説明

小型金属インゴットの鋳造方法および鋳造装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、小型金属インゴットの鋳造方法および鋳造装置に関し、特に、金などの貴金属を精度良く溶解・鋳造して金インゴット等を製造する際、鋳造工程およびその他の工程を自動化するのに適した鋳造方法および鋳造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】小型の金属インゴット、特に、100gバー、500gバー、1000gバー等の小型の金インゴットは、その表面に正確な重量が刻印されないので、高い精度が要求される。例えば、金の1000gバーの場合には、単に1kgと刻印されるだけであるが、秤量器の最小目盛り分(現状では0.01g)でも不足すれば、商品価値が無くなるので、再度溶解・鋳造をやり直したり、予め多めに秤量して欠量が無いようにする。後者の場合には、過剰に付加する分だけは製造者の経済的損失になる。また、金インゴットの場合には、鋳込み面の光沢が乏しかったり、引け巣やしわが顕著であると刻印ができなかったり、商品価値が無くなるといった厳しい条件が課されている。
【0003】このため、作業者が注意深く手作業で溶解・鋳造を行ってきた。この作業者の手作業では、効率が悪く、作業者によってバラツキが生じる問題があった。この対策として、特開平1−239384号公報記載のように、ルツボをロボットハンドで把持する形式の多関節ロボットと、ルツボを載置したルツボ台を移動させながら溶解させる溶解装置と、鋳型を載置して回転させるテーブルを用い、鋳型に離型材を噴霧し、乾燥し、溶解装置においてルツボ内の金を溶解し、溶解した金を離型材が塗布された鋳型に注入して金を鋳造し、鋳造後、鋳型を傾けて金インゴットを水中に入れて冷却することによって自動的に金インゴットを製造する方法が提案されている。
【0004】また、特開平4−305359号公報に記載のように、C字状に配置された高周波コイルを用いて金を溶解し、黒鉛またはセラミックから作られた鋳型を用い、鋳造前に予熱扉が付いた鋳型予熱器によって鋳型を予熱し、またルツボを3点支持するロボットハンドと鋳型用のロボットハンドを交換しながら用いるロボットを使用して、金を鋳造する方法が提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前者の特開平1−239384号公報記載の発明では、複雑な構造の溶解炉を使用するので、温度の制御はよいが、装置が複雑なため、設備の維持管理が大変であり、溶解速度を増加させるには制限が伴う。またテーブルでの作業時間がかかり、このため、溶解・鋳造工程全体に時間的制約を与える。また水中に金インゴットを入れるので金インゴットの表面が悪くなる恐れがある。
【0006】一方、後者の特開平4−305359号公報記載の発明では、ルツボが高周波コイルの切り欠き部に出たときに、ロボットがルツボを挟持してルツボ中の金属を鋳型に注入し、空のルツボを同じコイルの切り欠き部に戻し、金属を所定量ルツボに装入し、再度基台が回転してルツボが高周波コイルで溶解されるために、時間的に制限され、溶解・鋳造等の全体の工程が前述の工程にかかる時間によって時間的制約を受ける問題がある。さらに、扉付きの鋳型予熱器を使用しているので、鋳型を鋳込み台まで移動するのに時間がかかり、さらにまたロボットハンドを交換するための時間がかかり、ロボットの制御がより複雑になるといった問題もある。
【0007】したがって、本発明の目的は、小型の金属インゴット、特に金などの貴金属のインゴットを精度良く溶解・鋳造し、得られるインゴットの鋳込み面を損なうことなく、1つのロボットによって溶解・鋳造の多数の作業工程を効率的に自動化できる簡単な構成の小型金属インゴットを鋳造する小型金属インゴットの鋳造方法および鋳造装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】前述の目的を達成するために、本発明は、複数の高周波コイル内に金属地金を収容したルツボを順次装入して金属地金を溶解し、溶解した湯面の温度を検出する放射温度計の指示が予め設定した温度となったとき、前記ルツボを前記高周波コイルから順次取り出し、予め離型材が付着され、その後所定の温度に予熱された鋳型に前記ルツボ内の金属を順次鋳込むことを特徴とする小型金インゴットの鋳造方法を採用するものである。
【0009】また、本発明は、複数の高周波コイルと、該高周波コイルの中心線の上方に設けられた放射温度計と、ルツボを前記高周波コイルの内部に装入しまたは内部から排出するための手段とから成る溶解炉と、鋳型を予熱する第1加熱装置と、鋳型にルツボからの金属地金を鋳込む状態に鋳型を載置するための鋳込台と、鋳込台の近傍に配置され鋳型内の金属地金を緩やかに冷却するように金属地金を加熱する第2加熱装置と、ルツボを前記高周波コイルに供給するためにルツボを載置しておくルツボ供給装置と、鋳型に離型材を付着させる離型材付着層置と、鋳込まれた小型金属インゴットを反転して離型し、載置するための反転台と、小型の金属インゴットを収容するインゴットストック台と、ルツボ、鋳型および小型金属インゴットを前記各装置の間で移送するための多関節ロボットと、該多関節ロボットをシーケンス制御する制御装置と、を有することを特徴とする小型金属インゴットの鋳造装置を採用するものである。
【0010】
【実施例】次に、図面を参照して本発明の実施例を説明する。図1は本発明の鋳造装置で用いる溶解炉を概略的に示す側面図であり、図2は、鋳造装置を構成する個々の装置の配置を示す概略配置図である。
【0011】図1において、金属地金を収容したルツボ1を加熱する高周波コイル2は、複数個が直列に接続されて電源3(図2参照)に接続されている。ルツボ1は、円柱状耐火物4の上に載置された状態で押上シリンダ5によって昇降されて高周波コイル内に挿入されたり、コイルから排出されたりするように構成されている。高周波コイル2の縦方向の中心線上方には放射温度計6が設置されており、これらの放射温度計6によってルツボ1内の金属地金の溶解温度(溶解状況)を監視することができる。
【0012】図2において、鋳型を載置する鋳込み台(図示せず)と、鋳型に対して炎が噴出するように鋳込み台の近傍に設けられた鋳造用バーナ装置(図示せず)からなる鋳込装置7は高周波コイルに一番近い位置に設置されている。鋳込装置7で鋳込まれ、凝固した金属地金が入っている鋳型を反転して離型して載置台で受ける反転台8は鋳込装置7の近傍に配置されている。ロボット9を中心として高周波コイル2から死角(ロボットアームが単純に旋回するだけでは移動できない領域、この実施例では60°)を隔てて離型材付着装置10が配置されており、この離型材付着装置10によって鋳型に自動的に離型材を付着させるようになっている。また、離型材を付着させた鋳型を予熱するために、鋳型を平板上に載置し平板の下面を加熱する構造の上部開放型ホットプレート11は鋳込装置7の近傍で反転台8の上方に設けられている。金属地金を収容したルツボ1を高周波コイル2に順次供給できるように、複数のルツボを載置しておくルツボ供給装置12が反転台8の隣に配置されており、また、反転台8から金属地金、即ち金属インゴットを順次載置するためのストック台13がルツボ供給装置12と前述の離型材付着装置10の間に配置されている。
【0013】要約すると、図2に示すように、高周波コイル2、鋳込装置7、反転台8、上部開放型ホットプレート11、ルツボ供給装置12、インゴットストック台13および離型材付着装置10は、多関節ロボット9を中心としてほぼ同一円周上に配置されており、これらの装置と多関節ロボット9の動作は制御装置14によってシーケンス制御される構造になっている。
【0014】前述の反転台、鋳込装置、ルツボ供給装置、インゴットストック台、離型材付着装置、多関節ロボットのロボットハンドの詳細な説明(これらに関連する説明)が、本出願人による本出願と同日出願の特許出願((1)整理番号:05−0030P、発明の名称:金インゴット位置決め装置および金インゴット処理方法、(2)整理番号:05−0031P、発明の名称:金インゴット鋳造用ロボットハンドおよび該ロボットハンドで把持するのに適した鋳型、(3)整理番号:05−0032P、発明の名称:鋳型への離型材付着方法および装置、(4)整理番号:05−0033P、発明の名称:小型金インゴットのストック台および該ストック台への金インゴットの載置方法、(5)整理番号:05−0034P、発明の名称:ルツボ供給装置、および(6)整理番号:05−0035P、発明の名称:金インゴット鋳造用バーナ装置および鋳造方法)に記載されているので、参照されたい。
【0015】次に、本発明の鋳造装置の動作(鋳造方法)について説明する。最初に、ルツボ供給装置12に準備された金属地金を収容しているルツボ1を多関節ロボット9のアーム(図示せず)の先端にあるハンド(図示せず)で挟持して加熱されている高周波コイル2の上方まで移動させ、押上シリンダ5の動作により予め上昇している円柱状耐火物4の上面に載置する。次いで、押上シリンダ5を動作させてルツボ1を降下させ、高温域にセットする。一方、鋳型は離型材付着装置10によってその表面に離型材を施され、次いで多関節ロボット9のハンドによって上部開放型ホットプレート11に載置されて、金属地金を金属質鋳型に鋳込む際に金属質鋳型が所定の温度(T2 )になるように温度調節しながら予熱されている。前述の高周波コイルの高温域にセットされたルツボ1中の金属地金が溶解し、放射温度計6の指示が所定の温度(T1 )になったとき、予熱された鋳型を鋳込装置7の鋳込台上に多関節ロボット9のハンドによって運ぶ。
【0016】次に、金属の温度を指示する放射温度計6の指示が所定の温度(T3 )になったとき、押上シリンダ5を動作させ、ルツボ1を上昇させて高周波コイル1から出す。予め高周波コイル2の上方に移動させて待機している多関節ロボット9のハンドがこのルツボ2を挟持して既に鋳込装置の鋳込台に載置してある金属質鋳型の上方まで移動させ、次いでルツボ1を傾斜させてルツボ内で溶融している金属地金を鋳込む。
【0017】鋳込み終了後に多関節ロボット9のハンドが退避すると同時に、鋳込装置7の鋳造用バーナ装置が作動して金属地金を徐々に冷却するようにして凝固させる。凝固が終了し、鋳造用バーナ装置の動作が停止したとき、多関節ロボット9のハンドが金属質鋳型を挟持してこれを反転台8まで移動し、金属質鋳型を反転させて金属地金から作られたインゴットを離型させ、この反転台上でインゴットを冷却させる。
【0018】その後、インゴットを離型された金属質鋳型は、多関節ロボット9のハンドに挟持されたまま離型材付着装置10に移送され、再び離型材を付着された後上部開放型ホットプレート11に移送されて予熱される。一方、反転台8上で十分冷却されたインゴットは、多関節ロボット9のハンドによって挟持されてインゴットストック台13に移送されてインゴットストック台13上に落下されて貯蔵される。
【0019】以上が一連の操作であり、次に高周波コイル2に金属地金を収容したルツボを装入するのは、前回の一連の操作に支障のないようにほぼ一定の時間的間隔を開けながら順次装入するようにシーケンス制御される。
【0020】この場合、溶解炉は常に同じ加熱状態に制御されているので、金属地金を収容したルツボ1を高周波コイル2に装入してから排出するまでの時間はほぼ同一であると推定して、時間的なシーケンスのみで制御することも考えられるが、実際には、金属地金の重量は同じでも金属地金の形状の違いによって溶解時間が異なり、ルツボ1の寸法の僅かな違いおよび高周波コイル2内のルツボの位置の僅かな違いによっても溶解時間がかなり異なるので、単に時間的なシーケンス制御だけでは十分でなく、温度による制御も併用することが好ましい。しかし、このような上方が開放された高周波コイル2による加熱では高周波コイルの縦方向および横方向の均熱性が非常に悪く、温度の変動が大きいので、放射温度計6によって測定した温度がルツボ1の内の金属地金の全体の実質的な温度を示さず、単に大まかな温度指示値を示しているものである。しかし、このような問題を持つ放射温度計の温度指示でも本発明のように使用すると、ほとんど支障がないことが見いだされている。
【0021】金属地金が金地金である1kgバーのインゴット(概略寸法116×50×8mm)を製造する場合には、ルツボ1を上昇させて高周波コイル2から排出される放射温度計6の指示の好ましい所定温度(T3 )は1250〜1300°Cであり、金属質鋳型を上部開放型ホットプレート11から鋳込装置7の鋳込台に載置する指示がなされるときの放射温度計6の指示の所定の温度(T1 )は1170〜1200°Cである。温度(T3 )が1250°C未満では、鋳造後の金インゴット表面の鋳込み面のシワが深くなり、商品価値が低下し、温度(T3 )が1300°Cを越えると、金が揮発したり、鋳込む際に金の微粒子が飛散して金インゴットの重量が規定値より低下してしまい商品とならなくなってしまったり、凝固時間が長くなり、結果的に比重が規定値(19.2g/cm3 )より低くなって商品とならなくなったりする。
【0022】また、金属地金を金属質鋳型に鋳込む際の金属質鋳型の温度も、得られるインゴットの出来具合いに大きく影響するので、所定の温度(T2 )になるように調整することが望ましく、金属地金が金地金である1kgバーのインゴットを製造する場合には、望ましい所定温度(T2 )は220〜270°Cであり、温度(T2 )が220°C未満では凝固時間が短くなるために鋳造後の金インゴット表面の鋳込み面のシワが深くなり、商品価値が低下してしまい、温度(T2 )が270°Cを越えると、インゴットの鋳型と接していた面が変色したり、小さい窪みが多数発生したり、鋳込む際に金の微粒子が飛散してインゴットの重量が規定値より低下してしまい、または凝固時間が長くなるため、結果的に比重が規定値より低くなり商品とならなくなってしまう。温度(T3 )と(T2 )は金属地金の種類およびインゴットの重量、寸法により異なるので、適宜設定する必要がある。
【0023】本発明では、伝熱性のよい金属質鋳型を用いるので、上部開放型ホットプレートで金属質鋳型を十分予熱でき、特開平4−305359号公報に記載されているようなセラミック質の鋳型を用いて扉付きの鋳型予熱炉で予熱する方法と比べると、ロボットによる鋳型の挟持がやり易く、制御に時間的な余裕を与えることができる。金属質鋳型として通常の形状のものでも使用可能であるが、前述した本出願人の特許出願に記載のようにロボットハンドで挟持し易い特殊な形状の把手を有する鋳型が好ましく、また鋳込み時の熱ショックに対して強い耐熱鋳鉄質の鋳型が好ましい。
【0024】上部開放型ホットプレート11上から金属質鋳型を鋳込装置7の鋳込台に載置し、高周波コイル2で押上シリンダ5によって排出されたルツボ1を挟持し、これを鋳込装置7の鋳込台上で金属質鋳型に鋳込むといった一連の作業では、ロボットハンドがルツボおよび鋳型を挟持するが、この際、特開平4−305359号公報に記載のようにロボットのハンドを交換しながら行うことも可能であるが、これらの工程は相互に関連しているので、短時間にスムーズに行うことが好ましく、前述した本出願人の特許出願に記載のようにロボットアームの先端にルツボを挟持する部分と鋳型を挟持する部分とインゴットを挟持する部分を持つロボットハンドを用い、これらの部分を切り替えて使用することが好ましい。
【0025】また、図2に示すように、鋳込装置7を中心におき、両側に高周波コイル2と上部開放型ホットプレート11を配置した方が作業の流れをスムーズにできるので好ましい。
【0026】なお、多関節ロボットには、必ずアームを単純に旋回するたけでは到達できない死角の部分があり、複雑なアームの動きをすればこの死角の領域にもアームを移動させることができるが、本発明が対象としている高熱の物体を扱う場合には危険を伴うので、そのようなアームの動きを避けることが好ましい。
【0027】反転台8、離型材付着装置10、ルツボ供給装置12、インゴットストック台装置13については自動化し易い構造のものであれば、どのような構造でも構わない。
【0028】次に、本発明の具体的な実施例および比較例について説明する。
【0029】(実施例1)重度99.99重量%の金を1000.07〜1000,09g秤量したルツボ(6.2cmφ×7.1cmH)を、内径9.5cmφ×5cmHの高周波コイルを4個直列に連結した、周波数9kHz、電圧400V、電流35Aで加熱している高周波炉の高周波コイルに順次装入し、放射温度計の指示(T1 )が1170°Cのとき、予め離型材を付着させ、上部開放型ホットプレート上で予熱していた耐熱鋳鉄製鋳型を鋳込台に載置する。放射温度計の指示が1250°Cとなると、ロボットハンドが定位置から炉上に移動する信号が出され、その後2〜3秒後にロボットハンドが炉上にきたのをセンサで検知して、押上シリンダを作動させてルツボを高周波コイルから排出させ(このとき、放射温度計の指示、T3 は1270°C)、温度(T2 )が220°Cの耐熱鋳鉄製鋳型にルツボから金を鋳込み、鋳込装置の鋳造用バーナ装置を作動させながら金を凝固させる。凝固した後は、反転台の上方で鋳型を反転させてインゴットを離型させ、冷却終了後にインゴットストック台にインゴットを載置した。
【0030】これらの工程において、ルツボ、鋳型、インゴットの移動は、ルツボ用挟持部分、鋳型用挟持部分およびインゴット用挟持部分を持つ1つのロボットハンドを備えた多関節ロボットを使用した。なお、放射温度計の指示(T1 )で上部開放型ホットプレートから耐熱鋳鉄製鋳型を持ち上げ、その後金地金を耐熱鋳鉄製鋳型に鋳込むまでの時間は45秒であった。
【0031】金インゴットは6分間隔で製造され、得られた金インゴットの重量は1000.02〜1000.07gで、比重は19.22〜19.30g/cm3 であり、大きな引け巣や、強いシワがなく、光沢もあり、商品価値の高いものであった。
【0032】(実施例2)T3 を1250°Cとし、T2 を270°Cとした以外は、実施例1と同様に実施した。得られた金インゴットの重量、比重のバラツキは実施例1と同様であり、問題はなく、インゴットの表面は実施例1よりシワはやや深いが商品価値には問題がなかった。
【0033】(実施例3)T3 を1300°Cとし、T2 を220°Cとした以外は、実施例1と同様に実施した。得られた金インゴットの重量、比重のバラツキは実施例1と同様であり、問題はなく、インゴットの表面は実施例1よりは引け巣がやや深いが商品価値には問題がなかった。
【0034】(比較例1)T3 を1230°Cとし、T2 を210°Cとした以外は、実施例1と同様に実施した。得られた金インゴットの重量、比重のバラツキは実施例1と同様であり、問題はないが、インゴットの表面はシワが深過ぎて、商品価値はダメであった。
【0035】(比較例2)T3 を1320°Cとし、T2 を210°Cとした以外は、実施例1と同様に実施した。ルツボを高周波コイルから排出させたときに金の微粒子がかなり飛散するのが観察され、また金を鋳型に鋳込む際にも同様の現象が観察された。得られた金インゴットの重量は、999.08〜1000.05gであり、比重が19.18〜19.25g/cm3 であり、製品規格(1000g以上、19.2g/cm3 以上)を満足しないものが製造され、金インゴットの表面は引け巣が大きく、鋳型と接する面、特に鋳湯部がやや赤く変色する現象が観察された。このように、商品価値がないものが多く製造された。
【0036】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によって、金属地金、特に金などの貴金属の重量精度が良く、引け巣や強いシワの無いきれいなインゴットが製造でき、また簡単な構造で自動化できる鋳造装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の鋳造装置で用いる溶解炉を概略的に示す側面図である。
【図2】図2は、鋳造装置を構成する個々の装置の配置を示す概略配置図である。
【符号の説明】
1 ルツボ
2 高周波コイル
7 鋳込装置
8 反転台
11 上部開放型ホットプレート
12 ルツボ供給装置
13 インゴットストック台
10 離型材付着装置
9 多関節ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の高周波コイル内に金属地金を収容したルツボを順次装入して金属地金を溶解し、溶解した湯面の温度を検出する放射温度計の指示が予め設定した温度となったとき、前記ルツボを前記高周波コイルから順次取り出し、予め離型材が付着され、その後所定の温度に予熱された鋳型に前記ルツボ内の金属を順次鋳込むことを特徴とする小型金インゴットの鋳造方法。
【請求項2】 複数の高周波コイルと、該高周波コイルの中心線の上方に設けられた放射温度計と、ルツボを前記高周波コイルの内部に装入しまたは内部から排出するための手段とから成る溶解炉と、鋳型を予熱する第1加熱装置と、鋳型にルツボからの金属地金を鋳込む状態に鋳型を載置するための鋳込台と、鋳込台の近傍に配置され鋳型内の金属地金を緩やかに冷却するように金属地金を加熱する第2加熱装置と、ルツボを前記高周波コイルに供給するためにルツボを載置しておくルツボ供給装置と、鋳型に離型材を付着させる離型材付着装置と、鋳込まれた小型金属インゴットを反転して離型し、載置するための反転台と、小型の金属インゴットを収容するインゴットストック台と、ルツボ、鋳型および小型金属インゴットを前記各装置の間で移送するための多関節ロボットと、該多関節ロボットをシーケンス制御する制御装置と、を有することを特徴とする小型金属インゴットの鋳造装置。

【図2】
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【図1】
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【特許番号】第2874526号
【登録日】平成11年(1999)1月14日
【発行日】平成11年(1999)3月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−187411
【出願日】平成5年(1993)6月30日
【公開番号】特開平7−16708
【公開日】平成7年(1995)1月20日
【審査請求日】平成9年(1997)1月29日
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【参考文献】
【文献】特開 平5−249067(JP,A)
【文献】特開 平4−305359(JP,A)
【文献】特開 昭59−33067(JP,A)
【文献】特開 平7−16738(JP,A)
【文献】特開 平7−16735(JP,A)
【文献】特開 平7−16734(JP,A)
【文献】実開 昭61−102359(JP,U)