説明

小便乾燥装置及びそれを備えたトイレ設備

【課題】スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる小便乾燥装置とそれを備えたトイレ設備とを提供する。
【解決手段】小便乾燥装置30は、便鉢2及びこの便鉢2に連通し、下方に向けて開口する便器排出口3を有する便器1の下方に吊下げられ、便器排出口3から排出される小便を吸収し、かつ蒸発させる水分保持体31を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小便乾燥装置及びそれを備えたトイレ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図3に従来の小便乾燥装置が示されている。この小便乾燥装置は、板状の吸収体と、ポンプを用いてこの吸収部材の上方から小便を滴下させる供給装置とを備えている。この小便乾燥装置では、吸収部材を大きな表面積にすることによって、吸収部材からの小便の蒸発処理を良好に行なうことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−41892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の小便乾燥装置では、吸収体が板状であり、その表面積を確保するために吸収体が大型化している。このため、吸収体の設置にスペースを要してしまう。また、小便を吸収体に滴下するためにポンプが使用され、そのための電源が必要となる。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる小便乾燥装置とそれを備えたトイレ設備とを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の小便乾燥装置は、便鉢及びこの便鉢に連通し、下方に向けて開口する便器排出口を有する便器の下方に設置され、前記便器排出口から排出される小便を保持し、かつ蒸発させる水分保持体を備えていることを特徴とする。
【0007】
この小便乾燥装置では、便器の下方のスペースを利用して、小便を保持し、かつ蒸発させる水分保持体を設置している。このため、便器排出口から排出される小便を水分保持体に向けて落下させることができ、小便を水分保持体に保持させることができる。また、水分保持体は空気との接触により、水分保持体に保持した小便を便器の下方のスペースで良好に蒸発させることができる。
【0008】
したがって、本発明の小便乾燥装置は、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【0009】
前記便器の下方であって、前記水分保持体の上方に設置され、前記便器排出口から排出される小便が通過する際にこの小便に含有するリンを吸着するリン吸着体を備え得る。この場合、リン吸着体が小便に含まれるリンを吸着するため、小便に含まれるリンを容易に回収することができる。回収したリンは肥料として利用することができる。
【0010】
前記リン吸着体は、小便を下方に排出する排出口を設けた底板部、及びこの底板部の外周部から立ち上がった側壁部を有し、上方が開口した容器内に収納され得る。この場合、容器内にリン吸着体が収納されており、その容器内を小便が滞留しつつ、通過する。このため、容器内を通過する間でも小便を蒸発させることができる。
【0011】
前記リン吸着体は、小便を分解する分解菌を担持し得る。この場合、分解菌によって小便が分解されるため、臭気の発生を軽減することができる。
【0012】
前記水分保持体は複数に分割され得る。この場合、分割された各水分保持体の間に空間を形成することができる。これにより、各水分保持体の間に形成された空間に空気が流れ、各水分保持体からの小便の蒸発が促進される。また、水分保持体が分割されているため、直ちに小便が下方に位置する水分保持体へ伝わらない。このため、小便が最下端に位置する水分保持体のみに集まらず、小便を各水分保持体が分散して保持することができる。よって、小便の蒸発が各水分保持体から行われるため、蒸発効率を高めることができる。
【0013】
前記水分保持体は、平板状であり、水平方向に広げた状態で上下方向に間隔を空けて保持し、前記便器の下方に吊り下げられ得る。この場合、水分保持体が小便を充分に保持することができ、各水分保持体間に空気が流通するため、空気との接触が行われやすく、小便の蒸発が促進される。
【0014】
前記水分保持体は、円環状であり、中央空間部に吊下げ部材を挿通して保持し、前記便器の下方に吊下げられ得る。この場合、水分保持体は吊下げられているため、空気との接触が行われ易い。また、中央空間部にも空気が流れるため、小便の蒸発が促進される。
【0015】
前記水分保持体は、多孔質又は繊維質であり得る。この場合、水分保持体が小便を良好に保持することができる。
【0016】
本発明のトイレ設備は、便鉢及びこの便鉢に連通し、下方に向けて開口する便器排出口を有する便器と、前記便器排出口の下方に設けられ、この便器排出口から排出された排泄物を小便と大便とに分離する固液分離装置と、この固液分離装置の下方に設けられた前記小便乾燥装置とを備えていることを特徴とする。
【0017】
このトイレ設備では、便器の下方のスペースを利用して、固液分離装置と小便乾燥装置とを配置している。このため、便器排出口から排出される小便を直接的に水分保持体に向けて落下させることができ、小便を水分保持体に効率よく保持させることができる。また、小便を保持した水分保持体は、便器の下方のスペースで小便を蒸発させることができる。
【0018】
したがって、本発明のトイレ設備は、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1のトイレ設備を示す側面図である。
【図2】実施例1の小便乾燥装置が固液分離装置の下方に配置された状態を示す概略図である。
【図3】実施例1の小便乾燥装置の水分保持体を示す斜視図である。
【図4】実施例1の固液分離装置を示す側面図である。
【図5】実施例1の固液分離装置を示す平面図である。
【図6】実施例1の固液分離装置の要部を示す斜視図である。
【図7】実施例1の固液分離装置の要部を示す断面図である。
【図8】実施例1の固液分離装置を駆動部側から見た側面図である。
【図9】実施例1の固液分離装置の除去部材を示す拡大図である。
【図10】実施例1の固液分離装置において、押出板が分離板の一端部に位置した状態を示す側面図である。
【図11】実施例1の発酵装置を示す断面図である。
【図12】実施例1の発酵装置の分解図である。
【図13】実施例1の発酵装置の分解図である。
【図14】実施例1の発酵装置の要部を示す断面図である。
【図15】実施例1の発酵装置を回転機構側から見た側面図である。
【図16】図11の矢視X−X断面図である。
【図17】水分保持体の他の実施例を示す斜視図である。
【図18】水分保持体の他の実施例を示す斜視図である。
【図19】水分保持体の他の実施例を示す斜視図である。
【図20】実施例2のトイレ設備を示す側面図である。
【図21】実施例2の固液分離装置を示す側面図である。
【図22】実施例2の固液分離装置を示す平面図である。
【図23】実施例2の固液分離装置の要部を示す分解斜視図である。
【図24】実施例2の固液分離装置において、押出板が分離板の一端部に位置した状態を示す側面図である。
【図25】実施例2の固液分離装置において、押出板が分離板の一端部に位置した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の小便乾燥装置をトイレ設備に適用した実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施例1>
実施例1のトイレ設備は、図1に示すように、便器1、固液分離装置10、発酵装置20、小便乾燥装置30及び貯留槽40を備えている。便器1は、非水洗式であり、便鉢2及びこの便鉢2に連通し、下方に向けて開口する便器排出口3を有している。また、便鉢2の上端開口部には、便座4及び便蓋5が回動可能に取り付けられている。便器1の便器排出口3は、床部材Gの開口部に連結されている。
【0022】
小便乾燥装置30は、図1〜図3に示すように、後述する固液分離装置10の分離板11及び発酵装置20の下方に吊下げられた水分保持体31を有している。このように、小便乾燥装置30は便器1(固液分離装置10及び発酵装置20の下方)の下方のスペースを利用して配置されている。
【0023】
水分保持体31は、不織布により形成された円環状である。このため、小便Fを良好に保持することができ、かつ蒸発させることができる。水分保持体31の中央空間部にロープ31Aが挿通され、複数の水分保持体31が保持されている。ロープ31Aの最下端には、水分保持体31が抜け落ちないため、かつロープ31Aを垂直に吊下げるために錘31Bが連結されている。ロープ31Aは、固液分離装置10及び発酵装置20の側方に張り出した突出部材32の間に張り渡された吊下げロープ31Cに連結されている。
【0024】
固液分離装置10によって大便Fと分離された小便Uは、分離板11の開口部12から直接的に水分保持体31に向けて落下し、水分保持体31に保持される。水分保持体31は、吊下げられているため、空気との接触が行われ易く、水分保持体31に保持された小便Uを便器1の下方のスペースで良好に蒸発させることができる。
【0025】
したがって、実施例1の小便乾燥装置30は、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【0026】
特に、水分保持体31は複数に分割されているため、各水分保持体31の間に空間を形成することができる。これにより、各水分保持体31の間に形成された空間に空気が流れ、各水分保持体31からの小便Uの蒸発が促進される。また、各水分保持体31の中央空間部にも空気が流れるため、さらに小便Uの蒸発が促進される。
【0027】
また、水分保持体31が分割されているため、下方に位置する水分保持体31へ小便Uが直ちに浸透していかない。このため、小便Uが最下端に位置する水分保持体31のみに集まらず、小便Uを各水分保持体31が分散して保持することができる。よって、小便Uの蒸発が各水分保持体31から行われ、蒸発効率を高めることができる。
【0028】
また、下方に吊下げられた水分保持体31は、小便乾燥装置30を収納する収納空間の底面42に接触するように吊下げられている。このため、水分保持体31に保持しきれずに底面42に流出した小便Uを他の水分保持体31が吸収し、蒸発させることができる。
【0029】
固液分離装置10は、図4〜図10に示すように、分離板11、搬送機構13、除去部材16A、16B、及びスクレーパー18を有している。床部材Gの下面には便器排出口3を挟んで平行に一対のレール部材7が延びて設けられている。固液分離装置10はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、固液分離装置10は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0030】
分離板11は、平板状であり、便器排出口3の下方に水平状態で配置されている。分離板11は、スリット状に貫設された複数の開口部12を等間隔に平行に並べて配置している。これら各開口部12は分離板11の一端部11Fから他端部11Bまで縦方向に延びている。
【0031】
分離板11が便器排出口3の下方に配置されているため、便器1を利用して人間が排泄し、便器排出口3から排出された排泄物は、分離板11の上面に受けられる。分離板11の上面に受けられた排泄物のうち、小便Uは開口部12を下方へ通過し、大便Fは分離板11上に残存する。このように、固液分離装置10の分離板11によって、排泄物は小便Uと大便Fに分離される。
【0032】
搬送機構13は押出板14及び駆動部15を有している。押出板14は、帯状であり、分離板11の縦方向である一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動することができる。押出板14は、この移動方向に対して垂直方向、つまり、分離板11の左右方向に延びている。押出板14の左右両端は、分離板11の左右両端部11L、11Rの近傍まで延びている。押出板14の左右両端部の下方には、一対の第1支持板17Aが分離板11の縦方向に沿って立設している。この第1支持板17Aは、上端部に軸部14Aが設けられ、押出板14の上部を軸支している。また、第1支持板17Aは、一片が分離板11の一端部11F側に向かって下降して形成された傾斜辺17Sを有している。この傾斜辺17Sに押出板14の裏面が当接している。このため、押出板14は、分離板11の一端部11F側に向かって下降する傾斜状態に配置されている。また、第1支持板17Aに軸支された押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bへ移動する方向に対して、後方へ回動可能である。
【0033】
スクレーパー18は、左右方向に細長い平板状であり、分離板11の上面に載置されている。スクレーパー18は左右幅が分離板11の左右幅より僅かに短い。また、スクレーパー18は前後の辺が鋸刃状に形成されている。また、スクレーパー18は、分離板11上に載置した際に分離板11の開口部12に対応する位置にスリット状の貫通孔18Aを貫設している。
【0034】
除去部材16Aは第1支持板17Aの下辺の一部から下方に延びて一体に形成されている。除去部材16Bは平板状に形成されている。除去部材16Bは上端に第2支持板17Bを一体に形成されている。各除去部材16A、16Bは連結部材15Lが挿通する貫通孔を形成している。除去部材16A、16Bは分離板11の上面に載置したスクレーパー18の貫通孔18A及び分離板11の開口部12を挿通して分離板11の下方に突出している。第2支持部材17Bは分離板11の一端部11F側に位置する上端角部17Cを押出板14の裏面に当接するよう形成されている。
【0035】
第1支持板17Aに一体に形成された除去部材16A及び第2支持板17Bに一体に形成されている除去部材16Bは、分離板11より下方で貫通孔に挿通した棒状の連結部材15Lによって連結されている。各除去部材16A、16Bは、スリット状に形成された各開口部12に挿通した状態で、各開口部12に沿って往復移動することができる。また、各除去部材16A、16Bは、連結部材15L及び第1支持板17Aを介して押出板14に連結されて一体にされている。このため、押出板14、各除去部材16A、16B、及びスクレーパー18は、一緒に分離板11の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動する。
【0036】
駆動部15は、一対の第1リンク部材15A及び一対の第2リンク部材15Bを有している。各第1リンク部材15Aの一端部はジョイント軸15Jの両端部に連結されている。各第1リンク部材15Aは、ジョイント軸15Jが回転すると共に、ジョイント軸15Jを中心に回動することができる。ジョイント軸15Jの両端部は、床部材Gの下方に設けられた一対の保持板15Cに保持されている。この一対の保持板15Cは、分離板11より上方であって、分離板11の横幅と略同じ間隔を有して配置されている。各第1リンク部材15Aの他端部は、ジョイント部材15Kにより各第2リンク部材15Bの一端部に連結されている。各第2リンク部材15Bの他端部は連結部材15Lに連結されている。
【0037】
ジョイント軸15Jは、てこ部材19の中心部を固定している。ジョイント軸15Jは、てこ部材19のジョイント軸15Jを中心にした回動に伴って回転する。てこ部材19は一端部に第1ワイヤーW1の一端部を連結している。第1ワイヤーW1は、床部材Gを挿通し、床部材Gの上面に固定されたレバーL1に他端部を連結している。レバーL1は、床部材Gに固定された支点部材L2に軸支され、床部材G上で起伏することができる。てこ部材19は他端部に第2ワイヤーW2の他端部を連結している。第2ワイヤーW2は、後述する発酵装置20の回転機構22のラチェット部22Bに一端部を連結している。
【0038】
このように構成された駆動部15は、レバーL1を起立状態に回動させると、図10に示すように、第1ワイヤーW1が上方に牽引される。すると、てこ部材19の一端部が上方に引き上げられる。これにより、ジョイント軸15Jが一方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に一方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の一端部11F側へ移動させる。また、押出板14と一体にされた各除去部材16A、16B及びスクレーパー18も開口部12に沿って、分離板11の一端部11F側に移動する。この際、スクレーパー18の鋸刃状の前辺部で分離板11上の大便Fをこそぎ落としつつ、さらに、各除去部材16A、16Bが開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去しながら、押出板14が分離板11上に残存した大便Fを分離板11の一端部11Fから押し出し、後述する発酵装置20の受入口25Aに落下させることができる。
【0039】
このように、小便Uと分離されて分離板11上に残存した大便Fを押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出すため、発酵装置20の発酵室C内の水分(小便)を少なくすることができる。このため、発酵室C内において、大便Fの攪拌を良好に行うことができ、微生物を好気状態に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理を良好に行なうことができる。また、各除去部材16A、16Bによって、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを良好に除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0040】
ジョイント軸15Jは第1コイルバネS1を外嵌している。この第1コイルバネS1は、ジョイント軸15Jが他方向に回転するように弾性力を付与している。このため、レバーL1を倒伏状態に回動させると、第1ワイヤーW1がてこ部材19の一端部を上方に引き上げる力がなくなり、図4に示すように、第1コイルバネS1の弾性力により、ジョイント軸15Jは他方向に回転する。すると、各第1リンク部材15Aがジョイント軸15Jを中心に他方向に回動し、各ジョイント部材15Kが分離板11から離れる方向に移動する。すると、各第2リンク部材15Bが押出板14を分離板11の他端部11B側に移動させる。また、押出板14と一体に形成された各除去部材16A、16B、及びスクレーパー18も開口部12に沿って、分離板11の他端部11B側に移動する。この際、仮に分離板11上に大便Fが残存していたとしても、押出板14は、分離板11の一端部11Fから他端部11Bに移動する際に分離板11上の大便Fに当接すると、移動方向に対して後方に回動するため、大便Fを分離板11の他端部11Bから押し出すことはなく、他端部11Bに戻ることができる。また、スクレーパー18は、分離板11の他端部11B側に移動する際も、鋸刃状の後辺部で分離板11上の大便Fをこそぎ落とすことができる。また、各除去部材16A、16Bは、開口部12に沿って分離板11の他端部11B側に移動する際も、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fを除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0041】
したがって、固液分離装置10は、大便Fと小便Uとの分離及び大便Fの搬送を良好に行なうことができる。
【0042】
発酵装置20は、図11〜図16に示すように、発酵槽21と、この発酵槽21を回転させる回転機構22とを具備している。発酵槽21は傾斜した回転軸を中心に回転可能に保持されている。発酵槽21は、外殻部23と、攪拌翼部24と、邪魔板部25とを有している。発酵装置20はレール部材7に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、発酵装置20は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行なうことができる。
【0043】
外殻部23は、内部に発酵室Cを設け、回転軸を中心にして軸対称の円筒形状に形成されている。この外殻部23は、4つの円筒部材23Aを連結して形成されている。邪魔板部25は、各円筒部材23Aの一方の開口端から内側に延びて形成されている。この邪魔板部25は円環状であり、中心部に形成された開口部は、回転軸を中心とした円形状である。
【0044】
攪拌翼部24は、方形状であり、その一辺が円筒部材23Aの内周面に接している。また、この攪拌翼部24は、円筒部材23Aの内周面から中心に向けて立ち上がるように取り付けられている。この攪拌翼部24は、各円筒部材23Aの内周面に4つずつ取り付けられており、円筒部材23の中心軸から見て90度ずつ離れた内周面に配置されている。
【0045】
各円筒部材23Aは攪拌翼部24により連結され、外殻部23を形成している。この際、各攪拌翼部24が外殻部23の内面から中心に向かって立ち上がり、回転軸方向に延びる帯状となるように各円筒部材23Aは連結されている。また、各円筒部材23A同士は、隙間を空けて連結されている。
【0046】
外殻部23の一端側に位置する邪魔板部25の開口部は、外殻部23の受入口25Aを形成している。また、各円筒部材23A間に設けられた隙間は、邪魔板部25より受入口25A側に、邪魔板部25に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。
【0047】
外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aには、中央開口部を有する円環状の邪魔板部26が連結されている。この邪魔板部26の中央開口部は、外殻部23の排出口26Aを形成している。外殻部23の他端側に位置する円筒部材23Aの開口縁と邪魔板部26との間には隙間が形成されている。この隙間も邪魔板部26より受入口25A側に、邪魔板部26に沿って貫設されたスリット状の排水孔Dを形成している。外殻部23に設けられた排水孔Dは、固液分離装置10で分離しきれず、大便Fとともに発酵室C内に受け入れられた小便Uを排出することができる。このため、発酵室C内の大便Fの攪拌を良好に行うことができ、発酵室C内の微生物を好気状態に維持して発酵処理を良好に行なうことができる。
【0048】
邪魔板部26には4つの方形状の接続部材27Aが固定されている。この接続部材27Aにより邪魔板部26と円盤状の端面部材27とが連結されている。端面部材27の中央部には、回転軸部22Aの一端部が連結されている。
【0049】
回転機構22は、発酵槽21の傾斜した回転軸を形成する回転軸部22A、ラチェット部22B及びレバーL1を有している。ラチェット部22Bには、第2ワイヤーW2の一端部が連結されている。また、第2ワイヤーW2の他端部は、てこ部材19の他端部に連結されている。このため、レバーL1を起立状態に回動させると、てこ部材19の他端部が下降し、第2ワイヤーW2は牽引される。第2ワイヤーW2が牽引されると、ラチェット部22Bは回転軸22Aを一方向に設定角度(例えば、5度)だけ回転させる。
【0050】
第2ワイヤーW2の一端部側には、第2ワイヤーW2を挿通する第2コイルバネS2が設けられている。第2コイルバネS2は、第2ワイヤーW2を引き戻す方向に弾性力を付与している。このため、レバーL2を倒伏状態に回動させると、てこ部材19の他端部が上昇し、第2ワイヤーW2の牽引力がなくなるため、第2ワイヤーW2は引き戻される。この際、ラチェット部22Bは回転軸22Aを回転させず、発酵槽21は状態が維持される。
【0051】
回転軸部22Aの他端部はラチェット部22Bに保持されている。ラチェット部22は、回転軸部22Aを傾斜した状態に保持するように、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第1取付部材22Cに傾斜して取り付けられている。
【0052】
発酵槽21は、傾斜した回転軸部22Aの一端部を端面部材27の中央部に固定している。一方、受入口25Aの内周面には、発酵槽21の回転を案内する2つの案内部材29が当接されている。これら案内部材29は床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に吊下げられ、固定された第2取付部材29Aに固定されている。
【0053】
このようにして床部材Gの下方に配置された発酵槽21は、外殻部23の回転軸方向の上側の端部に受入口25Aが配置され、回転軸方向の下側の端部に排出口26Aが配置される。つまり、発酵室Cは、受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされる。また、外殻部23の受入口25Aには、分離板11の一端部11Fが挿入されている。
【0054】
外殻部23に設けられた排水孔Dの上端位置には、床部材Gの下面に設けられたレール部材7にスライド可能に係止し、固定された吊下部材8から垂下した挿入具28の下端部が挿入されている。挿入具28は下辺がV字形に形成された薄板状である。発酵槽21が回転すると、排水孔Dも挿入具28に沿って回転するため、排水孔Dを閉鎖する大便Fは、挿入具28により順次、除去される。このため、排水孔Dから大便Fに含まれている小便Uを良好に排出することができる。
【0055】
このように構成された発酵装置20は、発酵室Cが受入口25Aから排出口26Aに向けて下り傾斜状態にされている。このため、発酵室C内に受け入れられた大便Fは、重力により排出口26A側へ移動する。排出口26A側に移動した大便Fは、邪魔板部25によってそれより下方への移動が阻止される。このため、発酵室C内に受入口25Aから受け入れられた大便Fは、直ちに排出口26Aから排出されず、発酵室C内に滞留し、その間に発酵処理が行なわれる。
【0056】
邪魔板部25によって排出口26A側への移動が阻止された大便Fは、発酵槽21が回転機構22により回転することにより、攪拌翼部24により発酵室C内の上方に押し上げられる。ある程度の高さに押し上げられた大便Fは、図11及び図16に示すように、攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。この際、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このように、発酵槽21を回転させることにより発酵室C内の大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動し、最終的には、排出口26Aから排出される。このため、この発酵装置20では、発酵室C内の大便Fの量に関わらず、発酵室Cに受け入れられた大便Fを攪拌しながら順次排出口から排出することができ、大便Fが発酵室C内に滞留する時間のばらつきが少なく、連続的に大便Fを発酵処理することができる。
【0057】
また、発酵槽21の回転軸の傾斜角度を変更したり、攪拌翼部24及び邪魔板部25の数や形状等を変更したりすることにより、受入口25Aから発酵室Cに受け入れられた大便Fを排出口26Aから排出するまでの発酵槽21の回転数を調整することができる。つまり、大便Fが発酵室C内に滞留する時間を調整することができる。このため、所定期間の間(例えば、1ヶ月間)、発酵室C内に大便Fを滞留させることができ、大便Fを十分に発酵処理することができる。また、発酵槽21が回転して、発酵室C内で大便Fの落下が繰り返されることにより、大便Fが攪拌されるため、大便Fに含まれる微生物が好気状態に維持され、大便Fを良好に発酵処理することができる。
【0058】
また、この発酵装置20では、菌床を収納せず、発酵室Cに大便Fのみを受け入れて発酵処理するため、菌床を収納するための容積を必要としない。また、発酵室C内の大便Fは、発酵処理後に排出口26Aから貯留槽40に自動的に排出されるため、発酵室C内から発酵処理済の大便Fを取り出す手間を必要としない。
【0059】
したがって、実施例1のトイレ設備は、小型化を図ることができ、排泄物の処理を良好に行ない、メンテナンスを軽減することができる。
【0060】
また、発酵室Cが下り傾斜状態にされているため、発酵室C内に受け入れられた小便Uは、邪魔板部25の受入口25A側に集まってくる。このため、この部分に貫設されたスリット状の排水孔Dにより、小便Uを良好に排出することができる。このようにして、発酵室C内の水分(小便U)をさらに少なくすることができるため、大便Fの攪拌を良好に行え、微生物による処理に適した好気状態に良好に保つことができる。さらに、微生物がより繁殖しやすい水分環境に維持することができる。よって、大便Fの発酵処理をさらに良好に行なうことができる。
【0061】
また、レバーL1を人力により操作することにより、無電源で発酵装置20を回転させることができる。また、便器1を使用した後にその使用者がレバーL1の操作をすることにすれば、その度に発酵槽21を設定角度(例えば、5度)だけ回転させることができる。これにより、便器1の使用頻度に応じて発酵槽21を回転させることができる。また、上述したように、発酵槽21が回転することによって発酵室C内の大便Fが受入口25Aから排出口26Aへ移動し、排出口26Aから排出される。また、大便Fを均等に混合・攪拌することができ、適量の大便Fを発酵室C内に滞留させることができるため、発酵処理を良好に行なうことができる。また、発酵室C内の内部空間を有効に活用することができる。
【0062】
貯留槽40は、図1に示すように、発酵装置20の排出口26Aの下方に設けられている。この排出口26Aから排出される発酵室C内で発酵処理された処理済み排泄物である処理済み大便を貯留する。貯留槽40は、仕切り壁41によって、小便乾燥装置30の収納空間と区画されている。つまり、仕切り壁41は排出口26Aの下方に立設されている。これにより、小便乾燥装置30の水分保持体31から蒸発せずに底面42に流出した小便Uが貯留槽40に流れ込むことを防止している。このため、貯留槽40に貯留された処理済み大便が湿ってしまわず、その中に含まれる微生物を好気状態に保持することができるため、貯留槽40に貯留された状態でも発酵処理を促進することができる。
【0063】
貯留槽40の上方の床部材Gには、臭気を排出する排気パイプ50が連結されている。排気パイプ50には、図示しないファンが連結され、強制的に排気することができる。このため、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を収納し、貯留槽40を形成する空間の臭気を排出することができるとともに、小便乾燥装置30における小便Uの蒸発を促進させることができる。
【0064】
貯留槽40の上部側壁には、貯留槽40に処理済み大便が溜まった際に処理済み大便を搬出したり、固液分離装置10、発酵装置20及び小便乾燥装置30を点検したりするための点検口42が設けられている。点検口42には蓋部材42Aが取り付けられている。また、蓋部材42Aには、貯留槽40の貯留された処理済み大便に灰を混入させるための投入口43が設けられている。
【0065】
このように構成された実施例1のトイレ設備は、以下のように使用され、排泄物が処理される。
【0066】
便器1の使用者が大便Fをした際、その後、使用者がレバーL1を起立状態に回動させる。すると、固液分離装置10により小便Uと分離され、分離板11上に残存した大便Fは、押出板14によって分離板11の一端部11Fから押し出され、発酵装置20の受入口25Aから発酵室C内に落下する。レバーL1が起立状態に回動すると、発酵装置20の発酵槽21が設定角度(例えば、5度)だけ回転する。すると、発酵室C内に滞留している大便Fが、攪拌翼部24によって、上方へ移動する。この際、大便Fの一部は攪拌翼部24の上面から発酵室C内の下方に落下する。また、邪魔板部25に近い位置に堆積していた大便Fは、その邪魔板部25の排出口26A側へ落下する。このようにして、大便Fは、徐々に排出口26A側へ移動する。
【0067】
分離板11の一端部11Fから押し出された大便Fが発酵室C内に受け入れられた時点では、発酵槽21の回転は終了している。一方、小便Uは固液分離装置10の分離板11の開口部12から下方に落下し、水分保持体31に保持される。その後、水分保持体31に保持された小便Uは蒸発処理される。このように、小便Uが直接的に水分保持体31に向けて落下させることができ、小便Uを水分保持体31に効率よく保持させることができる。また、小便Uを保持した水分保持体31は、便器1の下方のスペースで小便Uを蒸発させることができる。
【0068】
使用者がレバーL1を倒伏状態に回動させると、固液分離装置10の押出板14は、分離板11の他端部11B側に移動する。押出板14が分離板11の一端部11Fと他端部11Bとの間を往復移動するとともに、各除去部材16A、16B、及びスクレーパー18も開口部12に沿って往復移動するため、開口部12に付着又は開口部12を閉鎖する大便Fは除去される。このため、その後に便器1が使用されて配設された小便Uは分離板11の開口部12を良好に通過することができる。つまり、固液分離装置10は大便Fと小便Uとを良好に分離することができる。このように、1つのレバーL1を操作することによって、固液分離装置10の押出板14の移動と発酵槽21の回転とを行なうことができる。
【0069】
便器1の使用が繰り返されることにより、発酵装置20の発酵室Cに受入口25Aから大便Fを受け入れ、排出口26Aから処理済み大便を排出することができる。つまり、この発酵装置20は、大便Fの受入、発酵処理及び排出を連続的に行なうことができる。また、発酵室C内に所定期間の間(例えば、1ヶ月間)滞留させることにより、大便Fを十分に発酵処理することができる。このように、このトイレ設備では、その使用者がレバーL1を操作することによって、無電源で排泄物の処理を行なうことができる。
【0070】
<実施例2>
実施例2のトイレ設備は、図20に示すように、便器1、固液分離装置60、小便乾燥装置80、及び貯留槽90を備えている。実施例1と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
小便乾燥装置80は、図20に示すように、水分保持体81と、リン吸着体82とを備えている。リン吸着体82は、便器1の下方、かつ固液分離装置60の下方であって、水分保持体81の上方に設置した容器83内に収納されている。容器83は、排出口84Aを設けた底板部84と、この底板部84の外周部から立ち上がった側壁部85を有し、上方が開口している。リン吸着体82は、炭や、小便を分解する分解菌を担持した廃培地、赤玉土等のリンの吸着性が高い球体82Aと、球体82Aを覆う藁成形体82Bとから形成されている。
【0072】
水分保持体81は、不織布により形成された平板状であり、水平方向に拡げた状態で上下方向に間隔を空けて、複数枚が容器83の排出口84Aの下方に吊り下げられている。このため、水分保持体81の上下に空気が流れる。
【0073】
このように構成した小便乾燥装置80は、便器排出口3から排出され、固液分離装置60で大便Fと分離された小便Uをリン吸着体82が収納された容器83を経由して水分保持体81に保持させることができる。また、水分保持体81は、小便Uを充分に保持することができ、空気との接触が行われやすく、水分保持体81に保持された小便Uを便器1の下方のスペースで良好に蒸発させることができる。
【0074】
したがって、実施例2の小便乾燥装置80も、スペースを有効利用し、無電源で小便を良好に蒸発させることができる。
【0075】
また、この小便乾燥装置80は、リン吸着体82が小便Uに含まれるリンを吸着するため、小便Uに含まれるリンを容易に回収することができる。回収したリンは肥料として利用することができる。また、リン吸着体82を容器83内に収納しているため、容器83内を小便が滞留しつつ、通過する間でも小便を蒸発させることができる。
【0076】
小便乾燥装置80が収納されている便器1の下方の収納空間の側壁には、リン吸着体82や水分保持体81を交換するための開口86が設けられている。開口86には蓋部材86Aが取り付けられている。
【0077】
固液分離装置60は、図21〜図25に示すように、分離板61、搬送機構63、除去部材66A、66B、及びスクレーパー68を有している。床部材Gの下面には便器排出口3を挟んで平行に一対のレール部材57が延びて設けられている。固液分離装置60はレール部材57に係止してスライド可能に吊下げられ、固定されている。このため、固液分離装置60は設置及びメンテナンスのための取外し等を容易に行うことができる。
【0078】
分離板61は、平板状であり、便器排出口3の下方に水平状態で配置されている。分離板61は、スリット状に貫設された複数の開口部62を平行に並べて配置している。これら各開口部62は分離板61の一端部61Fから他端部61Bまで縦方向に延びている。分離板61は、左右両端部61L、61Rから上方に延びた左右側板61Aと、左右側板61Aの上端部から外方向に延びた左右上板61Bとを有している。左右上板61Bは、縦方向の両端部にスペーサー61Cを介して係止板61Dを固定している。この係止板61Dの左右両端部がレール部材57に係止することによって、固液分離装置60は吊下げられ、固定されている。
【0079】
分離板61が便器排出口3の下方に配置されているため、便器1を利用して人間が排泄し、便器排出口3から排出された排泄物(固液混合物)は、分離板61の上面に受けられる。分離板61の上面に受けられた排泄物のうち、液体分である小便Uは開口部62から下方へ通過し、固体分である大便Fは分離板61上に残存する。このように、固液分離装置60の分離板61によって、排泄物は小便Uと大便Fに分離される。
【0080】
搬送機構63は押出板64及び駆動部65を有している。押出板64は、帯状であり、分離板61の縦方向である一端部61Fと他端部61Bとの間を往復移動することができる。押出板64は、この移動方向に対して垂直方向、つまり、分離板61の左右方向に延びている。押出板64の左右両端は、分離板61の左右両端部61L、61Rの近傍まで延びている。押出板64の左右両端部の下方には、一対の第1支持板67Aが分離板61の縦方向に沿って立設している。この第1支持板67Aは、上端部に軸部64Aが設けられ、押出板64の上部を軸支している。また、第1支持板67Aは、一辺が分離板61の一端部61F側に向かって下降して形成された傾斜辺67Sを有している。この傾斜片67Sに押出板64の裏面が当接している。このため、押出板64は、分離板61の一端部61F側に向かって下降する傾斜状態に配置されている。また、第1支持板67Aに軸支された押出板64は、分離板61の一端部61Fから他端部61Bへ移動する方向に対して、後方へ回動することができる。
【0081】
スクレーパー68は、左右方向に細長い平板状であり、分離板61の上面に載置されている。スクレーパー68は左右幅が分離板61の左右幅より僅かに短い。また、スクレーパー68は前後の辺が鋸刃状に形成されている。また、スクレーパー68は、分離板61上に載置した際に分離板61の開口部62に対応する位置にスリット状の貫通孔68Aを貫設している。
【0082】
除去部材66Aは第1支持板67Aの下辺の一部から下方に延びて一体に形成されている。除去部材66B、66Cは平板状に形成されている。各除去部材66A、66B、66Cは連結部材15Lが挿通する貫通孔を形成している。また、一対の除去部材66Cは後述する駆動部65の接続部材65Dの両端部に連結するための2つのボルト孔を形成している。除去部材66A、66B、66Cは、分離板61の上面に載置したスクレーパー68の貫通孔68A及び分離板61の開口部62を挿通して分離板61の下方に突出している。除去部材66B、66Cは上端に第2支持板67Bを一体に形成している。この第2支持板67Bは分離板61の一端部61F側に位置する上端角部67Cが押出板64の裏面に当接するよう形成されている。
【0083】
第1支持板67Aに一体に形成された除去部材66A及び第2支持板67Bに一体に形成された除去部材66B、66Cは、分離板61より下方で貫通孔に挿通した棒状の連結部材15Lによって連結されている。各除去部材66A、66B、66Cは、スリット状に形成された各開口部62に挿通した状態で、各開口部62に沿って往復移動することができる。また、各除去部材66A、66B、66Cは、連結部材15L及び第1支持板67Aを介して押出板64に連結されて一体にされている。このため、押出板64、各除去部材66A、66B、66C、及びスクレーパー68は、一緒に分離板61の一端部61Fと他端部61Bとの間を往復移動する。
【0084】
駆動部65は、両端に設けられた筒状のアウターケーシング65Aと、各アウターケーシング65A内にスライド可能に収納され、アウターケーシング65Aの先端から出入りする棒状のロッド部材65Bと、各ロッド部材65Bの後端部を連結するインナーケーブルとを有するプッシュプル式ケーブルを採用している。このプッシュプル式ケーブルの一方のロッド部材65Bの先端部は除去部材66Cに連結した接続部材65Dに連結している。また、このプッシュプル式ケーブルの他方のロッド部材65Bの先端部はレバーL3に連結している。レバーL3は便器1が設置されたトイレ室の壁面に固定された操作ボックス69に設けられた上下方向に延びた開口部69Aに沿って往復移動することができる。
【0085】
このように構成された駆動部65は、レバーL3を操作ボックス69の開口部69Aの上端部に移動させると、図24及び図25に示すように、プッシュプル式ケーブルの一方のロッド部材65Bの大部分がアウターケーシング65A内に引き込まれる。これにより、押出板64、各除去部材66A、66B、66C、及びスクレーパー68が分離板61の一端部61F側に移動する。この際、スクレーパー68の鋸刃状の前辺部で分離板61上の大便Fをこそぎ落としつつ、さらに、各除去部材66A、66B、66Cが開口部62に付着又は開口部62を閉鎖する大便Fを除去しながら、押出板64が分離板61上に残存した大便Fを分離板61の一端部61Fから押し出し、貯留槽90に落下させることができる。
【0086】
このように、小便Uと分離されて分離板61上に残存した大便Fを押出板64によって分離板61の一端部61Fから押し出すため、貯留槽90内の水分(小便)を少なくすることができる。
【0087】
レバーL3を操作ボックス69の開口部69Aの下端部に移動させると、図20〜図22に示すように、プッシュプル式ケーブルの一方のロッド部材65Bがアウターケーシング65Aの先端部から突出する。これにより、押出板64、各除去部材66A、66B、66C、及びスクレーパー68が分離板61の他端部61B側に移動する。この際、仮に分離板61上に大便Fが残存していたとしても、押出板64は、分離板61の一端部61Fから他端部61B側に移動する際に分離板61上の大便Fに当接すると、移動方向に対して後方に回動するため、大便Fを分離板61の他端部61Bから押し出すことはなく、他端部61Bに戻ることができる。また、スクレーパー68は、分離板61の他端部61B側に移動する際も、鋸刃状の後辺部で分離板61上の大便Fをこそぎ落とすことができる。また、各除去部材66A、66B、66Cは、開口部62に沿って分離板61の他端部61B側に移動する際も、開口部62に付着又は開口部62を閉鎖する大便Fを除去することができる。このため、開口部12は小便Uを良好に通過させることができる。
【0088】
したがって、固液分離装置60は、大便Fと小便Uとの分離(固液の分離)及び大便Fの搬送(固体分の搬送)を良好に行うことができる。
【0089】
貯留槽90は固液分離装置60の一端部61Fから押し出された大便Fを貯留する。貯留槽90は仕切り壁41によって、小便乾燥装置80が収納されている収納空間と区画されている。このため、小便乾燥装置80の水分保持体81から蒸発せずに収納空間の底面42に流出した小便Uが貯留槽90に流れ込むことを防止している。よって、貯留槽90内に貯留された大便Fは、その中に含まれる微生物によって、発酵処理が緩やかに行われる。
【0090】
このように構成された実施例2のトイレ設備は、以下のように使用され、排泄物が処理される。
【0091】
便器1の使用者が大便Fをした際、その後、使用者がレバーL3を操作ボックス69の開口部69Aの上端部に移動させる。すると、固液分離装置60により小便Uと分離され、分離板61上に残存した大便Fは、押出板64によって分離板61の一端部61Fから押し出され、貯留槽90内に落下する。貯留槽90内に落下した大便Fは発酵処理が緩やかに行われる。
【0092】
一方、小便Uは固液分離装置60の分離板61の開口部62から下方に落下し、リン吸着体82が収納された容器83を経由して水分保持体81に保持される。このため、小便Uは、リン吸着体82によってリンが吸着され、水分保持体81において蒸発処理される。
【0093】
使用者がレバーL3を操作ボックス69の開口部69Aの下端部に移動させると、固液分離装置60の押出板64は、分離板61の他端部61B側に移動する。このように、押出板64が分離板61の一端部61Fと他端部61Bとの間を往復移動するとともに、各除去部材66A、66B、66C、及びスクレーパー68も往復移動するため、開口部62に付着又は開口部62を閉鎖する大便Fは除去される。このため、その後に便器1が使用されて排泄された小便Uは分離板61の開口部62を良好に通過することができる。つまり、固液分離装置60は大便Fと小便Uとを良好に分離することができる。このように、レバーL3を操作することによって、無電源で排泄物の処理を行うことができる。
【0094】
本発明は上記記載及び図面によって説明した実施例1及び2に限定されるものではく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例1では、固液分離装置を備えているが、固液分離装置を備えなくてもよい。その場合、便器排出口から排出される小便を直接、水分保持体に向け落下させ、保持させるようにすればよい。
(2)実施例1では、水分保持体31は円環状であるが、図17に示すように、円環状の中央空洞部に十字状の連結部33Aを設け、その中心部にロープ31Aが挿通される水分保持体33にしてもよい。また、図18に示すように、中央空間部が設けられていないブロック状の水分保持体34にしてもよい。また、図19に示すように、吸収性を有する複数の糸状のものから形成された水分保持体35にしてもよい。
(3)実施例1では、水分保持体の中央空間部に吊下げ部材を挿通しているが、水分保持体の外側面を吊下げ部材により連結してもよい。
(4)小便器の下方に小便乾燥装置は配置してもよい。この場合、固液分離装置は備えなくてよい。
(5)実施例1及び2では不織布により形成された水分保持体を利用したが、多孔質又は繊維質であれば他の素材から形成されてもよい。また、水分保持体は水分を吸収する素材でなく、平面板上に小便を拡げて蒸発させるものであってもよい。
(6)水分保持体は生分解性の素材から形成されてもよい。この場合、使用後に農作物等への肥料として利用することができる。
(7)実施例1及び2では、固液分離装置が床部材の下面に設けられたレール部材に吊下げられて固定されているが、固液分離装置を便器の下部に組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0095】
1…便器
2…便鉢
3…便器排出口
10、60…固液分離装置
30、80…小便乾燥装置
31、81…水分保持体
82…リン吸着体
83…容器
84…底板部
84A…排出口
85…側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢及びこの便鉢に連通し、下方に向けて開口する便器排出口を有する便器の下方に設置され、前記便器排出口から排出される小便を保持し、かつ蒸発させる水分保持体を備えていることを特徴とする小便乾燥装置。
【請求項2】
前記便器の下方であって、前記水分保持体の上方に設置され、前記便器排出口から排出される小便が通過する際にこの小便に含有するリンを吸着するリン吸着体を備えていることを特徴とする請求項1記載の小便乾燥装置。
【請求項3】
前記リン吸着体は、小便を下方に排出する排出口を設けた底板部、及びこの底板部の外周部から立ち上がった側壁部を有し、上方が開口した容器内に収納されていることを特徴とする請求項2記載の小便乾燥装置。
【請求項4】
前記リン吸着体は、小便を分解する分解菌を担持していることを特徴とする請求項2又は3記載の小便乾燥装置。
【請求項5】
前記水分保持体は複数に分割されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の小便乾燥装置。
【請求項6】
前記水分保持体は、平板状であり、水平方向に広げた状態で上下方向に間隔を空けて保持し、前記便器の下方に吊り下げられていることを特徴とする請求項5記載の小便乾燥装置。
【請求項7】
前記水分保持体は、円環状であり、中央空間部に吊下げ部材を挿通して保持し、前記便器の下方に吊り下げられていることを特徴とする請求項5記載の小便乾燥装置。
【請求項8】
前記水分保持体は、多孔質又は繊維質であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の小便乾燥装置。
【請求項9】
便鉢及びこの便鉢に連通し、下方に向けて開口する便器排出口を有する便器と、前記便器排出口の下方に設けられ、この便器排出口から排出された排泄物を小便と大便とに分離する固液分離装置と、この固液分離装置の下方に設けられた請求項1乃至8のいずれか1項記載の小便乾燥装置とを備えていることを特徴とするトイレ設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−167506(P2011−167506A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2622(P2011−2622)
【出願日】平成23年1月10日(2011.1.10)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】