説明

小生物捕獲材料

【課題】1個のシート状の小生物捕獲材料を用いて、ねずみなどの小生物の成獣から幼獣まで巾広く捕獲できる小生物捕獲材料を提供する。
【解決手段】被塗布材料の同一塗布面に成獣と幼獣のそれぞれに有効な二種類の粘着性組成物を塗布したものを小生物塗布材料として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネズミ等の体重の異なる各種の小生物を捕獲するのに適した捕獲材料に関する。
【背景技術】
【0002】
ネズミ、ゴキブリ、ハエ等の有害小生物の駆除は生活環境の改善面から重要な課題である。特にげっ歯類による被害は膨大なものであり、中でもネズミは、農産物、食品はもちろんのこと、鉛管を食い破ってガス漏洩を起こしたり、電灯線をかじって露出させ火災を起こすこともある。これらの小生物の駆除方法として従来からいくつかのものが提案され実施されているが、それらの中で最も簡便なものとして、粘着性を有する捕獲剤を厚紙、ボール紙、木板、プラスチックフイルム、シートなどの被塗布材料に塗布し、小生物の通路に設置する方法がある。この場合、捕獲剤は塗布作業性にすぐれかつ粘着性にもすぐれているという要請を満たさなければならない。さらに、あらかじめ被塗布材料に塗布しておく場合などには、保存中又はこれを使用中に捕獲剤が被塗布材料から流れ出したり、あるいは被塗布材料に浸透してにじみ出したりして使用不能になったり、床を汚すようなことがあってはならない。
【0003】
この種の小生物捕獲剤としては、例えばポリブテン86%、ブチルゴム10%およびたれ防止剤としてのパラフイン4%より成る組成物(特許文献1)、ポリブテン80部、ブチルゴム10 部およびロジン、シリカゲル、ポリエチレン計40部より成る組成物(特許文献2)、ポリイソブテン(50℃における粘度が1000ポイズ)またはポリイソブテンと天然ゴムとの80:20混合物100質量部に対し、それぞれ有機ベントナイト2〜40質量部あるいはコロイダルシリカ0.5〜8質量部を配合した組成物(特許文献3、特許文献4)、またブチルゴム5 質量%、ポリブテン35質量%、およびロジンエステル、トルエン、キシレン計60質量%より成る組成物(特許文献5)などが開示されている。また、ポリブテン80質量%、ブチルゴム16質量%およびポリエチレン4質量%からなる組成物(特許文献6)、さらには、分子量が異なる二種類の液状ポリブテンの混合物80〜98質量%、粘度平均分子量が100万〜250万のポリイソブチレンゴム1〜10質量%、特定の性状を有する高圧法ポリエチレン1〜10質量%からなる組成物が開示されている(特許文献7)。
【0004】
しかし、これらの例は、いずれも前記の要請のすべてを満たすものではない。具体的には、パラフインワツクスを用いた組成物においては、少量の添加では流れ出し防止効果が十分でなく、一方過度な量を添加すれば、塗布後の時間経過とともに、ワックス分が粘着層の表面に移動し、粘着力を低下させるため、捕獲能力が著しく低下する。高価な有機ベントナイトあるいはシリカを用いた組成物においては、比較的流れ出し防止効果や粘着力の面で良好であるが、これら粉状物は嵩高く混合時に空気を巻込んで、混合後の脱泡など製造時の手間あるいはコストの面から好ましくない。
また、ブチルゴム、ポリブテン、およびロジンエステル、トルエン、キシレンより成る組成物は揮発性の芳香族溶剤を使用するため臭気の問題がある。さらには当該粘着性組成物を塗布した塗膜を小生物捕獲用に設置して長時間経過中に溶剤が揮散し、塗布膜が硬化し、捕獲能力が低下する問題も避けられない。また、ポリブテン、ブチルゴムおよびポリエチレンからなる組成物は粘着性組成物の粘着性と塗布作業時の作業性の双方を満足させることは出来ない。
また、特開2007−177104で開示されている、ポリイソブチレンゴムを用いるものは、粘着力は優れているものの、ポリイソブチレンゴムの分子量が非常に大きいため、ポリブテンに溶解するのに時間がかかるという欠点を有する。また、対象となるげっ歯類がクマネズミ、ドブネズミ類等の比較的体重の大きい成獣であるため、体重が小さい幼獣のクマネズミ、ドブネズミ類の捕獲には難があり、逃亡することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭48−16617号公報
【特許文献2】特開昭52−105217号公報
【特許文献3】特開昭51−125123号公報
【特許文献4】特公昭53−18586号公報
【特許文献5】特開昭52−98161号公報
【特許文献6】特公平2−57521号公報
【特許文献7】特開2007−177104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、体重の異なる各種の有害小生物を効果的に捕獲することが出来る、小生物捕獲材料を提供することにある。本発明者らはかかる課題を解決するために鋭意研究した結果、異なる粘着特性を有する二種類の粘着性組成物を被塗布面の同一面に塗布することにより、異なる体重を有する各種の小生物を効果的に捕獲できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の第一は、(A)粘着最大応力200〜400gf/cm2、且つ延糸距離100mm以上の物性値を持つ、ポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなる粘着性組成物、および(B)粘着最大応力400gf/cm2を超え、且つ延糸距離40〜100mm未満の物性値を持つ、ポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなる粘着性組成物を被塗布材料の同一面に塗布した小生物捕獲用材料である。
本発明の第二は、(A)及び(B)を被塗布材料の同一面に水平方向に交互に塗布したものであることを特徴とする本発明の第一記載の小生物捕獲用材料である。
本発明の第三は、(A)を上層、(B)を下層にして、被塗布材料の同一面に重ね塗りしたものであることを特徴とする本発明の第一記載の小生物捕獲用材料である。
本発明の第四は、(A)の塗布幅が5〜20mm、(B)の塗布幅が5〜20mmであることを特徴とする本発明の第二記載の小生物捕獲用材料である。
本発明の第五は、(A)の塗布厚さが0.5mm〜2mm、(B)の塗布厚さが1mm以上であることを特徴とする本発明の第三記載の小生物捕獲用材料である。
本発明の第六は、被塗布材料がプラスチックであることを特徴とする本発明の第一〜第五の何れかに記載の小生物捕獲用材料である。
本発明の第七は、プラスチックが厚紙に張り合わせたプラスチックフィルムであることを特徴とする本発明の第六記載の小生物捕獲用材料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小生物捕獲材料において、初期粘着力(濡れ性)を重視した粘着性組成物(A)と(B)とを被塗布材料の同一面上に塗布することで、これまで捕獲が完全ではなかった体重の軽い幼獣のげっ歯類から体重の重い成獣のげっ歯類まで、効果的に捕獲することが出来る小生物捕獲用材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の粘着組成物(A)および(B)を平行塗布した材料の平面図の一例である。
【図2】本発明の粘着組成物(A)および(B)を平行塗布した材料の側面図の一例である。
【図3】本発明の粘着組成物(A)および(B)を同心円状に塗布した材料の平面図の一例である。
【図4】本発明の粘着組成物(A)および(B)を重ね塗りした材料の側面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく述べる。
本発明で用いる粘着性組成物(A)ポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなり、粘着最大応力200〜400gf/cm2、好ましくは250〜350gf/cm2、延糸距離100mm以上の物性値を有するものである。なお粘着最大応力は、粘着性組成物に付着した小生物を逃がさずに捕捉し続ける力をあらわすものであり、延糸距離は粘着性組成物の濡れ性、すなわち粘着性組成物の小生物に対する付着性を現すものである。
【0011】
粘着性組成物(A)は体重の小さい幼獣のげっ歯類を捕獲するのに適したもので、濡れ性を重視した粘着剤である。粘着最大応力が200gf/cm2に満たない場合粘着力が弱過ぎて、体重の小さい幼獣のげっ歯類でも、一度付着した後に逃亡してしまう虞がある。粘着最大応力が400gf/cm2を超える場合では一度付着した小生物に対する粘着力は強いが粘着性組成物の濡れ性が悪くなるため、体重の軽い幼獣のげっ歯類は、体重が軽い故に粘着せず逃亡してしまう虞があり好ましくない。また、ゴキブリ、ハエ等の極めて軽体重のものに対しても粘着性を発揮できない虞がある。
延糸距離100mm未満では粘着性組成物の濡れ性が悪くなるため、体重の軽い幼獣のげっ歯類は捕獲されず逃亡してしまう。
【0012】
粘着性組成物(B)はポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなり、粘着最大応力400gf/cm2超、延糸距離40〜100mm未満の物性値を有するものである。この粘着性組成物は体重が大きい成獣のげっ歯類を捕獲するためのものであり、粘着力即ち粘着最大応力を重視した粘着性組成物である。粘着最大応力400gf/cm2以下の場合は粘着力が弱過ぎて、体力が大きい成獣のげっ歯類は、一度粘着性組成物(B)に付着しても逃亡する虞がある。
また延糸距離が40mm未満では、粘着性組成物の濡れ性が極端に悪く体重の大きい成獣のげっ歯類でも捕捉出来ず逃亡してしまう虞がある。また、延糸距離が100mm以上の場合には、その粘着性組成物は粘着最大応力が小さくなるため、一度付着した成獣のげっ歯類でも、体力が大きいため逃げる虞がある。
なお、粘着最大応力の好ましい上限は特に限定されないが、1200gf/cm2をこえると、その粘着性組成物は濡れ性が著しく小さいものとなり、小生物に対する粘着性が著しく低下し好ましくない。
【0013】
本発明の小生物捕獲用材料においては、粘着性組成物(A)および(B)は、被塗布材料の同一面に塗布されていることが必要である。その塗布方法としては被塗布面の水平方向に交互に塗布する方法、或いは被塗布面の垂直方向に重ねて塗布する方法を上げることができる。
粘着性組成物(A)および(B)を被塗布面の水平方向に交互に塗布する場合、その好ましい塗布幅は(A)および(B)何れも5〜20mmである。
図1および図2及び図3は(A)および(B)を被塗布面の水平方向に交互に塗布する場合の具体的な態様の例である。図1は平面状の被塗布面に並行状に(A)および(B)を交互に塗布した場合を真上から見た図である。また、図2は図1に相当する塗布物を側面方向から見たものである。黒塗りは(A)を、灰色塗りは(B)を示す。また、図3は(A)および(B)を平面状の被塗布面に同心円状に交互に塗布したものを上部から見た図である。
【0014】
粘着性組成物(A)および(B)を被塗布面の水平方向に交互に塗布して作成した本発明の小生物捕獲材料を用いてネズミ等の小生物を捕獲する場合には、軽重量の幼獣のげっ歯類は(A)部分に、重体重で且つ体力の大きい成獣のげっ歯類は(B)部分に付着することが必要であるが、それを確実なものにするためには、(A)および(B)の塗布幅を20mm以下にすることが好ましい。
(A)及び(B)の塗布幅が20mmを超える場合、幅が広過ぎるため、軽重量の幼獣のげっ歯類が(B)部分のみに、また重体重で且つ体力の大きい成獣のげっ歯類が(A)部分のみに付着する事態が生じ、この場合には付着した小生物が粘着捕獲されずに逃げる虞がある。一方、(A)および(B)の塗布幅が5mm未満の場合には、(A)および(B)が互いに溶け合って、(A)および(B)のそれぞれの性能を発揮できない虞がある。また、被塗布材表面への塗布作業が困難になる。
なお、(A)および(B)を平行塗布する際には、(A)と(B)が接するように塗布しても良いし、また隙間を空けて塗布しても良い。隙間を空ける場合はその隙間は最大10mm以下であることが好ましい。隙間が10mmを超えると、最初に(A)に付着した体重の大きい小生物が(B)に付着する前に逃げるおそれがある。また逆に最初に(B)に付着した体重の小さい小生物が(A)に付着する前に逃げる虞がある。
【0015】
粘着性組成物(A)および(B)を被塗布面に重ねて塗布する場合、下層に(B)を塗布し、(B)を塗布した上に(A)を塗布する。この場合、(A)の塗布厚は0.5〜2mm、(B)の塗布厚は1mm以上であることが好ましい。図4は粘着性組成物(A)および(B)を被塗布面に塗布した状態の一例を示す図である。
(A)の塗布厚さが0.5mmに満たない場合は、(A)の有する濡れ性の効果が発揮できず、幼獣のげっ歯類でも逃亡する。また、2mmを超える場合には、体重が大きく且つ体力の大きい成獣のげっ歯類が付着しても、付着部が下層の(B)までに到達せず、(B)の粘着力を発揮できないため逃げ出してしまう虞がある。(B)の下層の厚さが、1mm未満の場合は粘着力が弱過ぎて成獣のげっ歯類は逃亡する。
【0016】
本発明で用いる液状ポリブテンは、数平均分子量は200〜2000であることが必要であるが、好ましくは400〜1500のものである。この液状ポリブテンは例えばナフサ分解により生成するいわゆるC4留分のうちブタジエンを除いたブタン−ブテン留分を重合することにより製造できる。これらのポリブテンは、例えば日石ポリブテン(新日本石油(株)製)の商品名で市販されている。ポリブテンの分子量が200より小さい場合には、引火点が低くなるため、本粘着性組成物の製造時もしくは調理場等の火気のある所で使用する際の安全性に問題があり、また、得られた粘着剤組成物の粘着力が低下するため好ましくない。また1500より大きい場合には、組成物の溶融粘度が大きくなりすぎるため、円滑な塗布作業が困難となる。
【0017】
本発明で用いるポリイソブチレンゴムは粘度平均分子量が100万から250万のものであり、粘度平均分子量が100万以下の場合は粘着力が低下したものとなる。250万以上となると溶解に手間が掛かり、また粘着剤の粘度が高粘度となるため、塗布が困難となる。
【0018】
本発明で用いるポリエチレンはエチレンを高圧重合法において重合したもので、一般に高圧法ポリエチレンと言われているものであり、メルトインデックスが0.04〜35好ましくは0.1〜20のものである。これらの高圧法ポリエチレンは例えば、ノバテックLJ600(日本ポリエチレン(株))の商品名で入手することが出来る。メルトインデックスが0.04より小さいものは液状ポリブテンへの溶解に高い温度と長時間を要し、またこの範囲より大きいものは粘着性が良くかつ捕獲剤の流れ出し防止効果およびにじみ出し防止効果の十分なものは得られない。
【0019】
本発明に用いる粘着性組成物(A)、(B)を調製する際には、(A)、(B)それぞれに要求される粘着最大応力および延糸距離が得られるように、液状ポリブテン、ポリイソブチレンゴムおよび高圧法ポリエチレンを適宜の割合で配合するが、その好ましい配合比率は以下のとおりである。
【0020】
すなわち、液状ポリブテンの配合割合は、組成物全体に対して好ましくは92〜98質量%、さらに好ましくは93〜97質量%の範囲である。配合割合が92質量%より少ないと、粘着性組成物の濡れ性が低下する。また塗布膜の伸展性が低下し、表面の凹凸等の生成等、塗布加工性に劣る傾向にある。また、98質量%より多いと、塗布膜の耐流れ出し性に劣る傾向にある。
【0021】
ポリイソブチレンゴムの配合割合は、組成物全体に対して好ましくは0.3〜3.0質量%、さらに好ましくは0.5〜2.5質量%の範囲である。配合割合が0.3質量%より少ないと、体重の大きい成獣に対する捕獲性が低下する。また、3.0質量%より大きいと粘着性組成物の濡れ性が低下する。
【0022】
高圧法ポリエチレンの配合割合は、組成物全体に対して好ましくは2.0〜6.0質量%、さらに好ましくは3.0〜5.0質量%の範囲である。配合割合が2.0質量%よりも小さいと、塗布膜の耐流れ出し性が劣る。一方6.0質量%よりも大きいと、塗膜形成性が低下し、表面の凹凸の生成等、塗布膜の加工性に劣る。
【0023】
本発明に用いる粘着性組成物(A)、(B)は各成分を溶融混練することにより製造することが出来る。溶融混練する方法は特に限定されたものではなく、公知の方法を用いて行うことが出来る。例えば、(A)、(B)の各成分が溶融する温度条件下に、混練機を用いて強制的に攪拌するなどの方法を用いることが出来る。粘着性組成物(A)、(B)を被塗布材料に交互にスジ状塗布、上下層に重ね塗りするときは公知の方法を用いて行うことが出来る。
【0024】
本発明に用いる粘着性組成物(A)、(B)は有機溶剤を用いないので特異な臭気を有しないから、げっ歯類が忌避することがないし、誘引剤の効果を阻害することもない。また、ベントナイトやシリカのような嵩高な充填剤を用いないので、混練作業中に泡立ちを生じて、製造作業の継続を困難にするという問題も無い。また本発明に用いる粘着性組成物は、その要求性能を損なわない範囲において、上記必須構成成分の他、必要に応じてプロセス油、動植物油、高分子可塑剤、軟化剤、着色剤、酸化防止剤、老化防止剤、香料、誘引剤、飼料等を適宜配合することが出来る。
【0025】
本発明の小生物捕獲材料は粘着性組成物(A)、(B)を被塗布材の表面に塗布したものであるが、被塗布材料は、それが平面状のものである限り特に制限はない。例えばポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチックからなるシートを用いることが出来る。これらプラスチックからなるシートは厚紙などの台紙に張り合わせたものも使用することが出来る。
本発明の小生物捕獲材料は、ねずみ等の幼獣、成獣のげっ歯類小生物の捕獲に有効であるのはもちろん、それ以外の、例えばごきぶり、ハエ、飛翔性害虫等の有害小生物の捕獲にも使用することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0027】
<粘着性組成物の調製>
粘着性組成物(A)、(A−1)、(A−2)、粘着性組成物(B)、(B−1)、(B−2)を表1に示す配合割合にしたがって、配合し調製した。調製方法は以下のとおりである。すなわち、170℃に加熱した液状ポリブテンにポリイソブチレンゴム、ポリエチレン、酸化防止剤を加えて、各成分が均一に溶解するまで攪拌した。この中で、粘着性組成物(A)と(B)は本発明に用いる粘着性組成物、(A−1)、(A−2)、(B−1)、(B−2)は比較例に用いる粘着性組成物である。
使用した液状ポリブテン、ポリイソブチレンゴム並びにポリエチレンは以下の通りである。
液状ポリブテン:新日本石油(株)製、日石ポリブテンHV−300、数平均分子量 1400
ポリイソブチレンゴム;BASF社製、オパノールB−100、粘度平均分子量 130万
ポリエチレン;日本ポリエチレン製、ノバテックLJ−600、MFR5.5、密度0.93
【0028】
<粘着性組成物の物性評価>
粘着最大応力:プローブタック法に準拠し、塗布面に塗布した粘着剤に直径1/4インチ、重量15.3gの金属球を接触させ、金属球を塗布面から引き離すのに必要な力を23℃において引張試験機により測定した。粘着最大応力は、成獣のげっ歯類の捕獲性能に影響する。
延糸距離:プローブタック法に準拠し、塗布面に塗布した粘着剤に直径1/4インチ、重量15.3gの金属球に接触させ、金属球を塗布面から引き離す時、粘着剤が金属球から離れた時の距離を23℃において引張試験機により測定した。延糸距離は粘着剤の濡れ性を表わし、幼獣のげっ歯類の捕獲性能に影響する。
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
<実施例、比較例における捕獲性能評価用試験片の作成>
交互に平行塗布したサンプル作成:厚紙にポリプロピレンフィルムをラミネートした台紙(縦21×横16×厚さ0.1cm)の上に、未塗布部分として5mmの隙間をはさんで、塗布厚2mm、長さ17cmで所定の塗布幅で粘着性組成物(A)及び(B)をそれぞれ一筋塗布し、実施例、比較例において使用する捕獲性能評価用の試料とした。なお、比較例1と比較例2については(A)または(B)だけを未塗布部分として5mmの隙間をはさんで二筋塗布し、捕獲性能評価用の試料とした。
重ね塗り塗布用サンプル作成:厚紙にポリプロピレンフィルムをラミネートした台紙(縦21×横16×厚さ0.1cm)の上に、粘着性組成物(B)を縦17×横13cmの面積に所定の塗布厚に塗布した後、約1時間静置させて粘着組成物(A)を粘着性組成物(B)の上に塗布して捕獲性能評価用の試料とした。
【0031】
<捕獲性能の評価>
げっ歯類捕獲力(20g、100g鋼球):傾斜角30°の台上に粘着性組成物を塗布した台紙を置き、助走距離10cmの位置から鋼球を転がす。20g鋼球を転がした時、粘着面で鋼球が停止するか、停止後ゆっくり転がる時は、20gのげっ歯類を捕獲する力があるとして○とした。また鋼球が粘着面を転がり落下する時は、20gのげっ歯類を捕獲する力が無いとして×とした。
100g鋼球を転がした時、粘着面で鋼球が停止するか、停止後ゆっくり転がる時は、100gのげっ歯類を捕獲する力があるとして○とした。また鋼球が停止せずに粘着面を転がり落下する時は、100gのげっ歯類を捕獲する力が無いとして×とした。なお、交互に平行塗布したサンプルの場合は、鋼球が粘着性組成物(A)(B)の両方の上を通過するように、鋼球の転がる方向と粘着性組成物の塗布方向が垂直になるように平行塗布したサンプルを設置した。
結果を表2及び表3に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
表2は粘着性組成物(A)と(B)は平面状の被塗布面に交互に塗布したものである。実施例1〜3は粘着性組成物(A)と(B)を本発明の条件に従って塗布して試験したものであるが、成獣のげっ歯類および幼獣のげっ歯類の何れに対しても優れた捕獲性能を示した。比較例1と比較例2は粘着性組成物(A)あるいは(B)の一方だけを幅10mmで塗布したものである。粘着性組成物(B)だけを塗布した比較例1では成獣のげっ歯類の捕獲力は認められたが、幼獣のげっ歯類の捕獲力は無かった、粘着性組成物(A)だけを塗布した比較例2では幼獣のげっ歯類の捕獲力は認められたが、成獣のげっ歯類の捕獲力は無かった。
比較例3〜4は粘着性組成物(A)について配合組成を変えて調製した最大応力、延糸距離が本発明の条件から外れる物性値を有する粘着性組成物を用いて試験したものである。その結果、成獣に対する捕獲性能は良好であったが、幼獣に対する捕獲力は無かった。比較例5〜6は粘着性組成物(B)について配合組成を変えて調製した最大応力、延糸距離が本発明の条件から外れる物性値を有する粘着性組成物を用いて試験したものである。その結果、幼獣に対する捕獲性能は良好であったが、成獣に対する捕獲力は無かった。
【0034】
【表3】

【0035】
表3は粘着性組成物(A)と(B)は平面状の被塗布面に重ねて塗布して試験した結果である。
実施例6〜7は粘着性組成物(A)と(B)を本発明の条件に従って塗布して試験したものであるが、成獣のげっ歯類および幼獣のげっ歯類の何れに対しても優れた捕獲性能を示した。比較例7と8は粘着性組成物(A)あるいは(B)の一方だけを塗布したものである。粘着性組成物(B)だけを塗布した比較例7では、成獣のげっ歯類に対しては捕獲力は認められたが、幼獣のげっ歯類に対する捕獲力は無かった。一方粘着性組成物(A)だけを塗布した比較例8では幼獣のげっ歯類に対する捕獲力は認められたが、成獣のげっ歯類に対する捕獲力は無かった。
比較例9〜10は粘着性剤組成物(A)について配合組成を変えて調製した、最大応力、延糸距離が本発明の条件から外れる性状を有する粘着性組成物を用いて試験した結果である。その結果成獣に対する捕獲性能は良好であったが、幼獣に対する捕獲力は無かった。
比較例11〜12は、粘着性剤組成物(B)について配合組成を変えて調製した最大応力、延糸距離が本発明の条件から外れる性状を有する粘着性組成物を用いて試験したものである。その結果、幼獣に対する捕獲性能は良好であったが、成獣に対する捕獲力は無かった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の小生物捕獲材料は、体重の軽い小生物ならびに体重の重い小生物何れに対しても優れた捕獲性能を示す。したがって、本発明の捕獲材料を用いることにより、一種類の捕獲材で以って幼獣から成獣まで幅広い対象物を捕獲できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘着最大応力200〜400gf/cm2、且つ延糸距離100mm以上の物性値を持つ、ポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなる粘着性組成物、および(B)粘着最大応力400gf/cm2超、且つ延糸距離40〜100mm未満の物性値を持つ、ポリブテン、ポリイソブチレンゴム、ポリエチレンからなる粘着性組成物を被塗布材料の同一面に塗布した小生物捕獲用材料。
【請求項2】
(A)及び(B)を被塗布材料の同一面に水平方向に交互に塗布したものであることを特徴とする請求項1記載の小生物捕獲用材料。
【請求項3】
(A)を上層、(B)を下層にして、被塗布材料の同一面に重ね塗りしたものであることを特徴とする請求項1記載の小生物捕獲用材料。
【請求項4】
(A)の塗布幅が5〜20mm、(B)の塗布幅が5〜20mmであることを特徴とする請求項2記載の小生物捕獲用材料。
【請求項5】
(A)の塗布厚さが0.5〜2mm、(B)の塗布厚さが1mm以上であるあることを特徴とする請求項3記載の小生物捕獲用材料。
【請求項6】
被塗布材料がプラスチックであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の小生物捕獲用材料。
【請求項7】
プラスチックが、厚紙に張り合わせたプラスチックフィルムであることを特徴とする請求項6記載の小生物捕獲用材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−233463(P2010−233463A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82522(P2009−82522)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】