説明

射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法

【課題】曲射火器の射撃の効果を正確に判定することが可能な射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コンピュータ11において実行される射撃効果判定プログラムであって、記憶装置は、弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを記憶しており、演算処理装置に、弾丸の破裂点54における弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、取得した飛散破片数から弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップとを実行させることにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法に係り、特に目標に対する射撃の効果を判定する射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば射撃訓練を行う為の模擬訓練システムや射撃ゲームを行う為のアミューズメント施設では、仮想的に行った射撃の効果を判定可能な射撃効果判定装置を用いることにより射撃訓練や射撃ゲームのリアリティを高めている。ここでは、曲射火器を用いた模擬訓練システムの例を説明する。なお、射撃訓練に使用する曲射火器としては迫撃砲や榴弾砲が上げられる。目標としては人や車両が上げられる。
【0003】
なお、曲射火器を用いた模擬訓練システムは、例えば自衛隊や警察の行う実動訓練用の模擬訓練装置や、コンピュータ上で各種状況を設定し、状況判断、指揮統制訓練を行うシミュレータ等が上げられる。
【0004】
模擬訓練システムは実弾を発射する代わりに射撃諸元情報が入力され、その射撃諸元情報をもとに弾丸の破裂点を算出する。模擬訓練システムは、算出された破裂点の位置座標と目標の位置座標とをもとに目標の損耗の程度を判定し、目標の保持する無線機等に通知して状況を表示するものである。
【0005】
模擬訓練システムにおいては仮想的に行った射撃(模擬射撃)の効果、例えば曲射火器による損耗の程度を正確に判定することで、より実戦的な訓練が可能となる。また、射撃訓練は危険を伴わずに少ない補助員で行う必要がある。特許文献1〜4には、従来の模擬訓練システムの一例が記載されている。
【特許文献1】特開平7−146096号公報
【特許文献2】特開平7−159095号公報
【特許文献3】特願2005−189443号公報
【特許文献4】特願2005−189444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の模擬訓練システムでは、模擬射撃の破裂点及び目標の位置座標をもとに損耗範囲を算出しているが、実際の弾丸(実弾)の破裂による損耗範囲と、その損耗範囲における損耗発生確率を正確に算出することが以下の理由によりできなかった。
【0007】
実弾による損耗範囲は、弾丸の破裂により、破片が飛散することにより発生する。破片飛散のパターンは、弾丸の種類(例えば弾丸の形状)に応じて変わる。一般的な弾丸では弾丸の進行方向(弾丸方向)から60〜100度の方向に破片が飛散する。このため、実弾による損耗範囲は、弾丸の落下方向(落下方位)を軸としてチョウチョ型になる傾向がある。
【0008】
従来の模擬訓練システムは、模擬射撃の破裂点,目標の位置座標,曲射火器の種類,弾丸の種類から損耗範囲を算出しているため、破裂点と目標との距離を参照して曲射火器の種類や弾丸の種類に応じた損耗範囲を算出する程度であり、実弾による損耗範囲及び損耗発生確率を正確に模擬することができない。このため、従来の模擬訓練システムは曲射火器による射撃の効果を正確に判定できないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、曲射火器の射撃の効果を正確に判定することが可能な射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、記憶装置,演算処理装置を含むコンピュータにおいて実行される射撃効果判定プログラムであって、前記記憶装置は、弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを記憶しており、前記演算処理装置に、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップとを実行させる射撃効果判定プログラムであることを特徴とする。
【0011】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
上述の如く、本発明によれば、曲射火器の射撃の効果を正確に判定することが可能な射撃効果判定プログラム、射撃効果判定装置及び射撃効果判定方法を提供可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明していく。
【0014】
図1は、本発明による模擬訓練システムの一例の構成図である。図1の模擬訓練システム10は中央局11,1つ以上の曲射火器用無線機12,1つ以上の目標用無線機13が無線ネットワーク14を介してデータ通信可能に接続されている。
【0015】
曲射火器用無線機12には曲射火器の射撃諸元が入力される。曲射火器用無線機12は入力された射撃諸元の内容が含まれる射撃諸元情報を無線ネットワーク14経由で中央局11に通知する。
【0016】
目標用無線機13は目標である人や車両に取り付けられる。目標用無線機13は所定時間毎に位置情報を無線ネットワーク14経由で中央局11に通知する。中央局11は通知された曲射火器の射撃諸元情報と目標の位置情報とに基づき、後述するように曲射火器の射撃の効果(目標の損耗の程度)を判定する。中央局11は、射撃効果判定装置の一例である。目標用無線機13は無線ネットワーク14経由で中央局11から損耗の程度を通知されると、損耗の程度を表示や音で現示する。
【0017】
図2は、中央局の一例の構成図である。中央局11は、それぞれバスBで相互に接続されている入力装置21,出力装置22,ドライブ装置23,補助記憶装置24,主記憶装置25,演算処理装置26および無線装置27を含む構成である。
【0018】
入力装置21はキーボードやマウスなどで構成され、各種信号を入力するために用いられる。出力装置22はディスプレイ装置などで構成され、各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。無線装置27は、無線ネットワーク14に接続する為に用いられる。
【0019】
本発明の射撃効果判定プログラムは、中央局11を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。射撃効果判定プログラムは記録媒体28の配布によって提供される。射撃効果判定プログラムを記録した記録媒体28は、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0020】
また、射撃効果判定プログラムを記録した記録媒体28がドライブ装置23にセットされると、射撃効果判定プログラムは記録媒体28からドライブ装置23を介して補助記憶装置24にインストールされる。補助記憶装置24は、インストールされた射撃効果判定プログラムを格納すると共に、必要なファイル,データ等を格納する。後述する飛散破片数テーブル,補正テーブル,命中部位判定テーブル,破片の重量分布テーブル,メッシュ毎の高度情報は例えば補助記憶装置24に格納されている。
【0021】
主記憶装置25は、起動時に補助記憶装置24から射撃効果判定プログラムを読み出して格納する。そして、演算処理装置26は主記憶装置25に格納された射撃効果判定プログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0022】
図3は曲射火器用無線機の一例の構成図である。図3の曲射火器用無線機12は、制御部31,メモリ32,入力部33,表示部34,位置標定部35および無線部36を含む構成である。
【0023】
入力部33はキーボードやマウスなどで構成され、例えば操作者による曲射火器の射撃諸元の入力に利用される。表示部34はディスプレイ装置などで構成され、例えば操作者によって入力された曲射火器の射撃諸元の表示に利用される。位置標定部35は自機の位置情報を測位する。位置標定部35は例えばGPS受信器等が上げられる。無線部36は無線ネットワーク14に接続する為に用いられる。メモリ32は操作者によって入力された曲射火器の射撃諸元,位置標定部35によって測位された位置情報を記憶する。以下では操作者によって入力された曲射火器の射撃諸元及び位置標定部35によって測位された位置情報を合わせて曲射火器の射撃諸元情報と呼ぶ。
【0024】
制御部31は曲射火器用無線機12の全体制御を行うものである。制御部31は無線部36を制御し、メモリ32に記憶されている曲射火器の射撃諸元情報を中央局11に送信する。なお、図3の曲射火器用無線機12は外部から位置情報を受信できれば、位置標定部35が無い構成も可能である。
【0025】
また、図4は目標用無線機の一例の構成図である。図4の目標用無線機13は、制御部41,メモリ42,現示部43,位置標定部44および無線部45を含む構成である。
【0026】
位置標定部44は自機の位置情報を測位する。位置標定部44は例えばGPS受信器等が上げられる。メモリ42は、位置標定部44によって測位された自機の位置情報を記憶する。無線部45は無線ネットワーク14に接続する為に用いられる。制御部41は無線部45を制御し、メモリ42に記憶されている自機の位置情報を所定時間毎に中央局11へ送信する。
【0027】
また、制御部41は無線部45を介して、中央局11から曲射火器の射撃による損耗の程度を通知される。メモリ42は中央局11から通知された曲射火器の射撃による損耗の程度を記憶する。
【0028】
制御部41はメモリ42に記憶されている損耗の程度を現示するため、現示部43へ指示する。現示部43はLEDやスピーカ等で構成され、制御部41からの指示に応じて損耗の程度等を現示する。現示部43が行う現示とは、LEDによる発光、スピーカによる発音等を指す。なお、図4の目標用無線機13は外部から位置情報を受信できれば、位置標定部44が無い構成も可能である。また、現示部43を外部接続できるような構成としてもよい。
【0029】
図5は、本発明による模擬訓練システムの使用例を表したイメージ図である。曲射火器用無線機12は操作者によって曲射火器51の射撃諸元が入力される。曲射火器用無線機12は操作者によって入力された曲射火器51の射撃諸元及び位置標定部35によって測位された位置情報を射撃諸元情報として中央局11へ送信する。射撃諸元情報には、砲の位置,方位,仰角,曲射火器の種類,弾丸の種類,弾丸の質量,信管種類,破裂高度,発射時刻及び位置情報等が含まれる。
【0030】
目標用無線機13は目標52に取り付けられる。目標52としては、人や車両等が上げられる。ここでは、目標52が人の例を表している。目標用無線機13は位置標定部44によって測位された自機の位置情報を所定時間毎に中央局11へ送信する。自機の位置情報には、位置座標及び姿勢情報(立ち姿勢,中間姿勢,伏せ姿勢)が含まれる。
【0031】
中央局11は本発明による射撃効果判定プログラムを実装している。中央局11は受信した射撃諸元情報に基づき、模擬射撃の弾道53と破裂点54とを算出する。次に、中央局11は模擬射撃による損耗範囲と、その損耗範囲における損耗発生確率を後述するように算出する。
【0032】
中央局11は受信した目標52の位置情報に基づき、損耗範囲内に存在する目標52を検索し、その損耗範囲における損耗発生確率により損耗する目標52を抽出する。中央局11は抽出された損耗する目標52について、損耗部位(頭部,胴部,腕部,脚部)及び損耗の程度を算出し、損耗指示情報として損耗する目標52に取り付けられている目標用無線機13へ送信する。損耗指示情報を受信した目標用無線機13は、その損耗指示情報に基づき、損耗の部位,損耗の程度を現示部43により発光や発音等で現示する。
【0033】
図5の模擬訓練システム10では、中央局11,曲射火器用無線機12,目標用無線機13からなる構成を示したが、中央局11及び曲射火器用無線機12を統合した構成も可能である。また、図5の模擬訓練システム10では中央局11,曲射火器用無線機12及び目標用無線機13を統合して、1台のコンピュータにてシミュレーションを行い、指揮統制訓練に使用することも可能である。
【0034】
図6は射撃効果判定プログラムが実装された中央局の処理手順を表したフローチャートである。図7は弾丸の破裂点とメッシュとの関係を示したイメージ図である。中央局11はステップS1に進み、模擬射撃の弾道53を弾道計算により算出する。中央局11は射撃諸元情報として入手した砲の位置,方位,仰角,曲射火器の種類,弾丸の種類,弾丸の質量等を参照し、放物線式または修正質点弾道等の物理式で弾道53を計算する。
【0035】
なお、計算を省略するため、中央局11は射撃諸元情報として破裂点54の位置座標を入手しても構わない。破裂点54の位置座標を入手した場合、中央局11は曲射火器51の位置座標と破裂点54の位置座標とを結ぶ方向を落下方向(落下方位)とし、破裂点54における弾丸70の落下角度として予め登録された数値を使用する。
【0036】
ステップS2に進み、中央局11は弾道ベクトル71を算出する。ここでは、中央局11が例えばステップS1で算出した弾道53より弾道ベクトル71を3次元ベクトルで算出する。ステップS3に進み、中央局11は破裂点54を算出する。ここでは、中央局11が射撃諸元情報として入手した破裂高度と、ステップS1で算出した弾道53より破裂点54の3次元座標を算出する。
【0037】
ステップS4に進み、中央局11は破裂点54からの距離R73をメッシュ位置72毎に算出する。ここでは中央局11がステップS3で算出した破裂点54の3次元座標,対象となるメッシュ位置72の3次元座標に基づき、破裂点54からの3次元距離をメッシュ位置72ごとに算出する。
【0038】
ステップS5に進み、中央局11は破裂点54とメッシュ位置72とを結ぶベクトル75を算出する。ここでは、中央局11が、ステップS3で算出した破裂点54の3次元座標,対象となるメッシュ位置72の3次元座標に基づき、破裂点54及びメッシュ位置72を結ぶベクトル75を3次元ベクトルで算出する。
【0039】
ステップS6に進み、中央局11はステップS2で算出した弾道ベクトル71と、破裂点54及びメッシュ位置72を結ぶベクトル75とに基づき、弾丸(弾頭)からの角度θ74を算出する。
【0040】
ステップS7に進み、中央局11は図8に示す飛散破片数テーブルを参照し、ステップS6で算出した弾丸からの角度θ74に基づき、飛散破片数Nを取得する。図8は飛散破片数テーブルの一例の構成図である。飛散破片数テーブルは弾丸の種類ごとに設定することで、より正確に損耗範囲を判定できるようになる。
【0041】
図8の飛散破片数テーブルは、弾丸からの角度θ74に対応する飛散破片数Nが、5度単位で0度から180度まで設定されている。図8の飛散破片数テーブルはグラフで表すと図9のようになる。図9は飛散破片数テーブルから作成したグラフ図である。図10は弾丸からの角度θを表した模式図である。弾丸からの角度θ=0度は弾丸70の進行方向となる。弾丸からの角度θ=180度は弾丸70の進行方向と逆方向となる。
【0042】
ステップS8に進み、中央局11はステップS7で取得した飛散破片数N,破裂点54からの距離R73に基づき、以下の式(1)からメッシュ毎の破片命中率を算出する。以下の式(1)では、飛散破片数Nが大きく且つ破裂点54からの距離Rが近いほど、破片命中率が高くなる。
【0043】
【数1】


なお、ステップS4〜S8までの処理は対象となるメッシュ毎に行われる。対象となるメッシュの範囲(対象範囲)は、例えば弾丸70の効果範囲を考慮して、破裂点54から半径150m程度とする。メッシュの大きさを5m×5mとし、300m×300mの4角形を対象範囲とした場合、対象となるメッシュの数は3600となる。このように損耗範囲をメッシュにより管理することで、中央局11は損耗範囲内に存在する目標52の検索が容易となり、コンピュータの処理負担が軽減される。
【0044】
さらに、中央局11は、目標52の姿勢(立ち姿勢,中間姿勢,伏せ姿勢)を考慮して破片命中率を補正すると共に、命中部位(頭部,胴部,腕部,脚部)を以下のように判定する。
【0045】
図11は姿勢による破片命中率の補正と命中部位の判定を行う中央局の処理手順を表したフローチャートである。図12は弾丸の破裂点と目標の仰角αの関係を示したイメージ図である。
【0046】
ステップS11に進み、中央局11は破裂点54とメッシュ位置72とに基づき、破裂点54と目標52の仰角α121を算出する。ステップS12に進み、中央局11は図13に示す補正テーブルから、目標52の姿勢および破裂点54と目標52の仰角α121に応じた命中率の補正値を取得し、破片命中率を補正する。
【0047】
図13は目標の姿勢による破片命中率の補正テーブルの一例の構成図である。図13の補正テーブルでは、目標52の姿勢(立ち姿勢,中間姿勢,伏せ姿勢)及び、30度ごとに3段階に分けられた破裂点54と目標52の仰角α121に応じた命中率の補正値が設定されている。
【0048】
図13の補正テーブルから取得した補正値を、式(1)により算出された破片命中率に掛けることで、中央局11は目標52の姿勢及び、破裂点54と目標52の仰角α121に応じて破片命中率を補正できる。
【0049】
図13の補正テーブルは、破裂点54から見た目標52の面積比を考慮して設定されている。図14は目標の姿勢及び、破裂点と目標の仰角αの関係を表した一例のイメージ図である。図14(a)は立ち姿勢の例である。図14(b)は中間姿勢の例である。図14(c)は伏せ姿勢の例である。
【0050】
破片命中率は立ち姿勢のとき、破裂点54と目標52の仰角αが小さいほど破片命中率が高く、破裂点54と目標52の仰角αが大きいほど破片命中率が低くなる。破片命中率は伏せ姿勢のとき、破裂点54と目標52の仰角αが小さいほど破片命中率が低く、破裂点54と目標52の仰角αが大きいほど破片命中率が高くなる。破片命中率は中間姿勢のとき、破裂点54と目標52の仰角αにあまり影響されず、破片命中率が普通となる。
【0051】
ステップS13に進み、中央局11は図15に示す命中部位判定テーブルから、目標52の姿勢および破裂点54と目標52の仰角α121に応じた各部位の命中確率を取得して命中部位(頭部,胴部,腕部,脚部)を判定する。
【0052】
図15は目標の姿勢による命中部位判定テーブルの一例の構成図である。図15の命中部位判定テーブルでは、目標52の姿勢(立ち姿勢,中間姿勢,伏せ姿勢)及び、30度ごとに3段階に分けられた破裂点54と目標52の仰角α121に応じた命中部位の確率が設定されている。
【0053】
図15の命中部位判定テーブルから取得した命中部位の確率から、中央局11は目標52の姿勢及び、破裂点54と目標52の仰角α121に応じて命中部位を判定できる。図15の命中部位判定テーブルは、破裂点54から見た目標52の各部位の面積比を考慮して設定されている。
【0054】
図6及び図11に示した処理を行うことにより、中央局11は図16及び図17に示すような損耗範囲、損耗発生確率を表した分布図を作成できる。図16は弾丸の落下角度60度、地表破裂のときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。地表破裂は破裂高度が0mとなる。図17は弾丸の落下角度60度、破裂高度10mのときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。
【0055】
図16の分布図では、破裂点54と目標52の仰角αが小さいため立ち姿勢の破片命中率が高くなっている。図17の分布図では破裂点54と目標52の仰角αが大きいため伏せ姿勢の破片命中率が高くなっている。
【0056】
また、中央局11は、目標52と破裂点54との間に障害物181があるかを通視判定により考慮して損耗範囲を修正する。図18は破裂点からメッシュまでの通視判定を表した一例のイメージ図である。
【0057】
中央局11は各メッシュの高度情報を記憶している。中央局11は各メッシュの高度情報に基づき、破裂点54から各メッシュまでの通視判定を以下のように行う。まず、中央局11は破裂点54と該当メッシュ182とを結ぶ3次元の線分183を算出する。中央局11は2次元平面にて線分183が通過するメッシュを抽出する。
【0058】
中央局11は、線分183の高度成分と、抽出したメッシュの高度成分とを比較し、線分183の高度成分が抽出したメッシュの高度成分よりも低くなる箇所があるか否かを判定する。線分183の高度成分が抽出したメッシュの高度成分よりも低くなる箇所がある場合、中央局11は該当メッシュ182を通視不可と判定し、該当メッシュ182を損耗範囲から除外する。
【0059】
図18の場合、破裂点54と該当メッシュ182との間に障害物181があり、障害物181を構成するメッシュの高度成分が線分183の高度成分よりも高いため、中央局11は該当メッシュ182を損耗範囲から除外する。
【0060】
図18の通視判定により、中央局11は図19に示すような損耗範囲、損耗発生確率を表した分布図を作成できる。図19は弾丸の落下角度30度、地表破裂、障害物有りのときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。図19の分布図では、破裂点から見て障害物181の後ろ側が、損耗範囲から除外されている。
【0061】
さらに、中央局11は破片の重量を考慮して損耗の程度を算出できる。図20は破片の重量分布テーブルの一例の構成図である。図20の破片の重量分布テーブルでは、破片重量が3区分に分けて定義されている。中央局11は、損耗する目標52について損耗の程度を算出する際に、破片重量の割合が定義されている図20の破片の重量分布テーブルを用いることで、破片の重量を考慮して損耗の程度を算出できる。一般的に、破片の重量が重いほど損耗の程度は大きくなる。なお、破片の重量分布テーブルを弾丸70の種類ごとに定義することで、中央局11は、より正確に損耗の程度を判定できるようになる。
【0062】
このように、本願発明による模擬訓練システム10では予め登録された目標52の姿勢及び、破裂点54と目標52の仰角121に応じた補正値で損耗発生確率を算出することにより、目標52の姿勢を考慮した損耗発生確率の算出を実現している。また、本願発明による模擬訓練システム10では破裂点54の高度(破裂高度)を考慮した損耗発生確率の算出を実現している。
【0063】
本願発明による模擬訓練システム10では、予め登録された目標52の姿勢及び、破裂点54と目標52の仰角121に応じた各部位の命中確率で、命中部位を判定することにより、損耗の発生する命中部位を正確に判定できる。
【0064】
本発明による模擬訓練システム10では、予め登録された各メッシュの高度情報をもとに、破裂点54から各メッシュまでの通視判定を行い、障害物181による影響を損耗範囲に反映させることができる。
【0065】
また、本発明による模擬訓練システム10では、命中した破片の重量に応じて損耗の程度が変化する傾向にあることに着目し、予め登録された破片の重量分布テーブルを用いることで、損耗の程度を実戦に近似させて判定できる。
【0066】
(まとめ)
本願発明による射撃効果判定プログラムは、弾丸70の破裂により、その破片が飛散することにより発生する損耗範囲,損耗発生確率、及び損耗の程度を正確に算出することを可能としている。従って、模擬訓練システム10やシミュレーションに使用することで、より効果的な実動訓練や指揮統制訓練が可能となる。
【0067】
また、本願発明による射撃効果判定プログラムは損耗範囲をメッシュにて管理することにより、損耗範囲に存在する目標52の抽出が容易となり、処理が簡略化される為、実動訓練を行う射撃効果判定装置(中央局11)において、模擬的な弾丸70の破裂から損耗の程度の算出をリアルタイムに行うことが可能となる。本願発明によれば、曲射火器51による模擬射撃の効果判定を正確に行うことで、より実戦的な訓練が可能となる。
【0068】
本発明は、以下に記載する付記のような構成が考えられる。
(付記1)
記憶装置,演算処理装置を含むコンピュータにおいて実行される射撃効果判定プログラムであって、
前記記憶装置は、弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを記憶しており、
前記演算処理装置に、前記記憶装置に記憶された前記飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、
取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップと
を実行させる射撃効果判定プログラム。
(付記2)
前記損耗有無判定ステップは、前記損耗範囲をメッシュに区切り、前記メッシュに存在する目標の損耗発生確率を算出することを特徴とする付記1記載の射撃効果判定プログラム。
(付記3)
前記損耗有無判定ステップは、前記弾丸の破裂点から前記メッシュまでの距離と、取得した前記飛散破片数から、前記メッシュに存在する目標の損耗発生確率を算出することを特徴とする付記2記載の射撃効果判定プログラム。
(付記4)
前記記憶装置は、前記目標の姿勢と、前記弾丸の破裂点及び前記目標の仰角とに応じた前記損耗発生確率の補正値が設定されている補正テーブルを記憶しており、
前記損耗有無判定ステップは、前記補正テーブルに設定されている前記補正値を用いて前記目標の姿勢に応じた前記損耗発生確率を算出することを特徴とする付記1記載の射撃効果判定プログラム。
(付記5)
前記補正テーブルは、前記弾丸の破裂点からみた前記目標の姿勢ごとの面積比に応じて前記損耗発生確率の補正値が設定されていることを特徴とする付記4記載の射撃効果判定プログラム。
(付記6)
前記記憶装置は、前記目標の姿勢と、前記弾丸の破裂点及び前記目標の仰角とに応じた損耗部位の確率が定義された損耗部位判定テーブルを記憶しており、
前記損耗有無判定ステップは、前記損耗部位判定テーブルに定義された前記損耗部位の確率を用いて損耗の発生する部位を算出することを特徴とする付記1記載の射撃効果判定プログラム。
(付記7)
前記損耗部位判定テーブルは、前記弾丸の破裂点からみた前記目標の部位ごとの面積比に応じて前記損耗部位の確率が定義されていることを特徴とする付記6記載の射撃効果判定プログラム。
(付記8)
前記記憶装置は、前記メッシュごとの高度情報を記憶しており、
前記損耗有無判定ステップは、前記メッシュごとの高度情報を用いて、前記弾丸の破裂点から前記メッシュまでの通視判定を行い、通視不可能なメッシュを前記損耗範囲から除外することを特徴とする付記2記載の射撃効果判定プログラム。
(付記9)
前記記憶装置は、破片の重量の割合が定義されている破片の重量分布テーブルを記録しており、
前記演算処理装置に、損耗が発生した目標の損耗の程度を前記破片の重量分布テーブルに定義されている前記破片の重量の割合を用いて算出する損耗程度判定ステップ
を更に実行させる付記1記載の射撃効果判定プログラム。
(付記10)
目標に対する射撃の効果を判定する射撃効果判定装置であって、
弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルと、
前記飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得手段と、
取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定手段と
を有することを特徴とする射撃効果判定装置。
(付記11)
曲射火器の射撃諸元情報を無線にて通知する曲射火器用無線機と、前記射撃諸元情報に基づき目標に対する射撃の効果を判定する射撃効果判定装置と、前記目標に取り付けられた目標用無線機とを有するシステムにおける射撃効果判定方法であって、
前記射撃効果判定装置が前記曲射火器用無線機から前記曲射火器の射撃諸元情報を受信する射撃諸元情報受信ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記射撃諸元情報から弾丸の進行方向、前記弾丸の破裂点を算出する算出ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、
前記射撃効果判定装置が、取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記損耗が発生した目標の損耗の程度を判定する損耗程度判定ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記損耗が発生した目標の前記目標用無線機に前記弾丸の破裂による損耗の程度を通知する損耗程度通知ステップと、
前記目標用無線機が、通知された前記弾丸の破裂による損耗の程度を現示する損耗程度現示ステップと
を有することを特徴とする射撃効果判定方法。
【0069】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による模擬訓練システムの一例の構成図である。
【図2】中央局の一例の構成図である。
【図3】曲射火器用無線機の一例の構成図である。
【図4】目標用無線機の一例の構成図である。
【図5】本発明による模擬訓練システムの使用例を表したイメージ図である。
【図6】射撃効果判定プログラムが実装された中央局の処理手順を表したフローチャートである。
【図7】弾丸の破裂点とメッシュとの関係を示したイメージ図である。
【図8】飛散破片数テーブルの一例の構成図である。
【図9】飛散破片数テーブルから作成したグラフ図である。
【図10】弾丸からの角度θを表した模式図である。
【図11】姿勢による破片命中率の補正と命中部位の判定を行う中央局の処理手順を表したフローチャートである。
【図12】弾丸の破裂点と目標の仰角αの関係を示したイメージ図である。
【図13】目標の姿勢による破片命中率の補正テーブルの一例の構成図である。
【図14】目標の姿勢及び、破裂点と目標の仰角αの関係を表した一例のイメージ図である。
【図15】目標の姿勢による命中部位判定テーブルの一例の構成図である。
【図16】弾丸の落下角度60度、地表破裂のときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。
【図17】弾丸の落下角度60度、破裂高度10mのときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。
【図18】破裂点からメッシュまでの通視判定を表した一例のイメージ図である。
【図19】弾丸の落下角度30度、地表破裂、障害物有りのときの損耗範囲、損耗発生確率を表した一例の分布図である。
【図20】破片の重量分布テーブルの一例の構成図である。
【符号の説明】
【0071】
10 模擬訓練システム
11 中央局
12 曲射火器用無線機
13 目標用無線機
14 無線ネットワーク
21 入力装置
22 出力装置
23 ドライブ装置
24 補助記憶装置
25 主記憶装置
26 演算処理装置
27 無線装置
31 制御部
32 メモリ
33 入力部
34 表示部
35 位置標定部
36 無線部
41 制御部
42 メモリ
43 現示部
44 位置標定部
45 無線部
51 曲射火器
52 目標
53 弾道
54 破裂点
70 弾丸
71 弾道ベクトル
72 メッシュ位置
73 破裂点からの距離R
74 弾丸からの角度θ
75 破裂点とメッシュ位置とを結ぶベクトル
121 破裂点と目標の仰角α
181 障害物
182 該当メッシュ
183 破裂点と該当メッシュとを結ぶ3次元の線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置,演算処理装置を含むコンピュータにおいて実行される射撃効果判定プログラムであって、
前記記憶装置は、弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを記憶しており、
前記演算処理装置に、前記記憶装置に記憶された前記飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、
取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップと
を実行させる射撃効果判定プログラム。
【請求項2】
前記損耗有無判定ステップは、前記損耗範囲をメッシュに区切り、前記メッシュに存在する目標の損耗発生確率を算出することを特徴とする請求項1記載の射撃効果判定プログラム。
【請求項3】
前記損耗有無判定ステップは、前記弾丸の破裂点から前記メッシュまでの距離と、取得した前記飛散破片数から、前記メッシュに存在する目標の損耗発生確率を算出することを特徴とする請求項2記載の射撃効果判定プログラム。
【請求項4】
目標に対する射撃の効果を判定する射撃効果判定装置であって、
弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルと、
前記飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得手段と、
取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定手段と
を有することを特徴とする射撃効果判定装置。
【請求項5】
曲射火器の射撃諸元情報を無線にて通知する曲射火器用無線機と、前記射撃諸元情報に基づき目標に対する射撃の効果を判定する射撃効果判定装置と、前記目標に取り付けられた目標用無線機とを有するシステムにおける射撃効果判定方法であって、
前記射撃効果判定装置が前記曲射火器用無線機から前記曲射火器の射撃諸元情報を受信する射撃諸元情報受信ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記射撃諸元情報から弾丸の進行方向、前記弾丸の破裂点を算出する算出ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数が設定されている飛散破片数テーブルを用いて、前記弾丸の破裂点における前記弾丸の進行方向からの角度毎に飛散破片数を取得する飛散破片数取得ステップと、
前記射撃効果判定装置が、取得した前記飛散破片数から前記弾丸の破裂による損耗範囲および損耗発生確率を算出して目標の損耗の有無を判定する損耗有無判定ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記損耗が発生した目標の損耗の程度を判定する損耗程度判定ステップと、
前記射撃効果判定装置が、前記損耗が発生した目標の前記目標用無線機に前記弾丸の破裂による損耗の程度を通知する損耗程度通知ステップと、
前記目標用無線機が、通知された前記弾丸の破裂による損耗の程度を現示する損耗程度現示ステップと
を有することを特徴とする射撃効果判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−267662(P2008−267662A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109359(P2007−109359)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)