説明

小動物用生体磁気測定装置

【課題】ネズミのような小動物の心磁や脳磁を測定するのに適した構成の小動物用生体磁気測定装置を提供する。
【解決手段】磁気・電波シールド(1a)で囲繞され且つ小動物(A)を収容しうる小動物室(1)と、小動物室(1)の上に設置されたデュワ室(2)と、デュワ室(2)内に設置されたデュワ(3)と、デュワ(3)から垂下しデュワ室(2)の床から小動物室(1)の天井を突き抜けて小動物室(1)の中央辺りまで突出した外径50mm以下のセンサ管(4)と、センサ管(4)の下端部に設置された超伝導磁気センサ(5)とを具備する。
【効果】磁気・電波シールドが必要最小限の構成で済み、小動物室内にノイズ源(例えば磁性部材)を全く存在させずに済み、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を好適に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小動物用生体磁気測定装置に関し、さらに詳しくは、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を測定するのに適した構成の小動物用生体磁気測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベッドに寝た人の胸部に、デュワに入れた液体ヘリウムで冷却した超伝導センサを上方より近づけて、心磁を測定する生体磁気計測システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、デュワに入れた液体ヘリウムで冷却した超伝導センサをベッド内に設置し、ベッドに寝た人の心磁を背中側から測定する心磁測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2002−57377号公報
【特許文献2】特開2003−310565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の生体磁気計測システムや心磁測定装置は、人が寝るベッドからデュワまで丸ごと囲繞する磁気・電波シールド室を持つ大掛かりな構成であった。
しかし、このような大掛かりな構成は、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を測定する用途には適していなかった。
そこで、本発明の目的は、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を測定するのに適した構成の小動物用生体磁気測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、磁気・電波シールドで囲繞され且つ小動物を収容しうる小動物室と、前記小動物室の上に設置されたデュワ室と、前記デュワ室内に設置されたデュワと、前記デュワから垂下し前記デュワ室の床から前記小動物室の天井を突き抜けて前記小動物室の中央辺りまで突出した外径50mm以下のセンサ管と、前記センサ管の下端部に設置された超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置を提供する。
上記構成において「小動物」とは、体重が7kg以下の動物を意味する。
上記第1の観点による小動物用生体磁気測定装置では、小動物を収容する小動物室とデュワを収容するデュワ室とを分け、小動物室はデュワ室とは別個に磁気・電波シールドで囲繞する。そして、デュワ室からセンサ筒を垂下し、超伝導磁気センサの入ったセンサ筒の下端部を小動物室の中央辺りに突き出す。これにより、磁気・電波シールドが必要最小限の構成で済み、また、小動物室内にノイズ源(例えば磁性部材)を全く存在させずに済み、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を好適に測定できるようになる。なお、センサ管の外径を50mm以下とするのは、センサ管を通す孔を通じてのデュワ室からのノイズの回り込みを抑制するためである。
【0005】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点による小動物用生体磁気測定装置において、前記デュワ室が、前記小動物室より簡易な磁気・電波シールドで囲繞されていることを特徴とする小動物用生体磁気測定装置を提供する。
上記第2の観点による小動物用生体磁気測定装置では、小動物室より簡易な磁気・電波シールドでデュワ室を囲繞するため、デュワ室からのノイズの回り込みをさらに抑制することが出来ると共に構成上の負担も小さくて済む。
【0006】
第3の観点では、本発明は、前記第1または前記第2の観点による小動物用生体磁気測定装置において、小動物を上面に載置して上下・前後・左右に移動するための非磁性材料による小動物位置移動手段を前記小動物室内に設置したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置を提供する。
上記第3の観点による小動物用生体磁気測定装置では、小動物を移動して超伝導磁気センサに位置合わせすることが出来る。なお、非磁性材料製とするのは、ノイズ源になるのを防止するためである。
【0007】
第4の観点では、本発明は、前記第1から前記第3のいずれかの観点による小動物用生体磁気測定装置において、前記センサ管が可撓性を有しており、前記小動物室に突出した前記センサ管を撓ませることにより前記超伝導センサの位置を移動するための非磁性材料によるセンサ位置移動手段を前記小動物室内に設置したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置を提供する。
上記第4の観点による小動物用生体磁気測定装置では、超伝導磁気センサを移動して小動物に位置合わせすることが出来る。なお、非磁性材料製とするのは、ノイズ源になるのを防止するためである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の小動物用生体磁気測定装置によれば、磁気・電波シールドが必要最小限の構成で済み、また、小動物室内にノイズ源(例えば磁性部材)を全く存在させずに済み、ネズミのような小動物の心磁や脳磁を好適に測定できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に係る小動物用生体磁気測定装置100を示す構成図である。
この小動物用生体磁気測定装置100は、磁気・電波シールド1aで囲繞され且つ小動物Aを収容しうる小動物室1と、小動物室1の上に設置されたデュワ室2と、デュワ室2内に設置されたデュワ3と、デュワ3から垂下しデュワ室2の床から小動物室1の天井を突き抜けて小動物室1の中央辺りまで突出した外径35mmのセンサ管4と、センサ管4の下端部に設置された超伝導磁気センサ5と、小動物室1の下に設置され且つ超伝導センサ5を駆動する電子回路を収容した基台15と、電子回路からの信号を処理し生体磁気情報を抽出する情報処理装置20とを具備している。
【0011】
小動物室1の磁気・電波シールド1aは、2層のパーマロイと1層の銅板の積層材からなる。
デュワ室2も、1層のパーマロイと1層のアルミ板の積層材からなる磁気・電波シールドで囲繞されている。
【0012】
センサ管4は、フッ素樹脂製であり、可撓性を有している。
【0013】
小動物室1内の床面には、ツマミ61を回すことにより上下に移動するZステージ6zと、ツマミ62を回すことにより前後に移動するXステージ6xと、ツマミ63を回すことにより左右に移動するYステージ6yとを有する小動物移動台6が設置されている。小動物移動台6は、プラスチックや真鍮のような非磁性材料により構成されている。
【0014】
小動物室1内の上部の壁面には、ツマミ71を回すことにより前後に移動するXフレーム7xと、ツマミ72を回すことにより左右に移動するYフレーム7yと、Yフレーム7yに取り付けられセンサ管4をxy方向に拘束する拘束板70とを有するセンサ移動機構7が設置されている。センサ移動機構7は、プラスチックや真鍮のような非磁性材料により構成されている。
なお、Xフレーム7xとYフレーム7yは枠だけである。これは、後述するカメラ13,14の視界を妨げないためである。
図2に示すように、拘束板70を移動すると、センサ管4が撓み、超伝導磁気センサ5の位置を移動することが出来る。
【0015】
小動物室1は、観音開きする左扉8Lおよび右扉8Rを有する。
右扉8Rには、左扉8Lとの合わせ目側の辺に開放された切欠孔9が設けられている。この切欠孔9に麻酔液チューブ10を通すことにより、左扉8Lおよび右扉8Rを閉じて小動物Aの心磁や脳磁を測定しながら、小動物室1外に置いた麻酔液注入装置から麻酔液を小動物Aに注入することが出来る。
【0016】
また、温調ベッド11を使うときは、切欠孔9に温水チューブ12を通すことにより、左扉8Lおよび右扉8Rを閉じて小動物Aの心磁や脳磁を測定しながら、小動物室1外に置いた温水循環装置から温調ベッド11に温水を給排することが出来る。
【0017】
なお、右扉8Rの他の辺(例えば下辺)に切欠孔9を開放してもよい。また、右扉8Rの代わりに左扉8Lに切欠孔9を設けてもよいし、右扉8Rに加えて左扉8Lにも切欠孔9を設けてもよい。
【0018】
小動物室1の天井の、センサ管4を挟む少なくとも2カ所(好ましくは4カ所)には、小動物室1内を撮影するためのカメラ13,15および照明のためのLED14,16が設置されている。
情報処理装置20は、左扉8Lおよび右扉8Rを閉じて小動物Aの心磁や脳磁を測定している間に、間欠的に小動物室1内を撮影し、得られた画像を解析して小動物室1内での超伝導磁気センサ5の位置(センサ管4の下端の位置)を検出し、記録し、ディスプレイに表示する。
【0019】
なお、照明のためのLED14,16を省略してもよい。この場合は、左扉8Lおよび右扉8Rを開け、外部からの照明で小動物室1内を撮影することになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
例えばネズミのような小動物から発せられる磁場を測定するのに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係る小動物用生体磁気測定装置を示す正面図である。
【図2】超伝導磁気センサの位置を移動した状態を示す部分正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 小動物室
1a 磁気・電波シールド
2 デュワ室
3 デュワ
4 センサ管
5 超伝導磁気センサ
6 小動物移動台
7 センサ移動機構
8L,8R 扉
9 切欠孔
10 麻酔液チューブ
11 温調ベッド
12 温水チューブ
100 小動物用生体磁気測定装置
A 小動物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気・電波シールドで囲繞され且つ小動物を収容しうる小動物室と、前記小動物室の上に設置されたデュワ室と、前記デュワ室内に設置されたデュワと、前記デュワから垂下し前記デュワ室の床から前記小動物室の天井を突き抜けて前記小動物室の中央辺りまで突出した外径50mm以下のセンサ管と、前記センサ管の下端部に設置された超伝導磁気センサとを具備したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の小動物用生体磁気測定装置において、前記デュワ室が、前記小動物室より簡易な磁気・電波シールドで囲繞されていることを特徴とする小動物用生体磁気測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の小動物用生体磁気測定装置において、小動物を上面に載置して上下・前後・左右に移動するための非磁性材料による小動物位置移動手段を前記小動物室内に設置したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の小動物用生体磁気測定装置において、前記センサ管が可撓性を有しており、前記小動物室に突出した前記センサ管を撓ませることにより前記超伝導センサの位置を移動するための非磁性材料によるセンサ位置移動手段を前記小動物室内に設置したことを特徴とする小動物用生体磁気測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−313143(P2007−313143A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147610(P2006−147610)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、経済産業省、地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】