説明

導電性複合物及びその製造法

【目的】 スルホン酸アニオン系ドーパント及びポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子からなる導電性複合物及びその製造法。
【効果】 本発明によればスルホン酸系ドーパントが導電性高分子中に均一に混合された物理的、化学的安定性あるいは加工性に優れた導電性複合物を製造することができ、また該導電性複合物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は導電性複合物及びその製造法に関し、詳しくはスルホン酸と導電性高分子の複合による、熱安定性、加工性に優れた導電性複合物及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】導電性高分子は、その新規な物理特性、電気化学特性により、導体、半導体、電池、表示素子、光電変換素子、センサー、帯電防止剤等の新しい機能性材料として注目を集めている。イオンドーピング法によりポリアセチレンの導電性が著しく上昇することが見出されて以来(エー・ジェイ・ヒーガーら、フィジクス・レビュー・レター、39巻、1098頁、1977年)、各種のイオンドーピング型導電性高分子が提案されている。ドーピングには、電子受容体(酸化剤)添加により、高分子内に正孔を多数発生させるP型ドーピングと、電子供与体(還元剤)添加により、高分子内に自由電子を多数発生させるN型ドーピングがある。P型ドーピングのドーパントとしては、ハロゲンイオンのような小さなものから、巨大環状分子、更には高分子電解質まで可能であり、これら各種ドーパントのドーピング方法及び得られた導電性高分子の特性と用途開発が新技術として注目されている。
【0003】上記ドーパントとしてフッ化物イオンのような無機アニオンがひろく使用されるが、これらの無機低分子ドーパントは多量にドープされ得るものの、導電性高分子中で移動しやすく、また加熱により脱離しやすい等、材料としての安定性に問題がある。また、この様な無機低分子ドーパントでドープされた導電性高分子複合物は一般的に自立性が悪く、脆いという欠点を有する。
【0004】このことから、近年アニオン基を有する高分子電解質をドーパントとする方法が提案されており、例えば、特開昭59−98165号ではスルホネート、カルボキシレートまたはホスフェートを有するポリマーおよびオリゴマーをドーパントとしたポリピロールまたはポリアニリン系導電性高分子組成物が記載されている。この組成物はドーパントとして、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエピクロルヒドリン、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ホスホン化ポリマー等が挙げられている。同記載は従来の無機低分子アニオンをドーパントとした導電性高分子に比較して化学的、物理的安定性度の優れた導電性高分子組成物が得られることを示しており注目される。しかしながら、これらのドーパントは高分子であるため、導電性高分子の内部まで均一にドーピングすることが困難である。そのため、同記載によれば、モノマーを電気化学的、化学的酸化重合する際に高分子ドーパントをドーピングする手法がとられている。しかしながら、このような手法で高分子化出来るモノマーはピロールやアニリン等に限られており、また得られた組成物は不溶不融となるため、加工上の問題もある。
【0005】導電性高分子を各種用途に応用する場合、薄膜化等の加工性が求められている。しかし、導電性高分子は不溶不融であるものが多く、加工性に乏しいという欠点を有しており、従って気相重合、電解重合等により重合時に直接薄膜化するという方法が主に行なわれてきた。
【0006】これらに対して、導電性高分子に加工性を付与する方法として2つのアプローチが検討されている。ひとつは、長鎖アルキル等の側鎖の導入や汎用ポリマーとの共重合により、導電性高分子自身を可溶性にする方法であるが、この方法では分子量低下や立体障害等で導電性が低くなるという欠点を有する。もう一つは可溶性の前駆体高分子を導電性高分子に変換する方法が挙げられる。この方法の代表的な例として、例えば、米国特許3706677号では、水溶性のスルホニウム塩型前駆体高分子を熱処理することにより、ポリ(パラフェニレンビニレン)系導電性高分子が得られることが報告されている。この方法では機能性発現に不必要である置換基等を導入する必要はなく、従って、高分子量で物理的強度良好な導電性高分子が得られている。しかしながら、この方法では導電性高分子に変換した後は、更に高い導電性を付与するためには気相や溶液中で低分子ドーパントをドーピングする以外に方法がなく、従ってドーピング状態での安定性としては上述したように問題が残る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、これらの問題点を解決して物理的あるいは化学的安定性、特に熱安定性に優れた導電性複合物を提供することにあり、またその製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、ドーパントとして、イオン性が強く高分子化により固定化が可能なドーパントであるスルホン酸基を有する化合物を用い、導電性高分子と複合することにより上記課題が解決されることを見出した。また、本発明者らは加熱により脱離が容易なイオン性置換基を有する導電性高分子の前駆体高分子とスルホン酸を混合後、あるいは所望によりそれらと熱可塑性高分子を混合後、かかる混合物を熱処理することにより、該前駆体高分子が導電性高分子に変わるとともに、混合したスルホン酸のアニオンがドーパントとして均一に該導電性高分子内に導入された導電性複合物が得られることを見出した。また、本発明者らは該前駆体高分子とスルホン酸との前記混合物の溶液を用いて前記混合物を所望の形状に賦形した後、熱処理することにより、所望の形状の導電性複合物が得られることを見出した。
【0009】すなわち本発明は、スルホン酸アニオン系ドーパント及びポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子からなる導電性複合物に関するものであり、またその製造法に関する。更に詳しくは、スルホン酸アニオン系ドーパント及び[−Ar−CH=CH−](式中、Arは不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基を表す)を繰り返し単位として含むポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子からなる導電性複合物及びその製造法に関する。
【0010】また、本発明は、スルホン酸アニオン系ドーパント、[−Ar−CH=CH−](式中、Arは不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基を表す)を繰り返し単位として含むポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子及び熱可塑性高分子からなる導電性複合物及びその製造法に関する。
【0011】また、本発明は、前記スルホン酸アニオンが、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物及び一般式(I)で表されるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸(式中、mは4以上の整数、R3 は炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基、R4 はアルキレンまたはオキシアルキレン基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のスルホン酸のアニオンである前記導電性複合物及びその製造法に関する。
3 −(R4m −OSO3 H (I)
【0012】更に、本発明は、ポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子の前駆体高分子である一般式(II)で表されるポリ(アリーレンエチレンスルホニウム塩)及びスルホン酸を混合後、あるいは所望によりそれらと熱可塑性高分子を混合後、かかる混合物を100℃以上350℃以下の範囲の温度で熱処理することを特徴とする前記導電性複合物の製造法に関する。
【化2】


(式中、Arは不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基、R1、R2 は炭素数1〜10のアルキル基(環状も含む)、X- はハロゲンのイオン、nは3以上の整数を表す。)
【0013】更に、本発明は、前記スルホン酸がスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物及び前記一般式(I)で表されるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸(式中、mは4以上の整数、R3 は炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基、R4 はアルキレンまたはオキシアルキレン基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のスルホン酸である前記製造法に関する。
【0014】本発明によれば、高分子ドーパントと導電性高分子あるいは導電性高分子の前駆体高分子を各々溶液同志で混合が可能なため、従来の導電性組成物に比べてドーパントが均一に多量に含まれる導電性複合物が得られ、従って従来の導電性組成物と比較して高導電率で安定な複合物が提供される。
【0015】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明において、ポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子の前駆体高分子である一般式(II)で表されるポリ(アリーレンエチレンスルホニウム塩)は高温で処理することによりスルフィドとハロゲン化水素が脱離し、導電性高分子であるポリ(アリーレンビニレン)系に変換する。このようにスルホニウム塩型前駆体高分子を高温で処理することにより得られるポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子の例としては、ポリ(パラフェニレンビニレン)やポリ(ジメトキシフェニレンビニレン)等のポリ(フェニレンビニレン)類、ポリ(チエニレンビニレン)やポリ(3−アルキル−チエニレンビニレン)等のポリ(チエニレンビニレン)類、ポリ(ピロリレンビニレン)類、ポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)やポリ(2、6−ナフタレンジイルビニレン)等のポリ(ナフタレンジイルビニレン)類、ポリ(ビフェニレンビニレン)類、ポリ(フリレンビニレン)類、ポリ(アントラセンジイルビニレン)類、ポリ(2,5−ピリジンジイルビニレン)類、ポリ(インドリレンビニレン)類等が挙げられる。
【0016】前記一般式(II)で表されるこれらのスルホニウム塩型前駆体高分子の合成は、例えば米国特許3706677号の方法を用いることができる。即ち、不飽和環状化合物のビスハロゲン化メチル体とスルフィドを反応させ、不飽和環状化合物のビススルホニウム塩を得、次いで、このスルホニウム塩を塩基により重合させることによりスルホニウム塩型前駆体高分子が得られる。
【0017】ここで、前駆体高分子のスルホニウム塩基のアルキル基R1 及びR2 は、ビスハロゲン化メチル体に反応させるスルフィドの種類を変えることにより炭素数1〜10の所望のアルキル基あるいは環状アルキレン基等の環状基とすることができる。これらのスルフィドの例としては、ジメチルスルフィド、メチルエチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、テトラヒドロチオフェン等が挙げられる。得られる前駆体高分子のスルホニウム塩基のアルキル基は、一般的に炭素数が多いほど水溶性が低くなるため、該前駆体とスルホン酸の混合を水溶液系で行って本発明の導電性複合体を得る場合には、好ましいアルキル基の炭素数としては1〜10であり、1〜5が特に好ましい。また、X- は塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンのイオンを表す。
【0018】また、前記一般式(II)で表されるこれらのスルホニウム塩型前駆体高分子及び[−Ar−CH=CH−]を繰り返し単位として含むポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子において、Arは、不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基であり、例えば、フェニレン、ピロリレン、チエニレン、フリレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、ビフェニレン、ピリジンジイル、インドリレン等の環式または複素環式化合物の二価基が挙げられる。
【0019】本発明において用いられるスルホニウム塩型前駆体高分子の分子量は特に限定されないが、大きいほど得られる導電性複合物の物理的強度、安定性は増すが、大きすぎるとスルホニウム塩型前駆体高分子の水溶性が小さくなりスルホン酸との混合が困難になる。また、繰り返し単位数が2以下では十分な導電性が得られない。従って好ましいnの値としては3以上1000以下であり、10以上500以下が特に好ましい。
【0020】本発明に用いるスルホン酸としては、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)及びナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物等のポリスルホン酸が挙げられる。これらの分子量は高いほど安定性は良好であるが、分子量が高過ぎると混合溶液でのポリイオンコンプレックスが溶液中に析出し易くなり、成膜等の加工性という点で問題が生じる。従って、複合させる導電性高分子によっても異なるが、スルホン酸の分子量としては300から50万程度が適当であり、好ましくは、1000以上1万以下である。
【0021】本発明の他のスルホン酸としては、前記一般式(I)で表されるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸が挙げられる。かかるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸においても分子量は高いほど安定性は良好であるが、分子量が高過ぎると混合溶液でのポリイオンコンプレックスが溶液中に析出しやすくなり、成膜等の加工性という点で問題が生じる。また、分子量が高過ぎるとドーパントとして有効なスルホン酸基の導入量が実質的に小さくなり、ドーピングレベルで不利となる。従って、適当なmの値としては4以上50以下であり、好ましくは5以上20以下である。
【0022】本発明のスルホン酸として混合後に加熱等で高分子化するスルホン酸モノマーも利用できる。この様な低分子体を混合後に重合できれば、成膜等の加工性で利点が大きい。この様な混合後重合可能な低分子体の例としては、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びその誘導体が挙げられる。これらの中でパラスチレンスルホン酸が反応性、安定性等の点で優れており、特に好ましい。
【0023】本発明による導電性複合物において、ポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子とスルホン酸アニオン系ドーパントはスルホン酸基対アリーレンビニレン繰り返し単位のモル比が0.01以上10以下で用いることが好ましく、更に好ましくは0.1以上2以下である。モル比が0.01以下の場合、ドープ量が小さく電気伝導度向上に効果がない。また10以上の場合、複合物中のスルホン酸の量が多過ぎるため、導電性高分子の電気伝導性を阻害することになり好ましくない。
【0024】本発明による導電性複合物は、前記一般式(II)で表される前駆体高分子とスルホン酸を適当な溶媒に溶解して混合して両者の混合物溶液とし、その混合物を熱処理することを特徴とする方法により製造できる。前記前駆体高分子及びスルホン酸がともに水溶性の場合には、溶媒は水を用いることが出来、また、前記前駆体高分子及びスルホン酸がともに有機溶媒に可溶性の場合には、有機溶媒を用いることが出来る。有機溶媒としては、例えば、m−クレゾール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール類やクロロホルム、テトラクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性有機溶媒等が挙げられる。また、スルホン酸が混合後重合可能な低分子体である場合には、該スルホン酸と前記前駆体高分子の混合物は水に可溶である場合が多く、かかる混合物を水溶液とすることが出来る。また、前記両者がともに水溶性であるにもかかわらずその混合物が水に難溶性もしくは不溶性の場合において、水系で混合後沈殿した混合物が有機溶媒に溶解する場合にはその溶液から本発明の導電性複合物を得ることができる。更にまた、前記前駆体高分子及びスルホン酸は水と混ざり得る有機溶媒と水の混合物を溶媒とすることが出来る。
【0025】また、本発明による導電性複合物は、前記一般式(II)で表される前駆体高分子、スルホン酸及び所望により熱可塑性高分子を混合後、その混合物を熱処理することを特徴とする方法により製造できる。熱可塑性高分子としては、例えば、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0026】本発明による導電性複合物の製造法においては、前駆体高分子及びスルホン酸あるいは所望によりそれらと熱可塑性高分子の混合方法や溶液の濃度は特に限定されない。例えば、通常は10℃から50℃で、0.1wt%から10wt%の濃度で10分から1時間程度撹拌混合する。混合時に高温にすると前駆体高分子の置換基が脱離する可能性があり、また低温では溶解性、粘度の点で好ましくない。
【0027】本法において、前記前駆体高分子及びスルホン酸の混合物あるいは所望により熱可塑性高分子を含む混合物は、熱処理を施す前に、混合物溶液を用いてスピンコート法により基板上に成膜する等の加工をして所望の形状に加工することが出来るため、その後の熱処理により所望の形状に加工された導電性複合物に変換することができる。
【0028】本発明による導電性複合物の製造法において、熱処理の温度は、前記一般式(II)で表される前駆体高分子性やスルホン酸によって異なるが、通常100℃以上350℃以下で行なわれ、好ましい範囲としては150℃から300℃の範囲である。この場合の熱処理時間は前駆体高分子やスルホン酸及び温度によって異なるが、通常0.5時間以上の時間を要する。また、熱処理の雰囲気としては、減圧下や不活性雰囲気下等の酸素を排した状態が好ましい。また、本発明では熱処理効果を高めるために、塩化水素等、他の触媒作用を有する気体を併用しても一向に差し支えない。
【0029】前述したように、スルホニウム塩型前駆体高分子は高温で処理することによりスルフィドとハロゲン化水素が脱離し、ポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子に変換する。この場合の脱離の割合は熱処理の温度、時間等で変化するが、脱離の割合が前駆体高分子の繰り返し単位に対するモル比で1に近いほど得られた複合物の電気伝導性としては高くなり、好ましいが、通常0.6以上であれば導電性複合物として適用可能である。
【0030】本発明の導電性複合物は良好な電気伝導性を示すが、本発明の導電性複合物は更に他の方法で酸化させることにより電気伝導性を向上させた複合物を包含する。酸化方法として特に制限はないが、酸化剤に例えば硫酸、五弗化ヒ素、ヨウ素、過硫酸塩、過マンガン酸塩、ベンゾイルパーオキサイド、DDQ等を用いた化学的手法や、電気化学的手法が挙げられる。
【0031】
【実施例】以下に実施例を示して、本発明を更に詳細に説明する。
実施例11,4−ビスクロロキシレン5gをメタノール−水(4:1)混合溶媒100ccに溶解し、次いでジメチルスルフィド10mlを加え、50℃で20時間反応させた。反応終了後、溶液を濃縮しアセトンで結晶化させ、パラキシレンビスジメチルスルホニウムクロライド7gを得た。上記生成物を250ccの水に溶解し、これに水酸化ナトリウム0.94gを水250ccに溶解した水溶液を窒素雰囲気中、0℃で添加した。約5時間反応後、塩酸で中和し、室温に戻した後、水中で約20時間透析を行なった。この溶液を濃縮することにより、ポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子であるポリ(パラキシリレンジメチルスルホニウムクロライド)の1.0wt%水溶液を得た。この溶液の回転粘度計から求めた粘度は80cpsであった。また、この前駆体高分子のGPCから求めた重量平均分子量は約105 (繰り返し単位数nは約500)であった。得られた前駆体高分子の熱重量/質量分析を行ったところ、約100℃から170℃の範囲でスルフィドと塩化水素が脱離していることを確認できた。また、得られた前駆体高分子のみをガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成したところ黄色膜が得られた。この膜の赤外スペクトル、紫外可視吸収スペクトルは文献(斎藤ら、ポリマー、31巻、1137頁(1990年))に記載されているポリ(パラフェニレンビニレン)のスペクトルと一致した。またC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、前駆体高分子の繰り返し単位1モルに対して、0.02モルのスルホニウム塩しか残存しておらず、前駆体高分子がほとんどポリ(パラフェニレンビニレン)に変換していることが確認された。
【0032】上記により得られた前駆体高分子の水溶液を室温で撹拌しながら、H型ポリ(スチレンスルホン酸)(分子量1万)の1.0wt%水溶液を等重量添加した。この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/ポリ(スチレンスルホン酸)からなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したポリ(スチレンスルホン酸)の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は107 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-3S/cmであった。
【0033】実施例2実施例1と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0034】実施例3実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液を室温で撹拌しながら、H型ナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物(3量体)の1wt%水溶液を等重量添加した。この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/ナフチルスルホン酸3量体からなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したナフチルスルホン酸3量体の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は107 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-3S/cmであった。
【0035】実施例4実施例3と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0036】実施例5実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液を室温で撹拌しながら、H型スルホン化モノメチルポリエチレングリコール(分子量約350)の1wt%水溶液を等重量添加後、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/スルホン化モノメチルポリエチレングリコールからなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したスルホン化モノメチルポリエチレングリコールの大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-4S/cmであった。
【0037】実施例6実施例5と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)の測定値は10S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0038】実施例7実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液を室温で撹拌しながら、スルホン化オリゴオキシエチレン(C1225O(CH2 CH2 O)8 SO3 H)の1wt%水溶液を等重量添加したところ、白色の固体が沈殿した。この固体のC、H、S、Clの元素分析を行なったところ、前駆体高分子の繰り返し単位1モルに対し1モルのスルホン酸が複合していることがわかった。この前駆体高分子/スルホン酸複合物をm−クレゾールに溶解し、1wt%溶液とした。次いで、この溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/スルホン化オリゴオキシエチレンからなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したスルホン化オリゴオキシエチレンの大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-4S/cmであった。
【0039】実施例8実施例7と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)の測定値は10S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0040】実施例9実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液を室温で撹拌しながら、ラウリル硫酸の0.5wt%水溶液を等重量添加したところ、白色の固体が沈殿した。この固体のC、H、S、Clの元素分析を行なったところ、前駆体高分子の繰り返し単位1モルに対し1モルのラウリル硫酸が複合していることがわかった。この前駆体高分子/ラウリル硫酸複合物をm−クレゾールに溶解し、1wt%溶液とした。次いで、この溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/ラウリル硫酸からなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したラウリル硫酸の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-4S/cmであった。
【0041】実施例10実施例9と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)の測定値は102 S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0042】実施例11実施例7で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子/スルホン化オリゴオキシエチレン複合物の1wt%m−クレゾール溶液を市販のポリカーボネートの1wt%クロロホルム溶液と重量比で2:1に混合し、次いで、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、150℃で12時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/スルホン化オリゴオキシエチレン/ポリカーボネートからなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、2端子法)は10-5S/cmであった。また、このフィルムは熱可塑性があり、約100℃で種々の金属電極への熱圧着が可能であった。
【0043】実施例12実施例7で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子/スルホン化オリゴオキシエチレン複合物の1wt%m−クレゾール溶液を市販のポリメタクリレートの1wt%クロロホルム溶液と重量比で2:1に混合し、次いで、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、130℃で12時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/スルホン化オリゴオキシエチレン/ポリメタクリレートからなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、2端子法)は10-5S/cmであった。また、このフィルムは熱可塑性があり、約100℃で種々の金属電極への熱圧着が可能であった。
【0044】比較例1実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液をそのままガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、ポリ(パラフェニレン)膜を得た。この表面抵抗(25℃)は1012Ω/□以上であった。また、この膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、2端子法)は10-7S/cm以下であった。
【0045】比較例2比較例1と同様の方法で得た自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、2端子法)を測定したところ、10-7S/cm以下に低下していた。
【0046】比較例3実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液にパラトルエンスルホン酸の1wt%水溶液を等量添加後、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、ポリ(パラフェニレン)/パラトルエンスルホン酸からなる複合膜を得た。この複合膜の表面抵抗(25℃)は1012Ω/□以上であった。また、この膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、2端子法)は10-7S/cmであった。
【0047】実施例13パラスチレンスルホン酸の1wt%水溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、150℃で3時間焼成したところ、淡褐色の膜が得られた。この膜は水に溶解し、強酸性を示した。この膜の水溶液中のGPCを測定したところ、その分子量は約2000であり(ポリ(スチレンスルホン酸)換算)、パラスチレンスルホン酸が、加熱により重合していることが確認された。そこで、実施例1で得られたポリ(パラフェニレンビニレン)の前駆体高分子の1wt%水溶液にパラスチレンスルホン酸の1wt%水溶液を等量添加後、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、150℃で3時間焼成後、200℃で8時間焼成し、黄褐色のポリ(パラフェニレンビニレン)/ポリ(パラスチレンスルホン酸)からなる複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したパラスチレンスルホン酸の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は107 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-2S/cmであった。
【0048】実施例14実施例13と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は102 S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0049】実施例151,4−ビスクロロメチルナフタレン2gをメタノール−水−アセトン(2:1:2)混合溶媒50ccに溶解し、次いでジメチルスルフィド2.6mlを加え、50℃で20時間反応させた。反応終了後、溶液を濃縮しアセトンで結晶化させ、1,4−ナフタレンジイルエチレンビス(メチレンジメチルスルホニウムクロライド)2.5gを得た。上記生成物1.7gを50ccの水に溶解し、これに水酸化ナトリウム0.2gを水50ccに溶解した水溶液を窒素雰囲気中、0℃で添加した。約5時間反応後、塩酸で中和し、室温に戻した後、水中で約20時間透析を行なった。この溶液を濃縮することにより、ポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)の前駆体高分子であるポリ(1,4−ナフタレンジイルエチレンジメチルスルホニウムクロライド)の0.5wt%水溶液を得た。この溶液の回転粘度計から求めた粘度は5cpsであった。また、この前駆体高分子のGPCから求めた重量平均分子量は約104 (繰り返し単位数nは約50)であった。得られた前駆体高分子の熱重量/マス分析を行ったところ、約100℃から170℃の範囲でスルフィドと塩化水素が脱離していることを確認できた。また、得られた前駆体高分子のみをガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成したところ赤色膜が得られた。この膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、前駆体高分子の繰り返し単位1モルに対して、0.01モルのスルホニウム塩しか残存しておらず、前駆体高分子がほとんどポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)に変換していることが確認された。
【0050】上記により得られた前駆体高分子の水溶液を室温で撹拌しながら、H型ポリ(スチレンスルホン酸)(分子量1万)の0.5wt%水溶液を等重量添加した。次いで、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、赤褐色のポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)/ポリ(スチレンスルホン酸)からなる複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したポリ(スチレンスルホン酸)の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-4S/cmであった。
【0051】実施例16実施例15と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10-1S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10-1S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0052】実施例17実施例15により得られた前駆体高分子の水溶液を室温で撹拌しながら、スルホン化オリゴオキシエチレン(C1225O(CH2 CH2 O)8 SO3 H)0.5wt%水溶液を等重量添加したところ、白色の固体が沈殿した。この固体のC、H、S、Clの元素分析を行なったところ、前駆体高分子の繰り返し単位1モルに対し1モルのスルホン酸が複合していることがわかった。この前駆体高分子/スルホン酸複合物をm−クレゾールに溶解し、1wt%溶液とした。次いで、この溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、赤褐色のポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)/スルホン酸からなる導電性複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したスルホン化オリゴオキシエチレンの大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108 Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、2端子法)は10-5S/cmであった。
【0053】実施例18実施例17と同様の方法で得た複合物膜の自立フィルムを、硫酸、窒素雰囲気下に約8時間(25℃)さらした後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10-1S/cmであった。また、更に窒素雰囲気下、200℃で8時間処理した後、電気伝導度(25℃、4端子法)を測定したところ、その値は10-1S/cmであり、高温で安定な高電気伝導性フィルムであることが確認できた。
【0054】次いで、この混合溶液をガラス基板上に塗布し、窒素雰囲気中、200℃で8時間焼成し、赤褐色のポリ(1,4−ナフタレンジイルビニレン)/ポリ(スチレンスルホン酸)からなる複合物膜を得た。この複合物膜のC、H、S、Clの元素分析を行ったところ、混合したポリ(スチレンスルホン酸)の大部分が膜中に残存していることを確認できた。この複合物膜の表面抵抗(25℃)は108Ω/□であった。また、この複合物膜を基板から剥離することにより自立フィルムが得られた。このフィルムの電気伝導度(25℃、4端子法)は10-4S/cmであった。
【0055】
【発明の効果】本発明によれば、スルホン酸を均一に前記前駆体高分子と混合した混合物溶液とすることが出来るため、その後の熱処理により導電性複合物を所望の形状で得ることが出来る等賦形性、加工性に優れた製造法が提供される。また得られる導電性複合物は、安定なドーパントが均一に複合されているため、高電導性で物理的あるいは化学的安定性、特に熱安定性に優れている。また、本発明の導電性複合物は導電性材料としては良好な膜強度を示し、容易に数十μm程度の均一な自立フィルムとして得ることができ、また、それ以下の薄いものでも自立フィルムとして調製可能である。更にまた、本発明によれば、所望により熱可塑性高分子を含む導電性複合物が提供され、金属やセラミックスとの接着性や接合性を改善出来、あるいはまた加熱接着性導電性テープ等その応用範囲が更に広がる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 スルホン酸アニオン系ドーパント及び[−Ar−CH=CH−](式中、Arは不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基を表す)を繰り返し単位として含むポリ(アリーレンビニレン)系導電性高分子からなる導電性複合物。
【請求項2】 熱可塑性高分子を含む請求項1記載の導電性複合物。
【請求項3】 スルホン酸アニオンが、ポリ(ビニルスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、ナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物及び一般式(I)で表されるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸(式中、mは4以上の整数、R3 は炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基、R4 はアルキレンまたはオキシアルキレン基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のスルホン酸のアニオンである請求項1又は2記載の導電性複合物。
3 −(R4m −OSO3 H (I)
【請求項4】 一般式(II)で表されるポリ(アリーレンエチレンスルホニウム塩)及びスルホン酸を混合後、あるいは所望によりそれらと熱可塑性高分子を混合後、その混合物を100℃以上350℃以下の範囲の温度で熱処理することを特徴とする請求項1乃至3記載の導電性複合物の製造法。
【化1】


(式中、Arは不飽和環状化合物または不飽和ヘテロ環状化合物の二価基、R1、R2 は炭素数1〜10のアルキル基(環状も含む)、X- はハロゲンのイオン、nは3以上の整数を表す。)
【請求項5】 スルホン酸がスチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(ビニルスルホン酸)、ナフチルスルホン酸のホルマリン縮合物及び前記一般式(I)で表されるアルキルまたはオキシアルキルスルホン酸(式中、mは4以上の整数、R3 は炭素数1〜20のアルキル、アルケニル、アルコキシまたはアリール基、R4 はアルキレンまたはオキシアルキレン基)からなる群から選ばれた少なくとも一種のスルホン酸である請求項4記載の製造法。