説明

少ない量のスクアレンを含むインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンは、少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素を含む。それらは、スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントも含む。一部の実施形態では、血球凝集素濃度は、1株につき>12μg/mlである。一部の実施形態では、スクアレン濃度は<19mg/mlである。一部の実施形態では、ワクチンは水銀を含まない。一部の実施形態では、ワクチンは0.2〜0.3mLの単位投与容量を有する。一部の実施形態では、スクアレン濃度は、9.75mg/mLまたは4.88mg/mLである。一部の実施形態では、ワクチンは、2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株に由来する抗原を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2009年2月10日に出願された米国仮特許出願61/207,385からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
この発明は、インフルエンザウイルス感染から保護するためのワクチン、特に、市販ワクチンと比較して少ない量のスクアレンを含むワクチンの分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
PREPANDRIXTM製品(GlaxoSmithKline)およびFLUADTM製品(Novartis Vaccines)を除いて、インフルエンザワクチンは一般にアジュバントを含まない。
【0004】
一価の流行前季節性PREPANDRIXTMワクチンのアジュバントは、水中油型エマルジョンである。抗原およびエマルジョンアジュバントは、使用時に1:1の容量比で混合するために、別々の10用量バイアルで供給される。製品データシートは、各用量が0.5mLの容量を有し、3.75μgのHAを10.68mgのスクアレンおよび4.85mgのポリソルベート80と一緒に含むことを示す。
【0005】
三価の季節性FLUADTMワクチンのアジュバントは、水中油型エマルジョンである。抗原およびエマルジョンアジュバントは、充填済み(pre−filled)注射器中のプレミックスフォーマットで供給される。製品データシートは、各用量が0.5mLの容量を有し、1株につき15μgの血球凝集素(HA)を9.75mgのスクアレンおよび1.175mgのポリソルベート80と一緒に含むことを示す。参考文献1(Minutello et al. (1999) Vaccine 17:99−104)に開示されるように、ワクチンは、1:1の容量比で2×のエマルジョンを2×の抗原溶液と混合し、1×濃度のエマルジョンおよび抗原の最終溶液を与えることによって作製される。この1:1の混合比は、参考文献75(Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach (eds. Powell & Newman) Plenum Press 1995 (ISBN 0−306−44867−X))の第10章でさらに説明される。この混合の改変形態は、参考文献2(特許文献1)で開示される。
【0006】
FLUADTM製品と比較して、参考文献3(特許文献2)は、より少ない量のHA(3×5μg HA/用量)およびより少ない量のスクアレン(5.35mg/用量)による三価インフルエンザワクチンを開示する。このワクチンはチオメルサール保存剤を含み、0.5mL用量としてヒトに投与された。
【0007】
本発明の目的は、アジュバント添加(adjuvanted)インフルエンザワクチン、特に季節性インフルエンザワクチンのさらに改良された処方物を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/052155号
【特許文献2】国際公開第2008/043774号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の開示)
一実施形態では、本発明は、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素であって、濃度が1株につき≧12μg/mlである血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が≦19mg/mlであるアジュバントとを含むインフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0010】
別の実施形態では、本発明は、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が≦19mg/mlであるアジュバントとを含む、水銀を含まないインフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明は、0.2〜0.3mLの単位投与容量を有するインフルエンザウイルスワクチンであって、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が≦19mg/mlであるアジュバントとを含むワクチンを提供する。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が9.75mg/mLまたは4.88mg/mLであるアジュバントとを含むインフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、0.2〜0.3mLの単位投与容量を有するインフルエンザウイルスワクチンであって、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が19.5mg/mL、9.75mg/mLまたは4.88mg/mLであるアジュバントとを含むワクチンを提供する。
【0014】
別の実施形態では、本発明は、(i)少なくとも2つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも2つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)スクアレンを含むサブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレン濃度が≦19mg/mLであるアジュバントとを含むインフルエンザウイルスワクチンを提供する。
【0015】
(ワクチン調製物)
様々な形のインフルエンザウイルスワクチンが今日利用でき、ワクチンは、生ウイルスまたは不活化ウイルスに一般に基づく。不活化ワクチンは、全ビリオン、スプリットビリオン、または精製された表面抗原に基づいてもよい。インフルエンザ抗原は、ビロゾームの形で提示されてもよい。本発明は、これらの種類のワクチンのいずれかと共に用いることができるが、一般的に不活化ワクチンと共に用いられる。
【0016】
不活化ウイルスが用いられる場合、ワクチンは、全ビリオン、スプリットビリオンまたは精製された表面抗原(血球凝集素を含み、ノイラミニダーゼも通常含む)を含むことができる。ウイルスを不活化する化学的手段には、以下の作用物質、すなわち界面活性剤、ホルムアルデヒド、βプロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、バイナリーエチルアミン、アセチルエチレンイミンまたはそれらの組合せの1つまたは複数の有効量による処理が含まれる。ウイルス不活化の非化学的方法は、例えばUV光またはガンマ照射など、当技術分野で公知である。
【0017】
ビリオンは、ウイルスを含有する流体から様々な方法によって収集することができる。例えば、精製方法は、ビリオンを破壊するための界面活性剤を含む線形ショ糖勾配溶液を用いる、ゾーン遠心分離法を含むことができる。次に任意選択の希釈の後、ダイアフィルトレーションによって抗原を精製することができる。
【0018】
スプリットビリオンは、「Tween−エーテル」分割工程を含めて、精製されたビリオンを界面活性剤(例えばエチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコレート、トリ−N−ブチルホスフェート、トリトンX−100、トリトンN101、臭化セチルトリメチルアンモニウム、Tergitol NP9など)で処理してサブビリオン調製物を生成することによって得られる。インフルエンザウイルスを分割する方法は当技術分野で周知であり、例えば参考文献4〜9などを参照されたい。ウイルスの分割は、感染性または非感染性の全ウイルスを、分割剤の破壊濃度で破壊または分断することによって一般的に実施される。破壊はウイルスタンパク質の完全または部分的可溶化を生じさせ、ウイルスの完全性を変化させる。好ましい分割剤は、非イオン性およびイオン性(例えば陽イオン性)の界面活性剤、例えばアルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド、ヘカメグ(Hecameg)、アルキルフェノキシ−ポリエトキシエタノール、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(セチルトリメチル臭化アンモニウム)、トリ−N−ブチルホスフェート、セタブロン、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミンおよびDOT−MA、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えばトリトン界面活性剤、例えばトリトンX−100またはトリトンN101)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどである。1つの有用な分割方法はデオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的作用を用い、分割は初期のビリオン精製中に(例えばショ糖密度勾配溶液で)起こることができる。したがって、分割工程は、ビリオン含有物質の浄化(非ビリオン物質を除去するため)、収集されたビリオンの濃縮(例えば、CaHPO吸着などの吸着法を用いる)、非ビリオン物質からの全ビリオンの分離、密度勾配遠心分離工程(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなどの分割剤を含むショ糖勾配を用いる)での分割剤を用いるビリオンの分割、次に望ましくない物質を除去するためのろ過(例えば限外ろ過)を含むことができる。スプリットビリオンは、リン酸ナトリウム緩衝等張塩化ナトリウム溶液に有効に再懸濁することができる。PREPANDRIXTM、BEGRIVACTM、FLUARIXTM、FLUZONETMおよびFLUSHIELDTM製品は、スプリットワクチンである。
【0019】
精製された表面抗原ワクチンは、インフルエンザ表面抗原血球凝集素および、一般的にノイラミニダーゼも含む。精製された形のこれらのタンパク質を調製する方法は、当技術分野で周知である。FLUVIRINTM、FLUADTM、AGRIPPALTMおよびINFLUVACTM製品が例である。
【0020】
不活化インフルエンザ抗原の別の形は、INFLEXAL VTMおよびINVAVACTM製品の場合のように、ビロゾーム[10](無核酸ウイルス様リポソーム粒子)である。ビロゾームは、界面活性剤によるインフルエンザウイルスの可溶化と、続くヌクレオカプシドの除去およびウイルス糖タンパク質を含む膜の再構成によって調製することができる。ビロゾームを調製するための代替法は、ウイルス膜糖タンパク質を過剰量のリン脂質に加えて、それらの膜にウイルスタンパク質を有するリポソームを与えることを含む。
【0021】
(株の選択)
本発明のワクチンは、少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素を含む。異なる株は一般的に別々に増殖させられ、その後、ウイルスが収集され、抗原が調製された後に混合される。したがって、本発明の方法は、1を超えるインフルエンザ株由来の抗原を混合する工程を含むことができる。
【0022】
本発明で用いられる株は、野生型ウイルスで見出される天然のHAまたは改変HAを有することができる。例えば、ウイルスを鳥類の種で高病原性にする決定因子(例えばHA1/HA2切断部位のあたりの超塩基性領域)を除去するために、HAを改変することが公知である。本発明で用いられるインフルエンザBウイルスの血球凝集素は、好ましくはアミノ酸197にAsnを有し、これはグリコシル化部位を提供する[11]。
【0023】
本発明で用いられるインフルエンザウイルスは、リアソータント(reassortant)株であってもよく、リバースジェネティクス技法によって得られたものでもよい。リバースジェネティクス技法[例えば12〜16]は、プラスミドまたは他の人工ベクターを用いて、所望のゲノムセグメントを有するインフルエンザウイルスをインビトロで調製することを可能にする。一般的に、それは、細胞内の両種のDNAの発現が完全な無傷の感染性ビリオンのアセンブリーをもたらすように、(a)例えばpolIプロモーターまたはバクテリオファージRNAポリメラーゼプロモーターから所望のウイルスRNA分子をコードするDNA分子を発現させること、および(b)例えばpolIIプロモーターからウイルスタンパク質をコードするDNA分子を発現させることを含む。DNAは好ましくはウイルスのRNAおよびタンパク質のすべてを提供するが、RNAおよびタンパク質のいくつかを提供するためにヘルパーウイルスを用いることも可能である。各ウイルスRNAを生成するために別々のプラスミドを用いる、プラスミドに基づく方法を用いることができ[17〜19]、これらの方法は、ウイルスタンパク質のすべてまたは一部(例えば、PB1、PB2、PAおよびNPタンパク質だけ)を発現させるためのプラスミドの使用も含み、一部の方法では最高12個のプラスミドが用いられる。必要なプラスミドの数を減少させるために、1つの手法[20]は、同じプラスミド上の複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(ウイルスRNA合成のため)(例えば、1、2、3、4、5、6、7または全8個のインフルエンザA型vRNAセグメントをコードする配列)を、別のプラスミド上の複数のRNAポリメラーゼIIプロモーターを有するタンパク質コード領域と組み合わせる(例えば、1、2、3、4、5、6、7または全8個のインフルエンザA型mRNA転写産物をコードする配列)。参考文献20の方法の好ましい態様は、(a)単一のプラスミド上のPB1、PB2およびPAのmRNAコード領域、ならびに(b)単一のプラスミド上の全8個のvRNAコードセグメントを含む。1つのプラスミドの上にNAおよびHAセグメントを含み、別のプラスミドの上に他の6つのセグメントを含むことも、事を促進することができる。
【0024】
ウイルスRNAセグメントをコードするためにpolIプロモーターを用いることの代わりに、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターを用いることが可能である[21]。例えば、SP6、T3またはT7ポリメラーゼのプロモーターを、都合よく用いることができる。polIプロモーターの種特異性のために、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターは多くの細胞型(例えばMDCK)により便利であることができるが、細胞は、外因性ポリメラーゼ酵素をコードするプラスミドによってもトランスフェクトされなければならない。
【0025】
他の技術では、単一の鋳型からウイルスRNAおよび発現可能なmRNAについて同時にコードするために、二重のpolIおよびpolIIプロモーターを用いることが可能である[22、23]。
【0026】
したがって、インフルエンザAウイルスは、A/PR/8/34ウイルスに由来する1つまたは複数のRNAセグメントを含むことができる(一般的に、6個のセグメントはA/PR/8/34に由来し、HAおよびNセグメントはワクチン株に由来する、すなわち6:2のリアソータント)。それは、A/WSN/33ウイルス、またはワクチン調製物のためにリアソータントウイルスを生成するために有用な任意の他のウイルス株からの、1つまたは複数のRNAセグメントを含むこともできる。インフルエンザAウイルスは、AA/6/60インフルエンザウイルス(A/Ann Arbor/6/60)からの6個未満(すなわち、0、1、2、3、4または5個)のウイルスセグメントを含むことができる。インフルエンザBウイルスは、AA/1/66インフルエンザウイルス(B/Ann Arbor/1/66)からの6個未満(すなわち、0、1、2、3、4または5個)のウイルスセグメントを含むことができる。一般的に、本発明は、ヒトからヒトへの感染が可能な株から保護し、したがってその株のゲノムは、哺乳動物(例えばヒト)のインフルエンザウイルスに由来した少なくとも1つのRNAセグメントを通常含む。それは、鳥インフルエンザウイルスに由来したNSセグメントを含むことができる。
【0027】
その抗原が組成物に含まれてもよい株は、抵抗性流行株を含め、抗ウイルス療法に抵抗性であってよい(例えば、オセルタミビル[24]および/またはザナミビルに抵抗性)[25]。
【0028】
特に有用な株は、患者からの単離から細胞培養系での複製までの間のいかなる段階においても卵を経ていないものである。MDCK細胞は、単離からウイルス複製までのすべての工程で排他的に用いることができる。
【0029】
一部の実施形態では、本発明で用いる株は、Sia(α2,3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較して、Sia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖への結合優先を有する血球凝集素を有する。ヒトインフルエンザウイルスはSia(α2,6)Gal末端二糖(ガラクトースに対するα−2,6連結シアル酸)を有する受容体オリゴ糖に結合するが、卵およびVero細胞はSia(α2,3)Gal末端二糖を有する受容体オリゴ糖を有する。MDCKなどの細胞でのヒトインフルエンザウイルスの増殖は、卵経由と異なって、本来のSia(α2,6)Gal結合性を維持するように血球凝集素に選択圧を加える。
【0030】
ウイルスが、Sia(α2,3)Gal末端二糖を有するオリゴ糖と比較して、Sia(α2,6)Gal末端二糖を有するオリゴ糖への結合優先を有するかどうかを判定するために、様々なアッセイを用いることができる。例えば、参考文献26は、親和定数の高感度な定量測定を与える、インフルエンザウイルス受容体結合性活性についての固相酵素結合アッセイを記載している。参考文献27は、2つの異なるシアリル糖タンパク質へのウイルスの結合性が調査された(Sia(α2,3)Gal決定因子を有するオボムコイド、およびSia(α2,6)Gal決定因子を有するブタα−マクログロブリン)固相アッセイを用い、さらに、2つの受容体類似体である遊離のシアル酸(Neu5Ac)および3’−シアリルラクトース(Neu5Acα2−3Galβ1−4Glc)に対してウイルスの結合性が調査されたアッセイを記載する。参考文献28は、α2,3またはα2,6結合についての受容体優先を明らかに区別することができたグリカンアレイを用いるアッセイを報告する。参考文献29は、Sia(α2,6)GalまたはSia(α2,3)Galを含むように酵素で改変されたヒト赤血球の凝集に基づくアッセイを報告する。アッセイの種類によって、ウイルス自体を用いて直接に実施すること、またはウイルスから精製された血球凝集素を用いて間接に実施することができる。
【0031】
一部の実施形態では、本発明で用いるインフルエンザ株は、卵由来のウイルスと異なるグリコシル化パターンを有する糖タンパク質(血球凝集素を含む)を有する。したがって、糖タンパク質は、鶏卵で見られないグリコフォームを含む。
【0032】
インフルエンザAウイルスは、16個のHAサブタイプ、すなわちH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16を現在提示する。本発明は、これらのサブタイプの1つまたは複数から保護することができる。本発明は、インフルエンザAウイルスのNAサブタイプであるN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8またはN9の1つまたは複数から保護することができる。本明細書でのワクチンは、少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株からの抗原を含み、一般的には少なくとも2つのインフルエンザAウイルス株、例えば2つまたは3つのインフルエンザAウイルス株からの抗原を含む。2つのインフルエンザAウイルス株が含まれる場合、これらは通常H1株およびH3株である。3つのインフルエンザAウイルス株が含まれる場合、これらは通常H1株、H3株および流行関連株である。一部の実施形態では、H3株は、A/Moscow/10/99と交差反応する。他の実施形態では、H3株は、A/Fujian/411/2002と交差反応する。参考文献30は、A/H1N1、A/H3N2、A/H5N1およびB抗原を含むワクチンを開示する。
【0033】
流行関連インフルエンザ株の特性は、以下の通りである:(a)現在循環しているヒト株の血球凝集素と比較して新しい血球凝集素、すなわち10年超の間ヒト集団で明らかでなかったもの(例えばH2)、またはヒト集団でそれ以前に全く見られていないもの(例えば、鳥集団だけで一般に見出されているH5、H6もしくはH9)を含み、したがってワクチンのレシピエントおよび一般ヒト集団はその株の血球凝集素に対して免疫学的にナイーブである、(b)ヒト集団で水平伝播することができる、および(c)ヒトに病原性である。本発明と使用するための流行関連インフルエンザウイルス株は、一般的にH2、H5、H7またはH9のサブタイプ、例えばH5N1、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1またはH7N7を有する。H5N1株が好ましい。流行株は、H1サブタイプ(例えばH1N1)を有することができ、例えば、HAはA/California/04/09株と免疫学的に交差反応を起こしてもよい。
【0034】
インフルエンザBウイルスは異なるHAサブタイプを現在提示しないが、インフルエンザBウイルス株は2つの異なる系統に分類される。これらの系統は1980年代後期に出現し、抗原的および/または遺伝的に互いから区別することができるHAを有する[31]。現在のインフルエンザBウイルス株は、B/Victoria/2/87様またはB/Yamagata/16/88様である。これらの株は通常抗原的に区別されるが、2つの系統を区別するためにアミノ酸配列の差も記載されており、例えば、B/Yamagata/16/88様株は、「Lee40」HA配列と比較して番号付けられたアミノ酸残基164に欠失を有するHAタンパク質をしばしば(常にではなく)有する[32]。
【0035】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、単一のインフルエンザBウイルス株からの抗原を含み、この株は、B/Victoria/2/87様またはB/Yamagata/16/88様であってよい。しかし他の実施形態では、本発明の組成物は、2つのインフルエンザBウイルス株からの抗原を含み、これらは一般的にB/Victoria/2/87様株およびB/Yamagata/16/88様株を含む。
【0036】
本発明の好ましいワクチンは、2つのインフルエンザAウイルス株および2つのインフルエンザBウイルス株からの抗原を含む(「ABBA」ワクチン)。したがって、本発明の好ましいABBAワクチンは、以下からの血球凝集素を含む:(i)H1N1株、(ii)H3N2株、(iii)B/Victoria/2/87様株、および(iv)B/Yamagata/16/88様株。
【0037】
一部のABBA実施形態では、インフルエンザBウイルス株の少なくとも2つは異なる血球凝集素を有することができ、関連ノイラミニダーゼを有することができる。例えば、それら両方は、B/Victoria/2/87様ノイラミニダーゼを有することができ[33]、または、両方はB/Yamagata/16/88様ノイラミニダーゼを有することができる。例えば、2つのB/Victoria/2/87様ノイラミニダーゼの両方は、以下の配列特性の1つまたは複数を有することができる:(1)残基27にセリンでなく、好ましくはロイシン、(2)残基44にグルタミン酸でなく、好ましくはリジン、(3)残基46にスレオニンでなく、好ましくはイソロイシン、(4)残基51にプロリンでなく、好ましくはセリン、(5)残基65にアルギニンでなく、好ましくはヒスチジン、(6)残基70にグリシンでなく、好ましくはグルタミン酸、(7)残基73にロイシンでなく、好ましくはフェニルアラニン、および/または(8)残基88にプロリンでなく、好ましくはグルタミン。同様に、一部の実施形態では、ノイラミニダーゼは残基43に欠失を有すること、またはスレオニンを有することができる。NA遺伝子のトリヌクレオチド欠失から生じる残基43の欠失は、B/Victoria/2/87様株の特徴として報告されているが、最近の株はThr−43を取り戻している[33]。反対に、当然、例えばS27、E44、T46、P51、R65、G70、L73および/またはP88など、反対の特性を2つのB/Yamagata/16/88様ノイラミニダーゼが共有することができる。これらのアミノ酸は、「Lee40」ノイラミニダーゼ配列と比較して番号付けられる[34]。したがって、ABBAワクチンは、HAに関して抗原的に異なる(1つはB/Yamagata/16/88様、1つはB/Victoria/2/87様)が、NAに関して関連する(両方ともB/Yamagata/16/88様、または両方ともB/Victoria/2/87様)2つのB株を用いることができる。
【0038】
本発明は、3価および4価のワクチンに限定されず、5価、6価、7価などのワクチンを包含する。5価ワクチンの例は、3つのインフルエンザA株(例えば上記の1つのH1株および2つのH3株)と2つのインフルエンザB株を含むことができる。例えば、A−A−A−B−Bワクチンは、以下からの血球凝集素を含むことができる:(i)H1N1株、(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株、(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株、(iv)B/Victoria/2/87様株、および(v)B/Yamagata/16/88様株。別のA−A−A−B−Bワクチンは、以下からの血球凝集素を含むことができる:(i)H1N1株、(ii)H3N2株、(iii)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株、(iv)B/Victoria/2/87様株、および(v)B/Yamagata/16/88様株。A−A−A−A−Bワクチンは、以下からの血球凝集素を含むことができる:(i)H1N1株、(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株、(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株、(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株、および(v)インフルエンザBウイルス株。A−A−A−A−B−Bワクチンは、以下からの血球凝集素を含むことができる:(i)H1N1株、(ii)A/Moscow/10/99様H3N2株、(iii)A/Fujian/411/2002様H3N2株、(iv)H5N1株などのH5インフルエンザAウイルス株、(v)B/Victoria/2/87様株、および(vi)B/Yamagata/16/88様株。
【0039】
(血球凝集素の投与)
血球凝集素(HA)は現在の不活化インフルエンザワクチンでの主な免疫原であり、ワクチンの用量は、一般的にSRIDで測定されるHAレベルを参考にして標準化される。既存のワクチンは0.5mL用量に1株につき約15μgのHAを一般に含有するが、例えば小児のために(同じHA濃度で一般的に0.25mkL用量)、または流行の状況で、またはアジュバントを用いる場合は、より低い用量を用いることができる。より高い用量(例えば3×または9×用量[35,36])が用いられるのと同様に、1/2(すなわち1株につき7.5μgのHA)、1/4および1/8などの分割用量が用いられている。
【0040】
一般に、1用量あたりのHAの量は、1株につき0.1〜150μgの範囲、好ましくは0.1〜50μg、例えば0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなどであってよい。特定の用量には、1株につき例えば約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約1.9、約1.5μgなどが含まれる。本発明の一部の実施形態では、組成物中の1株あたりのHAの濃度は、少なくとも12μg/mlである(すなわち、0.5mL容量に1株につき少なくとも6μgであり、参考文献3で用いられる濃度よりも高い)。通常、濃度は、≧15μg/ml、例えば≧20μg/ml、≧25μg/ml、≧30μg/mlまたはそれを超える。1株につき15μg/ml、または1株につき30μg/mlの濃度が一般的である。
【0041】
通常、HAの濃度は、組成物中の各株につき同じである。しかし一部の実施形態では、濃度はすべて最低濃度の整数倍である。例えば、特定の株の最低HA濃度が15μg/mlである場合、組成物中の他のHA濃度は、15μg/ml、30μg/ml、45μg/mlまたは60μg/mlである。
【0042】
上記のように、本発明は不活化ワクチンと通常用いられる。しかし一部の実施形態では、それを生ワクチンと用いることができる。HA含有量に関して標準化されるのではなく、生ワクチンの投薬は、50%組織培養感染量(TCID50)によって測定される。1株につき10〜10(好ましくは106.5〜107.5)のTCID50が一般的である。インフルエンザウイルスは弱毒化されてもよい。インフルエンザウイルスは温度感受性であってもよい。インフルエンザウイルスは低温順応化されてもよい。
【0043】
(細胞系)
本発明と用いるためのワクチンの製造では、ウイルス増殖のための培養基としてSPF卵を用いることができ、その場合、ウイルスは鶏卵の感染尿膜腔液から収集される。しかし代わりに、インフルエンザウイルスの複製を補助する細胞系を用いてもよい。細胞系は、一般的に哺乳動物起源である。適する哺乳動物細胞起源には、それらに限定されないが、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒトおよびサルを含む)ならびにイヌの細胞が含まれるが、霊長類細胞の使用は好ましくない。腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞などの、様々な細胞型を用いることができる。適するハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCという名称の細胞系である。適するサル細胞は、Vero細胞系の場合のように、例えば腎臓細胞などのアフリカミドリザル細胞である[37〜39]。適するイヌ細胞は、CLDKおよびMDCK細胞系の場合のように、例えば腎臓細胞である。
【0044】
したがって、適する細胞系には、それらに限定されないが、MDCK、CHO、CLDK、HKCC、293T、BHK、Vero、MRC−5、PER.C6[40]、FRhL2、WI−38などが含まれる。適する細胞系は、例えばAmerican Type Cell Culture(ATCC)コレクション[41]から、Coriell Cell Repositories[42]から、またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、目録番号CCL−81、CCL−81.2、CRL−1586およびCRL−1587で様々な異なるVero細胞を提供し、目録番号CCL−34でMDCK細胞を提供している。PER.C6は、寄託番号96022940の下でECACCから入手可能である。
【0045】
最も好ましい細胞系は、哺乳動物型のグリコシル化を有するものである。哺乳動物細胞系へのあまり好ましくない代替形態として、カモ(例えばカモ網膜)または雌鶏に由来する細胞系を含む鳥類の細胞系でウイルスを増殖させることができる[例えば、参考文献43〜45]。鳥類の細胞系の例には、鳥類の胚性幹細胞[43、46]およびカモ網膜細胞[44]が含まれる。適する鳥類の胚性幹細胞には、ニワトリ胚性幹細胞に由来するEBx細胞系、EB45、EB14およびEB14−074が含まれる[47]。ニワトリ胚線維芽細胞(CEF)を用いてもよい。しかし鳥類の細胞を用いずに、哺乳動物の細胞を用いることは、ワクチンが鳥類のDNAおよび卵タンパク質(例えばオボアルブミンおよびオボムコイド)を含まないようにすることができ、それによってアレルゲン性を低減させることを意味する。
【0046】
インフルエンザウイルスを増殖させるために最も好ましい細胞系は、Madin Darbyイヌの腎臓に由来するMDCK細胞系である[48〜51]。もともとのMDCK細胞系は、ATCCからCCL−34として入手可能であるが、この細胞系の派生株および他のMDCK細胞系を用いることもできる。例えば、参考文献48は、懸濁培養での増殖に順応させたMDCK細胞系を開示する(DSM ACC 2219として寄託されている「MDCK33016」)。同様に、参考文献52は、無血清培養での懸濁物で増殖するMDCK由来の細胞系を開示する(FERM BP−7449として寄託されている「B−702」)。参考文献53は、「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)および「MDCK−SF103」(PTA−6503)を含む、非腫瘍形成性MDCK細胞を開示する。参考文献54は、「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL−12042)を含む、感染に高い感受性を有するMDCK細胞系を開示する。これらのMDCK細胞系のいずれかを用いることができる。
【0047】
ウイルスは、接着培養物または懸濁物における細胞上で増殖させることができる。微粒子キャリア培養を用いることもできる。一部の実施形態では、細胞をこのように懸濁物での増殖のために順応させることができる。
【0048】
細胞系は、好ましくは無血清培地および/またはタンパク質非含有培地で増殖させる。本発明において、ヒトまたは動物起源の血清からの添加物がない培地は無血清培地と呼ばれる。そのような培養で増殖する細胞は当然それら自身のタンパク質を含む。タンパク質非含有培地は、細胞の増殖(例えば感染前の)が、タンパク質、成長因子、他のタンパク質添加物および非血清タンパク質なしで起こるものを意味すると理解されているが、ウイルス増殖のために必要かもしれないトリプシンまたは他のプロテアーゼなどのタンパク質を任意選択で含むことができる。
【0049】
インフルエンザウイルスの複製を補助する細胞系は、ウイルス複製中、好ましくは37℃未満で増殖させる[55](例えば30〜36℃、または約30℃、31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃)。
【0050】
培養細胞でインフルエンザウイルスを増殖させる方法は、細胞培養物に増殖させる株の接種材料を接種するステップ、ウイルス増殖のために所望の時間、例えばウイルス力価または抗原発現の決定に従って(例えば接種後の24〜168時間)、感染細胞を培養するステップ、および増殖させたウイルスを収集するステップを一般に含む。培養された細胞は、1:500〜1:1、好ましくは1:100〜1:5、より好ましくは1:50〜1:10のウイルス(PFUまたはTCID50によって測定)対細胞比で接種される。ウイルスは細胞懸濁物に加えられるかまたは細胞の単層に加えられ、ウイルスは、25℃〜40℃、好ましくは28℃〜37℃で少なくとも60分間、しかし通常300分間未満、好ましくは90〜240分間、細胞の上で吸収される。収集された培養上清のウイルス含有量を増加させるために、感染した細胞培養物(例えば単層)を凍結融解または酵素作用によって除去することができる。収集された流体は、次に不活化または凍結保存される。培養された細胞は、約0.0001〜10、好ましくは0.002〜5、より好ましくは0.001〜2の感染多重度(「m.o.i.」)で感染させることができる。さらにより好ましくは、細胞を約0.01のm.o.iで感染させる。感染細胞は、感染後30〜60時間で収集することができる。好ましくは、細胞は、感染後34〜48時間で収集される。さらにより好ましくは、細胞は、感染後38〜40時間で収集される。ウイルス放出を可能にするために細胞培養の間、プロテアーゼ(一般的にトリプシン)が一般に加えられ、プロテアーゼは、培養中の任意の適する段階で、例えば接種前、接種と同時、または接種後に加えることができる[55]。
【0051】
一部の実施形態では、特にMDCK細胞では、細胞系はマスターワーキング細胞バンクから40集団倍加レベルを越えて継代培養されない。
【0052】
ウイルス接種材料およびウイルス培養物は、単純ヘルペスウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス3、SARSコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、レオウイルス、ポリオーマウイルス、ビルナウイルス、サーコウイルスおよび/またはパルボウイルスが好ましくは含まれない(すなわち、それによる汚染について検査され、陰性の結果である)[56]。単純ヘルペスウイルスの非存在が、特に好ましい。
【0053】
(宿主細胞DNA)
ウイルスを細胞系で増殖させた場合、DNAのあらゆる発癌活性を最小にするために、最終ワクチンに残留する細胞系DNAの量を最小にすることが標準慣行である。
【0054】
したがって、好ましくは本発明によって調製されるワクチン組成物は、1用量につき10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残留性宿主細胞DNAを含むが、極微量の宿主細胞DNAが存在してもよい。
【0055】
0.25ml容量につき<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンのように、15μgの血球凝集素につき<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンが好ましい。0.5ml容量につき<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンのように、50μgの血球凝集素につき<10ng(例えば、<1ng、<100pg)の宿主細胞DNAを含むワクチンがより好ましい。
【0056】
任意の残留性宿主細胞DNAの平均長が、500bp未満、例えば400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満などであることが好ましい。
【0057】
混入DNAは、標準の精製手順、例えばクロマトグラフィーなどを用いて、ワクチン調製中に除去することができる。残留性宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼによる処理、例えばDNアーゼを用いることによって増強することができる。先ずウイルス増殖の間用いることができるDNアーゼ(例えばベンゾナーゼ)を用い、次にビリオン破壊の間用いることができる陽イオン性界面活性剤(例えばCTAB)を用いる二段階処理を含む、宿主細胞DNAの混入を減らすための便利な方法が、参考文献57および58に開示されている。βプロピオラクトン処理による除去を用いることもできる。
【0058】
残留性宿主細胞DNAの測定は、今では生物学的製剤にとっては慣例的規制要件で、当業技術者の通常の能力の範囲内である。DNAの測定に用いられるアッセイは、一般的には検証済みのアッセイである[59、60]。検証済みのアッセイの性能特性は、数学的および定量化可能な用語で記載することができ、その考えられるエラーソースは特定されている。そのアッセイは、正確度、精度、特異性などの特性について、一般に検査されている。アッセイが較正され(例えば宿主細胞DNAの既知の標準量に対して)、検査されると、定量的なDNA測定を日常的に実施することができる。DNA定量化のための3つの主な技術を用いることができる:サザンブロットまたはスロットブロットなどのハイブリダイゼーション方法[61]、ThresholdTM系などのイムノアッセイ方法[62]、および定量的PCR[63]。これらの方法のすべては当業技術者によく知られているが、各方法の正確な特性は、問題の宿主細胞によって決まるかもしれない(例えばハイブリダイゼーションのためのプローブの選択、増幅のためのプライマーおよび/またはプローブの選択など)。Molecular DevicesからのThresholdTM系は、総DNAのピコグラムレベルの定量アッセイであり、生物薬剤中の混入DNAレベルを監視するために用いられている[62]。一般的なアッセイは、ビオチン化ssDNA結合性タンパク質、ウレアーゼ結合体化抗ssDNA抗体およびDNAの間での、反応複合体の非配列特異的形成を含む。すべてのアッセイ構成要素は、製造業者から入手可能な完全なTotal DNA Assay Kitに含まれる。様々な民間製造業者は、例えばAppTecTM Laboratory Services、BioRelianceTM、Althea Technologiesなど、残留性宿主細胞DNAを検出するための定量的PCRアッセイを提供する。ヒトウイルスワクチンの宿主細胞DNA混入の測定についての、化学発光ハイブリダイゼーションアッセイと総DNA ThresholdTM系の比較を、参考文献64に見ることができる。
【0059】
(医薬組成物)
本発明と用いるためのワクチンは、インフルエンザ抗原に加えて成分を通常含み、例えばそれらは1つまたは複数の薬用キャリアおよび/または賦形剤を一般的に含む。そのような成分の詳細な議論は、参考文献65で入手可能である。多くの実施形態では、アジュバントが含まれてもよい。
【0060】
組成物は、投与時には一般に水性の形である。
【0061】
組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含むことができる。しかし一部の実施形態では、ワクチンは、PREPANDRIXTM製品と異なって、水銀物質を実質的に含むべきではなく、例えばチオメルサールを含むべきではない[8、66]。水銀を含有していないワクチンがより好ましく、水銀化合物に代わるものとしてα−トコフェロールスクシネートが含まれてもよい[8]。保存剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0062】
張性を調節するために、ナトリウム塩などの生理的塩を含むのが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、それは1〜20mg/mlで存在することができる。存在することができる他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウムおよび/または塩化マグネシウムなどが含まれる。アジュバントが抗原とは別の容器にある場合、塩化ナトリウムは両方の容器に存在することができる。
【0063】
組成物は、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kg、おそらく290〜310mOsm/kgの範囲の重量オスモル濃度を有することができる。
【0064】
組成物は、1つまたは複数の緩衝剤を含むことができる。一般的な緩衝剤には、以下が含まれる:リン酸緩衝液、トリス緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、ヒスチジン緩衝液(特に水酸化アルミニウムアジュバントと一緒に)、またはクエン酸緩衝液。緩衝液は、一般的に5〜20mMの範囲で含まれる。
【0065】
組成物のpHは、一般に5.0〜8.1であり、より一般的には6.0〜8.0、例えば6.5および7.5、または7.0〜7.8である。
【0066】
組成物は、好ましくは無菌である。組成物は好ましくは非発熱性であり、例えば1用量につき<1EU(エンドトキシン単位、標準的尺度)、好ましくは1用量につき<0.1EUしか含まない。組成物は、好ましくはグルテンを含まない。
【0067】
本発明の組成物は、界面活性剤、例えばポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tween」として公知である)、オクトキシノール(例えばオクトキシノール−9(トリトンX−100)もしくはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(「CTAB」)、または、特にスプリットワクチンもしくは表面抗原ワクチンのために、デオキシコール酸ナトリウムを含むことができる。界面活性剤は、極微量だけ存在してもよい。したがって、ワクチンは、オクトキシノール−10およびポリソルベート80の各々の1mg/ml未満を含むことができる。極微量の他の残りの成分は、抗生物質(例えばネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。アジュバントが抗原とは別の容器にある場合、この界面活性剤は抗原を含有する容器に通常存在する(例えば、抗原とポリソルベート80およびオクトキシノール10)。
【0068】
組成物は1回の免疫のための材料を含むことができ、または複数回の免疫のための材料を含むことができる(すなわち、「多用量」キット)。多用量の準備では、保存剤の含有が好ましい。多用量組成物に保存剤を含むことの代わりに(またはそれに加えて)、組成物は、材料の取り出しのための無菌アダプターを有する容器に含まれてもよい。
【0069】
ヒトインフルエンザワクチンは、一般的に約0.5mlの単位投薬容量で、筋肉内注射によって投与される。しかし本発明の一部の実施形態では、この容量の半分(すなわち約0.25ml)の単位用量を用いることができる。この減少させた投薬容量は、特に小児に有用である。さらにより低い用量(例えば0.1mlまたは0.2ml)は、例えば皮内注射に役立つことができる。
【0070】
ワクチンは、好ましくは2℃〜8℃で保存される。それらは、冷凍されるべきでない。それらは、理想的には直射光が入らないようにされるべきである。
【0071】
ワクチンは、即時投与のために、または投与前即席混合のための部品キットとして、例えば別々の抗原およびアジュバント成分として(PREPANDRIXTM製品の場合のように)処方して、任意の適する容器で供給することができる。適する容器には、バイアル、注射器(例えば使い捨て注射器)、鼻内噴霧などが含まれる。これらの容器は無菌であるべきである。組成物/成分がバイアル内に置かれる場合、バイアルは、好ましくはガラスまたはプラスチック製の材料で作製される。バイアルは、好ましくは組成物がそれに加えられる前に滅菌される。ラテックス感受性患者の問題を回避するために、バイアルは好ましくはラテックスを含まないストッパーで密封され、すべてのパッケージング材料にラテックスが存在しないことが好ましい。バイアルは、ワクチンの単一用量を含むことができ、またはそれは1より多い用量(「複数用量」バイアル)、例えば10用量を含むことができる。好ましいバイアルは、無色のガラス製である。バイアルは、注射器をそのキャップに挿入することができるように改造されたキャップ(例えばルアーロック)を有することができる。バイアルは、特に複数用量バイアルの場合、その内容物の無菌取り出しを可能にするキャップを有することができる。成分が注射器にパッケージされる場合、注射器はそれに装着される針を有することができる。針が装着されない場合、アセンブリーおよび使用のために別の針を注射器と一緒に供給してもよい。そのような針は、ケースに入れてもよい。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージおよび5/8インチ25ゲージ針が一般的である。記録の保守を容易にするために、ロット番号、インフルエンザ時期および内容物の有効期限を印刷することができる剥離式ラベルを注射器に添付してもよい。吸引の間、プランジャーが偶発的に抜けることを予防するために、注射器のプランジャーは、好ましくはストッパーを有する。注射器は、ラテックスゴムのキャップおよび/またはプランジャーを有することができる。使い捨て注射器は、1回用量のワクチンを含む。注射器は針の装着前に先端を密封するための先端キャップを一般に有し、先端キャップは好ましくはブチルゴム製である。
【0072】
例えば小児への送達を容易にするために、半用量の容量を示す印を容器に付けてもよい。例えば、0.5mlの量を含む注射器は、0.25ml容量を示すマークを有することができる。したがって、ワクチンは0.5mlの単位投与容量でパッケージすることができるが、0.25mlの単位投与容量として投与することができ、この半量投与は容器の印によって容易になる。
【0073】
ガラス容器(例えば注射器またはバイアル)を用いる場合、ソーダ石灰ガラス製ではなくホウ珪酸ガラス製の容器を用いるのが好ましい。
【0074】
容器は、ワクチンの詳細、例えば投与の説明、ワクチン内の抗原の詳細などを含むリーフレットとパッケージ(例えば同じボックスに)してもよい。説明書は、例えばワクチン接種後のアナフィラキシー反応などの場合に容易に利用できるアドレナリン溶液を常備することなどの警告を含むこともできる
(アジュバント)
使用時に、有利には、本発明のワクチンは、組成物を投与される患者で誘発される免疫応答(体液性および/または細胞性)を増強する働きをすることができるアジュバントを含むことができる。水中油型エマルジョンアジュバント(特にスクアレンを含むもの)の存在は、季節性[67]および流行性[68、69]インフルエンザワクチンの免疫応答の株交差反応性を増強することがわかっている。
【0075】
本発明と使用するための水中油型エマルジョンは、一般的に少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤を含み、(1つまたは複数の)油および界面活性剤は、生物分解性(代謝性)および生体適合性である。エマルジョン中の油滴は、一般に直径5μm未満であり、サブミクロンの直径でさえも有することができ、これらの小さいサイズは、安定したエマルジョンを提供するマイクロフルイダイザーで達成される。220nm未満のサイズの液滴はろ過滅菌にかけることができるので好ましい。
【0076】
本発明は、動物(例えば、魚)または植物供給源からのものなどの油と一緒に用いることができる。植物油の供給源には、ナッツ、種子および穀類が含まれる。最も一般的に入手可能である落花生油、ダイズ油、ヤシ油およびオリーブ油が、ナッツ油の例である。ホホバ油を用いることができ、例えばホホバ豆から得ることができる。種子油には、サフラワー油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油などが含まれる。穀類群では、トウモロコシ油が最も容易に入手できるが、小麦、オート麦、ライ麦、米、テフ、ライ小麦などの他の穀物粒の油を用いることもできる。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、種子油において天然に存在しないが、ナッツおよび種子油から始まる適当な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物のミルクからの油脂は代謝可能であり、したがって、この発明の実施で用いることができる。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化の手順および他の手段は、当技術分野で周知である。
【0077】
ほとんどの魚は、容易に回収することができる代謝可能な油を含む。例えば、タラ肝油、鮫肝油および鯨蝋などの鯨油は、本明細書で用いることができる魚油のいくつかの例である。5炭素イソプレン単位でいくつかの分枝鎖油が生化学的に合成され、テルペノイドと一般に呼ばれている。鮫肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンとして公知である、分枝状不飽和テルペノイドを含む。スクアレンの飽和類似体スクアランを用いることもできる。スクアレンおよびスクアランを含む魚油は、民間の供給業者から容易に入手できるか、または当技術分野で公知である方法によって得ることができる。スクアレンが好ましい。
【0078】
スクアレンを含有するエマルジョンは、FLUADTMおよびPREPANDRIXTM製品にすでに含まれている。FLUADTMワクチンでは、HAの総量は45μg(3×15μg)であり、スクアレンの総量は、0.5mlの投薬容量中に9.75mgである(すなわち、19.5mg/mlのスクアレン)。PREPANDRIXTMワクチンでは、HAの総量は3.75μg(一価)であり、スクアレンの総量は同じく0.5mlの投薬容量中に10.68mgである(すなわち、21.4mg/mlのスクアレン)。本発明の多くの実施形態では、スクアレン濃度は19mg/ml未満であるがまだアジュバント効果を保持しており、濃度は、≦10mg/ml、例えば≦5mg/ml、≦2.5mg/mlであってもよい。1用量につき0.5mgスクアレンの最小限の量が有用である(例えば、参考文献3を参照)。1用量あたりの量の例には、5.3mg、4.9mg、2.7mg、2.4mg、1.2mgなどが含まれる。
【0079】
他の有用な油はトコフェロールであり、ビタミンEは高齢患者(例えば、60歳以上)で免疫応答に対して正の影響を有することが報告されているので、それらは、有利にはこの患者群で使用するためのワクチンに含まれる[70]。それらは、エマルジョンの安定化を助けることができる抗酸化特性も有する[71]。様々なトコフェロールが存在する(α、β、γ、δ、εまたはξ)が、αが通常用いられる。好ましいα−トコフェロールは、DL−α−トコフェロールである。α−トコフェロールスクシネートは、インフルエンザワクチンに適合し、水銀化合物に代わる有用な保存剤であることが公知である[8]。
【0080】
油の混合物、例えばスクアレンおよびα−トコフェロールを用いることができる。2〜20%(容積で)の範囲の含油率が一般的である。
【0081】
界面活性剤は、それらの「HLB」(親水/親油性均衡)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、それらに限定されないが以下を含む界面活性剤と用いることができる:ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般にTweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;商品名DOWFAXTMで販売されている、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば線状EO/POブロックコポリマー;反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が異なることができるオクトキシノール、オクトキシノール−9(トリトンX−100またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)などのリン脂質;TergitolTMNPシリーズなどの、ノニルフェノールエトキシレート;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)などの、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールに由来するポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知である);ならびに、ソルビタントリオレエート(Span85)およびソルビタンモノラウレートなどのソルビタンエステル(通常、SPANとして公知である)。非イオン性界面活性剤が好ましい。エマルジョンに混ぜるのに最も好ましい界面活性剤は、ポリソルベート80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート;Tween80)である。
【0082】
界面活性剤の混合物、例えばTween80/Span85混合物を用いることができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびオクトキシノールの組合せも適する。別の有用な組合せは、ラウレス9に加えてポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0083】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)0.01〜1%、より詳細には約0.1%;オクチルまたはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えばトリトンX−100、またはトリトンシリーズの他の界面活性剤)0.001〜0.1%、より詳細には0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、より詳細には0.1〜1%、または約0.5%である。
【0084】
スクアレンを含有する水中油型エマルジョン、特にポリソルベート80を含むものが好ましい。スクアレン:ポリソルベート80の重量比は、1〜10、例えば2〜9、例えば約2.2または約8.3であってよい。本発明で有用な具体的な水中油型エマルジョンアジュバントには、それらに限定されないが以下のものが含まれる。
【0085】
・スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートのサブミクロンのエマルジョン。エマルジョンの組成は、容量で約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80および約0.5%のSpan85であってよい。重量では、これらの比は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80および0.48%のSpan85になる。参考文献75の第10章および参考文献76の第12章でさらに詳細に記載されるように、このアジュバントは「MF59」[72〜74]として公知である。MF59エマルジョンは、有利にはクエン酸イオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。
【0086】
・スクアレン、トコフェロールおよびポリソルベート80のサブミクロンのエマルジョン。これらのエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロール、および0.3〜3%のポリソルベート80を有することができ、スクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1(例えば0.90)であり、この比が、より安定したエマルジョンを提供することができる。スクアレンおよびポリソルベート80は、約5:2の容量比、または約11:5の重量比で存在することができる。そのようなエマルジョンの1つは、PBSにTween80を溶解させて2%溶液を与え、次にこの溶液の90mlを(5gのDL−α−トコフェロールおよび5mlスクアレン)の混合物と混合し、次にこの混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製することができる。生じるエマルジョンは、例えば100〜250nm、好ましくは約180nmの平均直径を有するサブミクロンの油滴を有する。エマルジョンは、3−デ−O−アシル化モノホスホリルリピドA(3d−MPL)を含むこともできる。この型の別の有用なエマルジョンは、ヒトの1用量につき0.5〜10mgのスクアレン、0.5〜11mgのトコフェロールおよび0.1〜4mgのポリソルベート80を含むことができる[3]。
【0087】
・スクアレン、トコフェロールおよびトリトン界面活性剤(例えばトリトンX−100)のエマルジョン。エマルジョンは、3d−MPLを含むこともできる(下記参照)。エマルジョンは、リン酸緩衝液を含むことができる。
【0088】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)、トリトン界面活性剤(例えばトリトンX−100)およびトコフェロール(例えばα−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。エマルジョンは、これらの3つの成分を約75:11:10の質量比(例えば750μg/mlポリソルベート80、110μg/mlトリトンX−100および100μg/mlα−トコフェロールスクシネート)で含むことができ、これらの濃度は、抗原からのこれらの成分の任意の寄与を含むべきである。エマルジョンは、スクアレンを含むこともできる。エマルジョンは、3d−MPLを含むこともできる。水相は、リン酸緩衝液を含むことができる。
【0089】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)のエマルジョン。エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水pH7.4で処方することができる。このエマルジョンはムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバントにおいて、スレオニル−MDPと用いられている[77](0.05〜1%Thr−MDP、5%スクアラン、2.5%Pluronic L121および0.2%ポリソルベート80)。「AF」アジュバント[78](5%スクアラン、1.25%Pluronic L121および0.2%ポリソルベート80)の場合のように、それはThr−MDPなしで用いることもできる。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0090】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの親水性非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルまたはマンニドエステル、例えばソルビタンモノオレエートまたは「Span80」)を含むエマルジョン。エマルジョンは好ましくは温度可逆的であり、および/または少なくとも90%(容量で)の、200nm未満のサイズの油滴を有する[79]。エマルジョンは、以下の1つまたは複数を含むこともできる:アルジトール;凍結保護剤(例えば糖、例えばドデシルマルトシドおよび/またはスクロース);ならびに/またはアルキルポリグリコシド。エマルジョンは、TLR4アゴニストを含むことができる[80]。そのようなエマルジョンは、凍結乾燥してもよい。
【0091】
・スクアレン、ポロキサマー105およびAbil−Careのエマルジョン[81]。アジュバント添加ワクチン中のこれらの成分の最終濃度(重量)は、5%スクアレン、4%ポロキサマー105(プルロニックポリオール)および2%Abil−Care85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16 ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0092】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献82に記載されるように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0093】
・非代謝性油(軽油など)および少なくとも1つの界面活性剤(例えばレシチン、Tween80またはSpan80)のサブミクロンの水中油型エマルジョン。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性結合体(グルクロン酸のカルボキシル基を通してのデスアシルサポニンへの脂肪族アミンの添加によって生成される、参考文献83に記載のGPI−0100など)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミドおよび/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加剤が含まれてもよい。
【0094】
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)がらせんミセルとして結合するエマルジョン[84]。
【0095】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシル化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えばエトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[85]。
【0096】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシル化脂肪アルコールおよび非イオン性親油性界面活性剤(例えばエトキシル化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[85]。
【0097】
エマルジョンは、ワクチンの製造の間に(1つまたは複数の)抗原と組み合わせること、または送達の時に(PREPANDRIXTM製品の場合のように)、別個の抗原含有成分と即席で混合するための別々の成分として供給することができる。これらの2つの成分が液体である場合、混合するための2つの液体の容量比は異なることができる(例えば5:1〜1:5の間で)が、一般的に約1:1である。
【0098】
抗原とアジュバントを混合した後、血球凝集素抗原は水溶液に一般に残るが、油/水界面の周辺に分布することがある。一般に、あるとしても少量しかない血球凝集素は、エマルジョンの油相に入る。
【0099】
本発明の組成物中の血球凝集素(総量)に対するスクアレンの重量比は、20〜180の範囲、例えば25〜30、50〜60、105〜115であってよい。
【0100】
(処置およびワクチン投与の方法)
本発明の組成物はヒト患者への投与に適し、本発明は、患者の免疫応答を高める方法であって、本発明の組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0101】
本発明は、医薬としての使用のための本発明の組成物も提供する。
【0102】
本発明は、インフルエンザ疾患に対する能動免疫化のための組成物の製造における、少なくとも1つのインフルエンザAウイルス抗原、少なくとも1つのインフルエンザBウイルス抗原およびスクアレン(例えば水中油型エマルジョンの形)の使用も提供し、ここで、組成物は上記特性を有するワクチンである。
【0103】
これらの方法および使用は、一般に抗体応答、好ましくは防御抗体応答を起こさせるために用いられる。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および防御を調査するための方法は、当技術分野で周知である。ヒト試験は、ヒトインフルエンザウイルスの血球凝集素に対する抗体力価が防御と相関することを示している(約30〜40の血清試料血球凝集阻害力価は、同種ウイルスによる感染からの約50%の防御を与える)[86]。抗体応答は、血球凝集阻害、微量中和、一元放射免疫拡散法(SRID)、および/または一元放射溶血(SRH)によって一般的に測定される。これらのアッセイ技術は、当技術分野において周知である。
【0104】
本発明の組成物は、様々な方法で投与することができる。最も好ましい免疫化経路は筋肉内注射(例えば腕や脚)によるものであるが、他の利用可能な経路には、皮下注射、皮内注射[87、88]、鼻腔内[89〜91]、経口[92]、口内、舌下、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[93]などが含まれる。
【0105】
本発明によって調製されるワクチンは、小児および成人の両者を処置するために用いることができる。インフルエンザワクチンは、6カ月の年齢以上の、小児および成人の免疫化で使用することが現在推奨されている。したがって、患者は、1歳未満、6〜<36カ月齢、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳であってもよい。ワクチン投与に好ましい患者は、高齢者(例えば≧50歳、≧60歳および好ましくは≧65歳)、年少者(例えば≦5歳)、入院患者、医療従事者、軍部および軍隊の人員、妊娠女性、慢性病患者、免疫不全患者、ワクチン投与の前7日間に抗ウイルス化合物(例えばオセルタミビルまたはザナミビル化合物、下記参照)を投与された患者、卵アレルギーのある者および外国旅行者である。しかしワクチンは、これらの群のためだけに適するのではなく、集団でより一般に用いることができる。
【0106】
本発明の好ましい組成物は、効能のCPMP基準の1つ、2つまたは3つを満たす。成人(18〜60歳)では、これらの基準は以下の通りである:(1)≧70%血清防御、(2)≧40%セロコンバージョン、および/または(3)≧2.5倍のGMT増加。高齢者(>60歳)では、これらの基準は以下の通りである:(1)≧60%血清防御、(2)≧30%セロコンバージョン、および/または(3)≧2倍のGMT増加。これらの基準は、少なくとも50人の患者の非盲検試験に基づく。
【0107】
処置は、単一用量スケジュールまたは複数用量スケジュールによることができる。複数用量は、一次免疫化スケジュールおよび/または追加抗原免疫化スケジュールで用いることができる。複数用量スケジュールでは、同じであるかまたは異なる経路で、例えば非経口で一次および粘膜で追加抗原、粘膜で一次および非経口で追加抗原などによって様々な用量を与えることができる。免疫学的にナイーブな患者、例えばインフルエンザワクチンをこれまで投与されたことのない人々、または新しいHAサブタイプを含むワクチンについて、1より多い用量(一般的に、2用量)の投与が特に有用である。複数用量は、一般的に少なくとも1週間離して(例えば約2週、約3週、約4週、約6週、約8週、約12週、約16週など)で投与される。
【0108】
本発明によって生成されるワクチンは、他のワクチンと実質的に同じ時間に(例えば医療専門家またはワクチン接種施設への同じ医療相談または訪問の間に)、例えば麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合H.influenzae b型ワクチン、不活化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合ワクチン(四価のA−C−W135−Yワクチンなど)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合ワクチンなどと実質的に同じ時間に、患者に投与されてもよい。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同じ時間の投与は、高齢患者で特に有益である。
【0109】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、特にインフルエンザウイルスに有効な抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同じ時間に(例えば医療専門家への同じ医療相談または訪問の間に)患者に投与されてもよい。これらの抗ウイルス薬には、そのエステル(例えばエチルエステル)およびその塩(例えばリン酸塩)を含む、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸または5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸などのノイラミニダーゼインヒビターが含まれる。好ましい抗ウイルス薬は、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸、エチルエステル、リン酸塩(1:1)であり、リン酸オセルタミビル(TAMIFLUTM)としても公知である。
【0110】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えばXを「含む(comprising)」組成物は、Xから排他的になることも、または別のものを含むこと、例えばX+Yであることもできる。
【0111】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要な場合、単語「実質的に」は、本発明の定義から省略されてもよい。
【0112】
数値xに関しての用語「約」は、任意選択で用いられ、例えばx±10%を意味する。
【0113】
特記されていない場合、2つ以上の成分を混合するステップを含む方法は、混合のいかなる特定の順序も要求しない。したがって、成分を任意の順序で混合することができる。3つの成分がある場合、2つの成分を互いと組み合わせ、次にその組合せを第三の成分と組み合わせること、などができる。
【0114】
動物(特にウシ)の材料を細胞の培養で用いる場合、それらは、伝染性の海綿状脳症(TSE)が存在しない、特に牛海綿状脳症(BSE)が存在しない供給源から得るべきである。全体として、動物由来の物質が完全に存在しない中で細胞を培養することが好ましい。
【0115】
リアソートメントまたはリバースジェネティクス手順のために、またはウイルス増殖のために細胞の培養基を用いる場合、好ましくはそれは、例えばPh Eur general第5.2.3章にあるように、ヒトワクチンの製造での使用が承認されているものである。
【発明を実施するための形態】
【0116】
(発明を実施するための様式)
595人の患者(男児および女児、6〜<36カ月)を、各々35人の17群に分ける。各群に、三価(A/H1N1、A/H3N2、B)または四価(A/H1N1、A/H3N2、B/Victoria、B/Yamagata)のインフルエンザワクチンを投与する。ワクチンは、0.5mL容量(15μg/用量/株;全体で45μgまたは60μg)、または0.25mL容量(7.5μg/用量/株;全体で22.5μgまたは30μg)で投与される。群の1つは、既存の市販の三価不活化ワクチンの小児用量を投与される。ワクチンは筋肉内注射によって与えられ、充填済み注射器またはバイアルで提供される。3つの異なるアジュバント量(希釈によって達成される)を検査する。
【0117】
三価ワクチンは、北半球でインフルエンザ時期2008〜2009年について推奨されたインフルエンザ株を含む:A/Brisbane/59/2007様、A/Brisbane/10/2007様ウイルス、およびB/Florida/4/2006様。B/Florida/4/2006様ウイルスは、B/Yamagata系統であり、したがって四価のワクチンは、B/Victoria系統であるB/Malaysia/2506/2004様ウイルスからの抗原をさらに含んでいた。
【0118】
被験体は1日目および29日目に2用量のワクチンを投与され(1日目に単一用量を投与される2群を除いて)、ベースライン(ワクチン接種前)、28日目、および50日目に採取される血液を分析することによって、インフルエンザ特異的免疫応答が調査される。血清試料は、同種および異種改変株を含むインフルエンザ株A/H1N1、A/H3N2およびBに対する株特異的血球凝集阻害(HI)アッセイによって調査される。
【0119】
したがって、17群は以下の通りである。
【0120】
【表1】

さらなる試験では、357人の患者(男性および女性、>65歳)を8群に分ける。各群は、水中スクアレンエマルジョンと一緒にまたはそれなしで、筋肉内注射(0.5mL)によって三価インフルエンザワクチン(A/H1N1、A/H3N2、B)を投与される。ワクチンは、充填済み注射器で提供される。3つの異なるアジュバント量(希釈によって達成される)が検査される。
【0121】
インフルエンザ株は、北半球でインフルエンザ時期2008〜2009年について推奨された通りである:A/Brisbane/59/2007様、A/Brisbane/10/2007様ウイルス、およびB/Florida/4/2006様。
【0122】
被験体は単一用量を投与され、ベースライン(ワクチン接種前)、ワクチン接種の7日後(8日目)、および21日後(22日目)に採取される血液を分析することによって、インフルエンザ特異的免疫応答を調査する。血清試料は、インフルエンザ株A/H1N1、A/H3N2およびBに対する株特異的血球凝集阻害(HI)アッセイによって調査される。細胞媒介免疫アッセイも、実施される。
【0123】
したがって、8つの群は以下の通りである。
【0124】
【表2】

両方のインフルエンザA株について、患者群C〜H(すなわちアジュバント添加ワクチン)で全3つのCHMP基準が満たされる。
【0125】
インフルエンザB株については、4.88mgスクアレンまたは9.75mgスクアレンを投与される群で全3つのCHMP基準が満たされる。アジュバント非添加ワクチンを投与される群では、CHMP基準のわずか1つが満たされるが、2.44mgスクアレンを投与される群では、3つのCHMP基準の2つが満たされる。
【0126】
したがって、ワクチン中の低い用量のスクアレンでさえ、インフルエンザAおよびBの株に対する免疫防御を増加させることができる。
【0127】
本発明は、ほんの一例として説明されたにすぎず、本発明の範囲および精神の範囲に留まりながら修正を加えることができることが理解される。
【0128】
(参考文献)
【0129】
【数1】

【0130】
【数2】

【0131】
【数3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも2つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも2つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は<19mg/mLである、アジュバントとを含む、インフルエンザウイルスワクチン。
【請求項2】
(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素であって、該血球凝集素濃度は1株につき>12μg/mlである、血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は<19mg/mlである、アジュバントとを含む、インフルエンザウイルスワクチン。
【請求項3】
(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は<19mg/mlである、アジュバントとを含む、水銀を含まないインフルエンザウイルスワクチン。
【請求項4】
(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は9.75mg/mLまたは4.88mg/mLである、アジュバントとを含む、インフルエンザウイルスワクチン。
【請求項5】
0.5mLの単位投与容量を有する、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項6】
0.2〜0.3mLの単位投与容量を有するインフルエンザウイルスワクチンであって、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は<19mg/mlである、アジュバントとを含む、ワクチン。
【請求項7】
0.2〜0.3mLの単位投与容量を有するインフルエンザウイルスワクチンであって、(i)少なくとも1つのインフルエンザAウイルス株および少なくとも1つのインフルエンザBウイルス株に由来する血球凝集素と、(ii)サブミクロンの油滴を有する水中油型エマルジョンアジュバントであって、スクアレンを含み、該スクアレン濃度は19.5mg/mL、9.75mg/mLまたは4.88mg/mLである、アジュバントとを含む、ワクチン。
【請求項8】
前記血球凝集素が、スプリットビリオンまたは精製された表面抗原の形である、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項9】
(i)H1N1インフルエンザAウイルス株、(ii)H3N2インフルエンザAウイルス株、(iii)B/Victoria/2/87様インフルエンザBウイルス株、および(iv)B/Yamagata/16/88様インフルエンザBウイルス株からの血球凝集素を含む、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項10】
1株あたりの血球凝集素の濃度が少なくとも25μg/mlである、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項11】
スクアレンの濃度が<10mg/mlである、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項12】
本発明の組成物中の血球凝集素に対するスクアレンの重量比が20〜180の範囲にある、前述の請求項のいずれかに記載のワクチン。
【請求項13】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約19.5mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株およびB株による三価不活化インフルエンザワクチンである、請求項4から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項14】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約9.75mg/mlのスクアレン濃度および約0.5mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株およびB株による三価不活化インフルエンザワクチンである、請求項2から5または請求項8から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項15】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約19.5mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株、B/Yamagata系統のインフルエンザBウイルス株、およびB/Victoria系統のインフルエンザBウイルス株による四価不活化インフルエンザワクチンである、請求項1または5または7から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項16】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約9.75mg/mlのスクアレン濃度および約0.5mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株、B/Yamagata系統のインフルエンザBウイルス株、およびB/Victoria系統のインフルエンザBウイルス株による四価不活化インフルエンザワクチンである、請求項1から5または8から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項17】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約9.75mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株およびB株による三価不活化インフルエンザワクチンである、請求項2から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項18】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約4.88mg/mlのスクアレン濃度および約0.5mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株およびB株による三価不活化インフルエンザワクチンである、請求項2から5または8から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項19】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約9.75mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株、B/Yamagata系統のインフルエンザBウイルス株、およびB/Victoria系統のインフルエンザBウイルス株による四価不活化インフルエンザワクチンである、請求項1から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項20】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約4.88mg/mlのスクアレン濃度および約0.5mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株、B/Yamagata系統のインフルエンザBウイルス株、およびB/Victoria系統のインフルエンザBウイルス株による四価不活化インフルエンザワクチンである、請求項1から5または8から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項21】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約4.88mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株およびB株による三価不活化インフルエンザワクチンである、請求項2から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項22】
1株につき約30μg/mlの血球凝集素濃度、約4.88mg/mlのスクアレン濃度および約0.25mlの単位投薬容量を有する、A/H1N1株、A/H3N2株、B/Yamagata系統のインフルエンザBウイルス株、およびB/Victoria系統のインフルエンザBウイルス株による四価不活化インフルエンザワクチンである、請求項1から12のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項23】
患者の免疫応答を高める方法であって、前述の請求項のいずれかに記載のワクチンを該患者に投与するステップを含む、方法。

【公表番号】特表2012−517417(P2012−517417A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548806(P2011−548806)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000312
【国際公開番号】WO2010/092479
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】