説明

少なくとも一つの抗原及び少なくとも一つのアジュバントを含有するワクチン組成物の製造方法

少なくとも一つの逆ラテックス又は前記逆ラテックスの微粒化により得られるポリマーの粉末を生理的に許容される水溶液中で分散させることによりアジュバント組成物を調製するステップa)、及びワクチン組成物を形成することを目的とする抗原性の媒質にステップa)で得られる当該組成物を混合するステップb)を含むワクチンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの抗原、特にウイルス、細菌又は寄生生物由来の抗原、及び少なくとも一つのアジュバントを含有するワクチン組成物の製造方法に関する。
【0002】
不活性化ワクチン又は精製された抗原を含むワクチンの開発は、治療される個体内での副作用を回避することを可能にするので、ますます重要になっている。しかしながら、抗原の質の改善は、前記抗原の免疫原性の性質に損失を生ずる。これは、それらが免疫アジュバントと結合するためである。
【0003】
免疫アジュバントは、それらがウイルス、細菌、又は合成由来の抗原の存在下で投与される場合、免疫系反応を増進させる生成物である。それらは、注射部位のマクロファージの塊状の外観を生じ、次にリンパ節において特異的な免疫グロブリン、即ち抗体の産生を増加させ、免疫防御機構に関与する数多くの細胞を刺激する。
【0004】
これらのアジュバントは様々な性質を有する。それらは、例えば油中水滴W/O型、又は水中油滴O/W型、又は水中油滴中水滴W/O/W型、又は油中水滴中油滴O/W/O型のエマルションの形態のエマルションからなる。
【0005】
フロイントアジュバントは非常に効果的である;それらは、任意で死滅マイコバクテリアを含む鉱物油とマンニトールエステルとの組み合わせから得られる。フロイントアジュバントと水性の抗原性媒質とを当量で混合することにより調製されるワクチンは、実験室での研究のため世界中で今でもなお対照とされている。それらは、油中水滴W/O型エマルションの形態、すなわち、その連続相がオイル又はオイルの混合物により構成されるエマルションの形態であり、且つその分散相は、可溶化賦形剤、例えばグリセロール又はジメチルサルホキシドなどを含んでもよい水相である。当該活性成分は一般的に当該水相にあり、これは通常、緩衝食塩水である。この相は、油状の薄膜によって互いに分離される液滴の形態である。この製剤は、長時間持続する増幅した生物学的反応を得ることを可能にする。
【0006】
しかしながら、このW/O型のエマルションは一般に非常に粘着性があり、したがって注射することが難しい。それらは多くの場合、大きな針の直径を有するシリンジの使用を必要とし、注射の間疼痛を生じ、且つ注射部位に外傷を生ずる。
【0007】
注射可能なW/Oエマルションの水相の質量含有率は、当該エマルションの質量100%に対して、約30〜40%である。最大質量含有率は、50%である。しかしながらこの限界は、特に多価のワクチン、ここにおいて数種の抗原が組み合わされる、の開発にとって障害となり、このため50質量%より高い水相含有率を有するW/Oエマルションを得ることが好ましい。
【0008】
しかしながら、低水相含有率、約20質量%以下、を有するW/Oエマルションにおいて、当該エマルションの粘度はオイルの粘度に非常に近い。水相の質量比の増加により、その粘度が上昇する。したがって、20質量%の水を含むエマルション、これは毎分60回転のスピードで回転するNo. 2スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される100mPa.sの粘度を有する、は、水分含量が50質量%まで増加する時、注射することが非常に難しいクリームに変化する。
【0009】
W/Oエマルションの形態の市販の油状アジュバントのいくつか、例えばMontanide(登録商標)ISA 70など、は約30重量%の水相及び70重量%の油相を含み、且つ毎分60回転のスピードで回転するNo. 2スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される50〜100 mPa.sオーダーの粘度を有する、注射可能なW/Oエマルションを得ることを可能にする。他のアジュバント、例えばMontanide(登録商標)ISA 50V2などは、約50重量%の水相及び約50重量%の油相を含み、且つ250 mPa.sより低い粘度、これは毎分60回転のスピードで回転するNo. 2スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される、を有する、注射可能なW/Oエマルションを得ることを可能にする。
【0010】
WO 99/20305の番号の下公開された国際特許出願は、500 mPa.sオーダーの粘度、これは毎分60回転のスピードで回転するNo. 2スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される、を有する「流動性の」エマルションを製造するための鉱物油、例えばMarcol(登録商標)52などを含むマンニトール−オレアート系の界面活性剤の使用について開示する。
【0011】
流動性のエマルションについての見解は、その適用分野に大きく依存する。注射可能なエマルションについて、流動性のエマルションの粘度の上限は、50質量%の水相及び50質量%の不完全フロイントアジュバント(IFA)を含む対照W/Oエマルションの粘度に関して定義される;この粘度、毎分30回転のスピードで回転するNo. 3スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される、は約2000 mPa.sオーダーである。このエマルションは、非常に粘着性があると考えられる。
【0012】
W/Oエマルションは、その粘度がこの対照エマルションの粘度、すなわち25℃で500 mPa.s未満、これは毎分30回転のスピードで回転するNo. 2スピンドルに取り付けられるBrookfield LVT粘度計を使用して測定される、の4分の1より低ければ流動性であると言われるだろう。
【0013】
しかしながら、周囲温度での相分離が前記エマルションの調製後わずか2、3日で観察されるので、流動性のエマルションは一般的により粘着性のあるエマルションよりも安定性が低い。
【0014】
水相の粉末形態の増粘性ポリマー、例えばそのナトリウム形態のアクリル酸ホモポリマー又はアクリル酸及びそのエステルに基づく共重合体などが存在する。例えば、Noveon社によりCarbopol(登録商標)及びPemulen(登録商標)という商標名で販売されるポリマーが挙げられる。それらは、特に米国特許US5,373,044及びUS2,798,053並びに欧州特許EP 0 301 532に記載される。これらのポリマーは、当初、基本的に化粧品用途を目的とする増粘製剤のための増粘剤として開発され、これらは長年に亘って記載され、且つ使用されてきた。これらのポリマーは、モノマー、例えば、有機溶媒相の溶液中のアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルなどから得られる。重合反応、これは種々の触媒を特定の温度及び圧力条件で添加することにより得られる、の間、当該ポリマーは当初の溶媒相において不溶性となり、当該反応器の底部で沈殿する。この方法は、「沈殿重合」と呼ばれる。
【0015】
このようにして得られる当該ポリマー、この最もよく知られる等級はCarbopol(登録商標)であるが、これは化粧品産業において非常に幅広く使用される非常に効果的な増粘剤である。これらのポリマーは、以下の種々の医薬品用途にも使用される:
・遅延放出効果ポリマーマトリックスの調製
・ポリマーゲル及び前記ポリマーとタンパク質との複合体の調製
・生体液に接する間、保護を付与するポリマーフィルムの調製
・粘膜へ適用する間、より高い持続性を提供する生体接着製剤の調製
・ワクチンアジュバントの調製
ワクチンアジュバント、これは最終ポリマー質量含有率「1%」のオーダーを有する、としての使用は、すぐに注射可能であり、半透明で流動性のワクチンの形態である。
【0016】
合成物質のアジュバント性質は、投与時のその物理的形態と非常に密接に関連している。したがって、大きなアジュバント効果を誘発するために使用される粒子のサイズは、免疫応答性細胞による捕捉の可能性を制御するであろう主要なパラメータである。さらに、当該粒子のサイズに応じて、応答を抗体産生へと(体液性応答)又はむしろ特異的な免疫系細胞を刺激するために(細胞性応答)方向付けることも可能だろう。溶媒相における種々のポリマーのミクロスフィアの分散形態での合成は、生理活性物質(これはワクチンの場合、抗原でも良い)のカプセル化の可能性とともに広範に文献に記載され、あるいは、多かれ少なかれ強い相互作用によってミクロスフィアの外表面に結合する活性物質を有し、且つ提示するための吸着支持体として使用されている。
【0017】
当該アジュバント粒子のサイズの制御は、これらのアジュバント粒子の安定性を長期にわたって伴わなければならないため、不変の課題である。特に、貯蔵中の凝集又は相分離を回避することが重要である。生体に注射した後、特にpH変化、酵素の存在、温度変化に関連するストレスのため、サイズの制御は当該組成物の安定性も伴わなければならない。
【0018】
これらの理由のため、本願出願人はポリマー(又は「マイクロゲル」)の凝集体のサイズを制御するためにポリマー合成のための独創的な技術を開発することを試み、それによって非常に良好なアジュバント有効性を得た。このため、油中水滴W/O型エマルション、又は逆エマルション、重合技術がこれらのポリマーを調製するために使用される。特に、モノマー溶液の液滴サイズは、W/Oエマルション技術に適する油中水滴型の乳化性界面活性剤系を使用することにより制御される。一般的に、それは親油性の乳化性界面活性剤、例えば2〜7のHLBを有する、を親水性の乳化性界面活性剤、例えば10〜15のHLBを有する、と結合させることを必要とし、これは均質なW/Oエマルションを提供する加重平均値を有する。当該モノマーは、当該モノマーの完全な反応に適するpH及び温度条件下で触媒及び他の架橋剤を通常の濃度で添加することにより重合され、ポリマーを形成する。
【0019】
当該アジュバント粒子のサイズは、それらを含む製剤の免疫学的性質に直接的な影響を及ぼす。さらに、ワクチン接種した種及び検討中のワクチンの種類によって、当該粒子の最適なサイズは異なってもよい。エマルションの製剤におけるノウハウ(HLBの最適化、当該界面活性剤の性質、濃度、方法)として、逆エマルションの合成過程の間、当該エマルションの液滴サイズの分布を制御し、それによって当該凝集物の平均サイズ及び粒子サイズの分布を制御することが可能である。「分散」の語は、当該界面活性剤の含有率及び当該乳化段階の間に付与される剪断力に従って不均一な系を意味するものとし、これは以下であってよい:
・懸濁液
・エマルション
・マイクロエマルション。
【0020】
これらの種々の分散形態は、50 nm〜100 μmの範囲でマイクロゲルのサイズ分散を制御することを可能にする。
【0021】
当該ポリマーの合成のための化学的条件(モノマー、触媒、開始剤の種類)により、得られるポリマーの個々の性質(平均モル質量、架橋、アニオン性の性質)を制御することが可能になる。
【0022】
このようにして合成される当該アジュバントは、「オイル中のポリマーの液滴」または「逆ラテックス」エマルションの形態である。このエマルションが生理的緩衝液を含む抗原の水溶液中に分散する場合、逆転及び分散し、水中にポリマーマイクロゲルの半透明で流動性の分散液を提供する。例えば、ポリ(アクリル酸ナトリウム)マイクロゲルの液滴は、0.5〜5マイクロメートル、例えば約2マイクロメートルの平均サイズを有してもよい。
【0023】
本発明の主題は、逆ラテックスを使用してワクチンを製造する方法である。特に、本願発明の主題は、以下を含むワクチンの製造方法である:
−少なくとも一つの逆ラテックス又は前記逆ラテックスの微粒化により得られるポリマーの粉末を、生理学的に許容される水溶液中に分散させることによりアジュバント組成物を調製するステップa);
−ステップa)で得られる組成物を抗原性の媒質、これはワクチン組成物を形成することを目的とする、に混合するステップb)
【0024】
「逆ラテックス」の語は、ポリマーの油中水滴型エマルションを意味するものとし、この中で水相、これは連続的な油相中に分散される、は前記ポリマーを含む。したがって、当該逆ラテックス、これは逆エマルション重合により得られる、は液体エマルションの形態である。これに続くこの逆ラテックスの微粒化は、もし必要ならば前記ポリマーの粉末を形成するために行われてもよい。当該微粒化は、例えば欧州特許出願EP 1 496 081に記載される。
【0025】
「生理的に許容される水溶液」の語は、本発明の文脈中で、ワクチンの調製に使用することができる水溶液を意味し、これは例えば、薬局方、特に欧州または米国の薬局方に従う水質、例えば、生理食塩水若しくは食塩水及び/又は、必要に応じて前記薬局方に従うアルコール水溶液に関連する。
【0026】
「アジュバント組成物」の語は、免疫性のアジュバントである組成物を意味する。
【0027】
少なくとも一つの親水性の界面活性剤もまた、このステップa)の前に添加されてよく、そのような分散の長時間に亘る安定性を改善する。
【0028】
「親水性の界面活性剤」の語は、安定な水中油滴型エマルション、例えばエトキシル化マンニタンエステル又はエトキシル化ソルビタンエステル、例えば20 molのエチレンオキシドでエトキシル化されるソルビタンオレアート、これはMontanox(登録商標)80の名前でSEPPIC社により販売される、などを提供することができる十分高い10〜15のHLB値を有する乳化性界面活性剤を意味する。
【0029】
「抗原性の媒質」の語は、少なくとも一つの抗原、又はアミノ酸配列を含有する化合物の少なくとも一つのインビボジェネレータを含有する媒質を意味する。「抗原、又はアミノ酸配列を含有する化合物の少なくとも一つのインビボジェネレータ」の表現は、死滅した微生物、例えばウイルス、細菌若しくは寄生生物など、又はこれらの微生物の精製画分、又は生きた微生物、この病原性の能力は弱められている、のいずれかを意味する。本発明に従う抗原を構成してもよいウイルスの例として、狂犬病ウイルス、ヘルペスウイルス、例えばオーエスキー病ウイルスなど、オルソミキソウイルス、例えばインフルエンザなど、ピコルナ・ウイルス、例えば口蹄疫ウイルス、又はレトロウイルス、例えばHIVなどがある。本発明に従う抗原を構成してもよい細菌型の微生物として、大腸菌、並びにパスツレラ、フルンケル多発症、ビブリオ症、スタフィロコッカス及びストレプトコッカス属の微生物が挙げられてもよい。寄生生物の例として、トリパノソーマ、プラスモジウム、及びリーシュマニア属のものが挙げられてよい。さらに、組み換えウイルス、特に非エンベロープウイルス、例えばアデノウイルス、ワクシニアウイルス、カナリア痘ウイルス、ヘルペスウイルス、またはバキュロウイルスなども挙げられてもよい。さらに、生きた、非エンベロープの、組み換えウイルス・ベクターも意味し、そのゲノムは、好ましくは対応するエンベロープのウイルスの複製に必須でない部分に挿入され、抗体の合成及び/又は上記のエンベロープのウイルス若しくは病原性の微生物に対する保護作用を誘発する抗原性のサブユニットをコードする配列を含む;これらの抗原性のサブユニットは、例えば、ペプチド分画であり、及び/又は、例えばエンベロープウイルス、細菌又は寄生生物などの生きた微生物の感染に対して保護的なタンパク質、糖タンパク質、ペプチド又は分画であってよい。当該微生物に挿入される外因性の遺伝子は、例えば、オーエスキー病ウイルス又はHIVウイルス由来であってよい。
【0030】
特に、ヌクレオチド配列からなる変異プラスミドが挙げられてもよく、これに外因性のヌクレオチド配列、これは病原性の微生物又はウイルス由来である、が挿入される。後者のヌクレオチド配列の目的は、アミノ酸配列を含有する化合物の発現を可能にすることであり、この化合物自体の目的は、ホスト生物における免疫反応を誘発することである。
【0031】
アミノ酸配列を含有する化合物の「インビボ」ジェネレータの表現は、前記インビボジェネレータが挿入されたホスト生物において前記化合物を発現させる能力を有する生物学的生成物全体を意味するものとする。当該アミノ酸配列を含有する化合物は、タンパク質、ペプチド又は糖タンパク質であってよい。これらのインビボジェネレータは一般的に遺伝子工学に由来する方法により得られる。特に、それらは生きた微生物、一般的にはウイルスからなってもよく、これは組み換えベクターの役割を果たし、これにはヌクレオチド配列、特に外因性の遺伝子が挿入される。これらの化合物はそれら自体公知であり、特に変異体サブユニットワクチンとして使用される。この点について、M. Eloitらによる論文、Journal of virology (1990) 71, 2925-2431、並びにWO-A-91/00107及びWO-A-94/16681の番号の下公開される国際特許出願を参照してもよい。本発明に従う当該インビボジェネレータはまた、外因性のヌクレオチド配列を含有し、且つホスト生物においてアミノ酸配列を含有する化合物を発現する能力を有する組み換えプラスミドからなってもよい。このような組み換えプラスミド及びそれらのホスト生物への投与方法は、1990年にLinらによりCirculation 82:2217,2221; Cox et al., J. of Virol, Sept. 1993, 67, 9, 5664-5667及びWO 95/25542の番号の下公開される国際出願に記載された。当該インビボジェレータに含まれるヌクレオチド配列の性質に応じて、ホスト生物中で発現される当該アミノ酸配列を含有する化合物は:
(i) 抗原であり、免疫反応を誘発することができてもよく、
(ii) 疾患、これは本質的に機能的性質の疾患であり、ホスト生物において誘発された、に対して治療作用を有してもよい。この場合、当該インビボジェネレータが、当該ホストの遺伝子療法型治療を可能にする。
【0032】
例えば、そのような治療作用が、サイトカイン、例えばインターロイキンなど、特にインターロイキン-2の合成からなってもよい。これらのインターロイキンは、癌細胞の選択的な除去に向けられる免疫反応の誘発又は強化を可能にする。
【0033】
上で定義されるワクチン組成は、この抗原の性質及び治療される個体の性質によって決まる抗原の濃度を含む。しかしながら、本発明に従うアジュバントが、必要とされる通常の抗原の用量を有意に減少させることができるということは、特に注目に値する。当該適当な抗原濃度は、慣習的に当業者によって決定されてもよい。一般的に、この用量は、約0.1 μg/cm3から1 g/cm3、より一般的には1 μg/cm3から100 mg/cm3である。本発明に従う組成物中の前記インビボジェネレータの濃度は、繰り返しになるが、特に前記ジェネレータの性質、及びそれが投与されるホストによって決まる。この濃度は、慣例的な実験に基づき当業者によって容易に決定されてもよい。指標として、当該インビボジェネレータが組み換え微生物である場合、本発明に従う組成物中の濃度は、一般的に102〜1015微生物/cm3、そして好ましくは、105〜1012微生物/cm3である。当該インビボジェネレータが組み換えプラスミドの場合、本願発明の主題である方法に従って得られる組成物中の濃度は、0.01 g/dm3から100 g/dm3であってよい。上で定義される通り、当該ワクチンは当該アジュバント相と当該抗原相を混合することにより調製され、任意で水または薬学的に許容される希釈媒質を添加する。
【0034】
油状連続相、これは本発明の主題である方法のステップa)で使用される逆ラテックスを調製するために使用される、は鉱物、植物又は動物由来のオイル、前記オイルのアルキルエステル、脂肪酸のアルキルエステル又は脂肪酸のアルキルエーテル、ポリオールの脂肪酸エステル又はポリオールの脂肪アルコールエーテル、及び合成油から選択される一つまたは一つ以上の化合物を含有する。
【0035】
市販の鉱物油、すなわち、例えばパラフィン、イソパラフィン、シクロパラフィン、これは環境温度で0.7〜0.9の密度及び180℃より高い沸点を有する、例えば、Exxsol(登録商標)D100S若しくはMarcol(登録商標)52、これはExxon Chemical社により販売される、イソヘキサデカン若しくはイソドデカンなどの飽和炭化水素、又はこれらのオイルのうち数種の混合物を含む市販の鉱物油もまた使用されてよい。
【0036】
本発明の一つの好ましい側面に従うと、当該油相はMarcol(登録商標)52又はイソヘキサデカンで構成される;イソヘキサデカン、これはRN番号93685-80-4によりChemical Abstracts中で定義される、は少なくとも97%のC16イソパラフィンを含むC12、C16、及びC20イソパラフィンの混合物であり、この中で主要な構成成分は2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン(RN = 4390-04-9)である。それはフランスでBayer社によって販売される。Marcol(登録商標)52は、液体鉱油ゼリーのFrench Codex定義に該当する市販のオイルである。それは、FDA規則CFR172.878及びCFR 178.3620 (a)に従う白色の鉱物油であり、米国薬局方US XXIII(1995)及び欧州薬局方(1993)に掲載される。
【0037】
植物由来のオイルの例として、落花生、オリーブ、ゴマ、大豆、コムギ麦芽、ブドウ種子、ヒマワリ、トウゴマ、アマ、トウモロコシ、コプラ、ヤシ、クルミ、ヘーゼルナッツ若しくはナタネ油、又は他にSophim社によりPhytosqualan(登録商標)の名でフランスで販売される植物由来のスクアレン若しくはスクアラン、これはRN番号111-01-3によりChemical Abstractsで定義される、が挙げられ、これは80重量%より多くの2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-テトラコサンを含む炭化水素の混合物からなる。
【0038】
動物由来のオイルの例として、鯨ろう、獣脂、魚の肝臓から抽出されるスクアラン又はスクアレンが挙げられる。
【0039】
オイルのアルキルエステルの例としては、前記オイルのメチル、エチル、直鎖若しくは分岐プロピル、又は直鎖若しくは分岐ブチルエステルが挙げられる。
【0040】
上記のエステルの調製に適切な脂肪酸として、特に12〜22の炭素原子を含むもの、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リシノール酸又はイソステアリン酸など、及び有利には20℃で液体の脂肪酸が挙げられる。
【0041】
脂肪酸エステルまたは脂肪酸エーテルの例として、脂肪酸のアルキルエステル、例えば、エチルオレアート、メチルオレアート、イソプロピルミリステート又はオクチルパルミテートなど、ポリオールの脂肪酸エステル又はポリオーの脂肪アルコールエーテル、例えば脂肪酸モノグリセリド、脂肪酸ジグリセリド、脂肪酸トリグリセリドなど、ポリグリセロールを含む脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールの脂肪酸エステル、特にヘキソール、例えばソルビトール又はマンニトール、を含む脂肪酸のエステル、及びヘキソール無水物、例えばソルビタン又はマンニタンなど、を含む脂肪酸のエステルが挙げられる。
【0042】
合成油の例として、水素化ポリデセンまたは水素化ポリイソブテン、これはEts B. Rossow and Cie社によりParleam−Polysynlane(登録商標)、これはMichel及びIrene Ashによる“Thesaurus of Chemical Products”, Chemical Publishing Co, Inc. 1986 Volume I, 211頁(ISBN 0 7131 3603 0)で言及される、の名でフランスで販売される、が挙げられる。
【0043】
本発明の文脈において、当該油状連続相、これは本発明の主題である方法のステップa)で使用される当該逆ラテックスを調製するために使用される、は、上記の化合物のうち1つのみ、又は他に上記の化合物のうち数種の混合物を含有してもよい。
【0044】
当該逆ラテックス中の当該油相の割合は、当該逆ラテックスの全体質量の10〜50質量%、及び好ましくは15〜25質量%である。
【0045】
本発明の主題である方法のステップa)で調製されるアジュバント組成物の製剤の基礎を形成する、当該逆ラテックスを生ずる逆エマルション重合によって得られる前記少なくとも一つのポリマーは、以下から選択される分岐又は架橋アニオン性高分子電解質から選択される:アクリル酸/2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(AMPS)共重合体、アクリルアミド/2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ-1-プロパンスルホン酸共重合体、2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸/(2-ヒドロキシエチル)アクリレート共重合体、部分的に又は全体的に加塩された(salifie)2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸ホモポリマー、部分的に又は全体的に加塩されたアクリル酸ホモポリマー、部分的に又は全体的に加塩されたメタクリル酸ホモポリマー、アクリロイルエチルトリメチルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体、AMPS/ビニルピロリドン共重合体、AMPS/N-メチルアクリルアミド共重合体、AMPS/N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、AMPS/メタクリルアミド共重合体、AMPS/N-イソプロピロアクリルアミド共重合体、AMPS/N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロペンアミド[又はTHAMとも称されるトリス(ヒドロキシメチル)アクリルアミドメタン若しくはN-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアクリルアミド]共重合体、アクリル酸/アクリルアミド共重合体、アクリル酸/N-メチルアクリルアミド共重合体、アクリル酸/N,N-ジメチルアクリルアミド共重合体、アクリル酸/メタクリルアミド共重合体、アクリル酸/N-イソプロピルアクリルアミド共重合体、アクリル酸/N-[2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロペンアミド[又はTHAMとも称されるトリス(ヒドロキシメチル)アクリルアミドメタン若しくはN-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアクリルアミド]共重合体、アクリル酸及び炭素鎖が10〜30個の炭素原子を含むアルキルアクリレートの共重合体、並びにAMPS及び炭素鎖が10〜30個の炭素原子を含むアルキルアクリレートの共重合体。
【0046】
「分岐ポリマー」の語は、このポリマーが水中に溶解する場合、垂れ下がった鎖を有し、低い剪断速度で非常に高い粘度を生ずる高度の絡み合いを提供する、非直鎖状ポリマーを示す。
【0047】
「架橋ポリマー」の語は、水に不溶であるが、水中で膨張してもよく、そのため化学的なジェルを提供することにつながる3次元ネットワークの形態の非直鎖状ポリマーを示す。
【0048】
この高分子電解質が架橋される場合、それは特にジエチレン又はポリエチレン化合物と、0.005%〜1%、好ましくは0.01%〜0.2%、特に0.01%〜0.1%のモル割合、これは使用されるモノマーに対して表される、で架橋される。好ましくは、当該架橋剤及び/又は当該分岐剤は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ソディウムジアリロキシアセテート、エチレングリコールジアクリレート、ジアリルウレア、トリアリルアミン、トリメチロールプロパントリアクリレート、又はメチレンビス(アクリルアミド)及びアリルスクロースから選択される。
【0049】
当該逆ラテックスが、本願発明の方法の主題であるステップa)で調製されるアジュバント組成物を調製する段階で使用される場合、それは一般的に1〜5質量%の油中水滴(W/O)型の乳化系を含有する。
【0050】
「油中水滴(W/O)型の乳化系」の語は、上記の定義において、前記混合物が油中水滴型エマルションを誘起するために十分低いHLB値を有する限りにおいて、単一の界面活性剤又は界面活性剤の混合物のいずれかを示す。油中水滴型の乳化剤としては、例えばソルビタンエステルが挙げられ、これは例えばソルビタンオレアート、SEPPIC社からMontane(登録商標)80の名で販売される製品など、ソルビタンイソステアレート、SEPPIC社からMontane(登録商標)70の名で販売される製品など、又はソルビタンセスキオレアート、SEPPIC社からMontane(登録商標)83の名で販売される製品などである。また、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、例えばペンタエトキシル化ソルビタンモノオレアート、SEPPIC社からMontanox(登録商標)81の名で販売される製品など、又はペンタエトキシル化ソルビタンイソステアレート、SEPPIC社からMontanox(登録商標)71の番号で販売される製品などもある。また、ジエトキシル化オレオセチルアルコール、例えば、SEPPIC社からSimulsol(登録商標)OC 72の名で販売される製品、1000〜3000の分子量を有し、ポリ(イソブテニル)コハク酸又はその無水物とジエタノールアミンとの縮合により製造されるポリエステル、UNIQEMA社から販売されるHypermer(登録商標)2296など、又は、最後に、分子量2500〜3500を有するブロック共重合体、例えばUNIQEMA社から販売されるHypermer(登録商標)B246またはSEPPIC社から販売されるSimaline(登録商標)IE 200などがある。
【0051】
当該逆ラテックスが、本願発明の方法の主題であるステップa)で調製されるアジュバント組成物を調製する段階で使用される場合、それは一般的に2〜8質量%の水中油滴(O/W)型の乳化系を含有する。
【0052】
「水中油滴(O/W)型の乳化系」の語は、上記の定義において、前記混合物が水中油滴型エマルションを誘起するために十分高いHLB値を有する限りにおいて、単一の界面活性剤又は界面活性剤の混合物のいずれかを示す。水中油滴型の乳化剤としては、例えばエトキシル化ソルビタンエステルが挙げられてもよく、これは例えば、20 molのエチレンオキシドによりポリエトキシル化されるソルビタンオレアート、これはSEPPIC社によりMontanox(登録商標)80の名で販売される、20 molのエチレンオキシドでポリエトキシル化されるソルビタンラウレート、これはSEPPIC社によりMontanox(登録商標)20の名で販売される、40 molのエチレンオキシドによりポリエトキシル化されるヒマシ油、これはSimulsol(登録商標)OL50の名で販売される、デカエトキシル化オレオデシルアルコール、これはSEPPIC社によりSimulsol(登録商標)OC 710の名で販売される、ヘパエトキシル化ラウリルアルコール、これはSimulsol(登録商標)P7の名で販売される、又は20 molのエチレンオキシドでポリエトキシル化されるソルビタンモノステアレート、これはSEPPIC社によりMontanox(登録商標)60の名で販売される、などである。
【0053】
エマルション重合により得られるポリマー、これは本願発明の主題の方法のステップa)で調製されるアジュバント組成物の製剤の基礎を形成する逆ラテックスを提供し、有利に使用されるものは、全体的に又は部分的に加塩されたアクリル酸ホモポリマー、部分的にまたは全体的に加塩されたメタクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/2-メチル-1-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸共重合体、2-メチル-1-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸/(2-ヒドロキシエチル)アクリレート共重合体により構成される群から選択され、さらにより有利には、ポリ(アクリル酸ナトリウム)である。
【0054】
本願発明の主題である方法のステップa)で調製されるアジュバント組成物中の前記少なくとも一つの逆ラテックスの質量による割合は、当該アジュバント組成物の全質量の0.5%〜30%、好ましくは当該アジュバント組成物の全質量の5%〜15%である。
【0055】
本願発明の主題である方法のステップa)において、免疫賦活剤物質が添加されてもよい。当該免疫賦活剤物質は、例えば、一つまたは一つ以上の慣習的な免疫賦活剤、例えばAvridine(登録商標)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシルエチル)プロパンジアミン、MDP(ムラミルジペプチド)誘導体、特にスレオニル-MDP、ミコール酸誘導体又は脂質A誘導体などから選択される。このような物質は、特にイオン化された物質である。当該イオン化された物質は、例えば、一つまたは一つ以上の水溶性の金属カチオン有機塩、例えばグルコン酸カルシウム、グルコン酸マンガン、サリチル酸アルミニウム、又は可溶性酢酸アルミニウムなどから選択される。本願発明に従う当該アジュバント組成物が薬学的に許容される塩を含有する場合、この塩は0.02〜3000 mg/cm3、好ましくは 0.1〜1000 mg/cm3、より好ましくは0.1〜150 mg/cm3の濃度である。一般的に免疫アジュバントとして使用される不溶性の塩、例えば水酸化アルミニウム又はリン酸カルシウムなども使用してもよい。
【0056】
本願発明の一側面に従うと、ステップa)で、本質的に親水性であって、当該エマルションを安定化することを目的とする、少なくとも一つの界面活性剤が添加される。前記本質的に親水性の少なくとも一つの界面活性剤のHLB値は、10〜15である。
【0057】
ステップa)で調製される組成物は、0.1%〜15%の前記少なくとも一つの界面活性剤、好ましくは0.1%〜5%の前記少なくとも一つの界面活性剤を含有する。
【0058】
本願発明の目的のために、界面活性剤のHLB値がHLB = 20(1−Is/Ia)、ここでIsは鹸化指数、Iaは前記界面活性剤を調製するために使用される脂肪酸の酸性指数を示す、を使用して計算される。界面活性剤の混合物の場合、当該混合物のHLBは各界面活性剤のHLBの加重和である。これら2つの指数、鹸化指数及び酸性指数、は欧州薬局方に記載される方法によって決定される。
【0059】
本発明の別の特定の側面に従うと、本願発明の主題である方法のステップa)で得られる組成物は、本願発明の主題である方法のステップa)で得られる組成物の全体質量の0.1%〜5%、好ましくは0.2〜1質量%の油相含有率を有する。
【0060】
使用される親水性の界面活性剤は一般的に、修飾された脂肪性の物質から選択される。
【0061】
本願発明の文脈中で使用される修飾された脂肪性の物質は、鉱物、植物、または動物由来であってよい。鉱物由来の修飾された脂肪性の物質としては、石油由来のオイルがある。
【0062】
植物由来の修飾された脂肪性の物質としては、修飾された植物油、例えば修飾された落花生、オリーブ、ゴマ、大豆、コムギ麦芽、ブドウ種子、ヒマワリ、トウゴマ、アマ、トウモロコシ、コプラ、ヤシ、クルミ、ヘーゼルナッツ、又はナタネ油がある。
【0063】
動物由来の修飾された脂肪性の物質としては、例えば、修飾されたスクワラン、修飾されたスクアレン、修飾された鯨ろう、又は修飾された獣脂がある。
【0064】
「修飾された脂肪性の物質」の語は、特に脂肪性の物質のアルコキシル化された誘導体、特に、オイルのアルコキシル化誘導体又はオイルのアルキルエステルのアルコキシル化誘導体、特にオイルのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、又は前記オイルのメチル、エチル、直鎖若しくは分岐プロピル又は直鎖若しくは分岐ブチルエステルのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体を示す。本発明の主題は、より具体的には上で定義される組成物であり、ここにおいて、当該修飾された脂肪性の物質は1〜10のモル数のエチレンオキシドを有するオイルのエトキシル化誘導体から選択される。
【0065】
「修飾された脂肪性の物質」の語はまた、ポリオールの脂肪酸エステル又はポリオールの脂肪アルコールエーテル、特にヘキソール、例えばソルビトール若しくはマンニトール、を含む脂肪酸エステル、又はヘキソール無水物、例えばソルビタン若しくはマンニタンなどを含む脂肪酸のエステル、ポリオールの脂肪酸エステルのアルコキシル化誘導体、又はポリオールの脂肪アルコールエーテルのアルコキシル化誘導体、例えばアルコキシル化脂肪酸トリグリセリド、ポリグリセロールのアルコキシル化脂肪酸エステルなど、特に、ヘキソール、例えばソルビトール若しくはマンニトールを含む脂肪酸のアルコキシル化エステル又はヘキソール無水和物、例えばソルビタン若しくはマンニタンなどを含み、1〜20のモル数のエチレンオキシドを有する脂肪酸のアルコキシル化エステルも示す。
【0066】
「ポリオールの脂肪酸エステル」の語は、本願発明の文脈中で、ポリオールの脂肪酸モノエステル又はポリオールの脂肪酸ポリエステル、例えばポリオールの脂肪酸ジエステル又はポリオールの脂肪酸トリエステルを示す。同じことが、前記エステルのポリアルコキシル化誘導体にも当てはまる。
【0067】
「ポリオールの脂肪酸エーテル」の語は、本願発明の文脈中で、ポリオールの脂肪酸モノエーテル又はポリオールの脂肪酸ポリエーテル、例えばポリオールの脂肪酸ジエーテル又はポリオールの脂肪酸トリエーテルを示す。同じことが、前記エーテルのポリアルコキシル化誘導体にも当てはまる。
【0068】
当該修正された脂肪性の物質は、ポリオールの脂肪酸エステルのエトキシル化誘導体又はポリオールの脂肪アルコールエーテルのエトキシル化誘導体、特にヘキソール、例えばソルビトール若しくはマンニトールを含む脂肪酸のエトキシル化エステル、又はヘキソール無水物、例えばソルビタン若しくはマンニタン、を含み5〜10のモル数のエチレンオキシドを有する脂肪酸のエトキシル化エステルから選択されてもよい。
【0069】
上記の修飾された脂肪性の物質の調製に適する脂肪酸として、平均12〜22個の炭素原子を含むもの、例えば16〜18個の炭素原子を含むもの、例えばオレイン酸、リシノール酸又はイソステアリン酸など、及び有利には20℃で液体の脂肪酸がある。
【0070】
本発明の一つの側面に従うと、ステップb)で、サポニン、動物及び/又は植物及び/又は鉱物及び/又は合成油、界面活性剤、水酸化アルミニウム、レシチン、並びにレシチン誘導体から選択される少なくとも一つの免疫賦活剤を添加する。
【0071】
本発明の一つの特定の側面に従うと、ステップb)で得たワクチンは、ステップa)で得られた製剤10%〜20%、及び抗原性の媒質80%〜90%を含有する。
【0072】
本発明の主題もまた、上記の方法のステップa)に従って得た製剤10%〜20%、及び抗原性の媒質80%〜90%を含有するワクチン組成物である。
【0073】
上記のワクチン組成物は予防又は治療薬剤として使用されてもよい。当該インビボジェネレータの抗原の性質に応じて、本発明に従う組成物は、魚、甲殻類、例えばエビなど、家禽、特にガチョウ、シチメンチョウ、ハト及びニワトリ、イヌ科の動物、例えば犬などに、ネコ科の動物、例えば猫などに、ブタに、霊長類に、ウシ科の動物に、ヒツジ科のメンバーに、ウマに、げっ歯類、例えばラットなどに、ウサギ目の動物、例えばウサギなど、ヤギ亜、例えばヤギなど、並びに大型の哺乳類、例えばゾウなどに投与されてもよい。本発明に従う組成物は、ヒトに投与されてもよい。
【0074】
当該組成物は、非経口経路、特に皮下、筋肉内又は腹腔内投与によって慣習的に投与されてもよい。また、経口的に、経鼻的に、経眼的に、浸漬によって、又は入浴(balneation)によって投与されてもよい。
【0075】
最後に、本願発明の主題は、上記の方法のステップa)に従って得られるアジュバント組成物の使用であり、これはワクチン組成物の調製のためのものである。
【0076】
本願全体にわたって使用される百分率は、質量による割合を表す。
【0077】
非常に驚くべきことに、逆ラテックスの分散のアジュバント特性と、同じ化学組成を有するが溶媒相合成とその後の沈殿により得られるポリマーとの比較は、体液性応答(図1)及び細胞性応答、これは高度の無害性を伴う(図2)、の双方に対する非常に大きなアジュバント効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】免疫学的結果/エマルション中で得られるマイクロゲルと溶媒相中で得られるポリアクリレート(carbopol(登録商標)974)との比較
【図2】無害性結果/エマルション中で得られるマイクロゲルと溶媒相中で得られるポリアクリレート(carbopol(登録商標)974)との比較/局所反応ポジティブコントロール:W/Oエマルション
【0079】
以下の例は、本発明を説明するが、それを限定するものではない。
【0080】
例1:鉱油中水滴エマルション中で得られるポリ(アクリル酸ナトリウム)に基づくアジュバント組成物
流動性の鉱物油であるMarcol(登録商標)52、これはExxonにより供給される、が使用される。重合の後に得られる当該ポリマーエマルションは、粘着性で白色の油状ジェルの形態である。その組成は、鉱油30%(連続相)、当該エマルションを安定化することを目的とする界面活性剤5%、ポリ(アクリル酸ナトリウム)25%、及び水40%である。pH7、3%で緩衝化される水性の抗原性溶液に接して、当該油中ポリマーエマルションは逆転し、微量のオイルを含むポリマーの分散液を提供する。
【0081】
例2:エマルション重合により得られるポリ(アクリル酸ナトリウム)に基づくワクチンアジュバント
当該例1に記載のポリマー10%を含有する水中の分散は、十分な機械的攪拌により調製される。当該粘度は、不活性なイオン化物質(塩)(例えば、塩化ナトリウム)又は免疫賦活剤物質(例えば、グルコン酸マンガン)を添加することにより調製されてもよい。このすぐに使用できるゲルは、必要な濃度で検討中の抗原性媒質中で再分散させてもよい。水中油滴分散を安定化させることを目的とする補助的な界面活性剤の当該ゲルへの添加もまた行われてよい。
【0082】
例3:エマルション重合により得られるポリ(アクリル酸ナトリウム)を含むワクチン
ワクチンは、例2に記載の製剤15%が添加される、抗原性の媒質85%で構成される。他の免疫賦活剤、例えば、サポニン、動物及び/又は植物及び/又は鉱物及び/又は合成油、界面活性剤、水酸化アルミニウム、レシチン、並びにレシチン誘導体などの添加が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理的に許容される水溶液中に少なくとも一つの逆ラテックス又は前記逆ラテックスの微粒化により得られるポリマーの粉末を分散させることによりアジュバント組成物を調製するステップa);
ワクチン組成物を形成することを目的とする抗原性の媒質にステップa)で得られる当該組成物を混合するステップb)を含むワクチンの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワクチンの製造方法であって、前記少なくとも一つの逆ラテックスが、全体的に又は部分的に加塩された(salifie)アクリル酸ホモポリマー、部分的に又は全体的に加塩されたメタクリル酸ホモポリマー、アクリル酸/2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸共重合体、アクリルアミド/2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸共重合体、及び2-メチル-[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸/(2-ヒドロキシエチル)アクリレート共重合体から構成される群より選択される少なくとも一つの分岐又は架橋されたアニオン性高分子電解質を含有することを特徴とする製造方法。
【請求項3】
請求項1及び2の何れかに記載のワクチンの製造方法であって、逆ラテックスを生成する逆エマルション重合により得られる当該分岐又は架橋されたアニオン性高分子電解質が全体的又は部分的に加塩されたアクリル酸ホモポリマーであることを特徴とする製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のワクチンの製造方法であって、ステップa)で少なくとも一つの免疫賦活剤物質が添加されることを特徴とする製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のワクチンの製造方法であって、10〜20%のステップa)で得られる製剤と80〜90%の抗原性の媒質とを混合するステップを少なくとも含む製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のワクチンの製造方法であって、さらに、ステップb)で、サポニン、動物及び/又は植物及び/又は鉱物及び/又は合成油、界面活性剤、水酸化アルミニウム、レシチン並びにレシチン誘導体から選択される少なくとも一つの免疫賦活剤を添加するステップを含む製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の方法のステップa)に従って得られるアジュバント組成物のワクチン組成物を製造するための使用。
【請求項8】
少なくとも一つの逆ラテックス又は前記逆ラテックスの微粒化により得られるポリマーの粉末のワクチンを製造するための使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−500772(P2011−500772A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530515(P2010−530515)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051807
【国際公開番号】WO2009/053601
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(398057293)ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック (27)
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
【Fターム(参考)】