説明

導電膜形成用感光材料、導電膜および導電膜の製造方法

【課題】表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜が形成される銀塩乳剤を含有する感光層を有する導電膜形成用感光材料を提供すること
【解決手段】支持体と、該支持体上に銀塩乳剤および0.025mmol/m〜0.126mmol/mの範囲のかぶり抑制剤を含有する感光層を有する導電膜形成用感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜形成用感光材料、導電膜および導電膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電膜として、金属等の導電性の細線を透明基板上にメッシュパターン状に形成したものが知られている。
導電膜の製造方法としては、透明基材表面に銀塩乳剤を含む感光層を有する銀塩感光材料をメッシュパターン状に露光し、現像処理して当該メッシュパターン状の現像銀を形成し、これにめっきを施して金属で構成された導電性パターンを形成する製造方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような銀塩感光材料、特にハロゲン化銀感光材料を用いて製造した現像銀を含む導電性パターンの当該導電性パターンを含む導電膜に対して、更にカレンダー処理などの平滑化処理を行うことで、導電膜の表面抵抗を一段と低減できることも知られている(例えば特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−221564号公報
【特許文献2】特開2008−251417号公報
【特許文献3】WO2007/037545
【特許文献4】WO2008/123437
【特許文献5】WO2008/038764
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カレンダー処理などによって平滑化処理した導電膜の表面抵抗を更に低減させるために、銀塩乳剤を含有する感光層の銀換算量を増やす方法が考えられる。このような銀換算量を増やした銀塩感光材料を用いて得られた現像銀を含む導電性パターンを形成した導電膜に平滑化処理を行ったところ、得られた導電膜の透明部分、即ち現像銀が形成されている部分以外の透明部分に、「黒ポツ」と呼ばれる黒色の斑点が多数発生してしまうことが新たに見い出された。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜が得られる、銀塩乳剤を含む感光層を有する導電膜形成用感光材料を提供することを目的とする。また、本発明は上記導電膜形成用感光材料から導電膜を製造する製造方法を提供することを目的とする。更にまた、本発明は表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。
<1> 支持体と、銀塩乳剤および0.025mmol/m〜0.126mmol/mのかぶり抑制剤を含有する感光層とを有する導電膜形成用感光材料。
<2> 前記かぶり抑制剤が窒素原子含有へテロ環化合物である<1>に記載の導電膜形成用感光材料。
<3> 前記かぶり抑制剤がインダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類およびトリアザインドリジン類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である<1>に記載の導電膜形成用感光材料。
<4> 前記かぶり抑制剤がベンゾトリアゾールである<1>に記載の導電膜形成用感光材料。
<5> 支持体と、銀塩乳剤および窒素原子含有へテロ環化合物を含有する感光層とを有する導電膜形成用感光材料。
<6> 前記窒素原子含有ヘテロ環化合物が、インダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類およびトリアザインドリジン類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である<5>に記載の導電膜形成用感光材料。
<7> 前記窒素原子含有ヘテロ環化合物が、ベンゾトリアゾール類から選ばれた少なくとも一つの化合物である<5>に記載の導電膜形成用感光材料。
<8> 前記感光層が、前記銀塩乳剤中の銀塩を銀換算量で8g/m以上含有する<1>〜<7>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料。
<9> 前記感光層の銀/ゼラチンの体積比率が1以上である<1>〜<8>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料。
<10> <1>〜<9>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像して得られる導電膜。
<11> <1>〜<9>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る平滑化処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。
<12> <1>〜<9>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を水蒸気処理して導電膜を得る水蒸気処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。
<13> <1>〜<9>のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を還元処理して導電膜を得る還元処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜が得られる、銀塩乳剤を含む感光層を有する導電膜形成用感光材料を提供することができる。また、本発明によれば上記導電膜形成用感光材料から導電膜を製造する製造方法を提供することができる。更にまた、本発明によれば表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による導電膜形成用感光材料およびそれを用いた導電膜の製造方法について説明する。
なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0010】
〈導電膜形成用感光材料〉
本発明の一実施態様に係る導電膜形成用感光材料は、支持体および当該支持体上に銀塩乳剤および0.025mmol/m〜0.126mmol/mのかぶり抑制剤を含有する感光層を有するものである。
本発明の別の実施態様に係る導電膜形成用感光材料は、支持体および当該支持体上に銀塩乳剤および窒素原子含有へテロ環化合物を含有する感光層を有するものである。
[支持体]
本発明に用いられる導電膜形成用感光材料の支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料については、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリ
アミド、ポリイミド、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0011】
支持体の厚みは95μm以上であることが好ましく、上限値は150μmであることが好ましい。このような厚みの支持体を使用した場合には、後述の導電膜の製造方法に含まれる平滑化処理として、一対のロールのニップ間を通過させる処理を採用する場合に、その処理によってしわが発生して変形してしまい不良品となってしまうことが抑制されるという点で好ましい。支持体の厚みの更に好ましい範囲は95μm〜135μmである。
【0012】
[感光層]
支持体上の感光層は、銀塩乳剤および0.025mmol/m〜0.126mmol/mのかぶり抑制剤を含有する。
【0013】
<銀塩乳剤>
本発明で用いられる銀塩乳剤の銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0014】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀は保護コロイドとしてのバインダ中に粒子として分散含有するハロゲン化銀乳剤として用いられる。ハロゲン化銀乳剤に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0015】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせてもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀を50モル%以上含有する、塩臭化銀または沃塩臭化銀が用いられる。
【0016】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀部の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1nm〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1nm〜100nmであることがより好ましく、1nm〜50nmであることがさらに好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0017】
本発明で使用される感光層の好ましい態様に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著 Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikmanほか著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0018】
<バインダ>
銀塩乳剤には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、この乳剤を含む感光層を支持体上に形成した場合における感光層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明においては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダの比率が多いことが好ましい。
【0019】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0020】
好ましくはゼラチンが使用される。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他(アミノ基、カルボキシル基を修飾したフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができるが、銀塩乳剤調製工程において使用するゼラチンはアミノ基の正の電荷を無電荷あるいは負の電荷に変えたゼラチンを用いることが好ましいが、さらにフタル化ゼラチンを用いるのがより好ましい。
【0021】
感光層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、ハロゲン化銀の分散性と感光層と支持体との密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。導電膜の観点からは、感光層中のバインダの含有量は少ない方が好ましい。これらの観点から、銀/バインダ体積比率が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。また、銀/バインダ体積比率の上限は4/1が好ましく、3/1がより好ましい。
【0022】
<溶媒>
上記感光層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。本発明の感光層に用いられる溶媒の含有量は、前記感光層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30質量%〜90質量%の範囲であり、50質量%〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0023】
<かぶり抑制剤>
本発明では、かぶり抑制剤とは導電膜を製造した際に、導電膜の透明な開口部に黒ポツが生じることを抑制することが可能な化合物を意味する。感光層に含有させるかぶり抑制剤としては、好ましくは窒素原子含有へテロ環化合物から選ばれ、インダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類およびトリアザインドリジン類が含まれる。これらの化合物は、黒ポツの生成を抑制することが可能であると共に、かぶり抑制剤の添加に伴う導電膜の導電性を低下させることが少ない点で好ましい。
【0024】
上記インダゾール類の好ましい具体例には、5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾールが含まれる。
上記イミダゾール類の好ましい具体例には、2−メルカプトイミダゾールが含まれる。
上記ベンゾイミダゾール類の好ましい具体例には、6−ニトロベンゾイミダゾールが含まれる。
上記トリアゾール類の好ましい具体例には、2−メルカプトトリアゾールが含まれる。
上記ベンゾトリアゾール類の好ましい具体例には、ベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、5−ニトロベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5
−ブロモベンゾトリアゾールが含まれる。
上記テトラゾール類の好ましい具体例には、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールが含まれる。
上記トリアザインドリジン類の好ましい具体例には、5−メチル−7−オキシ−1,3,4−トリアザインドリジンが含まれる。
これらの内、特にベンゾトリアゾール類が好ましく、中でもベンゾトリアゾールは、導電膜の導電性を低下させることが少なく、かつ透明部分での黒ポツの発生を効果的に抑える性能に優れる点で更に好ましい。
【0025】
本発明においては、支持体上に設けられる感光層中に含まれるかぶり抑制剤の量(即ち、単位面積当たりの量)が重要であり、0.025mmol/m〜0.126mmol/mの範囲とされる。かぶり抑制剤の量が0.025mmol/mよりも少なくなると黒ポツの発生が導電膜としての許容範囲を超えて多くなってしまう。逆に0.126mmol/mよりも多くなると導電膜の導電性が低くなりすぎて導電膜として使用できなくなる。
かぶり抑制剤の量の好ましい範囲は黒ポツの発生量が少なく、しかも導電膜の表面抵抗の上昇が少ないという点から0.04mmol/m〜0.12mmol/mであり、更に好ましい範囲は0.06mmol/m〜0.11mmol/mである。
本発明においては、支持体上に設けられる感光層中に含まれる上記かぶり抑制剤の質量基準に基づく量は、3mg/m〜15mg/mの範囲とされることが有利である。
【0026】
本発明は銀塩乳剤を感光層に使用した導電膜形成用感光材料であって、露光および現像処理によって形成された金属銀部が導電膜としての低い表面抵抗をもたらす機能を担いつつ、当該金属銀部のない透明部分で導電膜の透明性を確保するものである。このような導電膜形成用感光材料の感光層にかぶり抑制剤を含有させ、その量を0.025mmol/m〜0.126mmol/mの範囲とすることで、黒ポツの発生を効果的に抑制することができる。
【0027】
特に、ハロゲン化銀乳剤層を有する導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して金属銀部を有する導電膜前駆体を作製し、この導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る導電膜の製造方法の場合には、透明画像部に黒ポツが著しく発生してしまうが、上記のように、感光層にかぶり抑制剤を0.025mmol/m〜0.126mmol/mの範囲で含有させておくことにより、黒ポツの発生を抑制することができる。
【0028】
<その他の添加剤>
感光層には、その他に、従来より写真用ハロゲン化銀乳剤に添加される種々の添加剤、例えば染料、ポリマーラテックス、硬膜剤、硬調化剤、調色剤、導電化剤等、を含有させることができる。
【0029】
本発明の導電膜形成用感光材料を製造するに際して、支持体上に塗布されて感光層となる銀塩乳剤を含有する感光層用塗布液(銀塩のほか、バインダ、溶剤等を含有する液体)は、貯留タンクに一時的に貯留され、該貯留タンクから必要な量だけ排出されて送液設備を介して塗布工程に送液されることになる。送液設備としては、往復動ポンプが好ましく採用され、具体的には、プランジャーポンプやダイヤフラムポンプが使用される。
【0030】
ここで、プランジャーポンプを使用した場合と、ダイヤフラムポンプを使用した場合の違いを説明する。
先ず、プランジャーポンプは、ピストン部分と円筒部分の間に摺動する部分が存在する。感光層用塗布液に含まれるバインダとしてのゼラチンが豊富であれば、そのゼラチンによってハロゲン化銀が保護されているため,プランジャーポンプの摺動の影響を受けない。感光層用塗布液中の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、銀量が多い乳剤の場合は、バインダの量が少なくなるため、摺動による圧力かぶりにより還元銀が発生しやすい。そのため、塗布膜(感光層)中に、還元銀が混入し,現像工程において感光させた部分以外に黒ポツと呼ばれる好ましくない現象が発生する。
【0031】
一方、ダイヤフラムポンプは、プランジャーポンプとほぼ同様の構成を有するが、ピストン部分が伸び縮みする柔らかい膜(ダイヤフラム:ゴム等の膜)に置き換えた点で異なる。摺動部分が存在しないことから、感光層用塗布液の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、バインダに対する銀量が相対的に多い感光層用塗布液であっても、圧力かぶりを発生させずに送液することができ、好ましい。
つまり、感光層用塗布液中の銀/バインダの体積比率が0.25/1〜1/1のように、バインダに対する銀量が少ない感光層用塗布液を送液する場合は、プランジャーポンプ及びダイヤフラムポンプを使用することができ、感光層用塗布液中の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、バインダに対する銀量が多い感光層用塗布液を送液する場合は、ダイヤフラムポンプを使用することが好ましい。特に、ダイヤフラムを押えるパッキンの素材をフッ化炭素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレンとすることが好ましい。密閉性が高く、送液する感光層用塗布液の漏れや空気等の混入を防止することができるからである。
【0032】
本発明の導電膜形成用感光材料における上記感光層は、銀塩乳剤の銀塩を銀換算量で5g/m〜30g/m含有することが好ましく、さらに7g/m〜25g/m含有することがより好ましい。
また、感光層の厚みは1μm〜20μmの範囲が好ましく、更に1μmから10μmの範囲がより好ましい。
【0033】
[その他の層]
本発明の導電膜形成用感光材料は、支持体と感光層の間に下塗り層を有してもよく、感光層の上に保護層を設けてもよい。
【0034】
〈導電膜の製造方法〉
上記の導電膜形成用感光材料を用いて、導電膜を製造する方法について説明する。
本発明の導電膜の製造方法では、先ず、支持体上に銀塩乳剤を含有する感光層を有する感光材料を露光し、現像処理を施す。ここで、現像処理とは、露光により潜像核が形成されたハロゲン化銀粒子を銀に還元する現像工程と当該潜像核が形成されなかったハロゲン化銀粒子を溶解除去する定着工程を含むものである。現像処理により形成された金属銀部を含む層を支持体上に有する導電膜前駆体を平滑化処理(例えば、カレンダー処理)する。なお、金属銀部を形成する際には、金属銀より構成される非透明部分と光透過性の透明部分(または絶縁性部分)を形成してもよく、全面露光することでフイルムの全面に金属銀部を形成することもできる。なお、本発明によって得られる導電膜は、パターン露光によって金属銀部を含む層が支持体上に形成されたものであるが、パターン露光は走査露光方式であっても面露光方式であってもよい。また、金属銀部は露光部に形成される場合と未露光部に形成される場合とがある。
【0035】
パターンの例としては、本発明による導電膜を電磁波シールド膜に供する場合にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンであり、パターンの形状の更なる詳細は目的に応じて適宜調整することができる。
【0036】
本発明の導電膜の製造方法は、導電膜形成用感光材料の感光層と現像処理の組合せ形態によって、次の3通りの態様が含まれる。なお、何れの場合も現像処理の前にパターン露光する。
【0037】
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀含有感光層を化学現像又は熱現像して金属銀部を当該感光層に形成させる態様。
(2)物理現像核を含むハロゲン化銀含有感光層を溶解物理現像して金属銀部を当該感光
層に形成させる態様。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀含有感光層と、物理現像核を含む非感光性層(受像層)を有する受像シートを重ね合わせて、ハロゲン化銀溶剤を含む現像液で現像して受像層に金属銀部を形成させる、いわゆる銀塩拡散転写現像方式により金属銀部を形成させる態様。
【0038】
いずれの態様もパターン露光時の露光部に現像銀が形成されるネガティブプロセスの態様と逆にパターン露光時の未露光部に現像銀が形成されるポジティブプロセスの態様が可能である。例えば、上記(1)の態様の場合には、現像処理にリバーサル処理プロセスを使用することにより、ポジティブプロセスの態様となる。また、上記(3)の態様の場合には、感光性ハロゲン化銀含有感光層として、内部潜像型乳剤を用い、現像液として表面現像液を使用することにより、ネガティブプロセスの態様となる。
【0039】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Prosess,第4版」等に解説されている。
【0040】
[露光]
本発明の製造方法では、支持体上に設けられた感光層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0041】
[現像処理]
本発明の製造方法では、感光層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。
【0042】
本発明の製造方法では、好ましくは上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。また、上記現像処理に続き、必要により水洗し、更に酸化処理、還元処理、平滑化処理、脱バインダ処理(例えば、温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理など)、めっき処理などのいずれかの処理の少なくとも一つを行うことにより、さらに導電性の高いフイルムを得ることができる。なお、本発明では、現像温度、定着温度及び水洗温度は25℃以下で行うことが好ましい。
【0043】
本発明の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着工程を含むことができる。本発明の製造方法において、定着工程は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0044】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0045】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得やすいため好ましい。
【0046】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部は、銀及び非導電性の高分子からなり、銀/非導電性高分子の体積比率が2/1以上であることが好ましく、3/1以上であることがさらに好ましい。
【0047】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、ハロゲン化銀乳剤の調製時に、ハロゲン化銀粒子にロジウムイオンまたはイリジウムイオンをドープさせる硬調化手段が挙げられる。
【0048】
[酸化処理]
本発明の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0049】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、感光層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0050】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0051】
なお、本発明の製造方法においては、線幅、開口率、銀含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体上に形成するため、十分な表面抵抗率を有することから、さらに金属銀部に物理現象及び/又はメッキ処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透光性の導電膜を製造することができる。
【0052】
[還元処理]
現像処理により生じる不純物である酸化銀、硫化銀を除去するために、現像処理後に水洗処理を行い、還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。
【0053】
還元水溶液としては、亜硫酸ナトリウム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液pHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0054】
[平滑化処理]
本発明の製造方法では、導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、支持体上に金属銀部(全面金属銀部、金属メッシュ状パターン部又は金属配線パターン部)を形成した感光層に由来する層を有する導電膜前駆体に平滑化処理を施す。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。さらに、金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い電磁波シールド性と高い透光性とを同時に有し、且つ、メッシュ部が黒色の透光
性電磁波シールド膜及び高い導電性と高い絶縁性とを同時に有する、ピンホールのないプリント基板が得られる。
【0055】
平滑化処理は、第1カレンダーロールと第2カレンダーロールとを各々の回転軸が平行となるように互いに対向して配置した組合せで構成される少なくとも一対のロールのニップ間を2940N/cm以上の線圧力で前記導電膜前駆体を通すことにより行うことが好ましい。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理を「カレンダー処理」と記す。
【0056】
上記第1カレンダーロールおよび第2カレンダーロールに使用されるロールとしては、少なくともその表面を形成する素材がエポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の樹脂で構成されている樹脂製ロールおよび表面が金属で構成されている金属製ロールが含まれる。特に、支持体の一方の表面のみに感光層を有する導電膜形成用感光材料から作成された導電膜前駆体の場合には、しわの発生を抑制するために、以下の条件にてカレンダー処理することが好ましい。
【0057】
(1)現像処理を終えた導電膜前駆体の支持体の厚みが95μm以上であること。
(2)カレンダー処理は互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて導電膜前駆体を押圧すること。
(3)支持体に接触する第1カレンダーロールが樹脂製ロールであること。
【0058】
さらに好ましい条件としては、以下の通りである。少なくともいずれか1つを満足すればよい。
(a)導電膜前駆体の金属銀部に接触する第2カレンダーロールが金属製ロールであること。
(b)金属製ロールの表面が鏡面加工されていること。
(c)金属製ロールの表面がエンボス加工されていること。
(d)エンボス加工された金属製ロールの表面粗さは、最大高さRmaxで0.05s〜0.8sであること。
(e)金属銀部は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であること。
(f)カレンダー処理は、導電膜前駆体に対してニップ間の線圧が2940N/cm〜5880N/cmで行うこと。
(g)カレンダー処理は、導電膜前駆体の搬送速度を10m/分〜50m/分で行うこと。
(h)導電膜前駆体の表面抵抗をR1、導電膜の表面抵抗をR2としたとき、
0.58≦R2/R1≦0.77
であること。
【0059】
カレンダー処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュ状パターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダ種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0060】
以上に述べたように本発明の製造方法によって、表面抵抗が1.3Ω/□以下という高い導電性を有し、しかも黒ポツの少ない導電膜を製造することができる。
【0061】
すなわち、本発明の導電膜の製造方法によれば、支持体上に銀塩乳剤を含有する感光層を有する感光材料を露光し現像処理することで、支持体上に0.1g/m〜10g/mである銀を含む金属銀部を有し、表面抵抗が1.3Ω/□以下である導電膜(但し、金属銀部上にさらにめっき処理により形成された金属層は形成されていない)を得ることができる。
【0062】
〔温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理〕
本発明においては、支持体上に導電性金属部を形成した後、前記の導電性金属部が形成された支持体を温水ないしはそれ以上の温度の加熱水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる処理を行うことが好ましい。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。
本プロセスは、現像処理後に実施できるが、平滑化処理後に行うことが望ましい。
【0063】
上記温水ないしはそれ以上の温度の加熱水の温度は、好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは80℃〜100℃である。また、上記水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水ないしはそれ以上の温度の加熱水への浸漬時間又は蒸気への接触時間は、使用する水溶性バインダの種類によって異なるが、支持体のサイズが60cm×1mの場合、約10秒間〜約5分間程度が好ましく、約1分間〜約5分間がさらに好ましい。
【0064】
[めっき処理]
本発明においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0065】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明とたとえば下記公報に開示の技術を組み合わせて使用することができる。
特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2008−218784号公報、特開2008−227350号公報、特開2008−227351号公報、特開2008−244067号公報、特開2008−267814号公報、特開2008−270405号公報、特開2008−27767
5号公報、特開2008−277676号公報、特開2008−282840号公報、特開2008−283029号公報、特開2008−288305号公報、特開2008−288419号公報、特開2008−300720号公報、特開2008−300721号公報、特開2009−4213号公報、特開2009−10001号公報、特開2009−16526号公報、特開2009−21334号公報、特開2009−26933号公報、特開2008−147507号公報、特開2008−159770号公報、特開2008−159771号公報、特開2008−171568号公報、特開2008−198388号公報、特開2008−218096号公報、特開2008−218264号公報、特開2008−224916号公報、特開2008−235224号公報、特開2008−235467号公報、特開2008−241987号公報、特開2008−251274号公報、特開2008−251275号公報、特開2008−252046号公報、特開2008−277428号公報、特開2009−21153号公報。

【0066】
本発明によれば、導電性に優れ、且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜を製造することができる導電膜形成用感光材料が提供されるので、この導電膜形成用感光材料を使用して製造された導電膜は、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子又は太陽電池の電極としても使用しても、画面の視認性または光線透過性を低下させることがない。また、本発明による導電膜は電流を流すことで発熱する発熱シートとしても機能するので、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能である。その場合、透明部分に黒ポツの発生が少ないので、視界を妨げることもない。更にまた、本発明のよる導電膜形成用感光材料は大面積のものを容易に製造することができるので、大面積の導電膜が必要とされる応用分野、例えば入射光の照度の低減または入射光の遮断をする調光機能を有する窓を得るために使用されるエレクトロクロミック装置の電極へ適用することも可能となる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。実施例中の「%」は指定のない限り、「質量%」を意味する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[乳剤の調製]
・1液:
水 750ml
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0068】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKClの20%水溶液、NaClの20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0069】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0070】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0071】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。
【0072】
[塗布試料の作製]
上記乳剤に表1に記載のかぶり抑制剤を表1に記載の被覆量となるように添加した。さらに2−ジエチルアミノ−4,6−ビス(ヒドロキシアミノ)−1,3,5−トリアジン8.0×10−4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10−4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−1)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0073】
【化1】

【0074】
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に下塗り層を形成した後、乳剤を用いて上記のように調製した塗布液を、下塗り層上にAg5g/m、ゼラチン0.4g/mになるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料とした。
【0075】
得られた塗布試料は、感光層の銀/バインダ体積比率(銀/ゼラチン比(vol))が1/1であり、本発明の導電膜形成用感光材料に好ましく用いられる銀/バインダ体積比率1/1以上を満足する。
【0076】
[露光、現像処理]
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0077】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH 10.5に調整
【0078】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25g/L
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8g/L
酢酸 5g/L
アンモニア水(27%) 1g/L
ヨウ化カリウム 2g/L
pH 6.2に調整
【0079】
[カレンダー処理+水蒸気処理]
上記のように現像処理したサンプル(導電膜前駆体)に対して、樹脂製ロール(鉄芯+エポキシ樹脂コート、ロール直径250mm)を第1カレンダーロールに、金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、鏡面加工、ロール直径250mm)を第2カレンダーロールに使用した一対のロールのニップ間に導電膜前駆体を線圧が3920N/cmの条件下で通過させた。このとき、支持体が第1カレンダーロールと接し、現像銀による格子状パ
ターンを有する層が第2カレンダーロールと接するように通過させた。さらに、カレンダー処理後に100℃の水蒸気に1分間接触させた。なお、本実験では、めっき処理を行わなかった。
【0080】
[評価方法]
<黒ポツ>
各サンプルについて、現像銀で構成された格子で囲まれた任意の10箇所の透明窓部について、光学顕微鏡で100倍に拡大して撮影した観察された写真の黒ポツの数を数えて、2mm×3mmの矩形面積当たりの数に換算した値とした。
<表面抵抗>
各サンプルについて、ダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所の表面抵抗を測定した値の平均値を表面抵抗値とした。
結果を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
表1の結果から、感光層にかぶり抑制剤としてのベンゾトリアゾールを含有させた試料1〜8は、かぶり抑制剤を含まない試料9に比べて黒ポツの発生が抑えられ、かつ表面抵抗が1.4Ω/□以下に維持された導電膜が得られることが分かる。特にかぶり抑制剤を0.025mmol/m〜0.126mmol/mの範囲で含有させた導電膜形成用感光材料を使用することにより、透明部分に黒ポツが発生することを低く押さえることができ、しかも表面抵抗が一段と低い導電膜を得ることができることが分かる。
以上のとおり、本発明により、導電膜形成用感光材料を使用することにより表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜を製造することできる導電膜形成用感光材料が得られ、またこの導電膜形成用感光材料を露光および現像処理することにより表面抵抗が低く且つ透明部分に黒ポツの少ない導電膜が得られると共に、カレンダー処理を施すことにより、より一段と表面抵抗の低い導電膜を製造することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、銀塩乳剤および0.025mmol/m〜0.126mmol/mのかぶり抑制剤を含有する感光層とを有する導電膜形成用感光材料
【請求項2】
前記かぶり抑制剤が窒素原子含有ヘテロ環化合物である請求項1に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項3】
前記かぶり抑制剤が、インダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類およびトリアザインドリジン類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項1に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項4】
前記かぶり抑制剤がベンゾトリアゾールである請求項1に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項5】
支持体と、銀塩乳剤および窒素原子含有へテロ環化合物を含有する感光層とを有する導電膜形成用感光材料。
【請求項6】
前記窒素原子含有ヘテロ環化合物が、インダゾール類、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、テトラゾール類およびトリアザインドリジン類からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項5に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項7】
前記窒素原子含有ヘテロ環化合物が、ベンゾトリアゾール類から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項5に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項8】
前記感光層が、前記銀塩乳剤中の銀塩を銀換算量で8g/m以上含有する請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項9】
前記感光層の銀/ゼラチンの体積比率が1以上である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像して得られる導電膜。
【請求項11】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る平滑化処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を水蒸気処理して導電膜を得る水蒸気処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の導電膜形成用感光材料を露光および現像処理して、前記支持体と金属銀部とを有する導電膜前駆体を作製する金属銀部形成工程と、前記導電膜前駆体を還元処理して導電膜を得る還元処理工程と、
を有する導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2011−18028(P2011−18028A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111438(P2010−111438)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】