説明

小型金インゴットのストック台および該ストック台への金インゴットの載置方法

【目的】 鋳造した小型の金インゴットを次工程のために一時的にストックしておくストック台および該ストック台への金インゴットの載置方法を提供する。
【構成】 ストック台の構成として、ほぼ長方形の平板状のベースプレート1と、ベースプレートに載置され、多数の金インゴットを載置可能なステンレス製バット2と、ベースプレートが前進、後退するときガイドするようにベースプレートの両側に配置されたガイドレール7と、ベースプレートを前進、後退させるエアシリンダ9とを設ける。また、長方形状の板状小型金インゴットを鋳込み面を下にして挟持して、10mm以下の高さからステンレス製バット上に落下させて該バット上に載置する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多数の小型の金インゴットをストックするストック台および該ストック台への金インゴットの載置方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、比較的小さい金インゴット(純度:99.99%、例えば、1kgインゴットで概略寸法が116×50×8mmである)は原料を溶解し鋳造した後に鋳型から離型し、平らに水平に置かれ、冷却されて製造される。このようにして得られた金インゴットは柔らかく傷付き易い(鋳型に接した面も傷付き易いが、特に鋳型に接しない鋳込み面は傷付き易い)ので、通常は、作業員が素手でまたは手袋をした手でその長辺部の両側壁を挟んで持ち上げ、ビロード質の布の上に傷付き易い鋳込み面を上にして置く等の慎重な扱いを行っている。
【0003】小型の金インゴットの効率的な製造方法として、鋳型に鋳造された金インゴットを突出しシリンダによって鋳型を反転させ、金インゴットを鋳型から離型して水槽に落下させる(冷却を行う)方法が提案されている(特開平1−239384号公報)。
【0004】また、鋳型を反転させず、鋳型を高速で上下動させた後直ちに鋳型を後退させて離型させる方法も提案されている(この方法では鋳込み面が上側になり、支持面に衝突しない)(特開平4−55052号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前者の特開平1−239384号公報に開示された方法では、その後、水中から金インゴットを取り出す作業、取り出した後乾燥させる工程が必要となるので、金インゴット製造全体の機械化には適しておらず、また、乾燥後の金インゴットの表面が損なわれ、商品価値が低下してしまうといった問題がある。
【0006】また、後者の特開平4−55052号公報に開示された方法では、十分に金インゴットを冷却しないと金インゴットが変形したり、鋳型の表面状態によっては金インゴットの離型状況が異なって金インゴットの落下位置が異なってしまい、その後の処理の自動化の支障となる恐れがある。
【0007】したがって、本発明の目的は、鋳造した小型の金インゴットを次工程のために一時的にストックしておくストック台および該ストック台への金インゴットの載置方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するために、本発明は、ほぼ長方形の平板状のベースプレートと、該ベースプレートに載置され、多数の金インゴットを載置可能なステンレス製バットと、前記ベースプレートが前進、後退するときガイドするようにベースプレートの両側に配置されたガイドレールと、前記ベースプレートを前進、後退させるエアシリンダとを有することを特徴とするストック台を採用するものである。
【0009】また、本発明は、長方形状の板状小型金インゴットを鋳込み面を下にして挟持して、10mm以下の高さからステンレス製バット上に落下させて該バット上に載置することを特徴とする小型金インゴットの載置方法を採用するものである。
【0010】
【実施例】次に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1、図2および図3は、それぞれ、本発明のストック台の正面図、平面図および左側面図である。図面において、ベースプレート1は水平平板の金属板であり、ほぼ同じ大きさのステンレス製バット2を載置している。なお、ベースプレート1には、ステンレス製バットをベースプレート1から移動する際にバットを挟持し易いように、切り欠き3、4、5、6が設けられている。また、ベースプレート1はエアシリンダ9によってスライドレール7、8に沿ってベースプレートの長辺方向と直角方向に前進後退移動するように構成されている。
【0011】金インゴットを挟持して載置するロボット(図示せず)には、通常ロボットアーム(図示せず)の動作範囲内に人間等が立ち入らないように周囲に安全柵(図示せず)が設けられるが、この実施例の場合には、ベースプレート1の端部が安全柵よりやや内側にくるようにストック台が配置される。このため、スライドレール7、8に沿ってベースプレート1およびバット2がエアシリンダ9によって前方に押し出される構造であるので、安全柵内には特別の架台を必要とせず、またストック台の大部分が安全柵の外部に位置するので、ロボットアームの動作に影響を与えない。
【0012】次に、ストック台の動作を説明する。最初に上段または下段のいずれかの段のベースプレート1上にステンレス製バット2を載置した状態でエアシリンダ9を作動させ、ベースプレートおよびバット2を安全柵内のロボットアームの動作範囲内に入れる。一方、鋳造されて反転台に載置されて冷却された金インゴットをロボットハンド(図示せず)で把持しバット2の予め設定した位置の上方に移動させる。その後、ロボットハンドを下げ、所定の高さにきたとき、金インゴットを離して落下させてバット2上に載置する。以下同様に、金インゴットをバットの異なった位置に順次載置する。このようにして、バット2の所定位置に全ての金インゴットを載置したとき、エアシリンダ9を作動させて、ベースプレート1を安全柵の外に後退させ、次いで、別の段のベースプレート1およびバット2をエアシリンダ9によって前進させて安全柵内に入れる。以下、バットに金インゴットを載置し、載置が終了すると、後退させて、最初のベースプレートおよびバットを再び前進させる。以下同様なサイクルを繰り返す。
【0013】多数の金インゴットがバット上に載置可能であり、各金インゴットの載置位置を変えているので、ロボットの動作はシーケンス制御するように設計されている。また上段と下段のベースプレートおよびバットの切替も同様にシーケンス制御される。
【0014】なお、ベースプレート1は、バット2および多数の金インゴットが載置されるので、極力低重量化を図るために、大きな開口が形成されている。また、金インゴットは高純度のため、傷付き易く、金インゴットの鋳込み面を下にしてバット上に落下させるので、金インゴットの落下高さは、傷が生じないような高さ、例えば10mm以下に設定する必要がある。好ましい落下高さは5mm以下である。
【0015】バット2に載置された金インゴットは、次の工程で、重量検定、製造番号等の刻印が行われる。金インゴットはバット上の所定の位置に載置されるので、金インゴット同士の接触による傷の発生はなく、製造順も判明しているので、ロボット操作によって金インゴットの製造を無人化しても、僅かな製造条件のズレの検知およびそれに基づく製造条件の変更で製造を行うことができる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明は、多数の金インゴットを所定の位置に載置可能であるので、金インゴットの製造条件の検知および修正に役立ち、後の重量検定工程を集約して実施でき、またロボットの動作に干渉しない。また、高純度で柔らかく傷付き易い金インゴットに傷を生じさせることなく、確実に載置可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明のストック台の正面図である。
【図2】図2は、本発明のストック台の平面図である。
【図3】図3は、本発明のストック台の左側面図である。
【符号の説明】
1 ベースプレート
2 ステンレス製バット
7、8 ガードレール
9 エアシリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ほぼ長方形の平板状のベースプレートと、該ベースプレートに載置され、多数の金インゴットを載置可能なステンレス製バットと、前記ベースプレートが前進、後退するときガイドするようにベースプレートの両側に配置されたガイドレールと、前記ベースプレートを前進、後退させるエアシリンダとを有することを特徴とする小型金インゴットのストック台。
【請求項2】 請求項1記載の小型インゴットのストック台において、前記ベースプレートには、バットを把持し易くするために切り欠きが形成されていることを特徴とする小型インゴットのストック台。
【請求項3】 請求項1記載の小型インゴットのストック台において、少なくとも2つ以上のベースプレート、ガードレールおよびエアシリンダを設けたことを特徴とする小型インゴットのストック台。
【請求項4】 長方形状の板状小型金インゴットを鋳込み面を下にして挟持して、10mm以下の高さからステンレス製バット上に落下させて該バット上に載置することを特徴とする小型金インゴットの載置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平7−16735
【公開日】平成7年(1995)1月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−187408
【出願日】平成5年(1993)6月30日
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)