説明

小型かつ長寿命の原子炉のための改質された窒化物燃料

原子炉用燃料要素は、改質窒化ウランまたは改質窒化プルトニウム燃料および上記改質窒化ウランまたは改質窒化プルトニウム燃料の特性を向上させる添加剤を含む。様々な実施形態において、窒化物添加剤は、燃料要素のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理を向上させる。様々な実施形態において、添加剤は、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、または希土類窒化物の少なくとも1つを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、ローレンスリバモア国立研究所(Lawrence Livermore National University)の運営に関する米国エネルギー省とカリフォルニア大学(the University of California)間の契約番号W−7405−ENG−48に従って本発明において権利を有する。
【0002】
本発明は原子炉に関し、さらに詳細には、小型かつ長寿命の原子炉用の改質された窒化物燃料に関する。
【背景技術】
【0003】
1986年11月25日に発行された米国特許第4,624,828号(Carl A.Alexander、バテル記念研究所(Battele Memorial Institute)に譲渡)は、以下の科学技術情報を提供している:「近年、コンパクトで、高温を発生させる核燃料を見いだす試みがなされている。このような燃料は、宇宙空間で使用するための原子炉において特に価値が高い。このような原子炉において燃料に金属ウランを使用することは非現実的である。この理由は、その低融点および相変化のためである。高速増殖炉用の安定化燃料を構築するための代替案は、二酸化ウラン、炭化ウラン、および窒化ウランの使用に重点を置く。トリウム、プルトニウム、またはこれらの元素のウラン燃料との組み合わせの対応する化合物も用いられている。適合性は、核燃料の選択に関連する検討事項である。核燃料それ自体は、これが含まれる被覆材と適合性でなければならない。燃料は、これに添加される任意の物質、たとえば、耐熱金属とも適合性でなければならない。非適合性元素を燃料に添加すると、十分なサーメットの形成が妨げられる。たとえば、炭化物核燃料は高温で、あらゆる一般的な物質と極めて限られた適合性しか有さない。不適合性のもう一つ別の例は、一窒化ウランと窒化カルシウムの組成物中に存在する。この物質の物理的特性は、最初は、一窒化ウラン燃料を安定化させるために必要であると本発明に関して特定されたパラメータの範囲内にあるようである。しかしながら、この物質は、多くの遷移金属の窒化物と異なり、一窒化ウランを用いた十分なサーメットの形成を妨げる。物質の熱伝導性適合性の検討もしなければならない。電子による導通により熱を伝達するこれらの物質は増大した熱伝導率を有し、主にフォノン誘導により熱を伝達する物質よりも好ましい。増大した熱伝導率は核燃料の有用性を改善する。二酸化ウラン(UO)は非常に寛容な物質である。被覆材に対する顕著な腐蝕またはサーメット形成の低下の問題がなく、ステンレス鋼、耐熱金属、およびさらには他のセラミックと適合性であることが証明されている。これは比較的安定で、加工が容易である。これは複雑な蒸気相を有し、可能性のある核燃料のうちほぼ最低の熱伝導率を有する。これは長時間、ただし低温でのみ機能できる。高温では、その作業時間は大きく減少する。(米国特許第4,624,828号、第1欄、11〜59行)。
【発明の開示】
【0004】
本発明の特徴および利点は以下の説明から明らかになるであろう。本出願者らは、本発明の一般的な説明のために、具体的な実施形態の例を含むこの説明を提供する。本発明の精神および範囲内での様々な変更および変形例は、この説明および本発明の実施により当業者には明らかになるであろう。本発明の範囲は、開示された特定の形態に制限されることを意図するものではなく、本発明は、請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲内のあらゆる変形例、同等物、および代替物を対象とするものである。
【0005】
本発明は原子炉用燃料要素を提供する。燃料要素は、改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料および改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料の特性を向上させる添加剤を含む。添加剤は、少なくとも1種の窒化物を含む。様々な実施形態において、窒化物添加剤は、燃料要素のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理を向上させる。本発明の燃料要素の様々な実施形態において、添加剤は、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、希土類窒化物、または他のアクチニド窒化物の少なくとも1つを含む。
【0006】
本発明はさらに、原子炉用燃料要素を製造する方法も提供する。この方法は、改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料を提供し、窒化物を上記核燃料に添加して、核燃料のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理特性を向上させることを含む。本発明の様々な実施形態において、窒化物を核燃料に添加する工程は、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、または希土類窒化物の少なくとも1つを燃料要素に添加することを含む。
【0007】
本発明は、変形例および代替形態を受け入れる余地がある。具体的な実施形態は、例として示される。本発明は開示された特定の形態に限定されないと理解すべきである。本発明は、請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲内のあらゆる変形例、同等物、および代替物を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の具体的な実施形態を説明し、上記の本発明の一般的な説明、および具体的な実施形態の詳細な説明と併せて、本発明の原理を説明するために役立つ。
【図1】燃料特性を向上させるための添加剤を備えたUN燃料を有する燃料棒の一実施形態を示す。
【図2】図1において示される燃料棒の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の詳細な説明、および取り込まれる物質に関して、具体的な実施形態の記載を含む本発明に関する詳細な情報が提供される。詳細な説明は、本発明の原理を説明する役割を果たす。本発明は、変形例および代替形態を受け入れる余地がある。本発明は開示された特定の形態に限定されない。本発明は請求の範囲により規定される本発明の精神および範囲内のすべての変形例、同等物、および代替物を対象とする。
【0010】
核エネルギーは、現在、米国において用いられる電力の20%、全世界で用いられる電力の16%を供給する。核エネルギーの地球規模の使用が増大するにつれ、誤用またはテロリストによる攻撃に対する原子力発電所および燃料物質の脆弱性が問題になっている。ローレンスリバモア国立研究所チームは、エネルギー省(DOE)連携の一部であり、これは小型・密閉型・移動可能な独立型反応炉(SSTAR)と呼ばれる概念を追求することにより、核エネルギーへの高まる必要性および核拡散に関する問題の両方に対処する。SSTARは不正使用防止容器中内蔵型反応炉であるように設計される。目的は、信頼性のある費用効果的な電力、熱、および淡水を供給することである。このデザインは、乗用車用代替燃料として使用される水素を生産するためにも使用できる。
【0011】
SSTAR概念は、テロリストが核物質および技術を転用または誤用する可能性を減少させる。核燃料は、その目的地へと輸送される場合、密封された不正使用防止反応炉容器内に入れられ、使用済み炉心はリサイクルのために供給者に戻される。SSTARは他の特徴同様、拡散問題も対処する。反応炉運転の間、燃料補給は必要なく、このことは、現場での核物質への接近および核物質の長期保管を排除する。このデザインは、反応炉の安全性を脅かす活動を確認する検出および合図送信システムも含む。反応炉の小さなサイズならびにその熱および核特性のために、デザインは、ハードウェア障害または制御障害に応答して反応炉を停止させ、冷却する受動法を含み得る。動きの速い中性子を用いて、SSTARは、エネルギーを発生させると同時に継続運転に燃料を補給するために必要な核分裂性物質を生産することができる。ウランまたはプルトニウムの形態の使用済み燃料は、反応炉中に残存して、最高30年まで電力を発生する。使用済み反応炉はその後、燃料サイクルを閉鎖し、原子炉により発生した高レベル廃棄物を最小限に抑えるために、安全なリサイクル施設に戻され、かくして放射性廃棄物の長期保管に必要な場所およびインフラが減らされる。リサイクルの概念は、廃棄物のほとんどすべてを反応炉心において燃焼させることである。
【0012】
SSTAR概念における燃料および冷却材境界用物質は、冷却材と適合性でなければならない。鉛は、特にビスマスと合金にされる場合に、燃料被覆および構造用鋼を腐蝕する傾向がある。冷却材中の酸素を制御することは、腐蝕を軽減する助けになるであろう。加えて、高速中性子への長期暴露の損傷効果に最もよく耐える物質を使用すべきである。構造上の損傷は、物質の膨張および延性の損失を含み、これらはどちらも反応炉の寿命を制限し得る。
【0013】
本発明は、燃料性質を向上させるための添加剤を用いて製造されるUNまたは(U,Pu)N燃料を提供する。向上された性質には、熱伝導性、熱力学的安定性、および中性子捕獲特性が含まれる。添加剤としては、TiN、ZrN、HfN、ThN、希土類窒化物、および他のアクチニド窒化物が挙げられる。向上された特性は、反応炉デザインのコンパクトさ、反応炉の寿命、放射前後の拡散抵抗性、燃料安全性、および使用済み燃料の廃棄物管理において潜在的利益をもたらす。向上された特性は、安全性、たとえば、密封および長寿命燃料、一体型計装および制御に有用であり、特殊化検出および合図送信システムを組み入れて、核物質の転用の危険性が最小限に抑えられる。本発明はSSTAR、および他の小型長寿命反応炉において有用である。
【0014】
図1に関連して、本発明を組み入れた燃料棒システムの実施形態を説明する。このシステムは、一般に参照番号100により示される。システム100は、燃料特性を向上させるための添加剤を用いて製造されたUNまたはPuN燃料102を含む。システム100は燃料セクション104およびプレナムセクション106を含む。被覆材101は燃料棒システム100を包み込む。燃料棒システム100は、化学的バリアを提供するライナー103を含む。UNまたはPuN燃料102はペレットの形態である。
【0015】
図2に関連して、図1の燃料棒の断面図が示される。燃料棒システム100は、化学的バリアを提供するライナー103を含む。被覆材101はライナー103を取り巻く。UNまたはPuN燃料102はペレットの形態である。ヘリウム充填ガスギャップ106はライナー103および燃料ペレット102の間に位置する。
【0016】
UNまたはPuN燃料102は、改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料および改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料の性質を向上させる添加剤を含む。添加剤は、少なくとも1種の窒化物を含む。様々な実施形態において窒化物添加剤は、燃料要素のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理を向上させる。本発明の燃料要素の様々な実施形態において、添加剤は、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、または希土類窒化物の少なくとも1つを含む。
【0017】
改質された窒化物ベースのウランまたはプルトニウム燃料(UNまたはPuN)燃料102の実施形態は、ローレンスリバモア国立研究所において制御されたグローブボックス(glovebox)環境における酸化物の炭素熱還元により生産されてきた。これらの実施形態の改質された窒化物ベースのウランまたはプルトニウム燃料は、5つの別個の性質を向上させるための添加剤を含む。5つの別個の性質とは:(1)コンパクトさ、(2)長寿命、(3)拡散抵抗性、(4)燃料安全性、および(5)廃棄物管理である。これらの実施形態のウランまたはプルトニウム一窒化物燃料は、SSTARおよび他の小型、長寿命反応炉において有用である。
(1)コンパクトさ−これらの実施形態のウランまたはプルトニウム一窒化物燃料の向上された性質は、コンパクトさをもたらす。核分裂性同位元素(235U)の密度が高いほど、臨界質量がさらに小さくなるので、さらにコンパクトな反応炉が提供される。炉心が小さいほど、単位面積あたりより多くの熱が発生し、システムから熱を取り出し、燃料の許容できる中心線温度を維持するために、さらに高い熱伝導率の燃料が必要になる。燃料中の235Uの密度を減少させるかまたは燃料の安定性、さらにコンパクトな反応炉デザインに影響を及ぼすことなく熱伝導率を増大させるために燃料の組成が変更される。
(2)長寿命−長寿命は、主に反応炉デザインにより得られる。しかしながら、燃料組成も、よくも悪しくも寿命に影響を及ぼし得る。有利な特性は以下のものである:
−高分裂性ローディング(すなわち、UNにおける高235U濃縮、または(U,Pu)N中の高239Pu含量)
−放射中にそれぞれ233Uリッチなウランおよび239Puリッチなプルトニウムに変換される232Thまたは238Uの存在
−燃料中心線温度ならびに燃料および被覆材物質に対する放射の影響に依存する低被覆材ひずみ
−燃料中の可燃性中性子毒の存在。
【0018】
拡散問題は235U濃縮および放射の影響により起こる被覆材ひずみを制限する。SSTARはピーク中性子エネルギーが0.2から0.3MeVの間の高速スペクトル原子炉であるので、可燃性毒物の使用はサーマルスペクトル原子炉においてとくらべてかなり有効性が低い。0.1および0.5MeVの中性子エネルギーでの様々な元素の中性子吸収断面積は、通常、良好な中性子毒として認められている多くの元素に関しても比較的低い。これらの元素のすべてのうち、Euがこのエネルギーレジーム中最も良好な中性子毒であり、Hf、Sm、Gd、およびDyはすべて平均的中性子毒よりもかなり良好である。アクチニド系のいくつかの核分裂断面積は、235Uおよび239Puの核分裂断面積はEuとほぼ同じであり、Hf、Sm、Gd、およびDyより約4倍高いことを示す。従って、可燃性毒の一つによる中性子捕獲率は若干低いが、235Uの核分裂率に匹敵する。中性子吸収断面積はこのエネルギーレジームにおいて比較的低いが、可燃性毒は依然として燃料寿命を著しく延長できる。
(3)拡散抵抗性−拡散抵抗性は、主に反応炉デザインにより保証されるが、燃料の組成も重要な検討事項である。新鮮な燃料中のウランが核兵器における使用に魅力的でないことを保証するために、235U濃縮は20%に制限される。新鮮な燃料はUNから容易に分離されない他の不活性物質の添加により、転用に魅力的でないようにされる。UNよりも水性溶液中に溶解しにくい不活性物質の添加は拡散抵抗性を増強する。一旦物質が溶液中に溶解されると、PUREX様精製プロセスは他の不活性物質からアクチニドを良好に分離させる。
【0019】
拡散抵抗性は、特に燃料が再処理される場合、使用済み核燃料における検討事項である。新鮮な燃料中に232Thまたは238Uが存在するならば、放射は使用済み燃料中に235Uリッチまたは239Puリッチな武器使用可能な物質をもたらす。新鮮な燃料中の235Uのさらに高い濃縮の存在により、Puの魅力は低下するが、なくなるわけではない。放射により、237Npおよびより少ない程度で235Uは最終的に238Puに変換される。さらに長時間、たとえば、より高いバーンアップ、放射することにより、放射された燃料中のプルトニウムの魅力も低下するが、なくなるわけではない。長い放射サイクル(反応炉燃料の長寿命により支持される)は、使用済み燃料の240Puおよび242Puの割合をさらに高くする。
【0020】
全体として、新鮮な燃料の魅力は、他の窒化物をUN燃料に添加することによりほとんど減少せず、使用済み燃料の魅力は、235U濃縮が20%より低く維持されている限り、235U含量に対して238U含量を最小限に抑えることにより若干減少する。
(4)燃料安全性−窒化物燃料および被覆材に関して、燃料安全性に関連する適切な基準は次の通りである:
−核分裂ガス放出および保持
−燃料ペレット被覆材相互作用
−放射線膨張効果
−燃料中心線温度。
【0021】
一般に、核燃料の到達可能なバーンアップおよび動作寿命は、物質性能問題により制限され、これは中性子放射中の燃料ペレット、被覆材および構造材料の熱および物理的性質及び寸法安定性における変化の結果である。改質窒化物燃料の開発により、さらに高いバーンアップに到達するための改善された物質およびデザイン法がもたらされる。
【0022】
核分裂ガスビルドアップの影響は、燃料棒デザインにより緩和することができる。燃料の密度が、多孔性が開放されるために十分低いならば(通常、理論値の95%付近以下)、核分裂ガスは燃料から拡散し、燃料棒の末端でのギャップ中に集まり得る。燃料組成の変更はこの点に関して有益でないかまたは不利益である。被覆材を有する燃料の安定性は、熱力学的安定性、物質の適合性、燃料温度、および放射誘発性膨張効果に依存する。
【0023】
窒化物粉末の酸化が始まる温度および粉末が発火する温度は重要である。バルク固体に関して、これらの温度はもちろんかなり高い。データは、PuN以外の窒化物を添加することは耐酸化性に有利であり、おそらくは物質の取り扱いをかなり簡単にすることを示す。燃料マトリックスに添加するために最良の窒化物は、明らかにZrNおよびHfNである。
【0024】
被覆材との相互作用に関して、ある熱力学的計算を行って、窒化物が、ジルコニウムリッチな合金(通常、重および軽水炉に関して)、ニオブリッチな合金(通常、宇宙用原子炉に関して)、または鉄ベースの合金(通常、液体金属原子炉に関して)になる被覆材物質に関して安定であるかどうかを確かめることができる。これらの計算は、これらの添加剤が改質窒化物燃料の安定性を燃料要素被覆材に関して有意に増大させることを示す。
(5)廃棄物管理−廃棄物管理は使用済み核燃料に関する複雑な問題である。燃料がワンススルーサイクルで使用され、そのまま捨てられるならば、燃料は地下貯蔵所中で数千年間安定であることが重要である。燃料が閉鎖サイクルにおいて用いられるならば、燃料は容易に精製でき、再使用できることが重要である。
【0025】
開放ワンススルー燃料サイクルに関して、使用済み燃料は最終的に地下貯蔵所中に廃棄する必要がある。燃料中の成分は再使用されないので、拡散の観点から、燃料をそのまま、アクチニドから核分裂性生成物を分離して窃盗または転用に魅力的にすることなく捨てるのが最善である。窒化物は酸化物よりも反応性が高く、直接廃棄の場合はさらに困難である。PuN以外の窒化物をUN燃料に添加することは、燃料を著しく安定化させて、水に関してさらに安定にし、酸化に対してさらに耐性にする。かくして、直接廃棄選択についての廃棄物管理の観点から、TiN、ZrN、HfN、またはThNをUN燃料に添加することは重要な利点である。
【0026】
核物質の再処理および再使用を含む閉鎖燃料サイクルに関して、溶解および精製の容易性は廃棄物管理の観点から重要な因子である。HfNおよびZrNはUNより溶解が若干困難なようである。従って、これらの窒化物の添加は、使用済み核燃料の精製および再使用を複雑にし得る。難溶性物質は一般にさらに複雑な処理を必要とし、さらに多くの廃棄物が生じる。
【0027】
全体として、純粋なUNを使用するよりも、ZrNまたはHfNを燃料に添加することが有利である。米国においては、ワンススルーオープン燃料サイクルについてより多くの支持があるようである。長期において、燃料および廃棄処理のコストがより高くなるにつれ、閉鎖サイクルがより魅力的になるであろう。閉鎖サイクルにおいて、ZrNまたはHfNを燃料に添加することは溶解および精製プロセスを複雑にし得る。
【0028】
閉鎖サイクルにおいて、寿命の長いアクチニド廃棄物(すなわち、NpNおよびAmN)は燃料中に廃棄することができる。237Npの場合、放射の間に238Puに変換されて、燃料の全体的なPu同位元素組成を兵器使用に望ましくないようにする。
【0029】
本発明の様々な実施形態において、窒化物添加剤は燃料要素のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理を向上させる。本発明の燃料要素の様々な実施形態を次に記載する。様々な実施例において、添加剤は、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、希土類窒化物、または他のアクチニド窒化物の少なくとも1つを含む。
【実施例1】
【0030】
改質された窒化物ベースのウラン燃料がローレンスリバモア国立研究所で制御されたグローブボックス環境における酸化物の炭素熱還元により製造されている。実施例1の改質された窒化物ベースのウラン燃料は、10%のウラン235(10%235UN)、40%の窒化ジルコニウム(40%ZrN)、10%の窒化ハフニウム(10%HfN)、および40%のウラン238(40%238UN)を含む。実施例1または実施例1の変形例の改質窒化物ベースのウラン燃料は、233UまたはPuの取り扱いを認可されていない燃料加工業者(すなわち、ほとんどの企業)および重または軽水炉における使用に好適な(すなわち、水との反応に対して耐性である)窒化物燃料を製造しようとする者が使用できる。
【0031】
実施例1の改質されたウラン一窒化物燃料の向上された性質は、反応炉デザインのコンパクトさ、反応炉の寿命、放射前後の拡散抵抗性、燃料安全性、および使用済み燃料の廃棄物管理において潜在的利点をもたらす。向上された性質は、安全性、たとえば、密封された長寿命燃料、一体型計装および制御に有用であり、核物質の転用の危険性を最小限に抑えるために、特殊化された検出および合図送信システムが組み入れられる。実施例1における改質ウラン一窒化物はSSTARおよび他の小型、長寿命反応炉において有用である。
【0032】
実施例1における改質ウラン一窒化物燃料の向上された性質は、コンパクトさをもたらす。核分裂性同位元素(235U)の密度が高いほど、臨界質量が小さくなるので、よりコンパクトな反応炉が得られる。炉心が小さいほど、単位面積あたりより多くの熱が生じ、システムから熱を取りだし、燃料の許容できる中心線温度を維持するためにより高い熱伝導率の燃料が必要とされる。燃料中の235Uの密度を減少させるか、または燃料の安定性、さらにコンパクトな反応炉デザインに影響を及ぼすことなく熱伝導率を増大させるために、燃料の組成が変更される。
【実施例2】
【0033】
原子炉の改質された窒化物ベースの燃料のもう一つ別の実施例は、ローレンスリバモア国立研究所で制御されたグローブボックス環境中における酸化物の炭素熱還元により生産されている。実施例2の改質された窒化物ベースの燃料は、10%のプルトニウム(10%235Pu)、10%の窒化ジルコニウム(10%ZrN)、10%の窒化ハフニウム(10%NpN)、および70%のウラン238(70%238UN)を含む。実施例2の一窒化物燃料または実施例2の一窒化物燃料の変異体の向上された性質は、使用済み燃料の再処理ならびにPuの回収および使用に興味のある国々が使用できる。
【実施例3】
【0034】
原子炉の改質された窒化物ベースの燃料のもう一つ別の実施例は、ローレンスリバモア国立研究所で制御されたグローブボックス環境中における酸化物の炭素熱還元により生産されている。実施例3の改質された窒化物ベースの燃料は、10%のウラン233/ウラン235混合物、70%の窒化トリウム(70%のトリウムThN)、10%の窒化ジルコニウム(10%ZrN)、10%の窒化ハフニウム(10%NfN)を含む。実施例3の一窒化物燃料または実施例3の一窒化物燃料の変異体の向上された性質は、豊富なトリウム源を有し、使用済み燃料の再処理ならびに233Uの回収および使用に興味のある国々が使用できる。
【実施例4】
【0035】
原子炉の改質された窒化物ベースの燃料のもう一つ別の実施例は、ローレンスリバモア国立研究所で制御されたグローブボックス環境中における酸化物の炭素熱還元により生産されている。実施例4の改質された窒化物ベースの燃料は、10%のプルトニウム(10%235Pu)、70%の窒化ジルコニウム(70%ZrN)、10%の窒化ハフニウム(10%NpN)、および10%の窒化ネプツニウム(10%NpN)または10%の窒化アメリシウム(10%AmN)を含む。実施例4の一窒化物燃料または実施例4の一窒化物燃料の変異体の向上された性質を使用して、プルトニウムを廃棄することができる。結果として得られる燃料は、238Pu、241Pu、および242Puが高い。NpおよびAmも消費される。
【0036】
本発明は様々な変形例および代替形態を受け入れる余地がある。特定の実施形態は、例として本明細書において詳細に示されている。本発明は開示された特定の形態に限定されることを意図しないと理解すべきである。むしろ、本発明は、添付の請求の範囲により規定されるような本発明の精神および範囲内にあるすべての変形例、同等物、および代替物を対象とするものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質窒化ウラン燃料あるいは改質窒化プルトニウム燃料、および
前記改質窒化ウラン燃料または改質窒化プルトニウム燃料の性質を向上させる添加剤であって、少なくとも1種の窒化物を含む添加剤を含む、原子炉用燃料要素。
【請求項2】
前記添加剤が、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、希土類窒化物、または他のアクチニド窒化物の少なくとも1つを含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項3】
前記添加剤が窒化ジルコニウムを含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項4】
前記添加剤が窒化ハフニウムを含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項5】
前記核燃料が、10%のウラン235を含み、前記添加剤が40%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを含み、40%のウラン238を含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項6】
前記核燃料が、10%のプルトニウムを含み、前記添加剤が、10%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを含み、70%のウラン238を含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項7】
前記核燃料が、10%のウラン233およびウラン235の混合物を含み、前記添加剤が、70%の窒化トリウム、10%の窒化ジルコニウム、および10%の窒化ハフニウムを含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項8】
前記核燃料が、10%のプルトニウムを含み、前記添加剤が70%の窒化ジルコニウム、10%の窒化ハフニウム、および10%の窒化ネプツニウムまたは10%の窒化アメリシウムを含む請求項1記載の燃料要素。
【請求項9】
燃料棒ライナー、
前記燃料棒ライナー中にある核燃料であって、改質窒化ウランまたは改質窒化プルトニウム燃料を含む核燃料、および
コンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理を含む前記核燃料の性質を向上させるための窒化物添加剤を含む、原子炉用燃料棒。
【請求項10】
核燃料であって、改質窒化ウランまたは改質窒化プルトニウム燃料を含む核燃料、および
前記核燃料のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理特性を向上させるための添加剤手段を含む、原子炉用燃料要素。
【請求項11】
前記添加手段が、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、希土類窒化物、または他のアクチニド窒化物の少なくとも1つを含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項12】
前記添加剤手段が、窒化ジルコニウムを含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項13】
前記添加剤手段が、窒化ハフニウムを含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項14】
前記核燃料が、10%のウラン235を含み、前記添加剤手段が、40%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを含み、40%のウラン238を含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項15】
前記核燃料が、10%のプルトニウムを含み、前記添加剤手段が、10%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを含み、70%のウラン238を含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項16】
前記核燃料が、10%のウラン233およびウラン235の混合物を含み、前記添加剤手段が70%の窒化トリウム、10%の窒化ジルコニウム、および10%の窒化ハフニウムを含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項17】
前記核燃料が10%のプルトニウムを含み、前記添加剤手段が70%の窒化ジルコニウム、10%の窒化ハフニウム、および10%の窒化ネプツニウムまたは10%の窒化アメリシウムを含む請求項10記載の燃料要素。
【請求項18】
原子炉用燃料要素を製造する方法であって、
改質窒化ウランまたは改質窒化プルトニウム燃料を含む核燃料を提供し、
窒化物を前記核燃料に添加して、前記核燃料のコンパクトさ、長寿命、拡散抵抗性、燃料安全性、および廃棄物管理特性を向上させることを含む方法。
【請求項19】
窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、窒化ジルコニウム、窒化トリウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、希土類またはアクチニド窒化物の少なくとも1つを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項20】
窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、窒化ジルコニウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項21】
窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、窒化ハフニウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項22】
前記核燃料が、10%のウラン235を含み、40%のウラン238を含み、窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、40%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項23】
前記核燃料が、10%のプルトニウムを含み、70%のウラン238を含み、窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、10%の窒化ジルコニウムおよび10%の窒化ハフニウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項24】
前記核燃料が、10%のウラン233およびウラン235の混合物を含み、窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、70%の窒化トリウム、10%の窒化ジルコニウム、および10%の窒化ハフニウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。
【請求項25】
前記核燃料が、10%のプルトニウムを含み、窒化物を前記核燃料に添加する前記工程が、70%の窒化ジルコニウム、10%の窒化ハフニウム、および10%の窒化ネプツニウムまたは10%の窒化アメリシウムを前記燃料要素に添加することを含む請求項18記載の燃料要素を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−518202(P2008−518202A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537898(P2007−537898)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/033881
【国際公開番号】WO2007/011382
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(304056899)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (9)
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF CALIFORNIA
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, Oakland, CA 94607−5200, United States of America