説明

封止栓及び蓄電素子

【課題】貫通孔に安定して取り付けることが可能な封止栓を提供する。
【解決手段】壁部200に形成された貫通孔210を封止する封止栓10であって、貫通孔210内に配置される主軸部14を備え、主軸部14は、柱部12と、柱部12の先端に接続されて配置され、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状の大きさが柱部12の先端の外縁形状の大きさ以下である先端部13とを有し、柱部12は、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が最も大きい太軸部12aと、太軸部12aから先端部13に向かう方向に沿ってその外縁形状が小さくなる側面部12bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池その他の電池等の蓄電素子の外装である容器に利用可能な封止栓及びそれを用いた蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、一次電池の置きかえ用途はもとより、携帯電話、IT機器などの電子機器の電源として広く普及している。とりわけ、リチウムイオン電池に代表される非水電解質二次電池は、高エネルギー密度であることから、電気自動車などの産業用大型電気機器への応用も進められている。
【0003】
このような二次電池は、一般に、アルミニウム等の金属製の容器に発電要素及び電解液が封入された構成を有する。容器表面には予め貫通孔が開口されており、電解液は、発電要素の収納後に密閉された容器に、この貫通孔を介して注入される。その後、当該貫通孔は金属製の封止栓により封止され、容器の密閉状態が確保される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図16Aは、特許文献1に開示された従来の技術における二次電池の容器の封止栓100の構成を示す側面図であり、図16Bは、当該封止栓100の構成を示す斜視図であり、図16Cは、当該封止栓100の構成を示す断面図(封止栓100を図16Aに示す中心軸Dを含む平面で切断した場合の断面図)である。又、図17Aは、当該封止栓100が貫通孔210内に配置された状態を示す図である。
【0005】
これらの図に示すように、封止栓100は、壁部200に形成された貫通孔210に嵌り込む柱部102と、壁部200表面にて係止されるフランジ部101とを備えている。また、封止栓100は、貫通孔210の縁部211と最も接触しやすい部分である柱部102の側端部が、滑らかな曲面103として形成されている。これにより、金属製部品である柱部102が貫通孔210にスムーズに挿入されるため、部材同士の接触に起因する金属滓その他のコンタミネーションの発生を低減することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4110632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術による封止栓100の構成は以上のようなものであるが、上記従来の技術においては、以下のような問題があった。
【0008】
すなわち、封止栓100により貫通孔210を封止する際には、貫通孔210に柱部102を挿入して仮固定する必要がある。しかしながら、実際に封止栓100を手又は治具等によって貫通孔210上に配置する際には、図17Bに示すように、封止栓100は貫通孔210に対して傾斜した姿勢を取ってしまう。図17Bは、従来の技術における封止栓100の課題を説明するための図である。
【0009】
このため、たとえ柱部102の外径と貫通孔210の内径とのマージンを大きく取った場合であっても、貫通孔210の縁部211は柱部102の曲面103上を滑り、柱部102の側面に引っかかってしまう。このことにより、封止栓100が貫通孔210に安定した姿勢で配置される割合は、低くなってしまう。
【0010】
結果として、仮固定のために封止栓100の姿勢を再調整する手間が必要となり、これは二次電池の作成時の作業性を著しく低下させ、二次電池作成の生産性が低下することとなっていた。
【0011】
このように、従来の技術による封止栓は、取付時の安定性が悪いため、生産性が低下するおそれがあるという課題があった。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、貫通孔に安定して取り付けることが可能な封止栓及びそれを用いた蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る封止栓は、壁部に形成された貫通孔を封止する封止栓であって、前記貫通孔内に配置される主軸部を備え、前記主軸部は、柱部と、前記柱部の先端に接続されて配置され、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状の大きさが前記柱部の先端の外縁形状の大きさ以下である先端部とを有し、前記柱部は、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が最も大きい太軸部と、前記太軸部から前記先端部に向かう方向に沿ってその外縁形状が小さくなる側面部とを有する。
【0014】
これによれば、封止栓の主軸部は、柱部の太軸部から先端部にかけて断面の外縁形状が小さくなるような形状を有しているため、主軸部を貫通孔内に挿入しやすく、正規の姿勢を保持した状態で封止栓を仮固定することができる。このため、当該封止栓によれば、貫通孔に安定して取り付けることができる。
【0015】
又、前記太軸部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部に配置されており、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際に前記貫通孔の開口端部に配置されることにしてもよい。
【0016】
これによれば、外縁形状が最も大きい太軸部が貫通孔の開口端部に配置されるため、主軸部を貫通孔内に挿入する際に、主軸部が当該開口端部に接触してコンタミネーションが発生するのを抑制することができる。
【0017】
又、前記太軸部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部と前記側面部の端部との間に亘って筒状に形成されていることにしてもよい。
【0018】
これによれば、太軸部は、筒状の部位であるので、太軸部が貫通孔に嵌め込まれることで、封止栓を貫通孔に強固に仮固定することができる。これにより、出力を弱めたレーザ溶接により封止栓を容器に固定する仮打ちの工程を省略することができ、生産性を向上することが可能となる。
【0019】
又、前記側面部は、少なくとも一部の面において、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外周長さの変化の割合が変化していることにしてもよい。
【0020】
これによれば、主軸部は、太軸部から先端部に向けて外周長さの変化の割合が変化している形状、つまり、主軸部の軸方向に平行な面における断面の外縁形状が曲線となるような形状を少なくとも一部の面に有している。このため、主軸部を貫通孔内に挿入する際に、主軸部が貫通孔の開口端部又は内部に接触してコンタミネーションが発生するのを抑制することができる。
【0021】
又、さらに、前記柱部の前記先端部とは反対側に接続されて配置され、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際に前記壁部の壁面上に前記壁部から露出して配置される露出部を備えることにしてもよい。
【0022】
これによれば、封止栓は、貫通孔を封止する際に、露出部が壁面上に露出して配置されるため、封止栓を貫通孔内に挿入しやすく、封止栓を貫通孔に安定して取り付けることができる。
【0023】
又、前記柱部の、前記先端部とは反対側の端部と前記側面部の端部との間の部位の外形状は、前記貫通孔の内形状に対応していることにしてもよい。
【0024】
これによれば、柱部の基端側の部位の外形状は、貫通孔の内形状に対応しているため、当該基端側の部位が貫通孔に嵌め込まれることで、封止栓を貫通孔に強固に仮固定することができる。これにより、仮打ちの工程を省略することができ、生産性を向上することが可能となる。
【0025】
又、前記柱部は、前記主軸部の重心よりも前記先端部からの距離が遠い位置に配置されていることにしてもよい。
【0026】
これによれば、主軸部の重心は、柱部よりも先端部寄りに配置されているため、封止栓を貫通孔内に挿入する際に、封止栓の姿勢を速やかに正規の姿勢に移行させることができる。
【0027】
又、前記主軸部の軸方向における長さは、前記柱部より前記先端部の方が長いことにしてもよい。
【0028】
これによれば、主軸部は、柱部より先端部の方が長いように構成されているため、封止栓を貫通孔内に挿入する際に、封止栓の姿勢を速やかに正規の姿勢に移行させることができる。
【0029】
又、前記主軸部の軸方向の長さは、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際の前記貫通孔の当該軸方向の長さ以下であることにしてもよい。
【0030】
これによれば、主軸部の長さは貫通孔の長さ以下であるため、貫通孔の下面から主軸部が突き出るようなことが無く、壁部下の収納スペースに、封止栓を侵入させないようにすることができる。
【0031】
又、前記太軸部の半径は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端面の中心、又は前記太軸部と前記側面部との境界面の中心と、前記先端部の先端面とを結ぶ最長の直線距離より小さいことにしてもよい。
【0032】
これによれば、太軸部の半径は、柱部の基端側の端面の中心、又は太軸部の側面部側の端面の中心と、先端部の先端面との最長距離より小さいため、封止栓を貫通孔内に挿入する際に封止栓が回転した場合でも、先端部によって封止栓の当該回転を抑制することができる。
【0033】
又、前記柱部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部と前記太軸部との間に形成された側面であって、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が前記太軸部の当該外縁形状よりも小さい側面を有することにしてもよい。
【0034】
これによれば、柱部は、太軸部よりも基端側に、外縁形状が太軸部よりも小さい部位を有した形状でもよく、この場合でも、主軸部を貫通孔内に挿入しやすく、封止栓を貫通孔に安定して取り付けることができる。
【0035】
又、上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、開口を有する容器本体と、前記開口を塞ぐ蓋部と、前記容器本体内に収納される電極体と、上記の封止栓とを備え、前記容器本体又は前記蓋部は、貫通孔が形成された壁部を有し、前記封止栓は、前記壁部に形成された貫通孔を封止している。
【0036】
これによれば、蓄電素子の壁部に形成された貫通孔は上記の封止栓によって封止されているため、上記と同様に、封止栓が貫通孔に安定して取り付けられた蓄電素子を実現することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、貫通孔に安定して取り付けることが可能な封止栓を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態1に係る封止栓の構成を示す側面図
【図2A】本発明の実施の形態1に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図2B】本発明の実施の形態1に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施の形態1に係る封止栓が奏する効果を説明するための図
【図4】本発明の実施の形態2に係る封止栓の構成を示す側面図
【図5A】本発明の実施の形態2に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図5B】本発明の実施の形態2に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態2に係る封止栓が奏する効果を説明するための図
【図7A】本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓の構成を示す側面図
【図7B】本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図8】本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓が奏する効果を説明するための図
【図9A】本発明の実施の形態の変形例2に係る封止栓の構成を示す側面図
【図9B】本発明の実施の形態の変形例2に係る封止栓の構成を示す斜視図
【図10】本発明の実施の形態の変形例3に係る封止栓の構成を示す側面図
【図11】本発明の実施の形態の変形例4に係る封止栓の構成を示す側面図
【図12】本発明の実施の形態の変形例5に係る封止栓の構成を示す側面図
【図13】本発明の実施の形態の変形例6に係る封止栓の構成を示す側面図
【図14】本発明の実施の形態の変形例7に係る封止栓の構成を示す断面図
【図15】本発明の実施の形態3に係る封止栓を用いた二次電池の模式的分解斜視図
【図16A】従来の技術における封止栓の構成を示す側面図
【図16B】従来の技術における封止栓の構成を示す斜視図
【図16C】従来の技術における封止栓の構成を示す断面図
【図17A】従来の技術における封止栓が貫通孔内に配置された状態を示す図
【図17B】従来の技術における封止栓の課題を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。又、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0040】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る封止栓10の構成を示す側面図である。
【0041】
図1に示すように、封止栓10は、壁部に形成された貫通孔を封止する封止栓であり、従来例同様、当該貫通孔の延伸方向に平行な中心軸Dから見て同心円を成すように形成される、例えばアルミニウム製の部材である。封止栓10は、フランジ部11と主軸部14とを備えており、主軸部14は、柱部12及び先端部13を備えている。
【0042】
フランジ部11は、従来例のフランジ部101同様、貫通孔を直接封止する円盤状の部位であり、柱部12の先端部13とは反対側(同図では上側)に接続されて配置されている。本実施の形態では、フランジ部11は、封止栓10が貫通孔を封止する際に壁部の壁面上に壁部から露出して配置される露出部である。なお、フランジ部11の形状は、円盤状には限定されず、矩形板状などであってもよい。又、フランジ部11は、特許請求の範囲に記載の「露出部」に包含される。
【0043】
主軸部14は、貫通孔内に配置される部位であり、軸(中心軸D)方向の長さが、封止栓10が貫通孔を封止する際の当該貫通孔の当該軸方向の長さ以下となるように形成されている。以下に、主軸部14が備える柱部12及び先端部13について、具体的に説明する。
【0044】
柱部12は、主軸部14のフランジ部11寄りである基端側(同図では上側)に配置される、貫通孔に挿入可能な程度の寸法を有する部位である。具体的には、柱部12は、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が円形状になるように形成されている。又、柱部12は、主軸部14の重心(同図の重心G)よりも先端部13からの距離が遠い位置に配置されている。具体的には、主軸部14の重心Gは、柱部12の外方(同図では下方)に配置されている。
【0045】
先端部13は、柱部12の先端部分に接続されて配置された円柱状の部位である。つまり、先端部13は、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が同一形状及び同一寸法の円形状を保ったまま延長されて形成されている。又、先端部13は、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状の大きさが、柱部12の先端の当該外縁形状の大きさ以下であるように形成されている。なお、図中において、先端部13の側端は角を落としてテーパ状に加工されたものとして示したが、この側端の形状は角を保持する、又は曲面にする等任意の形状であってもよい。
【0046】
次に、柱部12の詳細について説明する。図2A及び図2Bは、本発明の実施の形態1に係る封止栓10の構成を示す斜視図である。具体的には、図2Aは、フランジ部11の斜め上方から俯瞰した封止栓10の斜視図であり、図2Bは、先端部13の斜め下方から仰視した封止栓10の斜視図である。
【0047】
図1及び図2Aに示すように、フランジ部11の上面中央には、レーザ溶接時のマーカの役割を果たす、すり鉢状の凹み10aが設けられている。
【0048】
又、図1及び図2Bに示すように、柱部12は、先端部13とは反対側の端部に配置された、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が最も大きい太軸部12aを有している。本実施の形態では、太軸部12aは、柱部12の基端側(根元側)の端部となるフランジ部11との境界部分に配置された部位であり、主軸部14の中で径が最も太く、断面積が最も大きい部位である。又、太軸部12aは、封止栓10が貫通孔を封止する際に、当該貫通孔の開口端部に配置される部位である。
【0049】
又、柱部12は、先端側の端部となる、先端部13との境界部分が最も径が細くなっており、かつ、その側面が曲面として形成される概略円錐台状の形状を有している。
【0050】
すなわち、柱部12は、太軸部12aから先端部13に向かう方向に沿ってその外縁形状が小さくなる側面部12bを有している。本実施の形態では、側面部12bは、その全面において、主軸部14の軸方向に垂直な面における断面の外周長さの変化の割合が変化している。つまり、柱部12の外径は、フランジ部11寄りの太軸部12aから先端部13寄りの側に向かうに従って、徐々に変化の割合を変えながら、小さくなっている。従って、図1に示すように、柱部12の中心軸Dを含む平面における断面形状の輪郭は曲線として示される。
【0051】
又、太軸部12aの外径は貫通孔の内径とほぼ同一の寸法に設定されている。なお、太軸部12aの外径は当該貫通孔の内径よりも少し小さくてもよいし、太軸部12aを当該貫通孔に挿入できるのであれば、太軸部12aの外径は、当該貫通孔の内径よりも大きくてもかまわない。
【0052】
又、主軸部14の軸方向における長さは、柱部12より先端部13の方が長い。具体的には、中心軸Dを基準として、先端部13の高さは柱部12の高さの2倍程度となっている。
【0053】
又、太軸部12aの半径は、柱部12の先端部13とは反対側の端面の中心、又は太軸部12aと側面部12bとの境界面の中心と、先端部13の先端面とを結ぶ最長の直線距離より小さい。本実施の形態では、太軸部12aの半径は、主軸部14の全高、すなわち太軸部12aから先端部13の先端面までの距離より短くなっている。
【0054】
このような本実施の形態1に係る封止栓10は、主軸部14として、先端方向に向けて断面の外縁形状が小さくなる概略錐台状の柱部12を備えるとともに、柱部12の先端に更に先端部13を備えたことを特徴とする。
【0055】
以下、本実施の形態の封止栓10により、二次電池などの蓄電素子の金属製の容器の壁部200に開口された貫通孔210を封止する際の効果について、図3の(a)〜(c)の要部断面図を参照して説明する。図3は、本発明の実施の形態1に係る封止栓10が奏する効果を説明するための図である。
【0056】
図3の(a)に示すように、封止栓10においては、先端部13が柱部12の最も細い部分と同一の太さを有している。すなわち、先端部13は、必ず貫通孔210の内径よりも細い。このため、手又は治具で封止栓10を保持した状態にあっても、先端部13を貫通孔210内に位置自在に挿入することが可能であり、かつ、柱部12の変位を拘束する役割を果たす。ここで、貫通孔210は、例えば、電解液を蓄電素子の容器の内部に注入するための注液孔であり、封止栓10は、当該注液孔を塞ぐ注液栓である。
【0057】
この状態で封止栓10を貫通孔210の延伸方向に向けて更に挿入すると、図3の(b)に示すように、貫通孔210の開口端部である縁部211に柱部12の側面が接触する。柱部12の側面は曲面なので、縁部211がこの側面を滑りながら、柱部12は貫通孔210の奥に導かれる。柱部12の先端部分から根元部分までの部分も、先端部13と同様に貫通孔210の内径よりも十分小さな外径を有するため、挿入の中途においては、柱部12及び先端部13は、貫通孔210内では姿勢が自在に変化する。このため、封止栓10は、その外径が貫通孔210の内径にほぼ等しい柱部12の根元部分、すなわち太軸部12aが貫通孔210に嵌合するまで挿入される。
【0058】
最終的には、図3の(c)に示すように、柱部12が貫通孔210に太軸部12aで嵌合し、フランジ部11によって貫通孔210が完全に覆われることとなり、封止栓10の貫通孔210への仮固定が完成する。当該仮固定の完成時には、封止栓10は、その中心軸Dが貫通孔210の延伸方向に平行となった、正規の姿勢を保っている。
【0059】
以上のように、本実施の形態1の封止栓10によれば、主軸部14は、柱部12の太軸部12aから先端部13にかけて断面の外縁形状が小さくなるような形状を有している。つまり、主軸部14として、側面が曲面として形成される概略錐台状の柱部12、及び柱部12から延伸する先端部13を備えている。これにより、主軸部14を貫通孔210内に挿入しやすく、正規の姿勢を保持した状態で封止栓10を仮固定することができる。このため、封止栓10の貫通孔210への安定した取り付けが可能となる。
【0060】
又、主軸部14は、太軸部12aから先端部13に向けて外周長さの変化の割合が変化している形状を有している、つまり、柱部12の側面は曲面として形成されている。このため、主軸部14の貫通孔210内への挿入時における封止栓10と貫通孔210の内部又は縁部211との接触に起因するコンタミネーションの発生も抑制することができる。
【0061】
又、封止栓10は、貫通孔210を封止する際に、フランジ部11が壁部200の壁面上に露出して配置されるため、封止栓10を貫通孔210内に挿入しやすく、封止栓10を貫通孔210に安定して取り付けることができる。
【0062】
又、外縁形状が最も大きい太軸部12aが貫通孔210の縁部211に配置されるため、主軸部14を貫通孔210内に挿入する際に、主軸部14が縁部211に接触してコンタミネーションが発生するのを抑制することができる。
【0063】
又、主軸部14は、柱部12より先端部13の方が長いように構成されているため、封止栓10を貫通孔210内に挿入する際に、封止栓10の姿勢を速やかに正規の姿勢に移行させることができる。
【0064】
又、主軸部14の長さは貫通孔210の長さ以下であるため、貫通孔210の下面から主軸部14が突き出るようなことが無く、壁部200下の収納スペースに、封止栓10を侵入させないようにすることができる。
【0065】
又、太軸部12aの半径は、柱部12の基端側の端面の中心、又は太軸部12aの側面部側の端面の中心と、先端部13の先端面との最長距離より小さい。具体的には、封止栓10は、柱部12を含めた主軸部14の長さが、太軸部12aの半径より大きくなっている。このため、封止栓10を貫通孔210内に挿入する際に、貫通孔210の延伸方向に対して封止栓10が過度に傾くのを防ぐとともに、貫通孔210内で封止栓10が軸まわりに回転することが抑制される。これにより、より安定した姿勢で、封止栓10を貫通孔210内に挿入することができる。
【0066】
なお、上記の説明においては、図3の(b)に示す状態では、手又は治具で封止栓10を保持しながら挿入を行うものとした。しかし、この状態で封止栓10の保持を解除した場合であっても、先端部13の重量により柱部12は貫通孔210の奥へ沈降するとともに、柱部12の側面が貫通孔210の縁部211を滑りつつ、柱部12周囲の根元部分が縁部211に嵌り込む。このため、図3の(c)に示す仮固定の状態は、挿入した場合と同様に実現されることになる。特にこの場合、図1に示すように、主軸部14の重心Gは、太軸部12aを含む柱部12よりも先端部13寄り(同図では下側)に配置されているため、封止栓10を貫通孔210内に挿入する際に、封止栓10の姿勢を速やかに正規の姿勢に移行させることができ、好適である。
【0067】
又、上記の説明においては、太軸部12aの半径は、主軸部14の全高、すなわち太軸部12aから先端部13の先端面までの距離より短いものとした。しかし、図1に示すように、太軸部12aの中心C1から先端部13の先端の端面を結ぶ直線の内、最長の距離である直線L1より短ければ、傾斜や軸まわりの回転を抑制する効果は十分に得られる。
【0068】
又、上記の説明においては、側面部12bに形成された面は、断面の外周長さの変化の割合が変化している曲面であるものとした。しかし、側面部12bに形成された面は、当該外周長さの変化の割合が一定な面であってもよい。つまり、柱部12の中心軸を含む面における断面形状の輪郭が、傾斜した直線で示されるような形状であってもかまわない。これによっても、主軸部14を貫通孔210内に挿入しやすく、封止栓10の貫通孔210への安定した取り付けが可能となるという効果は得られる。
【0069】
又、主軸部14が備える柱部12及び先端部13の断面の外縁形状は円形状には限定されず、楕円形状や矩形状などであってもかまわない。
【0070】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る封止栓20は、実施の形態1の封止栓10の構成において、柱部が、筒状の側面厚みのある太軸部が形成されたものであることを特徴とする。
【0071】
図4は、本発明の実施の形態2に係る封止栓20の構成を示す側面図であり、図5A及び図5Bは、本発明の実施の形態2に係る封止栓20の構成を示す斜視図である。具体的には、図5Aは、フランジ部21の斜め上方から俯瞰した封止栓20の斜視図であり、図5Bは、先端部23の斜め下方から仰視した封止栓20の斜視図である。
【0072】
図4及び図5Bに示すように、封止栓20は、実施の形態1のフランジ部11と同様の外形寸法を有するフランジ部21と、柱部12の曲面と同様の曲面を有する柱部22と、柱部22から延伸する先端部23とを備えている。
【0073】
ここで、柱部22においては、フランジ部21寄りの側には円筒形の太軸部22aが形成されており、先端部23寄りの側には曲面を有する側面部22bが形成されている。すなわち、柱部22は、フランジ部21から同一外径の太軸部22aで延伸した後、側面部22bにより断面積を徐々に小さくし、先端部23へと連続した構成を有する。
【0074】
このように、太軸部22aは、柱部22の先端部23とは反対側の端部と側面部22bの端部との間に亘って筒状に形成されている。又、柱部22の、先端部23とは反対側の端部と側面部22bの端部との間の部位の外形状(太軸部22aの外形状)は、貫通孔の内形状に対応している。つまり、太軸部22aの外径は貫通孔の内径とほぼ同一の寸法に設定されている。又、太軸部22aと側面部22bとの高さ(主軸部24の軸方向における長さ)は、ほぼ同一である。
【0075】
又、図4及び図5Aに示すように、フランジ部21の上面中央には、実施の形態1の凹み10aと同様、すり鉢状の凹み20aが設けられている。
【0076】
実施の形態1と同様、封止栓20の各部は、貫通孔の延伸方向に沿った中心軸Dから見て同心円を成すように形成される金属製の部材である。先端部23は、柱部22の先端部分の断面形状を保ったまま延長される円柱状の形状を有するが、その高さは柱部22の高さより低い。
【0077】
従って、封止栓20における主軸部24は、柱部22の円筒状の太軸部22aが最も太く、側面部22bを経て徐々に細く変化し、更に柱部22の先端部23寄りの側端及び先端部23が最も細い構成となっている。なお、図中において、先端部23の側端は角を落としてテーパ状に加工されたものとして示したが、この側端の形状は角を保持する、又は曲面にする等任意の形状であってもよい。
【0078】
次に、本実施の形態の封止栓20により、二次電池などの蓄電素子の金属製の容器の壁部200に開口された貫通孔210を封止する工程において得られる効果について、図6の(a)〜(d)の要部断面図を参照して説明する。図6は、本発明の実施の形態2に係る封止栓20が奏する効果を説明するための図である。
【0079】
図6の(a)に示すように、封止栓20は、貫通孔210の内径より十分に細い先端部23、及び柱部22の先端部分が、貫通孔210内にて位置自在となるように挿入される。ここで、貫通孔210は、例えば、電解液を蓄電素子の容器の内部に注入するための注液孔であり、封止栓20は、当該注液孔を塞ぐ注液栓である。
【0080】
そして、封止栓20を貫通孔210に更に挿入すると、図6の(b)に示すように、貫通孔210の開口端部である縁部211に柱部22の側面部22bが接触し、実施の形態1の封止栓10と同様、縁部211が側面部22bを滑りながら、柱部22は貫通孔210の奥に導かれる。
【0081】
そして、封止栓20の貫通孔210への挿入を続けると、図6の(c)に示すように、封止栓20は、貫通孔210の内径とほぼ同一の太さである太軸部22aにて貫通孔210に嵌合し、中心軸Dが貫通孔210の延伸方向と平行になった、正規の姿勢で安定する。なお、太軸部22aの外径は貫通孔210の内径よりも少し小さくてもよいし、太軸部22aを貫通孔210に挿入できるのであれば、太軸部22aの外径は、当該貫通孔の内径よりも大きくてもかまわない。
【0082】
更に封止栓20の貫通孔210への挿入を続けると、図6の(d)に示すように、封止栓20は、正規の姿勢を保ちつつ、太軸部22aと貫通孔210の内壁とが面接触した状態で、沈降する。そして、フランジ部21が壁部200の表面に当接して貫通孔210は覆われ、封止栓20の貫通孔210への仮固定が完成する。
【0083】
このように、本実施の形態2の封止栓20によれば、実施の形態1と同様、主軸部24として柱部22及び先端部23を備えたことで、正規の姿勢を維持した状態で封止栓を安定して取り付けることが可能となる。
【0084】
更に、本実施の形態2によれば、柱部22を、円筒状の太軸部22aと側面部22bとから構成し、太軸部22aの外形状を貫通孔210の内形状に対応した形状とした。これにより、太軸部22aが貫通孔210に嵌め込まれることで、貫通孔210と封止栓20とをより強固に結合した仮固定を実現できる。
【0085】
これは、以下の利点を有する。すなわち、貫通孔に嵌め込まれ仮固定された封止栓は、最終的にはレーザ溶接により完全に容器に固定される。しかし、レーザ溶接の出力が大きいと、レーザ光の照射により溶融した容器、封止栓又は溶接棒の蒸散の勢いで封止栓が貫通孔から浮き上がる等、封止栓の姿勢が仮固定の状態から変化する、更には貫通孔から剥離してしまう等の恐れがある。これを防ぐため、従来の工程においては、出力を弱めたレーザ溶接により封止栓を容器に固定する、いわゆる仮打ちの工程を必要としていた。
【0086】
これに対し、本実施の形態2の封止栓20は、太軸部22aが貫通孔210に嵌合しているため、大出力のレーザ光に抗して仮固定時の位置を保持することができる。その結果、仮打ちの工程を省略して、電池の生産性を向上することが可能となる。なお、上記の説明においては、中心線Dを基準として、太軸部22aと側面部22bとの高さはほぼ同一であるとしたが、高さは不均等であるとしてもよい。しかしながら、両方をほぼ同一とした場合は、仮固定の安定性と、貫通孔への嵌合の双方の効果のバランスがとれ、より好適である。
【0087】
又、上記の説明においては、太軸部22aは、その断面形状が中心軸Dに対して同一形状である、円筒状の部位であるとした。しかし、太軸部22aの構成はこれに限定されるものではなく、太軸部22aの断面形状は、貫通孔210の延伸方向に直交する断面形状に対応したものであればよい。すなわち、貫通孔210の断面形状が円形ではなく楕円、長円、多角形等であれば、太軸部22aの断面形状もこれらに対応した各種筒形の形状であってもよい。
【0088】
特に貫通孔210の断面形状が楕円や長円の場合であれば、柱部22は、太軸部22aのみならず、側面部22bの断面形状も、貫通孔210の断面形状に対応させるようにしてもよい。又、先端部23の断面形状も、貫通孔210の断面形状に対応させるようにしてもよい。この柱部22及び先端部23の断面形状の変形例は、実施の形態2の封止栓20のみならず、実施の形態1の封止栓10においても適用することができる。
【0089】
(変形例1)
更に、貫通孔210の断面形状が変化する場合でも、これに追従して断面形状を変化させた柱部を備えた構成も本発明に含まれる。その一例を図7A及び図7Bに示す。図7Aは、本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓30の構成を示す側面図であり、図7Bは、本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓30の構成を示す斜視図である。
【0090】
図7Aの側面図及び図7Bの仰視斜視図に示す封止栓30は、実施の形態1の封止栓10の変形例である。封止栓10と同様、封止栓30において、主軸部34は、フランジ部31との境界に形成された太軸部32cと側面部32dとを有する柱部32を備えている。
【0091】
そして、側面部32dは、先端部33寄りの側に、封止栓10の側面部12bが有する曲面と同様の曲面32aを有し、太軸部32c寄りの側に、テーパ面32bを有している。
【0092】
すなわち、柱部32は、中心軸Dに直交する面での断面積が、先端部33との境界部分において最も小さく、かつフランジ部31との境界部分である太軸部32cにおいて最も大きい構成となっている点においては封止栓10と同様であるが、中心軸Dの延伸方向を基準とした外径の変化の仕方が、曲面32aとテーパ面32bとで異なっている。
【0093】
つまり、曲面32aは、中心軸Dに沿った位置の変化に応じて外径の変化の割合が変化し、図7Aに示すように、側面図における輪郭は曲線として示される。これに対し、テーパ面32bは、中心軸Dに沿った位置の変化に応じた外径の変化の割合は一定であり、同図に示される輪郭は直線として示される。
【0094】
一方で、フランジ部31の寸法及び形状は上記各実施の形態の封止栓10、20のフランジ部11、21と同一であり、柱部32及び先端部33のそれぞれの外形的特徴である曲面及び円柱形状も、上記封止栓10、20の柱部12、22及び先端部13、23と共通している。
【0095】
以上のような構成を有する封止栓30は、図8の(a)〜(c)の各図に示すように、断面がテーパ状の貫通孔220に好適な構成である。図8は、本発明の実施の形態の変形例1に係る封止栓30が奏する効果を説明するための図である。
【0096】
同図に示すように、上記各実施の形態の場合と同様、封止栓30は、貫通孔220内に先に先端部33が挿入される。なお、貫通孔220は、例えば、電解液を蓄電素子の容器の内部に注入するための注液孔であり、封止栓30は、当該注液孔を塞ぐ注液栓である。そして、貫通孔220の縁部221に、柱部32の曲面32aが先に接触しつつ、次いでテーパ面32bが貫通孔220に嵌り込む。これにより、封止栓30は、中心軸Dが貫通孔220の延伸方向に平行な正規の姿勢で、貫通孔220に仮固定される。
【0097】
このように、柱部32の構成は、封止栓30が封止する貫通孔220の形状に対応したものであれば任意の形状であってよく、各種の貫通孔の形状に適応して本発明の効果を発揮することが可能となる。
【0098】
上記の各実施の形態においては、柱部12及び22はいずれも、側面部12b及び22bが全て、中心軸Dに沿った位置の変化に応じた外径の変化の割合が変化する曲面であったのに対し、上述した変形例1では、側面部32dの一部が、断面積の変化の割合が一定なテーパ面として形成されるものである。
【0099】
(変形例2)
更に他の一例を図9A及び図9Bに示す。図9Aは、本発明の実施の形態の変形例2に係る封止栓40の構成を示す側面図であり、図9Bは、本発明の実施の形態の変形例2に係る封止栓40の構成を示す斜視図である。
【0100】
図9Aの側面図及び図9Bの仰視斜視図に示す封止栓40は、実施の形態2の封止栓20の変形例である。封止栓20と同様、封止栓40において、主軸部44は、フランジ部41との境界に形成された円筒形の太軸部42aと側面部42bとを有する柱部42を備えている。
【0101】
側面部42bは、太軸部42a寄りの側に曲面42b1を有し、先端部43寄りの側にテーパ面42b2を有している。曲面42b1は、太軸部42aに近い側が一番太く、テーパ面42b2に近い側が一番細い曲面となっている。つまり、側面部42bは、少なくとも一部の面において、主軸部44の軸方向に垂直な面における断面の外周長さの変化の割合が変化している。
【0102】
したがって、柱部42全体としては、曲面42b1からテーパ面42b2に向かうに連れて、その外径は徐々に小さくなっており、実施の形態2と同様、先端部43及び柱部42は、貫通孔内で位置自在に挿入可能な寸法を維持している。なお、図中においては、比較のため、実施の形態2の柱部22の輪郭を点線により示した。
【0103】
柱部42において、側面部42bの最も径が太い部分であるフランジ部41寄りの側は、図6の(a)及び(b)等に示した実施の形態2の柱部22と同様に、封止栓40の配置に際して、貫通孔の縁部と接触する可能性が高い部位である。従って、柱部42は、少なくともこの部位を、外径の変化の割合が変化する曲面として構成することにより、接触に伴うコンタミネーションの発生を抑制するとともに、先端部43及び柱部42の貫通孔への挿入をスムーズに行うことを可能としている。
【0104】
なお、柱部42を含む封止栓40は、実施の形態2の封止栓20に基づくものとしたが、実施の形態1の封止栓10に適用してもよい。又、上記の説明においては、太軸部42a寄りの側が曲面42b1として形成され、先端部43寄りの側がテーパ面42b2としたが、曲面とテーパ面との関係は逆にしてもよい。又、他の実施の形態と同様、図中において先端部43の側端は角を落としてテーパ状に加工されたものとして示したが、この側端の形状は角を保持する、又は曲面にする等任意の形状であってもよい。
【0105】
以上のように、柱部42は太軸部42aと曲面42b1とを有するものであればよいが、その曲面42b1の具体的な態様によって限定されるものではない。又、上記の説明においては、曲面42b1の曲面の変化は、柱部42の外径の変化に基づくものとしたが、これは柱部42の、貫通孔の延伸方向による断面形状が円形であることに基づくものであって、楕円形、長円形等のその他の形状において対応する場合は、当該断面形状の外周長さの変化と置きかえればよい。
【0106】
(変形例3)
又、各実施の形態において、フランジ部と柱部とは、太軸部を介することで直接結合されている構成であるとしたが、これに限定されるものではない。図10は、本発明の実施の形態の変形例3に係る封止栓50の構成を示す側面図である。
【0107】
同図に示すように、封止栓50は、柱部52と先端部53とを備え、柱部52は、太軸部52aと2つの側面部52b及び52cとを有している。ここで、側面部52bは、実施の形態2における側面部22bと同様の構成であり、側面部52cは、フランジ部51の直下に設けられた円錐台形状の側面を有する部位である。
【0108】
そして、側面部52cは、主軸部54の軸方向に垂直な面において、太軸部52aよりも小さな外縁形状(断面積)を有している。図中においては、比較のため、実施の形態2の太軸部22aの輪郭を点線により示した。なお、側面部52cは、フランジ部51と太軸部52aとの間に形成された、太軸部52aの断面積未満の断面を有する側面に相当するものである。
【0109】
つまり、柱部52は、柱部52の先端部53とは反対側の端部と太軸部52aとの間に形成された側面であって、主軸部54の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が太軸部52aの当該外縁形状よりも小さい側面を有している。
【0110】
このような構成であっても、主軸部54をなす先端部53及び柱部52は貫通孔内で位置自在に挿入可能であり、かつ柱部52には太軸部52aが形成されていることから、貫通孔との嵌合を確保することができ、かつ側面部52bと先端部53との作用により、実施の形態2の場合と同様の効果が得られる。
【0111】
(変形例4)
更に、実施の形態2においては、先端部23の高さは柱部22の高さより低いものとしたが、これに限定されない。図11は、本発明の実施の形態の変形例4に係る封止栓60の構成を示す側面図である。
【0112】
同図に示すように、実施の形態1と同様、当該高さが柱部62の側面部62bより高い先端部63を備えた封止栓60として構成してもよい。この場合も、主軸部64の重心Gを、太軸部62aを含む柱部62よりも下側に位置させることで、封止栓60の姿勢を速やかに正規の姿勢に移行させることができ、好適である。
【0113】
更に、実施の形態1の場合と同様、太軸部62aの半径を、主軸部64の全高より短くすることが望ましい。つまり、少なくとも、筒形の太軸部62aの上下各底面のうちの側面部62b寄りの面の中心C2から先端部63の先端の端面を結ぶ直線の内、最長の距離である直線L2より太軸部62aの半径が短ければ、傾斜や軸まわりの回転を抑制する効果を得ることができる。なお、図11の例に限らず、実施の形態2の封止栓20のように、太軸部が厚みを有する場合は、常に先端部寄りの中心を基準とすることで、上記傾斜や軸まわりの回転を抑制する効果が得られる。
【0114】
このように、太軸部62aの半径は、柱部62の先端部63とは反対側の端面の中心、又は太軸部62aと側面部62bとの境界面の中心と、先端部63の先端面とを結ぶ最長の直線距離より小さいのが好ましい。
【0115】
(変形例5)
更に、上記の各実施の形態及び各変形例においては、封止栓が貫通孔を封止する際に、フランジ部が壁部の壁面上に壁部から露出して配置されることとしたが、これに限定されない。図12は、本発明の実施の形態の変形例5に係る封止栓70の構成を示す側面図である。
【0116】
同図に示すように、壁部300には、段状の貫通孔310が形成されている。つまり、貫通孔310は、フランジ部71が挿入される径の大きい部分と、主軸部74が挿入される径の小さい部分とを有しており、封止栓70の全体が貫通孔310内に配置される。このように、封止栓70が貫通孔310を封止する際に、フランジ部11は、壁部300から露出することなく、貫通孔310内に配置されている。
【0117】
以上の構成によっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、同図では、封止栓70として、実施の形態1における封止栓10を図示したが、その他の実施の形態又は各変形例における封止栓に適用してもよい。
【0118】
(変形例6)
更に、上記の各実施の形態及び各変形例においては、封止栓はフランジ部を備えていることとしたが、封止栓はフランジ部を備えていなくともよい。図13は、本発明の実施の形態の変形例6に係る封止栓80の構成を示す側面図である。同図に示すように、封止栓80は、フランジ部を備えておらず、柱部82と先端部83とを有する主軸部84を備えており、主軸部84によって貫通孔310を封止する。
【0119】
以上の構成によっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、封止栓80の形状として、上記の実施の形態又は変形例における主軸部の形状を適用してもよい。
【0120】
(変形例7)
更に、上記の各実施の形態及び各変形例においては、封止栓は円柱形状の主軸部と円盤形状のフランジ部とを備えていることとしたが、封止栓は中に空洞が形成されていてもよい。図14は、本発明の実施の形態の変形例7に係る封止栓90の構成を示す断面図である。同図に示すように、封止栓90は、フランジ部91に貫通孔が形成され、主軸部94に凹形状の窪みが形成されている。
【0121】
なお、封止栓90に形成される空洞の形状は限定されず、例えば、封止栓90は、フランジ部91には貫通孔は形成されておらず、主軸部94のみに凹形状の窪み又は貫通孔が形成されているなどの構成でもかまわない。
【0122】
以上の構成によっても、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。なお、封止栓90の形状として、上記の実施の形態又は変形例における封止栓の形状を適用してもよい。
【0123】
要するに、本発明に係る封止栓は、主軸部が、柱部と、外縁形状が柱部以下である先端部とを有し、当該柱部が、外縁形状が最も大きい太軸部と、先端に向けて外縁形状が小さくなる側面部を有していればその効果を奏することができるものであって、他の部位の具体的な構成によって限定されるものではない。
【0124】
(実施の形態3)
図15は、本発明の実施の形態3に係る封止栓を用いた非水電解質二次電池の模式的な構成を示す分解斜視図である。
【0125】
同図に示すように、本実施の形態3に係る非水電解質二次電池110は、蓄電素子の一例であり、アルミニウム製の板状の蓋部111と開口112aを有する開口箱状の容器本体112とを有する電池容器を備え、その内部に発電要素112bを有している。
【0126】
容器本体112内に収納された発電要素112bは、帯状の電極である正極と負極とが、セパレータを介して長円筒形に巻回された構成を有する電極体である。巻回された状態において、正極及び負極は巻回軸方向において異なる方向に位置ずれして、正極及び負極の端部が発電要素112bの両端にそれぞれ位置するように配置される。更に、各電極の端部には活物質が担持されておらず、基材である金属箔が露出している。発電要素112bの両端部にそれぞれはみ出した金属箔には、導電性の金属板である、正極側及び負極側の集電接続体112c、112c´がそれぞれ接続される。
【0127】
一方、蓋部111の表面には、発電要素112bと電気的及び機械的に結合され、外部負荷と着脱自在に接続するための、正極側及び負極側の電極端子111a、111a´がそれぞれ設けられている。更に蓋部111の表面上には、実施の形態1又は2の貫通孔210又は220に相当する貫通孔111bが開口されている。
【0128】
このような非水電解質二次電池110の組み立ては、以下のように行われる。蓋部111の表面に電極端子111a及び111a´を固定し、さらに裏面から導電性の接続部材(図示省略)を介して集電接続体112c及び112c´と電極端子111a及び111a´とをそれぞれ接続して、蓋部111及び発電要素112bを一体的に組み合わせる。次いで、開口112aに発電要素112bを挿入するようにして蓋部111で容器本体112を密閉し、接合箇所を溶接することにより電池容器を完成する。
【0129】
更に、貫通孔111bを介して電解液を容器本体112の内部に注入し、電極端子111a、111a´を介して通電し予備反応を行わせた後に、封止栓113により貫通孔111bを封止して、非水電解質二次電池110を完成する。なお、封止栓113は電池容器と同様アルミニウム等の金属製であるが、電池容器よりも硬度の低いものを用いて作成することが望ましい。
【0130】
以上のような非水電解質二次電池110は、封止栓113として、実施の形態1、2の封止栓10〜90に例示される本発明の封止栓を用いることにより、組み立てに際して封止栓に関する工程の効率が高まるため、生産性の向上を実現できるという効果を有する。
【0131】
なお、上記の説明においては、貫通孔は壁部である蓋部111に設けられたものとしたが、容器本体112側の壁部に設けた構成としてもよい。電池の設計に応じて柔軟に対応することができる。
【0132】
なお、上記の説明においては、蓄電素子として、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池110を例示したが、電気化学反応により充放電可能な電池であれば、ニッケル水素電池その他各種の二次電池を用いてもよい。又、一次電池であってもよい。さらに電気二重層キャパシタのように、電気を直接電荷として蓄積する方式の素子であってもよい。要するに、本発明に係る蓄電素子は、電気を蓄積可能な素子であれば、その具体的な方式によって限定されるものではない。
【0133】
又、上記の説明においては、封止栓113が配置される容器は、蓋部111及び容器本体112から構成される蓄電素子の電池容器であることとしたが、燃料や薬品といった液体又は粉体を収蔵する容器に適用してもよい。要するに、封止栓によって封止される貫通孔が開口された壁部を有するものであれば、密閉された容器、開口を有する容器、又は平面又は曲面の板状の部材を対象としてもよく、その用途や材質、形状等によって限定されるものではない。
【0134】
又、上記の各実施の形態においては、封止栓はアルミニウム製であるとしたが、アルミニウム合金、銅、ステンレスその他任意の金属又は金属化合物を材料とするものであってもよい。更に、セラミック製や合成樹脂製であってもよく、その材料によって限定されるものではない。又、封止栓は、貫通孔が設けられる壁部とは異種材料であってもよい。
【0135】
要するに、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内であれば、以上説明したものを含め、上記各実施の形態に種々の変更を加えたものとして実施してもよい。又、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明は、容器に安定して取り付けることが可能な封止栓や当該封止栓を有する非水電解質二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0137】
10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、113 封止栓
10a、20a、30a、40a、50a、60a 凹み
11、21、31、41、51、61、71、91、101 フランジ部
12、22、32、42、52、62、82、102 柱部
13、23、33、43、53、63、83 先端部
14、24、34、44、54、64、74、84、94 主軸部
12a、22a、32c、42a、52a、62a 太軸部
12b、22b、32d、42b、52b、52c、62b 側面部
32a、42b1、103 曲面
32b、42b2 テーパ面
110 非水電解質二次電池
111 蓋部
111b、210、220、310 貫通孔
112 容器本体
112b 発電要素
200、300 壁部
211、221 縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に形成された貫通孔を封止する封止栓であって、
前記貫通孔内に配置される主軸部を備え、
前記主軸部は、
柱部と、
前記柱部の先端に接続されて配置され、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状の大きさが前記柱部の先端の外縁形状の大きさ以下である先端部とを有し、
前記柱部は、
前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が最も大きい太軸部と、
前記太軸部から前記先端部に向かう方向に沿ってその外縁形状が小さくなる側面部とを有する
封止栓。
【請求項2】
前記太軸部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部に配置されており、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際に前記貫通孔の開口端部に配置される
請求項1に記載の封止栓。
【請求項3】
前記太軸部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部と前記側面部の端部との間に亘って筒状に形成されている
請求項1又は2に記載の封止栓。
【請求項4】
前記側面部は、少なくとも一部の面において、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外周長さの変化の割合が変化している
請求項1から3のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項5】
さらに、
前記柱部の前記先端部とは反対側に接続されて配置され、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際に前記壁部の壁面上に前記壁部から露出して配置される露出部を備える
請求項1から4のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項6】
前記柱部の、前記先端部とは反対側の端部と前記側面部の端部との間の部位の外形状は、前記貫通孔の内形状に対応している
請求項1から5のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項7】
前記柱部は、前記主軸部の重心よりも前記先端部からの距離が遠い位置に配置されている
請求項1から6のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項8】
前記主軸部の軸方向における長さは、前記柱部より前記先端部の方が長い
請求項1から7のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項9】
前記主軸部の軸方向の長さは、前記封止栓が前記貫通孔を封止する際の前記貫通孔の当該軸方向の長さ以下である
請求項1から8のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項10】
前記太軸部の半径は、
前記柱部の前記先端部とは反対側の端面の中心、又は前記太軸部と前記側面部との境界面の中心と、
前記先端部の先端面と
を結ぶ最長の直線距離より小さい
請求項1から9のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項11】
前記柱部は、前記柱部の前記先端部とは反対側の端部と前記太軸部との間に形成された側面であって、前記主軸部の軸方向に垂直な面における断面の外縁形状が前記太軸部の当該外縁形状よりも小さい側面を有する
請求項1及び3から10のいずれか1項に記載の封止栓。
【請求項12】
開口を有する容器本体と、
前記開口を塞ぐ蓋部と、
前記容器本体内に収納される電極体と、
請求項1から11のいずれか1項に記載の封止栓とを備え、
前記容器本体又は前記蓋部は、貫通孔が形成された壁部を有し、
前記封止栓は、前記壁部に形成された貫通孔を封止している
蓄電素子。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17A】
image rotate

【図17B】
image rotate