説明

導電性ローラー

【目的】 電子写真機もしくはプリンターが有する感光体に接触させて使用する導電性ローラーの表面層をローラー主材料の弾性を損わないものとすることで感光体との接触、従動回転を安定化させる。
【構成】 電子写真機またはプリンターが有する感光体に接触させて使用する導電性ローラーの少なくとも表面層が(A)分子中に少なくとも2個のヒドロキシリル基を有する硬化剤、(B)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物の硬化物からなる導電性ローラー。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、たとえば静電気力を利用して複写や印字を行なう電子複写機やプリンターが有する感光体に接触させて使用する導電性ローラーに関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、電子複写機では、原稿像に対応した静電潜像が形成される感光体にトナーを静電気力で吸引・吸着させ、給送されてくる用紙にそのトナーを転写させ、ついで用紙に担持されたトナーを熱溶融させることによって用紙に原稿像が複写されるようになっている。
【0003】すなわち、前記電子複写機では、■帯電、■露光、■現像、■転写、■定着、■清掃、■除電のプロセスをへることによって複写するように構成されている。とくに帯電、現像、転写、清掃の各プロセスに用いられるローラーは感光体に接触、従動回転させて使用されるため、ローラーには適切な弾性が要求される。
【0004】そのため、前記ローラーの製造には、導電性のポリウレタンフォーム、クロロプレンゴム、EPラバー、シリコーン樹脂が多く用いられている。
【0005】ところが、前記のごとき用途に前記のごとき材料からなるローラーを用いたばあい、ローラーに含まれている未反応モノマー、オリゴマー、その他の非反応性添加物などの移行性物質が感光体に移行し、汚染し、結果として画像が不鮮明になる。
【0006】前記のごとき問題を解決するため、ローラーの表面をナイロン系、アクリル系、フッ素樹脂系の材料でコーティングしたり、熱収縮チューブでカバーするなどして使用されている。
【0007】また、ローラーの比抵抗をコントロールするために同様に、ローラーの表面を半導電性の材料でコーティングして用いられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ナイロン系、アクリル系、フッ素樹脂系の材料は本質的に剛直であり、主材料であるポリウレタンフォーム、クロロプレンゴム、EPラバー、シリコーン樹脂の弾性を充分に活かせないため、安定した接触、従動回転がえられず、結果として安定した画像がえられないという問題を有している。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前記のごとき従来技術における問題を解決するためになされたものであり、電子写真機またはプリンターが有する感光体に接触させて使用する導電性ローラーにおいて、少なくとも表面層が(A)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(B)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物の硬化物からなる導電性ローラー(請求項1)、および請求項1記載の組成物に、さらに(D)導電性付与剤を(B)成分100部(重量部、以下同様)に対して0.1〜50部加えてなる組成物の硬化物からなる請求項1記載の導電性ローラー(請求項2)に関する。
【0010】
【作用】本発明の導電性ローラーの少なくとも表面層が(A)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(B)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物の硬化物から形成されているため、たとえ導電性ローラーの表面層以外に未反応モノマー、オリゴマー、その他の非反応性添加物などの移行性物質が含まれていても、感光体への移行が防止され、かつ表面層が剛直でない導電性ローラーにすることができる。
【0011】
【実施例】本発明の導電性ローラーの少なくとも表面層は、(A)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(B)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物(以下、特定の組成物ともいう)から製造されている。
【0012】このように、本発明の導電性ローラーの少なくとも表面層を特定の組成物から形成しているのは、特定の組成物の硬化物が本質的に柔軟であるため、感光体との接触、従動回転を安定にすることができ、また、(B)成分の数平均分子量を500〜3000とすることで硬化物自身のタックがほとんどないレベルにできるので、感光体上の残存トナーなどの付着が少なく、それによる画像不良を低減することができるためである。
【0013】前記導電性ローラーの少なくとも表面層が(A)〜(C)成分からなる組成物から製造されているとは、導電性ローラーの弾性体層の表面に特定の組成物の層を形成するまたは弾性体層自体を特定の組成物から形成し、表面も特定の組成物から形成されるようにすることをいい、たとえばウレタンフォーム、クロロプレンゴム、EPラバー、シリコーン樹脂などから形成されたローラー表面に、前記特定の組成物を用いてたとえば厚さ1〜500μm、好ましくは3〜200μmのコーティング層を設ける、または前記特定の組成物から製造した前記厚さのチューブ状物をローラー上に被覆することにより、ローラー表面に特定の組成物からの硬化物層を形成してもよく、また、特定の組成物がローラーの主材として用いられ、弾性体層が形成されているばあいにはそのままでもよく、さらに、特定の組成物からの弾性体層上に前記のようにさらにコーティング層を設けたり、チューブ状物で被覆したりしてもよいことを意味する。
【0014】なお、表面層を特定の組成物から形成するばあいの弾性体層として、たとえば(a)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤(b)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が3000をこえ50000以下の化合物および(c)ヒドロシリル化触媒からなる組成物を用いてもよいことは当然のことであり、このばあいには弾性体層がウレタンフォームなどから形成されているばあいよりも表面層の接着強度が向上する。また、弾性体層を形成する主材のポリオキシプロピレン系重合体の数平均分子量を、要求される機械特性、加工性にあわせて任意のものを選択することができる。
【0015】本発明における特定の組成物に使用する(A)成分である分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤は、(B)成分である分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物の硬化剤として作用する成分である。
【0016】(A)成分が分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜15個、さらに好ましくは3〜12個のヒドロシリル基を有するため、それぞれのヒドロシリル基が(A)成分の分子中に存在するアルケニル基と反応して硬化する。前記ヒドロシリル基の個数が2個より少ないと、本発明の組成物をヒドロシリル化反応により硬化させるばあいの硬化速度が遅くなり、硬化不良を起こすばあいが多くなる。また、該ヒドロシリル基の個数が15個より多くなると、(A)成分である硬化剤の安定性、したがって特定の組成物の安定性がわるくなり、そのうえ硬化後も多量のヒドロシリル基が硬化物中に残存し、ボイドやクラックの原因となる。
【0017】前記ヒドロシリル基を1個有するとはSiHを1個有することをいい、SiH2 のばあいにはヒドロシリル基を2個有することになるが、Siに結合するHは、異なるSiに結合する方が硬化性がよくなり、また、ゴム弾性の点からも好ましい。
【0018】(A)成分の分子量は要すれば使用される後述する(D)成分である導電性付与剤の分散性やローラー加工性などの点から数平均分子量で30,000以下が好ましく、2,000〜20,000、さらには3,000〜15,000であるのがより好ましい。
【0019】前記のごとき(A)成分の構造についてとくに制限はないが、たとえば一般式(1):R1 a (1)
(式中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基、R1 は炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基、aは1〜4から選ばれる整数、ただし、Xに1個のヒドロシリル基しか含まれないばあい、aは2以上である)で示されるヒドロシリル基を含有する硬化剤が具体例としてあげられる。
【0020】一般式(1)中、Xは少なくとも1個のヒドロシリル基を含む基を表わすが、その具体例としては、たとえば−SiHn (CH3 3-n 、−SiHn (C2 5 3-n 、−SiHn (C6 5 3-n (n=1〜3)、−SiH2 (C6 13)などのケイ素原子を1個だけ含有するヒドロシリル基、
【0021】
【化1】


【0022】などのケイ素原子を2個以上含むヒドロシリル基、
【0023】
【化2】


【0024】
【化3】


【0025】
【化4】


【0026】などで示される鎖状、枝分かれ状、環状の各種の多価ハイドロジエンシロキサンより誘導されたヒドロシリル基などがあげられる。
【0027】前述の各種のヒドロシリル基のうち、(A)成分であるヒドロシリル基含有硬化剤が他の有機重合体との相溶性を損う可能性が少ないという点から、ヒドロシリル基を含有する部分(通常分子量が大きいばあい、オルガノシロキサンの形で含まれている)の分子量が500以下であるのが好ましく、さらにヒドロシリル基の反応性も考慮すれば、下記のものが好ましい。
【0028】
【化5】


【0029】一般式(1)中、R1 は炭素数2〜150の1〜4価の炭化水素基や、その主鎖の炭素のいくつかを酸素で置換することでえらえるポリオキシアルキレン基(たとえばポリオキシプロピレン基など)などを表わす。
【0030】R1 が前記炭化水素基のばあいの具体例としては、
【0031】
【化6】


【0032】
【化7】


【0033】など、さらには、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレンなどのような炭素数2〜6のオレフィン系化合物を主モノマーとして重合させたもので、結合手を1〜4個有するもの、ブタジエン、イソプレンなどのようなジエン系化合物を単独重合させたり、前記オレフィン系化合物とジエン系化合物とを共重合させたりしたのち水素添加したもので、結合手を1〜4個有するものなどがあげられる。
【0034】また、前記炭化水素基の主鎖中の炭素のいくつかを酸素で置換することでえられるポリオキシアルキレン基の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1−ブテングリコール、イソブチレングリコールなどの縮合物で結合手を1〜4個有するものなどがあげられる。
【0035】(A)成分であるヒドロシリル基含有硬化剤の製法についてはとくに制限はなく、任意の方法で製造すればよい。
【0036】たとえば(i)分子内にSiCl基をもつ化合物をLiAlH4 、NaBH4などの還元剤で処理して該化合物中のSiCl基をSiH基に還元する方法、(ii)分子内にある官能基X1 をもつ化合物と分子内に前記官能基X1 と反応する官能基Y1 およびヒドロシリル基の両者を有する化合物とを反応させる方法、(iii)アルケニル基を含有する化合物に対して少なくとも2個のヒドロシリル基をもつポリヒドロシラン化合物を選択ヒドロシリル化することにより、反応後もヒドロシリル基を分子中に残存させる方法などが例示される。
【0037】前記方法のうち、(iii)の方法が製造工程が一般に簡便なため好適に用いることができる。このばあい、一部のポリヒドロシラン化合物のヒドロシリル基の2個以上がアルケニル基を含有する化合物のアルケニル基と反応して分子量が増大することあるが、このように分子量が増大したものを含むものを(A)成分として用いても何ら差しつかえない。
【0038】本発明においては、前記(A)成分とともに(B)成分である分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物が使用される。
【0039】前記(B)成分は、前記(A)成分とヒドロシリル化反応して硬化する成分であり、分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するため、ヒドロシリル化反応が起こって高分子状となり、硬化する。
【0040】(B)成分に含まれるアルケニル基の数は(A)成分とヒドロシリル化反応するという点から少なくとも2個必要であるが、ゴム弾性の点からは両末端にアルケニル基が存在するのが好ましい。
【0041】(B)成分の主鎖を構成する繰返し単位はオキシプロピレン単位であるが、これだと(D)成分である導電性付与剤を加えなくても比抵抗が108 〜109 Ω・cmとなるため好ましい。
【0042】このばあい、主鎖は、出発物質として活性水素を2個以上有する化合物、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノール系化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストールなどを用い、C2 〜C4 のアルキレンオキシドを重合させることにより製造される。このようにして製造される主鎖を構成する重合体の具体例としては、たとえばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイドなどがあげられる。
【0043】アルケニル基を(B)成分の主鎖となるポリオキシプロピレン系重合体に導入する方法については、種々提案されている方法を用いることができるが、重合後にアルケニル基を導入する方法と重合中にアルケニル基を導入する方法に大別することができる。
【0044】重合後にアルケニル基を導入する方法としては、たとえば、末端、主鎖、あるいは側鎖の水酸基を−ONaや−OKなどの基にしたのち一般式(2):CH2 =CH−R2 −Y (2)
(式中、Yは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、R2 は−R3 −、−R3 −OCO−または−R3 −CO−(R3 は炭素数1〜20の2価の炭化水素基で、好ましい具体例としてはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基があげられる)で示される2価の有機基で、
【0045】
【化8】


【0046】(R4 は炭素数1〜10の炭化水素基)より選ばれた2価の基がとくに好ましい)で示される有機ハロゲン化合物を反応させることにより、末端アルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体が製造される。
【0047】本発明においては前記(A)成分、(B)成分とともに(C)成分であるヒドロシリル化触媒が使用される。
【0048】(C)成分であるヒドロシリル化触媒についてはとくに制限はなく、その具体例としては、たとえば白金、アルミナやシリカ、カーボンブラックなどの担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンなどの錯体、白金/オレフィン錯体、白金/ホスファイト錯体などがあげられる。
【0049】本発明における特定の組成物は、前記(A)〜(C)成分から調製される。
【0050】(A)成分および(B)成分の使用割合は、(B)成分中のアルケニル基1モル当り(A)成分中のヒドロシリル基が0.2〜5.0モル、さらには0.4〜2.5モルになるように使用するのがゴム弾性の点から好ましい。
【0051】また、(C)成分であるヒドロシリル化触媒の使用量は、(B)成分中のアルケニル基1モルに対して10-1〜10-4モルの範囲で用いられる。
【0052】前記のごとき特定の組成物には、要すれば導電性を付与するための導電性付与剤((D)成分)や貯蔵安定性改良剤((E)成分)、さらには加工性やコストを改善するための充填剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料などが添加される。
【0053】前記導電性付与剤の例としては、たとえばカーボンブラックや金属微粉末、さらには第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基などを含有する有機化合物もしくは重合体、エーテルエステルアミドもしくはエーテルアミドイミド重合体、エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどで代表される導電性ユニットを有する化合物または高分子化合物などの有機帯電防止剤などがあげられる。
【0054】前記カーボンブラックとしては、たとえば平均粒径15〜19mμ程度のものが好ましく使用され、具体例としては熱分解法でえられるECカーボンなどがあげられる。
【0055】また、前記金属微粉末としては、たとえば平均粒径0.1μm〜3mμ程度の金属粉末が好ましく使用され、具体例としてはNiパウダーなどがあげられる。
【0056】前記第4級アンモニウム塩基(たとえば
【0057】
【化9】


【0058】などの基)、カルボン酸基(−COOH基の他、−COONa基、−COOK基のごときカルボン酸塩基も含まれる)、スルホン酸基(−SO3 H基の他、−SO3 Na基、−SO3 K基のごときスルホン酸塩基も含まれる)、硫酸エステル基(−OSO3 Na、−OSO3 Kなどの基)、リン酸エステル基(−OPO32 などの基)を含有する有機化合物もしくは重合体としては、たとえば第4級アンモニウムクロライド、第4級アンモニウムサルフェート、第4級アンモニウムナイトレートなどの第4級アンモニウム塩基含有有機化合物、ポリビニルベンジル型カチオンやポリアクリル酸型カチオンのような第4級アンモニウム塩基含有重合体、高級脂肪酸のアルカリ金属塩のごときカルボン酸基含有有機化合物、アイオノマーのごときカルボン酸基含有重合体、アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネートなどのスルホン酸基含有有機化合物、ポリビニルベンジル型スルホネート、ポリアクリル酸型スルホネートなどのスルホン酸基含有重合体、アルキルサルフェートのごとき硫酸エステル基含有有機化合物、アルキルホスフェートなどのリン酸エステル基含有有機化合物などがあげられる。
【0059】前記化合物以外の、たとえばアルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型、アルキルアラニン型のごとき両性系の有機帯電防止剤や、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのごとき非イオン系の有機帯電防止剤なども使用しうる。
【0060】前記エーテルエステルアミドもしくはエーテルアミドイミド重合体とは、重合体中にエーテル結合とエステルアミド結合もしくはエーテル結合エステルアミド結合で表わされる基を有し、重合体全体として導電性を付与するものである。
【0061】また、前記エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体とは、エピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとエチレンオキサイドとを共重合されたものである。
【0062】さらに、前記メトキシポリエチレングリコールアクリレートとは、メトキシポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステルの重合体のことである。
【0063】前記有機帯電防止剤が重合体のばあい、液状であるのが望ましいので、平均分子量は液状になる範囲のものが好ましい。
【0064】(A)〜(C)成分からなる特定の組成物に、(D)成分である導電性を付与する化合物を加えるばあいの添加量としては、(B)成分に対して0.1〜50%(重量%、以下同様)、さらには0.2〜20%であり、硬化物の比抵抗が103 〜1010Ω・cmになるように加えられる。
【0065】(D)成分としてカーボンブラックや金属粉末を用いるばあいには比抵抗は主として103 〜108 Ω・cmにされる。
【0066】また、(A)〜(C)成分からなる特定の組成物に前記のごとき有機帯電防止剤を加えるばあいの添加量としては、(B)成分に対して約1〜40%、さらには5〜25%である。このばあいには、比抵抗を107 〜1010Ω・cmにするのに主として用いられる。
【0067】前記有機帯電防止剤としては、たとえば第4級アンモニウム塩基、カルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有するアクリル系オリゴマー、マレイミド共重合体、アクリルイミド共重合体、あるいはポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、エチレンオキサイド−エピハロヒドリン共重合体、メトキシポリエチレングリコールアクリレートなどのオリゴマーが好ましく用いられる。
【0068】前記貯蔵安定性改良剤の例としては、たとえばたとえば脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、チッ素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物などがあげられる。具体例としては、たとえばベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、ジメチルアセチレンジカルボキシレート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン、キノリンなどがあげられるが、これらに限定されるわけではない。これらのなかでは、ポットライフおよび速硬化性の両立という点から、チアゾール、ベンゾチアゾール、ジメチルマレートがとくに好ましい。
【0069】前記貯蔵安定性改良剤は単独で用いてもよく、また2種以上併合してもよい。
【0070】(E)成分の使用量は、(A)成分および(B)成分に均一に分散するかぎりほぼ任意に選ぶことができるが、(A)成分のSi−H基含有化合物1モルに対し、10-6〜10-1モルの範囲で用いるのが好ましい。前記使用量が10-6モル未満では(A)成分の貯蔵安定性が充分に改良されず、また10-1モルを超えると硬化性が低下することがある。
【0071】本発明の導電性ローラーは、前記のごとき(A)〜(C)成分、さらに要すれば使用される(D)成分、(E)成分などを含有する特定の組成物を、前述のごとく、ポリウレタンフォーム、クロロプレンゴム、EPラバー、シリコーン樹脂などの本発明における特定の組成物以外のものから形成された弾性体層を有するローラー上にコーティングし硬化させることにより、または特定の組成物から製造したチューブ状物を前記弾性体層を有するローラー上に被覆することにより、さらには特定の組成物を用いてシャフト上に弾性体層を形成したローラーを製造することにより、また該ローラー表面上にさらに特定の組成物からの被覆層を設けることによりえられる。
【0072】前記のようにシャフト上に弾性体層を形成してローラーを製造するばあい、たとえば中心にSUS製や鉄製などのシャフトを設置し、特定の組成物を注型、射出、押出成形などし、30〜150℃、好ましくは20〜1分間程度加熱硬化させることによって、電子複写機またはプリンターに用いる導電性ローラーに成形される。半硬化後、後硬化させてもよい。
【0073】このようにして製造される本発明の導電性ローラーの比抵抗としては108 〜1010Ω・cmのものが好ましく、(D)成分の量を調整することにより調節される。
【0074】つぎに本発明の導電性ローラーを実施例に基づいて説明する。
【0075】実施例1両末端に水酸基を有するポリオキシプロピレンにアリルクロライドを反応させてえられたアリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量3,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に、環状ポリシロキサン(信越化学工業(株)製のLS3500、1分子当りのヒドロシリル基含有8個)10部を反応させ、末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入したポリオキシプロピレン(A−1)をえた。
【0076】アリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量3,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に対し、末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入した前記ポリオキシプロピレン(A−1)9部、塩化白金酸5×10-6部を加えて、インジェクション法により6mmφのSUS製のシャフトを中心に含む12mmφのローラーを製造した。硬化は成形後120℃で3分間加熱することにより行なった。
【0077】金型から取り出したのち、アリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量1,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に対し、末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入した前記ポリオキシプロピレン(A−1)9部、塩化白金酸5×10-6部からなる組成物をロールコーター法にて前記ローラー表面にコーティングして厚さ20μmの表面層を形成した。
【0078】えられたローラーのJIS A法による硬度(JIS A型硬度計を押しあてたときの硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0079】実施例2アリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量1,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に対し、実施例1で用いたのと同じ末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入したポリオキシプロピレン(A−1)9部、塩化白金酸5×10-6部を加えて、インジェクション法により6mmφのSUS製のシャフトを中心に含む12mmφのローラーを製造した。硬化は成形後120℃で3分間加熱することにより行なった。
【0080】えられたローラーのJIS A法による硬度(JIS A型硬度計を押しあてたときの硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0081】実施例3シリコーン系樹脂(信越化学工業(株)製のKE1261−U)を押出法により6mmφのSUS製のシャフト上に被覆形成し、12mmφのローラーを製造した。
【0082】アリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量1,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に対し、実施例1で用いたのと同じ末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入したポリオキシプロピレン(A−1)9部、塩化白金酸5×10-6部を加えて調製した組成物を、前記ローラーの表面に厚さが50μmになるように被覆した。硬化は成形後120℃で3分間加熱することにより行なった。
【0083】えられたローラーのJIS A法による硬度(JIS A型硬度計を押しあてたときの硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0084】比較例1アリル末端ポリオキシプロピレン(数平均分子量3,000、1分子当たりの末端アリル基含量2個)100部に対し、実施例1で用いたのと同じ末端に環状ハイドロポリシロキサンを導入した前記ポリオキシプロピレン(A−1)9部、塩化白金酸5×10-6部を加えて、インジェクション法により6mmφのSUS製のシャフトを中心に含む12mmφのローラーを製造した。硬化は成形後120℃で3分間加熱することにより行なった。
【0085】金型から取り出したのち、アルコール可溶性ナイロンの3%アルコール溶液をローラー表面にコーティングし、厚さ50μmのナイロン層を形成した。
【0086】えられたローラーのJIS A法による硬度(JIS A型硬度計を押しあてたときの硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0087】比較例2シリコーン系樹脂(信越化学工業(株)製のKE1261−U)を押出法により6mmφのSUS製のシャフト上に被覆形形し、12mmφのローラーを製造した。
【0088】えられたローラーの表面に、アルコール可溶性ナイロンの3%アルコール溶液をコーティングして厚さ50μmのナイロン層を形成した。
【0089】えられたローラーのJIS A法による硬度(JIS A型硬度計を押しあてたときの硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
【表1】


【0091】表1から明らかなように、本実施例のローラーのばあい、ローラーを構成する弾性体の弾性を損うことなく、表面層を形成することができる。
【0092】
【発明の効果】本発明の導電性ローラーは表面層を形成したのちも導電性ローラーを構成する弾性体層の弾性を損なわないので、電子複写機やプリンターが有する感光体に接触させて使用したばあいに接触、従動回転が安定化し、安定な画像をうることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子写真機またはプリンターが有する感光体に接触させて使用する導電性ローラーにおいて、少なくとも表面層が(A)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する硬化剤、(B)分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するポリオキシプロピレン系重合体で数平均分子量が500〜3000である化合物および(C)ヒドロシリル化触媒を含有する組成物の硬化物からなる導電性ローラー。
【請求項2】 請求項1記載の組成物に、さらに(D)導電性付与剤を(B)成分100重量部に対して0.1〜50重量部加えてなる組成物の硬化物からなる請求項1記載の導電性ローラー。