射出成形機の設定データ管理方法
【課題】一般オペレータの知識不足やミス等により一部の成形条件に無用な変更が行われる不具合を回避し、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを防止する。
【解決手段】成形機コントローラに登録された成形条件に係わる複数の設定データを管理するに際し、登録された複数の設定データを表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データの変更を許可し、かつ複数の設定データに対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データに対応する設定項目(制限解除項目)の設定を許可するとともに、制限解除項目を設定画面(制限設定画面)により表示した際は、制限解除項目の変更のみを可能にする制限設定モードを設ける。
【解決手段】成形機コントローラに登録された成形条件に係わる複数の設定データを管理するに際し、登録された複数の設定データを表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データの変更を許可し、かつ複数の設定データに対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データに対応する設定項目(制限解除項目)の設定を許可するとともに、制限解除項目を設定画面(制限設定画面)により表示した際は、制限解除項目の変更のみを可能にする制限設定モードを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機コントローラに登録された複数の成形条件に係わる設定データを管理するための射出成形機の設定データ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機を稼動させる場合、良好な成形品を生産するため、予め成形条件を含む各種データ類を成形機コントローラに設定(登録)している。また、材料ロットの変更や外気温の変化等に応じた微妙な調整(変更)も必要になることから、一般オペレータは、必要に応じて設定画面により設定データの変更を行っているが、設定データには緻密に調整されたデータや安全性に係わるデータ等も含まれるため、一般オペレータの知識不足やミス等により無用な変更が行われた場合には、生産の継続に支障が生じる虞れもあり、このような無用な変更を回避するための対策も講じられている。
【0003】
従来、このような対策を講じた設定データの管理方法としては、既に、本出願人が提案した特許文献1で開示される射出成形機のシステムパラメータ設定方法が知られている。この設定方法は、システムパラメータの設定をディスプレイに表示される画面上で行う場合でも、ユーザによる安易な操作を防止し、システムパラメータの保護を図ることにより、無用なトラブルを回避するものであり、具体的には、射出成形機の基本状態を決定するシステムパラメータの全部又は一部を異なる複数のグループ、即ち、組立調整に係わるグループ,機械仕様に係わるグループ,動作設定に係わるグループに分類し、各パラメータを設定するための設定キーを、分類したグループの単位で画面に表示するとともに、パスワードの入力を条件に設定キーによる設定を許可するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−155066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における射出成形機のシステムパラメータ設定方法(設定データ管理方法)は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、システムパラメータ(設定データ)を、組立調整に係わるグループ,機械仕様に係わるグループ,動作設定に係わるグループに分類し、これらのグループ単位で設定制限を講じていたため、設定するグループ分け以外のケースに対しては有効に機能させることができない。例えば、動作設定に係わるグループに属する様々な性質を有する多数の成形条件に対しては有効に機能させることができず、結局、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の設定データに対する無用な変更により、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを招く虞れがある。
【0007】
第二に、ノウハウに基づき緻密に設定される成形条件のような設定データに対して、変更の許可又は制限を画一的に適用した場合、一般オペレータによる安易な操作を防止し、システムパラメータ等の保護を図るという目的は達成できるが、各設定データの性質を考慮することなく一律に変更の許可又は制限を行うことは、必要な成形条件を確保して生産を継続する観点からは、必ずしも望ましい対策であるとは言えず、制限の仕方の観点からは更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の設定データ管理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形機Mの設定データ管理方法は、上述した課題を解決するため、成形機コントローラ2に登録された成形条件に係わる複数の設定データD1…を管理するに際し、登録された複数の設定データD1…を表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する設定項目(制限解除項目)F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を設定画面(制限設定画面)Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、制限解除項目F1…を設定する際には、各制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して、変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可するとともに、制限設定画面Vxでは、設定データD1…の変更を変更範囲Z1…に制限することができる。また、変更範囲Z1…を設定する際には、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うための集合設定画面部Vssを表示することができるとともに、制限設定画面Vxでは、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を集約して行うための集合変更画面部Vscを表示することができる。さらに、制限設定画面Vxでは、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を行う際に、各制限解除項目F1…に対応する変更範囲Z1…を表示したテンキー入力表示部Wmを表示することができる。他方、制限設定画面Vxでは、制限解除項目F1…に対して当該制限解除項目F1…である旨の視覚的表示部Ep…を表示してもよいし、或いは制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にしてもよい。なお、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る射出成形機Mの設定データ管理方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する制限解除項目F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を制限設定画面Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたため、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の成形条件に無用な変更が行われる不具合を回避できる。したがって、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを防止できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、制限解除項目F1…を設定する際に、各制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して、変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可するとともに、制限設定画面Vxでは、設定データD1…の変更を変更範囲Z1…に制限すれば、例えば、重要性の高い成形条件では変更範囲Z1…を狭く設定し、重要性の低い成形条件では変更範囲Z1…を広く設定するなど、成形条件の性質(重要性)を考慮した柔軟な設定が可能になるため、一般オペレータであっても、より適切な成形条件に変更(設定)できる。
【0014】
(3) 好適な態様により、変更範囲Z1…を設定する際に、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うための集合設定画面部Vssを表示すれば、当該集合設定画面部Vssを利用して、全ての制限解除項目F1…における変更範囲Z1…を設定できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の制限解除項目を考慮して、より的確な設定を行うことができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を集約して行うための集合変更画面部Vscを表示すれば、当該集合変更画面部Vscを利用して、全ての制限解除項目F1…の設定データD1…を変更できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の設定データを考慮して、より的確な設定を行うことができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を行う際に、各制限解除項目F1…に対応する変更範囲Z1…を表示したテンキー入力表示部Wmを表示すれば、テンキー入力表示部Wmに表示される変更範囲Z1…を参考にして、各設定データD1…を変更できるため、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更範囲Z1…や重要性を考慮して、より適切な変更を容易に行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、制限解除項目F1…に対して当該制限解除項目F1…である旨の視覚的表示部Ep…を表示すれば、一般オペレータは、制限解除項目F1…であることを容易に確認できるとともに、他の設定データと対比するなどにより、制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を的確に行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にすれば、制限解除項目F1…のみを表示できるため、一般オペレータは、制限解除項目F1…の変更を確実かつ容易に行うことができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすれば、射出成形機Mを担当する一般オペレータの知識レベルや経験レベルに対応した適切な設定モードを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適実施形態に係る設定データ管理方法における制限設定モードの処理手順を示すフローチャート、
【図2】同設定データ管理方法を実施できる射出成形機の概要図、
【図3】同射出成形機に備える成形機コントローラのブロック系統図、
【図4】同設定データ管理方法に用いる成形機コントローラのディスプレイに表示される支援画面の表示図、
【図5】同ディスプレイに表示される管理モードウィンドウ表示図、
【図6】同ディスプレイに表示される制限設定画面の表示図、
【図7】同制限設定画面にウィンドウ表示されたテンキー入力表示部の表示図、
【図8】同制限設定画面にウィンドウ表示された設定キー表示部の表示図、
【図9】同ディスプレイに表示される集合設定画面部の表示図、
【図10】同ディスプレイに表示される他の制限設定画面の表示図、
【図11】同ディスプレイに表示される集合変更画面部(a)及びテンキー入力表示部(b)の表示図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る設定データ管理方法を実施できる射出成形機Mの構成について、図2〜図4を参照して説明する。
【0023】
図2中、仮想線で示すMは射出成形機であり、機台Mbと、この機台Mb上に設置された射出装置Mi及び型締装置Mcを備える。射出装置Miは、加熱筒11を備え、この加熱筒11の前端に図に現れない射出ノズルを有するとともに、加熱筒11の後部には材料を供給するホッパ12を備える。一方、型締装置Mcには可動型と固定型からなる金型13を備える。また、機台Mb上に起設した側面パネル14にはディスプレイユニット15を付設し、ディスプレイユニット15は機台Mbに内蔵する成形機コントローラ2(図3)に接続する。
【0024】
図3は、成形機コントローラ2のブロック系統図を示す。21はCPUであり、このCPU21には内部バス22を介してチップセット23を接続する。また、チップセット23には、PCIバス等のローカルバスを用いたバスライン24を接続してHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)制御系を構成する。このため、バスライン24には、RAM,ROM等の各種メモリ類を含む内部メモリ25を接続する。さらに、バスライン24には、表示インタフェース26を介して上述したディスプレイユニット15を接続するとともに、入出力インターフェイス27を介してメモリカード等の記憶メディア28に対する読出及び書込を行うドライブユニット29を接続する。この場合、ディスプレイユニット15は、タッチパネル15pを付設したカラー液晶ディスプレイ等のディスプレイ15dを備える。
【0025】
一方、チップセット23には、バスライン24と同様のバスライン30を接続してPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)制御系を構成する。このため、バスライン30には、スイッチ等の切換データDiをCPU21に付与し、かつCPU21から得る制御指令データDoを対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス31を接続するとともに、各種センサの検出信号Siを、アナログ−ディジタル変換してCPU21に付与し、かつCPU21から得る制御指令データをディジタル−アナログ変換して得た制御信号Soを対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス32を接続する。これにより、所定のフィードバック制御系及びオープンループ制御系が構成される。
【0026】
したがって、前述した内部メモリ25には、PLCプログラムとHMIプログラムを格納するとともに、各種処理プログラムを格納する。なお、PLCプログラムは、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等を実現するためのソフトウェアである。これらのソフトウェアは、成形機コントローラ2を搭載する射出成形機Mの固有アーキテクチャとして構築され、特に、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理を実行できる。
【0027】
また、ディスプレイ15dには、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理に対応して各種画面が表示される。図4は、ディスプレイ15dに表示された支援画面Vu上にパスワードの入力ウィンドウWiが表示された状態を示している。この場合、支援画面Vuの上段と下段には、画面を切換える複数の画面切換キーK1,K2…を表示する。この画面切換キーK1…は、使用頻度の高さを考慮してランク分けされ、上段に、「型開閉画面」切換キーK1,「エジェクタ画面」切換キーK2,「射出・計量画面」切換キーK3,「温度画面」切換キーK4,「モニタ画面」切換キーK5,「主要条件画面」切換キーK6,「条件切換画面」切換キーK7を有する成形機の動作条件の設定に係わる第一のグループGaを横一列に配するとともに、下段に、これ以外となる「操作スイッチ画面」切換キーK8,「工程監視画面」切換キーK9,「生産情報画面」切換キーK10,「波形画面」切換キーK11,「履歴画面」切換キーK12,図4に示す支援画面Vuを表示する「支援画面」切換キーK13を有する第二のグループGbを横一列に配する。各切換キーK1…は、支援画面Vuを他の画面に切換えた場合でも同じ位置に同じ形状で表示される。なお、Kcは第二階層画面に切換えるための切換キーを示す。
【0028】
次に、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理手順について、図1〜図7を参照して説明する。
【0029】
最初に、管理者が本実施形態に係る設定データ管理方法における制限設定モードを設定する処理手順について、図2〜図7を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】
まず、管理者は、「支援画面」切換キーK13をタッチして、図4に示す支援画面Vuをディスプレイ15dに表示する。この場合、管理者とは組織上の管理者ではなく、射出成形機Mを十分に使いこなすことができる射出成形機Mの管理者を意味する。また、支援画面Vuは、右下位置に「管理モード」キー41が表示されるため、「管理モード」キー41をタッチ(ON)する(ステップS1)。これにより、図4に示すように、支援画面Vu上にはパスワードを入力するための入力ウィンドウWiが表示されるとともに、不図示のテンキー入力ウィンドウが表示されるため、管理者のみが所有するパスワードを入力する(ステップS2)。なお、42は「OK」キー、43は「キャンセル」キーをそれぞれ示す。
【0031】
パスワードが認証されることにより、図5に示す管理モードウィンドウWcが表示される(ステップS3)。この管理モードウィンドウWcには、「項目設定モード」キー44を有するため、この「項目設定モード」キー44をタッチ(ON)する。これにより、図6に示す制限設定画面Vxが表示される(ステップS4,S5)。この制限設定画面Vxは、「射出・計量画面」切換キーK3をタッチしたときに表示される通常の射出・計量画面(設定画面)と内容的には同じであるが、通常の設定画面に対して、図6に示すように、画面全体を囲む赤色のライン枠45が表示される点、画面の左上に黄色地の欄に描いた文字「制限管理モード」46が表示される点、全ての設定項目が薄色で表示される点、が異なる。
【0032】
このように、制限設定画面Vxのデフォルト画面は、全ての設定項目が制限された状態にあるため、管理者は、この画面を用いて一般オペレータによる変更を可能にする設定項目を制限解除項目F1…として指定(設定)するとともに、この制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して変更を可能にする変更範囲Z1…を設定する。
【0033】
以下、具体的な設定方法を述べる。今、管理者は、一般オペレータによる変更を可能にする設定項目として、「V−P切換位置」を選定した場合を想定する。この場合、管理者は、まず、制限設定画面Vxに表示される「V−P切換位置」設定キー51をタッチ(ON)する(ステップS6)。なお、この設定キー51をはじめ、各設定キー51…は、基本的にキー機能と設定データD1…を表示する表示機能を兼ねている。したがって、V−P切換位置設定キー51の場合、設定キー51の上方に「V−P切換位置」(設定項目)が表示されるとともに、設定キー51のキー表面に設定データD1(例示は「8.0mm」)が表示されている。
【0034】
そして、「V−P切換位置」設定キー51をタッチすれば、図6に示すように、「V−P切換位置」設定キー51の周りに赤色のライン枠51zが表示されるとともに、「V−P切換位置」設定キー51が薄色から濃色(通常色)に切換わり、制限解除項目F1として設定される。この場合、表示されるライン枠51z及び濃色(通常色)の表示は、制限解除項目F1である旨を示す視覚的表示部Epとなる。このような視覚的表示部Epを表示すれば、一般オペレータは、制限解除項目F1であることを容易に確認できるとともに、他の設定データと対比するなどにより、制限解除項目F1における設定データD1の変更を的確に行える利点がある。
【0035】
また、制限設定画面Vx上には、図7に示すテンキー入力表示部Wmがウィンドウ表示される(ステップS7)。このテンキー入力表示部Wmは、項目表示部51a,テンキー入力部51b,最大範囲表示部51c(例示は「0.00〜112.00mm」),「設定許可」キー51d,設定範囲表示部51eを有する。この場合、設定範囲表示部51eには、最初に、工場出荷時のデフォルト値(最大範囲)が表示される。したがって、変更範囲Z1を設定せずに、最大範囲での変更を許可する場合には、そのまま「設定許可」キー51dをタッチ(ON)すればよい(ステップS8,S9)。これにより、制限解除項目F1として正規に設定され、テンキー入力表示部Wmは閉じられる。
【0036】
一方、テンキー入力表示部Wmを用いて、制限解除項目F1に対応する設定データD1に対して変更を可能にする変更範囲Z1を設定できる。変更範囲Z1を設定する際には、テンキー入力表示部Wmにおける設定範囲表示部51eの最小値表示部51esをタッチし、テンキー入力部51bにより最小値を入力するとともに、最大値表示部51emをタッチし、テンキー入力部51bにより最大値を入力する。これにより、最小値から最大値までの変更範囲Z1を設定できる(ステップS8,S10)。そして、変更範囲Z1の設定が終了したなら、「設定許可」キー51dをタッチ(ON)する(ステップS9)。これにより、テンキー入力表示部Wmは閉じられ、「V−P切換位置」に対する制限解除の処理は終了する(ステップS11)。したがって、一般オペレータは、「V−P切換位置」に対応する設定データD1を変更する際には、管理者により制限された変更範囲Z1においてのみ行うことができる。
【0037】
このように、制限解除項目F1を設定する際に、制限解除項目F1に対応する設定データD1に対して、変更を可能にする変更範囲Z1を設定可能にすれば、例えば、重要性の高い成形条件では変更範囲Z1…を狭く設定し、重要性の低い成形条件では変更範囲Z1…を広く設定するなど、成形条件の性質(重要性)を考慮した柔軟な設定が可能になるため、一般オペレータであっても、より適切な成形条件に変更できる利点がある。
【0038】
以上、制限解除項目F1に設定する設定項目として「V−P切換位置」を挙げて説明したが、他の設定項目F2…についても、任意に選定することにより同様に設定することができる(ステップS12,S6…)。図6は、他の設定項目F2…として、「充填速度」設定キー52により「充填速度(第一段目)」を制限解除項目F2に、「射出圧力」設定キー53により「射出圧力」を制限解除項目F3に、「保圧力」設定キー54により「保圧力(第一段目)」を制限解除項目F4に、それぞれ設定した場合を例示する。
【0039】
そして、設定した制限内容による制限設定モードを実行させる場合には、図5に示す「制限設定モード」キー47をタッチ(ON)する。これにより、成形機コントローラ2を制限設定モードにセットすることができる(ステップS13,S14)。この後、「終了」キー48をタッチすれば、管理モードウィンドウWcは閉じられ、制限設定モードの設定は終了する(ステップS15)。なお、制限設定モードにより設定した内容は、射出成形機Mの運転を停止しても登録が維持されるため、設定後、直ぐに制限設定モードにセットする必要はない。したがって、図5に示す「制限設定モード」キー47をOFFのまま、「終了」キー48をタッチすれば、制限設定モードにセットすることなく、通常設定モードを維持することができる(ステップS13,S15,S16)。通常設定モードは、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする設定モードである。このように、通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすれば、射出成形機Mを担当する一般オペレータの知識レベルや経験レベルに対応した適切な設定モードを選択できる利点がある。図5中、49は設定した制限解除項目F1…を一括してクリアする「クリア」キーを示す。
【0040】
他方、制限設定モードにセットした場合、設定データD1…に対する一般オペレータによる変更処理は次のように制限される。
【0041】
まず、射出・計量画面(設定画面)は、図6に示すように、制限設定画面Vxとして表示される。したがって、一般オペレータは、赤色のライン枠45と黄色地の欄に描いた文字「制限管理モード」46により、制限設定モードにセットされていることを知ることができるとともに、赤色のライン枠51z…により、自分で変更できる成形条件(制限解除項目F1…)はどの項目であるかを知ることができる。このため、必要に応じて、赤色のライン枠51z…が表示された各設定キー51…をタッチ(ON)し、各制限解除項目F1…の設定データD1…に対して設定された変更範囲Z1…に従って変更することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係る設定データ管理方法によれば、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する制限解除項目F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を制限設定画面Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたため、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の成形条件に無用な変更が行われる不具合を回避できる。したがって、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを防止できる。
【0043】
次に、本発明に係る設定データ管理方法における変更実施形態について、図8〜図11を参照して説明する。
【0044】
図8は、上述した制限解除項目F1…の対象とは性質の異なる設定データを示す。即ち、例示の場合、画面の左下に「ノズルタッチ成形」設定キー55を有するため、この「ノズルタッチ成形」設定キー55の切換操作を許可するか否かの設定を行うことができる。この場合、「ノズルタッチ成形」設定キー55をタッチすれば、図8に示す設定ウィンドウWsが表示されるため、「設定許可」キー56をタッチ(ON)し、この後、エンタキー57をタッチ(ON)することにより許可を確定できるとともに、設定ウィンドウWsは閉じられる。なお、58は閉キーを示す。このように、本発明(本実施形態)における設定データD1…には、成形工程における成形条件のみならず、このような「ノズルタッチ成形」を行うか否かの選択要素も成形条件(設定データ)に含まれる。その他、図8中、図6と同一部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図9は、管理者により、変更範囲Z1…を設定する際に、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うことができる集合設定画面部Vssを示す。したがって、この集合設定画面部Vssが表示されるのは、パスワードが認証されることが条件となる。例示の場合、六つの設定項目が一覧により表示されるため、例えば、管理者が、前述した「V−P切換位置」を選定した際には、設定範囲表示部61eの最小値表示部61esをタッチし、図示を省略したテンキー入力部により最小値を入力するとともに、最大値表示部61emをタッチし、同テンキー入力部により最大値を入力すれば、最小値から最大値までの変更範囲Z1を設定できる。そして、この後、「設定許可」キー61dをタッチ(ON)すれば設定は確定される。なお、この場合であっても、制限設定画面Vxは、前述した図6の場合と同様に表示される。また、他の設定項目に対しても、同様に設定することができる。このような集合設定画面部Vssを用いれば、当該集合設定画面部Vssを利用して、全ての制限解除項目F1…における変更範囲Z1…を設定できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の制限解除項目を考慮して、より的確な設定を行行える利点がある。
【0046】
図10は、制限設定画面Vxの表示方法を変更したものである。図6に示した制限設定画面Vxの場合、制限解除項目F1…である旨は視覚的表示部Ep…により知ることができるが、図10に示す制限設定画面Vxでは、制限解除項目F1…以外の設定項目(設定キー及び/又は設定データ)を非表示にしたものである。したがって、この場合、前述した設定キー51…の周りに表示するライン枠51zは設けない。また、設定キー51…の表示を薄色から濃色(通常色)に切換える処理も行わず、最初から濃色(通常色)で表示する。なお、例示の場合、画面全体を囲むライン枠45は緑色で表示するとともに、文字「制限管理モード」46を表示する欄の地の色も緑色とし、図6の表示方法と図10の表示方法を選択できるようにした。このように、制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にすれば、制限解除項目F1…のみを表示できるため、一般オペレータは、制限解除項目F1…の変更を確実かつ容易に行える利点がある。
【0047】
図11(a)は、一般オペレータが、各制限解除項目F1…の変更を集約して行うことができる集合変更画面部Vscを示す。この集合変更画面部Vscは、基本的に、図9に示した集合設定画面部Vssと同一の機能を有している。また、図11(b)は、集合変更画面部Vscに数値を入力するためのテンキー入力表示部Woを示す。例示の集合変更画面部Vscは、六つの設定項目F1…が一覧として表示される。したがって、例えば、一般オペレータが、前述した「V−P切換位置」を選定した際は、図11(a)に示す集合変更画面部Vscの「V−P切換位置」設定キー71をタッチ(ON)すれば、図11(b)に示すテンキー入力表示部Woが表示される。このテンキー入力表示部Woは、項目表示部71a,テンキー入力部71b,変更範囲表示部71c,閉キー71dを有する。特に、変更範囲表示部71cには、制限設定モードにより設定されている変更範囲Z1…が表示される。このため、一般オペレータは、この変更範囲Z1…を参考にして設定データD1…を変更できる。
【0048】
例示の場合、「V−P切換位置」は、制限されなければ、図6に示すように、「0.00〜112.00mm」の変更範囲となるが、図11(b)では、変更範囲Z1は、「7.5〜8.5mm」に制限されている。この場合、テンキー入力部71bにより、変更する数値を入力すれば、「V−P切換位置」設定キー71に表示される。また、設定が終了した後、閉キー71dをタッチすれば、テンキー入力表示部Woは閉じる。さらに、他の設定項目に係わる設定データD2…に対しても、同様の変更を行うことができる。このような集合変更画面部Vscを用いれば、当該集合変更画面部Vscを利用して、全ての制限解除項目F1…の設定データD1…を変更できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の設定データを考慮して、より的確な設定を行える利点がある。
【0049】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,配置,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。
【0050】
例えば、制限解除項目F1…の設定時に、各制限解除項目F1…に係わる設定データD1…に対して変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可する場合を示したが、必須の構成要素とするものではない。また、集合設定画面部Vss及び集合変更画面部Vscも必要により用いることができ、必須の構成要素ではない。さらに、通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にする場合を例示したが、制限設定モードであっても全て制限を解除できるため、通常設定モードも必須の構成要素ではない。なお、パスワード入力は、管理者の認証手段であり、その他、指紋読取りなど、認証できるものであれば、全てパスワード入力の概念に包含される。また、成形条件も例示の設定項目のみならず、必要により、型取り付け処理や自動パージ処理をはじめ、各種周辺機器における設定項目(設定データ)も管理対象に含ませることができる。さらに、設定データD1…は成形機コントローラ2に内蔵するか否かは問わない。即ち、外部の記憶メディア28に登録し、成形機コントローラ2に接続して使用する場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る設定データ管理方法は、成形機コントローラに登録された複数の成形条件に係わる設定データを管理する機能を備える各種射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
2:成形機コントローラ,M:射出成形機,D1…設定データ,Z1…:変更範囲,F1…:制限解除項目,Vx:制限設定画面,Vss:集合設定画面部,Vsc:集合変更画面部,Wm:テンキー入力表示部,Ep…:視覚的表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形機コントローラに登録された複数の成形条件に係わる設定データを管理するための射出成形機の設定データ管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機を稼動させる場合、良好な成形品を生産するため、予め成形条件を含む各種データ類を成形機コントローラに設定(登録)している。また、材料ロットの変更や外気温の変化等に応じた微妙な調整(変更)も必要になることから、一般オペレータは、必要に応じて設定画面により設定データの変更を行っているが、設定データには緻密に調整されたデータや安全性に係わるデータ等も含まれるため、一般オペレータの知識不足やミス等により無用な変更が行われた場合には、生産の継続に支障が生じる虞れもあり、このような無用な変更を回避するための対策も講じられている。
【0003】
従来、このような対策を講じた設定データの管理方法としては、既に、本出願人が提案した特許文献1で開示される射出成形機のシステムパラメータ設定方法が知られている。この設定方法は、システムパラメータの設定をディスプレイに表示される画面上で行う場合でも、ユーザによる安易な操作を防止し、システムパラメータの保護を図ることにより、無用なトラブルを回避するものであり、具体的には、射出成形機の基本状態を決定するシステムパラメータの全部又は一部を異なる複数のグループ、即ち、組立調整に係わるグループ,機械仕様に係わるグループ,動作設定に係わるグループに分類し、各パラメータを設定するための設定キーを、分類したグループの単位で画面に表示するとともに、パスワードの入力を条件に設定キーによる設定を許可するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−155066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における射出成形機のシステムパラメータ設定方法(設定データ管理方法)は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、システムパラメータ(設定データ)を、組立調整に係わるグループ,機械仕様に係わるグループ,動作設定に係わるグループに分類し、これらのグループ単位で設定制限を講じていたため、設定するグループ分け以外のケースに対しては有効に機能させることができない。例えば、動作設定に係わるグループに属する様々な性質を有する多数の成形条件に対しては有効に機能させることができず、結局、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の設定データに対する無用な変更により、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを招く虞れがある。
【0007】
第二に、ノウハウに基づき緻密に設定される成形条件のような設定データに対して、変更の許可又は制限を画一的に適用した場合、一般オペレータによる安易な操作を防止し、システムパラメータ等の保護を図るという目的は達成できるが、各設定データの性質を考慮することなく一律に変更の許可又は制限を行うことは、必要な成形条件を確保して生産を継続する観点からは、必ずしも望ましい対策であるとは言えず、制限の仕方の観点からは更なる改善の余地があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の設定データ管理方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形機Mの設定データ管理方法は、上述した課題を解決するため、成形機コントローラ2に登録された成形条件に係わる複数の設定データD1…を管理するに際し、登録された複数の設定データD1…を表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する設定項目(制限解除項目)F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を設定画面(制限設定画面)Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたことを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、制限解除項目F1…を設定する際には、各制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して、変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可するとともに、制限設定画面Vxでは、設定データD1…の変更を変更範囲Z1…に制限することができる。また、変更範囲Z1…を設定する際には、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うための集合設定画面部Vssを表示することができるとともに、制限設定画面Vxでは、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を集約して行うための集合変更画面部Vscを表示することができる。さらに、制限設定画面Vxでは、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を行う際に、各制限解除項目F1…に対応する変更範囲Z1…を表示したテンキー入力表示部Wmを表示することができる。他方、制限設定画面Vxでは、制限解除項目F1…に対して当該制限解除項目F1…である旨の視覚的表示部Ep…を表示してもよいし、或いは制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にしてもよい。なお、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような手法による本発明に係る射出成形機Mの設定データ管理方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する制限解除項目F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を制限設定画面Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたため、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の成形条件に無用な変更が行われる不具合を回避できる。したがって、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを防止できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、制限解除項目F1…を設定する際に、各制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して、変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可するとともに、制限設定画面Vxでは、設定データD1…の変更を変更範囲Z1…に制限すれば、例えば、重要性の高い成形条件では変更範囲Z1…を狭く設定し、重要性の低い成形条件では変更範囲Z1…を広く設定するなど、成形条件の性質(重要性)を考慮した柔軟な設定が可能になるため、一般オペレータであっても、より適切な成形条件に変更(設定)できる。
【0014】
(3) 好適な態様により、変更範囲Z1…を設定する際に、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うための集合設定画面部Vssを表示すれば、当該集合設定画面部Vssを利用して、全ての制限解除項目F1…における変更範囲Z1…を設定できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の制限解除項目を考慮して、より的確な設定を行うことができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を集約して行うための集合変更画面部Vscを表示すれば、当該集合変更画面部Vscを利用して、全ての制限解除項目F1…の設定データD1…を変更できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の設定データを考慮して、より的確な設定を行うことができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を行う際に、各制限解除項目F1…に対応する変更範囲Z1…を表示したテンキー入力表示部Wmを表示すれば、テンキー入力表示部Wmに表示される変更範囲Z1…を参考にして、各設定データD1…を変更できるため、各制限解除項目F1…における設定データD1…の変更範囲Z1…や重要性を考慮して、より適切な変更を容易に行うことができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、制限設定画面Vxにおいて、制限解除項目F1…に対して当該制限解除項目F1…である旨の視覚的表示部Ep…を表示すれば、一般オペレータは、制限解除項目F1…であることを容易に確認できるとともに、他の設定データと対比するなどにより、制限解除項目F1…における設定データD1…の変更を的確に行うことができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にすれば、制限解除項目F1…のみを表示できるため、一般オペレータは、制限解除項目F1…の変更を確実かつ容易に行うことができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすれば、射出成形機Mを担当する一般オペレータの知識レベルや経験レベルに対応した適切な設定モードを選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適実施形態に係る設定データ管理方法における制限設定モードの処理手順を示すフローチャート、
【図2】同設定データ管理方法を実施できる射出成形機の概要図、
【図3】同射出成形機に備える成形機コントローラのブロック系統図、
【図4】同設定データ管理方法に用いる成形機コントローラのディスプレイに表示される支援画面の表示図、
【図5】同ディスプレイに表示される管理モードウィンドウ表示図、
【図6】同ディスプレイに表示される制限設定画面の表示図、
【図7】同制限設定画面にウィンドウ表示されたテンキー入力表示部の表示図、
【図8】同制限設定画面にウィンドウ表示された設定キー表示部の表示図、
【図9】同ディスプレイに表示される集合設定画面部の表示図、
【図10】同ディスプレイに表示される他の制限設定画面の表示図、
【図11】同ディスプレイに表示される集合変更画面部(a)及びテンキー入力表示部(b)の表示図、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
まず、本実施形態に係る設定データ管理方法を実施できる射出成形機Mの構成について、図2〜図4を参照して説明する。
【0023】
図2中、仮想線で示すMは射出成形機であり、機台Mbと、この機台Mb上に設置された射出装置Mi及び型締装置Mcを備える。射出装置Miは、加熱筒11を備え、この加熱筒11の前端に図に現れない射出ノズルを有するとともに、加熱筒11の後部には材料を供給するホッパ12を備える。一方、型締装置Mcには可動型と固定型からなる金型13を備える。また、機台Mb上に起設した側面パネル14にはディスプレイユニット15を付設し、ディスプレイユニット15は機台Mbに内蔵する成形機コントローラ2(図3)に接続する。
【0024】
図3は、成形機コントローラ2のブロック系統図を示す。21はCPUであり、このCPU21には内部バス22を介してチップセット23を接続する。また、チップセット23には、PCIバス等のローカルバスを用いたバスライン24を接続してHMI(ヒューマン・マシン・インタフェース)制御系を構成する。このため、バスライン24には、RAM,ROM等の各種メモリ類を含む内部メモリ25を接続する。さらに、バスライン24には、表示インタフェース26を介して上述したディスプレイユニット15を接続するとともに、入出力インターフェイス27を介してメモリカード等の記憶メディア28に対する読出及び書込を行うドライブユニット29を接続する。この場合、ディスプレイユニット15は、タッチパネル15pを付設したカラー液晶ディスプレイ等のディスプレイ15dを備える。
【0025】
一方、チップセット23には、バスライン24と同様のバスライン30を接続してPLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)制御系を構成する。このため、バスライン30には、スイッチ等の切換データDiをCPU21に付与し、かつCPU21から得る制御指令データDoを対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス31を接続するとともに、各種センサの検出信号Siを、アナログ−ディジタル変換してCPU21に付与し、かつCPU21から得る制御指令データをディジタル−アナログ変換して得た制御信号Soを対応するアクチュエータに付与する入出力インターフェイス32を接続する。これにより、所定のフィードバック制御系及びオープンループ制御系が構成される。
【0026】
したがって、前述した内部メモリ25には、PLCプログラムとHMIプログラムを格納するとともに、各種処理プログラムを格納する。なお、PLCプログラムは、射出成形機Mにおける各種工程のシーケンス動作や射出成形機Mの監視等を実現するためのソフトウェアであり、HMIプログラムは、射出成形機Mの動作パラメータの設定及び表示,射出成形機Mの動作監視データの表示等を実現するためのソフトウェアである。これらのソフトウェアは、成形機コントローラ2を搭載する射出成形機Mの固有アーキテクチャとして構築され、特に、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理を実行できる。
【0027】
また、ディスプレイ15dには、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理に対応して各種画面が表示される。図4は、ディスプレイ15dに表示された支援画面Vu上にパスワードの入力ウィンドウWiが表示された状態を示している。この場合、支援画面Vuの上段と下段には、画面を切換える複数の画面切換キーK1,K2…を表示する。この画面切換キーK1…は、使用頻度の高さを考慮してランク分けされ、上段に、「型開閉画面」切換キーK1,「エジェクタ画面」切換キーK2,「射出・計量画面」切換キーK3,「温度画面」切換キーK4,「モニタ画面」切換キーK5,「主要条件画面」切換キーK6,「条件切換画面」切換キーK7を有する成形機の動作条件の設定に係わる第一のグループGaを横一列に配するとともに、下段に、これ以外となる「操作スイッチ画面」切換キーK8,「工程監視画面」切換キーK9,「生産情報画面」切換キーK10,「波形画面」切換キーK11,「履歴画面」切換キーK12,図4に示す支援画面Vuを表示する「支援画面」切換キーK13を有する第二のグループGbを横一列に配する。各切換キーK1…は、支援画面Vuを他の画面に切換えた場合でも同じ位置に同じ形状で表示される。なお、Kcは第二階層画面に切換えるための切換キーを示す。
【0028】
次に、本実施形態に係る設定データ管理方法の処理手順について、図1〜図7を参照して説明する。
【0029】
最初に、管理者が本実施形態に係る設定データ管理方法における制限設定モードを設定する処理手順について、図2〜図7を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0030】
まず、管理者は、「支援画面」切換キーK13をタッチして、図4に示す支援画面Vuをディスプレイ15dに表示する。この場合、管理者とは組織上の管理者ではなく、射出成形機Mを十分に使いこなすことができる射出成形機Mの管理者を意味する。また、支援画面Vuは、右下位置に「管理モード」キー41が表示されるため、「管理モード」キー41をタッチ(ON)する(ステップS1)。これにより、図4に示すように、支援画面Vu上にはパスワードを入力するための入力ウィンドウWiが表示されるとともに、不図示のテンキー入力ウィンドウが表示されるため、管理者のみが所有するパスワードを入力する(ステップS2)。なお、42は「OK」キー、43は「キャンセル」キーをそれぞれ示す。
【0031】
パスワードが認証されることにより、図5に示す管理モードウィンドウWcが表示される(ステップS3)。この管理モードウィンドウWcには、「項目設定モード」キー44を有するため、この「項目設定モード」キー44をタッチ(ON)する。これにより、図6に示す制限設定画面Vxが表示される(ステップS4,S5)。この制限設定画面Vxは、「射出・計量画面」切換キーK3をタッチしたときに表示される通常の射出・計量画面(設定画面)と内容的には同じであるが、通常の設定画面に対して、図6に示すように、画面全体を囲む赤色のライン枠45が表示される点、画面の左上に黄色地の欄に描いた文字「制限管理モード」46が表示される点、全ての設定項目が薄色で表示される点、が異なる。
【0032】
このように、制限設定画面Vxのデフォルト画面は、全ての設定項目が制限された状態にあるため、管理者は、この画面を用いて一般オペレータによる変更を可能にする設定項目を制限解除項目F1…として指定(設定)するとともに、この制限解除項目F1…に対応する設定データD1…に対して変更を可能にする変更範囲Z1…を設定する。
【0033】
以下、具体的な設定方法を述べる。今、管理者は、一般オペレータによる変更を可能にする設定項目として、「V−P切換位置」を選定した場合を想定する。この場合、管理者は、まず、制限設定画面Vxに表示される「V−P切換位置」設定キー51をタッチ(ON)する(ステップS6)。なお、この設定キー51をはじめ、各設定キー51…は、基本的にキー機能と設定データD1…を表示する表示機能を兼ねている。したがって、V−P切換位置設定キー51の場合、設定キー51の上方に「V−P切換位置」(設定項目)が表示されるとともに、設定キー51のキー表面に設定データD1(例示は「8.0mm」)が表示されている。
【0034】
そして、「V−P切換位置」設定キー51をタッチすれば、図6に示すように、「V−P切換位置」設定キー51の周りに赤色のライン枠51zが表示されるとともに、「V−P切換位置」設定キー51が薄色から濃色(通常色)に切換わり、制限解除項目F1として設定される。この場合、表示されるライン枠51z及び濃色(通常色)の表示は、制限解除項目F1である旨を示す視覚的表示部Epとなる。このような視覚的表示部Epを表示すれば、一般オペレータは、制限解除項目F1であることを容易に確認できるとともに、他の設定データと対比するなどにより、制限解除項目F1における設定データD1の変更を的確に行える利点がある。
【0035】
また、制限設定画面Vx上には、図7に示すテンキー入力表示部Wmがウィンドウ表示される(ステップS7)。このテンキー入力表示部Wmは、項目表示部51a,テンキー入力部51b,最大範囲表示部51c(例示は「0.00〜112.00mm」),「設定許可」キー51d,設定範囲表示部51eを有する。この場合、設定範囲表示部51eには、最初に、工場出荷時のデフォルト値(最大範囲)が表示される。したがって、変更範囲Z1を設定せずに、最大範囲での変更を許可する場合には、そのまま「設定許可」キー51dをタッチ(ON)すればよい(ステップS8,S9)。これにより、制限解除項目F1として正規に設定され、テンキー入力表示部Wmは閉じられる。
【0036】
一方、テンキー入力表示部Wmを用いて、制限解除項目F1に対応する設定データD1に対して変更を可能にする変更範囲Z1を設定できる。変更範囲Z1を設定する際には、テンキー入力表示部Wmにおける設定範囲表示部51eの最小値表示部51esをタッチし、テンキー入力部51bにより最小値を入力するとともに、最大値表示部51emをタッチし、テンキー入力部51bにより最大値を入力する。これにより、最小値から最大値までの変更範囲Z1を設定できる(ステップS8,S10)。そして、変更範囲Z1の設定が終了したなら、「設定許可」キー51dをタッチ(ON)する(ステップS9)。これにより、テンキー入力表示部Wmは閉じられ、「V−P切換位置」に対する制限解除の処理は終了する(ステップS11)。したがって、一般オペレータは、「V−P切換位置」に対応する設定データD1を変更する際には、管理者により制限された変更範囲Z1においてのみ行うことができる。
【0037】
このように、制限解除項目F1を設定する際に、制限解除項目F1に対応する設定データD1に対して、変更を可能にする変更範囲Z1を設定可能にすれば、例えば、重要性の高い成形条件では変更範囲Z1…を狭く設定し、重要性の低い成形条件では変更範囲Z1…を広く設定するなど、成形条件の性質(重要性)を考慮した柔軟な設定が可能になるため、一般オペレータであっても、より適切な成形条件に変更できる利点がある。
【0038】
以上、制限解除項目F1に設定する設定項目として「V−P切換位置」を挙げて説明したが、他の設定項目F2…についても、任意に選定することにより同様に設定することができる(ステップS12,S6…)。図6は、他の設定項目F2…として、「充填速度」設定キー52により「充填速度(第一段目)」を制限解除項目F2に、「射出圧力」設定キー53により「射出圧力」を制限解除項目F3に、「保圧力」設定キー54により「保圧力(第一段目)」を制限解除項目F4に、それぞれ設定した場合を例示する。
【0039】
そして、設定した制限内容による制限設定モードを実行させる場合には、図5に示す「制限設定モード」キー47をタッチ(ON)する。これにより、成形機コントローラ2を制限設定モードにセットすることができる(ステップS13,S14)。この後、「終了」キー48をタッチすれば、管理モードウィンドウWcは閉じられ、制限設定モードの設定は終了する(ステップS15)。なお、制限設定モードにより設定した内容は、射出成形機Mの運転を停止しても登録が維持されるため、設定後、直ぐに制限設定モードにセットする必要はない。したがって、図5に示す「制限設定モード」キー47をOFFのまま、「終了」キー48をタッチすれば、制限設定モードにセットすることなく、通常設定モードを維持することができる(ステップS13,S15,S16)。通常設定モードは、複数の設定データD1…を表示した設定画面により、制限することなく各設定データD1…の変更を可能にする設定モードである。このように、通常設定モードと制限設定モードを切換可能にすれば、射出成形機Mを担当する一般オペレータの知識レベルや経験レベルに対応した適切な設定モードを選択できる利点がある。図5中、49は設定した制限解除項目F1…を一括してクリアする「クリア」キーを示す。
【0040】
他方、制限設定モードにセットした場合、設定データD1…に対する一般オペレータによる変更処理は次のように制限される。
【0041】
まず、射出・計量画面(設定画面)は、図6に示すように、制限設定画面Vxとして表示される。したがって、一般オペレータは、赤色のライン枠45と黄色地の欄に描いた文字「制限管理モード」46により、制限設定モードにセットされていることを知ることができるとともに、赤色のライン枠51z…により、自分で変更できる成形条件(制限解除項目F1…)はどの項目であるかを知ることができる。このため、必要に応じて、赤色のライン枠51z…が表示された各設定キー51…をタッチ(ON)し、各制限解除項目F1…の設定データD1…に対して設定された変更範囲Z1…に従って変更することができる。
【0042】
このように、本実施形態に係る設定データ管理方法によれば、所定のパスワードが認証されることを条件に、複数の設定データD1…の変更を許可し、かつ複数の設定データD1…に対して、パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データD1…に対応する制限解除項目F1…の設定を許可するとともに、制限解除項目F1…を制限設定画面Vxにより表示した際は、制限解除項目F1…の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたため、一般オペレータの知識不足やミス等により一部の成形条件に無用な変更が行われる不具合を回避できる。したがって、成形不良の発生や稼動停止等のトラブルを防止できる。
【0043】
次に、本発明に係る設定データ管理方法における変更実施形態について、図8〜図11を参照して説明する。
【0044】
図8は、上述した制限解除項目F1…の対象とは性質の異なる設定データを示す。即ち、例示の場合、画面の左下に「ノズルタッチ成形」設定キー55を有するため、この「ノズルタッチ成形」設定キー55の切換操作を許可するか否かの設定を行うことができる。この場合、「ノズルタッチ成形」設定キー55をタッチすれば、図8に示す設定ウィンドウWsが表示されるため、「設定許可」キー56をタッチ(ON)し、この後、エンタキー57をタッチ(ON)することにより許可を確定できるとともに、設定ウィンドウWsは閉じられる。なお、58は閉キーを示す。このように、本発明(本実施形態)における設定データD1…には、成形工程における成形条件のみならず、このような「ノズルタッチ成形」を行うか否かの選択要素も成形条件(設定データ)に含まれる。その他、図8中、図6と同一部分には同一符号を付し、その構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図9は、管理者により、変更範囲Z1…を設定する際に、各制限解除項目F1…における当該変更範囲Z1…の設定を集約して行うことができる集合設定画面部Vssを示す。したがって、この集合設定画面部Vssが表示されるのは、パスワードが認証されることが条件となる。例示の場合、六つの設定項目が一覧により表示されるため、例えば、管理者が、前述した「V−P切換位置」を選定した際には、設定範囲表示部61eの最小値表示部61esをタッチし、図示を省略したテンキー入力部により最小値を入力するとともに、最大値表示部61emをタッチし、同テンキー入力部により最大値を入力すれば、最小値から最大値までの変更範囲Z1を設定できる。そして、この後、「設定許可」キー61dをタッチ(ON)すれば設定は確定される。なお、この場合であっても、制限設定画面Vxは、前述した図6の場合と同様に表示される。また、他の設定項目に対しても、同様に設定することができる。このような集合設定画面部Vssを用いれば、当該集合設定画面部Vssを利用して、全ての制限解除項目F1…における変更範囲Z1…を設定できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の制限解除項目を考慮して、より的確な設定を行行える利点がある。
【0046】
図10は、制限設定画面Vxの表示方法を変更したものである。図6に示した制限設定画面Vxの場合、制限解除項目F1…である旨は視覚的表示部Ep…により知ることができるが、図10に示す制限設定画面Vxでは、制限解除項目F1…以外の設定項目(設定キー及び/又は設定データ)を非表示にしたものである。したがって、この場合、前述した設定キー51…の周りに表示するライン枠51zは設けない。また、設定キー51…の表示を薄色から濃色(通常色)に切換える処理も行わず、最初から濃色(通常色)で表示する。なお、例示の場合、画面全体を囲むライン枠45は緑色で表示するとともに、文字「制限管理モード」46を表示する欄の地の色も緑色とし、図6の表示方法と図10の表示方法を選択できるようにした。このように、制限解除項目F1…以外の設定項目を非表示にすれば、制限解除項目F1…のみを表示できるため、一般オペレータは、制限解除項目F1…の変更を確実かつ容易に行える利点がある。
【0047】
図11(a)は、一般オペレータが、各制限解除項目F1…の変更を集約して行うことができる集合変更画面部Vscを示す。この集合変更画面部Vscは、基本的に、図9に示した集合設定画面部Vssと同一の機能を有している。また、図11(b)は、集合変更画面部Vscに数値を入力するためのテンキー入力表示部Woを示す。例示の集合変更画面部Vscは、六つの設定項目F1…が一覧として表示される。したがって、例えば、一般オペレータが、前述した「V−P切換位置」を選定した際は、図11(a)に示す集合変更画面部Vscの「V−P切換位置」設定キー71をタッチ(ON)すれば、図11(b)に示すテンキー入力表示部Woが表示される。このテンキー入力表示部Woは、項目表示部71a,テンキー入力部71b,変更範囲表示部71c,閉キー71dを有する。特に、変更範囲表示部71cには、制限設定モードにより設定されている変更範囲Z1…が表示される。このため、一般オペレータは、この変更範囲Z1…を参考にして設定データD1…を変更できる。
【0048】
例示の場合、「V−P切換位置」は、制限されなければ、図6に示すように、「0.00〜112.00mm」の変更範囲となるが、図11(b)では、変更範囲Z1は、「7.5〜8.5mm」に制限されている。この場合、テンキー入力部71bにより、変更する数値を入力すれば、「V−P切換位置」設定キー71に表示される。また、設定が終了した後、閉キー71dをタッチすれば、テンキー入力表示部Woは閉じる。さらに、他の設定項目に係わる設定データD2…に対しても、同様の変更を行うことができる。このような集合変更画面部Vscを用いれば、当該集合変更画面部Vscを利用して、全ての制限解除項目F1…の設定データD1…を変更できるため、画面切換頻度を低減し、設定の容易化及び能率化、更には利便性の向上を図れるとともに、他の設定データを考慮して、より的確な設定を行える利点がある。
【0049】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,配置,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。
【0050】
例えば、制限解除項目F1…の設定時に、各制限解除項目F1…に係わる設定データD1…に対して変更を可能にする変更範囲Z1…の設定を許可する場合を示したが、必須の構成要素とするものではない。また、集合設定画面部Vss及び集合変更画面部Vscも必要により用いることができ、必須の構成要素ではない。さらに、通常設定モードを設け、当該通常設定モードと制限設定モードを切換可能にする場合を例示したが、制限設定モードであっても全て制限を解除できるため、通常設定モードも必須の構成要素ではない。なお、パスワード入力は、管理者の認証手段であり、その他、指紋読取りなど、認証できるものであれば、全てパスワード入力の概念に包含される。また、成形条件も例示の設定項目のみならず、必要により、型取り付け処理や自動パージ処理をはじめ、各種周辺機器における設定項目(設定データ)も管理対象に含ませることができる。さらに、設定データD1…は成形機コントローラ2に内蔵するか否かは問わない。即ち、外部の記憶メディア28に登録し、成形機コントローラ2に接続して使用する場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る設定データ管理方法は、成形機コントローラに登録された複数の成形条件に係わる設定データを管理する機能を備える各種射出成形機に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
2:成形機コントローラ,M:射出成形機,D1…設定データ,Z1…:変更範囲,F1…:制限解除項目,Vx:制限設定画面,Vss:集合設定画面部,Vsc:集合変更画面部,Wm:テンキー入力表示部,Ep…:視覚的表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機コントローラに登録された成形条件に係わる複数の設定データを管理するための射出成形機の設定データ管理方法であって、登録された前記複数の設定データを表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、前記複数の設定データの変更を許可し、かつ前記複数の設定データに対して、前記パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データに対応する設定項目(制限解除項目)の設定を許可するとともに、前記制限解除項目を設定画面(制限設定画面)により表示した際は、前記制限解除項目の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたことを特徴とする射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項2】
前記制限解除項目を設定する際には、各制限解除項目に対応する設定データに対して、変更を可能にする変更範囲の設定を許可するとともに、前記制限設定画面では、前記設定データの変更を前記変更範囲に制限することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項3】
前記変更範囲を設定する際には、各制限解除項目における当該変更範囲の設定を集約して行うための集合設定画面部を表示することを特徴とする請求項2記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項4】
前記制限設定画面では、各制限解除項目における設定データの変更を集約して行うための集合変更画面部を表示することを特徴とする請求項2又は3記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項5】
前記制限設定画面では、各制限解除項目における設定データの変更を行う際に、各制限解除項目に対応する前記変更範囲を表示したテンキー入力表示部を表示することを特徴とする請求項2,3又は4記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項6】
前記制限設定画面では、前記制限解除項目に対して当該制限解除項目である旨の視覚的表示部を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項7】
前記制限設定画面では、前記制限解除項目以外の設定項目を非表示にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項8】
前記複数の設定データを表示した設定画面により、制限することなく各設定データの変更を可能にする通常設定モードを備え、当該通常設定モードと前記制限設定モードを切換可能にしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項1】
成形機コントローラに登録された成形条件に係わる複数の設定データを管理するための射出成形機の設定データ管理方法であって、登録された前記複数の設定データを表示した設定画面に対して、所定のパスワードが認証されることを条件に、前記複数の設定データの変更を許可し、かつ前記複数の設定データに対して、前記パスワードの認証を必要としない変更を可能にする個々の設定データに対応する設定項目(制限解除項目)の設定を許可するとともに、前記制限解除項目を設定画面(制限設定画面)により表示した際は、前記制限解除項目の変更のみを可能にする制限設定モードを設けたことを特徴とする射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項2】
前記制限解除項目を設定する際には、各制限解除項目に対応する設定データに対して、変更を可能にする変更範囲の設定を許可するとともに、前記制限設定画面では、前記設定データの変更を前記変更範囲に制限することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項3】
前記変更範囲を設定する際には、各制限解除項目における当該変更範囲の設定を集約して行うための集合設定画面部を表示することを特徴とする請求項2記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項4】
前記制限設定画面では、各制限解除項目における設定データの変更を集約して行うための集合変更画面部を表示することを特徴とする請求項2又は3記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項5】
前記制限設定画面では、各制限解除項目における設定データの変更を行う際に、各制限解除項目に対応する前記変更範囲を表示したテンキー入力表示部を表示することを特徴とする請求項2,3又は4記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項6】
前記制限設定画面では、前記制限解除項目に対して当該制限解除項目である旨の視覚的表示部を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項7】
前記制限設定画面では、前記制限解除項目以外の設定項目を非表示にすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【請求項8】
前記複数の設定データを表示した設定画面により、制限することなく各設定データの変更を可能にする通常設定モードを備え、当該通常設定モードと前記制限設定モードを切換可能にしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の射出成形機の設定データ管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−14106(P2013−14106A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149842(P2011−149842)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]