導水装置
【課題】 流量が大きく迅速に漏水を導水場所まで導くことができ、かつ設置作業が容易な導水装置を提供することである。
【解決手段】 導水装置1は、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体2と、導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体3と、前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体4と、一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体5とを含むので、毛細管現象およびサイホンの原理を利用して漏水を漏水溜まり部から導水場所に迅速に導くことができる。
【解決手段】 導水装置1は、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体2と、導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体3と、前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体4と、一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体5とを含むので、毛細管現象およびサイホンの原理を利用して漏水を漏水溜まり部から導水場所に迅速に導くことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば漏水などの水を導水場所に導くための導水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータピットおよび地下室など、コンクリートで構築された地下構造物の壁および床構造体に、気温の変化によるコンクリートの膨張および収縮ならびに地震などの振動によって亀裂が生じる場合がある。この亀裂から地下水および雨水が地下構造物内の空間に滲出することがある。また、壁と床構造物とのコンクリート打継ぎ手部分である目地部から地下水および雨水が滲出することがある。さらに、コンクリート打設後の硬化過程で構造物に空隙が生じる場合がある。この空隙からも雨水および地下水などが滲出することがある。
【0003】
このように地下構造物内の空間に滲出した水を漏水という。漏水は、構造物の劣化をひきおこし、コンクリートの部分的な剥離および脱落の原因となる。このような場合、漏水を漏水溜まり部から構造物の床下にある導水場所である排水ピットまで導き、排水ピットに一時的に貯水した後に排水ポンプによって下水道などの排水処理設備に排出する。
【0004】
図12は、従来の技術の導水構造101を示す鉛直断面図である。導水構造101は、地下構造物の床構造体8に滲出した漏水106を、排水ピット127まで導くための構造である。導水構造101は、漏水が滲出す部分である漏水溜まり部128から排水孔102まで導水溝103を形成することによって、床構造体108に形成される構造である。導水溝103は、漏水溜まり部128から排水孔102に向かうにつれて下方に傾斜する勾配を有しており、漏水溜まり部128から排水ピット127まで漏水106を導くことができる。
【0005】
図13は、他の従来の技術の導水装置101Aを示す鉛直断面図である。図13の導水装置101Aは、図12に示す導水装置101と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
【0006】
図13の導水装置101Aでは、導水溝103に導水体である導水紐119が設けられる。導水紐119は、紐であり、付着した水が毛細管現象によって導水紐に浸透する。導水紐119は、一端部が漏水溜まり部128に配置され、他端部が排水孔102から排水ピット127に向けて垂下される。導水溝103は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂から成る被覆材121によって上方から覆われ、導水紐119が導水溝103に固定される。被覆材121によって導水溝103を覆うにあたって、エポキシ樹脂を含む被覆材121が固化する前に、導水紐119に浸入してしまうことを防ぐために、導水紐119は、アルミ箔122によって被覆されている。
【0007】
導水装置101Aでは、漏水溜まり部128で導水紐119の一端部に水が付着すると、毛細管現象によって導水紐119の一端部から他端部に漏水106を移動させて、排水ピット127に漏水106を導くことができる。
【0008】
図14は、さらに他の従来の技術の導水装置101Bを示す鉛直断面図である。図14の導水装置101Bは、図13に示す導水装置101Aと類似しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
【0009】
図14の導水装置101Bは、吸水管125と、導水紐119と、内径3〜5mmの導水管126とを有する。吸水管125は、床構造体108に形成された導水溝103に設けられ、漏水溜まり部128で一端部が開口して設けられている。吸水管125の他端部は、排水孔102から下方へ突出して吸水管の一端部よりも下方に配置されている。導水紐119は、吸水管125に満たされた状態で設けられる。また、導水紐119は、一端部が吸水管125の一端部から突出して漏水溜まり部128に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置されている。吸水管125の他端部には、導水管126が接続され、導水管126は、排水ピット127に向って開口している。また導水装置101Bでは、吸水管125および導水紐119の一端部が被覆材121およびアルミ箔122で被覆される。
【0010】
この導水装置101Bは、第1の排水動作段階として、導水紐119の一端部に水が付着すると、毛細管現象によって吸水管125を透して、漏水106が導水管126まで導かれ、導水管126から排水ピット127に排出される。導水管126の他端部から漏水が排出されると、導水装置101B内の漏水の排水方向上流側の内部空間が減圧され、吸水管125の漏水溜まり部128側の端部から漏水を吸引する。漏水106の吸引とともに第2の排水動作段階に移行し、サイホンの原理によって、漏水溜まり部128の漏水106が排水ピット127に連続的に導かれる(たとえば特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特許第3560921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図12に示す導水構造101では、導水溝103に塵および埃が入り、漏水106の流路を塞ぎ、漏水106が円滑に導水溝103を流れない場合がある。また、コンクリート構造物の亀裂などから滲出する漏水106には、水酸化カルシウムが溶けている場合がある。漏水106が二酸化炭素などの炭酸ガスを吸収すると、炭酸ガスと水酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウム(以下「エフロ」という。)が析出する。
【0013】
導水溝103は外気に晒されているので、導水溝103を流れる漏水106が炭酸ガスを吸収し、エフロが導水溝103および排水孔102に析出し漏水の流路を塞ぐことがある。エフロの析出によって漏水106の流路が塞がれると、漏水106が円滑に導水溝103を流れなくなる。したがって漏水106を大きな流量で排水ピット127に導くことができない場合がある。
【0014】
また図13に示す導水装置101Aでは、図12の導水装置101の問題点は解決することができるが、漏水106を、毛細管現象によって、排水ピット127まで導く構造である。毛細管現象によって、略水平方向に水を導く場合は、導水距離は時間の平方根にほぼ比例するので、たとえば導水装置101Aの略水平方向の導水距離が2倍になると、漏水が導かれる時間が約4倍となり、導水距離が3倍になると漏水が導かれる時間が約9倍となる。
【0015】
このように、導水装置101Aを用いた場合、略水平方向の導水距離が長くなると、漏水溜まり部128の漏水106を排水ピット127まで迅速に導くことができない。さらに、導水紐119を設置した導水溝103および排水孔102付近にエフロが析出しないように導水紐119全体をエポキシ樹脂などによって被覆し、外気から遮断する必要がある。このように漏水106を迅速に排水ピット127に導くことができない場合があるうえ、設置作業に手間を要する。
【0016】
また図14に示す導水装置101Bでは、導水紐119の毛細管現象による導水動作から、サイホンの原理による導水動作に移行できるようにしているが、サイホンの原理による導水動作に移行したとき、導水紐119が邪魔をしてしまう。具体的には、吸水管125が形成する管路に導水紐119が設けられているので、サイホンの原理によって吸水管の一端部から吸引された漏水106が、前記管路を流れるとき、漏水106と導水紐119との間に摩擦が生じる。したがって漏水106は、中空の管路を移動する場合に比べて、導水紐119によって大きな抵抗を受ける。
【0017】
このように摩擦による流路抵抗が大きくなると、漏水溜まり部128から排水ピット127までの水平距離が短い場合は、漏水106を排水ピット127まで導くことができたとしても、漏水溜まり部128から排水ピット127までの水平距離が長くなると、吸水管によって形成される管路を移動する漏水の流量が少なくなる。漏水の流量が少ない場合、漏水溜まり部128と排水ピット127との落差を大きくし、導水装置1の鉛直方向の導水距離を長くすれば、流量を大きくすることは可能であるが、そのような落差を確保することは困難である。このように漏水106を大きな流量で排水ピット127に導くことができない場合がある。
【0018】
本発明の目的は、流量が大きく迅速に漏水を導水場所まで導くことができ、かつ設置作業が容易な導水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体と、
一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置である。
【0020】
本発明に従えば、導水体の一端部に付着した水溜り部の水は、毛細管現象によって導水体に浸透する。導水路本体体の他端部は一端部よりも下方に配置されているので、導水体に浸透した水が導水体の他端部から落下する。導水体から落下した水は、排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下する。
【0021】
このとき、導水路の一端が水溜り部の水によって、塞がれていると、導水路が減圧される。導水路が減圧されると、導水路の一端側に吸引力が発生する。
【0022】
このような吸引力は、導水装置の最上部に関して排水方向下流側に存在する水に作用する重力が、前記最上部に関して排水方向上流側に存在する水に作用する重力より大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、導水路の一端に吸引された水を導水路の他端に移動させ、排出管路の他端から排出することができる。
【0023】
このように、導水装置は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部に水が溜まり導水路の一端が水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路に水を透し、排出管路の他端から排出することによって、水溜り部から導水場所へ連続して導くことができる。
【0024】
また、通路形成体が形成する通路によって、導水路の両端にわたって導水体が存在しない流路が確保されるので、導水体が導水路に満たされた状態で設けられている場合と比較して、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0025】
また本発明は、水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
一端から他端にわたって連続したバイパス管路を有し、一端部が水溜まり部に設けられるバイパス管路体と、
一端が導水路本体の他端とバイパス管路体の他端とに連なり、他端がバイパス管路体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置である。
【0026】
本発明に従えば、導水体の一端部に付着した水溜り部の水は、毛細管現象によって導水体に浸透する。導水路本体体の他端部は一端部よりも下方に配置されているので、導水体に浸透した水が導水体の他端部から落下する。導水体から落下した水は、排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下する。
【0027】
このとき、バイパス管路の一端が水溜り部の水によって、塞がれていると、バイパス管路が減圧される。バイパス管路が減圧されると、バイパス管路の一端側に吸引力が発生する。
【0028】
このような吸引力は、導水装置の最上部に関して排水方向下流側に存在する水に作用する重力が、前記最上部に関して排水方向上流側に存在する水に作用する重力より大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、バイパス管路の一端に吸引された水をバイパス管路の他端に移動させ、排出管路の他端から排出することができる。
【0029】
このように、導水装置は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部に水が溜まりバイパス管路の一端が水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路に水を透し、排出管路の他端から排出することによって、水溜り部から導水場所へ連続して導くことができる。
【0030】
また、バイパス管路には、導水体が設けられていないので、導水体が水の流路に満たされた状態で設けられている場合と比較して、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0031】
また、バイパス管路体を、導水路本体に沿わせて設け、他端部を排出管路体の一端部に接続するだけの簡単な構成で、バイパス通路を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、毛細管現象を利用して導水動作を開始し、サイホンの原理による導水動作に移行して、水を導水場所に導くことができる。サイホンの原理による導水動作では、導水体が存在しない流路が確保されるので、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。さらに、導水装置を外方から被覆材で被覆するなどの作業が不要であり、導水装置の設置作業は容易である。また、導水路本体に、導水体および通路形成体が設けられるので、個別に設けられる場合に比べて、ひと纏まりに扱うことができ、取扱を容易にすることができる。
【0033】
また本発明によれば、バイパス管路体を、導水路本体に沿わせて設け、他端部を排出管路体に接続するだけの簡単な構成で、流路抵抗の小さいバイパス管路を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の実施の一形態である導水装置1が床構造体8に設置された状態を示す鉛直断面図である。図2は、導水装置1を軸線を含む一平面で切断した断面図である。図3は、非結束状態の導水体3を示す図である。
【0035】
導水装置1は、水溜まり部から導水場所である排水ピット20などに水を導くための装置であり、本実施の形態では、たとえば、地下室およびエレベータピットなどのコンクリートによって構築される地下構造物に設けられる。
【0036】
コンクリートによって構築される地下構造物の壁および床構造体8に、環境温度の変化による膨張および収縮ならびに地震などによる振動に起因して、亀裂が生じる場合がある。また地下構造物は、コンクリートの打継ぎ手部分である目地部を有するとともに、コンクリートの打設後の硬化過程で生じる微細な空隙を有する場合がある。地下構造物内の空間に、亀裂、目地部および微細な空隙を介して、雨水および地下水などの水が滲出する場合がある。このように地下構造物内に滲出した水(以下「漏水」という場合がある。)が、床構造体8に溜まり、漏水溜まり部6を形成する。
【0037】
導水装置1は、たとえば漏水溜まり部6から排水ピット20に向って延在し、床構造体8に設けられる。前記排水ピット20は、床構造体8の下方に設けられ、床構造体8には排水ピット20の上方で開口する排水孔22が形成される。排水孔22は、排水ピット20などの導水場所に向かって、床構造体8を略鉛直方向に穿孔することによって形成される。さらに床構造体8に、漏水溜まり部6から排水孔22まで排水溝23が形成される。排水溝23は、漏水溜まり部6から排水孔22まで、床構造体8を略水平方向に削って形成される。
【0038】
導水装置1は、導水路本体2と、導水体3と、通路形成体4と、排出管路体5とを含んで構成される。導水装置1は、一端部が漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6から排水溝23を経て排水孔22にわたって略水平に延在し、排水孔22を挿通して下方に垂下し、他端部が床構造体8の下面から下方に突出し、排水ピット20の水に他端部が浸からないように、排水ピット20の上方で開口するように設けられている。排水ピット20は、導水装置1によって供給された漏水を一時的に貯留し、この排水ピット20に貯留される漏水は、図示しない排水ポンプによって汲出されて、下水道などの排水処理設備へ排出される。
【0039】
導水路本体2は、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6の内方の空間6sで開口し、排水溝23を略水平に延び、排水孔22を挿通して、他端部2bが排水ピット20の上方に配置されるように、床構造体8から下方に突出して垂下される。これによって導水路本体2は、他端部2bが一端部2aおよび漏水溜まり部6の底部6aよりも下方に配置される。導水路本体2は、一端部2aから他端部2bまで全長にわたって、導水路2の内方を外気から遮断することができる管状の収容体であればよく、導水路本体2の内方に外気から遮断された導水路26を形成する。導水路本体2として、鋼管または可撓性を有する合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。
【0040】
導水体3は、導水路本体2の一端部2aから他端部2bにわたって挿入され、導水路本体2によって形成される導水路26に満たされた状態で設けられる。導水体3の一端部3aは、たとえば導水路26の一端26aに配置される。導水体3の他端部3bは、たとえば導水路26の他端26bよりも導水路26の一端26a側に退避した位置に配置される。このように導水体3は、他端部3bが一端部3aよりも下方の位置でかつ導水路26の他端26bから退避した位置に配置される状態で、導水路本体2に充填される。
【0041】
導水体3は、水を吸収し、毛細管現象が生じる部材であればよく、たとえば導水体3には、天然繊維または合成繊維の束を用いて形成される紐を用いることができる、より好ましくは、耐酸性および耐アルカリ性を有するポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維の連続長繊維の束を複数束撚り合わせ、あるいは編み合わせて形成される紐を用いるとよい。本実施の形態の導水体3は、ポリプロピレン繊維の連続長繊維の束である繊維束47を複数束撚り合わせて形成される紐である。また、本実施の形態の繊維束47は、図3に示すように繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせ、各繊維をランダムに小さく屈曲させる。このように、繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせることによって、導水体3を形成する繊維束47の繊維間に空隙が形成される。
【0042】
通路形成体4は、たとえば導水路本体2に挿入される中空筒状の管路体であって、通路形成体4の両端部4a,4bは、導水体3の両端部3a,3bよりも導水体3の長手方向内側に配置される。また通路形成体4は、一端部4aが導水体3の一端部3a側で開口し、かつ他端部4bが導水体3の他端部3b側で開口する。
【0043】
このように通路形成体4を導水路26に設けることによって、図2に示すように、導水路26の長手方向に伸びる通路(以下「内通路」という場合がある。)9が通路形成体の内方に形成される。内通路9は、通路形成体4の内方に形成されるので、内通路9の一端9aから他端9bの間には導水体3が存在しない。通路形成体4は、導水路本体2に挿入可能な中空の管路体などであればよく、可撓性を有する合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。
【0044】
排出管路体5は、導水路本体2の他端部2bから垂下して設けられ、他端部5bが一端部5aよりも下方に配置される。排出管路体5の他端部5bは、排水ピットの水に浸からないように、排水ピット20の上方に配置されている。このように排出管路体は、導水路26と繋がる排出管路27を排出管路体5の内方に形成する。排出管路体5は、中空の管路体であればよく、合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。排出管路体5の内径d5は、水が排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下するような径であればよく、特に限定されるわけではないが、たとえば導水路本体2の内径よりも小さい内径であって、好ましくは、4mmから6mmの範囲に選ばれる。
【0045】
本実施の形態では、導水装置1における漏水溜まり部6から排水孔22までの略水平方向の導水距離L1は、たとえば3mである。排出管路体5の軸線方向の長さ(鉛直方向寸法)L2は、たとえば30cm以上である。また排水孔22を挿通して設けられる導水路本体の鉛直方向寸法L3は、たとえば30cm以上40cm以下である。したがって、導水路本体2の他端部2bは、一端部2aよりも下方にあり、漏水溜まり部6の底部よりも下方に配置されている。導水体3の他端部3bは、一端部2aよりも下方に配置されている。
【0046】
図4は、導水装置1を導水路本体2の長手方向の中央部付近で軸線に垂直に切断した断面を模式的に示す図である。導水路本体2、通路形成体4の軸直角断面形状は、円筒形状である。導水路26には、通路形成体4が設けられ、通路形成体4と導水路本体2との間に導水体3が満たされた状態で設けられる。このような通路形成体4を設けることによって、導水体3が設けられた導水路26に、導水体3が存在しない内通路9が形成される。導水路本体2の内径d2は、たとえば10mm以上20mm以下の範囲に選ばれる。また通路形成体4の内径d4は、たとえば2mm以上6mm以下の範囲に選ばれる。
【0047】
また、導水路本体2の少なくとも一端部2aを覆うように、漏水溜まり部6を覆って被覆層7が形成される。被覆層7は、導水路本体2の一端部2aの開口を塞がないように上方から覆って設けられる。被覆層7は、外気を遮断できる構成であればよく、たとえば気密性を有する細長い薄いテープ状のシート(以下「シート」という。)43と、複合材料から成る被覆材42とを有している。シート43は、たとえばアルミ箔、アルミ箔、ポリプロピレン製シート、ポリエチレン製シートなど、によって実現される。本実施の形態ではアルミ箔が用いられる。被覆材42は、ガラス繊維で強化した熱硬化性合成樹脂から成る。本実施の形態では、ガラス繊維を織って得られるガラスクロスまたはガラス繊維を布状にして得られるガラス不織布などのガラス繊維製シートを積層し、エポキシ樹脂によってガラス繊維製シートを相互に貼着して得られる。
【0048】
被覆層7は、たとえば、アルミ箔から成るシート43で漏水溜まり部6全体および導水路本体2一端部2a付近を上方から覆い、さらにシート43全体を上方から複合材料から成る被覆材42で覆うことによって形成される。このように被覆層7を形成することによって、漏水溜まり部6および導水装置1内の漏水が外気に触れなくなるので、漏水溜まり部6および導水装置1内でのエフロの発生を防ぐことができる。
【0049】
図5は、サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。図6は、図5と同様に、サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。図5(a)は、ホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5(b)は、ホース10の端部に容器11の水12が浸けられていない構成を示す鉛直断面図である。図5(c)は、親水化された繊維から成る紐(以下「親水性の紐」という場合がある。)13を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5(d)および図6(a)は、親水性の紐13が挿入されたホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図6(b)は、親水性の紐13と、ホース10の内径より小径なホース(以下「内挿ホース」という場合がある。)15とが挿入されたホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5および図6に示す容器11の厚みは省略する。
【0050】
図5(a)に示す構成では、容器11の水12に中空のホース10の一端部を浸け、ホース10の他端部を水の表面よりも下方に位置され、ホース10の内方空間(以下「ホース10内」という場合がある。)に水12が満たされた状態にある。この場合、水12は重力によってホース10の他端部側から水滴14となって排出される。ホース10の他端部側から水12が排出されると、一端部側から水12がホース10内に吸引されホース10内を移動してホース10の他端部より水滴14となって連続的に排出される。このようにサイホンの原理によって水12を連続的に排出することができる。
【0051】
図5(b)に示す構成では、サイホンの原理のみによる導水の場合、一旦ホース10の一端部が水12に浸けられた状態でなくなれば、再びホース10が水12に浸けられてもホース10の他端部側からの重力による水の排出がない。したがって、ホース10内が減圧されないので、ホース10内を水12が移動することがなく、サイホンの原理によって連続的に水12を排出することができない。
【0052】
図5(c)に示す構成では、水12は、親水性の紐13の一端部から吸収され他端部から排出される。このように毛細管現象を利用して親水性の紐13によって、水12が吸収され容器12から排出されている場合は、一旦親水性の紐13が水12に浸けられた状態でなくなっても、水12が再び満たされ、水12に親水性の紐13が浸けられれば、水12が親水性の紐13の一端から吸収され、毛細管現象によって他端部から排出され、容器11から吸い出される。
【0053】
図5(d)に示す構成では、親水性の紐13がホース10内に挿入され、容器11内の水12に親水性の紐13およびホース10の一端部が浸けられている。したがって、図2(b)と同様に水12は、親水性の紐13の一端部から他端部に移動し、ホース10の他端部から排出される。ホース10の他端部から水12が排出されると、ホース10内が減圧され、水12がホース10一端部側から吸引され、他端部側から排出される。したがって毛細管現象およびサイホンの原理によって、水12がホース10一端部側からホース10内に吸収および吸引されホース10内を移動してホース10の他端部側から排出されるので、図5(c)の場合と比べて水12の排出量は増す。ホース10内に親水性の紐13が挿入されているので、ホース10内を水12が移動する場合に、親水性の紐13による抵抗があり、流量が少なくなる。
【0054】
したがって、図5(a)のホースのように内部が中空の場合と比べると水12の排出量は多くはない。またホース10の他端部は一端部よりも下方に配置され、親水性の紐13およびホース10の一端部が容器11の水12に浸けられた状態にある。したがって、毛細管現象およびサイホンの原理によって水12がホース10の一端部から他端部に向かって移動して排出される。ホース10および親水性の紐13の全長が長くなり、たとえば1m以上となった場合、流路抵抗が大きくなりホース10内を移動する水12の量が減少し、排出量が極端に低下する。
【0055】
図6(b)に示す構成では、ホース10の他端部は一端部よりも下方に配置され、親水性の紐13、ホース10および内挿ホース15が容器11の水12に浸けられた状態にある。この場合、毛細管現象によって水12が親水性の紐13の一端部から吸収され、親水性の紐13の他端部に移動し、ホース10の他端部側から排出される。
【0056】
ホース10の他端部側から水12が排出されると、ホース10内が減圧されるとともに、内挿ホース15の内方空間(以下「内挿ホース内」という。)が減圧される。内挿ホース15内が減圧されると、内挿ホース15の一端部側から水12が吸引され、水12が内挿ホース15内を移動する。内挿ホース15内は中空なので、ホース10内に隙間なく親水性の紐13が充填されている場合と比べて、ホース10内を水12が移動する場合の抵抗も少なくなる。したがって、ホース10内を水が移動する距離が長い場合でも、図6(a)に比べて水の排出量は飛躍的に増大する。
【0057】
本発明の実施の一形態の導水装置1は、この図6(b)に示す構成に相当する。具体的には導水路本体2はホース10に相当し、導水体3は紐13に相当し、通路形成体4が内挿ホース15に相当し、容器11に相当する漏水溜まり部6から漏水を排水ピット20に排出する。
【0058】
本発明の実施の一形態の導水装置1によれば、漏水溜まり部6に滲出する漏水は、まず導水体3の一端部3aに付着して、毛細管現象によって浸透し、導水体3の他端部3bに移動する。漏水が導水体3の他端部3bまで移動すると、重力によって導水路26の他端26bに滴落ちる。導水路26の他端26bに滴落ちた漏水は、排出管路27を流下する。排出管路体5の内径は4mmなので、水の粘性および表面張力によって、排出管路27の流路断面を塞いだ状態で漏水は流下する。
【0059】
このとき導水路26の一端26aが漏水で塞がれていると、排出管路27を流下する漏水の水面よりも導水路26の一端26a側の導水路26および排出管路は、前記水の流下によって減圧される。この導水路26の減圧によって、導水路26に吸引力が発生する。この吸引力によって、漏水溜まり部6から導水路に漏水を吸引することができる。
【0060】
このような吸引力は、導水路本体2の最上部に関して他端部2b側、換言すれば排水方向下流側に存在する水に働く重力が、前記最上部に関して一端部2a側、換言すれば排水方向上流側に存在する水に働く重力よりも大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、導水路26に吸引した漏水を、排出管路27を流下させ排出管路9から排出することができる。
【0061】
このように、導水装置1は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部6に水が溜まり、導水路26の一端26aが水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路26に水を透し、排出管路27の他端から排出することによって、水溜り部6から排水ピット20へ連続して導くことができる。
【0062】
また、導水路26には、導水体が存在しない内通路9が形成されているので、導水体3による流路抵抗がない流路を、導水路26に確保することができる。排出管路を漏水が流下することによって導水路26が減圧される場合、内通路9も減圧されるので、導水路26に吸引された漏水は、内通路9に吸引され、内通路9を流れる。したがって、導水路26に導水体3が隙間なく充填されている場合と比較して、大きな流量で漏水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0063】
このように導水体3を用いる毛細管現象による導水動作と、サイホンの原理によって漏水を流路抵抗の小さい内通路9を流れさせる導水動作とを組合せることができ、漏水溜まり部6の漏水が一旦枯れても、再び漏水が溜まると、毛細管現象によって、導水路本体2の他端部2bの内部空間26bまで漏水を導くことができ、導水動作を再開することができる。そして導水動作が再開されると、サイホンの原理によって内通路9を連続して流れさせて漏水を導き、排水ピット20に排出することができる。
【0064】
また、導水装置1では、通路形成体4の他端部4bが導水体3の他端部3bから導水体の一端部3aに退避した位置に設けられる。したがって、サイホンの原理によって内通路9を流れ内通路9の他端9bから排出された漏水は、導水体3の他端部3bで繊維間に形成される毛細管に保持されてから導水路26の他端26bに滴落ちる。このように導水体3に保持されてから漏水が導水路26の他端26bに滴落ちるので、サイホンの原理によって内通路9を流れる漏水の流量が小さい場合であっても、排出管路27の流路断面を塞ぐに足る量の漏水が排出管路27を流下する。したがって、サイホンの原理による導水を確実に維持することができる。
【0065】
またこの導水装置1では、漏水を排水ピット20に導水するにあたって、排水溝23および導水装置1を外気から遮断するなどの作業が不要である。このように導水装置1の設置作業が容易である。厳密に言えば、漏水溜まり部6に関して前述の被覆層7を設けなければならないが、導水装置1の一端部付近だけであり、残余の部分は不要である。さらに通路形成体4として、中空筒状の管路体が用いられるので、個別に設けられる場合に比べて、ひと纏まりに扱うことができ、取扱を容易にすることができる。
【0066】
また、導水装置1によれば、漏水溜まり部6から排水口までの距離が長くなり、たとえば導水装置1による略水平方向の導水距離L1が10m以上となる場合は、排出管路体5の長さL2を1m以上とする。排出管路27の内容積を多くすることによって、導水装置1の最上部に関して排水方向下流側に存在する漏水量を増加させ、導水路26または排出管路27に存在する漏水の水面よりも排水方向上流側の空間をさらに減圧することができる。したがって、サイホンの原理による導水動作を確実に発生させ、継続させることができ、大きな流量で漏水を排水ピット20などの導水場所に導くことができる。このように排出管路体5の長さL2は、導水装置1による略水平方向の導水距離L1に基づいて、排出管路体5内の容積分の漏水を、導水路本体2の他端部2bから排出することによって、漏水を内通路9に吸引することができる程度の吸引力が得られる寸法に選ばれる。
【0067】
また排出管路体5の内径d5が4mm以上6mm以下に選ばれ、排出管路体5を流下する漏水が、水の表面張力および粘性によって排出管路27の流路断面を塞いだ状態で流下する。したがって、導水体3によって、導水路26の他端26bに導かれる漏水が少量であっても、漏水の排出管路27での流下によって確実に導水路26を減圧して、サイホンの原理による導水動作に移行させることができる。
【0068】
排出管路体5の内径d5が、4mm未満であると、排出管路27における流路断面積が小さくなり過ぎて、大きな流量で漏水を導くことができない。したがって、排出管路体5の内径d5を4mm以上6mm以下の範囲に選ぶことによって、漏水を、まず導水体3の毛細管現象を利用によって導き、次に確実にサイホンの原理の利用によって内通路9を流れさせて導くようにし、大きな流量で漏水を導くことができるようになる。
【0069】
出管路体5の内径が6mm以上の場合は、排出管路27の流路断面を塞いだ状態で漏水が流れない場合があるので、サイホンの原理による導水動作に移行しない場合がある。
【0070】
また導水路本体2の内径d2が、10mm以上20mm以下に選ばれるので、作業性、取扱性、設置性の良好な導水装置1を形成することができる。導水路本体2の内径d2が、前記本体内径範囲を下回ると、導水体3および通路形成体4および導水体3の挿入作業が困難になる。
【0071】
また本実施の形態では、導水路本体2、導水体3、通路形成体4および排出管路体5が、可撓性を有する構成であり、導水装置1全体が可撓性を有している。このように導水装置1が可撓性を有しているので、取扱が容易になり、設置作業が容易になる。たとえば導水装置1を排水溝23の形状に容易に倣わせることができる。
【0072】
また本実施の形態では、導水体3は、繊維束47を用いて形成される紐である。漏水は、多くの場合コンクリート成分である水酸化カルシウムを含み強アルカリ性を示す場合が多い。アルカリ性の漏水を導水する場合であっても、導水体3を形成する繊維束47は、ポリプロピレン繊維なので、エステル結合を有する天然繊維の束を用いる場合と比較して、繊維が加水分解されるおそれがなく、導水体3が劣化することを防ぐことができる。また、ポリプロピレン繊維は、耐酸性を有するので、酸性を示す漏水、たとえばめっき工場で発生する漏水を、導水装置1を用いて導水する場合であっても、導水体3が劣化することを防ぐことができる。
【0073】
また、導水体3を形成する繊維束47は、図3に示すように繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせ、各繊維をランダムに小さく屈曲させる。このように繊維を捻れさせることによって、導水体3を構成する繊維束47の繊維間に空隙が形成される。したがって、ポリプロピレン繊維を用いて導水体3を形成しても好適に毛細管現象を生じさせることができる。また、ポリプロピレン繊維を用いるので、繊維束47の中を漏水が通過する場合、天然繊維と比較して内部抵抗が小さく、導水装置1の導水動作によって導かれる漏水の流量および流速を大きくすることができる。
【0074】
図7は、本発明の実施の他の形態として、導水装置1を漏水溜まり部6の底部6aが導水装置1を設置する床面28よりも低い位置にある場合に導水装置1を設置した状態を示す鉛直断面図である。図7に示す導水装置1は、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。
【0075】
本実施の形態の導水装置1は、床構造体8の床面28に設置する。漏水は、床構造体の漏水溜まり部6の底部6aから滲出する。床面28から漏水溜まり部6の底部6aまでの略鉛直方向の距離L4は50mmである。導水装置1の導水路本体2の一端部2aは、漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6内の空間6sで開口する。導水体3の一端部3aは漏水溜まり部6の底部に当接する。導水体3には、導水体3の繊維間に、繊維の長手方向に揃って毛細管が多数形成される。したがって、導水体3は、毛細管現象によって、上方に漏水を吸い上げることができる。
【0076】
導水体3の一端部3aから漏水が吸収され、漏水溜まり部6の底部6aから床面28までの略鉛直方向の距離L4の落差を毛細管現象によって越え導水体3を上方に移動する。上方に移動した漏水は、排出管路27を流下して排出されるので、前述したサイホンの原理によって導水装置1は、漏水を吸引し排水ピット20まで導く。
【0077】
このように、導水装置1によれば、毛細管現象によってして漏水をたとえば150mm以下の落差であれば吸い上げることができるので、漏水溜まり部6の底部6aが床面28より下方にある場合でも、床構造体8を削り漏水溜まり部6から排水口まで排水溝23を形成する必要がなくなる。したがって導水装置1を容易に設置することができる。
【0078】
図8は、本発明の実施のさらに他の形態として導水装置1を撓み部17で一部を持ち上げて排水溝23に設置した状態を示す鉛直断面図である。図8に示す導水装置1は、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。導水装置1は、溝23に設置され撓み部17で上方に一部を持ち上げられた構成となっている。導水装置1の撓み部17の底部29と溝内の排水溝23の床面30との略鉛直方向の距離L5は、50mmである。この場合にも、導水体3は、前述した毛細管現象によって、漏水を漏水溜まり部6から他端部3bまで移動させることができる。導水体3の他端部3bから排出された漏水は、排出管路27を流下する。したがって、前述したように導水装置1は、毛細管現象とサイホンの原理によって、漏水溜まり部6から排水ピットまで漏水を導くことができる。
【0079】
導水装置1によれば、導水装置1を溝内などに設置して漏水を導く場合、導水装置1の一部を上方に持ち上げることによって、地下構造物の主筋などの障害物を避けることができる。したがって、導水装置1を容易に設置することができる。
【0080】
図9は、導水装置1を風呂の洗い場のドレーンに適用した場合を示す図である。風呂の洗い場は、図9(a)に示すようにコンクリート床32と化粧タイル30との間に、防水層31および砂セメント34が介在する。砂セメント34は、防水層121と化粧タイル30との間に介在する。配水管33は、化粧タイル30に開口しており化粧タイル上の水を排水する。
【0081】
このように風呂場の水は、配水管33から排水されるが、各化粧タイル30の目地部38から、水が砂セメント124に滲みこむ場合がある。砂セメント124に滲みこんだ水は、防水層121に溜まる。このように砂セメントに滲みこんだ水は、排水されないので、この水が腐敗して、悪臭の原因となる。このような構造は、風呂の洗い場だけでなく、洗面所や台所のタイル床、浴槽の裏側などが同じ構造である。
【0082】
このような悪臭は清掃しただけでは取り除くことができず、悪臭を防ぐためには化粧タイル30と防水層31との間に水が溜まらないような構造にする必要がある。化粧タイル30と防水層31との間に水が溜まらない構造とするためには、排水ドレーン35を二重排水構造とする方法があるが、この場合にはコストが高くなってしまう。
【0083】
そこで、導水装置1を化粧タイル31と防水層31との間に設置することで、低コストで排水処理を行うことができる。つまり、図9(b)に示すように、導水路本体2の一端部を水溜り部37に浸け、排出管路体5の他端部5bを配水管33に接続する。このときコンクリート床122に孔を形成して導水路本体2を通すことになるが、防水層121に孔が形成されることは避けたい。そこで、図9(b)に示すように導水路本体2を入口36を介して配水管33に接続する。
【0084】
このように入口36を介して外に出すと、その分だけ導水路本体1を持ち上げる必要があるが、前述したように、導水装置1では、150mm程度の障害は、水を汲み上げて排水することができるので、確実に排水することができる。また、水溜り部37から入口36までの距離が1m以上であっても、前述したように良好に水溜まり部37の水を導水して、排水管33に排出することができる。
【0085】
また、導水装置1は、前述したように風呂場の洗い場やトイレ、台所のタイル床、浴槽の裏側などへの適用に限らず、図10に示すように、雨水などの排水溝44に溜まる水を排水する場合にも適用することができる。排水溝44は、通常勾配がついているが、逆勾配となって人目につかない溝の奥の方に水溜まり45ができる場合がある。これによって、蚊やボウフラの発生源となる場合がある。このような排水溝に導水装置1を適用することで、確実に排水し、悪臭の原因を抑えることが可能となる。また、水溜り45から排水場所までの距離が1m以上であっても、前述したように良好に水溜まり45の水を排水場所に導水して、排出することができる。
【0086】
図11は、本発明の実施のさらにまた他の形態の導水装置1Aを、床構造体8に設置した状態で示す鉛直断面図である。図11に示す導水装置1Aは、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。本実施形態の導水装置1Aは、一端部が漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6から排水溝23を経て排水孔22にわたって延在し、排水孔22を挿通して、他端部が下方に垂下されて排水ピット20の上方に配置されるように設けられている。
【0087】
導水装置1Aは、導水路本体2と導水体3とバイパス管路体41および排出管路体5を含む。導水路本体2は、中空筒状の管状の部材であり、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、他端部2bが一端部2aよりも下方に配置されている。
【0088】
導水体3は、導水路本体2によって形成される導水路26に充填して設けられ、一端部3aで漏水溜まり部6の水を吸収し、毛細管現象を利用して導水路26の他端26に漏水を導く。バイパス管路体41は、一端部41aが漏水溜まり部に設けられ、他端部41bが排出管路体5の一端部5aに接続される。排出管路体5は、一端部5aが管継手などで導水路本体2の他端部2bおよびバイパス管路体41の他端部41bと接続されている。導水路本体2とバイパス管路体41と排出管路体5との接続は、たとえばY型管継手などを用いて流路を塞ぐことなく接続する。
【0089】
導水路本体2は、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、漏水たまり部内の空間6sで開口し、漏水溜まり部6から排水孔22にわたって排水溝23に略水平に延在し、排水孔22を挿通して他端部2bが排水ピット20の上方に配置されるように、床構造体8から下方に突出して垂下される。これによって、導水路本体2は、他端部2bが一端部2aよりも下方に配置される。
【0090】
バイパス管路体41は、たとえば中空筒状の管路体である。バイパス管路体41の一端部41aは漏水溜まり部6内の空間6sで開口する。バイパス管路体4は、可撓性を有する合成樹脂のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成るホースが用いられる。
【0091】
本実施の形態では、導水装置1による漏水溜まり部6から排水孔22までの略水平方向の導水距離L6は、たとえば1mである。排出管路体5の軸線方向の長さ(鉛直方向寸法)L7は、たとえば50cmである。また排水溝22を挿通して設けられる通路形成体35の鉛直方向寸法L8は、たとえば30cmである。
【0092】
導水路本体2内には、導水体3が充填されている。また、導水路本体2外に設けられるバイパス管路体41によってバイパス管路46が形成される。バイパス管路46は、漏水溜まり部6内の内部空間6sから排出管路27に連なる。
【0093】
このように、本実施の形態では、バイパス管路体41を導水路本体2の外方に設け導水装置1Aを構成しても、導水体3の毛細管現象によって、漏水を導水路26の他端26bに導き、排出管路27を流下することによって、導水路26およびバイパス管路46が減圧される。したがって、導水装置1Aは導水装置1と同様にサイホンの原理によって漏水を漏水溜まり部6から排水ピットまで大きな流量で迅速に導くことができる。このように導水装置1Aは、前述の導水装置1と同様の効果が得られる。
【0094】
また、バイパス管路体41を、導水路本体2に沿わせて設け、他端部41bを排出管路体5の一端部5aに接続するだけの簡単な構成で、バイパス管路46を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の一形態である導水装置1が床構造体8に設置された状態を示す鉛直断面図である。
【図2】導水装置1を軸線を含む一平面で切断した断面図である。
【図3】非結束状態の導水体3を示す図である。
【図4】導水装置1を導水路本体2の長手方向の中央部付近で軸線に垂直に切断した断面を模式的に示す図である。
【図5】サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。
【図6】サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。
【図7】本発明の実施の他の形態として、導水装置1を漏水溜まり部6の底部6aが導水装置1を設置する床面28よりも低い位置にある場合に導水装置1を設置した状態を示す鉛直断面図である。
【図8】本発明の実施のさらに他の形態として導水装置1を撓み部17で一部を持ち上げて排水溝23に設置した状態を示す鉛直断面図である。
【図9】導水装置1を風呂の洗い場のドレーンに適用した場合を示す図である。
【図10】排水溝40の断面図である。
【図11】本発明の実施のさらにまた他の形態の導水装置1Aを、床構造体8に設置した状態で示す鉛直断面図である。
【図12】従来の技術の導水構造101を示す鉛直断面図である。
【図13】他の従来の技術の導水装置101Aを示す鉛直断面図である。
【図14】さらに他の従来の技術の導水装置101Bを示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 導水装置
2 導水路本体
3 導水体
4 通路形成体
5 排出管路体
41 バイパス管路体
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば漏水などの水を導水場所に導くための導水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータピットおよび地下室など、コンクリートで構築された地下構造物の壁および床構造体に、気温の変化によるコンクリートの膨張および収縮ならびに地震などの振動によって亀裂が生じる場合がある。この亀裂から地下水および雨水が地下構造物内の空間に滲出することがある。また、壁と床構造物とのコンクリート打継ぎ手部分である目地部から地下水および雨水が滲出することがある。さらに、コンクリート打設後の硬化過程で構造物に空隙が生じる場合がある。この空隙からも雨水および地下水などが滲出することがある。
【0003】
このように地下構造物内の空間に滲出した水を漏水という。漏水は、構造物の劣化をひきおこし、コンクリートの部分的な剥離および脱落の原因となる。このような場合、漏水を漏水溜まり部から構造物の床下にある導水場所である排水ピットまで導き、排水ピットに一時的に貯水した後に排水ポンプによって下水道などの排水処理設備に排出する。
【0004】
図12は、従来の技術の導水構造101を示す鉛直断面図である。導水構造101は、地下構造物の床構造体8に滲出した漏水106を、排水ピット127まで導くための構造である。導水構造101は、漏水が滲出す部分である漏水溜まり部128から排水孔102まで導水溝103を形成することによって、床構造体108に形成される構造である。導水溝103は、漏水溜まり部128から排水孔102に向かうにつれて下方に傾斜する勾配を有しており、漏水溜まり部128から排水ピット127まで漏水106を導くことができる。
【0005】
図13は、他の従来の技術の導水装置101Aを示す鉛直断面図である。図13の導水装置101Aは、図12に示す導水装置101と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
【0006】
図13の導水装置101Aでは、導水溝103に導水体である導水紐119が設けられる。導水紐119は、紐であり、付着した水が毛細管現象によって導水紐に浸透する。導水紐119は、一端部が漏水溜まり部128に配置され、他端部が排水孔102から排水ピット127に向けて垂下される。導水溝103は、ガラス繊維強化エポキシ樹脂から成る被覆材121によって上方から覆われ、導水紐119が導水溝103に固定される。被覆材121によって導水溝103を覆うにあたって、エポキシ樹脂を含む被覆材121が固化する前に、導水紐119に浸入してしまうことを防ぐために、導水紐119は、アルミ箔122によって被覆されている。
【0007】
導水装置101Aでは、漏水溜まり部128で導水紐119の一端部に水が付着すると、毛細管現象によって導水紐119の一端部から他端部に漏水106を移動させて、排水ピット127に漏水106を導くことができる。
【0008】
図14は、さらに他の従来の技術の導水装置101Bを示す鉛直断面図である。図14の導水装置101Bは、図13に示す導水装置101Aと類似しており、対応する構成に同一の符号を付し、異なる構成についてだけ説明する。
【0009】
図14の導水装置101Bは、吸水管125と、導水紐119と、内径3〜5mmの導水管126とを有する。吸水管125は、床構造体108に形成された導水溝103に設けられ、漏水溜まり部128で一端部が開口して設けられている。吸水管125の他端部は、排水孔102から下方へ突出して吸水管の一端部よりも下方に配置されている。導水紐119は、吸水管125に満たされた状態で設けられる。また、導水紐119は、一端部が吸水管125の一端部から突出して漏水溜まり部128に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置されている。吸水管125の他端部には、導水管126が接続され、導水管126は、排水ピット127に向って開口している。また導水装置101Bでは、吸水管125および導水紐119の一端部が被覆材121およびアルミ箔122で被覆される。
【0010】
この導水装置101Bは、第1の排水動作段階として、導水紐119の一端部に水が付着すると、毛細管現象によって吸水管125を透して、漏水106が導水管126まで導かれ、導水管126から排水ピット127に排出される。導水管126の他端部から漏水が排出されると、導水装置101B内の漏水の排水方向上流側の内部空間が減圧され、吸水管125の漏水溜まり部128側の端部から漏水を吸引する。漏水106の吸引とともに第2の排水動作段階に移行し、サイホンの原理によって、漏水溜まり部128の漏水106が排水ピット127に連続的に導かれる(たとえば特許文献1参照)。
【0011】
【特許文献1】特許第3560921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図12に示す導水構造101では、導水溝103に塵および埃が入り、漏水106の流路を塞ぎ、漏水106が円滑に導水溝103を流れない場合がある。また、コンクリート構造物の亀裂などから滲出する漏水106には、水酸化カルシウムが溶けている場合がある。漏水106が二酸化炭素などの炭酸ガスを吸収すると、炭酸ガスと水酸化カルシウムが反応して炭酸カルシウム(以下「エフロ」という。)が析出する。
【0013】
導水溝103は外気に晒されているので、導水溝103を流れる漏水106が炭酸ガスを吸収し、エフロが導水溝103および排水孔102に析出し漏水の流路を塞ぐことがある。エフロの析出によって漏水106の流路が塞がれると、漏水106が円滑に導水溝103を流れなくなる。したがって漏水106を大きな流量で排水ピット127に導くことができない場合がある。
【0014】
また図13に示す導水装置101Aでは、図12の導水装置101の問題点は解決することができるが、漏水106を、毛細管現象によって、排水ピット127まで導く構造である。毛細管現象によって、略水平方向に水を導く場合は、導水距離は時間の平方根にほぼ比例するので、たとえば導水装置101Aの略水平方向の導水距離が2倍になると、漏水が導かれる時間が約4倍となり、導水距離が3倍になると漏水が導かれる時間が約9倍となる。
【0015】
このように、導水装置101Aを用いた場合、略水平方向の導水距離が長くなると、漏水溜まり部128の漏水106を排水ピット127まで迅速に導くことができない。さらに、導水紐119を設置した導水溝103および排水孔102付近にエフロが析出しないように導水紐119全体をエポキシ樹脂などによって被覆し、外気から遮断する必要がある。このように漏水106を迅速に排水ピット127に導くことができない場合があるうえ、設置作業に手間を要する。
【0016】
また図14に示す導水装置101Bでは、導水紐119の毛細管現象による導水動作から、サイホンの原理による導水動作に移行できるようにしているが、サイホンの原理による導水動作に移行したとき、導水紐119が邪魔をしてしまう。具体的には、吸水管125が形成する管路に導水紐119が設けられているので、サイホンの原理によって吸水管の一端部から吸引された漏水106が、前記管路を流れるとき、漏水106と導水紐119との間に摩擦が生じる。したがって漏水106は、中空の管路を移動する場合に比べて、導水紐119によって大きな抵抗を受ける。
【0017】
このように摩擦による流路抵抗が大きくなると、漏水溜まり部128から排水ピット127までの水平距離が短い場合は、漏水106を排水ピット127まで導くことができたとしても、漏水溜まり部128から排水ピット127までの水平距離が長くなると、吸水管によって形成される管路を移動する漏水の流量が少なくなる。漏水の流量が少ない場合、漏水溜まり部128と排水ピット127との落差を大きくし、導水装置1の鉛直方向の導水距離を長くすれば、流量を大きくすることは可能であるが、そのような落差を確保することは困難である。このように漏水106を大きな流量で排水ピット127に導くことができない場合がある。
【0018】
本発明の目的は、流量が大きく迅速に漏水を導水場所まで導くことができ、かつ設置作業が容易な導水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体と、
一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置である。
【0020】
本発明に従えば、導水体の一端部に付着した水溜り部の水は、毛細管現象によって導水体に浸透する。導水路本体体の他端部は一端部よりも下方に配置されているので、導水体に浸透した水が導水体の他端部から落下する。導水体から落下した水は、排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下する。
【0021】
このとき、導水路の一端が水溜り部の水によって、塞がれていると、導水路が減圧される。導水路が減圧されると、導水路の一端側に吸引力が発生する。
【0022】
このような吸引力は、導水装置の最上部に関して排水方向下流側に存在する水に作用する重力が、前記最上部に関して排水方向上流側に存在する水に作用する重力より大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、導水路の一端に吸引された水を導水路の他端に移動させ、排出管路の他端から排出することができる。
【0023】
このように、導水装置は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部に水が溜まり導水路の一端が水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路に水を透し、排出管路の他端から排出することによって、水溜り部から導水場所へ連続して導くことができる。
【0024】
また、通路形成体が形成する通路によって、導水路の両端にわたって導水体が存在しない流路が確保されるので、導水体が導水路に満たされた状態で設けられている場合と比較して、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0025】
また本発明は、水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
一端から他端にわたって連続したバイパス管路を有し、一端部が水溜まり部に設けられるバイパス管路体と、
一端が導水路本体の他端とバイパス管路体の他端とに連なり、他端がバイパス管路体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置である。
【0026】
本発明に従えば、導水体の一端部に付着した水溜り部の水は、毛細管現象によって導水体に浸透する。導水路本体体の他端部は一端部よりも下方に配置されているので、導水体に浸透した水が導水体の他端部から落下する。導水体から落下した水は、排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下する。
【0027】
このとき、バイパス管路の一端が水溜り部の水によって、塞がれていると、バイパス管路が減圧される。バイパス管路が減圧されると、バイパス管路の一端側に吸引力が発生する。
【0028】
このような吸引力は、導水装置の最上部に関して排水方向下流側に存在する水に作用する重力が、前記最上部に関して排水方向上流側に存在する水に作用する重力より大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、バイパス管路の一端に吸引された水をバイパス管路の他端に移動させ、排出管路の他端から排出することができる。
【0029】
このように、導水装置は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部に水が溜まりバイパス管路の一端が水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路に水を透し、排出管路の他端から排出することによって、水溜り部から導水場所へ連続して導くことができる。
【0030】
また、バイパス管路には、導水体が設けられていないので、導水体が水の流路に満たされた状態で設けられている場合と比較して、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0031】
また、バイパス管路体を、導水路本体に沿わせて設け、他端部を排出管路体の一端部に接続するだけの簡単な構成で、バイパス通路を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、毛細管現象を利用して導水動作を開始し、サイホンの原理による導水動作に移行して、水を導水場所に導くことができる。サイホンの原理による導水動作では、導水体が存在しない流路が確保されるので、大きな流量で水を導水場所に迅速に導くことができる。さらに、導水装置を外方から被覆材で被覆するなどの作業が不要であり、導水装置の設置作業は容易である。また、導水路本体に、導水体および通路形成体が設けられるので、個別に設けられる場合に比べて、ひと纏まりに扱うことができ、取扱を容易にすることができる。
【0033】
また本発明によれば、バイパス管路体を、導水路本体に沿わせて設け、他端部を排出管路体に接続するだけの簡単な構成で、流路抵抗の小さいバイパス管路を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の実施の一形態である導水装置1が床構造体8に設置された状態を示す鉛直断面図である。図2は、導水装置1を軸線を含む一平面で切断した断面図である。図3は、非結束状態の導水体3を示す図である。
【0035】
導水装置1は、水溜まり部から導水場所である排水ピット20などに水を導くための装置であり、本実施の形態では、たとえば、地下室およびエレベータピットなどのコンクリートによって構築される地下構造物に設けられる。
【0036】
コンクリートによって構築される地下構造物の壁および床構造体8に、環境温度の変化による膨張および収縮ならびに地震などによる振動に起因して、亀裂が生じる場合がある。また地下構造物は、コンクリートの打継ぎ手部分である目地部を有するとともに、コンクリートの打設後の硬化過程で生じる微細な空隙を有する場合がある。地下構造物内の空間に、亀裂、目地部および微細な空隙を介して、雨水および地下水などの水が滲出する場合がある。このように地下構造物内に滲出した水(以下「漏水」という場合がある。)が、床構造体8に溜まり、漏水溜まり部6を形成する。
【0037】
導水装置1は、たとえば漏水溜まり部6から排水ピット20に向って延在し、床構造体8に設けられる。前記排水ピット20は、床構造体8の下方に設けられ、床構造体8には排水ピット20の上方で開口する排水孔22が形成される。排水孔22は、排水ピット20などの導水場所に向かって、床構造体8を略鉛直方向に穿孔することによって形成される。さらに床構造体8に、漏水溜まり部6から排水孔22まで排水溝23が形成される。排水溝23は、漏水溜まり部6から排水孔22まで、床構造体8を略水平方向に削って形成される。
【0038】
導水装置1は、導水路本体2と、導水体3と、通路形成体4と、排出管路体5とを含んで構成される。導水装置1は、一端部が漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6から排水溝23を経て排水孔22にわたって略水平に延在し、排水孔22を挿通して下方に垂下し、他端部が床構造体8の下面から下方に突出し、排水ピット20の水に他端部が浸からないように、排水ピット20の上方で開口するように設けられている。排水ピット20は、導水装置1によって供給された漏水を一時的に貯留し、この排水ピット20に貯留される漏水は、図示しない排水ポンプによって汲出されて、下水道などの排水処理設備へ排出される。
【0039】
導水路本体2は、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6の内方の空間6sで開口し、排水溝23を略水平に延び、排水孔22を挿通して、他端部2bが排水ピット20の上方に配置されるように、床構造体8から下方に突出して垂下される。これによって導水路本体2は、他端部2bが一端部2aおよび漏水溜まり部6の底部6aよりも下方に配置される。導水路本体2は、一端部2aから他端部2bまで全長にわたって、導水路2の内方を外気から遮断することができる管状の収容体であればよく、導水路本体2の内方に外気から遮断された導水路26を形成する。導水路本体2として、鋼管または可撓性を有する合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。
【0040】
導水体3は、導水路本体2の一端部2aから他端部2bにわたって挿入され、導水路本体2によって形成される導水路26に満たされた状態で設けられる。導水体3の一端部3aは、たとえば導水路26の一端26aに配置される。導水体3の他端部3bは、たとえば導水路26の他端26bよりも導水路26の一端26a側に退避した位置に配置される。このように導水体3は、他端部3bが一端部3aよりも下方の位置でかつ導水路26の他端26bから退避した位置に配置される状態で、導水路本体2に充填される。
【0041】
導水体3は、水を吸収し、毛細管現象が生じる部材であればよく、たとえば導水体3には、天然繊維または合成繊維の束を用いて形成される紐を用いることができる、より好ましくは、耐酸性および耐アルカリ性を有するポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維の連続長繊維の束を複数束撚り合わせ、あるいは編み合わせて形成される紐を用いるとよい。本実施の形態の導水体3は、ポリプロピレン繊維の連続長繊維の束である繊維束47を複数束撚り合わせて形成される紐である。また、本実施の形態の繊維束47は、図3に示すように繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせ、各繊維をランダムに小さく屈曲させる。このように、繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせることによって、導水体3を形成する繊維束47の繊維間に空隙が形成される。
【0042】
通路形成体4は、たとえば導水路本体2に挿入される中空筒状の管路体であって、通路形成体4の両端部4a,4bは、導水体3の両端部3a,3bよりも導水体3の長手方向内側に配置される。また通路形成体4は、一端部4aが導水体3の一端部3a側で開口し、かつ他端部4bが導水体3の他端部3b側で開口する。
【0043】
このように通路形成体4を導水路26に設けることによって、図2に示すように、導水路26の長手方向に伸びる通路(以下「内通路」という場合がある。)9が通路形成体の内方に形成される。内通路9は、通路形成体4の内方に形成されるので、内通路9の一端9aから他端9bの間には導水体3が存在しない。通路形成体4は、導水路本体2に挿入可能な中空の管路体などであればよく、可撓性を有する合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。
【0044】
排出管路体5は、導水路本体2の他端部2bから垂下して設けられ、他端部5bが一端部5aよりも下方に配置される。排出管路体5の他端部5bは、排水ピットの水に浸からないように、排水ピット20の上方に配置されている。このように排出管路体は、導水路26と繋がる排出管路27を排出管路体5の内方に形成する。排出管路体5は、中空の管路体であればよく、合成樹脂製のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成る可撓性を有するホースが用いられる。排出管路体5の内径d5は、水が排出管路の流路断面を塞いだ状態で流下するような径であればよく、特に限定されるわけではないが、たとえば導水路本体2の内径よりも小さい内径であって、好ましくは、4mmから6mmの範囲に選ばれる。
【0045】
本実施の形態では、導水装置1における漏水溜まり部6から排水孔22までの略水平方向の導水距離L1は、たとえば3mである。排出管路体5の軸線方向の長さ(鉛直方向寸法)L2は、たとえば30cm以上である。また排水孔22を挿通して設けられる導水路本体の鉛直方向寸法L3は、たとえば30cm以上40cm以下である。したがって、導水路本体2の他端部2bは、一端部2aよりも下方にあり、漏水溜まり部6の底部よりも下方に配置されている。導水体3の他端部3bは、一端部2aよりも下方に配置されている。
【0046】
図4は、導水装置1を導水路本体2の長手方向の中央部付近で軸線に垂直に切断した断面を模式的に示す図である。導水路本体2、通路形成体4の軸直角断面形状は、円筒形状である。導水路26には、通路形成体4が設けられ、通路形成体4と導水路本体2との間に導水体3が満たされた状態で設けられる。このような通路形成体4を設けることによって、導水体3が設けられた導水路26に、導水体3が存在しない内通路9が形成される。導水路本体2の内径d2は、たとえば10mm以上20mm以下の範囲に選ばれる。また通路形成体4の内径d4は、たとえば2mm以上6mm以下の範囲に選ばれる。
【0047】
また、導水路本体2の少なくとも一端部2aを覆うように、漏水溜まり部6を覆って被覆層7が形成される。被覆層7は、導水路本体2の一端部2aの開口を塞がないように上方から覆って設けられる。被覆層7は、外気を遮断できる構成であればよく、たとえば気密性を有する細長い薄いテープ状のシート(以下「シート」という。)43と、複合材料から成る被覆材42とを有している。シート43は、たとえばアルミ箔、アルミ箔、ポリプロピレン製シート、ポリエチレン製シートなど、によって実現される。本実施の形態ではアルミ箔が用いられる。被覆材42は、ガラス繊維で強化した熱硬化性合成樹脂から成る。本実施の形態では、ガラス繊維を織って得られるガラスクロスまたはガラス繊維を布状にして得られるガラス不織布などのガラス繊維製シートを積層し、エポキシ樹脂によってガラス繊維製シートを相互に貼着して得られる。
【0048】
被覆層7は、たとえば、アルミ箔から成るシート43で漏水溜まり部6全体および導水路本体2一端部2a付近を上方から覆い、さらにシート43全体を上方から複合材料から成る被覆材42で覆うことによって形成される。このように被覆層7を形成することによって、漏水溜まり部6および導水装置1内の漏水が外気に触れなくなるので、漏水溜まり部6および導水装置1内でのエフロの発生を防ぐことができる。
【0049】
図5は、サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。図6は、図5と同様に、サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。図5(a)は、ホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5(b)は、ホース10の端部に容器11の水12が浸けられていない構成を示す鉛直断面図である。図5(c)は、親水化された繊維から成る紐(以下「親水性の紐」という場合がある。)13を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5(d)および図6(a)は、親水性の紐13が挿入されたホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図6(b)は、親水性の紐13と、ホース10の内径より小径なホース(以下「内挿ホース」という場合がある。)15とが挿入されたホース10を用いて容器11の水12を吸い出す構成を示す鉛直断面図である。図5および図6に示す容器11の厚みは省略する。
【0050】
図5(a)に示す構成では、容器11の水12に中空のホース10の一端部を浸け、ホース10の他端部を水の表面よりも下方に位置され、ホース10の内方空間(以下「ホース10内」という場合がある。)に水12が満たされた状態にある。この場合、水12は重力によってホース10の他端部側から水滴14となって排出される。ホース10の他端部側から水12が排出されると、一端部側から水12がホース10内に吸引されホース10内を移動してホース10の他端部より水滴14となって連続的に排出される。このようにサイホンの原理によって水12を連続的に排出することができる。
【0051】
図5(b)に示す構成では、サイホンの原理のみによる導水の場合、一旦ホース10の一端部が水12に浸けられた状態でなくなれば、再びホース10が水12に浸けられてもホース10の他端部側からの重力による水の排出がない。したがって、ホース10内が減圧されないので、ホース10内を水12が移動することがなく、サイホンの原理によって連続的に水12を排出することができない。
【0052】
図5(c)に示す構成では、水12は、親水性の紐13の一端部から吸収され他端部から排出される。このように毛細管現象を利用して親水性の紐13によって、水12が吸収され容器12から排出されている場合は、一旦親水性の紐13が水12に浸けられた状態でなくなっても、水12が再び満たされ、水12に親水性の紐13が浸けられれば、水12が親水性の紐13の一端から吸収され、毛細管現象によって他端部から排出され、容器11から吸い出される。
【0053】
図5(d)に示す構成では、親水性の紐13がホース10内に挿入され、容器11内の水12に親水性の紐13およびホース10の一端部が浸けられている。したがって、図2(b)と同様に水12は、親水性の紐13の一端部から他端部に移動し、ホース10の他端部から排出される。ホース10の他端部から水12が排出されると、ホース10内が減圧され、水12がホース10一端部側から吸引され、他端部側から排出される。したがって毛細管現象およびサイホンの原理によって、水12がホース10一端部側からホース10内に吸収および吸引されホース10内を移動してホース10の他端部側から排出されるので、図5(c)の場合と比べて水12の排出量は増す。ホース10内に親水性の紐13が挿入されているので、ホース10内を水12が移動する場合に、親水性の紐13による抵抗があり、流量が少なくなる。
【0054】
したがって、図5(a)のホースのように内部が中空の場合と比べると水12の排出量は多くはない。またホース10の他端部は一端部よりも下方に配置され、親水性の紐13およびホース10の一端部が容器11の水12に浸けられた状態にある。したがって、毛細管現象およびサイホンの原理によって水12がホース10の一端部から他端部に向かって移動して排出される。ホース10および親水性の紐13の全長が長くなり、たとえば1m以上となった場合、流路抵抗が大きくなりホース10内を移動する水12の量が減少し、排出量が極端に低下する。
【0055】
図6(b)に示す構成では、ホース10の他端部は一端部よりも下方に配置され、親水性の紐13、ホース10および内挿ホース15が容器11の水12に浸けられた状態にある。この場合、毛細管現象によって水12が親水性の紐13の一端部から吸収され、親水性の紐13の他端部に移動し、ホース10の他端部側から排出される。
【0056】
ホース10の他端部側から水12が排出されると、ホース10内が減圧されるとともに、内挿ホース15の内方空間(以下「内挿ホース内」という。)が減圧される。内挿ホース15内が減圧されると、内挿ホース15の一端部側から水12が吸引され、水12が内挿ホース15内を移動する。内挿ホース15内は中空なので、ホース10内に隙間なく親水性の紐13が充填されている場合と比べて、ホース10内を水12が移動する場合の抵抗も少なくなる。したがって、ホース10内を水が移動する距離が長い場合でも、図6(a)に比べて水の排出量は飛躍的に増大する。
【0057】
本発明の実施の一形態の導水装置1は、この図6(b)に示す構成に相当する。具体的には導水路本体2はホース10に相当し、導水体3は紐13に相当し、通路形成体4が内挿ホース15に相当し、容器11に相当する漏水溜まり部6から漏水を排水ピット20に排出する。
【0058】
本発明の実施の一形態の導水装置1によれば、漏水溜まり部6に滲出する漏水は、まず導水体3の一端部3aに付着して、毛細管現象によって浸透し、導水体3の他端部3bに移動する。漏水が導水体3の他端部3bまで移動すると、重力によって導水路26の他端26bに滴落ちる。導水路26の他端26bに滴落ちた漏水は、排出管路27を流下する。排出管路体5の内径は4mmなので、水の粘性および表面張力によって、排出管路27の流路断面を塞いだ状態で漏水は流下する。
【0059】
このとき導水路26の一端26aが漏水で塞がれていると、排出管路27を流下する漏水の水面よりも導水路26の一端26a側の導水路26および排出管路は、前記水の流下によって減圧される。この導水路26の減圧によって、導水路26に吸引力が発生する。この吸引力によって、漏水溜まり部6から導水路に漏水を吸引することができる。
【0060】
このような吸引力は、導水路本体2の最上部に関して他端部2b側、換言すれば排水方向下流側に存在する水に働く重力が、前記最上部に関して一端部2a側、換言すれば排水方向上流側に存在する水に働く重力よりも大きい限り継続的に発生し、いわゆるサイホンの原理によって、導水路26に吸引した漏水を、排出管路27を流下させ排出管路9から排出することができる。
【0061】
このように、導水装置1は、まず毛細管現象によって、導水動作を開始し、水溜まり部6に水が溜まり、導水路26の一端26aが水で塞がれた状態になるとサイホンの原理による導水動作に移行し、いわば自動的に導水路26に水を透し、排出管路27の他端から排出することによって、水溜り部6から排水ピット20へ連続して導くことができる。
【0062】
また、導水路26には、導水体が存在しない内通路9が形成されているので、導水体3による流路抵抗がない流路を、導水路26に確保することができる。排出管路を漏水が流下することによって導水路26が減圧される場合、内通路9も減圧されるので、導水路26に吸引された漏水は、内通路9に吸引され、内通路9を流れる。したがって、導水路26に導水体3が隙間なく充填されている場合と比較して、大きな流量で漏水を導水場所に迅速に導くことができる。
【0063】
このように導水体3を用いる毛細管現象による導水動作と、サイホンの原理によって漏水を流路抵抗の小さい内通路9を流れさせる導水動作とを組合せることができ、漏水溜まり部6の漏水が一旦枯れても、再び漏水が溜まると、毛細管現象によって、導水路本体2の他端部2bの内部空間26bまで漏水を導くことができ、導水動作を再開することができる。そして導水動作が再開されると、サイホンの原理によって内通路9を連続して流れさせて漏水を導き、排水ピット20に排出することができる。
【0064】
また、導水装置1では、通路形成体4の他端部4bが導水体3の他端部3bから導水体の一端部3aに退避した位置に設けられる。したがって、サイホンの原理によって内通路9を流れ内通路9の他端9bから排出された漏水は、導水体3の他端部3bで繊維間に形成される毛細管に保持されてから導水路26の他端26bに滴落ちる。このように導水体3に保持されてから漏水が導水路26の他端26bに滴落ちるので、サイホンの原理によって内通路9を流れる漏水の流量が小さい場合であっても、排出管路27の流路断面を塞ぐに足る量の漏水が排出管路27を流下する。したがって、サイホンの原理による導水を確実に維持することができる。
【0065】
またこの導水装置1では、漏水を排水ピット20に導水するにあたって、排水溝23および導水装置1を外気から遮断するなどの作業が不要である。このように導水装置1の設置作業が容易である。厳密に言えば、漏水溜まり部6に関して前述の被覆層7を設けなければならないが、導水装置1の一端部付近だけであり、残余の部分は不要である。さらに通路形成体4として、中空筒状の管路体が用いられるので、個別に設けられる場合に比べて、ひと纏まりに扱うことができ、取扱を容易にすることができる。
【0066】
また、導水装置1によれば、漏水溜まり部6から排水口までの距離が長くなり、たとえば導水装置1による略水平方向の導水距離L1が10m以上となる場合は、排出管路体5の長さL2を1m以上とする。排出管路27の内容積を多くすることによって、導水装置1の最上部に関して排水方向下流側に存在する漏水量を増加させ、導水路26または排出管路27に存在する漏水の水面よりも排水方向上流側の空間をさらに減圧することができる。したがって、サイホンの原理による導水動作を確実に発生させ、継続させることができ、大きな流量で漏水を排水ピット20などの導水場所に導くことができる。このように排出管路体5の長さL2は、導水装置1による略水平方向の導水距離L1に基づいて、排出管路体5内の容積分の漏水を、導水路本体2の他端部2bから排出することによって、漏水を内通路9に吸引することができる程度の吸引力が得られる寸法に選ばれる。
【0067】
また排出管路体5の内径d5が4mm以上6mm以下に選ばれ、排出管路体5を流下する漏水が、水の表面張力および粘性によって排出管路27の流路断面を塞いだ状態で流下する。したがって、導水体3によって、導水路26の他端26bに導かれる漏水が少量であっても、漏水の排出管路27での流下によって確実に導水路26を減圧して、サイホンの原理による導水動作に移行させることができる。
【0068】
排出管路体5の内径d5が、4mm未満であると、排出管路27における流路断面積が小さくなり過ぎて、大きな流量で漏水を導くことができない。したがって、排出管路体5の内径d5を4mm以上6mm以下の範囲に選ぶことによって、漏水を、まず導水体3の毛細管現象を利用によって導き、次に確実にサイホンの原理の利用によって内通路9を流れさせて導くようにし、大きな流量で漏水を導くことができるようになる。
【0069】
出管路体5の内径が6mm以上の場合は、排出管路27の流路断面を塞いだ状態で漏水が流れない場合があるので、サイホンの原理による導水動作に移行しない場合がある。
【0070】
また導水路本体2の内径d2が、10mm以上20mm以下に選ばれるので、作業性、取扱性、設置性の良好な導水装置1を形成することができる。導水路本体2の内径d2が、前記本体内径範囲を下回ると、導水体3および通路形成体4および導水体3の挿入作業が困難になる。
【0071】
また本実施の形態では、導水路本体2、導水体3、通路形成体4および排出管路体5が、可撓性を有する構成であり、導水装置1全体が可撓性を有している。このように導水装置1が可撓性を有しているので、取扱が容易になり、設置作業が容易になる。たとえば導水装置1を排水溝23の形状に容易に倣わせることができる。
【0072】
また本実施の形態では、導水体3は、繊維束47を用いて形成される紐である。漏水は、多くの場合コンクリート成分である水酸化カルシウムを含み強アルカリ性を示す場合が多い。アルカリ性の漏水を導水する場合であっても、導水体3を形成する繊維束47は、ポリプロピレン繊維なので、エステル結合を有する天然繊維の束を用いる場合と比較して、繊維が加水分解されるおそれがなく、導水体3が劣化することを防ぐことができる。また、ポリプロピレン繊維は、耐酸性を有するので、酸性を示す漏水、たとえばめっき工場で発生する漏水を、導水装置1を用いて導水する場合であっても、導水体3が劣化することを防ぐことができる。
【0073】
また、導水体3を形成する繊維束47は、図3に示すように繊維束47を構成する各繊維自体に捻れを持たせ、各繊維をランダムに小さく屈曲させる。このように繊維を捻れさせることによって、導水体3を構成する繊維束47の繊維間に空隙が形成される。したがって、ポリプロピレン繊維を用いて導水体3を形成しても好適に毛細管現象を生じさせることができる。また、ポリプロピレン繊維を用いるので、繊維束47の中を漏水が通過する場合、天然繊維と比較して内部抵抗が小さく、導水装置1の導水動作によって導かれる漏水の流量および流速を大きくすることができる。
【0074】
図7は、本発明の実施の他の形態として、導水装置1を漏水溜まり部6の底部6aが導水装置1を設置する床面28よりも低い位置にある場合に導水装置1を設置した状態を示す鉛直断面図である。図7に示す導水装置1は、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。
【0075】
本実施の形態の導水装置1は、床構造体8の床面28に設置する。漏水は、床構造体の漏水溜まり部6の底部6aから滲出する。床面28から漏水溜まり部6の底部6aまでの略鉛直方向の距離L4は50mmである。導水装置1の導水路本体2の一端部2aは、漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6内の空間6sで開口する。導水体3の一端部3aは漏水溜まり部6の底部に当接する。導水体3には、導水体3の繊維間に、繊維の長手方向に揃って毛細管が多数形成される。したがって、導水体3は、毛細管現象によって、上方に漏水を吸い上げることができる。
【0076】
導水体3の一端部3aから漏水が吸収され、漏水溜まり部6の底部6aから床面28までの略鉛直方向の距離L4の落差を毛細管現象によって越え導水体3を上方に移動する。上方に移動した漏水は、排出管路27を流下して排出されるので、前述したサイホンの原理によって導水装置1は、漏水を吸引し排水ピット20まで導く。
【0077】
このように、導水装置1によれば、毛細管現象によってして漏水をたとえば150mm以下の落差であれば吸い上げることができるので、漏水溜まり部6の底部6aが床面28より下方にある場合でも、床構造体8を削り漏水溜まり部6から排水口まで排水溝23を形成する必要がなくなる。したがって導水装置1を容易に設置することができる。
【0078】
図8は、本発明の実施のさらに他の形態として導水装置1を撓み部17で一部を持ち上げて排水溝23に設置した状態を示す鉛直断面図である。図8に示す導水装置1は、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。導水装置1は、溝23に設置され撓み部17で上方に一部を持ち上げられた構成となっている。導水装置1の撓み部17の底部29と溝内の排水溝23の床面30との略鉛直方向の距離L5は、50mmである。この場合にも、導水体3は、前述した毛細管現象によって、漏水を漏水溜まり部6から他端部3bまで移動させることができる。導水体3の他端部3bから排出された漏水は、排出管路27を流下する。したがって、前述したように導水装置1は、毛細管現象とサイホンの原理によって、漏水溜まり部6から排水ピットまで漏水を導くことができる。
【0079】
導水装置1によれば、導水装置1を溝内などに設置して漏水を導く場合、導水装置1の一部を上方に持ち上げることによって、地下構造物の主筋などの障害物を避けることができる。したがって、導水装置1を容易に設置することができる。
【0080】
図9は、導水装置1を風呂の洗い場のドレーンに適用した場合を示す図である。風呂の洗い場は、図9(a)に示すようにコンクリート床32と化粧タイル30との間に、防水層31および砂セメント34が介在する。砂セメント34は、防水層121と化粧タイル30との間に介在する。配水管33は、化粧タイル30に開口しており化粧タイル上の水を排水する。
【0081】
このように風呂場の水は、配水管33から排水されるが、各化粧タイル30の目地部38から、水が砂セメント124に滲みこむ場合がある。砂セメント124に滲みこんだ水は、防水層121に溜まる。このように砂セメントに滲みこんだ水は、排水されないので、この水が腐敗して、悪臭の原因となる。このような構造は、風呂の洗い場だけでなく、洗面所や台所のタイル床、浴槽の裏側などが同じ構造である。
【0082】
このような悪臭は清掃しただけでは取り除くことができず、悪臭を防ぐためには化粧タイル30と防水層31との間に水が溜まらないような構造にする必要がある。化粧タイル30と防水層31との間に水が溜まらない構造とするためには、排水ドレーン35を二重排水構造とする方法があるが、この場合にはコストが高くなってしまう。
【0083】
そこで、導水装置1を化粧タイル31と防水層31との間に設置することで、低コストで排水処理を行うことができる。つまり、図9(b)に示すように、導水路本体2の一端部を水溜り部37に浸け、排出管路体5の他端部5bを配水管33に接続する。このときコンクリート床122に孔を形成して導水路本体2を通すことになるが、防水層121に孔が形成されることは避けたい。そこで、図9(b)に示すように導水路本体2を入口36を介して配水管33に接続する。
【0084】
このように入口36を介して外に出すと、その分だけ導水路本体1を持ち上げる必要があるが、前述したように、導水装置1では、150mm程度の障害は、水を汲み上げて排水することができるので、確実に排水することができる。また、水溜り部37から入口36までの距離が1m以上であっても、前述したように良好に水溜まり部37の水を導水して、排水管33に排出することができる。
【0085】
また、導水装置1は、前述したように風呂場の洗い場やトイレ、台所のタイル床、浴槽の裏側などへの適用に限らず、図10に示すように、雨水などの排水溝44に溜まる水を排水する場合にも適用することができる。排水溝44は、通常勾配がついているが、逆勾配となって人目につかない溝の奥の方に水溜まり45ができる場合がある。これによって、蚊やボウフラの発生源となる場合がある。このような排水溝に導水装置1を適用することで、確実に排水し、悪臭の原因を抑えることが可能となる。また、水溜り45から排水場所までの距離が1m以上であっても、前述したように良好に水溜まり45の水を排水場所に導水して、排出することができる。
【0086】
図11は、本発明の実施のさらにまた他の形態の導水装置1Aを、床構造体8に設置した状態で示す鉛直断面図である。図11に示す導水装置1Aは、図1に示す導水装置1と類似しており、対応する構成に同一の符号を付し異なる構成についてだけ説明する。本実施形態の導水装置1Aは、一端部が漏水溜まり部6に設けられ、漏水溜まり部6から排水溝23を経て排水孔22にわたって延在し、排水孔22を挿通して、他端部が下方に垂下されて排水ピット20の上方に配置されるように設けられている。
【0087】
導水装置1Aは、導水路本体2と導水体3とバイパス管路体41および排出管路体5を含む。導水路本体2は、中空筒状の管状の部材であり、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、他端部2bが一端部2aよりも下方に配置されている。
【0088】
導水体3は、導水路本体2によって形成される導水路26に充填して設けられ、一端部3aで漏水溜まり部6の水を吸収し、毛細管現象を利用して導水路26の他端26に漏水を導く。バイパス管路体41は、一端部41aが漏水溜まり部に設けられ、他端部41bが排出管路体5の一端部5aに接続される。排出管路体5は、一端部5aが管継手などで導水路本体2の他端部2bおよびバイパス管路体41の他端部41bと接続されている。導水路本体2とバイパス管路体41と排出管路体5との接続は、たとえばY型管継手などを用いて流路を塞ぐことなく接続する。
【0089】
導水路本体2は、一端部2aが漏水溜まり部6に設けられ、漏水たまり部内の空間6sで開口し、漏水溜まり部6から排水孔22にわたって排水溝23に略水平に延在し、排水孔22を挿通して他端部2bが排水ピット20の上方に配置されるように、床構造体8から下方に突出して垂下される。これによって、導水路本体2は、他端部2bが一端部2aよりも下方に配置される。
【0090】
バイパス管路体41は、たとえば中空筒状の管路体である。バイパス管路体41の一端部41aは漏水溜まり部6内の空間6sで開口する。バイパス管路体4は、可撓性を有する合成樹脂のホースなどを用いることができる。本実施の形態では、塩化ビニルから成るホースが用いられる。
【0091】
本実施の形態では、導水装置1による漏水溜まり部6から排水孔22までの略水平方向の導水距離L6は、たとえば1mである。排出管路体5の軸線方向の長さ(鉛直方向寸法)L7は、たとえば50cmである。また排水溝22を挿通して設けられる通路形成体35の鉛直方向寸法L8は、たとえば30cmである。
【0092】
導水路本体2内には、導水体3が充填されている。また、導水路本体2外に設けられるバイパス管路体41によってバイパス管路46が形成される。バイパス管路46は、漏水溜まり部6内の内部空間6sから排出管路27に連なる。
【0093】
このように、本実施の形態では、バイパス管路体41を導水路本体2の外方に設け導水装置1Aを構成しても、導水体3の毛細管現象によって、漏水を導水路26の他端26bに導き、排出管路27を流下することによって、導水路26およびバイパス管路46が減圧される。したがって、導水装置1Aは導水装置1と同様にサイホンの原理によって漏水を漏水溜まり部6から排水ピットまで大きな流量で迅速に導くことができる。このように導水装置1Aは、前述の導水装置1と同様の効果が得られる。
【0094】
また、バイパス管路体41を、導水路本体2に沿わせて設け、他端部41bを排出管路体5の一端部5aに接続するだけの簡単な構成で、バイパス管路46を形成し、前述の優れた効果を達成する導水装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の一形態である導水装置1が床構造体8に設置された状態を示す鉛直断面図である。
【図2】導水装置1を軸線を含む一平面で切断した断面図である。
【図3】非結束状態の導水体3を示す図である。
【図4】導水装置1を導水路本体2の長手方向の中央部付近で軸線に垂直に切断した断面を模式的に示す図である。
【図5】サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。
【図6】サイホンの原理および毛細管現象を利用する導水動作を説明するための鉛直断面図である。
【図7】本発明の実施の他の形態として、導水装置1を漏水溜まり部6の底部6aが導水装置1を設置する床面28よりも低い位置にある場合に導水装置1を設置した状態を示す鉛直断面図である。
【図8】本発明の実施のさらに他の形態として導水装置1を撓み部17で一部を持ち上げて排水溝23に設置した状態を示す鉛直断面図である。
【図9】導水装置1を風呂の洗い場のドレーンに適用した場合を示す図である。
【図10】排水溝40の断面図である。
【図11】本発明の実施のさらにまた他の形態の導水装置1Aを、床構造体8に設置した状態で示す鉛直断面図である。
【図12】従来の技術の導水構造101を示す鉛直断面図である。
【図13】他の従来の技術の導水装置101Aを示す鉛直断面図である。
【図14】さらに他の従来の技術の導水装置101Bを示す鉛直断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 導水装置
2 導水路本体
3 導水体
4 通路形成体
5 排出管路体
41 バイパス管路体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体と、
一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置。
【請求項2】
水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
一端から他端にわたって連続したバイパス管路を有し、一端部が水溜まり部に設けられるバイパス管路体と、
一端が導水路本体の他端とバイパス管路体の他端とに連なり、他端がバイパス管路体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置。
【請求項1】
水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
前記導水体が設けられた導水路本体の両端部にわたって通路を形成する通路形成体と、
一端が導水路本体の他端に連なり、他端が導水路本体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置。
【請求項2】
水溜まり部から導水場所に水を導くための導水装置であって、
一端から他端にわたって連続した導水路を有し、一端部が水溜まり部に設けられ、他端部が一端部よりも下方に配置される導水路本体と、
導水路に設けられ、付着した水が毛細管現象によって浸透する導水体と、
一端から他端にわたって連続したバイパス管路を有し、一端部が水溜まり部に設けられるバイパス管路体と、
一端が導水路本体の他端とバイパス管路体の他端とに連なり、他端がバイパス管路体の一端よりも下方に延び、導水体から落下した水が流路断面を塞いだ状態で流下する排出管路を有する排出管路体とを含む導水装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図3】
【公開番号】特開2006−336325(P2006−336325A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162879(P2005−162879)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500118861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500118861)
【Fターム(参考)】
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