説明

導電性組成物及び導電性膜

【課題】本発明は、上述したような従来技術では解決できなかった課題を解決するものであり、その目的は、含有成分の分散性が良好で、膜を形成した際に透明性及び導電性に優れた導電性組成物、更に、導電性のバラつきが小さい導電性膜を形成することが可能な導電性組成物、及びこれを用いた導電性膜を提供することである。
【解決手段】導電性ポリマー、イオン液体、カーボンナノチューブを含有する導電性組成物であって、該カーボンナノチューブの一次粒子での存在率が80個数%以上であることを特徴とする導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物及び導電性膜に関し、特に含有成分の分散性が良好で、導電性膜を形成した際に透明性及び導電性に優れ、更に導電性のバラツキが小さい導電性膜を形成することが可能な導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性膜は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、または電磁波シールド材などの基材のコーティング等に用いられている。
【0003】
最も広く応用されている透明導電膜はインジウム−スズの複合酸化物(ITO)の蒸着膜であるが、高温で成膜を行う必要があり、更に成膜コストが高いという問題点がある。
【0004】
塗布成膜法によるITO膜も、高温成膜が必要であり、その導電性はITOの分散度に左右され、ヘイズ値も必ずしも低くない。
【0005】
また、ITO等無機酸化物膜は、基材の撓みによりクラックが入りやすく、そのため導電性の低下が起こりやすい。
【0006】
有機材料を用いた透明導電膜として、低温かつ低コストで成膜可能な導電性ポリマーを用いたものが提案されている。導電性ポリマーとしては、チオフェン、ピロール、アニリン、またはそれらの誘導体を化学酸化重合または電解酸化重合することによって合成したものが多く開示されており、その中でも特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などを中心とする3,4位置換チオフェンの重合体が導電性に優れ、実用化も進んでいる。
【0007】
上記PEDOTなどを含む導電性ポリマーを使用した技術として、導電性ポリマーにカーボンナノチューブ等の導電性炭素材料を分散させた技術が開示されている(例えば特許文献1,2)
特に特許文献1においては、導電性ポリマーを膨潤する溶媒として更にイオン液体を使用しても良い旨の開示があるが、カーボンナノチューブの具体的な分散度合い、組成物中での濃度などの言及はない。また、特許文献2においては、カーボンナノチューブの分散性、可溶性の改良に着目し、導電性や成膜性、更には塗膜の膜物性を向上させているが、必ずしも分散性は十分に満足できるものではなく、塗膜にした際の導電性のバラつきに関しては何ら言及されていない。
【0008】
カーボンナノチューブを含有する導電性材料としては、上記の技術の他に、イオン液体にカーボンナノチューブを混合する技術が開示されている(例えば特許文献3)。特許文献3は、アクチュエータ素子への適用を意図した導電性膜で、各成分を均一に混合することが重要であることは記載があるものの、導電性は必ずしも十分ではなく、更に透明性に関しても透明性を求められる用途に対して実用できるレベルではない。
【0009】
一方、導電性向上を目的として、導電性ポリマーとイオン液体を組み合わせた技術も開示されている(例えば特許文献4,5)。特許文献4は、導電性を有するゲル状組成物を得ることが目的であり、塗布により基材上に導電性膜を形成する意図では取り扱い上の観点で適当ではない。特許文献5は、予め導電性ポリマー塗膜を形成し、イオン液体に浸漬、またはイオン液体を噴霧するなどの方法で両者を接触させる技術であり、これについても、簡便な方法で導電性の高い塗膜を得るという目的には十分とはいえない。
【特許文献1】国際公開第2005/14693号パンフレット
【特許文献2】特開2005−97499号公報
【特許文献3】特開2007−126624号公報
【特許文献4】特開2006−257148号公報
【特許文献5】特開2006−306957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述したような従来技術では解決できなかった課題を解決するものであり、その目的は、含有成分の分散性が良好で、膜を形成した際に透明性及び導電性に優れた導電性組成物、更に、導電性のバラつきが小さい導電性膜を形成することが可能な導電性組成物、及びこれを用いた導電性膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、導電性ポリマー、イオン液体、カーボンナノチューブを含有する導電性組成物において、導電性ポリマー及びイオン液体に対してカーボンナノチューブを高度な分散性で存在させ、それによって比較的高濃度でカーボンナノチューブを含有させることを実現し、導電性と透明性の両者が著しく優れた導電性組成物、更に導電性のバラつきが小さい導電性膜を形成可能な導電性組成物を達成するに至り、課題を解決した。
【0012】
具体的には、下記に示す通りである。
【0013】
1.導電性ポリマー、イオン液体、カーボンナノチューブを含有する導電性組成物であって、該カーボンナノチューブの一次粒子での存在率が80個数%以上であることを特徴とする導電性組成物。
【0014】
2.前記カーボンナノチューブが有機化合物により表面処理されていることを特徴とする前記1に記載の導電性組成物。
【0015】
3.前記1または2のいずれか1項に記載の導電性組成物を基材上に成膜して得られる導電性膜であって、該導電性膜中のカーボンナノチューブの含有量が30質量%以上50質量%以下であることを特徴とする導電性膜。
【発明の効果】
【0016】
本発明により透明性及び導電性に優れ、かつ導電性のバラツキが小さい導電性膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
〈導電性ポリマー〉
本発明の導電性組成物に含有される導電性ポリマーは、π共役系高分子化合物であれば特に制限はなく、公知の種々のポリマーを使用することができる。具体的には、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリキノン、ポリビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレン、ポリピロリレン、ポリフェニレン、ポリイミノフェニレン、ポリイソチアナフテン、ポリフリレン、ポリカルバゾリレン、及びこれらの誘導体などを挙げることができる。これらの中でも、ポリピロール、ポリチオフェンを用いることが好ましい。これらの導電性ポリマーは、化学酸化重合法、電解酸化重合法などの方法により合成することができる。
【0019】
本発明では、後述する導電性膜形成に際し、水系溶媒に溶解または分散可能な導電性ポリマーを用いることが有利な場合があり、具体的には、後述するドーパント存在下で重合された導電性ポリマーを使用するか、またはスルホン酸基及び/またはカルボキシル基が置換された導電性ポリマーを使用することが好ましい。後者としては具体的には、無置換及び置換されたπ共役系高分子の骨格または該高分子中の窒素原子上に、スルホン酸基及び/またはカルボキシル基、あるいはスルホン酸基及び/またはカルボキシル基で置換されたアルキル基またはエーテル結合を含むアルキル基を有している導電性ポリマーである。
【0020】
(ドーパント)
本発明の導電性組成物には、溶解性や導電性を向上させる目的で、ドーパントが含有されていることが好ましい。ドーパントとしては、本発明で導電性ポリマーを酸化還元させることにより導電性を向上できるものであれば特に制限はなく、公知の種々の電子吸引(受容)性物質や電子供与性物質を適宜使用することができるが、電子吸引性物質を使用することが好ましい。
【0021】
電子吸引(受容)性物質としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばルイス酸などを挙げることができる。ルイス酸としては、例えばスルホン酸化合物、ホウ酸化合物、リン酸化合物、塩素酸化合物などが挙げられる。
【0022】
スルホン酸化合物としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ショウ脳スルホン酸、ポリビニルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。ホウ酸化合物としては、例えば、テトラフルオロホウ酸などが挙げられる。リン酸化合物としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。塩素酸化合物としては、過塩素酸、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸などが挙げられる。導電性ポリマーとして例えばポリチオフェンを用いる場合は、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸が特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0023】
本発明の導電性組成物におけるドーパントの含有量としては特に制限は無く、任意に選択することができるが、例えば5〜50質量%が好ましく、5〜30質量%が更に好ましい。ドーパントの使用方法としては、前述した導電性ポリマーを重合する際に存在させておく態様が好ましく、重合の際に存在させたドーパントをそのまま導電性組成物に持ち込んでも良く、またはイオン交換樹脂や種々ろ過法などにより含有量を適宜調整しても良い。最終的な導電性膜の電気抵抗値を所望の程度に制御する目的で、導電性組成物中のドーパントの含有量を適宜制御することは好ましい態様である。
【0024】
(水溶性有機化合物)
本発明の導電性組成物には、更に水溶性有機化合物を含有することができる。水溶性有機化合物としては、水溶性の有機化合物であれば特に制限は無く、公知のものから適宜選択することが可能である。水溶性の程度としては、例えば25℃の水に対し1質量%以上溶解するものが好ましく、5質量%以上溶解するものが更に好ましい。これら水溶性有機化合物の中で、導電性組成物を導電性膜にした際に表面抵抗率が顕著に低くなることから、特に酸素含有化合物を好ましく用いることができる。
【0025】
酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限は無く、例えば水酸基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物などを挙げることができる。
【0026】
水酸基含有化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどが挙げられ、これらの中でもエチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。カルボニル基含有化合物としては、例えばイソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。エーテル基含有化合物としては、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。スルホキシド基含有化合物としては、例えばジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0027】
導電性ポリマーとして例えばポリチオフェンを用いる場合は、これらの中でも、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールなどが特に好ましい。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0028】
水溶性有機化合物の沸点としては特に制限はなく、任意に選択することができるが、水溶性有機化合物が揮発しにくく、導電性組成物の電気抵抗率を十分に低下する観点で、例えば120℃以上であることが好ましい。
【0029】
本発明の導電性組成物における水溶性有機化合物の含有量としては特に制限は無く、任意に選択することができるが、例えば0.1〜50質量%が好ましく、1〜10質量%が更に好ましい。
【0030】
水溶性有機化合物を混合する際の温度や撹拌条件などは、任意に選択して制御することが可能である。
【0031】
〈イオン液体〉
本発明の導電性組成物に含有されるイオン液体は、常温溶融塩または単に溶融塩などとも称されるものであり、常温(室温)を含む幅広い温度域で溶融状態を呈する塩である。
【0032】
本発明においては、従来から知られた各種のイオン液体を使用することができるが、常温において液体を呈し、かつ安定なものが好ましく、また、導電性膜に使用する導電性ポリマーや必要に応じて使用する各種溶媒と相溶性を有するものが好ましい。イオン液体の中には水に対して不溶性のもの(疎水性イオン液体)があり、湿度に対する不安定性や素子周辺の金属の腐食性が懸念される用途に使用する場合には、疎水性イオン液体を用いることが好ましい。
【0033】
本発明に用いるのに好適なイオン液体としては、下記の一般式(I)〜(IV)で表わされるカチオン(好ましくは、第4級アンモニウムイオン)と、アニオン(X-)より構成される化合物を挙げることができる。
【0034】
【化1】

【0035】
一般式(III)
〔NRx4-x+
一般式(IV)
〔PRx4-x+
上記の一般式(I)〜(IV)において、Rは炭素数10以下の直鎖または分枝を有するアルキル基またはエーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖または分枝を有するアルキル基を表し、一般式(I)において、R1は炭素数1〜4の直鎖または分枝を有するアルキル基または水素原子を表し、特に炭素数1のメチル基が好ましい。一般式(I)において、RとR1は同一ではないことが好ましい。一般式(III)および(IV)において、xは1から4の整数である。
【0036】
エーテル結合を含み炭素と酸素の合計数が3〜12の直鎖または分枝を有するアルキル基としては、−CH2OCH3、−(CH2p(OCH2CH2qOR2(ここで、pは1〜4の整数、qは1〜4の整数、R2はメチル基(CH3)又はエチル基(C25)を表す)が挙げられる。
【0037】
一般式(I)の具体的な化合物としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムなどが挙げられる。
【0038】
一般式(II)の具体的な化合物としては、1−エチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウムなどが挙げられる。
【0039】
一般式(III)の具体的な化合物としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウム、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムなどが挙げられる。
【0040】
一般式(IV)の具体的な化合物としては、N,N,N−トリメチル−N−プロピルホスホニウムなどが挙げられる。
【0041】
アニオン(X-)としては、例えば、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、ビス(トリフロロメチルスルホニル)イミド酸、過塩素酸、トリス(トリフロロメチルスルホニル)炭素酸、トリフロロメタンスルホン酸、ジシアンアミド、トリフロロ酢酸、有機カルボン酸またはハロゲン原子等のイオンが挙げられる。
【0042】
但し、これらの組み合わせに限らず、イオン液体であって、導電率が0.1Sm-1以上のものであれば、使用可能である。
【0043】
本発明のイオン液体は、上記に例示したようなカチオンとアニオンとを組み合わせた物質であり、公知の方法で合成することができる。具体的には、アニオン交換法、酸エステル法、中和法等の方法を用いることができる。
【0044】
〈カーボンナノチューブ〉
本発明の導電性組成物に含有されるカーボンナノチューブは、一次粒子での存在率が80個数%以上であれば他に限定されることは無く、90個数%以上であることが更に好ましい。
【0045】
カーボンナノチューブの1次粒子の存在率の測定方法としては、測定試料として5質量%以下の分散液を調製し、透過型電子顕微鏡にて撮影を行い、任意の視野で1000個のカーボンナノチューブを観察して1次粒子の存在率を算出することによって得られる。
【0046】
本発明の導電性組成物に含有されるカーボンナノチューブは、一般に知られているものであり、厚さ数原子層のグラファイト状炭素原子面(グラフェンシート)が筒形に巻かれた形状からなる炭素系繊維材料であり、その周壁の構成数から単層ナノチューブ(SWNT)と多層ナノチューブ(MWNT)とに大別され、また、グラフェンシートの構造の違いからカイラル(らせん)型、ジグザグ型、アームチェア型に分けられ、各種のものが知られている。本発明には、このようなカーボンナノチューブと称されるものであれば、いずれのタイプのカーボンナノチューブも用いることができる。
【0047】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、アスペクト比が大きい、すなわち細くて長い単層ナノチューブを用いることが好ましい。例えば、アスペクト比が103以上、好ましくは104以上のカーボンナノチューブが挙げられる。カーボンナノチューブの長さは、通常1μm以上、好ましくは50μm以上、更に好ましくは500μm以上であり、長さの上限は特に限定されないが、例えば10mm程度である。外径としてはnmオーダーの極めて微小なカーボンナノチューブが知られている。
【0048】
本発明にはSWNT、またはMWNTのそれぞれが単体で使用されるが、双方を同時に使用することも可能である。
【0049】
本発明で使用されるカーボンナノチューブの製造方法は、特に限定されるものではない。具体的には、二酸化炭素の接触水素還元、アーク放電法、レーザー蒸発法、CVD法、気相成長法、一酸化炭素を高温高圧化で鉄触媒と共に反応させて気相で成長させるHiPco(High Pressure Carbon monoxide)法等が挙げられる。また、副生成物や触媒金属等の残留物を除去するために、洗浄法、遠心分離法、ろ過法、酸化法、クロマトグラフ法等の種々の精製法によって、より高純度化されたカーボンナノチューブの方が、各種機能を十分に発現することから好ましい。
【0050】
〈界面活性剤〉
本発明の導電性組成物において、カーボンナノチューブの1次粒子の存在率を80個数%以上に制御するに際し、カーボンナノチューブが有機化合物によって表面処理され、被覆されていることが好ましく、例えば界面活性剤により表面処理を行う、具体的には、有機化合物として界面活性剤を使用して、この存在下でカーボンナノチューブを分散して、カーボンナノチューブ1次粒子ごとの分散性を向上させることが好ましい。
【0051】
本発明で使用できる界面活性剤としては、一般に知られているアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを挙げることが可能で、これらを任意に用いてよい。
【0052】
尚、本発明では、後述する導電性膜を成膜するに当たり水系溶媒を用いると有利なことがあり、その場合は特に、重縮合系の芳香族系界面活性剤、重合系の芳香族系界面活性剤、芳香族系非イオン性界面活性剤、及び、芳香族系非イオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤との組み合わせなどを用いることも好ましい態様の1つである。
【0053】
次に、これら界面活性剤の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
アニオン系界面活性剤としては、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、ジアルキルスルホコハク酸、α−スルホン化脂肪酸、N−メチル−N−オレイルタウリン、石油スルホン酸、アルキル硫酸、硫酸化油脂、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸、アルキルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ブチルナフタレン/ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナフトールメチレンスルホン酸ホルマリン縮合物、クレオソート油スルホン酸ホルマリン縮合物、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリスチレンスルホン酸、及びこれらの塩などを挙げることができる。
【0055】
カチオン系界面活性剤としては、第一〜第三脂肪アミン、四級アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルベンジルアンモニウムアルキルピリジニウム、2−アルキル−1−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウム、N,N−ジアルキルモルホリニウム、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミドの尿素縮合物の第四級アンモニウムおよびこれらの塩などを挙げることができる。
【0056】
両イオン性界面活性剤としては、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、N,N,N−トリアルキル−N−スルホアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビスポリオキシエチレンアンモニウム硫酸エステルベタイン、2−アルキル−1−カルボキシメチル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインなどのベタイン類、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸塩などのアミノカルボン酸類などを挙げることができる。
【0057】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、トリアルキルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0058】
また、フルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルベンゼンスルホン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノールなどのフッ素系界面活性剤を用いても良い。
【0059】
ここで、上記アルキル基は炭素数1〜24が好ましく、炭素数3〜18がより好ましい。また、塩のカウンターイオンは任意のアルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アミン類等いずれであっても良いが、入手容易性の観点から、Na塩が好ましい。
【0060】
界面活性剤の含有量としては、使用される界面活性剤の分子量や能力にもよるため一律に規定できるものではないが、概ね、カーボンナノチューブに対し、0.5〜500質量%が好ましく、1〜100質量%がより好ましく、1〜50質量%が更に好ましい。
【0061】
また、上記の重縮合系の芳香族系界面活性剤及び/又は重合系の芳香族系界面活性剤(A)と、芳香族系ノニオン性界面活性剤、及び/又は芳香族系ノニオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤(B)とを組み合わせて併用することも好ましく、その場合の(A)と(B)の混合比〔(A)/(B)〕としては、特に限定されないが、質量比で好ましくは99.9/0.1〜70/30である。芳香族系ノニオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤との混合比(芳香族系ノニオン性界面活性剤/イオン性界面活性剤)は、特に限定されないが、質量比で好ましくは99.1/0.1〜50/50である。
【0062】
〈溶媒〉
本発明の導電性組成物では、必須成分ではないが、導電性組成物を製造する際、またはそれを用いて導電性膜を成膜する際に溶媒を使用することが有利な場合があり、その場合は任意に溶媒を含有しても良い。溶媒を使用するとより均質な導電性組成物を製造することが可能で、更に成膜においてはコストの低い塗布法を容易に用いることができる点で好ましい。溶媒の種類としては、親水性溶媒や疎水性溶媒を任意に使用可能だが、導電性ポリマーの溶解性、導電性組成物の取り扱い性、更に成膜において水系塗布法が適用できる点で、親水性溶媒を使用することが好ましい。
【0063】
親水性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルのようなエステル類;ジメチルスルオキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル類;アニリン、N−メチルアニリン等のアニリン類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどのカーボネート類などが挙げられる。
【0064】
疎水性溶媒としては、4−メチルペンタン−2−オンなどの炭素数5〜10のケトン類、クロロホルム、塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素類、トルエン、ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類が挙げられる。
【0065】
〈その他の添加剤〉
本発明の導電性組成物には、上述した各種の成分の他に、必要に応じて任意に添加剤を含有することができる。具体的には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、劣化防止剤、pH調整剤、重合禁止剤、表面改質剤、脱泡剤、可塑剤、抗菌剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0066】
〈導電性組成物及びその製造方法〉
本発明の導電性組成物は、導電性ポリマー、イオン液体、及び1次粒子での存在率が80個数%以上であるカーボンナノチューブを必須成分としており、更に任意に上記の溶媒や添加剤を含有しても良い。これらの含有量に特に制限は無いが、3種類の必須成分のみで100質量%と換算した場合の含有比率としては、カーボンナノチューブの含有量が30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。導電性ポリマーやイオン液体の含有量も特に制限は無いが、含有比率として導電性ポリマーは10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、イオン液体は20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。
【0067】
導電性組成物中のこれら各必須成分の含有比率は、最終的に導電性膜を形成した際の膜内の含有比率と概ね等しくなるものである。導電性組成物として必要に応じて溶媒、または適量の添加剤を含有させることが可能であるが、成膜後の乾燥工程で溶媒は除去されるので、導電性組成物は最終的な導電性膜内の必須成分の含有比率に応じて、予め混合し調製することが好ましい。
【0068】
次に、本発明の導電性組成物の製造方法を説明する。
【0069】
本発明の導電性組成物の製造方法は、導電性ポリマー、イオン液体、及び1次粒子での存在率が80個数%以上であるカーボンナノチューブを最終的に混合していれば特に制限は無く、種々の製造方法で製造することが可能で、基本プロセスとしては例えば下記(1)、(2)、(3)などの方法を挙げることができる。
(1)イオン液体中にカーボンナノチューブを分散させ、その分散液に導電性ポリマーを混合する
(2)イオン液体中に導電性ポリマーを溶解させ、その溶液にカーボンナノチューブを混合する
(3)水系溶媒にカーボンナノチューブを分散させ、一方でイオン液体に導電性ポリマーを溶解させ、これら分散液と溶液を混合する
特に、カーボンナノチューブの1次粒子での存在率をより向上させ、カーボンナノチューブを高濃度で高い分散性を維持する導電性組成物を製造するためには、(3)の製造方法で製造することが好ましい。導電性ポリマーやイオン液体が共存しない単純な系内で、予めカーボンナノチューブを高度に分散させ、その後に導電性ポリマーやイオン液体と混合させることが、本発明の課題を解決する上で好ましい。
【0070】
次に、(3)の製造方法について詳細に説明する。
【0071】
水系溶媒とは、上述した親水性溶媒を単独または任意に2種以上混合した溶媒であり、任意に混合して用いることが可能であるが、水の比率が高い方が好ましい。これにカーボンナノチューブを混合し、好ましくはこの段階で分散処理を行う。分散処理とは、超音波照射を施したり、またはボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミルなどのボール型混練装置等を用いて粉砕しても良い。また、硝酸、硫酸などによる酸処理と共に超音波照射によって短く切断されたカーボンナノチューブを用いても良く、電気泳動法によって分画し、繊維長の揃ったカーボンナノチューブを用いることも好ましい態様の1つである。
【0072】
更に、このときに有機化合物によって表面処理を行うことが好ましく、具体的には、有機化合物として上述した各種界面活性剤を用い、この共存下で、カーボンナノチューブを水系溶媒に分散することを示す。
【0073】
一方、イオン液体に導電性ポリマーが溶解された溶液の調製方法は特に制限は無く、任意に混合することが可能である。このとき、両者に相溶性のある溶媒を用いて混合しても良く、または、導電性ポリマーの重合時に使用した溶媒をそのまま持ち込みイオン液体と混合しても良い。
【0074】
次に、前記カーボンナノチューブの分散液と前記導電性ポリマーのイオン液体溶液の混合方法としては、任意の方法によって混合することが可能であるが、導電性ポリマーのイオン液体溶液を撹拌しながら、カーボンナノチューブ分散液を添加する方法が好ましい。この場合の添加時間、添加温度、更に混合後の撹拌条件などは任意に調整して良い。
【0075】
〈導電性膜及びその製造方法〉
本発明の導電性組成物を透明基材上に成膜することによって、透明な導電性膜を形成することができる。
【0076】
本発明の導電性膜は、導電性ポリマー、イオン液体、及び1次粒子での存在率が80個数%以上であるカーボンナノチューブを含有しており、カーボンナノチューブは有機化合物によって表面処理されていることが好ましい。これらの各必須成分の含有量に特に制限は無いが、カーボンナノチューブの含有量が30質量%以上50質量%以下であることが好ましく、40質量%以上50質量%以下であることが更に好ましい。導電性ポリマーやイオン液体の含有量も特に制限は無いが、導電性ポリマーは10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、イオン液体は20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。上記の添加剤などについても、任意の量で含有させることができる。
【0077】
透明基材としては特に制限はなく、その材料、形状、厚み等については公知のものから任意に選択することが可能で、ガラス板や種々の樹脂材料からなる樹脂フィルムを挙げることができる。これらの中でも、種々の用途への適用性、利便性、または製造適性を考慮すると可撓性を有する樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0078】
前記樹脂フィルムとして使用される樹脂材料としては、公知のものから任意に選択することが可能で、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリオレフィンポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、酢酸セルロース、硝酸セルロース、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び可撓性に優れる点で、ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、樹脂フィルムの製造方法としても特に限定は無い。
【0079】
本発明の導電性膜の厚みについては特に制限は無く、任意に選択することが可能であるが、導電性、透明性、及び基材との接着性などを考慮すると、例えば0.01〜10μmが好ましく、0.1〜1μmが更に好ましい。
【0080】
本発明の導電性膜の電気抵抗値については、表面抵抗率として、10000Ω/□以下であることが好ましく、1000Ω/□以下であることが更に好ましく、100Ω/□以下であることが最も好ましい。表面抵抗率は、例えばJIS K6911、ASTM D257などに準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0081】
本発明の導電性膜の可視光線透過率については、70%以上であることが好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。
【0082】
次に、本発明の導電性組成物を用いて導電性膜を製造する際の形成方法について説明する。
【0083】
導電性膜の形成方法としては特に制限は無く、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、塗布法、印刷法などが好適に挙げられる。これらは1種単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0084】
塗布法としては特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、グラビアコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ドクターコート法などを挙げることができる。印刷法としては特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、スクリーン印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法などを挙げることができる。
【0085】
透明基材上に導電性膜を形成した後に、主に溶媒を除去するために熱風乾燥法、真空乾燥法などの公知の方法により乾燥を行うことが好ましい。
【0086】
導電性膜としては、本発明の導電性組成物による導電性膜が透明基材上の全面に形成されていても良いし、電極や配線パターンなどを形成するなど部分的に形成されていても良い。
【0087】
本発明の導電性組成物を用いて得られた透明な導電性膜の用途としては、例えば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、エレクトロクロミックディスプレイ、太陽電池、タッチパネルなどの透明電極、コンデンサー、二次電池、接続用部材、高分子半導体素子、帯電防止コーティング、帯電防止包装材等の帯電防止材、電磁波シールド材、更に、転写ベルト、現像ロール、帯電ロール、転写ロール等の電子写真機器部品等に用いることができる。
【実施例】
【0088】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが本発明はこれにより限定されるものではない。
【0089】
実施例1
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−1の作製)
高純度単層カーボンナノチューブ(カーボン・ナノテクノロジーズ・インコーポレーテッド社製;以下「SWNT」)10質量部を、水90質量部に100rpmの条件で撹拌しながら添加し、引き続き1時間撹拌を行い、10質量%のカーボンナノチューブ分散液を作製し、CNT−1とした。
【0090】
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−2の作製)
SWNT10質量部を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液90質量部に、100rpmの条件で撹拌しながら添加し、引き続き、直径0.1mmのジルコニアビーズを使用しサンドミルで1時間分散処理を行い、10質量%のカーボンナノチューブ分散液を作製し、CNT−2とした。
【0091】
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−3の作製)
CNT−2の作製において、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをポリスチレンスルホン酸ナトリウムに変更した以外はCNT−2と同様に作製し、CNT−3とした。
【0092】
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−4の作製)
CNT−3の作製において、カーボンナノチューブの濃度を20質量%に変更した以外はCNT−3と同様に作製し、CNT−4とした。
【0093】
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−5の作製)
SWNT13質量部を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液87質量部に、100rpmの条件で撹拌しながら添加し、引き続き、超音波処理を1時間行った。次に、アクリルアミドゲルを用い、泳動用バッファーのpHを8に調整し、泳動温度20℃、印加電圧200Vの条件でゲル電気泳動を行い、カーボンナノチューブの分画を行った。続いて、泳動方向に垂直な方向に電圧を印加して繊維長約1μm以上のカーボンナノチューブのみをゲル中から回収し、10質量%のカーボンナノチューブ分散液を作製し、CNT−5とした。
【0094】
(カーボンナノチューブ分散液;CNT−6の作製)
SWNT10質量部、イオン液体として1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・BF4(以下「EMIBF4」)10質量部を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液80質量部に、100rpmの条件で撹拌しながら添加し、引き続き1時間撹拌を行い、10質量%のカーボンナノチューブ分散液を作製し、CNT−6とした。
【0095】
(導電性ポリマー溶液;CP−1の作製)
3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)をポリスチレンスルホン酸(PSS)存在下で公知の方法により水系媒体中で酸化重合し、更に限外ろ過処理を行い、導電性ポリマーとしてPEDOT・PSSの20%水系分散体を得た。この段階でこの水系分散体には、50%のPSS、及び20%のエチレングリコールを含有している。一方、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの20%水溶液にEMIBF4を添加し、EMIBF4の40%水溶液を得た。次に、このEMIBF4の40%水溶液50質量部にPEDOT・PSSの20%水系分散体50質量部を撹拌下で添加し、10質量%の導電性ポリマー溶液を作製し、CP−1とした。
【0096】
〈導電性組成物;試料1の作製〉
カーボンナノチューブ分散液CNT−6;100質量部に、PEDOT・PSS粉末10質量部を撹拌下で添加し、その後1時間撹拌を継続し、導電性組成物試料1を作製した。
【0097】
〈導電性組成物;試料2の作製〉
導電性ポリマー溶液CP−1を100質量部に、SWNTを10質量部、撹拌下で添加し、その後1時間撹拌を継続し、導電性組成物試料2を作製した。
【0098】
〈導電性組成物;試料3の作製〉
導電性ポリマー溶液CP−1を100質量部に、カーボンナノチューブ分散液CNT−1を100質量部、撹拌下で添加し、その後1時間撹拌を継続し、導電性組成物試料3を作製した。
【0099】
〈導電性組成物;試料4〜7の作製〉
導電性組成物試料3の作製方法において、カーボンナノチューブ分散液CNT−1をCNT−2〜CNT−5に変更する以外は導電性組成物試料3の作製方法と同様に作製し、それぞれ導電性組成物試料4〜7とした。
【0100】
それぞれの導電性組成物中のカーボンナノチューブの1次粒子存在率を下記の通り測定・算出し、表1に示した。
【0101】
〈導電性膜の作製〉
透明基材として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(厚さ188μm、東レ社製)を使用し、該透明基材上に、導電性組成物試料1〜7をそれぞれバーコーター(No.9、ウエット膜圧20μm)を用いてバーコート法により塗布した。その後、120℃の環境下で10分間加熱乾燥することにより、本発明の導電性膜(厚み:約0.2μm)を作製した。導電性組成物1〜7のそれぞれについて同様に導電性膜を作製し、表1に示す通りそれぞれ試料1〜7とした。
【0102】
各試料の表面抵抗率の測定結果を表1に示した。
【0103】
《測定・評価方法》
1.導電性組成物中のカーボンナノチューブの1次粒子存在率
測定用組成物試料として1質量%の分散液を調製し、透過型電子顕微鏡にて撮影を行い、任意の視野で1000個のカーボンナノチューブを観察して1次粒子の存在率を算出した。
2.導電性膜の透明性
JIS−R−1635に準じて〔日立製作所製の分光光度計U−4000型〕を用いて、波長550nmにおける光線透過率を測定した。
3.導電性膜の導電性(表面抵抗率)
JIS−K−6911に準じて〔三菱化学社製MCP−T600(商品名)〕を用いて、室温(約25℃)にて表面抵抗率を測定した。
4.導電性膜の導電性のバラつき
JIS−K−7194に準じて〔三菱化学社製MCP−T610(商品名)〕を用いて、室温(約25℃)にて任意に100ヶ所の表面抵抗率を測定し、抵抗のバラつきを変動桁数で算出した。変動桁数が1.2桁以内であれば、導電性のバラつきが良好である。
【0104】
【表1】

【0105】
表1より、本発明のカーボンナノチューブの1次粒子存在率が80個数%以上の導電性組成物を使用した導電性膜では、透明性及び導電性が向上し、更に界面活性剤の種類の変更、カーボンナノチューブ濃度を上げる、また分画工程を加える等を施すことにより、1次粒子存在率は上昇し、それに伴って導電性のバラつきも低減されていくことが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマー、イオン液体、カーボンナノチューブを含有する導電性組成物であって、該カーボンナノチューブの一次粒子での存在率が80個数%以上であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが有機化合物により表面処理されていることを特徴とする請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の導電性組成物を基材上に成膜して得られる導電性膜であって、該導電性膜中のカーボンナノチューブの含有量が30質量%以上50質量%以下であることを特徴とする導電性膜。

【公開番号】特開2009−35619(P2009−35619A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200595(P2007−200595)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】