説明

小型大電力カレントトランス

【課題】 大電流で使用することのできる小型カレントトランスを提供すること。
【解決手段】 カレントトランス1は、外筒部17とその内部に配置される内筒部16と、外筒部17および内筒部16の一端にそれぞれ取り付けられた冷却水ホース15a、15bおよび15cを有する。カレントトランス1に電流を流すときには、冷却水ホース15a、15bおよび15cのいずれかからカレントトランス1の内部に冷却水を導入し、いずれかからこの冷却水を排出する。フェライトコア14に巻回される一次巻線11は被覆され、漏電を未然に防止する。外筒部17と内筒部16とは接合され、加熱コイルに電流を流すための出力端子を有する二次巻線12として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘導加熱に使用するカレントトランスに係り、より詳細には、ロボット等に取り付けて移動しながらの焼入れやロー付け等の加熱処理に利用することのできる小型大電力カレントトランスに関する。
【背景技術】
【0002】
図3に示すのは、従来のカレントトランスの一般的な回路である。このカレントトランスにおいて、一次側の巻き数をNターン、二次側の巻き数を1ターンとすると、一次側にI(A)の電流を流したとき、二次側の電流はN×I(A)となる。すなわち、二次側には一次側に流した電流の巻き数倍の大きさの電流を流すことができる。したがって、二次側に加熱コイルを接続した場合、大電流による誘導加熱が可能となる。こうしたカレントトランス2の一例を図2に示す。
【0003】
図2(a)はカレントトランス2の概略斜視図、図2(b)は概略断面図、図2(c)はカレントトランス2の側部を示す概略平面図である。図示するように、このカレントトランス2は、ドーナツ形状のフェライトコア24と、フェライトコア24に巻回された一次巻線21と、フェライトコア24と一次巻線21との間に設置された銅材の二次巻線22とからなり、一次巻線21の一端は入力端子20、二次巻線22の一端は出力端子23である(図2(a)には二次巻線22および出力端子23は示されていない。また、図2(c)においてはカレントトランス2の外側がカバーで覆われている)。
【0004】
ところで、こうしたカレントトランスは動作時に発熱するため、一次巻線、フェライトコア、および二次巻線(以下トランス部という)を冷却する必要が生じる。図2に示すカレントトランス2の場合には、トランス部に空気を送り込むことによりトランス部の冷却を行うことができる。あるいは、例えば特許文献1のように、二次側導体を銅製パイプから構成し、この銅製パイプ内に冷却水を流すことにより発熱を抑えることのできる水冷式のトランスもある。
【特許文献1】特開2000−12340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カレントトランス2のように空気によりトランス部の冷却を行うと、効率的に熱を逃がすことが困難である。そのため、大きな電流を流すと過熱により破損してしまうおそれがある。このため、従来のカレントトランスに大きな電流を流して利用することは難しかった。これに対し、特許文献1に記載の水冷トランスによれば、トランス部の発熱を水により効率的に冷却し、問題をある程度解決することができる。
そこで、本発明は、トランス部をさらに効率的に冷却することができ、過熱を抑えて大きな電流でも使用可能な小型カレントトランスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するために本発明が提供するのは、外筒部と、外筒部の内部に配置され通水孔を有する内筒部と、外筒部および内筒部の一端にそれぞれ取り付けられた複数の冷却水ホースとを有し、外筒部と内筒部との間に配置された磁性材と、冷却水ホースを通して外筒部の内部に導入され、磁性材に巻回される被覆された一次巻線と、外筒部と内筒部とを接合して形成され、磁性材および一次巻線を包囲する二次巻線とから構成されるカレントトランスである。このカレントトランスにおいては、内筒部および外筒部は銅から作成され、複数の冷却水ホースのうちいずれかの冷却水ホースより導入された冷却水が複数の冷却水ホースのうち別の冷却水ホースより排出される。
【0007】
このカレントトランスにおいて、内筒部および外筒部は円筒形であってもよい。また、内筒部および外筒部は角筒形であってもよい。
さらに、このカレントトランスにおいて、電線の耐圧は1,000ボルト以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカレントトランスによれば、冷却水がトランス部を通過することにより、一次巻線、フェライトコア、および二次巻線を効率よく冷却することができる。また、一次側と二次側との結合係数が極めて良好になり、カレントロスを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1を参照して本発明の好適な実施例を説明する。
図1(a)は本発明による水冷式のカレントトランス1の概略斜視図、図1(b)は概略断面図、図1(c)は側部の概略平面図である。図示するように、このカレントトランス1においては、外筒部17の内部中央に内筒部16が配置される。また、内筒部16と外筒部17との間には一次巻線11およびドーナツ形状のフェライトコア14が設置される。図1(a)には図示しないが、先に図2で参照したカレントトランス2と同様、フェライトコア14には一次巻線11が巻かれているものとする。
【0010】
図2(b)から分かるように、内筒部16の一部には、冷却水を通過させるための2つの通水孔161および162が設けられている。外筒部17および内筒部16は、冷却水を導入および排出するために、それぞれ少なくとも1つのホース取付口を備え、各ホース取付口にはその大きさに適合する冷却水ホース15a、15bおよび15cが取り付けられる。
【0011】
本発明のカレントトランス1において、内筒部16および外筒部17はともに銅から作成され、二次巻線12として機能する。すなわち、外筒部17と内筒部16とは接合され、外筒部17からホース取付口を経て内筒部16に至る部分が1ターンの二次巻線12となる。外筒部17の両端部のうち、一端には前述したようにホース取付口が設けられ、他端には図1(b)および(c)に示すように加熱コイル取付用ネジ穴19が設けられている。ネジ穴19を有する端部は二次巻線12の出力端子13であり、このネジ穴19に加熱コイル(図示しない)を取り付けると、図示しない入力端子からの電流を加熱コイルに流すことができる。
【0012】
また、本実施例においては、冷却水ホース15bおよび15cを通して導入した電線をフェライトコア14に巻回し、一次巻線11とする。冷却水を通して漏電することを防止するために、一次巻線11には、例えば高耐電圧テフロン(登録商標)線のように1,000V以上の高耐電圧を有する被覆された電線を用いる。一次巻線11は多数の細い高耐電圧電線を束にすることで高周波抵抗を下げて使用する。
【0013】
カレントトランス1においては、一次巻線11およびフェライトコア14を包含するように外筒部17と内筒部16とを接合したとき、外筒部17の出力端子13の周辺には空隙がある。したがって、図示するように絶縁材18を用いてこれを埋め合わせ、冷却水を導入したときに漏れ出すことのないように密閉する。
【0014】
本実施例において、カレントトランス1に電流を流して動作させるときには、同時に冷却水ホース15aより内筒部16に冷却水が導入される。図1(b)に矢印で示すように、冷却水は、内筒部16に設けられた通水孔161および162を通過して内筒部16と外筒部17との間にあるトランス部に入り、冷却水ホース取付口を通って冷却水ホース15bおよび15cから排出される。発熱した箇所を通って熱を帯びた冷却水は外部に排出され、新たな冷却水が導入されるので、カレントトランス1は過熱することなく作動することができる。
【0015】
本実施例においては、冷却水ホース15a、15bおよび15cの長さは特に指定しないが、これらの冷却水ホースは例えば10m以上の長さであってもよい。また、本実施例においては内筒部16に2つの通水孔161および162を設けたが、通水孔の数はこれに制限されない。さらに、内筒部16および外筒部17の形状は、図示するように円筒形であってもよいし、角筒形であってもよい。
【0016】
本発明の別の実施例においては、カレントトランス1の動作時に、冷却水ホース15bおよび15cより内筒部16に冷却水を導入してもよい。その場合、冷却水は図1(b)に示す矢印を逆方向に辿り、外筒部17と内筒部16との間のトランス部を抜け、内筒部16の通水孔161および162を通過して内筒部16から冷却水ホース15aにより排出される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】カレントトランスの回路図。
【図2】(a)は従来のカレントトランスを説明する斜視図、(b)は断面図(c)は側部平面図。
【図3】(a)は本発明のカレントトランスを説明する斜視図、(b)は断面図、(c)は側部平面図。
【符号の説明】
【0018】
1 小型カレントトランス
11 一次巻線
12 二次巻線
13 出力端子
14 フェライトコア
15a,15b,15c 冷却水ホース
16 内筒部
161,162 孔
17 外筒部
18 絶縁材
19 加熱コイル取付用ネジ穴
2 従来のカレントトランス
20 入力端子
21 一次巻線
22 二次巻線
23 出力端子
24 フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部と、前記外筒部の内部に配置され通水孔を有する内筒部と、前記外筒部および前記内筒部の一端にそれぞれ取り付けられた複数の冷却水ホースとを有し、
前記外筒部と前記内筒部との間に配置された磁性材と、
前記冷却水ホースを通して前記外筒部の内部に導入され、前記磁性材に巻回される被覆された一次巻線と、
前記外筒部と前記内筒部とを接合して形成され、前記磁性材および前記一次巻線を包囲する二次巻線とから構成されるカレントトランスであって、
前記内筒部および前記外筒部は銅から作成され、
前記複数の冷却水ホースのうちいずれかの冷却水ホースより導入された冷却水が前記複数の冷却水ホースのうち別の冷却水ホースより排出されることを特徴とするカレントトランス。
【請求項2】
前記内筒部および前記外筒部は円筒形であることを特徴とする請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項3】
前記内筒部および前記外筒部は角筒形であることを特徴とする請求項1に記載のカレントトランス。
【請求項4】
前記電線の耐圧は1,000ボルト以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のカレントトランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−27216(P2007−27216A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203670(P2005−203670)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000219004)島田理化工業株式会社 (205)
【Fターム(参考)】