説明

導光板および面光源装置

【課題】偏光分離効率を向上させつつ、導光板の端面に光源を配置させた場合であっても輝度ムラを抑制させる手段を提供する。
【解決手段】導光板1は、光源11から照射される光を側面である入射面30aから内部に導入する導光層30と;入射面に平行に伸延しかつ入射面に垂直に配列した複屈折性を有する複数の第1ファイバ41、および、第1ファイバを保持し第1ファイバの常光線屈折率または異常光線屈折率と一致する屈折率を備える等方性の第1保持媒体42を含み、導光層に積層されて当該導光層内の光のうち所望の偏光を導光層の一方の主面である発光面から導出する偏光分離層40と;入射面に垂直に伸延しかつ入射面に平行に配列した複屈折性の複数の第2ファイバ51、および、第2ファイバの常光線屈折率および異常光線屈折率の少なくとも一方と異なる屈折率を備える等方性の第2保持媒体52を含み、導光層に積層された光均質化層50と;を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ等に使用される導光板、およびその導光板を備える面光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、コンピュータ用モニタ、ビデオカメラ、液晶テレビ(LCD−TV)、移動通信端末機などに使われる液晶表示装置は、自体的な発光能力がない受光型表示装置であり、外部から照射された照明光を選択的に透過させることによって画像を表示する。このため、液晶表示装置の背面には光源となるバックライトとして面光源装置が設置される。
【0003】
液晶表示装置では、面光源装置から出射された光が略透過軸を直交させた一対の偏光板間に液晶層を配置した液晶セルを透過し、この透過光が電気的にON・OFFされることで画像表示を実現する。偏光板としては、通常、ヨウ素で着色されて一軸延伸されたポリビニルアルコールフィルムを偏光子として使用し、偏光子の片面または両面に、トリアセチルセルロースフィルム等の保護フィルム、アクリル樹脂等によるコーティング層、またはノルボルネンやポリカーボネート等の位相差フィルムを配置した吸収型偏光板が用いられている。
【0004】
しかしながら、このような吸収型偏光板は偏光板の透過軸方向の光のみを透過し、残りの成分の光を吸収するという特性を有するため、原理的に光の利用効率(光透過率)が50%を超えることはなく、さらに、内表面の反射率が4%であることを考慮すると最大でも46%とするのが限界であった。このため、バックライトの有効活用および輝度向上を図ることは、低消費電力化を達成する上で、液晶表示装置の命題になっている。
【0005】
これを解決する方法の一つとして、光学反射干渉特性を利用した反射型偏光板が知られている。反射型偏光板は、特定の偏光を反射し、それと逆の性質を示す偏光を透過するものである。具体的には、反射型偏光板を透過した光が直線偏光として偏光板を透過するように軸合わせすることで、透過軸方向の偏光のみを透過させるとともに吸収型偏光板で吸収されていた偏光を反射させて再利用する。これにより、バックライトから発する光の利用効率を向上させることができる。
【0006】
反射型偏光板の一例が、屈折率等方性層と屈折率異方性層との交互積層フィルムからなる住友スリーエム社製のデュアル輝度上昇フィルム(DBEF)である。しかし、DBEFは可視光領域に渡って偏光特性を確保するために全体で数百層ものポリマーフィルムを積層させる必要があり、厳密な制御が必要であるために製造コストが高いという問題がある。
【0007】
より安価に光利用効率および偏光分離能を向上させる方法として、偏光感応性散乱要素(PSSE)を利用する技術が注目されている。例えば、特許文献1には、PSSEにより透過軸と直交方向の偏光成分を後方に散乱させ偏光を分離し、当該後方散乱成分をλ/4板によって偏光状態を反転させて再利用する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、複屈折性を有する繊維からなる複屈折体をPSSEとして利用した反射型偏光板が開示されている。この方法では、複屈折体の断面方向の屈折率(常光線屈折率)と支持媒体の屈折率とを一致させた層(偏光層A)と、複屈折体の長手方向の屈折率(常光線屈折率)と支持媒体の屈折率とを一致させた層(偏光層B)とを、複屈折体の配列方向が交差するように積層させることにより、斜めから入射する光や拡散光に対する偏光分離能を向上させる。
【0009】
さらに、特許文献3には、PSSEとしての複屈折ファイバが埋め込まれた等方性の樹脂層を導光板と一体化させることにより、一方の偏光のみを散乱させて外部に放出させ、偏光分離効率を向上させる方法も開示されている。
【0010】
一方、面光源装置の低消費電力を図る上で、長寿命・省電力効果に優れるLEDを光源として用いたバックライトが主流になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−502036号公報
【特許文献2】特開2009−047802号公報
【特許文献3】特開2006−517720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1〜3に記載の方法では、LEDのような光源を使用した場合に、LED光源の光が線状に表れてムラとなり液晶表示装置などの輝度ムラとなる問題がある。特に、これらの文献では、PSSEにより偏光分離効率は向上するものの、PSSEによる散乱する光の方向がファイバなどのPSSEと垂直な方向のみに偏ってしまうため、LED光源を使用した場合には依然として輝度ムラが生じてしまう。
【0013】
そこで本発明は、偏光分離効率を向上させつつ、導光板の端面に不連続な光源を配置させた場合であっても輝度ムラを抑制させる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、ファイバの屈折率および配列方向とファイバを保持する保持媒体の屈折率とが制御された2つの層(偏光分離層および光均質化層)を導光層に積層させることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明の一形態は、側面である入射面から光を内部に導入する導光層と、前記導光層に積層されて当該導光層内の光のうち所望の偏光を前記導光層の一方の主面である発光面から導出する偏光分離層と、前記導光層に積層された光均質化層と、を備える導光体である。そして、偏光分離層は、前記入射面に平行に伸延しかつ前記入射面に垂直に配列した複屈折性を有する複数の第1ファイバ、および、前記第1ファイバを保持し前記第1ファイバの常光線屈折率(no)または異常光線屈折率(ne)と一致する屈折率を備える等方性の第1保持媒体を含み、光均質化層は、前記入射面に垂直に伸延しかつ前記入射面に平行に配列した複屈折性の複数の第2ファイバ、および、前記第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)の少なくとも一方と異なる屈折率を備える等方性の第2保持媒体を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、入射面と垂直に伸延した第2ファイバが配列された光均質化層によって、光が面内方向の様々な角度に散乱・拡散されるため、不連続な光源を使用した場合であっても均一な輝度が得られる。さらに、入射面に平行に伸延した第1ファイバが配列された偏光分離層によって高い偏光分離効率で所望の偏光成分だけを選択的に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態である面光源装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2A】1本のファイバと、屈折率との関係を説明するための図面である。
【図2B】1本のファイバと、屈折率との関係を説明するための図面である。
【図3】ファイバの断面形状の変形例を示す図である。
【図4】図4(a)は図1の面光源装置の右側面図であり、図4(b)は偏光分離層40に入射するs偏光成分の伝播の様子を示す図4(a)の拡大図であり、図4(c)は偏光分離層40に入射するp偏光成分の伝播の様子を示す図4(a)の拡大図である。
【図5】図1の面光源装置の底面図である。
【図6】第2実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図7】第3実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図8】第4実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図9】第5実施形態である面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図10】第6実施形態である面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図11】第7実施形態である面光源装置の概略構成を示す図面である。
【図12】実施例1で形成された偏光分離層の断面である。
【図13】実施例2で作製した面光源装置の導光板の上面(発光面)から射出される光の二次元輝度分布を示す図面である。
【図14】比較例1で作製した面光源装置の導光板の上面(発光面)から射出される光の二次元輝度分布を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0019】
本明細書において、「積層する」という場合、直接的に積層する場合だけでなく、間に他の構成を介して間接的に積層する場合も含みうる。また、層、領域、板などの部材が他の部材の「上に」または「上部に」あるとは、他の部材の「直上に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部材がある場合をも含む。同様に、層、領域、板などの部材が他の部材の「下に」または「下部に」あるとは、他の部材の「直下に」ある場合だけでなく、その中間にさらに他の部材がある場合をも含む。
【0020】
本発明の一形態によれば、光源から照射される光を側面である入射面から内部に導入する導光層と;前記入射面に平行に伸延しかつ前記入射面に垂直に配列した複屈折性を有する複数の第1ファイバ、および、前記第1ファイバを保持し前記第1ファイバの常光線屈折率(no)または異常光線屈折率(ne)と一致する屈折率を備える等方性の第1保持媒体を含み、前記導光層に積層されて当該導光層内の光のうち所望の偏光を前記導光層の一方の主面である発光面から導出する偏光分離層と;前記入射面に垂直に伸延しかつ前記入射面に平行に配列した複屈折性の複数の第2ファイバ、および、前記第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)の少なくとも一方と異なる屈折率を備える等方性の第2保持媒体を含み、前記導光層に積層された光均質化層と;を備える、導光板が提供される。
【0021】
まず、本形態の導光板が適用され得る面光源装置の基本的な構成を、図面を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の一実施形態である面光源装置の概略構成を示す斜視図、図2Aおよび図2Bは1本のファイバと、屈折率との関係を説明するための図面、図3はファイバの断面形状の変形例を示す図である。図1に示すように、面光源装置1はエッジライト型の面光源装置として構成され、光源部10と、光源部10の光源11から照射された光のうち所望の偏光成分を出射させる導光板20と、を備える。本実施形態では、面光源装置1は、紙面の上方に向かって、面発光する。図示は省略しているが、面光源装置1が、液晶ディスプレイに適用される場合、面発光側には、液晶ユニットが配置される。
【0023】
光源部10は、面光源装置1に供給するための光を発生するものであり、導光板20の側方に配置され、複数の光源11が間欠的に配列されて構成される。図1に示す形態では、光源11が一次元配列されて光源部10が構成されているが、光源が二次元配列されていてもよい。光源11は、例えば、点状のLED(発光ダイオード)で構成されうる。
【0024】
導光板20は、略直方体板形状をしており、導光層30と、導光層30に積層された偏光分離層40と、導光層30に積層された光均質化層50と、導光層30に取り付けられた位相差板60と、反射板70と、を備える。
【0025】
導光層30は、光源11から照射される光を、側面である入射面30aから内部に導入する。導入された光は、導光層30内を伝播し、偏光分離層40から所定の偏光成分だけが選択的に取り出される。
【0026】
導光層30は、入射光を透過させうる透明材質から構成され、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリカーボネート(PC)のような光学的等方性材料から形成される。
【0027】
偏光分離層40は、導光層30に積層され、導光層30内の光のうち所望の偏光を導光層20の一方の主面である発光面30bから導出し、当該偏光と直交する偏光の光を反射させる。偏光分離層の位置は特に限定されないが好ましくは最外層に位置する。
【0028】
偏光分離層40は、第1ファイバ41と第1ファイバ41を保持する第1保持媒体42とを含む。
【0029】
第1ファイバ41は、導光層30の入射面30aに平行に伸延した形状に形成されている。本明細書において、「入射面に平行に伸延」とは、第1ファイバ41の伸延方向(長手方向)が完全に入射面30aに平行な方向と一致する場合のみならず、入射面30aに平行な方向に対して第1ファイバ41の伸延方向(長手方向)が±45°傾斜している場合も含む。
【0030】
偏光分離層40において、第1ファイバ41は複数本設けられ、導光層30の入射面30aに垂直な方向に配列されている。
【0031】
光均質化層50は、導光層30に積層され、導光層30内の光を、面内方向、すなわち、光の伝播方向aと直交する方向に拡散させて、光の方向を均質化する。
【0032】
光均質化層50は、第2ファイバ51と第2ファイバ51を保持する第2保持媒体52とを含む。
【0033】
第2ファイバ51は、導光層30の入射面30aに垂直に伸延した形状に形成されている。本明細書において、「入射面に垂直に伸延」とは、第2ファイバ51の伸延方向(長手方向)が完全に入射面30aに垂直な方向と一致する場合のみならず、入射面30aに垂直な方向に対して第2ファイバ51の伸延方向(長手方向)が±45°傾斜している場合も含む。
【0034】
光均質化層50において、第2ファイバ51は複数本設けられ、導光層30の入射面30aに平行な方向に配列されている。すなわち、第2ファイバ51は、偏光分離層40における第1ファイバ41の配列方向と直交する方向に配列されている。
【0035】
偏光分離層40および光均質化層50に含まれるファイバ(41、51)は、長手方向の屈折率である異常光線屈折率(ne)が大きく、断面方向の屈折率である常光線屈折率(no)が小さい複屈折性を有する。ここで、図2Aおよび図2Bを参照して、1本のファイバ(41、51)と、屈折率との関係を説明する。図2Aおよび図2Bに示すように、ファイバ(41、51)は、断面方向の屈折率(常光線屈折率、no)が長手方向の屈折率(異常光線屈折率、ne)よりも小さい。
【0036】
ファイバ(41、51)としては複屈折性を有する多様な材料を使用できるが、断面形状の安定性および耐久性に優れ、配向性の制御が容易である点から、ポリマーを延伸することによって製造されるポリマーファイバであることが好ましい。
【0037】
具体的なポリマーファイバの材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系繊維、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)などのポリビニル系繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)などのアクリル系繊維、ナイロン6(N6)、ナイロン6,6(N66)、ナイロン4,6(N46)、ナイロン6,10(N610)などの脂肪族ポリアミド系繊維、ポリ(m−フェニレンイソフタルアミド)(PMPIA)、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)(PMPTA)などの芳香族ポリアミド系繊維(アラミド繊維)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ−ε−カプロラクトンなどのポリエステル系繊維、シルク、ウール、蜘蛛の糸などの動物性の繊維、キュプラ、レーヨン系繊維などのセルロース系植物繊維、などが挙げられる。第1ファイバおよび第2ファイバの種類は、後述する屈折率の関係を満たすように選択され、同一種類のものを使用してもよいし、異なる種類のものを使用してもよい。また、場合によっては、偏光分離層40や光均質化層50において複数の種類のファイバを使用してもよい。
【0038】
好ましくは、異常光線屈折率(ne)と常光線屈折率(no)との差(Δn)が大きいポリマーファイバを使用することが好ましい。屈折率差が大きいほど、偏光分離層40の偏光分離効率や光均質化層50の光拡散効率を向上させることができる。具体的には、Δnが0.03以上であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上である。
【0039】
これらのポリマーファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)は、ポリマーを延伸する際の引張速度や引張率、ポリマーの材質、ファイバの太さ(径)や密度を調整することにより制御される。
【0040】
表1に、代表的な延伸ポリマーファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)を示す。なお、表1の屈折率(no、ne)はファイバを種々の屈折率の液体中に浸漬し、偏光顕微鏡を使用して、ファイバ線が液体と同化して見えなくなる液体を調整し、この液体の屈折率をアタゴ社製デジタルアッベ屈折計 DR−A1を使用して測定することによりファイバの屈折率を求めた(波長589nm)。偏光の透過軸それぞれについて測定することでnoおよびneが測定できる。
【0041】
【表1】

【0042】
ファイバ(41、51)の太さは特に制限されず、適用するディスプレイの大きさに合わせて、また、所望の屈折率が得られるように制御され、一例をあげると、1〜200μmである。ファイバ(41、51)の配列間隔も特に制限されず、適用される液晶表示装置の画素ピッチよりも小さくなるように、ディスプレイの大きさに合わせて適宜選択すればよい。ファイバ(41、51)の配列間隔は、規則的であってもよいし、不規則であってもよい。また、ファイバ(41、51)は一層構造としてもよいし、多層構造としてもよい。
【0043】
好ましくは、第1ファイバは光源11から離れるに従って粗から密に配置される。すなわち、偏光分離層40における第1ファイバ41の密度が光源11から離れるに従って連続的または段階的に増加することが好ましい。光源11から離れるにつれて光量が少なくなるため、光量の少ない光源11から離れた領域において第1ファイバ41を密に配置し、光量の多い光源11の近傍に第1ファイバ41を粗に配置することにより、導光板の上面(発光面)全体において均質な光を取り出すことができる。
【0044】
ファイバ(41、51)の長さは、ファイバ(41、51)を配置する偏光分離層40や光均質化層50のサイズに合わせて決定すればよい。ただし、ファイバ(41、51)の長さは偏光分離層40や光均質化層50の長さ方向にわたって連続的である必要はない。すなわち、一部ファイバ(41、51)が分断され、不連続となっている部分が存在してもよい。さらに、一部ファイバ(41、51)が重なっている部分が存在してもよい。
【0045】
ファイバ(41、51)は、図1に示すように、断面が円形であってもよいが、円形である必要はなく、他の断面形状を有することもできる。他の断面形状としては、図3に示すように、例えば、三角形、長方形、六角形などの規則的および不規則な多角形、または曲線および直線の辺を組み合わせた断面形状を使用することができる。なお、本明細書において「多角形」とは各辺が直線である図形のみならず各辺が若干の曲線性を有する図形も包含する。すなわち、ポリマーファイバ(41、51)の多角形断面は、各辺や頂点部分に若干の曲線性を有することがあるが、このような断面形状も「多角形」である断面形状に含まれるものとする。
【0046】
好ましくは、第1ファイバ41の断面形状が多角形であることが好ましい。偏光分離層40では、後述するように第1ファイバ41により特定の光の偏光成分だけが選択的に散乱されて発光面30bから取り出されるが、この際、導波方向に散乱されることが多く、光の進行方向に対して垂直な方向の散乱光が少なくなってしまう。本発明の導光板を面光源として液晶ディスプレイのバックライトとして使用する場合には、第1ファイバ41の断面形状を多角形とすることで、散乱角度が多様となり、導波方向と垂直方向への散乱光を増加させて、より均一な角度分布を有する光を得ることができる。
【0047】
ファイバ(41、51)の外周面の形状は特に制限されない。ただし、第1ファイバの外周面の表面粗さ(Rz)は0.1〜10μmであることが好ましい。かような場合には、第1ファイバによる光の散乱角度が多様となり、より均一な角度分布を有する光を得ることができる。なお、「表面粗さ(Rz)」とはJIS B 0601−2001で規定される平滑面の最大高さを意味する。
【0048】
保持媒体(42、52)は、ファイバ(41、51)を保持する役割を果たし、光学的等方性を有する材料から形成される。したがって、保持媒体(42、52)の材料は、ファイバ(41、51)に対して良好な密着性を示し、光学的透明性を有するものであれば特に制限されない。例えば、熱や放射線により重合/架橋反応する硬化性樹脂が挙げられる。具体的には、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基、チオール基、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基などを有する化合物からなるUV硬化樹脂;シリコーン樹脂、アリルエステル、アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド、ウレタン系樹脂などからなる熱硬化性樹脂;およびこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。さらに、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)などのアクリル樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)シクロオレフィンポリマー(COP)などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)などのポリエーテル、ポリビニルアルコール(PVA)などのビニル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、これらを構成するモノマーを2種以上用いた共重合体、ならびにこれらのポリマーブレンドなどを使用してもよい。複数の樹脂を混合することにより、保持媒体(42、52)の屈折率(nm)を所望の値に制御することができる。
【0049】
偏光分離層40は、第1保持媒体42の屈折率(nm)と、第1ファイバ41の常光線屈折率(no)または異常光線屈折率(ne)とが一致するように構成される。以下では、第1保持媒体42の屈折率(nm)は、第1ファイバ41の常光線屈折率(no)と一致するものとして説明する。
【0050】
本明細書において、「屈折率nが屈折率nと一致する」とは、nとnとが小数点2桁以上の精度で一致していることをいい、より好ましくは3桁以上の精度で一致していることをいい、さらに好ましくはn=n±0.003であることをいう。
【0051】
光均質化層50は、第2保持媒体52の屈折率(nm)と、第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)の少なくとも一方と、が異なるように構成される。以下では、第2保持媒体52の屈折率nmが、第2ファイバ51の常光線屈折率noと異常光線屈折率neとの両方と異なるものとして説明する。
【0052】
位相差板60は、導光層30の入射面30aとは反対の側面に取り付けられ、導光層30を伝播する光の偏光方向を変換する。本実施形態では、位相差板60は例えば、位相をλ/4ずらす、λ/4板である。なお、本発明において、位相差板は必須のものではなく、位相差板を含まない形態も好ましく使用されうる。
【0053】
反射板70は、導光層30内の光が発光面30b以外から漏れることを防止するために、導光層30の入射面30a以外の側面や発光面30bとは反対側の主面に積層される。本実施形態では、図示するように、位相差板60や光均質化層50に積層されて取り付けられている。図示していないが、本実施形態においては、導光層30の入射面30aおよび入射面30aの反対側の面以外の2つ側面にも反射板70が設けられている。また、図示していないが、反射板70は、複数の光源11の間や上下に設けられてもよい。
【0054】
次に、面光源装置1において光源の光を面発光として取り出す原理について説明する。
【0055】
図4(a)は図1の面光源装置の右側面図であり、図4(b)は偏光分離層40に入射するs偏光成分の伝播の様子を示す図4(a)の拡大図であり、図4(c)は偏光分離層40に入射するp偏光成分の伝播の様子を示す図4(a)の拡大図である。図4(a)に示すように、光源11から導光層30の入射面30aに光が入射される。入射された光は、一点鎖線および二点鎖線で示すように、偏光分離層40、光均質化層50、および位相差板60の界面において内部全反射を繰り返しながら、導光層30を伝播する。光は、位相差板60の外側および光均質化層50の下部、導光層30の側面に取り付けられた反射板70によっても反射されるので、発光面30b側以外からは漏れずに、導光層30内を伝播し続ける。
【0056】
光源11が発生する光は自然光であり、様々な偏光成分の光が混合している。以下では、図4中、一点鎖線と黒丸とで示される紙面と同じ平面で振動する偏光成分をp偏光成分といい、二点鎖線と矢印とで示される紙面と垂直な平面で振動する偏光成分をs偏光成分という。本実施形態では、偏光分離層40によって、s偏光成分が選択的に発光面30b側から取り出される。
【0057】
偏光分離層40は、上述のように、第1ファイバ41を有する。図2Aに図示したように、第1ファイバ41は、長手方向に異常光線屈折率(ne)を、断面方向に常光線屈折率(no)を有する。s偏光成分は、第1ファイバ41を長手方向に切った断面と平行な平面で振動するので、第1ファイバ41の長手方向の異常光線屈折率(ne)に影響は受けうるが、断面方向の常光線屈折率(no)には影響を受けない。逆に、p偏光成分は、第1ファイバ41の断面と平行な平面で振動するので、第1ファイバ41の断面方向の常光線屈折率(no)に影響は受けうるが、長手方向の異常光線屈折率(ne)には影響を受けない。
【0058】
ここで、第1ファイバ41を保持している第1保持媒体42は、屈折率(nm)が第1ファイバ41の常光線屈折率(no)と一致するように形成されている。したがって、第1保持媒体42から第1ファイバ41に、または、第1ファイバ41から第1保持媒体42に光が入射する際、p偏光成分にとっては、同じ屈折率の材料を伝播していることになる。このため、光のp偏光成分は、常光線屈折率(no)に影響なく、直進する。換言すると、光のp偏光成分については、第1保持媒体42中に第1ファイバ41が存在していないのと同じである。このため、図4の二点鎖線で示すp偏光成分は第1ファイバ41によって屈折せず、結果として、第1保持媒体42の内部全反射条件にしたがって、反射される。
【0059】
一方、第1保持媒体42は、屈折率(nm)が第1ファイバ41の異常光線屈折率neとは相違するように形成されている。したがって、第1保持媒体42から第1ファイバ41に、または、第1ファイバ41から第1保持媒体42に光が入射する際、s偏光成分にとっては、異なる屈折率の材料を伝播していくことになる。このため、光のs偏光成分は、異常光線屈折率(ne)の影響を受けて、屈折したり反射したりする。したがって、図4の一点鎖線で示すs偏光成分は第1ファイバ41によって屈折または反射し、一部が第1保持媒体42の内部全反射条件から逸脱して、鋭角に界面に入射して、第1保持媒体42から取り出される。このように、偏光分離層40を導光層30に積層させることにより、s偏光成分だけを選択的に散乱させ、発光面30b側から取り出すことができる。結果として、液晶ユニットに必要な偏光成分だけを選択的に取り出すことができる。
【0060】
上記では、第1保持媒体42の屈折率(nm)が第1ファイバ41の常光線屈折率(no)と一致し、異常光線屈折率(ne)と相違する場合について説明したが、第1保持媒体42の屈折率(nm)が第1ファイバ41の異常光線屈折率(ne)と一致し、常光線屈折率(no)と一致する構成としてもよい。この場合には、p偏光成分だけを選択的に散乱させ、発光面30b側から取り出すことができる。ただし、光の導波方向と同じ面内で振動するp偏光成分よりも、光の導波方向と同じ面内で振動しないs偏光成分を使用する方が散乱効率に優れるため、第1保持媒体42の屈折率(nm)が第1ファイバ41の常光線屈折率(no)と一致する構成とするのが好ましい。
【0061】
続いて、光均質化層50により、導光層30内の光を面内方向に拡散する原理について説明する。図5は、図1の面光源装置の底面図である。
【0062】
図5に示すように、光源11であるLEDは点発光であるために、隣接する光源11との間の光量が少なくなり、光源11近傍の光源間領域12に暗部が発生しやすい。本実施形態では、導光層30内を伝播する光が、光均質化層50によって面内方向に散乱されることにより、導光層30内の光の方向分布を均質化する。
【0063】
光均質化層50は、上述のように、第2ファイバ51を含み、第2ファイバ51は、長手方向に異常光線屈折率(ne)を、断面方向に常光線屈折率(no)を有する。第2ファイバ51は、その長手方向が光の導波方向と一致するように配置されている。このため、第2ファイバに入射する光は、常光線屈折率(no)と、実効異常光線屈折率(ne2_eff)との影響を受けることとなる。
【0064】
ここで、図2Bに示すように、光均質化層において、第2ファイバ51の長手方向に導波する光が入射角θで第2ファイバ51に入射した場合に第2ファイバ51が有する実効異常光線屈折率ne2_effは下記式(A)で表される。
【0065】
【数1】

【0066】
上記式中、noは第2ファイバの常光線屈折率であり、neは第2ファイバの異常光線屈折率であり、θは第2ファイバ(長手方向)への光の入射角である。
【0067】
p偏光成分は、第2ファイバ51を長手方向に切った断面と平行な平面で振動するので、第2ファイバ51の長手方向の実効異常光線屈折率(ne2_eff)に影響は受けうるが、断面方向の常光線屈折率(no)には影響を受けない。逆に、s偏光成分は、第2ファイバ51の断面と平行な平面で振動するので、第2ファイバ51の断面方向の常光線屈折率(no)に影響は受けうるが、長手方向の実効異常光線屈折率(ne2_eff)には影響を受けない。
【0068】
すなわち、第2保持媒体52から第2ファイバ51に、または、第2ファイバ51から第2保持媒体52に光が入射する際、p偏光成分は実効異常光線屈折率(ne2_eff)の影響を受けて屈折したり反射したりし、s偏光成分は常光線屈折率(no)の影響を受けて屈折したり反射したりする。この際、光均質化層50では、第2ファイバ51の長手方向が導波方向と平行になるように第2ファイバ51が配置されているため、光が入射する第2ファイバ51と第2保持媒体52との界面は導波方向と直交しておらず、該界面でp偏光成分やs偏光成分が屈折・反射する際に、光の面内方向の角度分布が変化する。すなわち、光は導波方向の左右に角度を付けられる。これにより、導光層30内を伝播する光が様々な角度に散乱・拡散され、光の方向分布を均質化することができる。
【0069】
なお、光均質化層では光は左右方向のみに屈折して広げられ、上下方向の角度は変わらないので、p,sの両偏光ともに光均質化層によって全反射条件を満たさなくなるわけではない。すなわち、光均質化層では光を左右に広げてLEDのムラをなくすことのみに機能し、偏光分離層ではs偏光のみの上下方向の屈折角が変更されるので、所望の片偏光のみが導光板から取り出されることと、LEDの光ムラの改善が両立される。
【0070】
光均質化機能を発揮させるためには、第2保持媒体52の屈折率(nm)が第2ファイバ51の常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)と異なっていればよい。
【0071】
ただし、光均質化層50はs偏光の均質化層としてより強く作用することが好ましい。かかる観点から、noとnmとの屈折率差が好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上異なることが望ましい。
【0072】
また、s偏光成分およびp偏光成分の双方をバランスよく散乱・拡散させるために、第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、ならびに第2保持媒体の屈折率(nm)は下記式(1)を満たすことが好ましい。
【0073】
【数2】

【0074】
より好ましくは、第2保持媒体の屈折率(nm)は第2ファイバの実効異常光線屈折率(ne2_eff)よりも小さいことが望ましい。
【0075】
【数3】

【0076】
すなわち、第2保持媒体の屈折率(nm)が下記式(3)を満たすことが好ましい。かような場合には、第2保持媒体の屈折率(nm)が、第2ファイバの実効異常光線屈折率(ne2_eff)よりも小さくなるため、p偏光成分を散乱・拡散することが可能である。したがって、p偏光、s偏光の両方の偏光を効果的に拡散・散乱させる光均一化層として作用することができる。
【0077】
【数4】

【0078】
上記式中、noは第2ファイバの常光線屈折率であり、neは第2ファイバの異常光線屈折率であり、nlは導光層の屈折率である。
【0079】
ここで、上記式(3)は上記式(2)と上記式(A)と下記式(B)〜(F)とから導出されたものである。
【0080】
【数5】

【0081】
上記式中、noは第2ファイバの常光線屈折率であり、neは第2ファイバの異常光線屈折率であり、niは導光板の外部媒体の屈折率であり、nlは導光層の屈折率であり、θは導光層に入射する光の入射角であり、θは導光層に入射する光の入射角であり、θは導光層に入射した光の屈折角であり、θinは光均質化層に入射する光の入射角であり、θoutは光均質化層に入射した光の屈折角である。通常、導光板は空気中に配置されており、導光板の外部媒体の屈折率niは空気の屈折率(=1)と等しく、上記(B)で表される。
【0082】
上記式(A)において、nm=ne2_effとし、上記式(B)〜(E)を用いて式変形を行うと、上記式(F)が導出される。そして、上記式(2)および上記式(F)とから、上記式(3)が導出される。nm=ne2_effの場合には、p偏光のうち角度が最大となる入射光成分(θi≒π/2)は光均質化層の第2ファイバで屈折・反射することなしに直進せず、光均質化層はそのような光に対して光均質化作用を発揮し得ない。なお、この場合には、角度(θ)の小さい光に対する実効屈折率はnoに近い値を取るようになる。
【0083】
上記式(5)を満たす場合には、全ての角度(θ)で第2ファイバに入射する入射光成分に対して光均質化作用を発揮することが可能となる。
【0084】
特に好ましくは、p偏光成分の均質化層としての効果を一層向上させる観点から、nmと上記(F)式で表されるne2_effとの屈折率差が0.03以上異なることが好ましい。
【0085】
図5に示すように、光均質化層50においては、隣接する光源間の中心線上に位置する第2ファイバの密度が、光源の光照射方向の軸線上に位置する第2ファイバの密度より大きいことが好ましい。光源と光源の間は光量が少なく、光源近傍の光源間領域12には暗部が生じやすい。したがって、これらの領域において第2ファイバを密に配置させることにより、より一層の光均質化効果が図られる。
【0086】
なお、上述した偏光分離層40においては、第1ファイバ41の長手方向が導波方向と直交するように第1ファイバが配置されている。したがって、第1ファイバ41の直径方向の断面形状は、第1ファイバ41の長さ方向のどこで切っても略同じである。第1ファイバ41は、長さ方向に形状の変化がないので、p偏光成分やs偏光成分が第1ファイバ41により屈折・反射する際には、光は、平面から見て、導波方向の両側には実質的には散乱しない。導波方向に沿った平面内で散乱する。すなわち、面内方向の角度分布は実質的に変化しない。本実施形態に係る発明は光均質化層50において入射面30aと垂直に伸延した第2ファイバにより面内方向への光の散乱を可能とするものである。本実施形態に係る発明では、入射面と平行に伸延した第1ファイバ41のPSSEを使用するだけでは、十分に得られない光の面内方向への散乱を得ることができる。
【0087】
s偏光成分のみが取り出されていくと、p偏光成分に近い位相の光が導光層30内に残る。残った光も有効に活用するために位相差板60に配置されている。
【0088】
図1に示す実施形態では、位相差板60は、λ/4板であり、位相差板60に直角に入射した光の位相を90度ずらすような厚みに形成されている。導光層30内を内部全反射する光は、図4を参照してもわかるように、位相差板40に直角に入射しない。p偏光成分は、s偏光成分に近づくように位相がずらされる。反対にs偏光成分もp偏光成分に変換される場合があるが、s偏光成分が選択的に外部に放出されているので、p偏光成分からs偏光成分に変換される割合の方が高い。このように、導光層20内に残った光も、s偏光成分に変換していくので、s偏光成分の取り出し効率が高くなり、つまり、光の利用効率を高められる。
【0089】
位相差板としては、波長域などに応じて適宜なものを用いることができ、例えばポリカーボネート(PC)、ポリスルホン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニールアルコール(PVA)、ポリアミド、ポリエステルなどから形成されるフィルムを延伸処理してなる複屈折性シートや液晶ポリマー配向層の支持シート、またはこれらの多層積層体を使用することができる。また、偏光分離層40や光均質化層50で使用されるファイバ(41、51)を保持媒体中に配列させてなるシートを位相差板として使用することもできる。
【0090】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0091】
図4に示す第1実施形態において、光均質化層50は、導光層30の下面に設けられている。しかし、光均質化層50は導光層30に積層されていればよい。図6に示す面光源装置1のように、光均質化層50が、導光層30と偏光分離層40との間に設けられていてもよい。
【0092】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0093】
図7に示す面光源装置1のように、光均質化層50が、偏光分離層40の上面に設けられていてもよい。
【0094】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0095】
図4に示す第1実施形態では、位相差板60は、導光層30の入射面30aとは反対の側面に取り付けられている。しかし、位相差板60は、偏光分離層40の積層面とは反対側の導光層30の主面および導光層30の入射面30a以外の側面の少なくとも一方に取り付けられうる。
【0096】
例えば、図8に示す面光源装置1のように、位相差板60は、偏光分離層40の積層面とは反対側の導光層30の主面、すなわち、導光層30の下面に設けられうる。ただし、図8に示す形態のように、光の導波方向に垂直な導光層30の主面または側面に位相差板60を設ける場合には、位相差板60はλ/2板であり、位相差板60に直角に入射した光の位相を180度ずらすような厚みに形成される。
【0097】
これにより、たとえ、偏光分離層40において光が導光層30側に屈折・反射され、鋭角に位相差板60に入射された場合でも、位相が略180度変更され、s偏光成分の光はs偏光成分のまま維持される。反射板70により反射され、再び、導光層30に戻り、偏光分離層40から出射される。これにより、p偏光成分の光が出射することが防止される。なお、上述の通り、導光層30内を導波する光は、通常、位相差板60に直角には入射しないので、λ/2位相差板60によって適度にp偏光成分からs偏光成分に変換される。
【0098】
(第5実施形態)
図9は第5実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0099】
図9は、偏光分離光均質化層80を備える面光源装置1を、図8でいうA方向から見た一部断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成は、同様の参照番号により説明する。
【0100】
第1〜4実施形態では、偏光分離層40と光均質化層50とを別体に形成している。しかし、図9に示すような偏光分離層40と光均質化層50とを一体化させた偏光分離光均質化層80を使用してもよい。
【0101】
図9に示すように、偏光分離光均質化層80は、第1ファイバ81、第2ファイバ82、および第1ファイバ81および第2ファイバ82を保持する第3保持媒体83を含む。第1ファイバ81は、導光層30の入射面30aに平行に伸延し、入射面30aに垂直方向に複数本が配列している。第2ファイバ82は、導光層30の入射面30aに垂直に伸延し、入射面30aに平行方向に複数本が配列している。すなわち、第1ファイバ81と第2ファイバ82とは相互に直交する方向に伸延・配列しており、第1ファイバ81と第2ファイバ82とが相互に編み込まれた状態で、第3保持媒体83中に保持されている。
【0102】
偏光分離光均質化層80において、第1ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、ならびに第3保持媒体の屈折率(nmatrix3)は下記式(4)および(5)を満たす。
【0103】
【数6】

【0104】
これにより、第1ファイバ81(縦糸)はs偏光成分のみを選択的に散乱させて偏光分離光均質化層80の上面である発光面から導出させる機能を果たし、第2ファイバ82(横糸)は、導光層30内を伝搬する光を面内方向に拡散して光の方向分布を均質化する機能を果たす。
【0105】
すなわち、第3保持媒体83の屈折率(nm)は、第1ファイバ81の常光線屈折率(no)と一致し、異常光線屈折率(ne)と相違する。したがって、光のp偏光成分は第1ファイバ81によって屈折せず直進し、光のs偏光成分のみが第1ファイバ81の異常光線屈折率(ne)の影響を受けて屈折・反射し、その一部が発光面から導出される。
【0106】
一方、第3保持媒体83の屈折率(nm)は、第2ファイバ82の常光線屈折率(no)と相違し、異常光線屈折率(ne)と相違する。したがって、光のs偏光成分は第2ファイバ82によって屈折せず直進し、光のp偏光成分のみが第2ファイバ82の異常光線屈折率(ne)の影響を受けて屈折・反射して面内方向に拡散される。
【0107】
本実施形態におけるファイバ(81,82)および第3保持媒体83としては、上記で例示したファイバ(41,51)および保持媒体(42,52)が同様に好ましく使用されうる。ただし、本形態では、屈折率の上記関係式(4)(5)を満たすべく、第1ファイバ81と第2ファイバ82とは異なる材質から形成される。
【0108】
(第6実施形態)
図10は第6実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0109】
上述した多様な第1〜第5実施形態(図1〜9)では、導光層30は、第1保持媒体42および第2保持媒体52とは異なる材料により形成されている。しかし、導光層30は、第1保持媒体および第2保持媒体の少なくとも一方と同一の材料から形成されていてもよい。図10に示す第6実施形態は、図4に示す実施形態において導光層34は、第1実施形態の導光層30が第1保持媒体32と同一の材料で形成された場合に相当する。あるいは、図示していないが、第1実施形態の導光層を第2保持媒体と同一の材料で形成し、導光層と光均質化層との一体層として形成してもよい。あるいは、図示していないが、第1実施形態の導光層と第1保持媒体と第2保持媒体とを全て同一の材料で形成し、導光層と偏光分離層と光均質化層との一体層としてもよい。さらには、図9に示す偏光分離層と光均質化層とが一体化された形態において、導光層を第3保持媒体と同一の材料で形成し、偏光分離光均質化層と導光層との一体層としてもよい。このように、導光層を偏光分離層および/または光均質化層と一体化させることにより、製造が容易となり、また、コストダウンも可能であり、薄膜化できるためデバイスの薄型化が可能な点で優れる。
【0110】
図10の形態においては、導光層と偏光分離層との一体層中の上部領域に第1ファイバが配列されているが、一体層中の全体に第1ファイバが配置されていてもよいし、一体層中の他の領域に第1ファイバが配置されていてもよい。
【0111】
(第7実施形態)
図11は第7実施形態の面光源装置の概略構成を示す図面である。
【0112】
上述した多様な第1〜第6実施形態(図1〜10)において、光源部10は、導光板20を構成する導光層30の短軸側の一方の側面に配置されている。しかし、面光源装置1は、複数の光源部10を有していてもよい。例えば、図11に示す面光源装置1のように、光源部10が導光板20を構成する導光層30の短軸側の両方の側面に配置されてもよい。なお、図11に示す第5実施形態は、図8に示す第4実施形態において、反射板70に代えて、光源部10が設けられた場合に相当する。図示していないが、第3実施形態以外の形態、例えば、第1、2,4の実施形態においても同様に導光層30の短軸側の両方の側面に光源部10を配置してもよい。さらに、場合によっては、導光層30の長軸側の発光面以外の側面に追加の光源部10を配置してもよい。
【実施例】
【0113】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0114】
[実施例1]
(1)導光層の準備
導光層として、PMMA(サイズ:6cm×9cm)を準備した。
【0115】
(2)偏光分離層の形成
この導光層の上面に、第1ファイバとしてのPETファイバ(材質:ポリエチレンテレフタレート、no=1.5449、ne=1.7200、外周面の表面粗さRz=2μm、断面形状:直径20μmの円)を同一方向に隙間がないように15層の厚さで配列させ、硬化後の屈折率が1.545となるように設計した第1保持媒体としてのUV硬化樹脂(大阪ガスケミカル社製EA−F5503;40重量部、新中村化学工業社製MKエステルA-400;58重量部、およびチバスペシャリティケミカル社製光重合開始剤イルガキュア184;2重量部の混合物)を浸透させた。真空脱泡してファイバとUV樹脂の間の空気を除去したのち、離型処理を施したガラス板で上部を覆い、UVランプを使用して樹脂を硬化させた後、ガラス板を剥離することにより、導光層上に偏光分離層を形成した。偏光分離層の断面をレーザー顕微鏡(装置:キーエンス社製VK−9600)により観察したところ、図11に示すように、偏光分離層は同一方向に整列した第1ファイバがUV硬化樹脂に保持された構造を有することが確認された。
【0116】
(3)光均質化層の形成
導光層の下面に、第2ファイバとしてのN610ファイバ(材質:ナイロン6,10、no=1.5217、ne=1.5711、断面形状:直径50μmの円)を偏光分離層中の第一ファイバの配列方向と直交する方向に隙間がないように3層の厚さで配列させ、硬化後の屈折率が1.571となるように設計した第2保持媒体としてのUV硬化樹脂(新中村化学工業社製MKエステルA−BPE−4、74重量部、新中村化学工業社製MKエステルA-LEN-10、24重量部、およびチバスペシャリティケミカル社製光重合開始剤イルガキュア184、2重量部の混合物)を浸透させた。そして、偏光分離層の形成と同様にして、樹脂を硬化させることにより、導光層上に光均質化層を形成した。
【0117】
(4)光源部、位相差板、反射板の配置
次いで、導光層の側面に、光源であるLED9個が一次元配列(直列配列)した光源部を導光層の短軸側に設置した。この際、光源部が設置される導光層の側面は、偏光分離層中の第1ファイバの長手方向に平行で、かつ、光均質化層中の第2ファイバの断面方向に垂直な面とし、LEDの配列方向は偏光分離層中の第1ファイバの長手方向に平行な方向とした。
【0118】
その後、光源部を設置した面と反対側の導光層の側面にλ/4位相差板を配置し、さらに、偏光分離層の上面(発光面)および光源部が設置された面以外の全ての面に反射板を取り付けた。これにより、面光源装置を作製した。なお、本実施例の面光源装置は図1に示す第1実施形態に相当する。
【0119】
[実施例2]
導光層の上面に光均質化層を形成し、かつ、この光均質化層の上面に偏光分離層を形成したこと、および、光均質化層を構成する第2ファイバとしてPETファイバ(材質:ポリエチレンテレフタレート、no=1.5449、ne=1.7200、外周面の表面粗さRz=2μm、断面形状:直径20μmの円)を使用し、第2保持媒体として硬化後の屈折率が1.605(大阪ガスケミカル社製EA−F5503;68重量部、ベンジルアクリレート;30重量部、およびチバスペシャリティケミカル社製光重合開始剤イルガキュア184;2重量部の混合物)となるように設計したUV硬化樹脂を使用したこと以外は、実施例1の方法と同様にして、面光源装置を作製した。なお、本実施例の面光源装置は図6に示す第2実施形態に相当する。
【0120】
[実施例3]
導光層の上面に偏光分離層を形成し、かつ、この偏光分離層の上面に光均質化層を形成したこと以外は、実施例2の方法と同様にして、面光源装置を作製した。なお、本実施例の面光源装置は図7に示す第3実施形態に相当する。
【0121】
[実施例4]
偏光分離層を構成する第1ファイバとしてPETファイバ(材質:ポリエチレンテレフタレート、no=1.5449、ne=1.7200、外周面の表面粗さRz=2μm、断面形状:一辺10umの正三角形)を使用したこと以外は、実施例2の方法と同様にして、面光源装置を作製した。
【0122】
[比較例1]
導光層の下面に光均質化層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして面光源装置を作製した。
【0123】
[評価]
上記実施例および比較例1で得られた面光源装置において、発光面から射出される光の輝度および輝度ムラならびに偏光度の測定を行った。ここで、輝度および輝度ムラの測定、偏光度の測定はそれぞれ、2次元色彩輝度計コニカミノルタ製 CA−2000またはAUTRONIC−MELCHERS GmbH製Conoscope80を偏光板と組み合わせて使用することにより行い、任意の偏光成分の比率を求めた。なお、輝度測定は、直列配列した9個のLEDを30mAの定電流で駆動させることにより行い、その際に発光される光の導光板の発光面中央における正面輝度を測定した。結果を表2に示す。図13および図14に、CA−2000により測定された、実施例2および比較例1で作製した面光源装置の導光板の上面(発光面)から射出される光の二次元輝度分布を示す。なお、他の実施例1,3,4においても導光板の上面(発光面)で図13と同様の二次元輝度分布が得られた。
【0124】
【表2】

【0125】
光均質化層を有する実施例1〜4の面光源装置では、図13に示されるように、積層体の上面から射出される光に、筋ムラは観測されず、不連続な光源であるLEDを使用した場合であっても輝度ムラを解消することができることがわかった。また、これらの実施例で得られた面光源装置は、高い偏光分離能を達成できることが確認された。
【0126】
一方、比較例1で作製された面光源装置では、偏光分離比は実施例の場合と同等であったが、図14に示されるように、積層体の上面から射出される光に、筋ムラが明確に観測された。
【0127】
さらに、偏光分離層を構成する第1ファイバの断面形状が正三角形である実施例4の面光源装置では、第1ファイバの断面形状が円である実施例2の面光源装置に比べて、導光層と垂直な方向への光(積層体の上面から射出される光)の強度(輝度)が、2倍大きかった。
【0128】
以上のことから、本発明の面光源装置は高い偏光分離能を達成でき、かつ、LEDのような不連続な光源を使用した場合であっても光の筋ムラを防止できることが確認された。
【符号の説明】
【0129】
1 面光源装置、
10光源部、
11 光源、
12 光源間領域、
20 導光板、
30、34 導光層、
30a 入射面、
30b 発光面、
40 偏光分離層、
41、81 第1ファイバ、
42 第1保持媒体
50 光均質化層、
51、82 第2ファイバ、
52 第2保持媒体、
60 位相差板、
70 反射板、
80 偏光分離光均質化層、
83 第3保持媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から照射される光を側面である入射面から内部に導入する導光層と;
前記入射面に平行に伸延しかつ前記入射面に垂直に配列した複屈折性を有する複数の第1ファイバと、前記第1ファイバを保持し前記第1ファイバの常光線屈折率(no)または異常光線屈折率(ne)と一致する屈折率を備える等方性の第1保持媒体とを含み、前記導光層に積層されて当該導光層内の光のうち所望の偏光を前記導光層の一方の主面である発光面から導出する偏光分離層と;
前記入射面に垂直に伸延しかつ前記入射面に平行に配列した複屈折性の複数の第2ファイバ、および、前記第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)の少なくとも一方と異なる屈折率を備える等方性の第2保持媒体を含み、前記導光層に積層された光均質化層と;
を備える、導光板。
【請求項2】
前記第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、ならびに前記第2保持媒体の屈折率(nm)は下記式(1)を満たす、請求項1に記載の導光板。
【数1】

【請求項3】
光源から照射される光を側面である入射面から内部に導入する導光層と;
前記入射面に平行に伸延しかつ前記入射面に垂直に配列した、複屈折性を有する複数の第1ファイバと、前記入射面に垂直に伸延し、かつ、前記入射面に平行に配列した、複屈折性を有する複数の第2ファイバと、が相互に編みこまれた状態で第3保持媒体中に保持されてなり、
前記導光層に積層されて当該導光層内の光のうち所望の偏光を前記導光層の一方の主面である発光面から導出する偏光分離層と;
を備え、
前記第1ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、前記第2ファイバの常光線屈折率(no)および異常光線屈折率(ne)、ならびに前記第3保持媒体の屈折率(nmatrix3)は下記式(4)および(5)を満たす、導光板。
【数2】

【請求項4】
前記第1ファイバの外周面の表面粗さ(Rz)は0.1〜10μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項5】
前記第1ファイバの半径方向の断面形状が多角形である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項6】
前記導光層に取り付けられ、前記導光層内の光の偏光方向を変換する位相差板と;
前記偏光分離層の積層面とは反対側の前記導光層の主面および前記導光層の入射面以外の側面の少なくとも一方に積層され、導光層内方に光を反射する反射板と;
をさらに備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項7】
導光層が第1保持媒体および第2保持媒体の少なくとも一方と同一の材料から形成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導光板。
【請求項8】
複数の光源が間欠的に一次元または二次元配列されてなる光源部と;
請求項1〜7のいずれか1項に記載の導光板と;
を備える面光源装置。
【請求項9】
隣接する光源間の中心線上に位置する第2ファイバの密度は、前記光源の光照射方向の軸線上に位置する第2ファイバの密度より大きい、請求項8に記載の面光源装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−7901(P2013−7901A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140649(P2011−140649)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】