説明

導電性基材およびその製造方法

【課題】耐水性が高く、導電性ポリマーの脱落および導電性ポリマーによる黄ばみの問題がない導電性基材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】含窒素官能基を有する基材(A)にスルホン酸基および/またはカルボキシル基を有する特定の導電性ポリマー(B)が付着し、かつ前記基材(A)が黒色に着色されている導電性基材;基材(A)を染色液中で導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料に接触させ、該染色液を30〜130℃にて5〜300分間保持した後、30〜130℃の染色液中で基材(A)と重クロム酸塩とを接触させてクロム処理を行う導電性基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維は、電気絶縁性であるため、接触、摩擦等により繊維に帯電した静電気は、容易に漏洩することはない。そのため、衣料等のまとわりつき、ホコリ(汚れ)の付着、電子機器の誤動作、発生した静電気の人体からの放電によるスパーク等の種々問題を引き起こす。
【0003】
繊維に帯電防止性を付与する方法としては、例えば、下記方法が知られている。
繊維に、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性ポリマーを付着させる方法(例えば、特許文献1参照)。
しかし、導電性ポリマーは黄色を呈しているため、導電性ポリマーが付着した繊維は黄ばんでしまう。そのため、該繊維を用いた衣料等は、その商品価値が大きく低下してしまう。また、繊維に付着した酸性基を有する導電性ポリマーは、耐水性が低く、また、繊維への密着性が低いため、脱落しやすいという問題がある。
【0004】
なお、特許文献2には、導電性ポリマーであるポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン)を顔料または染料で染色することが記載されているが、該導電性ポリマーを繊維に付着させることは記載されていない。
【特許文献1】特開平8−100060号公報
【特許文献2】特開2002−348488号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、耐水性が高く、導電性ポリマーの脱落および導電性ポリマーによる黄ばみの問題がない導電性基材およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の基材に特定の導電性ポリマーおよび酸性媒染染料を接触させて加熱することにより、基材に密着性よく導電性ポリマーを付着させて導電性を付与することができ、かつ、導電性ポリマー由来の黄ばみの問題を解消することができることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
本発明の導電性基材は、含窒素官能基を有する基材(A)に下記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する導電性ポリマー(B)が付着し、かつ前記基材(A)が黒色に着色されていることを特徴とする。
【0008】
【化1】

【0009】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R、Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0010】
【化2】

【0011】
式(2)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0012】
【化3】

【0013】
式(3)中、R〜R10は、水素、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルコキシ基、またはスルホン酸基であり、R〜R10の少なくとも一つは、スルホン酸基である。
【0014】
本発明の導電性基材の製造方法は、下記のステップ(a)〜(c)を順次行うことを特徴とする。
(a)前記基材(A)を、染色液中で前記導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料に接触させるステップ。
(b)前記染色液を30〜130℃にて5〜300分間保持するステップ。
(c)30〜130℃の染色液中で前記基材(A)と重クロム酸塩とを接触させてクロム処理を行うステップ。
前記ステップ(a)においては、染色液に蟻酸を含有させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電性基材は、耐水性が高く、導電性ポリマーの脱落および導電性ポリマーによる黄ばみの問題がない。
また、本発明の導電性基材の製造方法によれば、耐水性が高く、導電性ポリマーの脱落および導電性ポリマーによる黄ばみの問題がない導電性基材を製造でき、クロム処理後も導電性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<導電性基材>
本発明の導電性基材は、基材(A)に導電性ポリマー(B)が付着し、かつ前記基材(A)が黒色に着色されている導電性黒色基材である。
【0017】
(基材(A))
基材(A)としては、繊維(単繊維、糸等)、該繊維からなる布帛(織布、編物、不織布等)、フィルム、紙、発泡体、成形物等が挙げられ、繊維または布帛が好ましい。
【0018】
基材(A)は、導電性ポリマー(B)との付着性の点から、含窒素官能基を有する必要がある。含窒素官能基としては、アミド基、イミド基、ヒドラジド基、アミジノ基、アミノ基、イミノ基、ヒドラジン基等が挙げられる。
【0019】
基材(A)としては、酸性染料により染色が可能であり、かつ導電性ポリマー(B)との付着性に優れる点から、酸性可染性繊維(羊毛(ウール)、絹等のたんぱく質繊維;ナイロン等のポリアミド繊維;ポリイミド繊維等。)、該繊維からなる布帛または酸性可染性の基材(ポリアミドフィルム、成型品等)が特に好ましい。
【0020】
(導電性ポリマー(B))
導電性ポリマー(B)は、基材(A)との付着性の点から、下記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する必要がある。
【0021】
【化4】

【0022】
式(1)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R、Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0023】
【化5】

【0024】
式(2)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【0025】
【化6】

【0026】
式(3)中、R〜R10は、水素、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルコキシ基、またはスルホン酸基であり、R〜R10の少なくとも一つは、スルホン酸基である。
【0027】
式(1)〜(3)で表される繰り返し単位はスルホン酸基および/またはカルボキシル基を有するため、基材(A)へ固着し、耐水性、導電性が発現する。
式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の割合は、導電性ポリマー(B)を構成する全繰り返し単位(100モル%)のうち、20〜100モル%が好ましい。
導電性ポリマー(B)は、式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を10以上有することが好ましい。
【0028】
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量は、5000〜1000000が好ましく、5000〜20000がより好ましい。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が5000以上であれば、導電性、成膜性および膜強度に優れる。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が1000000以下であれば、溶媒への溶解性に優れる。
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量は、GPCによって測定される質量平均分子量(ポリエチレングリコール換算)である。
【0029】
(導電性基材の製造方法)
本発明の導電性基材は、下記のステップ(a)〜(c)を順次行うことにより製造される。
(a)基材(A)を、染色液中で導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料に接触させるステップ。
(b)染色液を30〜130℃にて5〜300分間保持するステップ。
(c)30〜130℃の染色液中で基材(A)と重クロム酸塩とを接触させてクロム処理を行うステップ。
【0030】
(ステップ(a))
ステップ(a)で用いる酸性媒染染料(いわゆるクロム染料)としては、C.I.アシツドイエロ−17、19、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159,169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、
C.I.アシツドオレンジ3、19、24、28、1、33、43、45、47、51、67、94、116、127、138、145、156、
C.I.アシツドレツド35、42、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、257、261、263、266、299,301、336,337、361、396、397、
C.I.アシツドバイオレツト5、34、43、47、48、90、103、126、
C.I.アシツドブル−25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、108、112、113、120、127、l28、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326、C.1.アシツドグリ−ン16、17、l9、20、25、28、40、4l、71、
C.I.アシツドブラウン4、248、
C.I.アシツドブラツク7、24、29、48、52:1、172、
C.I.モーダントブラツク11等が挙げられる。
【0031】
溶媒としては、水または水および水に可溶な有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。
水に可溶な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類等が挙げられる。
溶媒としては、水、または水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0032】
基材(A)を染色液中で導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料に接触させる方法としては、基材(A)を導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料が存在する染色液に浸漬する方法が好ましい。
【0033】
染色液中の導電性ポリマー(B)の量は、浸漬させる基材(A)100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。導電性ポリマー(B)の量が0.01質量部以上であれば、十分な導電性を発現できる。染色液中の導電性ポリマー(B)の量は、浸漬させる基材(A)100質量部に対して、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。
導電性ポリマー(B)の含有量は、染色液(100質量%)のうち、0.01〜20質量%が好ましい。導電性ポリマー(B)の含有量が該範囲内であれば、効率的に基材(A)の導電性を向上できる。
【0034】
染色液中の酸性媒染染料の量は、浸漬させる基材(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
酸性媒染染料の含有量は、染色液(100質量%)のうち、0.01〜20質量%が好ましい。
【0035】
染色液のpHは、基材(A)を浸漬する前で、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。染色液のpHが5.0以下であれば、導電性が良好な導電性基材が得られる。pHの調整方法としては、例えば、水溶液中で酸性を呈する化合物を添加する方法が挙げられる。該化合物としては、鉱酸(硫酸、塩酸、硝酸等)、有機カルボン酸(酢酸、蟻酸等)、有機スルホン酸(トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等)等が挙げられ、クロム処理後の導電性の減少を抑制することができる点で、蟻酸、酢酸が好ましい。
【0036】
(ステップ(b))
ステップ(b)における染色液の温度は、30℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。染色液の温度は、130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。染色液の温度が30℃以上であれば、導電性基材の耐水性が向上する。染色液の温度が130℃以下であれば、基材(A)の変形または変質を防止できる。
染色液を加熱する方法は、特に限定されない。
ステップ(b)における、染色液に基材(A)を浸漬する時間は、5分以上が好ましく、10分以上がさらに好ましい。該浸漬時間は、300分以下が好ましく、120分以下がより好ましく、90分以下がさらに好ましい。
【0037】
(ステップ(c))
クロム処理を行うことよって、酸性媒染染料がクロムイオンに配位して目的とする黒色が得られると同時に、該クロムイオンが基材(A)とも結合するため、染色堅牢度が向上する。
重クロム酸塩としては、重クロム酸カリウム、重クロム酸ナトリウム、重クロム酸アンモニウム等が挙げられる。
重クロム酸塩の量は、基材(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
【0038】
ステップ(c)における染色液の温度は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。染色液の温度は、130℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
ステップ(c)における、染色液に基材(A)を浸漬する時間は、5分以上が好ましく、10分以上がさらに好ましい。該浸漬時間は、120分以下が好ましく、60分以下がより好ましい。
【0039】
導電性基材の製造方法としては、導電性および染色堅牢度に優れる導電性黒色基材が得られる点から、下記のステップ(a1)、(b1)、(c1)を有する方法が特に好ましい。
【0040】
(a1)基材(A)を、導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料を含む染色液に浸漬し、基材(A)に導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料を付着させるステップ。
(b1)ステップ(a1)の後、染色液を60〜130℃に昇温して5〜300分間保持するステップ。
(c1) ステップ(b1)の後、基材(A)を染色液に浸漬したまま、5〜90℃の染色液に重クロム酸塩を添加し、30〜130℃に昇温して5〜300分間保持するクロム処理を行うステップ。
【0041】
なお、ステップ(a)において、基材(A)を、導電性ポリマー(B)を含む溶液に浸漬して基材(A)に導電性ポリマー(B)を付着させた後、酸性媒染染料を含む染色液に浸漬し、酸性媒染染料を付着させてもよい。
また、ステップ(c)において、ステップ(b)の後、基材(A)を染色液から取り出し、重クロム酸塩を含む溶液に浸漬させてクロム処理を行ってもよい。
染色液には、必要に応じて、酸性染料による染色に用いられる均染剤等の添加剤を添加してもよい。
【0042】
以上説明した本発明の導電性基材にあっては、基材(A)が黒色に着色されているため、導電性ポリマー(B)による黄ばみが目立たない。そのため、導電性ポリマー(B)による黄ばみの問題がない。
【0043】
また、基材(A)が含窒素官能基を有し、導電性ポリマー(B)が前記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有するため、基材(A)と導電性ポリマー(B)との付着力が高くなる。そのため、導電性基材の耐水性が高くなり、かつ基材(A)からの導電性ポリマー(B)の脱落が抑えられる。その結果、導電性の低下、および脱落した導電性ポリマー(B)による発塵が抑えられる。特に、基材(A)を染色する際に、導電性ポリマー(B)の脱落、それに伴う導電性の低下が起きやすいが、特定の基材(A)および特定の導電性ポリマー(B)を用いることにより、該問題が抑えられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されない。
【0045】
(ポリマーの体積抵抗値)
ポリマーの体積抵抗値は、ロレスターEP MCP−T360(ダイアインスツルメンツ社製)を用い、4端子4探針法で測定した。
【0046】
(表面抵抗値)
クロム処理を行う前の導電性繊維を70℃で10分間乾燥させた後、ダイヤインスツルメンツ社製ハイレスタIP−MCPHT4560を用い、2探針法にて、導電性繊維の表面抵抗値を測定した。
【0047】
(摩擦帯電圧)
クロム処理前またはクロム処理後の導電性繊維を70℃で10分間乾燥させた後、JIS L 1094に記載の摩擦帯電圧測定法によって導電性繊維の摩擦帯電圧を測定した。摩擦帯電圧の測定は、ロータリースタティックテスター(興亜商会社製)を用い、ドラム回転数400rpm、摩擦時間60秒、摩擦回数10回の条件で行った。
【0048】
(黄ばみ)
導電性繊維を目視にて観察し、下記基準にて評価した。
○:黄ばみが目立たない。
×:黄ばみが目立つ。
【0049】
(基材(A))
基材(A−1):色染社製、ウールモスリン(表中、WOOL)、
基材(A−2):色染社製、ナイロンタフタ(表中、Ny繊維)、
基材(A−3):東洋紡績社製、ナイロンフィルム(表中、Nyフィルム)。
【0050】
〔製造例1〕
導電性ポリマー(B−1)の製造:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸の100mmolを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に溶解し、該溶液を撹拌しながら、該溶液にペルオキソ二硫酸アンモニウムの100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに撹拌した。反応生成物を濾別、洗浄した後、乾燥し、導電性ポリマー(B−1)[ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン]の粉末の15gを得た。導電性ポリマー(B−1)の体積抵抗値は、9.0Ω・cmであった。
【0051】
〔実施例1〕
100質量部の純水に導電性ポリマー(B−1)の0.2質量部および酸性媒染染料(山田化学社製、C.I.Mordant Black 11)の0.5質量部を添加し、さらに蟻酸を添加し、染色液のpHを3に調整した。得られた染色液に基材(A−1)の5質量部を浸漬し、90〜95℃にて30分間撹拌して、基材(A−1)に導電性ポリマー(B−1)および酸性媒染染料を付着させた。
その後、染色液を90℃まで冷却した後、染色液に重クロム酸カリウムの1質量部を添加し、90〜95℃にて30分間撹拌して、クロム処理を行い、導電性黒色繊維を得た。該導電性黒色繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0052】
〔実施例2〕
基材(A−1)を基材(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性黒色繊維を得た。該導電性黒色繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0053】
〔実施例3〕
基材(A−1)を基材(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性黒色繊維を得た。該導電性黒色繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0054】
〔実施例4〕
蟻酸に代えて硫酸を用いた以外は、実施例1と同様にして導電性黒色繊維を得た。該導電性黒色繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
〔比較例1〕
染色液に酸性媒染染料を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして導電性繊維を得た。該導電性繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
〔比較例2〕
染色液に酸性媒染染料を添加しなかった以外は、実施例2と同様にして導電性繊維を得た。該導電性繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
〔比較例3〕
染色液に酸性媒染染料を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして導電性繊維を得た。該導電性繊維について評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
クロム処理前の導電性繊維に関し、実施例1〜4、比較例1〜3はいずれも導電性ポリマーの脱落はなく、耐水性に優れていた。
実施例1〜4で黄ばみは目立たなかったが、比較例1〜3では黄ばみが目立った。
クロム処理後の導電性繊維に関し、実施例1、4はいずれも導電性ポリマーの脱落はなかったが、実施例4では摩擦耐電圧の値が増大した。これは導電性ポリマーがクロム処理によって酸化され劣化したためである。これは、蟻酸存在下では酸力が中程度のため 導電性ポリマーが劣化するまでには至らなかったが、硫酸酸性下ではクロムの酸化力が強くなる為劣化したためであると推測している。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の導電性基材は、衣料(スーツ、制電作業服等)、建築物の内装品(カーペット、カーテン、椅子張り等)、帽子、靴、カバン、乗り物(自動車、電車、飛行機等)のシート用布、産業用繊維製品等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含窒素官能基を有する基材(A)に下記式(1)〜(3)で表される繰り返し単位の少なくとも1種を有する導電性ポリマー(B)が付着し、かつ前記基材(A)が黒色に着色されている、導電性基材。
【化1】

式(1)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R、Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【化2】

式(2)中、R〜Rは、各々独立に、H、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OCH、−CH、−C、−F、−Cl、−Br、−I、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレン基または炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つが、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。
【化3】

式(3)中、R〜R10は、水素、炭素数1〜24の直鎖または分岐のアルコキシ基、またはスルホン酸基であり、R〜R10の少なくとも一つは、スルホン酸基である。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性基材を製造する方法であり、
下記のステップ(a)〜(c)を順次行う、導電性基材の製造方法。
(a)前記基材(A)を、染色液中で前記導電性ポリマー(B)および酸性媒染染料に接触させるステップ。
(b)前記染色液を30〜130℃にて5〜300分間保持するステップ。
(c)30〜130℃の染色液中で前記基材(A)と重クロム酸塩とを接触させてクロム処理を行うステップ。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、染色液に蟻酸を含有させる、請求項2に記載の導電性基材の製造方法。

【公開番号】特開2009−259621(P2009−259621A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107720(P2008−107720)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】