%RHでの湿分による放出の結果は以下の通りであった:
【0177】
【表13】

【0178】
実施例11:PEGの種類
サンプルは、PEG:std粉体の重量比が3:1であったこと以外は、上記サンプル10−Gと同様に製造された。PEGの分子量(MW)は1,000または8,000のいずれかであった。湿分による放出は4℃および80%RHで試験され、以下の結果であった:
【0179】
【表14】

【0180】
これらのサンプルは貯蔵後の放出された合計1−MCPを測定することにより、54℃での老化安定性についても試験された。結果は以下の通りであった:
【0181】
【表15】

【0182】
実施例12:PEG対糖
4種類のパッチが、3:1の水吸収性材料(PEGまたは糖)の重量比で、以下のように製造された。糖はヒトの消費に適する白砂糖であった。白砂糖粉体はStd粉体、炭酸水素ナトリウム、およびモレキュラーシーブと混合された。サンプルは以下の通りであった:
実施例12−A:実施例1におけるように、PEG:Stdの重量比3:1でStd粉体およびPEGを含んでいた粉体を用いてパッチが製造され、80%RHおよび4℃で試験された。
実施例12−B:糖も使用された12−Aにおけるようなパッチ、100%RHおよび22℃で試験された。この例においては、PEGを糖で置換え、3:1の糖:Std粉体の比率であった。
実施例12−C:12−Bにおけるパッチ、80%RHおよび4℃で試験された。
実施例12−D:Std粉体を用い、PEGなしで実施例1におけるようにパッチが製造された。糖は使用されず、80%RHおよび4℃で試験された。
【0183】
湿分による1−MCP放出についての結果は以下の通りであった:
【0184】
【表16】

【0185】
これらのサンプルは貯蔵後の放出された合計1−MCPを測定することにより、54℃での老化安定性についても試験された。結果は以下の通りであった:
【0186】
【表17】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子
を含むデバイスであって、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含む、
デバイス。
【請求項2】
前記繊維が複数の多成分ポリマー繊維、複数の1成分繊維、および多成分繊維と1成分繊維との組み合わせからなるセットのうちの1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記繊維が間隔のあいた接触点で互いに結合して、自己支持性の流体透過体を形成し、集合的に前記繊維が、前記流体透過体を貫通する蛇行した流体フロー経路を画定している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記粉体粒子が三次元構造体全体にわたって分布させられている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記三次元構造体が、一体的に形成された構造体要素を複数含み、この要素のそれぞれが流体透過性三次元構造体であり、この構造体は間隔のあいた接触点で互いに結合した複数の繊維を含み、前記結合した繊維は集合的に、蛇行した流体フロー経路を画定しており、並びにそれぞれの流体透過性要素は実質的に均一な流体フロー特性を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
複数の一体的に形成された構造体要素のうちの少なくとも1つの全体にわたって前記粉体粒子が分布している、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
複数の一体的に形成された構造体要素のうちの2つの間の界面の近くの体積領域に前記粉体粒子が配置されている、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記封入化合物が揮発性化合物を放出するように選択されかつ構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記所定の放出化合物が液体の水もしくは気体の水であり、前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触する際に、前記三次元構造体が所定の放出化合物をウィッキングするように、前記三次元構造体が構成されかつ前記繊維の少なくとも一部分が選択される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記繊維によって画定される表面の少なくとも一部分が親水性である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子
を含む放出デバイスであって、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含み、
前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記揮発性化合物を放出するように前記分子封入剤が選択されかつ構成されている
放出デバイスを提供すること;並びに
前記分子封入複合体が前記揮発性化合物を放出するように所定の放出複合体を前記分子封入複合体と接触させること;
を含む揮発性化合物を放出する方法。
【請求項13】
前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触する際に、前記三次元構造体が所定の放出化合物をウィッキングするように、前記三次元構造体が構成されかつ前記繊維の少なくとも一部分が選択され、並びに前記所定の放出複合体を前記分子封入複合体と接触させる行為が、前記所定の放出化合物が前記三次元構造体の表面と接触することを引き起こすかもしくは可能にすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の放出化合物が水を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
植物または植物の部分の近くに前記放出デバイスを配置することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の放出複合体を前記分子封入複合体と接触させる行為が、植物または植物の部分を容器の内部空間に配置し、かつ前記内部空間の雰囲気と流体連通しているように前記放出デバイスを配置することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記放出デバイスを配置する行為が前記容器の内部空間に前記放出デバイスを配置することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記容器の壁の少なくとも一部分が有孔状であって、それを通る流体連通を可能にしており、かつ前記放出デバイスを配置する行為が前記壁の少なくとも一部分の外側表面に前記放出デバイスを取り付けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
揮発性化合物をターゲットに送達するための装置であって、
当該装置が容器および少なくとも1つの放出デバイスを含み、
前記容器はターゲットを受け入れるように構成された内部空間を画定しており、
前記放出デバイスは、
(a)複数の繊維を含む三次元構造体、および
(b)前記構造体に収容または固定された粉体粒子を含み、
前記粉体粒子が1種以上の揮発性化合物を分子封入剤との封入複合体として含み、
前記分子封入剤は、前記封入複合体が所定の放出化合物と接触する際に、前記揮発性化合物を放出するように選択されかつ構成されており、並びに
前記少なくとも1つの放出デバイスが前記内部空間の雰囲気と流体連通しているように配置されている;
装置。
【請求項21】
前記放出デバイスが前記容器の内部空間に配置されている、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記容器の壁の少なくとも一部分が有孔状であって、それを通る流体連通を可能にしており、かつ前記放出デバイスが前記壁の少なくとも一部分の外側表面に取り付けられている、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記揮発性化合物が1種以上のシクロプロペン化合物を含み、かつ前記分子封入剤が1種以上のシクロデキストリンを含む、請求項20に記載の装置。

【公表番号】特表2013−510887(P2013−510887A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539081(P2012−539081)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/056961
【国際公開番号】WO2011/062950
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【出願人】(512123710)フィルトロナ・リッチモンド,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】