説明

導電性ポリマー組成物

【課題】 導電性ポリマーの含有量が少ない場合であっても、良好な導電性を有し、しかも機械的特性、耐久性、成形加工性などの特性にも優れる導電性ポリマー組成物の提供。
【解決手段】 π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を含有する導電性ポリマー組成物であって、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータと、ブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満である導電性ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ポリマー組成物およびそれよりなる成形体に関する。より詳細には、本発明は、π電子共役ポリマーと特定のブロックコポリマーを含有し、ブロックコポリマーが形成するミクロ相構造中にπ電子共役ポリマーが分散した導電性ポリマー組成物に関する。本発明の導電性ポリマー組成物は、π電子共役ポリマーの含有量が少ない場合であっても良好な導電性を示し浸出しきい値が低く、しかも機械的強度、耐久性などの特性にも優れており、それらの特性を活かして、静電気放電、静電気消失、電磁波シールドなどの制電機能を有する成形体、光透過性と通電性の両方の機能を有する透明導電膜などの成形体などに有効に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
導電性プラスチックは、(i)有機ポリマー中にカーボンブラック、煤、炭素繊維、金属粉などの導電性充填剤を添加した導電性ポリマー組成物と、(ii)有機ポリマー自体が導電性を有するものの2つに大別される。
導電性充填剤を添加した前記(i)の導電性ポリマー組成物では、その導電率は導電性充填剤粒子の相互接触の多少に依存し、導電性を良好なものにするためには、通常約10〜50質量%という多量の導電性充填剤を添加する必要がある。前記(i)の導電性ポリマー組成物では、導電性充填剤の添加量が増加すると、ポリマーの含有量が相対的に低下するため、導電性充填剤がマトリックスを構成するポリマー中に均一に分散しにくくなり、機械的特性や耐久性が低下したり、ポリマー自体が有する特性を発揮できにくくなり、しかも導電性能の制御、特に半導体領域での導電性能の制御がかなり困難である。
【0003】
一方、上記(ii)の有機ポリマー自体が導電性を有するものの代表としては、π電子共役ポリマーなどの導電性ポリマーが挙げられる。
今日、π電子共役ポリマーに関する多くの研究が世界的に行なわれている。アキュミュレーター、感知要素、スイッチ、光要素、回路板、加熱要素、静電気放電エリミネーション(ESD)および電磁相互作用保護(EMI)などの多くの用途において、π電子共役ポリマーは、従来の金属導体や半導体に替わり得るものとして期待されており、既に実用化されているものもある。π電子共役ポリマーは、導電性材料の代表である金属と比較した場合に、軽量性、耐食性、柔軟性に優れ、更に屈曲性、延性などの機械的特性、セーパー合成性、成形加工性などの点でも優れている。
【0004】
π電子共役ポリマーは、一般に、長い共役二重結合を有する有機重合体、或いは二重結合により形成される連鎖、芳香族環および/または複素環を有する有機重合体から形成されている。そして、電子受容体または供与体であるドーパントはその他の物質をポリマーに添加することにより、ポリマーにおける二重結合およびヘテロ原子中の安定なπ−およびπ−p−電子系が欠損してホールおよび/またはエクストラ電子となって電流が共役鎖に沿って移動できるようになり、導電性を発現する。
π電子共役ポリマーでは、ドーピングの程度を調節することによってその電気伝導度を制御することができるため、半導体領域のような低導電性領域での電気伝導度の微細な調節も可能である。
【0005】
導電性を有するπ電子共役ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリナフチレンビニレン、ポリチオフェン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリアセン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリテルロフェン、ポリアミノピレンなどが知られている。
π電子共役ポリマーの代表的な成形加工法としては、溶融可塑化による方法と溶液法が挙げられる。しかし、π電子共役ポリマーは、一般に溶融可塑化温度に加熱する前に熱分解し易く、そのままでは溶融可塑化による成形加工は適用しにくい。一方、溶液法による場合は、π電子共役ポリマーは工業的に汎用されている溶媒への溶解性が低いという問題があり、またπ電子共役ポリマーを溶解可能な溶媒に溶解することでフィルムや繊維のような薄いものや細いものは製造できるが、厚さやサイズがフィルムや繊維よりも大きい成形体や、形状の複雑な成形体などの製造は困難である。
【0006】
上記の点から、π電子共役ポリマーを溶融成形可能にする取り組みが従来から試みられている。そのような従来技術としては、π電子共役ポリマーの1種であるポリチオフェンにアルキル基を導入してポリ(3−アルキルチオフェン)とすることで立体規則性を乱して熱可塑性にし、それにEVA(エチレン−酢酸ビニルコポリマー)やポリエチレンなどの熱可塑性樹脂を混合した後にドーパントでドーピングする方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この方法による場合は、ポリチオフェンを化学修飾してポリ(3−アルキルチオフェン)にする必要があるため、手間がかかり、製造コストがアップし、しかもアルキル基の導入によって熱安定性が低下し易い。その上、ポリ(3−アルキルチオフェン)をEVAやポリエチレンなどの熱可塑性樹脂と混合した後にドーピングする点で工程的にも複雑であり、工業的に有効な方法とは言い難い。
【0007】
また、他の従来技術として、ポリアニリンまたはその誘導体に、その質量よりも多いアルキルベンゼンスルホン酸などのプロトン酸をドーパントとして加えて40〜250℃で加熱して導電性の可塑性材料を調製し、それをポリスチレン、ポリエチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、スチレン−ブタジエンコポリマーなどの熱可塑性ポリマーと混合して溶融成形可能な熱可塑性樹脂組成物にすることが提案されている(特許文献2)。しかしながら、この方法では、プロトン酸をポリアニリンの2質量倍以上という極めて多い量で用いているため、得られる熱可塑性樹脂組成物は、酸性が強くて、装置などの腐食を生じ易く、しかも湿分吸収性であるなどの点で問題がある。その上、この方法により得られる熱可塑性樹脂組成物では、ポリアニリン、ドーピング剤およびドーピングされたポリアニリンが、前記した熱可塑性ポリマーと均一に混合していないために、導電性が低く、望ましいレベルの導電率を得るためにはポリアニリンを多量に配合しなければならず、ポリアニリンの少量の配合で良好な導電性能を得ることが困難であり、いわゆる「浸出しきい値」が高い。
【0008】
多量のプロトン酸の使用に伴う上記弊害を除くために、多量のプロトン酸を添加して加熱したポリアニリンと上記した熱可塑性ポリマーとの混合物(組成物)中に、酸化亜鉛などの金属化合物を中和のために更に含有させることが提案されている(特許文献3を参照)。しかしながら、これにより得られる熱可塑性樹脂組成物は、酸性度はある程度低下しているが、未だ浸出しきい値が高く、所望の導電性能を得るためには導電性ポリアニリンの含有量を増やす必要があり、導電性ポリアニリンの含有量の増加は、機械的強度の著しい低下や耐久性の低下をもたらす。
かかる点から、π電子共役ポリマーの含有量が少量でありながら良好な導電性を有し、しかも酸性度が低くて装置の腐食などを生じず、更には熱可塑性で、汎用の溶融成形加工方法によって種々のサイズおよび形状の成形体を簡単に且つ円滑に製造することのできる導電性ポリマー組成物が求められている。
【0009】
【特許文献1】特公平7−734号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第0545729号公報
【特許文献3】ヨーロッパ特許公開第0582919号公報
【非特許文献1】「Polymer Engineering and Science」,Vol.14,1974年,No.2,p.147
【非特許文献2】「SP値基礎・応用と計算方法」、情報機構発行、2005年3月,p.71−78
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、π電子共役ポリマーの含有量が少量であっても、良好な導電性を有し、酸性度が低くて装置の腐食などを生じず、しかも熱可塑性で汎用の溶融成形加工方法によってサイズや形状などの異なる種々の成形体(製品)を簡単に且つ円滑に製造することができ、更には機械的特性および耐久性に優れる各種成形体を製造することのできる導電性ポリマー組成物を提供することである。
そして、本発明の目的は、当該導電性ポリマー組成物よりなる成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明者は検討を重ねてきた。その結果、π電子共役ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックを少なくとも有するブロックコポリマーをマトリックス用のポリマーとして用い、当該ブロックコポリマーよりなるマトリックス中にπ電子共役ポリマーをミクロ相分離構造で混合分散させると、π電子共役ポリマーの含有量が少なくても良好な導電性を示すこと、しかもπ電子共役ポリマーに添加するドーパントの量が少量で済むこと、さらにそれにより得られる導電性ポリマー組成物は、熱可塑性で各種の溶融成形加工を円滑の行うことができ、それによって力学的特性および耐久性に優れる成形体が得られることを見出した。
【0012】
さらに、本発明者は、その際に、マトリックスとして用いるブロックコポリマーとしては、π電子共役ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックを少なくとも1つ有すると共に、π電子共役ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5以上であるポリマーブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマーを用いると、導電性がより良好になり、更には柔軟性、引張強度などの機械的特性の向上および浸出しきい値の低下などの点から好ましく用いられることを見出した。
【0013】
また、本発明者は、前記した優れた効果が、π電子共役ポリマーとしてポリアニリン系ポリマー、特に可塑化効果を発揮するドーパントによりドーピングしたポリアニリン系ポリマーを用い、マトリックスをなすブロックコポリマーとしてポリアニリン系ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であるアルキルメタクリレート系ポリマーブロックを少なくとも有するブロックコポリマーを用いた際により良好に発揮されることを見出した。
また、本発明者は、π電子共役ポリマーとしてポリアニリン系ポリマー、特にドーパントによってドーピングしたポリアニリンポリマーを用いる際に、一次粒子径が1μm以下の金属酸化物、特に酸化亜鉛を含有させると、ポリアニリン系ポリマーの含有量がより少量であっても良好な導電性を有する導電性ポリマー組成物が得られることを見出し、それらの種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1) π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を含有する導電性ポリマー組成物であって、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータと、ブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であることを特徴とする導電性ポリマー組成物である。
そして、本発明は、
(2) ブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとπ電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であり、ブロックコポリマー(B)を構成する前記とは異なる他のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとπ電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータの差に絶対値が2.5以上である前記(1)の導電性ポリマー組成物である。
【0015】
さらに、本発明は、
(3) π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を、(A):(B)=1:99〜2:1の質量比で含有する前記(1)または(2)の導電性ポリマー組成物;
(4) π電子共役ポリマー(A)が、可塑化効果を有するドーパントによりドーピングされているポリアニリン系ポリマーである前記(1)〜(3)のいずれかの導電性ポリマー組成物;
(5) π電子共役ポリマー(A)がポリアニリン系ポリマーであり、ブロックコポリマー(B)がポリアニリン系ポリマーとの溶解度パラメータ差の絶対値が2.5未満であるアルキルメタクリレート系ポリマーブロックを有するブロックコポリマーである前記(1)〜(4)のいずれかの導電性ポリマー組成物;および、
(6) 可塑化効果を有するドーパントによりドーピングされているポリアニリン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートブロックとポリn−ブチルアクリレートブロックを有するブロックコポリマーを含有することを特徴とする導電性ポリマー組成物;
である。
【0016】
そして、本発明は、
(7) 一次粒子の平均粒径が1μm以下である金属酸化物を含有する前記(4)〜(6)のいずれかの導電性ポリマー組成物;
(8) 金属酸化物が酸化亜鉛である前記(7)の導電性ポリマー組成物;および、
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかの導電性ポリマー組成物からなる成形体;
である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の導電性ポリマー組成物は、π電子共役ポリマー(導電性ポリマー)の含有量が少なくても良好な導電性を有することから、本発明の導電性ポリマー組成物から得られる成形体などの製品は、導電性ポリマー組成物中に含まれるブロックコポリマーの性能を十分に発揮して、力学的特性、耐久性などの特性に優れている。
本発明の導電性ポリマー組成物では、π電子共役ポリマーに添加するドーパントの量が少量で済むことから、酸性のドーパントによる導電性ポリマー組成物の酸性化を抑制することができる。
更に、可塑化効果のあるドーパントによってドーピングしたπ電子共役ポリマーを含有する本発明の導電性ポリマー組成物は、熱可塑性で、汎用の各種の溶融成形加工法によってサイズや形状の異なる種々の成形体(製品)を円滑に製造することができる。
本発明の導電性ポリマー組成物において、ブロックコポリマー(B)として、π電子共役ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックを少なくとも1つ有し且つπ電子共役ポリマーとの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5以上であるポリマーブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマーを用いたものは、より良好な導電性を有し、しかも の点でもより優れている。
【0018】
上記した本発明の優れた効果は、π電子共役ポリマー(A)としてポリアニリン系ポリマー、特にドーパントによってドーピングしたポリアニリンポリマーを含有する本発明の導電性ポリマー組成物においてより顕著に発揮される。
また、π電子共役ポリマー(A)としてポリアニリン系ポリマーを含有し、更に一次粒子径が1μm以下の金属酸化物、特に酸化亜鉛を含有する本発明の導電性ポリマー組成物は、ポリアニリン系ポリマーの含有量がより少量であっても良好な導電性を有する。
本発明の導電性ポリマー組成物は、前記した優れた特性を活かして、静電気放電、静電気消失、電磁波シールドなどの制電機能を有する各種製品、光透過性と通電性の両方の機能を有する透明導電膜、 などの種々の用途に有効に利用することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性ポリマー組成物で用いるπ電子共役ポリマー(A)は、特に制限されず、導電性であるかまたはドーパントの作用によって導電性を発現するπ電子共役ポリマーのいずれもが使用できる。本発明で用い得るπ電子共役ポリマーの具体例としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリナフチレンビニレン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリオキサジアゾール、ポリチアジル、ポリアセン、ポリフラン、ポリセレノフェン、ポリテルロフェン、ポリアミノピレン、前記したポリマーの誘導体などを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0020】
前記したうちでも、本発明では、π電子共役ポリマー(A)として、ポリアニリンおよび/またはその誘導体が、ドーピングが容易であり、しかも取扱い性、安定性、均一性などの点に優れていて、技術的および商業的に有望であることから好ましく用いられる(なお、本明細書中ではポリアニリンおよびその誘導体を総称して「ポリアニリン系ポリマー」という)。
ポリアニリン系ポリマーとしては、非置換ロイコエメラルジン、プロトエメラルジン、エメラルジン、ニグルアニリンまたはトルプトロエメラルジン形態などの、プロトン酸によるドーピングによって導電性ポリマーとなり得る任意のポリアニリン系ポリマーが使用できる。置換基を有するポリアニリン、化学的に修飾されたポリアニリンなどのポリアニリン誘導体も使用できる。
置換基を有するポリアニリンとしては、例えば、下記の一般式(I)に示すような側鎖(置換基)を有するポリアニリン系ポリマーであってもよく、下記の一般式(I)に示すポリアニリン系ポリマーは一般に可塑性を有する。
【0021】
【化1】


(式中、Xは側鎖(置換基)を示す。)
【0022】
上記の一般式(I)において、Xの具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシアルキル基、アルカノイル基、アロイル基、ベンゾイル基、アルコキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アルキルシリル基、アルキルシリルオキシ基、各種スルホン酸基(例えばアルキルスルホン酸基、アルケニルスルホン酸基、アルキニルスルホン酸基、ハロアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、フェニルスルホン酸基、アラルキルスルホン酸基、ベンジルスルホン酸基、アルコキシアルキルスルホン酸基、アルカノイルスルホン酸基、アロイルスルホン酸基、ベンゾイルスルホン酸基、アルコキシスルホン酸基、アリールアルコキシスルホン酸基、ハロアルコキシスルホン酸基、アリールオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アルコキシアルキルオキシスルホン酸基、アルカノイルオキシスルホン酸基、アルコキシカルボニルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシカルボニルオキシスルホン酸基、アルキルシリルスルホン酸基、アルキルシリルオキシスルホン酸基など)、ポリマー鎖(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、オレフィン−ビニルアルコールコポリマー、オレフィン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドンなどのビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン、スチレン−ブチレンコポリマーまたはその水素添加体、スチレン−イソプレンコポリマーまたはその水素添加体、核水添ポリスチレンなどのスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェノール、液晶性ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、オレフィンマレイミドコポリマー、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴムなどよりなるポリマー鎖)などを挙げることができる。
【0023】
本発明で特に好ましく用いられるポリアニリン系ポリマーは、非伝導性未置換のポリアニリンに由来する導電性ポリアニリン、および約3.0未満のpKa値を有する1種以上のプロトン性酸の使用によって導電型にプロトン化する導電性ポリアニリンである。その際のプロトン性酸としては、ポリアニリンをプロトン化して2×106[Ω/□]未満の表面抵抗値を有する錯塩を形成するプロトン性酸が好ましく用いられる。
【0024】
本発明で用いるπ電子共役ポリマー(A)は、本発明の導電性ポリマー組成物の溶融成形性を向上させて多様な用途に使用可能にするために、ドーパント(ドーピング剤)によりドーピングして可塑化されていることが好ましく、特にポリアニリン系ポリマーよりなるπ電子共役ポリマー(A)では、ドーピング処理によって可塑化されていることが望ましい。
π電子共役ポリマー(A)、特にポリアニリン系ポリマーのドーピングに用いられるドーパントは特に制限されず、π電子共役ポリマー(A)の特性を損ねることなる可塑化し得るものであればいずれも使用できる。
π電子共役ポリマー(A)、特にポリアニリン系ポリマーに用い得るドーパントとしては、例えば以下の一般式(IIa)〜(IIe)で表される化合物を挙げることができる。
【0025】
【化2】

【0026】
上記の一般式(IIa)〜(IIe)において、基Yの具体例としては、水酸基、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、アリール基、フェニル基、アラルキル基、ベンジル基、アルコキシアルキル基、ニトロ基、アルカノイル基、アロイル基、ベンゾイル基、アルコキシカルボニル基、アリールアルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アルキルシリル基、アルキルシリルオキシ基、ポリマー鎖(ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、オレフィン−ビニルアルコールコポリマー、オレフィン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドンなどのビニル系ポリマー;ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン、スチレン−ブチレンコポリマーまたはその水素添加体、スチレン−イソプレンコポリマーまたはその水素添加体、核水添ポリスチレンなどのスチレン系ポリマー;ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなどのポリエーテル;ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェノール、液晶性ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、オレフィンマレイミドコポリマー、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴムなどのポリマーよりなるポリマー鎖)などを挙げることができる。
【0027】
また、上記の一般式(IIa)〜(IIe)において、基Zの具体例としては、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、アルケニルスルホン酸基、アルキニルスルホン酸基、ハロアルキルスルホン酸基、アリールスルホン酸基、フェニルスルホン酸基、アラルキルスルホン酸基、ベンジルスルホン酸基、アルコキシアルキルスルホン酸基、アルカノイルスルホン酸基、アロイルスルホン酸基、ベンゾイルスルホン酸基、アルコキシスルホン酸基、アリールアルコキシスルホン酸基、ハロアルコキシスルホン酸基、アリールオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アルコキシアルキルオキシスルホン酸基、アルカノイルオキシスルホン酸基、アルコキシカルボニルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシスルホン酸基、アラルキルオキシカルボニルオキシスルホン酸基、アルキルシリルスルホン酸基、アルキルシリルオキシスルホン酸基などのスルホン酸基を挙げることができる。
【0028】
また、π電子共役ポリマー(A)、特にポリアニリン系ポリマーに用い得るドーパントは、Yの具体例として上記で挙げたポリマー鎖の1つに、例えば以下の一般式(IIIa)〜(IIIe)で表される基のうちの1または2つ以上が結合(懸垂)したものであってもよい。
【0029】
【化3】


[式中、Zは、上記の一般式(IIa)〜(IIe)におけるZと同じ基を示す。]
π電子共役ポリマー(A)、特にポリアニリン系ポリマーのドーパントとしては、上記した化合物のうちの1種または2種以上を用いることができる。
【0030】
上記した化合物のうちでも、π電子共役ポリマー(A)、特にポリアニリン系ポリマーのドーパントとしては、Yが炭素数1〜20のアルキル基で、Zがスルホン酸基である上記の一般式(IIa)で表される化合物(すなわちアルキルベンゼンスルホン酸)が、汎用性、信頼性、化学的安定性の点から好ましく用いられ、具体例としては、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−デシルベンゼンスルホン酸、p−ウンデシルベンゼンスルホン酸、p−トリデシルベンゼンスルホン酸、p−テトラデシルベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。
【0031】
ドーパントの使用割合は、ポリアニリン系ポリマーなどのπ電子共役ポリマー(A)100質量部に対して、2〜1800質量部が好ましく、20〜700質量部がより好ましく、100〜350質量部が更に好ましい。
また、別の観点からいうと、ポリアニリン系ポリマーでは、ポリアニリン系ポリマー中の窒素原子1モルに対して、ドーパントの使用割合は0.01〜5モルが好ましく、0.1〜2モルがより好ましく、0.5〜1モルが更に好ましい。
ドーパントの使用量が少なすぎると、ポリアニリン系ポリマーなどのπ電子共役ポリマー(A)の可塑化および導電化が十分に行われにくくなり、一方多すぎると酸性度が強くなって金属腐食の原因となったり、取り扱い性の低下を招き易くなる。
【0032】
π電子共役ポリマー(A)のドーピング処理は、π電子共役ポリマー(A)の所定の量のドーパントを添加して、加熱下に溶融混練することによって行うことができる。π電子共役ポリマー(A)がポリアニリン系ポリマーである場合には、ポリアニリン系ポリマーにドーパントを添加して、一般に、20〜200℃、特に80〜150℃で、0.1〜10分間、特に1〜5分間程度溶融混練温することによってドーピングを円滑に行うことができる。
【0033】
また、本発明の導電性ポリマー組成物中に以下で詳述する一次粒子の平均粒径が1μm以下の金属酸化物を更に含有させる場合には、ドーパントと金属酸化物との複合体を溶融混練などによって予め調製しておき、当該複合体をπ電子共役ポリマー(A)に添加して溶融混練することによってドーピングを行ってもよい。
【0034】
本発明では、ブロックコポリマー(B)として、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満[2.5(J/cm31/2未満]であるブロックコポリマー、すなわち前記した溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であってπ電子共役ポリマー(A)と親和性の高いポリマーブロックを有するブロックコポリマーを用いる。
π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータと、ブロックコポリマー(B)が有する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満であることにより、π電子共役ポリマー(A)が、ブロックコポリマー(B)よりなるマトリックス中に、パーコレーション・パスがつながった状態で均一に分散した状態となり、ポリマー組成物の導電性が良好になる。
【0035】
ブロックコポリマー(B)としては、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満[2.5(J/cm31/2未満]であり、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの前記とは異なる他のポリマーブロックの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5以上[2.5(J/cm31/2以上]であるブロックコポリマー、すなわち、π電子共役ポリマー(A)と、溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックと溶解度パラメータの差の絶対値が2.5以上であるポリマーブロックの両方を有するブロックコポリマーが、π電子共役ポリマー(A)が親和性の高い相に偏在化してミクロ相分離構造をパーコレーション・パスとして利用できる点からより好ましく用いられる。
【0036】
ここで、本発明の導電性ポリマー組成物における「π電子共役ポリマー(A)」の溶解度パラメータとは、本発明の導電性ポリマー組成物に含まれるπ電子共役ポリマー(A)が、ドーピングされていない場合は非ドーピングπ電子共役ポリマーの溶解度パラメータをいい、またドーピングされているπ電子共役ポリマーである場合はドーピングされたポπ電子共役ポリマーの溶解度パラメータをいい、π電子共役ポリマー(A)がドーピングされていて更に金属酸化物を含有する複合物である場合は当該複合物の溶解度パラメータをいう。
【0037】
さらに、本明細書におけるπ電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータは、下記の数式(i)(Fedorの推算式)により算出される溶解度パラメータ(δ)[単位=(J/cm31/2]をいう。
【0038】
【数1】


[式中、Ecohは凝集エネルギー密度(J/mol)およびVはモル分子容(mol/cm3)を示す。]

数式(i)における凝集エネルギー密度(Ecoh)およびモル分子容(V)は、Federの推算式から求めることができ、その詳細については非特許文献1に記載されているとおりである。
【0039】
また、本明細書におけるブロックコポリマー(B)の溶解度パラメータ並びにその他のポリマーの溶解度パラメータは、下記の数式(ii)(Smallの式)により算出される溶解度パラメータをいい、その詳細については非特許文献2に記載されているとおりである。

溶解度パラメータ(SP)=dΣG/M (ii)

[式中、SPは、ブロックコポリマー(B)またはその他のポリマーの溶解度パラメータ、Mはブロックコポリマー(B)または他のポリマーを構成する単位(単量体単位)の分子量(コポリマーの場合には共重合組成に応じて単量体単位の分子量を加重平均した値)、dはブロックコポリマー(B)または他のポリマーの密度、Gはブロックコポリマー(B)または他のポリマーの有する原子団および基に固有の定数を示す。]
【0040】
ブロックコポリマー(B)としては、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満[2.5(J/cm31/2未満]であるブロックコポリマーであればいずれも使用できる。
ブロックコポリマー(B)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、オレフィン−ビニルアルコールコポリマー、オレフィン−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドンなどのビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン、スチレン−ブチレンコポリマーまたはその水素添加体、スチレン−イソプレンコポリマーまたはその水素添加体、核水添ポリスチレンなどのスチレン系ポリマー、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェノール、液晶性ポリマー、フッ素系ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、オレフィンマレイミドコポリマー、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ブタジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴムなどのポリマーから選ばれる2つ以上のポリマーがブロック状に結合したブロックコポリマーであって且つ当該2つ以上のポリマーブロックのうちの少なくとも1つが、π電子共役ポリマー(A)との溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満となる溶解度パラメータを有するポリマーよりなるブロックであるブロックコポリマーを用いることができる。
ブロックコポリマー(B)における、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックを形成するポリマーの種類は、π電子共役ポリマー(A)の種類およびその溶解度パラメータの値に応じて異なる。
【0041】
本発明の導電性ポリマー組成物では、ブロックコポリマー(B)として、透明性、耐光性、耐傷性などに優れているアルキルメタクリレート系ポリマーブロックを有するブロックコポリマーが、導電性ポリマー組成物から得られる成形体の透明性、耐候性、耐傷性などが良好になる点から好ましく用いられる。
また、ブロックコポリマー(B)として、室温以下のガラス転移温度を有するポリマーブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマーを用いた場合には、導電性ポリマー組成物から機械的強度の向上した成形体が得られる。その際の、ブロックコポリマー(B)における、室温以下のガラス転移温度を有するポリマーブロックは特に限定されないが、例えばポリアルキルアクリレート系ポリマーブロックなどを挙げることができる。
【0042】
π電子共役ポリマー(A)がポリアニリン系ポリマー、特にドーピングしたポリアニリン系ポリマーである場合には、アルキルメタクリレート系ポリマーの溶解度パラメータがドーピングしたポリアニリン系ポリマーの溶解度パラメータと近くて、ドーピングしたポリアニリン系ポリマーの溶解度パラメータとアルキルメタクリレート系ポリマーの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満にすることが容易であるので、アルキルメタクリレート系ポリマーよりなるポリマーブロックを少なくとも1つ有するブロックコポリマーがブロックコポリマー(B)として好適に用いられる。
ドーピングしたポリアニリン系ポリマーと組み合わせて用い得るアルキルメタクリレート系ポリマーよりなるポリマーブロックを有するブロックコポリマーとしては、例えば、
・[アルキルメタクリレート系ポリマー]−[他のポリマーブロック]よりなるジブロックコポリマー;
・[アルキルメタクリレート系ポリマー]−[他のポリマーブロック]−[アルキルメタクリレート系ポリマー]よりなるトリブロックコポリマー;
・[アルキルメタクリレート系ポリマーと他のポリマーが交互に4個以上結合したブロックコポリマー;
などを挙げることができる。
そのうちでも、[アルキルメタクリレート系ポリマー]−[他のポリマーブロック]よりなるジブロックコポリマー、[アルキルメタクリレート系ポリマー]−[他のポリマーブロック]−[アルキルメタクリレート系ポリマー]よりなるトリブロックコポリマーが好ましく用いられる。
【0043】
ブロックコポリマーを形成する前記したアルキルメタクリレート系ポリマーブロックは、メタクリル酸の炭素数1〜10のアルキルエステル、特にメチルメタクリレートから主としてなるポリマーブロック(アルキルメタクリレート系ポリマーブロックの10モル%以上がメチルメタクリレートに由来する構造単位からなるポリマーブロック)であることが、透明性が高い点から好ましい。
また、アルキルメタクリレート系ポリマーブロックを有する前記ブロックコポリマーにおいて、他のポリマーブロックは、ブロックコポリマーを熱可塑性に維持できる限りはいずれのポリマーからなっていてもよいが、(メタ)アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマーからなるポリマーブロックであることが、透明性、ミクロ相分離性などの点から好ましい。
特に、π電子共役ポリマー(A)がポリアニリン系ポリマー、特にドーピングしたポリアニリン系ポリマーである場合には、ブロックコポリマー(B)として、ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートよりなるトリブロックコポリマーが引張強度などの機械的特性、透明性、入手容易性などの点から好ましく用いられる。
【0044】
ブロックコポリマー(B)の分子量は特に制限されないが、機械的特性、加工性、取り扱い性などの点から、ブロックコポリマー(B)全体の数平均分子量が30000〜300000、特に50000〜100000であることが好ましい。
また、ブロックコポリマー(B)として、ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートよりなるトリブロックコポリマーを用いる場合は、2つのポリメチルメタクリレートブロックの数平均分子量がそれぞれ5000〜100000、特に10000〜50000で、ポリn−ブチルアクリレートブロックの数平均分子量が5000〜200000、特に10000〜100000で、トリブロックコポリマー全体の数平均分子量が30000〜300000、特に50000〜100000のトリブロックコポリマーを用いることが好ましい。
なお、本明細書における前記数平均分子量は、GPCにより測定したときの数平均分子量をいう。
【0045】
本発明の導電性ポリマー組成物は、π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を、質量比で、(A):(B)=1:99〜2:1の割合で含有することが好ましく、5:95〜1:1の割合で含有することがより好ましく、1:9〜1:2の割合で含有することが更に好ましい。π電子共役ポリマー(A)の含有量が少なすぎると[ブロックコポリマー(B)の含有量が多すぎると]、導電性が低下し、一方π電子共役ポリマー(A)の含有量が多すぎると[ブロックコポリマー(B)の含有量が少なすぎると]、溶融成形加工性に劣るようになり、しかも組成物から得られる成形体の力学的特性の低下、耐久性、柔軟性などが低下する。
【0046】
π電子共役ポリマー(A)が、プロトン酸(上記したスルホン酸など)よりなるドーパントでドーピングしたπ電子共役ポリマー、特にプロトン酸でドーピングしたポリアニリン系ポリマーである場合は、プロトン酸(ドーパント)による組成物の酸性化を防いで組成物を中和し、また導電性をより良好にするために、導電性ポリマー組成物中に金属酸化物を含有させることが好ましい。それによって、酸性組成物による加工装置の腐食などの損傷、最終的に得られる生成物の酸性化防止、導電性の向上、溶融時の流動性の向上などを図ることができる。導電性ポリマー組成物中に金属酸化物を含有させる場合は、一次粒子径が1μm以下の金属酸化物を用いることが好ましく、それによって、π電子共役ポリマー(A)の可塑化効果がより顕著になり、ブロックコポリマー(B)よりなるマトリックス中へのπ電子共役ポリマー(A)への分散性が向上し、より少量のπ電子共役ポリマー(A)の含有量で、ポリマー組成物の導電性をより良好なものにすることができる。
ここで、本明細書における「金属酸化物の一次粒子の平均粒径」とは、金属酸化物を電子顕微鏡で写真撮影し、その写真から個々の粒子の面積を求め、さらに当該面積と同じ面積を有する円(面積相当円)の直径を求める操作を500個の粒子について行って、その平均値を採ったときの値である。
【0047】
金属酸化物の種類は限定されず、例えば、亜鉛、マグネシウム、バリウム、カルシウム、銅、アルミニウム、チタン、鉄、ジルコニウム、カドミウム、鉛、スズなどの金属の酸化物を挙げることができ、それらの1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、中和作用、安定性、導電性の向上効果、安全性などの点から、酸化亜鉛(ZnO)がより好ましく用いられる。
金属酸化物は、π電子共役ポリマー(A)のドーピング前、ドーピング時、ドーピング後、π電子共役ポリマー(A)とブロックコポリマー(B)の混合時、混合後のいずれの段階で添加してもよいが、ドーピングしたπ電子共役ポリマー(A)を用いる場合には、プロトン酸などのドーパントと金属酸化物を予め加熱混合してドーパント/金属酸化物の複合体を調製しておき、当該複合体を用いてπ電子共役ポリマー(A)のドーピングを行い、それにより得られたπ電子共役ポリマー(A)をブロックコポリマー(B)と混合することが、成形安定性、得られる組成物および成形体の機械物性および導電性の点から好ましい。
【0048】
本発明の導電性ポリマー組成物は、ポリマー成分として、π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)のみを含有していてもよいし、または前記2者以外に他のポリマーを必要に応じて含有していてもよい。
本発明の導電性ポリマー組成物が、π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)と共に他のポリマーを含有する場合は、他のポリマーとして、ブロックコポリマー(B)とマクロに相分離せずにミクロ相分離構造を形成するポリマーを用いることが好ましい。その理由は、本発明では、ブロックコポリマー(B)中の溶解度パラメータの近いポリマーブロック[π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロック]よりなる相にπ電子共役ポリマー(A)を完全にまたは部分的に相溶させてミクロ相分離構造を形成させるための微細分散用鋳型としてブロックコポリマー(B)を利用しているが、他のポリマーとしてブロックコポリマー(B)とマクロに相分離するものを使用すると、π電子共役ポリマー(A)がブロックコポリマー(B)中の溶解度パラメータの近いポリマーブロック中にミクロ相分離構造をなして微細分散しなくなり、良好な導電性が得られなくなることによる。
本発明の導電性ポリマー組成物では、ポリマー成分としてπ電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)の2者のみを含有する場合、またはπ電子共役ポリマー(A)、ブロックコポリマー(B)および他のポリマーを含有する場合のいずれにおいても、ブロックコポリマー(B)よりなるマトリックスに形成されるミクロ相分離構造は、そのドメイン間距離[すなわちブロックコポリマー(B)を構成する各ポリマーブロック相間の距離)が、5〜500nmであることが好ましく、10〜250nmであることがより好ましい。
また、本発明の導電性ポリマー組成物は、必要に応じて、グラファイト、金属伝導体、補強繊維、不活性充填材、染料などの他の成分の1種または2種以上を含有することができる。
【0049】
本発明の導電性ポリマー組成物の製造方法は特に制限されず、ポリマー重合体組成物の製造に用いられている公知の方法で混合することにより製造することができる。例えば、π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)が熱可塑性である場合には、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどでπ電子共役ポリマー(A)、ブロックコポリマー(B)および必要に応じて他のポリマーやその他の成分をブレンドし、そのブレンド物を更に単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどの混練機を用いて均一に混合・混練することによって製造することができる。
また、π電子共役ポリマー(A)が非可塑性であったり、加熱により分解し易いポリマーである場合には、π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を有機溶媒に溶解して両ポリマーを含有する溶液を調製し、その溶液を用いて成形加工や紡糸などを行うことができる。
【0050】
本発明の導電性ポリマー組成物は、成形体(フィルム、シート、プレート、管状体、型物、ブロック状成形体、中空成形品、容器など)、繊維などの種々の製品の製造に用いることができる。前記した製品を製造するための成形または加工は、溶融法または溶液法のいずれで行ってもよい。
具体的な成形加工方法としては、例えば、押出成形、押出ブロー成形、射出成形、射出ブロー成形、熱プレス成形、真空成形、圧空成形、カレンダー成形、流延成形、回転成形、反応成形、発泡成形などを挙げることができる。
また、本発明の導電性ポリマー組成物から繊維を製造する場合には、例えば、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸、空隙紡糸、ゲル紡糸、フラッシュ紡糸などのような通常の紡糸方法を採用することができる。
【実施例】
【0051】
以下に、本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の例において、各種物性や性能などの測定、算出または評価は次のようにして行った。
【0052】
(1)ブロックコポリマーにおける各ポリマーブロックの分子量およびブロックコポリマー全体の分子量
ブロックコポリマーの全体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)、並びにブロックコポリマーにおける各ポリマーブロックの重量平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算分子量で求めた。GPCで用いた測定装置および条件は次のとおりである。
[GPC測定の装置および条件]
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:1.0ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0053】
(2)ブロックコポリマーにおける各ポリマーブロックの含有割合
1H−NMR(1H−核磁気共鳴)測定によって求めた。1H−NMR測定で用いた測定装置および条件は次のとおりである。
1H−NMR測定の装置および条件]
・装置:日本電子株式会社製の核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
【0054】
(3)溶解度パラメータ
(3−1)π電子共役ポリマーの溶解度パラメータ:
π電子共役ポリマーの溶解度パラメータ(δ)を、上記した数式(i)により求めた。
その際に、凝集エネルギー密度「Ecoh」(J/mol)およびモル分子容「V」(mol/cm3)は上記したように非特許文献1に基づいて、Federの推算法から求めた。
(3−2)ブロックコポリマーおよびその他のポリマーの溶解度パラメータ:
ブロックコポリマーおよびその他のポリマーの溶解度パラメータは、非特許文献2に記載されている方法にしたがって、上記の数式(ii)(Smallの式)によって上記した方法で求めた。
【0055】
(4)ポリアニリン塩複合物中に含まれている金属化合物種の同定および粒径の算出
以下の参考例7において、当該参考例7で用いたポリアニリン塩複合物(PANIPOL製「CXM」)中に含まれている金属化合物種を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)(日立製作所製「S4800」)を使用して、加速電圧30kVの条件下で同定すると共に、その粒径を求めた。
【0056】
(5)金属化合物の一次粒子の平均粒径
上記(4)で使用したのと同じ、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を使用して、加速電圧30kVの条件下写真撮影し、その写真から、任意の500個の粒子の面積をそれぞれ求め、さらに当該面積と同じ面積を有する円(面積相当円)の直径をそれぞれ求めて、500個の粒子の直径の平均値を採って金属化合物の一次粒子の平均粒径とした。
【0057】
(6)表面抵抗値の測定
以下の実施例または比較例で得られた成形体[フイルム(試験片)]を用いて、抵抗率計(三菱化学株式会社製「ロレスターFP」)を使用して、四探針プローブ法にて表面抵抗値を測定した。具体的には、温度25℃、湿度50%RHの条件下に、前記した低効率計を使用して、試験片(縦×横=100mm×100mmのフイルム片)の面内の任意の5点の表面抵抗値を測定し、得られた値の平均値を採って、試験片の表面抵抗値とした。
【0058】
《参考例1》[ポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートよりなるトリブロックコポリマーの製造]
(1) 3リットルの三口フラスコに三方コックを付け内部を脱気し、窒素で置換した後、室温にてトルエン1170g、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン2.82ml、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム33mmolを含有するトルエン溶液54mlを加え、さらに、sec−ブチルリチウム9.0mmolを含有するシクロヘキサンとn−ヘキサンの混合溶液2.4mlを加えた。これにメタクリル酸メチル50mlを加えた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温(25℃)にて1時間攪拌後、無色となった。この時点で、反応液1gを採取してサンプリング試料1とした。
(2) 引き続き、重合液の内部温度を−12℃に冷却し、アクリル酸n−ブチル188mlを6時間かけて滴下して反応を行わせた。滴下終了後、反応液1gを採取してサンプリング試料2とした。
(3) 続いて、反応液にメタクリル酸メチル50mlを加えて室温で撹拌下に反応させた。反応液は当初、黄色に着色していたが、室温にて10時間攪拌後に無色となり、この時点で反応液にメタノール3gを添加して重合を停止させた。この重合停止後の反応液を大量のメタノールと水の混合溶液(メタノールの割合は90質量%)中に注ぎ、析出した白色沈殿物を回収してサンプリング試料3とした。
【0059】
(4) 上記(1)〜(3)で回収したサンプリング試料1〜3について、上記した方法でGPC測定および1H−NMR測定を行って、その結果に基づいて、各重合段階で得られたポリマーおよびブロックコポリマーのMw(重量平均分子量)、Mw/Mn(分子量分布)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ブロックとポリn−ブチルアクリレート(PnBA)ブロックの質量比などを求めたところ、最終的に得られた上記白色沈殿物は、PMMA−PBA−PMMAからなるトリブロックコポリマーであり、その全体の重量平均分子量(Mw)は79,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.34、および各ポリマーブロックの割合はPMMA(31質量%)−PnBA(38質量%)−PMMA(31質量%)であること(PMMAの合計62質量%)が判明した。
【0060】
《参考例2》[ポリ(ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート)−ポリアクリロニトリルよりなるジブロックコポリマーの製造]
(1) ジシクロヘキサノンパーオキシド1質量部、ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート[CH2=CHCOO(CH2CH2O)301225)90質量部およびメタリルスルホン酸10質量部を、脱イオン水350質量部を含む反応器に加え、撹拌しながら窒素置換を行った。ついで昇温し40℃に到達した時点で、ロンガリット0.8質量部を含む水溶液50質量部を添加することにより第一段目重合を開始した。2時間そのまま撹拌を続けた。
(2) 次いで、第二段目の重合として、上記(1)で得られた実質的に均一な水系溶液に、アクリロニトリル200部質量部および脱イオン水550質量部を加え、再び窒素置換した後、温度を60℃まで上げて2時間撹拌を続けた。重合相は重合の進行とともに漸次懸濁相に移行した。濾過、水洗、脱水して白色のポリマーを得た。全重合率は80%、ポリマーの比粘度は0.21、NMR測定によりラウロキシポリエチレングリコールアクリレートはポリマー中に33.5質量%含有されていた。
【0061】
《参考例3》[ドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・酸化亜鉛(平均粒径20nm)複合物の調製]
ドデシルベンゼンスルホン酸(和光純薬製)(ドーパント)と酸化亜鉛(石原産業株式会社製「EZO−50」、一次粒子の平均粒径=20nm))を1.0:1.0のモル比で混合し、乳鉢で十分に混ぜ合わせた後、ブラベンダーを使用して150℃で5分間にわたって100rpmの回転速度で混練して、ペースト状のドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・酸化亜鉛(平均粒径20nm)複合物[以下これを「ドーパント・金属化合物複合物(DM−1)」という]を調製した。
【0062】
《参考例4》[ドーパント(パラトルエンスルホン酸)・酸化亜鉛(平均粒径20nm)複合物の調製]
ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸の代わりにパラトルエンスルホン酸(アルドリッチ社製)を用いて、パラトルエンスルホン酸:酸化亜鉛=1.0:1.0のモル比で混合し、以下参考例3と同様の操作を行って、ペースト状のドーパント(パラトルエンスルホン酸)・酸化亜鉛(20nm)複合物[以下これを「ドーパント・金属化合物複合物(DM−2)」という]を調製した。
【0063】
《参考例5》[ドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・酸化亜鉛(平均粒径6μm)複合物の調製]
酸化亜鉛(一次粒子の平均粒径=20nm)の代わりに酸化亜鉛(ハイスイテック社製「PZ」、一次粒子の平均粒径=6μm)を用いて、ドデシルベンゼンスルホン酸:酸化亜鉛(平均粒径6μm)=1.0:1.0のモル比で混合し、以下参考例3と同様の操作を行って、ペースト状のドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・酸化亜鉛(6μm)複合物[以下これを「ドーパント・金属化合物複合物(DM−3)」という]を調製した。
【0064】
《参考例6》[ドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・炭酸カルシウム(平均粒径50nm)複合物の調製]
酸化亜鉛の代わりに炭酸カルシウム(白石工業社製「白艶華U」、一次粒子の平均粒径=50nm)を用いて、ドデシルベンゼンスルホン酸:炭酸カルシウム=1.0:1.0のモル比で混合し、以下参考例3と同様の操作を行って、ペースト状のドーパント(ドデシルベンゼンスルホン酸)・炭酸カルシウム(50nm)複合物[以下これを「ドーパント・金属化合物複合物(DM−4)」という]を調製した。
【0065】
上記の参考例3〜6で調製したドーパント・金属化合物複合物(DM−1)〜(DM−4)の内容を整理すると、以下の表1のとおりである。
【0066】
【表1】

【0067】
《参考例7》[ポリアニリン塩複合物からのポリアニリン塩(A−0)の抽出および脱ドープしたポリアニリン(A−1)の調製]
(1)ポリアニリン塩複合物からのポリアニリン塩(A−0)の抽出:
ポリアニリン塩複合物(PANIPOL製「CXM」)500gをトルエン2Lに溶解させた溶解液を、エタノール中に徐々に滴下し、得られた沈殿物を回収した。この沈殿物を真空化で乾燥したところ、ポリアニリン塩(A−0)100gと金属化合物400gが得られた。これにより得られた金属化合物を上記した方法で同定(分析)分析したところ、亜鉛化合物であることが判明した。また、当該亜鉛化合物の粒径を、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を使用して前記した方法で測定したところ(測定した亜鉛化合物粒子の数=約500個)、全ての粒子の粒径が1μmよりも大きく、1μm以下のものは観察されなかった。
(2)脱ドープしたポリアニリン(A−1)の調製:
上記(1)で得られたポリアニリン塩(A−0)を3%アンモニア水溶液10Lと共に室温で2時間攪拌した。得られた沈殿物を濾過して回収し、蒸留水で洗浄液のpHが7〜8になるまで洗浄した。次に、該沈殿物をメタノールで洗浄液が無色になるまで洗浄した後、更にメタノールおよびエチルエーテルで洗浄した。得られた物質を真空化で乾燥して、脱ドープしたポリアニリン(A−1)(ドーパントを除いたポリアニリン)50gを得た。
【0068】
《参考例8》[ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)の調製]
前記の参考例7で得られた脱ドープしたポリアニリン(A−1)に、ポリアニリン(A−1)中の窒素原子1モルに対して0.5モルの割合でドデシルベンゼンスルホン酸(和光純薬製)をドーパントとして加え、乳鉢で十分に混ぜ合わせた後、ブラベンダーを用いて、150℃で、5分間にわたって100rpmの回転速度で混練してドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるペースト状のポリアニリン塩(A−2a)を調製した。
【0069】
《参考例9》[ドーピングによるポリアニリン塩(A−2b)の調製]
前記の参考例7で得られた脱ドープしたポリアニリン(A−1)に、ポリアニリン(A−1)中の窒素原子1モルに対して0.5モルの割合でパラトルエンスルホン酸(アルドリッチ社製)をドーパントとして加え、以後参考例8と同様の操作を行って、パラトルエンスルホン酸ドーピングによるペースト状のポリアニリン塩(A−2b)を調製した。
【0070】
《参考例10》[ドーピングによるポリアニリン塩(A−2c)の調製]
前記の参考例7で得られた脱ドープしたポリアニリン(A−1)に、ポリアニリン(A−1)中の窒素原子1モルに対して0.5モルの割合で硫酸(濃度99.5%)をドーパントとして加え、以後参考例8と同様の操作を行って、硫酸ドーピングによるペースト状のポリアニリン塩(A−2c)を調製した。
【0071】
《参考例11》[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)の調製]
参考例8で得られたドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)に対して、参考例3で調製したドーパント・金属化合物複合物(DM−1)[ドデシルベンゼンスルホン酸・酸化亜鉛(平均粒径20nm)複合物]を、ポリアニリン塩(A−2a)中の窒素原子とドーパント・金属化合物複合物(DM−1)中の金属化合物(酸化亜鉛)とのモル比が1.0:1.0になる量で加えて、乳鉢で十分に混ぜ合わせた後、ブラベンダーを使用して150℃で5分間にわたり100rpmの回転速度で混練して、酸化亜鉛(平均粒径20nm)を含有するペースト状のポリアニリン塩複合物[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)]を調製した。
【0072】
《参考例12》[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3b)の調製]
参考例9で得られたパラトルエンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2b)に対して、参考例4で調製したドーパント・金属化合物複合物(DM−2)[パラトルエンスルホン酸・酸化亜鉛(平均粒径20nm)複合物]を、ポリアニリン塩(A−2b)中の窒素原子とドーパント・金属化合物複合物(DM−2)中の金属化合物(酸化亜鉛)とのモル比が1.0:1.0になる量で加え、参考例11と同様に混合および混練して、酸化亜鉛(平均粒径20nm)を含有するペースト状のポリアニリン塩複合物[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3b)]を調製した。
【0073】
《参考例13》[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3c)の調製]
参考例8で得られたドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)に対して、参考例5で調製したドーパント・金属化合物複合物(DM−3)[ドデシルベンゼンスルホン酸・酸化亜鉛(平均粒径6μm)複合物]を、ポリアニリン塩(A−2a)中の窒素原子とドーパント・金属化合物複合物(DM−3)中の金属化合物(酸化亜鉛)とのモル比が1.0:1.0になる量で加え、参考例11と同様に混合および混練して、酸化亜鉛(平均粒径6μm)を含有するペースト状のポリアニリン塩複合物[金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3c)]を調製した。
【0074】
上記の参考例7〜13で得られた脱ドープしたポリアニリン(A−1)、ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)〜(A−2c)、金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)〜(A−3c)の内容を、上記した方法で求めた溶解度パラメータ(δ)と共に下記の表2に示す。
また、以下の実施例または比較例で用いている市販のポリアニリン塩分散液(日産化学社製「NX−BOO1X」)中に含まれているポリアニリン塩および市販のポリピロール分散液(日本カトリット社製)中に含まれているポリピロールについても、上記した方法で求めた溶解度パラメータ(δ)を下記の表2に示す。
【0075】
さらに、上記の参考例1で得られたポリメチルメタクリレート−ポリn−ブチルアクリレート−ポリメチルメタクリレートよりなるトリブロックコポリマーにおける各ポリマーブロックを構成するポリマー(ポリメチルメタクリレートとポリn−ブチルアクリレート)、参考例2で得られたポリ(ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート)−ポリアクリロニトリルよりなるジブロックコポリマーにおけるポリアクリロニトリルポリマー部分、および以下の実施例または比較例で用いているその他のポリマー(ブロックコポリマーにあってはポリマーブロックを構成するポリマー部分)について、上記した方法で求めた溶解度パラメータを下記の表3に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
《実施例1》
(1) 参考例8で得られたドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)40質量部に、参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマー60質量部を加え、ブラベンダーを使用して150℃で150rpmの回転速度で1分間混練して、導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、熱プレス成形機(神藤金属工業製「SF−57」)を使用して、温度180℃、プレス圧49MPa(50kgf/cm2)、加熱時間1.5分、保圧時間0.5分の条件で、厚さ75μmのフイルムを製造した。
(3) 上記(2)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0079】
《比較例1》
(1) 参考例8で得られたドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)40質量部に、ポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「GH−1000S」)60質量部を加えて、実施例1の(1)と同様の操作を行って導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0080】
《比較例2》
(1) 参考例8で得られたドデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)20質量部に、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー(株式会社クラレ製「S2000」)(以下「PS−P(Et/Pr)−PS」ということがある)80質量部を加えて、実施例1の(1)と同様の操作を行って導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表4に示すとおりであった。
【0081】
【表4】

【0082】
上記の表4の結果にみるように、実施例1の導電性ポリマー組成物は、π電子共役ポリマーであるデシルベンゼンスルホン酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2a)に、当該ポリアニリン塩(A−2a)の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満であるポリメチルメタクリレートブロックを有するブロックコポリマーを配合したことにより、ポリアニリン塩(A−2a)に非ブロックコポリマーであるポリメチルメタクリレートを配合した比較例1の導電性ポリマー組成物、およびポリアニリン塩(A−2a)にポリアニリン塩(A−2a)の溶解度パラメータとの差の絶対値が2.5未満であるポリマーブロックを持たないポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマーを配合した比較例2の導電性ポリマー組成物に比べて、表面抵抗値が小さく、導電性に優れている。
【0083】
《実施例2および3》
(1) 参考例11で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)に、参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマーを下記の表5に記載する割合で加えて、ブラベンダーを使用して150℃で150rpmの回転速度で1分間混練して、導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0084】
《実施例4および5》
(1) 参考例11で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)に、参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマーおよびポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「GH−1000S」)を下記の表5に記載する割合で加えて、実施例2および3の(1)と同様の操作を行って導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0085】
《比較例3》
(1) 参考例11で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3a)に、ポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「GH−1000S」)を下記の表5に記載する割合で加えて、実施例2および3の(1)と同様の操作を行って導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0086】
《比較例4》
(1) 参考例13で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3c)に、参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマーを下記の表5に記載する割合で加えて、実施例2および3の(1)と同様の操作を行って導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表5に示すとおりであった。
【0087】
【表5】

【0088】
《実施例6》
(1) 参考例12で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3b)20質量部に、参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマー80質量部を加えて、ブラベンダーを使用して150℃で150rpmの回転速度で1分間混練して、導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0089】
《比較例5》
(1) 参考例12で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−3b)20質量部に、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー[(株)クラレ製「S200S」)80質量部を加えて、実施例6の(1)と同様の操作を行って、導電性ポリマー組成物を製造した。
(2) 上記(1)で得られた導電性ポリマー組成物を用いて、実施例1の(2)と同様にして厚さ75μmのフイルムを製造した後、当該フイルムから縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0090】
《比較例6》
(1) 参考例9で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−2b)10質量部にポリスチレン(PA JAPAN製「HF77」)90質量部を加えた混合物をトルエンに室温で溶解して、固形分濃度5質量%の溶液を調製し、当該溶液をペトリデイッシュに注いだ後、室温で大気圧下に1週間放置してトルエンを蒸発させ、次いで室温(25℃)で真空下に一晩放置してトルエンを完全に除去して、厚さ350μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0091】
《比較例7》
(1) 参考例9で得られた金属化合物含有ポリアニリン塩複合物(A−2b)10質量部にポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)−ポリスチレントリブロックコポリマー[(株)クラレ製「S200S」)90質量部を加えた混合物を用いて、比較例6の(1)と同様の操作を行って、厚さ350μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表6に示すとおりであった。
【0092】
【表6】

【0093】
《実施例7》
(1) ポリアニリン塩分散液(日産化学社製「NX−BOO1X」、ドデシルベンゼンスルホン酸ドーピング品、ポリアニリン塩濃度=10質量%)から抽出したポリアニリン塩10質量部に参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマー90質量部を加えて、ポリアニリン塩:前記トリブロックコポリマーの質量比が10:90である混合物を調製し、その混合物5質量部にトルエン95質量部を加えて室温で溶解して固形分濃度5質量%の溶液を調製し、当該溶液をペトリデイッシュに注いだ後、室温で、大気圧下に1週間放置してトルエンを蒸発させ、次いで室温(25℃)で真空下に一晩放置してトルエンを完全に除去して、厚さ350μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0094】
《比較例8》
(1) 実施例7で使用したのと同じポリアニリン塩分散液(日産化学社製「NX−BOO1X」)から抽出したポリアニリン塩10質量部に、ポリメチルメタクリレート(株式会社クラレ製「GH−1000S」)90質量部を加えて、ポリアニリン塩:ポリメチルメタクリレートの質量比が10:90である混合物を調製し、その混合物5質量部にトルエン95質量部を加えて室温で溶解して固形分濃度5質量%の溶液を調製し、当該溶液をペトリデイッシュに注いだ後、室温で、大気圧下に1週間放置してトルエンを蒸発させ、次いで室温(25℃)で真空下に一晩放置してトルエンを完全に除去して、厚さ350μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、下記の表7に示すとおりであった。
【0095】
【表7】

【0096】
《実施例8》
(1) ポリピロール分散液[日本カートリット社製、ポリピロール濃度=10質量%、ポリピロールの溶解度パラメータ(δ)=27.0(J/cm3)1/2]から抽出したポリピロール1質量部に、参考例2で得られたポリ(ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート)−ポリアクリロニトリルよりなるジブロックコポリマー[ジブロックコポリマー中のポリ(ラウロキシポリエチレングリコールアクリレート部分の溶解度パラメータ(δ)=18.9(J/cm3)1/2、ポリアクリロニトリル部分の溶解度パラメータ(δ)=28.6(J/cm3)1/2]99質量部を加えて、ポリピロール:前記ジブロックコポリマーの質量比が1:99の混合物を調製し、その混合物5質量部にメチルエチルケトン95質量部を加えて室温で溶解して固形分濃度5質量%の溶液を調製し、当該溶液をペトリデイッシュに注いだ後、室温で、大気圧下に1週間放置してメチルエチルケトンを蒸発させ、次いで室温(25℃)で真空下に一晩放置してメチルエチルケトンを完全に除去して、厚さ420μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、導電性ポリマー組成物中のポリピロールの濃度が1質量%と低いにも拘わらず、1×106Ω/□というかなり低い値であり、導電性が良好であった。
【0097】
《比較例9》
(1) 参考例10で得られた硫酸ドーピングによるポリアニリン塩(A−2c)10質量部に参考例1で得られたPMMA−PBA−PMMAトリブロックコポリマー90質量部を混合して加熱混練しようとしたが非熱可塑性であったので、両者の前記混合物5質量部にトルエン95質量部を加えて室温で溶解して、固形分濃度5質量%の溶液を調製し、当該溶液をペトリデイッシュに注いだ後、室温で、大気圧下に1週間放置してトルエンを蒸発させ、次いで室温(25℃)で真空下に一晩放置してトルエンを完全に除去して、厚さ420μmのフイルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたフイルムから、縦×横字=100mm×100mmの試験片を採取して、表面抵抗値を上記した方法で測定したところ、測定可能範囲外(>2×106 Ω/□)であった。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の導電性ポリマー組成物は、π電子共役ポリマーの含有量が少ない場合であっても良好な導電性を示し浸出しきい値が低く、しかも機械的強度、耐久性などの特性にも優れており、特にπ電子共役ポリマー(A)として可塑化効果を有するドーパントでドーピングしたポリアニリン系ポリマーを含有する本発明の導電性ポリマー組成物は前記した特性と併せて、溶融成形加工性にも優れているので、それらの特性を活かして、静電気放電、静電気消失、電磁波シールドなどの制電機能を有する成形体、光透過性と通電性の両方の機能を有する透明導電膜などの成形体などに有効に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を含有する導電性ポリマー組成物であって、π電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータと、ブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であることを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項2】
ブロックコポリマー(B)を構成する複数のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとπ電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータの差の絶対値が2.5未満であり、ブロックコポリマー(B)を構成する前記とは異なる他のポリマーブロックのうちの少なくとも1つのポリマーブロックの溶解度パラメータとπ電子共役ポリマー(A)の溶解度パラメータの差の絶対値が2.5以上である請求項1に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項3】
π電子共役ポリマー(A)およびブロックコポリマー(B)を、(A):(B)=1:99〜2:1の質量比で含有する請求項1または2に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項4】
π電子共役ポリマー(A)が、可塑化効果を有するドーパントによりドーピングされているポリアニリン系ポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項5】
π電子共役ポリマー(A)がポリアニリン系ポリマーであり、ブロックコポリマー(B)が、ポリアニリン系ポリマーとの溶解度パラメータ差の絶対値が2.5未満であるアルキルメタクリレート系ポリマーブロックを有するブロックコポリマーである請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項6】
可塑化効果を有するドーパントによりドーピングされているポリアニリン系ポリマーおよびポリメチルメタクリレートブロックとポリn−ブチルアクリレートブロックを有するブロックコポリマーを含有することを特徴とする導電性ポリマー組成物。
【請求項7】
一次粒子の平均粒径が1μm以下である金属酸化物を含有する請求項4〜6のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項8】
金属酸化物が酸化亜鉛である請求項7に記載の導電性ポリマー組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性ポリマー組成物からなる成形体。