説明

導電体で地表下地層を処理するためのシステムおよび方法

地表下地層を処理するためのシステムおよび方法が本明細書において説明される。システムは、炭化水素含有地層内に少なくとも部分的に位置する坑井穴を含む。坑井穴は、実質的垂直部、および垂直部に結合された少なくとも2つの実質的水平配向または傾斜部を含む。第1の導体は、坑井穴の少なくとも2つの実質的水平配向または傾斜部のうちの第1のものの内に少なくとも部分的に位置し、導電性材料を含む。電源は、少なくとも第1の導体に結合され、地層の少なくとも一部を介して、第2の導体に第1の導体内の導電性材料間に電流が流れるように、第1の導体の導電性材料を電気的に励起させるように構成され、坑井穴の2つの実質的水平配向または傾斜部間で地層の少なくとも一部を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、炭化水素、水素、および/または他の生成物の生成のためのシステム、方法および熱源に関する。本発明は、特に、様々な地表下の炭化水素地層を処理するために熱源を使用するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下にある地層から得られる炭化水素は、エネルギー資源として、原材料として、消費財として数多く使用されている。入手可能な炭化水素資源の枯渇に対する懸念、および生成された炭化水素の全体特性を低下することに対する懸念は、入手可能な炭化水素資源のより効率的な回収、処理、および/または使用のためのプロセスの開発をもたらした。インサイチュプロセスが使用されて、地下にある地層から炭化水素材料を取り除くことが可能である。地下にある地層内の炭化水素材料の化学的性質、および/または物理的性質が変更されて、炭化水素材料が地下にある地層からより容易に取り除かれることを可能にする必要がある。化学的変化および物理的変化は、地層内の炭化水素材料の除去可能な流体、組成変化、可溶性変化、密度変化、相変化、および/または粘性変化を引き起こすインサイチュ反応を含んでいてもよい。流体は、ガス、液体、乳濁液、スラリー、および/または液体の流れに類似する流れ特性を有する固体粒子の流れであってもよいが、それらに限定されない。
【0003】
地表下地層(例えば、タールサンドまたは重い炭化水素地層)は、誘電体媒質を含む。誘電体媒質は、100℃より下の温度で伝導性、比誘電率および損失正接を示すことが可能である。地層が地層のロック基質における隙間スペースに含まれた水分の損失により100℃より高い温度に加熱されるとき、伝導性、比誘電率および散逸率の損失が生じる可能性がある。水分の損失を防ぐために、地層は、水の蒸発を最小化する温度および圧力で加熱されることが可能である。地層の電気的特性を維持することに役立つために、導電性溶液が地層に添加されることが可能である。
【0004】
地層は、水、および/または導電性溶液を蒸発する温度および圧力に電極を使用して加熱されることが可能である。しかしながら、電流フローを生成するために使用される材料は、熱応力により破損される可能性がある、および/または導電性溶液の損失は、層内の伝熱を限定する可能性がある。さらに、電極を使用する場合、磁界は生じる可能性がある。磁界の存在により、非強磁性体がオーバーバーデンケーシングに望ましい可能性がある。
【0005】
Toddの米国特許第4,084,637号明細書は、地下の地層を介して電流を通すことを含む、地下の地層から粘着性材料を生成する方法について記載している。電流が地下の地層を通るとき、粘着性材料が加熱され、それによって、そのような材料の粘性を低下させる。電極坑井によって形成された経路近くの地下の地層を加熱した後、駆動流体は、注入坑井を介して注入され、それによって、経路に沿って移動するとともに、粘度が低下された材料を生成坑井に押し進める。材料は、生成坑井を介して生成され、注入坑井を介して加熱された流体を注入し続けることによって、地下の地層内の粘着性材料は、実質的にすべて加熱されて、その粘性を低下することができるとともに、生成坑井から生成されることができる。
【0006】
Glandtらの米国特許第4,926,941号明細書は、タールサンド堆積物の全体厚さのごく一部である比較的薄い導電層を予備加熱することによって、厚いタールサンド堆積物を生成することを記載している。薄い導電層は、電極列間の大きな距離として考えても、導電層に隣接する薄いゾーンに対するタールサンド内での加熱を限定する役目をする。導電層に隣接する薄い予備加熱されたゾーンでのタールの粘性が、タールサンド堆積物への蒸気注入を可能とするのに十分に低減されるまで、予備加熱が継続される。全堆積物は、次いで、蒸気フラッディングによって生成される。
【0007】
Glandtの米国特許第5,046,559号明細書は、インジェクタとプロデューサとの間の増加された注入性の経路を電気的に予備加熱することによって、厚いタールサンド堆積物を生成する装置および方法について記載している。インジェクタおよびプロデューサは、インジェクタが三角形の頂点に位置し、プロデューサが三角形の底辺上に位置する三角形パターンで配置されている。増加された注入性のこれらの経路は、次いで炭化水素を生成するために蒸気フラッディングさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,084,637号明細書
【特許文献2】米国特許第4,926,941号明細書
【特許文献3】米国特許第5,046,559号明細書
【特許文献4】米国特許第4,643,256号明細書
【特許文献5】米国特許第5,193,618号明細書
【特許文献6】米国特許第5,046,560号明細書
【特許文献7】米国特許第5,358,045号明細書
【特許文献8】米国特許第6,439,308号明細書
【特許文献9】米国特許第7,055,602号明細書
【特許文献10】米国特許第7,137,447号明細書
【特許文献11】米国特許第7,229,950号明細書
【特許文献12】米国特許第7,262,153号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】米国化学会シンポジウムNo.373(1988年)のWellingtonらの「Surfactant−Induced Mobility Control for Carbon Dioxide Studied with Computerized Tomography」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述されるように、炭化水素含有地層から炭化水素、水素、および/または他の生成物を経済的に生成する方法およびシステムを開発するかなりの努力があった。しかしながら、現在、炭化水素、水素、および/または他の生成物が経済的に生成されることができない、さらに多くの炭化水素含有地層がある。したがって、炭化水素地層の加熱および炭化水素地層から流体の生成のための改良方法およびシステムの必要がある。地層を処理するためのエネルギーのコストを低減する、処理プロセスからの排出を低減する、加熱システム設置を容易化する、および/または地表ベース装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較してオーバーバーデンに対する熱損失を低減する、改善された方法およびシステムの必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書に記載された実施形態は、概して、地表下地層を処理するためのシステム、方法および熱源に関する。また、本明細書に記載された実施形態は、概して、新しい成分を有する導電性材料に関する。そのような熱源は、本明細書に記載されたシステムおよび方法を使用することによって得られることができる。
【0012】
ある実施形態では、本発明は、1つまたは複数のシステム、方法、および/または導電性材料を提供する。実施形態によっては、システム、方法、および/または導電性材料は、地表下地層を処理するために使用される。
【0013】
本発明は、いくつかの実施形態では、地表下地層を処理するためのシステムであって、炭化水素含有地層内に少なくとも部分的に位置し、実質的垂直部、および垂直部に結合された少なくとも2つの実質的水平配向または傾斜部を含む坑井穴と、坑井穴の2つの実質的水平配向または傾斜部のうちの第1のものの内に少なくとも部分的に位置する第1の導体であり、少なくとも第1の導体は、導電性材料を含む、第1の導体と、少なくとも第1の導体に結合された電源であり、少なくとも地層の一部を介して、第2の導体と第1の導体内の導電性材料間に電流が流れ、坑井穴の2つの実質的水平配向または傾斜部間で地層の少なくとも一部を加熱するように、第1の導体の導電性材料を電気的に励起させるように構成された電源とを含む、システムを提供する。
【0014】
本発明は、いくつかの実施形態では、地表下地層を処理する方法であって、電流が第1の導体から、地層の部分における第2の実質的に水平または傾斜位置内に位置する第2の導体に流れるように、地層の部分における第1の実質的に水平または傾斜位置内で第1の導体に電流をもたらし、第1の導体および第2の導体は、共通の坑井穴から延在する坑井穴部分内に位置することと、電流フローによって発生した熱で第1の導管と第2の導管との間の炭化水素層の少なくとも一部を加熱することとを含む、方法を提供する。
【0015】
さらなる実施形態では、ある実施形態からの特徴が、他の実施形態からの特徴と組み合わせられてもよい。例えば、1つの実施形態からの特徴が、他の実施形態のうちのいずれかからの特徴と組み合わせられてもよい。さらなる実施形態では、地表下地層を処理することは、本明細書に記載された方法、システムまたは導電性材料のいずれかを使用して行われる。さらなる実施形態では、さらなる特徴が、本明細書に記載されたある実施形態に加えられてもよい。
【0016】
本発明の利点は、次の詳細な説明を検討し、添付図面を参照して当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を示す。
【図2】導電性材料を有する熱源を使用して、地表下地層を処理するための実施形態の概略を表す。
【図3】導電性材料を有するグラウンドおよび熱源を使用して、地表下地層を処理するための実施形態の概略を表す。
【図4】導電性材料および電気絶縁体を有する熱源を使用して、地表下地層を処理するための実施形態の概略を表す。
【図5】共通の坑井穴から延在する導電性熱源を使用して、地表下地層を処理するための実施形態の概略を表す。
【図6】導電性材料を有する熱源を使用して、頁岩層を有する地表下地層を処理するための実施形態の概略を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、様々な変形および別の形態の影響を受けやすい一方、その具体的な実施形態は、図面において一例として示され、本明細書に詳細に説明される。図面は縮尺どおりではない。しかしながら、図面および詳細な説明は、本発明を開示された特定の形態に限定することを意図しないが、それどころか、その意図は、添付の請求項によって定義されるように、本発明の精神および範囲以内にある変形、均等および代替物をすべてカバーすることであることを理解するべきである。
【0019】
電極を使用して地層を加熱するために、多くの方法が記載されているが、導電性材料を備えた熱源を使用して、炭化水素を加熱、生成する効率的で経済的な方法が必要である。次の記載は、概して、導電性材料を備えた熱源を使用して、地層内の炭化水素を処理するためのシステムおよび方法に関する。そのような地層は、炭化水素生成物、水素および他の生成物を産出するように処理されることが可能である。
【0020】
「API重力」は、15.5℃(60°F)でのAPI重力を指す。API重力は、ASTM法D6822またはASTM法D1298によって決まる。
【0021】
「流体圧力」は、地層内の流体によって発生される圧力である。「地盤圧力」(「地盤応力」と称されることもある)は、覆っている岩盤の単位面積当たりの重量に等しい地層内の圧力である。「静水圧」は、水柱によって及ぼされる地層内の圧力である。
【0022】
「地層」は、1つまたは複数の炭化水素含有層、1つまたは複数の非炭化水素層、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデン(underbarden)を含む。「炭化水素層」は、炭化水素を含有する地層内の層を指す。炭化水素層は、非炭化水素材料および炭化水素材料を含んでいてもよい。「オーバーバーデン」、および/または「アンダーバーデン」は、1つまたは複数の異なる種類の不浸透性材料を含む。例えば、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、岩、頁岩、泥岩または湿性/堅固な炭酸塩を含んでいてもよい。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンは、比較的不浸透性であり、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンの炭化水素含有層の著しい特性変化をもたらすインサイチュ熱処理プロセスの間に温度にさらされない、1つの炭化水素含有層または複数の炭化水素含有層を含んでいてもよい。例えば、アンダーバーデンは、頁岩または泥岩を含んでいてもよいが、アンダーバーデンは、インサイチュ熱処理プロセスの間に熱分解温度に加熱されなくてもよい。ある場合には、オーバーバーデン、および/またはアンダーバーデンが多少浸透性であってもよい。
【0023】
「地層流体」は、地層内に存在する流体を指し、熱分解流体、合成ガス、易動化炭化水素および水(蒸気)を含んでいてもよい。地層流体は、非炭化水素流体のみならず炭化水素流体も含んでいてもよい。用語「易動化流体」は、地層の熱処理の結果、流れることができる炭化水素含有地層内の流体を指す。「生成された流体」は、地層から取り除かれる流体を指す。
【0024】
「熱源」は、伝導熱伝導、および/または放射熱伝導によって、地層の少なくとも一部に熱を実質的に供給するための任意のシステムである。例えば、熱源は、導電材料であってもよく、および/または絶縁導電体、細長い部材、および/または導管内に配置される導体などの電気加熱器を含む。熱源は、また、地層外、または地層内で燃料を燃焼することによって熱を発生するシステムを含んでいてもよい。システムは、地表バーナー、ダウンホールガスバーナー、無炎分配型燃焼器、および自然分配型燃焼器であってもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の熱源にもたらされる、または1つまたは複数の熱源で発生される熱は、他のエネルギー源によって供給されてもよい。他のエネルギー源は、地層を直接加熱してもよく、または、エネルギーは、地層を直接または間接的に加熱する移動媒体に適用されてもよい。当然のことながら、地層に熱を加えている1つまたは複数の熱源は、異なるエネルギー源を使用してもよい。したがって、例えば、所定の地層に関して、熱源によっては、導電材料、電気抵抗加熱器から熱を供給してもよく、熱源によっては、燃焼から熱をもたらしてもよく、熱源によっては、1つまたは複数の他のエネルギー源(例えば、化学反応、太陽エネルギー、風力エネルギー、バイオマス、または他の再生可能エネルギー源)から熱をもたらしてもよい。化学反応は、発熱反応(例えば、酸化反応)を含んでいてもよい。熱源は、また、導電材料、および/または加熱器の坑井などの、加熱位置に隣接、および/または囲むゾーンに熱をもたらす加熱器を含んでいてもよい。
【0025】
「加熱器」は、坑井内または坑井穴領域近くで熱を発生するための任意のシステムまたは熱源である。加熱器は、電気加熱器、バーナー、地層内の材料もしくは地層から生成される材料と反応する燃焼器、および/またはそれらの組み合わせであってもよいが、それらに限定されない。
【0026】
「重炭化水素」は、粘性炭化水素流体である。重炭化水素は、重油、タール、および/またはアスファルトなどの高粘性炭化水素流体を含んでいてもよい。重炭化水素は、炭素および水素のほかに、より低濃度の硫黄、酸素および窒素を含んでいてもよい。さらなる元素も、重炭化水素中に微量存在していてもよい。重炭化水素は、API重力によって分類されてもよい。重炭化水素は、一般的に、約20°未満のAPI重力を有する。重油は、例えば、一般的に、約10から20°のAPI重力を有し、一方、タールは、一般的に、約10°未満のAPI重力を有する。重炭化水素の粘性は、一般的に、15℃で約100センチポアズより大きい。重炭化水素は、芳香族化合物または他の複合環状炭化水素を含んでいてもよい。
【0027】
重炭化水素は、比較的浸透性の地層で見られてもよい。比較的浸透性の地層は、例えば、砂または炭酸塩に取り込まれた重炭化水素を含んでいてもよい。「比較的浸透性」は、地層またはその一部に対して10ミリダルシー以上(例えば、10または100ミリダルシー)の平均浸透性として定義される。「比較的低い浸透性」は、地層またはその一部に対して約10ミリダルシー未満の平均浸透性として定義される。1ダルシーは、約0.99平方マイクロメートルに等しい。不浸透性層は、一般的に、約0.1未満のミリダルシーの浸透性を有する。
【0028】
重炭化水素を含むある種の地層は、また、天然鉱ろうまたは天然アスファルタイトを含むが、それらに限定されない。「天然鉱ろう」は、幅が数メーター、長さが数キロメーター、深さが数百メーターであってもよい実質的に管状の鉱脈に典型的には生じる。「天然アスファルタイト」は、芳香族化合物組成物の固体炭化水素を含んでおり、典型的には大鉱脈に生じる。天然鉱ろうおよび天然アスファルタイトなどの地層からの炭化水素のインサイチュ回収は、液体炭化水素を形成するための溶融、および/または地層からの炭化水素のソリューションマイニングを含んでいてもよい。
【0029】
「炭化水素」は、炭素原子および水素原子によって主として形成された分子として一般的に定義される。炭化水素は、また、ハロゲン、金属元素、窒素、酸素、および/または硫黄などの他の元素を含んでいてもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、ケロゲン、ビチューメン、ピロビチューメン、油、天然鉱ろうおよびアスファルタイトであってもよいが、それらに限定されない。炭化水素は、地球の鉱物基質内または、それに隣接して位置することができる。基質は、堆積岩、砂、シリシライト、炭酸塩、珪藻岩、および他の多孔質媒体含んでいてもよいが、それらに限定されない。「炭化水素流体」は、炭化水素を含む流体である。炭化水素流体は、水素、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、硫化水素、水およびアンモニアなどの非炭化水素流体を含んでも、取り込んでいてもよく、非炭化水素流体に取り込まれていてもよい。
【0030】
「インサイチュ転化プロセス」は、熱源から炭化水素含有地層を加熱して、熱分解流体が地層内で生成さるように熱分解温度より高い温度で地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0031】
「インサイチュ熱処理プロセス」は、易動化流体、粘性低下流体、および/または熱分解流体が、地層内に生成されるように、熱源で炭化水素含有地層を加熱して、易動化流体、粘性低下、および/または炭化水素含有材料の熱分解をもたらす温度より高い温度に地層の少なくとも一部の温度を上げるプロセスを指す。
【0032】
「絶縁導電体」は、電気を通すことができ、電気絶縁材料によって全体または一部において被覆される任意の細長い材料を指す。
【0033】
「熱分解」は、熱の適用による化学結合の破壊である。例えば、熱分解は、熱だけによって化合物を1つまたは複数の他の物質に変えることを含んでいてもよい。熱は、地層の部分に移動されて、熱分解を引き起こすことが可能である。
【0034】
「熱分解流体」または「熱分解生成物」は、炭化水素の熱分解の間に実質的に生成される流体を指す。熱分解反応によって生成される流体は、地層内で他の流体と混ざってもよい。混合物は、熱分解流体または熱分解生成物と考えられる。本明細書で説明されるように、「熱分解ゾーン」は、熱分解流体を形成するために反応されるまたは反応する地層(例えば、タール砂地層などの比較的浸透性地層)の体積を指す。
【0035】
「熱の重ね合わせ」は、熱源間の少なくとも1つの位置での地層の温度が、熱源により影響されるように、地層の選択された部分に2つ以上の熱源から熱をもたらすことを指す。
【0036】
「タールサンド地層」は、炭化水素が、鉱物粒子枠組みまたは他の宿主岩盤(例えば、砂または炭酸塩)に取り込まれた重炭化水素、および/またはタールの形態で主に存在する地層である。タールサンド地層としては、アサバスカ地層、グロスモント地層、およびピースリバー地層(3つすべては、Alberta、Canada)、ファハ地層(Orinoco belt、Venezuela)などの地層が挙げられる。
【0037】
層の「厚さ」は、層の断面の厚さを指し、断面は、層の面に垂直である。
【0038】
「U字形状の坑井穴」は、地層内の第1の開口部から、地層の少なくとも一部を介し、地層内の第2の開口部を介して延在する坑井穴を指す。この文脈では、坑井穴は、坑井穴が「u」形状であるとみなされるために、「u」の「脚部」が互いに平行である必要はなく、または「u」の「底部」に対して垂直である必要はないという条件で、単に概略的に「v」または「u」形状であってもよい。
【0039】
「粘性低下」は、熱処理の間に流体内の分子のもつれを解くこと、および/または熱処理の間の大きな分子のより小さな分子への破壊を指し、流体の粘性を低減する。
【0040】
用語「坑井穴」は、掘削または地層への導管の挿入によって作製された地層における穴を指す。坑井穴は、実質的に円形断面または他の断面形状を有していてもよい。本明細書で使用されるように、用語「坑井」および「開口部」は、地層内の開口部を参照する場合、用語「坑井穴」で交換可能に使用されてもよい。
【0041】
地層は、様々な方法で処理されて様々な生成物を生成することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの間に地層を処理するために、異なる段階またはプロセスが使用されてもよい。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分は、ソリューションマイニングされて、その部分から可溶性鉱物を取り除く。ソリューションマイニング鉱物は、インサイチュ熱処理プロセスの前、間、および/または後に行われてもよい。実施形態によっては、ソリューションマイニングされる1つまたは複数の部分の平均温度は、約120℃より低く維持されてもよい。
【0042】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、部分から水を取り除く、および/または部分からメタンおよび他の揮発性炭化水素を取り除く。実施形態によっては、平均温度は、水および揮発性炭化水素の除去の間に、周囲の温度から約220℃より低い温度に上げられてもよい。
【0043】
実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分が加熱されて、地層内で炭化水素の移動、および/または粘性低下を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、その部分における炭化水素の易動化温度に上げられる(例えば、100℃から250℃、120℃から240℃、または150℃から230℃の範囲の温度に)。
【0044】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分が、地層内での熱分解反応を可能にする温度に加熱される。実施形態によっては、地層の1つまたは複数の部分の平均温度は、部分における炭化水素の熱分解温度に上げられてもよい(例えば、230℃から900℃、240℃から400℃、または250℃から350℃の範囲の温度)。
【0045】
複数の熱源で炭化水素含有地層を加熱することは、地層内の炭化水素の温度を所望の加熱速度で所望の温度に上げる熱源のまわりの温度勾配を確立することが可能である。所望の生成物のための易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間の温度増加率は、炭化水素含有地層から生成される地層流体の質および量に影響することが可能である。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、地層から高品質、高API重力の炭化水素の生成を可能にしてもよい。易動化温度範囲、および/または熱分解温度範囲の間に地層の温度をゆっくり上げることは、炭化水素生成物として地層内に存在する大量の炭化水素の除去を可能にしてもよい。
【0046】
いくらかのインサイチュ熱処理の実施形態では、地層の一部は、温度範囲の間に温度をゆっくり加熱する代わりに所望の温度に加熱される。実施形態によっては、所望の温度は、300℃、325℃または350℃である。所望の温度として他の温度が選択されてもよい。
【0047】
熱源からの熱の重ね合わせは、所望の温度が、地層において比較的速く効率的に確立されることを可能にする。熱源から地層へのエネルギー入力が調節されて、所望の温度で地層内で温度を実質的に維持することが可能である。
【0048】
易動化、および/または熱分解生成物が、生成坑井を介して地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度が易動化温度に上げられ、炭化水素が生成坑井から生成される。1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化による生成が選択された値より下に低下した後、熱分解温度に上げられてもよい。実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、熱分解温度に達する前にほとんど生成せずに熱分解温度に上げられてもよい。熱分解生成物を含む地層流体は、生成坑井を介して生成されてもよい。
【0049】
実施形態によっては、1つまたは複数の部分の平均温度は、易動化、および/または熱分解後に、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に上げられてもよい。実施形態によっては、炭化水素は、合成ガスの生成を可能にするのに十分な温度に達する前にほとんど生成せずに合成ガスの生成を可能とするのに十分な温度に上げられてもよい。例えば、合成ガスは、約400℃から約1200℃、約500℃から約1100℃、または約550℃から約1000℃の温度範囲で生成されてもよい。合成ガス発生流体(例えば、蒸気、および/または水)が、合成ガスを発生するために部分へ導入されてもよい。合成ガスは、生成坑井から生成されてもよい。
【0050】
ソリューションマイニング、揮発性炭化水素および水の除去、炭化水素の易動化、炭化水素の熱分解、合成ガスの発生、および/または他のプロセスが、インサイチュ熱処理プロセスの間に行われてもよい。実施形態によっては、いくつかのプロセスが、インサイチュ熱処理プロセス後に行われてもよい。そのようなプロセスとしては、処理された部分から熱を回収すること、予め処理された部分に流体(例えば、水、および/または炭化水素)を保存すること、および/または予め処理された部分に二酸化炭素を隔離することが挙げられるが、それらに限定されない。
【0051】
図1は、炭化水素含有地層を処理するためのインサイチュ熱処理システムの一部の実施形態の概略図を表す。インサイチュ熱処理システムは、障壁坑井100を含んでいてもよい。障壁坑井は、処理領域のまわりに障壁を形成するために使用される。障壁は、処理領域への、および/または処理領域からの流体の流れを抑制する。障壁坑井としては、脱水坑井、真空坑井、捕獲坑井、注入坑井、グラウト坑井、凍結坑井、またはそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。実施形態によっては、障壁坑井100は、脱水坑井である。脱水坑井は、液体の水を取り除く、および/または液体の水が加熱される対象の地層、もしくは加熱されている地層の一部に入ることを抑制し得る。図1で表された実施形態では、障壁坑井100は、熱源102の一方の側に沿ってのみ延在して示されているが、障壁坑井は、典型的には、地層の処理領域を加熱するために使用された、または使用されるすべての熱源102を取り囲む。
【0052】
熱源102は、地層の少なくとも一部内に置かれる。熱源102は、導電材料を含んでいてもよい。実施形態によっては、熱源としては、絶縁導電体、導体イン導管加熱器、地表バーナー、無炎分配型燃焼器、および/または自然分配型燃焼器などの加熱器が挙げられる。熱源102は、また、他の種類の加熱器を含んでいてもよい。熱源102は、地層の少なくとも一部に熱をもたらして、地層内で炭化水素を加熱する。供給ライン104を介して熱源102にエネルギーが供給されてもよい。供給ライン104は、地層を加熱するために使用される熱源(複数可)の種類に応じて構造上異なっていてもよい。熱源用の供給ライン104は、導電材料または電気加熱器用に送電してもよく、燃焼器用の燃料を移動してもよく、または地層内で循環される熱交換流体を移動してもよい。実施形態によっては、インサイチュ熱処理プロセス用電気が、原子力発電所(複数可)によってもたらされてもよい。原子力の使用は、インサイチュ熱処理プロセスからの二酸化炭素排出の低減または除去を可能としてもよい。
【0053】
地層を加熱することは、地層の浸透性、および/または気孔率の増大を引き起こしてもよい。浸透性、および/または気孔率の増大は、水の蒸発および除去、炭化水素の除去、および/または破砕の作成により、地層の質量の低減に起因することが可能である。流体は、地層の浸透性、および/または気孔率が増大されるために、地層の加熱された部分においてより容易に流れることが可能である。地層の加熱された部分内の流体は、浸透性、および/または気孔率が増加されるために、地層を介して相当な距離を移動することが可能である。相当な距離は、地層の浸透性、流体の特性、地層の温度、および流体の移動を可能とする圧力勾配などの様々な要因に応じて1000mを超えることが可能である。流体が地層内で相当な距離を移動する能力は、生成坑井106が地層内で比較的遠く離れて間隔を置いて配置されることを可能にする。
【0054】
生成坑井106は、地層から地層流体を取り除くために使用される。実施形態によっては、生成坑井106は熱源を含む。生成坑井での熱源は、生成坑井で、または生成坑井の近くで地層の1つまたは複数の部分を加熱することが可能である。インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、生成坑井のメーター当たりの生成坑井からの地層に供給される熱量は、熱源のメーター当たりの地層を加熱する熱源から地層に加えられた熱量未満である。生成坑井から地層に加えられた熱は、生成坑井に隣接する液相流体を蒸発、除去することによって、および/または、マクロ破砕、および/またはミクロ破砕の地層によって生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることによって、生成坑井に隣接する地層の浸透性を増大させることが可能である。
【0055】
実施形態によっては、生成坑井106内の熱源は、地層から地層流体の気相除去を可能にする。生成坑井で、または生成坑井を介して加熱をもたらすことは、以下を可能にする:(1)そのような生成された流体がオーバーバーデンに隣接した生成坑井内で移動している場合、生成された流体の凝縮、および/または還流を抑制する、(2)地層への熱入力を増大する、(3)熱源のない生成坑井に比較して生成坑井からの生成速度を増大する、(4)生成坑井での高炭素数化合物(C以上の炭化水素)の凝縮を抑制する、および/または(5)生成坑井で、または生成坑井に隣接した地層の浸透性を増大する。
【0056】
地層内の地表下の圧力は、地層内で発生された流体圧力に相当してもよい。地層の加熱された部分の温度が上昇するにつれて、加熱された部分の圧力は、インサイチュ流体の熱膨張、流体の発生の増大、および水の蒸発の結果、増大する可能性がある。地層からの流体除去の速度の制御は、地層内の圧力の制御を可能にする。地層内の圧力は、生成坑井に近接してまたは生成坑井で、熱源に近接してまたは熱源で、または観察坑井で、などの複数の異なる位置で決定されることが可能である。
【0057】
炭化水素含有地層によっては、地層内の少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで、地層からの炭化水素の生成は抑制される。地層流体が選択された品質を有する場合、地層流体が地層から生成されることが可能である。実施形態によっては、選択された品質としては、少なくとも約20°、30°または40°のAPI重力が挙げられる。少なくともいくつかの炭化水素が易動化され、および/または熱分解されるまで生成を抑制することは、重炭化水素の軽質炭化水素への変換を増大させることが可能である。初期の生成の抑制は、地層から重炭化水素の生成を最小限にすることが可能である。相当量の重炭化水素の生成は、高価な装置を必要とし、および/または生成装置の寿命を短くする可能性がある。
【0058】
実施形態によっては、生成坑井106に対する開放通路または任意の他の圧力シンクが地層内に存在しなくてもよいが、地層内で発生された易動化流体、熱分解流体または他の流体の膨張によって発生された圧力は、増大することが可能であってもよい。流体圧力は、地盤圧力に対して増大することが可能であってもよい。流体が地盤圧力に達すると、炭化水素含有地層の破砕が生じることがある。例えば、破砕は、地層の加熱された部分において、熱源102から生成坑井106まで生じることがある。加熱された部分における破砕の発生は、一部内の圧力の一部を逃がすことが可能である。地層内の圧力は、選択された圧力より低く維持されて、不要な生成、オーバーバーデンもしくはアンダーバーデンの破砕、および/または地層内の炭化水素のコーキングを抑制しなければならない。
【0059】
易動化温度、および/または熱分解温度が到達され、地層からの生成が可能とされた後、地層内の圧力が変えられて、生成された地層流体の組成を変更、および/または制御して、地層流体内の非凝縮性流体に対して凝縮性流体の割合を制御する、および/または生成される地層流体のAPI重力を制御することが可能である。例えば、圧力を低下させることは、より大きな凝縮性流体成分の生成をもたらすことが可能である。凝縮性流体成分は、より大きな割合のオレフィンを含むことが可能である。
【0060】
インサイチュ熱処理プロセスの実施形態によっては、地層内の圧力は、20°より大きいAPI重力を備えた地層流体の生成を促進するのに十分高く維持されることが可能である。地層内の増加された圧力を維持することは、インサイチュ熱処理の間に地層の沈下を抑制することが可能である。増加された圧力を維持することは、地層流体を地表で圧縮する必要を低減または除去して、回収導管内の流体を処理施設に移動することが可能である。
【0061】
地層の加熱された部分内の増加された圧力を維持することは、驚くことに、品質が向上され、比較的低分子量の炭化水素を大量に生成することを可能にしてもよい。生成された地層流体が選択された炭素数を越える最小量の化合物を有するように、圧力は維持されてもよい。選択された炭素数は、最大で25、最大で20、最大で12、または最大で8であってもよい。いくつかの高炭素数化合物が地層内で蒸気で取り込まれていてもよく、蒸気で地層から取り除かれてもよい。地層内で増加した圧力を維持することは、高炭素数の化合物、および/または蒸気で多重環炭化水素化合物の取り込みを抑制することが可能である。高炭素数化合物、および/または多重環炭化水素化合物は、かなりの期間、地層内で液体相で残存していてもよい。かなりの期間は、化合物が熱分解するのに十分な時間をもたらして、低炭素数化合物を形成することが可能である。
【0062】
生成坑井106から生成された地層流体は、処理施設110に収集管108を介して移動されることが可能である。地層流体は、また、熱源102から生成されることが可能である。例えば、流体は、熱源102から生成されて、熱源に隣接する地層内の圧力を制御することが可能である。熱源102から生成された流体は、収集管108にチュービングもしくは配管を介して移動されることが可能であり、または、生成された流体は、処理施設110に直接、チュービングもしくは配管を介して移動されることが可能である。処理施設110は、分離ユニット、反応ユニット、品質向上ユニット、燃料電池、タービン、貯蔵容器、および/または生成された地層流体を処理するための他のシステムおよびユニットを含んでいてもよい。処理施設は、地層から生成された炭化水素の少なくとも一部から輸送燃料を生じることが可能である。実施形態によっては、輸送燃料は、JP−8などのジェット燃料であってもよい。
【0063】
ある実施形態では、熱源、熱源の電源、生成装置、供給ライン、および/または熱源または生産支援装置がトンネル内に位置し、より小さな熱源、および/またはより小さな装置が、地層を処理するために使用されることを可能にする。トンネル内にそのような装置、および/または構造を位置することは、地層を処理するためのエネルギーのコストを低減し、処理プロセスからの排出を低減し、加熱システム設置を容易化する、および/または地表ベース装置を利用する炭化水素回収プロセスと比較して、オーバーバーデンに対する熱損失を低減することが可能である。
【0064】
導電性材料を備えた熱源は、ある熱源から他の熱源に地層を介しての電流フローを可能とすることができる。導電性材料を備えた熱源間の電流フローは、地層を加熱して地層内の浸透性を増大する、および/または地層内の炭化水素の粘性を低減することが可能である。電流フローを使用する加熱または地層を介しての「ジュール加熱」は、地層内に間隔を置かれた加熱器間で伝導加熱を使用して、炭化水素層を加熱することよりも短時間で炭化水素層の一部を加熱することが可能である。
【0065】
実施形態によっては、導電性材料を含む熱源は、炭化水素層内に位置する。炭化水素層の一部は、熱源から発生され、熱源から層を介して流れる電流から加熱されることが可能である。導電性溶液の損失を最小化するのに十分な深さでの炭化水素層内での導電性熱源の位置決めは、水、および/または導電性溶液の最小の損失で、ある期間にわたって比較的高温で炭化水素層が加熱されることを可能にする。
【0066】
図2から図6は、導電性材料を有する熱源を使用して、地表下地層を処理するための実施形態の概略図を表す。図2は、炭化水素層206内で坑井穴204、204’内に位置する第1の導管200および第2の導管202を表す。ある実施形態では、第1の導管200、および/または第2の導管202は、導体(例えば、露出金属または地金導体)である。実施形態によっては、導管200、202は、地層内で実質的に水平に、または傾斜して配向される。導管200、202は、炭化水素層206の底部で、またはその底部の近くに位置することが可能である。
【0067】
坑井穴204、204’は、開いた坑井穴とすることが可能である。実施形態によっては、導管は、坑井穴の一部から延在する。実施形態によっては、坑井穴204、204’の垂直部分またはオーバーバーデン部分は、非導電性セメントまたは発泡セメントで固定化される。坑井穴204、204’は、挿入器208、および/または電気絶縁体210を含むことができる。実施形態によっては、挿入器208は必要ではない。電気絶縁体210は、ケーシング212から導管200、202を絶縁することが可能である。
【0068】
実施形態によっては、オーバーバーデン214に隣接するケーシング212の一部は、強磁性効果を抑制する材料からなる。オーバーバーデン内のケーシングは、繊維ガラス、ポリマー、および/または非強磁性金属(例えば、高マンガン鋼)からなっていてもよい。オーバーバーデン214に隣接するケーシング212の一部内で強磁性効果を抑制することは、オーバーバーデンへの熱損失、および/またはオーバーバーデン内での電気損失を低減することが可能である。実施形態によっては、オーバーバーデンケーシング212は、繊維ガラス、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC)、高密度ポリエチレン(HDPE)などの非金属材料、および/または非強磁性金属(例えば、非強磁性高マンガン鋼)を含む。オーバーバーデン214内で使用される範囲内の運転温度のHDPEとしては、Dow Chemical Co.,Inc(Midland、Michigan、USA)から入手可能なHDPEが挙げられる。実施形態によっては、ケーシング212は、非強磁性金属の内径、および/または外径に結合された炭素鋼(例えば、銅またはアルミニウムを含む炭素鋼クラッド)を含み、炭素鋼での強磁性効果または誘起効果を抑制する。他の非強磁性金属としては、少なくとも15重量%のマンガン、0.7重量%の炭素、2重量%のクロムを含むマンガン鋼、少なくとも18重量%の鉄アルミニウムを含むアルミニウム合金、および304ステンレス鋼や316ステンレス鋼などのオーステナイト系ステンレス鋼が挙げられるが、それらに限定されない。
【0069】
導管200、202の一部またはすべては、導電性材料216を含んでいてもよい。導電性材料としては、肉厚の銅、熱処理された銅(「硬化された銅」)、銅を含む炭素鋼クラッド、アルミニウム、またはステンレス鋼を含むアルミニウムもしくは銅クラッドが挙げられるが、それらに限定されない。導管200、202は、導管が、注入坑井、および/または生成坑井として後に使用されることを可能にする寸法および特性を有していてもよい。導管200、および/または導管202は、孔または開口部218を含み、流体が導管内に流れ込む、または導管から流れ出すことを可能にする。実施形態によっては、導管200、および/または導管202の一部は、被膜が孔の上に最初に置かれた状態であらかじめ穿孔され、後に除去される。実施形態によっては、導管200、および/または導管202は、スロッテッドライナを含む。
【0070】
所望の時間後(例えば、注入性が層内に確立された後)、孔の被膜は取り除かれてもよく、または、スロットは、導管200、および/または導管202の一部を開いて導管を生成坑井、および/または注入坑井に変換するために開かれることが可能である。実施形態によっては、被膜は、導管内に膨張性マンドレルを挿入することによって取り除かれ、被膜を取り除く、および/またはスロットを開く。実施形態によっては、熱は、導管200、および/または導管202の開口部内に置かれた材料を分解するために使用される。分解後、流体は、導管200、および/または導管202内に流れ込むことが可能であり、または導管から流れ出すことが可能である。
【0071】
導電性材料216への電力は、導体220、220’を介して、1つまたは複数の地表電源から供給されることが可能である。導体220、220’は、管または他の支持部材上に支持されたケーブルとすることができる。実施形態によっては、導体220、220’は、電気が導管200または導管202に流れる導管である。電気コネクタ222は、導管200、202に導体220、220’を電気的に結合するために使用されることが可能である。導体220および導体220’は、電気回路を形成するために同じ電源に結合されることが可能である。ケーシング212の部分(例えば、挿入器208と電気コネクタ222との間の部分)は、地層の表面への電流の漏出を防ぐために、絶縁材料(エナメル被覆など)を含んでいてもよい、または絶縁材料からなっていてもよい。
【0072】
実施形態によっては、直流電源は、第1の導管200または第2の導管202に供給される。実施形態によっては、時間的に変化する電流は、第1の導管200、および/または第2の導管202に供給される。導体220、220’から導管200、202に流れる電流は、低周波電流(例えば、約50Hz、約60Hzまたは約1000Hzまでの周波数)であってもよい。第1の導管200と第2の導管202との電圧差は、約100ボルトから約1200ボルト、約200ボルトから約1000ボルト、または約500ボルトから700ボルトの範囲であってもよい。実施形態によっては、より高い周波電流、および/またはより高い電圧差が利用されることが可能である。時間的に変化する電流の使用は、より長い導管が地層内に位置することを可能にする。より長い導管の使用は、より多くの地層が一度に加熱されることを可能にし、全体の操業費用を減少することが可能である。第1の導管200に流れる電流は、炭化水素層206を介して第2の導管202に流れることが可能であり、電源に戻ることが可能である。炭化水素層206を介した電流フローは、炭化水素層の抵抗加熱を引き起こすことが可能である。
【0073】
加熱プロセスの間に、導管200、202の電流フローは、地表で測定されることが可能である。導管200、202に入る電流の測定は、加熱プロセスの進行を観察するために使用されることが可能である。所定の上限(Imax)が達せられるまで、導管200、202間の電流は確実に増大することが可能である。実施形態によっては、水の蒸発は、導管で生じ、その時、電流の低下が観察される。システムの電流フローは矢印224によって示される。導管200、202間での炭化水素含有層206内の電流フローは、導管間および導管のまわりの炭化水素層を加熱する。導管200、202は、層206の大部分が加熱されるように、坑井間に多重経路をもたらす地層内の導管のパターンの一部とすることが可能である。パターンは、規則正しいパターン(例えば、三角形または長方形パターン)、または不規則パターンであってもよい。
【0074】
図3は、導電性材料を使用して、地表下地層を処理するためのシステムの実施形態の概略を表す。導管226およびグラウンド228は、炭化水素層206内に坑井穴204、204’から延在することが可能である。グラウンド228は、導管226から約5mから約30m(例えば、約10m、約15m、または約20m)離れて炭化水素層206内に位置するロッドまたは導管であってもよい。実施形態によっては、電気絶縁体210’は、坑井穴204’内に位置するケーシング212’、および/または導管部分230からグラウンド228を絶縁する。示されるように、グラウンド228は、開口部218を含む導管である。
【0075】
導管226は、導電性材料216の部分232、234を含んでいてもよい。部分232、234は、絶縁材料236によって分離されることが可能である。絶縁材料236は、ポリマー、および/または1つもしくは複数のセラミック絶縁体を含んでいてもよい。部分232は、導体220によって電源に電気的に結合されることが可能である。部分234は、導体220’によって電源に電気的に結合されていてもよい。電気絶縁体210は、導体220’から導体220を分離してもよい。絶縁材料236は、絶縁材料236を流れる部分232から部分234への電流を抑制するのに十分な寸法および絶縁特性を有することが可能である。例えば、絶縁材料236の長さは、約30メーター、約35メーター、約40メーター、またはそれ以上であってもよい。導電性部分232、234を有する導管の使用は、地層内に少数の坑井穴が掘削されることを可能にする。導電性部分(「セグメント化された熱源」)を有する導管は、より長い導管の長さを可能とすることが可能である。実施形態によっては、セグメント化された熱源は、駆動プロセス(例えば、蒸気補助重力排水、および/または周期的蒸気駆動プロセス)に使用される注入坑井が、さらに間隔を置いて配置されることを可能にし、したがって、全体のより高い回収効率を達成する。
【0076】
導体220を介してもたらされる電流は、部分232の反対側のグラウンド228の部分に、炭化水素層206を介して導電性部分232に流れることが可能である。電流は、部分234の反対側のグラウンドの部分にグラウンド228に沿って流れることが可能である。電流は、部分234に炭化水素層206を介して流れ、電力回路に導体220’を介して流れて、電気回路を完成することが可能である。電気コネクタ238は、導体220’に部分234を電気的に結合することが可能である。電流フローは、矢印224によって示される。炭化水素層206を介しての電流フローは、炭化水素層を加熱して、層内で流体注入性を生成する、層内で炭化水素を易動化する、および/または、層内で炭化水素を熱分解することが可能である。セグメント化された熱源を使用する場合、炭化水素層の初期加熱に必要な電流量は、2つのセグメント化されていない熱源または2つの電極を使用する加熱に必要な電流の少なくとも50%とすることが可能である。炭化水素は、生成坑井を使用して、炭化水素層206、および/または地層の他の部分から生成されることが可能である。実施形態によっては、導管226の1つまたは複数の部分は、頁岩層内に位置し、グラウンド228は、炭化水素層206内に位置する。反対方向への導体220、220’を介しての電流フローは、電流フローによる磁界の少なくとも一部の相殺を可能にする。磁界の少なくとも一部の相殺は、導管226のオーバーバーデン部分および坑井穴204の坑口における誘導作用を抑制することが可能である。
【0077】
図4は、第1の導管226および第2の導管226’が炭化水素層206を加熱するために使用される実施形態を表す。絶縁材料236は、第1の導管226の部分232、234を分離することが可能である。絶縁材料236’は、第2の導管226’の部分232’、234’を絶縁することが可能である。
【0078】
電流は、電源から第1の導管226の導体220を介して部分232に流れることが可能である。電流は、炭化水素含有層206を介して第2の導管226’の部分234’に流れることが可能である。電流は、第2の導管226’の導体220’を介して電源に戻ることが可能である。同様に、電流は、第2の導管226’の導体220を介して部分232’に、炭化水素層206を介して第1の導管226の部分234に流れることが可能であり、電流は、第1の導管226の導体220’を介して電源に戻ることが可能である。電流フローは、矢印224によって示される。導管226、226’の導電性部分からの電流フローの生成は、導管間の炭化水素層206の一部を加熱し、層内に流体注入性を生成し、層内で炭化水素を易動化し、および/または層内で炭化水素を熱分解する。実施形態によっては、導管226、226’の1つまたは複数の部分が頁岩層内に位置する。
【0079】
坑井穴を介して反対の電流フローを生成することによって、図3および図4を参照して説明されるように、オーバーバーデンにおける磁界は相殺することが可能である。オーバーバーデンにおける磁界の相殺は、強磁性体が、オーバーバーデンケーシング212で使用されることを可能にする。坑井穴内で強磁性ケーシングを使用することは、それほど高価でない、および/または非強磁性ケーシング(繊維ガラスケーシングなど)より簡単に取り付けることが可能である。
【0080】
実施形態によっては、2つ以上の導管が、共通の坑井穴から分岐していてもよい。図5は、1つの共通の坑井穴から延在する2つの導管の実施形態の概略を表す。1つの共通の坑井穴から導管を延在すると、地層内に少数の坑井穴を形成することによってコストを低減することが可能である。共通の坑井穴を使用すると、坑井穴がさらに間隔を置いて配置され、地層を介しての各導管につき2つの異なる坑井穴の掘削と同じ加熱効率および同じ加熱回数を引き起こすことを可能にする。導管200、202のオーバーバーデンの部分におけるほぼ等しい反対の電流フローにより磁界は相殺するので、共通の坑井穴を使用すると、強磁性体がオーバーバーデンケーシング212で使用されることを可能にする。1つの共通の坑井穴から導管を延在すると、より長い導管が使用されることを可能にする。
【0081】
導管200、202は、坑井穴204の共通の垂直部240から延在することが可能である。導管202は、垂直部240の開口部(例えば、粉砕窓)を介して取り付けられることが可能である。導管200、202は、実質的に水平に、または垂直部240から傾斜して延在していてもよい。導管200、202は、導電性材料216を含んでいてもよい。実施形態によっては、図3および図4に導管226について記載されるように、導管200、202は、導電性部分および絶縁材料を含む。導管200、および/または導管202は、開口部218を含んでいてもよい。電流は、導体220を介して電源から導管200に流れることが可能である。電流は、導管202に炭化水素含有層206を介して通ることが可能である。電流は、導管202から導体220’を介して電源に戻って回路を完成することが可能である。導管200、202から炭化水素層206を介して矢印224によって示されるような電流フローは、導管間の炭化水素層を加熱する。
【0082】
実施形態によっては、地表下地層は、図2、図3、図4、および/または図5に表された実施形態に記載された加熱システムを使用して加熱されて、炭化水素層206内の流体を易動化温度、粘性低下温度、および/または熱分解温度に加熱する。そのような加熱された流体は、炭化水素層、および/または地層の他の部分から生成されることが可能である。炭化水素層206が加熱されるにつれて、炭化水素層の加熱部分の伝導性は増大する。例えば、地層の温度が20℃から100℃まで上昇する場合、地表に近接する炭化水素層の伝導性は3倍ほど増大することが可能である。より深い層に関して、水蒸発温度が、増大された流体圧力により、より高い場合、伝導性の増大はより大きくなることが可能である。伝導性のより大きな増大は、地層の加熱速度を増大させることが可能である。したがって、地層において伝導性が増大する場合、加熱の増大は、より深い層においてより集中されることが可能である。
【0083】
加熱の結果、炭化水素層内の重い炭化水素の粘性は低減される。粘性の低減は、層内でのより大きな注入性を引き起こす、および/または層内の炭化水素を易動化することが可能である。図2、図3、図4、および/または図5に表された実施形態に記載された加熱装置を使用して炭化水素層を急速に加熱することができる結果、炭化水素層内の十分な流体注入性が、より速く、例えば、約2年で達成されることが可能である。実施形態によっては、これらの加熱装置は、駆動プロセス、および/または易動化プロセスのため熱源と生成坑井との間に排水経路を生じるために使用される。実施形態によっては、これらの加熱装置は、駆動プロセスの間に熱をもたらすために使用される。加熱装置によってもたらされる熱量は、駆動プロセスからの入熱(例えば、蒸気注入からの入熱)と比較して小さくすることが可能である。
【0084】
一旦十分な流体注入性が確立されたなら、駆動流体、与圧流体、および/または溶媒和流体が、炭化水素層206の加熱部分に注入されることが可能である。いくつかの実施形態(例えば、図2および図5に表された実施形態)では、導管202は穿孔され、流体は、導管を介して注入されて、易動化する、および/または炭化水素層206をさらに加熱する。流体は流出する、および/または導管200の方に易動化されることが可能である。導管200は、導管202と同時に穿孔される、または生成の開始時に穿孔されることが可能である。地層流体は、導管200、および/または地層の他の部分を介して生成されることが可能である。
【0085】
図6に示されるように、導管200は、炭化水素層206A、206B間に位置した層242内に位置する。導管202は、炭化水素層206A内に位置する。導管200、202は、図6に示されており、図2、および/または図5に表された導管200、202のいずれか、さらに図3、図4に表された導管226、226’またはグラウンド228とすることが可能である。実施形態によっては、導管200の一部は、炭化水素層206Aまたは206B内、および層242内に位置する。
【0086】
層242は、炭化水素層206A、および/または炭化水素層206Bと異なる孔隙率を有する導電層、水/砂層、または炭化水素層であってもよい。実施形態によっては、層242は、頁岩層である。層242は、約0.2mho/mから約0.5mho/mの範囲の伝導性を有していてもよい。炭化水素層206A、および/または206Bは、約0.02mho/mから約0.05mho/mに及ぶ伝導性を有していてもよい。層242と炭化水素層206A、および/または206Bとの伝導比は、約10:1、約20:1、または約100:1の範囲であってもよい。層242が頁岩層である場合、層を加熱することは、頁岩層を乾燥させ、頁岩層の浸透性を増大させて、流体が頁岩層を流れることを可能にする。頁岩層の増大した浸透性は、易動化された炭化水素が炭化水素層206Aから炭化水素層206Bに流れることを可能にする、駆動流体が炭化水素層206A内に注入されることを可能にする、および/または蒸気駆動プロセス(例えば、SAGD、周期的蒸気ソーク(CSS)、連続CSS、SAGDまたは蒸気フラッディング、または同時SAGDおよびCSS)が、炭化水素層206A内で行なわれることを可能にする。
【0087】
実施形態によっては、導電層は、導電層内の伝導性の横方向の連続性をもたらすとともに、所定厚さのために、周囲の炭化水素層より実質的に高い伝導性をもたらすために選択される。これに基づいて選択された薄い導電層は、導電層内、および導電層のまわりで熱生成を実質的に限定し、はるかに大きな電極列間隔を可能とする。実施形態によっては、加熱される層は、比抵抗検層に基づいて選択されて、伝導性の横方向の連続性をもたらす。
【0088】
一旦十分な流体注入性がもたらされれば、流体は注入坑井、および/または導管200を介して層242に注入されて、炭化水素層206B内の流体を加熱または易動化する。流体は、炭化水素層206B、および/または地層の他の部分から生成されることが可能である。実施形態によっては、流体は、導管202に注入されて、炭化水素層206A内で易動化、および/または加熱する。加熱、および/または易動化された流体は、導管200、および/または炭化水素層206B内に位置する他の生成坑井、および/または地層の他の部分から生成されることが可能である。
【0089】
ある実施形態では、溶媒和流体は、加圧流体と組み合わせて、インサイチュ熱処理プロセスに加えて炭化水素地層を処理するために使用される。実施形態によっては、駆動プロセスを使用して炭化水素地層が処理された後、溶媒和流体は、加圧流体と組み合わせて使用される。実施形態によっては、溶媒和流体は発泡され、または泡状の物質とされて、駆動プロセスの効率を改善する。泡状の物質の有効な粘性が、個々の成分の粘性より大きくすることが可能であるので、発泡組成物を使用すると、駆動流体の掃引効率を改善することが可能である。
【0090】
実施形態によっては、溶媒和流体は発泡組成物を含む。発泡組成物は、加圧流体、および/または駆動流体と同時にまたは交互に注入されて、加熱部分で泡状の物質を形成することが可能である。高分子組成物が150℃より上の温度で分解する間に、発泡組成物は600℃までの温度で熱的に安定しているので、発泡組成物の使用は、高分子溶液の使用より有利とすることが可能である。約150℃より上の温度での発泡組成物の使用は、高分子組成物の使用と比較して、地層からのより多くの炭化水素流体、および/または炭化水素のより効率的な除去を可能とする。
【0091】
発泡組成物としては、界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。ある実施形態では、発泡組成物としては、ポリマー、界面活性剤、無機塩基、水、蒸気、および/または塩水が挙げられる。無機塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、またはそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。ポリマーとしては、エチレンオキシドや酸化プロピレンポリマーなどの水または塩水に可溶なポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0092】
界面活性剤としては、イオン性界面活性剤、および/または非イオン性界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤の例としては、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルナトリウムスルホン酸塩、ナトリウムアルキルベンゼンスルホン酸塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、トリエタノールアミンが挙げられる。泡状の物質を形成することができる界面活性剤としては、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルポリアルコキシアルキレンスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、アルキル芳香族スルホン酸塩、アルコールエトキシグリセロールスルホン酸塩(AEGS)、またはそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。発泡されることができる界面活性剤の限定するものではない例としては、AEGS25−12界面活性剤、ドデシル3EO硫酸ナトリウム、および例えば、ドデシル(Guerbert)3PO硫酸ナトリウム63、イソトリデシル(Guerbert)4PO硫酸アンモニウム63、テトラデシル(Guerbert)4PO硫酸ナトリウム63などのGuerbet法を使用して作成された分岐アルコールからなる硫酸塩が挙げられる。非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤、および/または炭化水素地層を処理するための発泡方法および使用方法は、Dilgrenらの米国特許第4,643,256号明細書、Lohらの米国特許第5,193,618号明細書、Teletzkeらの米国特許第5,046,560号明細書、Sevignyらの米国特許第5,358,045号明細書、Wangらの米国特許第6,439,308号明細書、Shpakoffらの米国特許第7,055,602号明細書、Shpakoffらの米国特許第7,137,447号明細書、Shpakoffらの米国特許第7,229,950号明細書、Shpakoffらの米国特許第7,262,153号明細書、米国化学会シンポジウムNo.373(1988年)のWellingtonらの「Surfactant−Induced Mobility Control for Carbon Dioxide Studied with Computerized Tomography」に記載されている。
【0093】
泡状の物質は、蒸気添加の間または添加後に、発泡組成物を注入することによって地層内に形成されることが可能である。加圧流体(例えば、二酸化炭素、メタン、および/または窒素)は、発泡組成物が注入される前、間または後に地層に注入されることが可能である。一種の加圧流体は、発泡組成物で使用される界面活性剤に基づくことが可能である。例えば、二酸化炭素は、アルコールエトキシグリセロールスルホン酸塩と共に使用されることが可能である。加圧流体および発泡組成物は、地層と混合し、泡状の物質を生成することが可能である。実施形態によっては、非凝縮性ガスが、注入に先立って発泡組成物と混合されて、予備発泡組成物を形成する。発泡組成物、加圧流体、および/または予備発泡組成物は、加熱された地層に周期的に注入されることが可能である。発泡組成物、予備発泡組成物、駆動流体、および/または加圧流体は、貯留層を破砕することなく、地層流体を置き換えるのに十分な圧力で注入されることが可能である。
【0094】
本発明の種々の態様のさらなる変形および別の実施形態は、この説明を考慮して当業者に明らかとすることが可能である。従って、この説明は、例示としてのみ解釈され、本発明を実施する一般的な方法を当業者に教示するためのものである。当然のことながら、本明細書に示され、記載された本発明の形態は、現在、好ましい実施形態になる。要素および材料は、本明細書で例証され、説明されたものに代用されてもよく、部品およびプロセスは、逆にされてもよく、本発明の特定の特徴が独立して利用されてもよく、すべては、本発明のこの説明の利点を有した後、当業者に明らかとなる。次の請求の範囲に記載されるように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素において変更が行われることが可能である。さらに、当然のことながら、本明細書に独立して記載された特徴は、ある実施形態では、組み合わせられることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表下地層を処理するためのシステムであって、
炭化水素含有地層内に少なくとも部分的に位置し、実質的垂直部、および垂直部に結合された2つの実質的水平配向または傾斜部を含む坑井穴と、
坑井穴の少なくとも2つの実質的水平配向または傾斜部のうちの第1のものの内に少なくとも部分的に位置する第1の導体であり、少なくとも第1の導体が、導電性材料を含む、第1の導体と、
少なくとも第1の導体に結合された電源であり、少なくとも地層の一部を介して、第2の導体と第1の導体内の導電性材料間に電流が流れ、坑井穴の2つの実質的水平配向または傾斜部間で地層の少なくとも一部を加熱するように、第1の導体の導電性材料を電気的に励起させるように構成された電源とを含む、システム。
【請求項2】
第2の導体がグラウンドである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第2の導体が、坑井穴の第2の2つに実質的に水平方向または斜面部内に少なくとも部分的に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
第1の導体および第2の導体の導電性部分間の平均距離が少なくとも10メーターである、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
第1の導体が導管または穿孔された導管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
第2の導体が穿孔された導管を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
導体の少なくとも1つが、炭素鋼を含む第1の層と、銅を含む第2の層を含み、第2の層の少なくとも一部が、第1の層の一部を実質的に囲むまたは部分的に囲む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
導体の少なくとも1つがオーバーバーデン部分を含み、オーバーバーデン部分が1つまたは複数の強磁性体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
導体の少なくとも1つが1つまたは複数の電気絶縁体を含む坑井穴内に位置する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
導体の少なくとも1つが穿孔された導管を含み、システムが、穿孔のうちの少なくともいくつかを介して地層に流体を注入するように構成された流体注入システムをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
地表下地層を処理する方法であって、
電流が第1の導体から、地層の部分における第2の実質的に水平または傾斜位置内に位置する第2の導体に流れるように、地層の部分における第1の実質的に水平または傾斜位置内で第1の導体に電流をもたらし、第1の導体および第2の導体が、共通の坑井穴から延在する坑井穴部分内に位置することと、
電流フローによって発生した熱で第1の導管と第2の導管との間の炭化水素層の少なくとも一部を加熱することとを含む、方法。
【請求項12】
第1の導体が共通の坑井穴の垂直部から延在し、第1の導管の少なくとも一部が垂直部から水平または傾斜して延在し、第1の導体が導電性材料を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の導体が共通の坑井穴の垂直部から延在し、第2の導体の少なくとも一部が第1の導体に実質的に平行であり、第2の導体が導電性材料を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
第1の導体と第2の導体との間の部分の少なくとも一部に、増加した流体注入性を付与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第1の導体、および/または第2の導体の少なくとも一部を穿孔することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
発生熱で地層内の少なくともいくつかの炭化水素を易動化することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
地層から易動化された地層流体の少なくとも一部を生成することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
発泡組成物を注入することと、
部分における発泡組成物を発泡させるのに十分な割合で加圧流体を注入することとをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
予備発泡組成物を注入することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
地層の頁岩層に第1の導体の少なくとも一部をもたらすことをさらに含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−509419(P2012−509419A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531195(P2011−531195)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/060100
【国際公開番号】WO2010/045103
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)