説明

導火膜付きキャンドル及び導火膜付きキャンドルセット

【課題】着火時の視覚及び演出効果が高く、構造、設置及び運搬が簡単なキャンドルを提供する。
【解決手段】導火膜付きキャンドルは、膜状の瞬間燃焼性導火膜20がキャンドル10の胴部から灯芯先端部の付近まで装着されている。この瞬間燃焼性導火膜20の下端に点火すると、瞬間燃焼性導火膜20が大面積及び瞬間燃焼性を有するので、導火炎71が大量の燃焼光を発し、同時に灯芯先端部の付近まで瞬時に誘導されて、灯芯先端部に灯火75を点火させ、視覚及び演出効果を生じる。更に、本発明においては、瞬間燃焼性薄片30、花火31及び可燃性棒材33が灯芯先端部に接続され、導火炎71により開始されるこれらの部材の段階的な点火により、灯芯先端部への灯火75の点火をより確実にすると共に、視覚及び演出効果を更に増強する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結婚披露宴のキャンドルサービスや各種イベントの会場、その他各種設備に配置されるキャンドルに関するものであり、更に詳細には、導火手段により灯芯先端部に灯火が点火されるキャンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば結婚披露宴の会場におけるキャンドルサービスにおいて、演出効果を増強するために、キャンドルに導火線及び/又は花火を組み合わせることが行われている。
【0003】
例として、特開2002−130673号公報(特許文献1)には、導火線により複数のキャンドルを点火する、キャンドル用点火装置及びキャンドル演出方法が開示されている。又、実開平4−49797号公報(特許文献2)には、キャンドルと花火が導火線により接続され、前記キャンドルを着火すると、前記導火線が同時に着火され、前記導火線の燃焼により前記花火が点火される、室内用キャンドル花火が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−130673号公報
【特許文献2】実開平4−49797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置においては、複数のキャンドルの各燃焼芯が導火線により接続され、この導火線を点火すると、導火線の炎が各燃焼芯まで導火され、各燃焼芯が点火される。特許文献1の導火線は、小直径であり、従ってこの導火線に点火される炎はサイズが小さいので目立ちにくく、特許文献1の装置による演出に殆ど貢献しないという問題がある。又、特許文献1の導火線は、複数のキャンドルの各燃焼芯に固定されるが、この導火線の他の部分は全く固定されておらず、各燃焼芯に吊り下がった状態となっている。従って、特許文献1の装置は運搬及び設置に時間と手間が掛るという問題がある。
【0006】
又、特許文献2のキャンドル花火においては、前記したとおり、キャンドルの先端と花火の先端が導火線により接続され、前記キャンドルの先端を着火すると、前記導火線が同時に着火され、前記導火線の燃焼により前記花火の先端が点火される。特許文献2の導火線は、特許文献1の導火線と同様に小直径であり、従ってこの導火線に点火される炎はサイズが小さいので目立ちにくく、特許文献2のキャンドル花火による演出に殆ど貢献しないという問題がある。又、特許文献2の導火線は、キャンドルの先端及び花火の先端に固定されるが、この導火線の他の部分は全く固定されておらず、前記の各先端に吊り下がった状態となっている。従って、特許文献1の装置と同様に、特許文献2のキャンドル花火は運搬及び設置上の問題を有する。
【0007】
これらの発明は、キャンドルの灯火及び花火の炎からの発光により会場の雰囲気を盛り上げる視覚効果を発生させ、更にキャンドルの灯火及び花火の炎の動きにより会場の注目を集める演出効果も発生させて、会場をより華麗且つ豪華にすることを目的とする。特許文献1及び2の導火線は、炎の動きを演出できる潜在的可能性を有するが、導火線の炎が弱いので、この炎の動きが目立たず、実際には視覚効果のみならず、演出効果さえ期待できない。又、特許文献1及び2の導火線構造により、特許文献1及び2の発明が嵩張って大型化してしまい、前記した運搬及び設置上の問題のみならず、価格の高騰も招いている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記する課題を解決するために為されたものであり、本発明の導火膜付きキャンドルにおいては、導火線の代わりに、膜状の瞬間燃焼性導火膜をキャンドルの胴部から灯芯先端部の付近まで形成する。この瞬間燃焼性導火膜に導火炎を点火すると、瞬間燃焼性導火膜が大面積及び瞬間燃焼性を有するので、前記導火炎が大量の燃焼光を発し、同時に前記灯芯先端部の付近まで瞬時に誘導されて、前記灯芯先端部に灯火を点火する。この導火炎及び灯火の発光及び動きにより視覚及び演出効果が生じ、結構披露宴などの会場をより華麗且つ豪華にする。本発明の瞬間燃焼性導火膜は嵩張らないので、本発明の導火膜付きキャンドルの操作簡易化、小型化及び低価格化を実現する。更に、本発明においては、瞬間燃焼性薄片、花火及び可燃性棒材が前記灯芯先端部に接続され、前記導火炎により開始されるこれらの部材の段階的な点火により、前記灯芯先端部への点火をより確実にすると共に、前記視覚及び演出効果を更に増強する。
【0009】
従って、本発明の第1の形態は、灯火が点火される灯芯先端部を有するキャンドルと、前記キャンドルの外周にキャンドル胴部から前記灯芯先端部の付近まで形成された瞬間燃焼性導火膜を有し、前記キャンドル胴部の前記瞬間燃焼性導火膜に導火炎が点火されると、前記導火炎が前記灯芯先端部の付近まで前記瞬間燃焼性導火膜の燃焼により誘導され、前記灯芯先端部に前記灯火を点火する導火膜付きキャンドルである。
【0010】
本発明の第2の形態は、第1の形態において、前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火する導火膜付きキャンドルである。
【0011】
本発明の第3の形態は、第1の形態において、前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に連結される花火と、前記花火の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記花火が発火し、前記花火の発火により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火する導火膜付きキャンドルである。
【0012】
本発明の第4の形態は、第1、2又は3の形態において、前記瞬間燃焼性導火膜が火薬性高分子から形成される導火膜付きキャンドルである。
【0013】
本発明の第5の形態は、第2又は3の形態において、前記瞬間燃焼性薄片が火薬性高分子から形成される導火膜付きキャンドルである。
【0014】
本発明の第6の形態は、第4又は5の形態において、前記火薬性高分子がニトロセルロース、ニトロヘミセルロース、硝酸でんぷん、ニトロアガロース又はニトロキトサンの1種以上を含有する導火膜付きキャンドルである。
【0015】
本発明の第7の形態は、第2〜6の形態のいずれかにおいて、前記可燃性棒材が燃焼時に残留物を発生しない完全燃焼性物質から形成される導火膜付きキャンドルである。
【0016】
本発明の第8の形態は、第7の形態において、前記完全燃焼性物質が無添加ポリエチレン、無添加ポリプロピレン、無添加ポリスチレン、無添加ポリオレフィン、無添加ポリエステル又は無添加ポリアセタールの1種以上を含有する導火膜付きキャンドルである。
【0017】
本発明の第9の形態は、第1〜8の形態のいずれかにおける導火膜付きキャンドルと前記導火膜付きキャンドルを保持するスタンドから構成される導火膜付きキャンドルセットである。
【0018】
本発明の第10の形態は、第9の形態において、前記スタンドに遠隔操作式点火手段が装備され、遠隔操作により前記瞬間燃焼性導火膜に前記導火炎を点火する導火膜付きキャンドルセットである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の形態によれば、導火膜付きキャンドルが、灯火が点火される灯芯先端部を有するキャンドルと、前記キャンドルの外周にキャンドル胴部から前記灯芯先端部の付近まで形成された瞬間燃焼性導火膜を有し、前記キャンドル胴部の前記瞬間燃焼性導火膜に導火炎が点火されると、前記導火炎が前記灯芯先端部の付近まで前記瞬間燃焼性導火膜の燃焼により誘導され、前記灯芯先端部に前記灯火を点火するので、視覚効果及び演出効果が高く、結婚披露宴などの会場をより華麗且つ豪華にし、更にコンパクト且つ安価であり、また運搬及び設置に便利である導火膜付きキャンドルを提供することができる。
【0020】
ここにおけるキャンドルの本体は、ワックス又はパラフィンなどの蝋から形成され、キャンドルの中心軸付近には、綿糸などの灯芯が配置されている。この灯芯の先端がこのキャンドルの先端から突出して、灯芯先端部を形成する。このキャンドルの外周に形成される瞬間燃焼性導火膜は、瞬間燃焼性を有する材料から組成される。このような材料の例としては、ニトロセルロースなどの火薬性高分子がある。このキャンドルの胴部に形成された瞬間燃焼性導火膜に導火炎を点火すると、前記導火炎がキャンドル胴部から灯芯先端部の付近まで瞬時に上昇しながら誘導され、前記灯芯先端部へ飛火して灯火を点火させる。ここにおける瞬間燃焼性導火膜は大面積なので、前記導火炎のサイズも大きくなる。しかもこの導火炎が瞬時に上昇するので、キャンドル自体がこの導火炎に包まれる錯覚を起し、高い視覚及び演出効果を生ずる。
【0021】
尚、前記導火炎は、前記瞬間燃焼性導火膜の燃焼により誘導されるので、前記キャンドルに直接接触する。しかし、前記瞬間燃焼性導火膜による前記導火炎の誘導が高速且つ瞬時に起こるので、前記導火炎は前記キャンドルを融解させない。特に、前記瞬間燃焼性導火膜の材質としてニトロセルロースを使用する場合には、ニトロセルロースの燃焼炎が比較的低温なので、前記キャンドル融解の可能性が更に低くなる。尚、本形態における「灯芯先端部の付近」とは前記導火炎が前記灯芯先端部へ灯火を点火することが可能な位置を指す。前記導火炎のサイズが充分大きければ、前記導火炎の前記瞬間燃焼性導火膜上における燃焼位置が前記灯芯先端部からやや離れていても、前記灯芯先端部へ灯火を点火することができるので、前記導火炎は前記灯芯先端部の「付近」に存在すると言える。
【0022】
この発明における瞬間燃焼性導火膜は前記キャンドルの外周に密着或いは近接するので、嵩張らず、また運搬時においてはためくこともない。従って、この瞬間燃焼性導火膜が前記キャンドルに形成された状態で、前記導火膜付きキャンドルを輸送でき、輸送後にスタンド等の保持器具に立設するだけで設置を完了できるので、運搬及び設置が容易である。
【0023】
本発明の第2の形態によれば、前記導火膜付きキャンドルが、前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火するので、前記瞬間燃焼性薄片と前記可燃性棒材の2段階燃焼により、確実に前記灯芯先端部に前記灯火を点火することができる。
【0024】
ここにおける瞬間燃焼性薄片は、瞬間燃焼性導火膜と同様に、瞬間燃焼性を有する材料から組成される。このような材料の例としては、たとえばニトロセルロースなどの火薬性高分子がある。この瞬間燃焼性薄片は、前記導火炎の上部がこの瞬間燃焼性薄片の範囲内に到達すると、瞬時に引火する。又、ここにおける可燃性棒材は、燃焼時に高い熱量を生じ、且つ有害物質を発生しない、無添加ポリエチレンなどの完全燃焼性部材から形成される。前記瞬間燃焼性薄片に薄片炎が引火される際に、この薄片炎によりこの可燃性棒材に棒材炎が引火される。この棒材炎により、前記灯芯先端部に灯火が引火される。更に、この棒材炎は、前記したとおり高熱量なので、前記灯芯先端部の周辺に存在する固体状の蝋を融解させる。この融解された蝋は、前記灯芯の毛細効果により前記灯芯先端部へ輸送され、前記灯芯先端部への灯火の点火を容易にする。
【0025】
ここにおける瞬間燃焼性薄片は燃焼しやすい。その一方、ここにおける可燃性棒材の燃焼時における熱量は高い。本形態において、瞬間燃焼性導火膜を薄片炎を点火し、この薄片炎により可燃性棒材を点火させる、段階的な燃焼を採用することにより、前記導火炎を確実に前記灯芯先端部に引火させることができる。
【0026】
尚、この燃焼性棒材には、燃焼時に発色する、金属塩などの発色剤などが含有されていても良い。この発色剤による棒材炎の発色により、更に視覚効果を強化することができる。
【0027】
本発明の第3の形態によれば、前記導火膜付きキャンドルが、前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に連結される花火と、前記花火の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記花火が発火し、前記花火の発火により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火するので、花火に点火される花火炎による視覚効果を前記導火膜付きキャンドルに付加することができ、前記導火炎による視覚効果との組合せにより、高い演出効果を得ることができる。
【0028】
ここにおける花火は、導火膜付きキャンドルに装備する為に充分小型化される必要がある。又、点火時において華麗な発光を生ずるものが好ましい。従って、線香花火、手持ち花火及び充分に小型化された噴出花火が使用できるが、これらの内でも、線香花火及び手持ち花火が最適である。尚、ここにおける花火は、先端に花火導火線を有してもよく、この花火導火線が前記瞬間燃焼性薄片の薄片炎により引火することにより、この花火の点火が更に確実になる。又、ここにおける瞬間燃焼性薄片及び可燃性棒材は、第2の形態における瞬間燃焼性薄片及び可燃性棒材と同様の性質を有する。但し、本形態において、瞬間燃焼性薄片の薄片炎が花火に花火炎を点火し、この高熱量の花火炎が可燃性棒材に棒材炎を点火するので、本形態における棒材炎の点火が第2の形態と比較して更に確実になる。
【0029】
本発明の第4の形態によれば、前記瞬間燃焼性導火膜が火薬性高分子から形成されるので、確実な瞬間燃焼性と高分子の加工性が両立される物質により前記瞬間燃焼性導火膜を形成することができ、前記瞬間燃焼性導火膜の完全燃焼と形状の任意性を両立させることができる。本形態における火薬性高分子には、高分子自体に、酸化性を有する硝酸基(−NO)又はペルオキシ基(−OOH)などの化学基が結合されている。この様な高分子は、大気中の酸素を必要とせずに燃焼するので、燃焼が瞬間且つ完全であり、また煤などの有害物質を生じない。又、この物質は高分子であるので、薄膜又は繊維などへの加工が容易である。
【0030】
本発明の第5の形態によれば、前記瞬間燃焼性薄片が火薬性高分子から形成されるので、確実な瞬間燃焼性と高分子の加工性が両立される物質により前記瞬間燃焼性薄片を形成することができ、前記瞬間燃焼性薄片の完全燃焼と形状の任意性を両立させることができる。ここにおける利点及び特性は、第4の形態における利点及び特性と同様である。
【0031】
本発明の第6の形態によれば、前記火薬性高分子がニトロセルロース、ニトロヘミセルロース、硝酸でんぷん、ニトロアガロース又はニトロキトサンの1種以上を含有するので、瞬間燃焼性及び加工性の実績が証明されている物質を使用して瞬間燃焼性導火膜及び/又は瞬間燃焼性薄片を製造することができる。ここにおける火薬性高分子としては、ニトロセルロースが特に好ましい。このニトロセルロースは、紙又はガーゼなどの綿布を濃硝酸に浸漬して直接に硝化することにより、既に薄膜化された状態で製造することができる。又、セルロースを硝化した後に、有機溶媒に溶解して薄膜化することにより、プラスチック状の高分子膜を製造することもできる。この様に、ニトロセルロースに関しては、数々の製造法及び加工法が可能である。このニトロセルロースは、点火時に低温で瞬間的且つ迅速に燃焼する。更に、ニトロセルロースは完全燃焼性を有し、燃焼時に悪臭ガス、有害残留物及び煤を発生しないので、本発明の瞬間燃焼性導火膜及び瞬間燃焼性薄片を形成するのに最適である。
【0032】
本発明の第7の形態によれば、前記可燃性棒材が燃焼時に残留物を発生しない完全燃焼性物質から形成されるので、前記可燃性棒材から有毒性ガス及び煤などの有害物質が発生せず、従って安全な導火膜付きキャンドルを提供することができる。ここにおける完全燃焼性物質とは固体残留物及び煤状の炭化物を発生させず、またアミン、硫黄酸化物(SO)、ハロゲン化物などの有害性ガスを発生させない物質を意味し、炭素及び水素の2元素、或いは炭素、水素及び酸素の3元素のみからなる高分子が好ましい。
【0033】
本発明の第8の形態によれば、前記完全燃焼性物質が無添加ポリエチレン、無添加ポリプロピレン、無添加ポリスチレン、無添加ポリオレフィン、無添加ポリエステル又は無添加ポリアセタールの1種以上を含有するので、本発明の導火膜付きキャンドルの使用時に、確実に固体残留物、炭化物及び有害性ガスの発生を防止することができる。本発明における可燃性棒材の材質としては、加工性が高い高分子が好ましい。数ある高分子の内、無添加ポリエチレン、無添加ポリプロピレン、無添加ポリスチレン、無添加ポリオレフィンは炭素及び水素の2元素のみから組成され、また、無添加ポリエステル及び無添加ポリアセタールは炭素、水素及び酸素の3元素のみから組成される。従って、本形態における完全燃焼性物質は、完全燃焼性及び加工性に優れている。尚、高分子には安定剤及び可撓剤などの添加剤が普通は含有されている。これらの添加剤は硫黄、ハロゲン及び/又はリンを含む場合が多く、これらの原子は、燃焼時に有毒性ガス及び/又は固体残留物を生じる。ここにおける高分子を無添加とすることにより、本発明における可燃性棒材の完全燃焼性が確保される。本形態における完全燃焼性物質の内、完全燃焼性に優れ、更に融点が低い無添加ポリエチレンが特に好ましい。
【0034】
本発明の第9の形態によれば、導火膜付きキャンドルセットが、第1〜8の形態のいずれかにおける導火膜付きキャンドルと前記導火膜付きキャンドルを保持するスタンドから構成されるので、前記導火膜付きキャンドルの安定性及び安全性を高めることができ、更に前記スタンドの美的外観により前記導火膜付きキャンドルの演出効果を高めることができる。ここにおけるスタンドは、前記導火膜付きキャンドルを垂直に保持する物品である。このスタンドは融解した蝋への耐性及び各種の炎に対する耐火性を有し、スタンドが設置されたテーブルを前記蝋及び前記炎から保護する作用も有する。この様な耐熱性を確保する為のスタンドの材質としては、金属、陶器及びガラスが最適である。
【0035】
本発明の第10の形態によれば、前記スタンドに遠隔操作式点火手段が装備され、遠隔操作により前記瞬間燃焼性導火膜に前記導火炎を点火するので、前記導火膜付きキャンドルを点火する際に、接近しなくてもよく、従って安全性が確保できる。ここにおける遠隔操作式点火手段としては、例えば遠隔操作装置を付けたライター又は特開2007−273208号公報に開示された自動着火装置などが使用できる。又、ここにおける遠隔操作方法としては、超音波式、電波式、赤外線式、有線式などが使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる導火膜付きキャンドルの正面図である。
【図2】図1の導火膜付きキャンドルの側面断面図である。
【図3】図1の導火膜付きキャンドルの分解斜視図である。
【図4】前記実施形態にかかる導火膜付きキャンドルセットの点火を示す説明図である。
【図5】前記実施形態にかかる導火膜付きキャンドルの燃焼過程を示す過程説明図である。
【図6】前記実施形態にかかる導火膜の構成変形例を示すための、導火膜付きキャンドルの正面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる導火膜付きキャンドルの正面図である。
【図8】図4のスタンドに遠隔操作式点火手段が装備された場合の、前記導火膜付きキャンドルセットの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明に係る導火膜付きキャンドル及び導火膜付きキャンドルセットの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態にかかる導火膜付きキャンドル1の正面図である。この導火膜付きキャンドル1においては、キャンドル10に、ニトロセルロースなどの火薬性高分子から形成された瞬間燃焼性導火膜20が螺旋状に形成されている。尚、瞬間燃焼性導火膜20の形状は、後に図6に図示するとおり、任意である。この瞬間燃焼性導火膜20は、可燃性接着剤によりキャンドル10に取り付けられているが、可燃性粘着テープなど使用して固定しても良い。図1においては、キャンドル10の背面に形成される瞬間燃焼性導火膜20は破線により図示されている。後に図2に図示するとおり、キャンドル10内部の中心軸付近には灯芯11が形成され、灯芯11のキャンドル10上部から突出する部分が灯芯先端部12を形成する。
【0038】
図2は図1の導火膜付きキャンドル1の側面断面図であり、また図3は図1の導火膜付きキャンドル1の分解斜視図である。図2に図示するとおり、キャンドル10の軸線付近には、灯芯11が内挿されている。又、図2及び3に図示するとおり、灯芯先端部12は、筒状の可燃性棒材33の基端に内挿されている。但し、可燃性棒材33が筒状でなくても良いし、可燃性棒材33が可燃性接着剤などにより灯芯先端部12に固着されても良い。本実施形態においては、図2に図示するとおり、可燃性棒材33の基端は、キャンドルの先端部に部分的に埋設されている。この様な構成を採用ことにより、後に図4に図示される燃焼過程において可燃性棒材33が燃焼する際に、キャンドル10の先端を形成する蝋を確実に融解することができ、更に灯芯先端部12を確実に点火することができる。又、可燃性棒材33の先端には、花火31の基端が部分的に内挿されている。図2及び3に図示するとおり、花火31の先端には、花火導火線32が装備されている。また、花火31の先端には、瞬間燃焼性薄片30、30が装着されている。図2および3に図示するとおり、これらの瞬間燃焼性薄片30、30は、花火31の先端および花火導火線32をサンドイッチ状に挟むようにして可燃性接着剤により接着されている。しかし、1つだけの瞬間燃焼性薄片30が花火31の先端および花火導火線32に接着されてもよい。又、花火31が花火導火線32を有さなくても良い。
【0039】
図4は第1実施形態にかかる導火膜付きキャンドルセット60の点火を示す説明図である。導火膜付きキャンドルセット60は、導火膜付きキャンドル1と、このキャンドル1を保持するスタンド40から構成される。スタンド40により導火膜付きキャンドル1の転倒が防止され、また、後に図5に図示する燃焼過程における各種の炎又は融解した高温の蝋によるテーブルなどの損傷が防止される。又、スタンド40の美的外観により、導火膜付きキャンドル1の視覚効果が増進される。図4においては、瞬間燃焼性導火膜20は、手持ち式点火手段50の先端において燃焼する点火炎70により点火される。この手持ち式点火手段50は、導火膜に点火される炎からの安全性を確保するため、長い方が好ましく、長軸マッチ、ストーブライター又は他のキャンドル等が使用できる。瞬間燃焼性導火膜20が点火される位置としては、導火膜20の、キャンドル10の基端に最も近接する位置が好ましいが、瞬間燃焼性導火膜20のどの位置を点火しても、後に図5に図示する燃焼過程を開始させることができる。
【0040】
図5は、前記実施形態にかかる導火膜付きキャンドル1の燃焼過程を示す過程説明図である。図5の(5A)は、図4に図示する点火炎70により、瞬間燃焼性導火膜20に導火炎71が点火された直後を示す。又、(5B)は、導火炎71が灯芯先端部12及び灯芯先端部12に取着された可燃性棒材33の付近まで瞬間燃焼性導火膜20の燃焼により誘導された時点を示す。瞬間燃焼性導火膜20は大面積なので、導火炎71のサイズは大きく、また燃焼発光が強力である。導火炎71は、点火時点から瞬時にキャンドル10の上部へ誘導されるので、この瞬時誘導及び導火炎のサイズと高発光により、キャンドル10全体が導火炎71に包込されたかのような錯覚を生じ、視覚及び演出効果が発生する。又、この瞬時の誘導及び導火炎71の低温性により、キャンドル10の融解が防止される。
【0041】
図5の(5C)は、瞬間燃焼性薄片30、30に薄片炎72が点火された時点を示す。灯芯先端部12及び灯芯先端部12に接続された可燃性棒材33の付近まで誘導された導火炎71が、瞬間燃焼性薄片30、30へ飛火して、薄片炎72を点火する。ここに「付近」とは、導火炎71が瞬間燃焼性薄片30、30に薄片炎72を点火させることが可能となる、瞬間燃焼性導火膜20上の位置である。瞬間燃焼性薄片30、30は、瞬間燃焼性導火膜20と同類の火薬性高分子から形成されることが好ましく、この場合は、薄片炎72の迅速且つ確実な点火が確保され、また薄片炎72の燃焼光による視覚効果も得られる。
【0042】
図5の(5D)は、薄片炎72が花火導火線32を介して花火31に花火炎73を点火した時点を示す。導火炎71の視覚効果と花火炎73により視覚効果の組合せにより演出効果が得られる。又、花火炎73は発熱が高く、且つ燃焼時間が長いので、後に(5E)に図示する可燃性棒材33への棒材炎74の点火を確実にする。尚、花火導火線32を介することにより、花火31へ花火炎73を確実的に点火させることができる。
【0043】
図5の(5E)は、花火炎73が可燃性棒材33に棒材炎74を点火した時点を示す。又、(5F)は、棒材炎74が灯芯先端部12へ灯火75を点火した時点を示す。図2に図示する様な、可燃性棒材33の基端がキャンドル10の先端に部分的に挿入される構造を採用することにより、棒材炎74がキャンドル10の先端を形成する蝋を融解させることができ、灯芯先端部12への灯火75の点火を確実にすることができる。又、可燃性棒材33に、燃焼時に発色する、金属塩などの発色剤を添加することにより、棒材炎74を発色させることも可能であり、これにより視覚効果を更に高めることができる。
【0044】
図6は、前記実施形態にかかる瞬間燃焼性導火膜20の構成変形例を示すための、導火膜付きキャンドル1の正面図である。図1〜5においては、瞬間燃焼性導火膜20は螺旋状に形成されている。しかし、瞬間燃焼性導火膜20の形状は必ずしも螺旋状である必要は全くない。図6の(6A)においては、瞬間燃焼性導火膜20、20、20、20、20、20が非連続的に分割されて形成されている。即ち、瞬間燃焼性導火膜20は、連続的に形成される必要さえない。(6A)においては、導火炎71が、複数の瞬間燃焼性導火膜20を、キャンドル10の基端付近から先端付近まで飛火することにより、灯芯先端部12の付近まで誘導され、瞬間燃焼性薄片30、30に飛火する。尚、(6A)においては、瞬間燃焼性導火膜20が6部分に分割して形成されているが、この分割部分の個数は本発明においては限定されない。
【0045】
図6の(6B)においては、瞬間燃焼性導火膜20は完全に連続して形成されている。又、(6C)においては、瞬間燃焼性導火膜20、20、20は縦縞状に分割して形成されている。更に、(6D)においては、瞬間燃焼性導火膜20は網状に形成されている。加えて、(6E)においては、瞬間燃焼性導火膜20は、キャンドル10側面の片側のみに形成されている。これらの場合においても、導火炎71は、瞬間燃焼性導火膜20の燃焼により灯芯先端部12付近まで誘導され、瞬間燃焼性薄片30、30に飛火する。
【0046】
図7は本発明の第2実施形態にかかる導火膜付きキャンドル1の正面図である。この実施形態においては、花火31が可燃性棒材33に連結されておらず、瞬間燃焼性薄片30、30が直接に可燃性棒材33の先端に取着されている。瞬間燃焼性薄片30、30に点火された薄片炎72が直接に可燃性棒材33へ棒材炎74を点火する。この様な、第1実施形態と比較して簡易化された構造を採用することにより、製造が容易であり、価格が安価な導火膜付きキャンドル1を提供することができる。この実施形態においては、花火炎73による視覚効果は得られないが、導火膜付きキャンドル1の視覚及び演出効果は導火炎71及び薄片炎72により充分に得ることができる。又、可燃性棒材33に、燃焼時に発色する、金属塩などの発色剤を添加して、棒材炎74を発色させてもよく、この場合においては前記視覚効果が更に高まることになる。
【0047】
図8は、図4のスタンド40に遠隔操作式点火手段51が装備された場合の、導火膜付きキャンドルセット60の側面断面図である。この導火膜付きキャンドルセット60は、図4のキャンドルセット60の変形例である。遠隔操作指示により遠隔操作式点火手段51に点火炎70を点火し、この点火炎70が瞬間燃焼性導火膜20に導火炎71を点火する。ここにおける遠隔操作式点火手段としては、例えば遠隔操作装置を付けたライター又は特開2007−273208号公報に開示された自動着火装置などが使用できる。又、ここにおける遠隔操作方法としては、超音波式、電波式、赤外線式、有線式などが使用できる。遠隔操作式点火手段51を使用することにより、導火炎71点火の際に導火膜付きキャンドル1の付近まで接近する必要が無く、従って安全性が高まる。又、同時或いは連続的に複数の導火膜付きキャンドルセット60を点火することもでき、これにより演出効果を高めることができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明に係る導火膜付きキャンドルは、導火炎の発光性が高く、しかもこの導火炎の動きが顕著なので、高い視覚及び演出効果を提供することができる。しかも、この導火膜付きキャンドルは構造が簡単であり、価格が安価であり、運搬及び設置が容易であるので、演出の際に手間及び費用を低減させることができる。又、複数の導火膜付きキャンドルを設置することも容易に行うことができる。この発明に係る導火膜付きキャンドルにより、結婚式場の披露宴会場、誕生日パーティー会場、クリスマスパーティ等、各種祝い事のパーティー会場、寺院・神社・教会などの祭壇、その他各種設備を更に華麗且つ豪華にすることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 導火膜付きキャンドル
10 キャンドル
11 灯芯
12 灯芯先端部
20 瞬間燃焼性導火膜
30 瞬間燃焼性薄片
31 花火
32 花火導火線
33 可燃性棒材
40 スタンド
50 手持ち式点火手段
51 遠隔操作式点火手段
60 導火膜付きキャンドルセット
70 点火炎
71 導火炎
72 薄片炎
73 花火炎
74 棒材炎
75 灯火

【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯火が点火される灯芯先端部を有するキャンドルと、前記キャンドルの外周にキャンドル胴部から前記灯芯先端部の付近まで形成された瞬間燃焼性導火膜を有し、前記キャンドル胴部の前記瞬間燃焼性導火膜に導火炎が点火されると、前記導火炎が前記灯芯先端部の付近まで前記瞬間燃焼性導火膜の燃焼により誘導され、前記灯芯先端部に前記灯火を点火することを特徴とする導火膜付きキャンドル。
【請求項2】
前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火する請求項1に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項3】
前記灯芯先端部に接続される可燃性棒材と、前記可燃性棒材の先端部に連結される花火と、前記花火の先端部に取着される瞬間燃焼性薄片を有し、前記灯芯先端部の付近まで誘導された前記導火炎が前記瞬間燃焼性薄片に飛火し、前記瞬間燃焼性薄片の燃焼により前記花火が発火し、前記花火の発火により前記可燃性棒材が燃焼して、前記灯芯先端部に前記灯火を点火する請求項1に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項4】
前記瞬間燃焼性導火膜が火薬性高分子から形成される請求項1、2又は3に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項5】
前記瞬間燃焼性薄片が火薬性高分子から形成される請求項2又は3に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項6】
前記火薬性高分子がニトロセルロース、ニトロヘミセルロース、硝酸でんぷん、ニトロアガロース又はニトロキトサンの1種以上を含有する請求項4又は5に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項7】
前記可燃性棒材が燃焼時に残留物を発生しない完全燃焼性物質から形成される請求項2〜6のいずれかに記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項8】
前記完全燃焼性物質が無添加ポリエチレン、無添加ポリプロピレン、無添加ポリスチレン、無添加ポリオレフィン、無添加ポリエステル又は無添加ポリアセタールの1種以上を含有する請求項7に記載の導火膜付きキャンドル。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の導火膜付きキャンドルと前記導火膜付きキャンドルを保持するスタンドから構成されることを特徴とする導火膜付きキャンドルセット。
【請求項10】
前記スタンドに遠隔操作式点火手段が装備され、遠隔操作により前記瞬間燃焼性導火膜に前記導火炎を点火する請求項9に記載の導火膜付きキャンドルセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−87180(P2012−87180A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233063(P2010−233063)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(504325829)
【Fターム(参考)】