説明

導光板

【課題】光の入射方向の幅と厚みとの比(L/T)が150以上の極めて薄い導光板であっても、転写性、耐熱性等に優れた色ムラが少ない導光板を提供する。
【解決手段】光路長50mmで波長420nmにおける光線透過率T420が75%以上で、波長750nmにおける光線透過率T750が87%以上を満足する環状オレフィン系樹脂組成物を成形してなる。ISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sであることが好ましい。また、環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が100℃以上であるものを用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系樹脂組成物を成形してなる導光板、及び導光板等の表面に微細な凹凸を備えた成形体において、上記微細な凹凸の転写性を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導光板、光学レンズ等の光学成形体は、熱可塑性樹脂を射出成形することにより製造されている。また、このような光学成形体を製造するための熱可塑性樹脂としては、透明性や成形加工性、機械的強度等に優れる、ノルボルネン系付加重合体やノルボルネン系開環重合体水素化物が用いられている。
【0003】
一般に、良好な成形体を得るには、成形時における溶融流動性に優れる樹脂を使用することが重要であると考えられている。熱可塑性樹脂の有する溶融流動性が悪いと、成形時の加工条件(例えば、温度や圧力等)を変化させても、良好な成形品を得ることができなかったり、得られる成形体の形状に制限が課せられたりする等の不都合を生じることがある。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定の数平均分子量を有する熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなり、ゲートからの流れ方向に沿って25mm以上に渡り、厚みが700μm以下の薄肉部を有する射出成形品が提案されているが、用いる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の流動性が悪く、転写性が劣るために良好な成形品が得られない場合があった。
【0005】
成形時における溶融流動性に優れる樹脂を使用して成形体を製造する従来技術として、例えば、特許文献2には、透明性が高く、成形加工性に優れ、しかも機械的強度と耐熱性とを兼ね備えた高分子として、280℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(以下、「MFR」ということがある)が60〜200g/10分であるノルボルネン系付加重合体が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、透明性が高く、成形加工性に優れ、しかも機械的強度と耐熱性とを兼ね備えた高分子として、280℃、荷重2.16kgにおけるMFRが50〜300g/10分であるノルボルネン系開環重合体水素化物が開示されている。
【0007】
しかし、射出成形法により、さらに厚みを少なくした薄型の成形体を製造する場合において、上記文献記載のように、用いるノルボルネン系付加重合体やノルボルネン系開環重合体水素化物のMFRを調節するのみでは、得られる射出成形体が耐熱性に劣る場合や、耐熱性に優れていても離型時に割れが生じる場合があり、問題となることが指摘されている。一般的に、熱可塑性樹脂を使用して射出成形体を製造する場合において、高い転写性を確保するためには、MFRの値を大きくする(すなわち、流動性を高める)必要があり、そのためには、樹脂の分子量を低分子量化しなければならない。しかし、用いる熱可塑性樹脂の分子量があまりに小さくなると、射出成形体の曲げ強度が不足して、離型時に成形体に割れが生じやすくなるからである。
【0008】
そこで、優れた転写性、耐熱性及び強度特性(離型時の割れ、応力試験での割れが生じない)を兼ね備えた薄型の射出成形体を得るための技術が開示されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平5−47034号公報
【特許文献2】特開2000−169558号公報
【特許文献3】特開2000−219725号公報
【特許文献4】特開2006−124657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献4に記載の発明によれば、優れた転写性、耐熱性、及び強度特性を備える成形体が得られる、とされている。しかしながら、近年では、さらなる薄型化が求められており、具体的には導光板において、光の入射方向の幅と厚みとの比(L/T)が150以上の導光板が求められている。
【0010】
このような薄型の導光板を製造するためには、特許文献4に記載されている技術では充分ではない。このため、近年求められるような薄型の導光板製造のための好適な材料が求められているが、上記の通り、転写性を高めるために材料の流動性を高くすると、耐熱性が低くなってしまう傾向にある。さらに、上記の通り、転写性、耐熱性等に優れ、色ムラを生じない導光板を得るための研究は従来から盛んに行われており、性能を飛躍的に向上させることは極めて困難であり実現には至っていない。
【0011】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、光の入射方向の幅と厚みとの比(L/T)が150以上の極めて薄い導光板であっても、転写性、耐熱性等に優れ、色ムラを生じない導光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、光路長を長くして測定した可視光領域の光線透過率を特定値より高く、且つ、溶融粘度を特定値より高くした環状オレフィン樹脂組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には本発明は以下のものを提供する。
【0013】
(1) 光路長50mmで波長420nmにおける光線透過率T420が75%以上で、波長750nmにおける光線透過率T750が87%以上を満足する環状オレフィン系樹脂組成物を成形してなる導光板。
【0014】
(2) 前記環状オレフィン系樹脂組成物のISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sであり、前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が100℃以上である(1)に記載の導光板。
【0015】
(3) 光の入射方向の幅(L)と、厚み(T)と、の比(L/T)が150以上である(1)又は(2)に記載の導光板。
【0016】
(4) 前記環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂として下記一般式(II)で示される繰り返し単位を含む重合体を含有する(1)から(3)のいずれかに記載の導光板。
【化1】

(式中、R’〜R’は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R’とR’、R’とR’は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R’又はR’と、R’又はR’とは、互いに環を形成していてもよい。)
【0017】
(5) 前記環状オレフィン系樹脂組成物が、ノルボルネンとエチレンとの共重合体を含有する(1)から(4)のいずれかに記載の導光板。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、転写性、耐熱性等に優れ、且つ、色ムラを生じない薄型導光板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0020】
本発明の導光板は、光路長を長くして測定した波長420nmの光線透過率T420と波長750nmの光線透過率T750を特定の値にすることを特長とする。また、通常、樹脂の流動性を向上させようとすると、耐熱性等の物性が低下する傾向にあるが、後述する本発明に好適な環状オレフィン系樹脂組成物を用いることで、耐熱性等を充分に備えた導光板として必要な物性を保持しつつ、流動性を充分に高めることができ、その結果、非常に優れた導光板を得ることができる。
【0021】
<環状オレフィン系樹脂組成物>
[環状オレフィン系樹脂]
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィン成分を共重合成分として含むものであり、環状オレフィン成分を主鎖に含むポリオレフィン系樹脂であれば、特に限定されるものではない。例えば、
(a1)環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、
(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物、
(a3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物、を挙げることができる。
【0022】
また、本発明に用いられる環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、
(a4)上記(a1)〜(a3)の樹脂に、さらに極性基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したもの。
【0023】
極性基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、アミド基、エステル基、ヒドロキシル基等を挙げることができ、極性基を有する不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、マレイン酸アルキル(炭素数1〜10)エステル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル等を挙げることができる。
【0024】
本発明においては、上記の環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂(a1)〜(a4)は、1種単独であっても、二種以上を混合使用してもよい。
【0025】
また、本発明に用いられる環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、例えば、TOPAS(登録商標)(TOPAS Advanced Polymers社製)、アペル(登録商標)(三井化学社製)、ゼオネックス(登録商標)(日本ゼオン社製)、ゼオノア(登録商標)(日本ゼオン社製)、アートン(登録商標)(JSR社製)等を挙げることができる。
【0026】
本発明の組成物に好ましく用いられる(a2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体としては、特に限定されるものではない。特に好ましい例としては、〔1〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、〔2〕下記一般式(I)で示される環状オレフィン成分と、を含む共重合体を挙げることができる。
【化2】

(式中、R〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、RとR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。また、nは、0又は正の整数を示し、nが2以上の場合には、R〜Rは、それぞれの繰り返し単位の中で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0027】
一般式(I)におけるR〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0028】
〜Rの具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0029】
また、R〜R12の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0030】
とR10、又はR11とR12とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0031】
又はR10と、R11又はR12とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0032】
一般式(I)で示される環状オレフィン成分の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0033】
さらに好ましい環状オレフィン系樹脂は、下記の一般式(II)で示される環状オレフィン成分を重合成分として含むものであり、例えば、(b1)から(b3)のようなものが挙げられる。
【0034】
【化3】

(式中、R’〜R’は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R’とR’、R’とR’は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R’又はR’と、R’又はR’とは、互いに環を形成していてもよい。)
【0035】
(b1)環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、
(b2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物、
(b3)環状オレフィンの開環(共)重合体又はその水素添加物、を挙げることができる。
【0036】
また、本発明に用いられる特に好ましい環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、
(b4)上記(b1)〜(b3)の樹脂に、さらに極性基を有する不飽和化合物をグラフト及び/又は共重合したもの。
【0037】
極性基としては、上記段落0025で列挙した極性基と同様のものを挙げることができる。
【0038】
本発明においては、上記の特に好ましい環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂(b1)〜(b4)は、1種単独であっても、二種以上を混合使用してもよい。なお、本発明に用いる特に好ましい環状オレフィン系樹脂の中でも、環状オレフィン系樹脂(b2)が特に好ましい。α−オレフィンに由来する繰り返し単位の含有量と、環状オレフィンに由来する繰り返し単位の含有量と、を調整することで、環状オレフィン系樹脂組成物の溶融粘度を上記範囲に調整しやすいからである。
【0039】
また、本発明に用いられる特に好ましい環状オレフィン成分を共重合成分として含む環状オレフィン系樹脂としては、市販の樹脂を用いることも可能である。市販されている環状オレフィン系樹脂としては、TOPAS(登録商標)(TOPAS Advanced Polymers社製)等を挙げることができる。
【0040】
特に好ましく用いられる(b2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体としては、特に限定されるものではない。特に好ましい例としては、〔1〕上記一般式(II)で示される環状オレフィン成分と、〔2〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と、を含む共重合体を挙げることができる。
【0041】
〔〔1〕一般式(II)で示される環状オレフィン成分〕
本発明に好ましく用いられる環状オレフィン成分とエチレン等の他の共重合成分との付加重合体において、共重合成分となる一般式(II)で示される環状オレフィン成分について説明する。
【0042】
一般式(II)におけるR’〜R’は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。
【0043】
R’〜R’の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0044】
また、R’〜R’の具体例としては、例えば、水素原子;フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、ステアリル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、イソプロピルフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の置換又は無置換の芳香族炭化水素基;ベンジル基、フェネチル基、その他アルキル基にアリール基が置換したアラルキル基等を挙げることができ、これらはそれぞれ異なっていてもよく、部分的に異なっていてもよく、また、全部が同一であってもよい。
【0045】
R’とR’、又はR’とR’とが一体化して2価の炭化水素基を形成する場合の具体例としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基等のアルキリデン基等を挙げることができる。
【0046】
R’又はR’と、R’又はR’とが、互いに環を形成する場合には、形成される環は単環でも多環であってもよく、架橋を有する多環であってもよく、二重結合を有する環であってもよく、またこれらの環の組み合わせからなる環であってもよい。また、これらの環はメチル基等の置換基を有していてもよい。
【0047】
一般式(II)で示される環状オレフィン成分の具体例としては、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5,5−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ブチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−オクタデシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−メチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、5−プロペニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン等の2環の環状オレフィンを挙げることができる。
【0048】
これらの環状オレフィン成分は、1種単独でも、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記公報に記載の具体例の中では、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(慣用名:ノルボルネン)を単独使用することが流動性と光学特性のバランスを取り易い樹脂が得られるという理由で好ましい。
【0049】
〔〔2〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分〕
本発明に好ましく用いられる環状オレフィン成分とエチレン等の他の共重合成分との付加重合体の共重合成分となる炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィン成分は、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。
【0050】
〔1〕一般式(II)で表される環状オレフィン成分と〔2〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分との重合方法及び得られた重合体の水素添加方法は、特に限定されるものではなく、公知の重合方法に従って行うことができる。ランダム共重合であっても、ブロック共重合であってもよい。
【0051】
〔その他共重合成分〕
本発明の組成物に特に好ましく用いられる(b2)環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体は、上記の〔1〕一般式(II)で示される環状オレフィン成分と、〔2〕炭素数2〜20のα−オレフィン成分と以外に、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて他の共重合可能な不飽和単量体成分を含有していてもよい。
【0052】
任意に共重合されていてもよい不飽和単量体としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体等を挙げることができる。炭素−炭素二重結合を1分子内に2個以上含む炭化水素系単量体の具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
【0053】
また、用いられる重合触媒についても特に限定されるものではなく、チーグラー・ナッタ系、メタセシス系、メタロセン系触媒等の従来周知の触媒を用いて周知の方法により得ることができる。本発明に好ましく用いられる環状オレフィンとα−オレフィンの付加共重合体又はその水素添加物は、メタロセン系触媒やチーグラー・ナッタ系触媒を用いて製造されることが好ましい。
【0054】
メタセシス触媒としては、シクロオレフィンの開環重合用触媒として公知のモリブデン又はタングステン系メタセシス触媒(例えば、特開昭58−127728号公報、同58−129013号公報等に記載)が挙げられる。また、メタセシス触媒で得られる重合体は無機担体担持遷移金属触媒等を用い、主鎖の二重結合を90%以上、側鎖の芳香環中の炭素−炭素二重結合の98%以上を水素添加することが好ましい。
【0055】
[その他の樹脂等]
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂組成物には、異なる環状オレフィン系樹脂を二種類以上含有するものであってもよい。特に、溶融粘度の非常に低い環状オレフィン系樹脂をブレンドすることにより、環状オレフィン系樹脂組成物のISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度を45Pa・sから85Pa・sの好ましい範囲に調整しやすくなる。
【0056】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂組成物には、本発明の効果を害さない範囲でその他の樹脂を含有させてもよい。
【0057】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂組成物には、発明の効果を害さない範囲で、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した組成物も含まれる。
【0058】
[環状オレフィン系樹脂の物性]
環状オレフィン系樹脂ガラス転移点は100℃以上であることが好ましい。ガラス転移点を上記範囲にすることで、耐熱性の高い導光板を得ることができる。より好ましいガラス転移点は120℃以上である。なお、ガラス転移点(Tg)は、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した値を採用する。
【0059】
<環状オレフィン系樹脂組成物の物性>
本発明の樹脂組成物の流動性は、一定のピストンフロー剪断速度下の条件のもとでの溶融粘度を指標として反映させることができる。Pa・s単位で得られるが、数値の低い方が溶融時の流動性に優れ、成形時の流動性に優れる。なお、一般には、流動性の指標として、メルトフローレイト(MFR)が用いられるが、MFRの測定は一定荷重下での測定となり、樹脂によりピストンの剪断速度は異なってくる。これに対し、一定のピストンフローの下での溶融粘度測定指標のほうが、実際の射出成形が一定のピストンフローで行われることを考慮すると、実際の流動特性により近い指標であると考えられるため、本発明ではこのような一定剪断速度条件における溶融粘度を流動性の指標とする。
【0060】
本発明に用いる環状オレフィン系樹脂組成物は、ISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sであることが好ましい。より好ましくは45Pa・sから60Pa・sである。環状オレフィン系樹脂組成物の溶融粘度が45Pa・s未満になると導光板としての機械的強度が低下して好ましくなく、溶融粘度が85Pa・sを超えると流動性が悪くなり転写性に優れた導光板を得ることが難しくなる傾向にある。
【0061】
<導光板>
本発明の導光板は上記環状オレフィン系樹脂組成物を成形することで得られる。成形方法は特に限定されないが射出成形であることが好ましい。導光板に微細な凹凸を付与しやすいからである。
【0062】
本発明の導光板は、光路長50mmで波長420nmで測定した光線透過率が75%以上、波長750nmで測定した光線透過率が87%以上の環状オレフィン樹脂組成物を用いることにより、導光板から出射される光の色ムラが導光板面で少なくなり、且つ、輝度が高くなり、色調の良い液晶表示素子が得られる。
【0063】
導光板のサイズは特に限定されないが、本発明は極めて薄い導光板であっても優れた転写性、耐熱性等を備えることを特徴とする。上記の通り、ISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sで、ガラス転移点が100℃以上の環状オレフィン樹脂組成物を用いて導光板を作製しているからである。「極めて薄い」とは、例えば、光の入射方向の幅(L)と、厚み(T)と、の比(L/T)が150以上であるような導光板であっても容易に得ることができる。また、上記の特に好ましい環状オレフィン系樹脂組成物を用いれば、L/Tが200以上の導光板であっても高品質な導光板を容易に得ることができる。
【0064】
本発明の導光板は優れた転写性を特徴とする。優れた転写性は、上記の通り、特に好ましい環状オレフィン系樹脂組成物を用いることで容易に実現される。「優れた転写性」とは、実施例に記載された方法で測定した転写率が95%以上であることを指す。より好ましい転写率は97%以上であり、このような高い転写率も本発明の導光板であれば、上記の特に好ましい環状オレフィン系樹脂組成物の流動性が高いため容易に実現可能である。
【0065】
実施例に記載の方法で測定した導光板の輝度は、4500cd/m以上であることが好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
<材料>
環状オレフィン系樹脂1(樹脂1):TOPAS 5013L−10(ポリプラスチックス社製)
環状オレフィン系樹脂2(樹脂2):TOPAS 6013S−04(ポリプラスチックス社製)
環状オレフィン系樹脂3(樹脂3):ZEONOR 1060R(日本ゼオン社製)
環状オレフィン系樹脂4(樹脂4):ZEONOR 1420(日本ゼオン社製)
環状オレフィン系樹脂5(樹脂5):TOPAS TM(ポリプラスチックス社製)
【0068】
以下に示す実施例及び比較例に用いた環状オレフィン系樹脂組成物の溶融粘度、ガラス転移点、環状オレフィン成分の含有量を表1に示した。
【0069】
実施例及び比較例の環状オレフィン系樹脂組成物の溶融粘度は、260℃、剪断速度1216/秒における溶融粘度であり、その測定は、直径(D)1mm、長さ(L)20mmのキャピラリーダイを用いて、ISO11443に準拠する方法で行った。
【0070】
ガラス転移点(Tg)は、DSC法(JIS K7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した。
【0071】
TOPAS5013L−10(樹脂1)を用いて2軸押出機で設定温度がそれぞれ260℃と300℃で溶融押出して2種のペレットを作製した。これらのペレットを樹脂6と樹脂7とする。
樹脂6: TOPAS5013L−10の260℃押出品
樹脂7: TOPAS5013L−10の300℃押出品
【0072】
【表1】

【0073】
<実施例1から4、比較例1、2>
画面サイズ3inch、幅38.9mm、長さ72.0mm、厚さ0.3mm(反ゲート側の厚みは金型キャビティのコマ変更で実施した。この反ゲート側の厚みを製品厚という)、導光板の光学素子の形状がVカットプリズムの金型を用い、表2に示す成形条件で実施例及び比較例の導光板の作製を行った。導光板の形状を図1に示した。
【0074】
【表2】

【0075】
[転写率の測定]
転写率はレーザー顕微鏡(キーエンス社製)を用いて、図2に示すゲート側、反ゲート側、中心の測定箇所のほぼ中心部分の凸部の高さをそれぞれ測定した。100%転写された場合は3.25μmであることから、転写率を求め、結果を表5に示した。なお、凸部の高さは5回測定の平均を用いた。
【0076】
[輝度の測定]
上述の成形した導光板を用いて、表3に示す構成でバックライトユニットを作成した。さらに、表4のLEDを図1に示す様に、3個サイドエッジに取り付けた。20mAの電流を流して3個のLEDを点灯して導光板の輝度を測定した。輝度測定には、トプコン社製BM−7型輝度計を用いて、図2に示す様に、9分割した導光板の表面の中心部3箇所を測定した。5回測定して平均した測定値を表5に示した。
【0077】
【表3】

【表4】

【表5】

【0078】
実施例1から4の導光板は、高い転写率と、高い輝度と、を備え、導光板として優れることが確認された。特に実施例1、4は、転写率が96%以上、輝度が4500cd/m以上になり、特に優れた導光板であることが確認された。
【0079】
<実施例5、比較例3,4>
画面サイズ12.1inch(幅270.0mm、長さ187.4mm)、厚さ0.5mm、導光板の光学素子の形状がドット形状プリズムの金型に変更し、成形条件を表6に記載の条件に変更した以外は、実施例1等と同様にして導光板を作製した。
【0080】
【表6】

【0081】
実施例1等と同様にして、実施例5、比較例3の導光板の転写性を測定した。測定結果を表7に示した。
【0082】
【表7】

【0083】
実施例5では98%以上の転写率を示し、良好な導光板が得られた。
【0084】
<実施例6と7、比較例4>
[光線透過率測定用サンプルの成形]
材料は上述の樹脂1、樹脂6、樹脂7を用いた。金型として、50mm長さの6mm角で、長さ方向の中心に4mm角の断面を持つサイドゲートを設けてある棒状試験片を用いて、型締め力75tの電動式成形機(住友重機械工業株式会社製、SE75D)より、シリンダー温度280℃、金型温度120℃、射出速度1m/minにて成形を行った。尚、サンプル端面部の金型表面は研磨して表面粗さを5nmとしている。
【0085】
[光線透過率測定]
日本分光(株)製分光光度計V570を用い、測定光を絞って狭くする事を目的としてφ4の穴を明けた黒色の金属片をサンプル設置部の入光側にセットし、装置の立ち上げを行った。その後、このφ4の穴がサンプル端面の中心に来るようにサンプルをセットし、光路長50mmで波長420nmと750nmの光線透過率(T420とT750)を測定した。得られた光線透過率を表8に示す。
【0086】
[色ムラ観察]
実施例1と同様にして、導光板を作製して、バックライトユニット作製とLEDを設置した。10mAの電流を流して点灯し、導光板の出射光を目視で色ムラを観察した。色ムラの観察結果を表8に示す。
【表8】

【0087】
420が75%以上、T750が87%以上の実施例6と7は色ムラがない良好な導光板が得られた。
【0088】
上記の通り、波長420nmの光線透過率を75%以上、波長750nmの光線透過率を85%以上で、ISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sで、ガラス転移温度100℃以上の環状オレフィン樹脂組成物を用いることにより、転写性、耐熱性等に優れた且つ色ムラが少ない薄型導光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】(a)実施例の導光板の正面図である(b)実施例の導光板の側面図である。
【図2】転写性、輝度の測定箇所を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路長50mmで波長420nmにおける光線透過率T420が75%以上で、波長750nmにおける光線透過率T750が87%以上を満足する環状オレフィン系樹脂組成物を成形してなる導光板。
【請求項2】
前記環状オレフィン系樹脂組成物のISO11443に準拠して260℃、剪断速度1216/秒に於いて測定した溶融粘度が45Pa・sから85Pa・sであり、
前記環状オレフィン系樹脂組成物に含まれる環状オレフィン系樹脂のガラス転移点が100℃以上である請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
光の入射方向の幅(L)と、厚み(T)と、の比(L/T)が150以上である請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
前記環状オレフィン系樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂として下記一般式(II)で示される繰り返し単位を含む重合体を含有する請求項1から3のいずれかに記載の導光板。
【化1】

(式中、R’〜R’は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、R’とR’、R’とR’は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、R’又はR’と、R’又はR’とは、互いに環を形成していてもよい。)
【請求項5】
前記環状オレフィン系樹脂組成物が、ノルボルネンとエチレンとの共重合体を含有する請求項1から4のいずれかに記載の導光板。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−113969(P2010−113969A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285954(P2008−285954)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年10月24日、及び同年10月28日 ポリプラスチックス株式会社のホームページhttp://www.polyplastics.com/jp/index.vmに掲載。
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】