説明

少なくとも1つのハロゲン化ポリマーブロックを含むブロックコポリマーを調製するための水性分散液におけるフリーラジカル重合方法

ブロックコポリマーの第1のブロックを合成に、分子ヨウ素と、水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤とを用いて、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための、水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年7月5日に出願された米国仮特許出願第60/818276号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための、水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フリーラジカル重合は、必要な実験条件を最もゆるくすることができ、なおかつ最も多岐にわたるモノマーを利用可能な連鎖重合のメカニズムであるが、このプロセスにリビング重合の特徴をもたせるという観点に立つと、長年にわたって未解決の大きな問題がある。従来のフリーラジカル重合では、フリーラジカルの結合および/または(鎖を成長させる)不均化による不可逆的停止反応の決定的な重要性が、主な制約の原因となっている。成長鎖が開始されて伸びた後、新たな鎖の開始と平行してランダムかつ不可逆的に停止される。すべてのポリマー鎖が不活性化してしまうと重合は停止されるが、これらのポリマー鎖の長さは揃っておらず、予測も不能である。したがって、この手法を用いても、ポリマーの分子量、分子量分布、鎖末端の性質ならびに、多くの場合、分子構造を左右できる可能性はわずかしかない。
【0004】
近年、開始反応や伸長反応に比して不可逆的停止反応の相対的な重要性をできるだけ低くする新規なフリーラジカル重合法を開発しようという有意義な試みがなされて成功している。これらの手法はコントロールドフリーラジカル重合と呼ばれる。この開発された手法に共通する特徴として、制御剤(X)を用いて成長鎖のフリーラジカルをドーマント種(P−X)へと一時的に転化させる、すなわち、活性種(P)と平衡状態にさせることがある。
最もよく知られた方法として、ニトロキシドによって制御されるフリーラジカル重合(ニトロキシドを介する重合またはNMP)、原子移動(原子移動ラジカル重合またはATRP)、付加・脱離による連鎖移動(可逆的付加・脱離連鎖移動重合またはRAFT/MADIX)、ヨウ素移動(ヨウ素移動重合またはITP)をあげることができ、これらにおいて用いられる制御剤はそれぞれ、ニトロキシドラジカル、金属錯体共存下での活性化ハロゲン化物、ジチオカルボニル化合物、ヨウ素化された有機分子を含む。
これらの方法は、溶液重合およびバルク重合の場合は研究がうまくいっているが、工業的に広く用いられる水性分散液における重合については、ほとんどの研究で対象とされることがなかった。
【0005】
こうした中、特許出願EP−A−0 947 527号明細書には、ITPまたはATRPプロセスによる水性ブロックコポリマーの合成が開示されている。この特許出願に記載されているITPプロセスで用いられる特定のヨウ素移動剤ならびに、ATRPプロセス用の活性化ハロゲン化物および金属錯体には、高価な製品である、調製ならびに取り扱いが難しい、通常は不安定であるといった欠点がある。
さらに最近になって開発されたもうひとつの手法に、制御剤として分子ヨウ素を用いる逆ヨウ素移動(逆ヨウ素移動重合またはRITP)の手法がある。たとえば、特許出願国際公開第03/097704号パンフレットには、このタイプのフリーラジカル重合の制御されたプロセスが開示されており、これによれば、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーを、少なくとも1種のフリーラジカル発生剤および分子ヨウ素の共存下にて重合する。
RITP重合のうち、分子ヨウ素の1つの分子が2つの重合鎖を制御する特定の条件では、ポリマー転化率100%の場合に想定した平均分子量(Mn)が、以下の式1によりモノマー質量とヨウ素の初期モル数の2倍(nI2、initial)との比率によって制御される。式中、MA-Iは鎖末端の分子量である。
n=(モノマー質量)/(2×nI2、initial)+MA-I (式1)
【0006】
国際公開第03/097704号パンフレットの明細書には、水性懸濁液中での塩化ビニルのホモ重合について説明されてはいるが、対象としているプロセスでは平均実験分子量(20000)が平均理論分子量(変換の度合いを考慮して想定される分子量)(8700)に極めて近いポリマーを利用できるようにはなっていない。それどころか、実験分子量と理論分子量との比率が2.29すなわち、極めて良好な制御を示す値である1から大きく外れている。よって、フリーラジカル重合の最適な制御には至っていない。国際公開第03/097704号パンフレットには、分子量を最適に制御した状態で水性分散液中にて少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーをどのようにして調製するかについても、何ら言及されていない。
このように、分子量の最適な制御を特徴とするフリーラジカル重合によって、かかるブロックコポリマーを水性分散液中で調製するためのプロセスを開発することに依然として需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための、水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合の方法を提供することにあり、この方法を用いると、従来技術の方法と比較した場合に、その利点を保ちつつ、重合を一層よい形で制御することができ、ひいては得られるブロックコポリマーの平均分子量を一層よい形で制御することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のことから、本発明は、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に、分子ヨウ素と水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤とを用いて、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための、水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合の方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「ブロックコポリマー」という用語は、同一モノマーまたは異なるモノマーで形成される多かれ少なかれ長さのある配列同士の結合が観察されるコポリマーを示すことを意図したものである。
同一のモノマーで形成される多かれ少なかれ長さのある配列同士の結合のブロックコポリマーの一例として、以下のスキームが特に、モノマーAからなる第1のブロックとモノマーBからなる第2のブロックの2つのブロックを含むこのようなコポリマーの例を示している。AAAAAAAABBBBBBBB。
しかしながら、ブロックのうちの少なくとも1つが、このブロックをランダム構造に配置されたコポリマー、交互構造に配置されたコポリマーあるいは、グラジエント構造に配置されたコポリマーであるように配置できる、異なるモノマーで形成される多かれ少なかれ長さのある配列同士の結合によって構成されるものであってもよい。
【0010】
「ランダム構造に配置されたコポリマー」という用語は、鎖全体のモノマーの分布がランダムで、その割合が鎖全体で統計的に同じであるコポリマーを示すことを意図したものである。一例として、以下のスキームが特に、モノマーCおよびDを含むこのようなコポリマーの例を示している。CCDCCCDDCDDDDCCD。
「交互構造に配置されたコポリマー」という用語は、コポリマーをなすモノマーが鎖全体で交互に結合されているコポリマーを示すことを意図したものである。一例として、以下のスキームが特に、モノマーCおよびDを含むこのようなコポリマーの例を示している。CDCDCDCDCDCDCD。
「グラジエント構造に配置されたコポリマー」という用語は、あるモノマーの他に対する相対的な割合が鎖全体で増加または減少する少なくとも2種のモノマーからなるコポリマーを示すことを意図したものである。一例として、以下のスキームが特に、モノマーCおよびDを含むこのようなコポリマーの例を示している。CCCDCCDDCDDDDD。
【0011】
本発明による方法によって調製されるブロックコポリマーは、好都合なように、2つまたは3つ以上のブロックを含むものであってもよい。このため、これは2ブロックコポリマー、3ブロックコポリマーまたは4ブロック以上からなるコポリマーであり得る。好ましくは、本発明の方法によって調製されるブロックコポリマーは、2ブロックコポリマーであり、言葉を変えると、2つのブロックを含むコポリマーである。
本発明による方法は、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための方法である。
「少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーであるブロック」とは、ブロックコポリマーの1つまたは2つ以上のブロックが、ハロゲン化ポリマーのブロックであることを意味する。
ハロゲン化ポリマーとは、少なくとも1種のハロゲン化ビニルモノマーの重合によって得られるポリマーを意味する。
【0012】
水性分散液における重合という表現は、重合プロセスが水の中で行われることを意味する。このプロセスは、少なくとも1種の界面活性剤の存在下でなされてもよいし、その非存在下でなされてもよい。好ましくは、このプロセスは、少なくとも1種の界面活性剤の存在下でなされる。
少なくとも1種の界面活性剤という表現は、1種または複数種の界面活性剤の存在下で重合のプロセスを実施可能であることを意味する。
界面活性剤という表現は、構造に1つまたは複数の親水性部分と1つまたは複数の疎水性部分とを有する化合物を意味する。この親水性/疎水性バランスによって、界面活性剤は、存在する水性相と有機相を確実に分散および安定化できる界面活性を有するようになる。
界面活性剤としては、保護コロイドまたは懸濁化剤とも呼ばれる分散助剤(以下、まとめて分散助剤とする)ならびに、乳化剤にも言及することができる。
【0013】
水性分散液における重合という表現は、水性懸濁液におけるフリーラジカル重合、水性微小懸濁液におけるフリーラジカル重合、水性エマルションにおけるフリーラジカル重合、水性ミニエマルションにおけるフリーラジカル重合を意味する。
水性懸濁液におけるフリーラジカル重合という表現は、フリーラジカル重合のプロセスが、界面活性剤としての分散助剤と油溶性フリーラジカル発生剤との存在下で水性媒体中にて行われることを意味する。
水性微小懸濁液における重合という表現または均質化水性分散液における重合という表現は、油溶性フリーラジカル発生剤が用いられ、強い機械的攪拌によって液滴モノマーのエマルションが生成され、界面活性剤としての乳化剤が存在することを特徴とするフリーラジカル重合のプロセスを意味する。
【0014】
水性エマルションにおけるフリーラジカル重合という表現は、フリーラジカル重合のプロセスが、界面活性剤としての乳化剤と水溶性フリーラジカル発生剤との存在下で水性媒体中にて行われることを意味する。水性エマルションにおける重合はまた、最初からエマルションにおける重合を指すこともある。
水性ミニエマルションにおける重合は、油溶性フリーラジカル発生剤および/または水溶性フリーラジカル発生剤が疎水性作用剤と一緒に用いられ、強い機械的攪拌によってモノマーの滴のエマルションが生成され、界面活性剤としての乳化剤および任意に分散助剤が存在することを特徴とするフリーラジカル重合のプロセスを意味する。
【0015】
分散助剤として言及できる例として、部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、ゼラチン、スターチ、ポリビニルピロリジノン、酢酸ビニルと無水マレイン酸とのコポリマー、セルロースエーテルの水溶性誘導体、たとえば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースがあげられる。
分散助剤は、好ましくはセルロースエーテルの水溶性誘導体である。このうち、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。
【0016】
乳化剤には、アニオン系乳化剤、非イオン系乳化剤またはカチオン系乳化剤が可能である。
アニオン系乳化剤として、ラウリル硫酸ナトリウムなどの硫酸アルキル、純粋な形態またはパラフィンスルホン酸塩、アルキルアリールモノスルホン酸塩またはアルキルアリールジスルホン酸塩とも呼ばれることもあるC12〜C20アルキルスルホン酸塩の混合物の形態で、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよび1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸アルキル、ジエチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムおよびジヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホコハク酸ジアルキルに、非限定的に言及することができる。
【0017】
非イオン系乳化剤として、アルキル−またはアルキルアリールエトキシ誘導体、アルキル−またはアルキルアリールプロポキシ誘導体および糖エーテルまたはエステルに、非限定的に言及することができる。
カチオン系乳化剤として、エトキシル化アルキルアミンおよびプロポキシル化アルキルアミンに言及することができる。
乳化剤は、任意に1種または複数の非イオン系乳化剤との混合物で、好ましくはアニオン系乳化剤である。アニオン系乳化剤が特に好ましい。
【0018】
疎水性作用剤には、ヘキサデカン、シラン、シロキサン、ペルフルオロアルカンなどのアルカンあるいは、疎水性である限りにおいて一般に顔料、コモノマー、移動剤、開始剤または可塑剤として用いられる化合物が可能である。
【0019】
本発明による方法は、分子ヨウ素と水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤とが、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に用いられるようなものである。
【0020】
よって、本発明による方法は、好都合なように、ブロックコポリマーの第1のブロックが、
(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)と、
(B)ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤と、
(C)分子ヨウ素と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、を用いて調製され、
(1)化合物(A)、(B)、(C)、(D)の各々の少なくとも一部をリアクタに導入し、
(2)化合物(A)、(B)、(C)、(D)の各々の残りを導入しながらリアクタの内容物を反応させ、
(3)ブロックコポリマーの第一のブロックを構成するポリマーを含む水性分散液を得る
ステップを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明によるブロックコポリマーを調製するための方法では、ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤を使用する。
ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤という表現は、重合プロセスで、ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される1種または複数のフリーラジカル発生剤を使用できることを意味する。
本明細書の残りの部分において、単数形または複数形で用いられる「フリーラジカル発生剤」という表現は、特に明記しないかぎり、1種または複数のフリーラジカル発生剤を意味するものと理解されたい。
【0022】
本発明による方法では、好ましくは、ジアゾ化合物とパーオキサイドとから選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤を使用する。
本発明による方法では、特に好ましくは、単一の1種類のフリーラジカル発生剤を使用する。
フリーラジカル発生剤は油溶性であっても水溶性であってもよい。
油溶性フリーラジカル発生剤という表現は、水性懸濁液、微小懸濁液または水性ミニエマルションにおける重合に用いられるものなど、モノマーに可溶なフリーラジカル発生剤を意味する。
水溶性フリーラジカル発生剤という表現は、水性エマルションまたは水性ミニエマルションでの重合に用いられるものなど、水に可溶なフリーラジカル発生剤を意味する。
水溶性フリーラジカル発生剤は、下記に定義するような酸化剤であってもよい。
【0023】
油溶性ジアゾ化合物の言及できる例として、
・2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、
・2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、
・フェニルエチル)アゾジフェニルメタン、
・2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
・ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラート、
・ジエチル2,2’−アゾビスイソブチラート、
・1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、
・2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、
・2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、
・2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル、
・2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)があげられる。
ジメチル2,2’−アゾビスイソブチラートおよびジエチル2,2’−アゾビスイソブチラートが、本発明の方法では特に好ましい油溶性フリーラジカル発生剤であるが、塩化ビニリデンのポリマーまたはコポリマー(あらゆる種類)の合成に関する他のあらゆる方法でも同様である。
【0024】
水溶性ジアゾ化合物の言及できる例として、
・2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル,
・4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草)酸、
・アンモニウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)、
・ナトリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)、
・カリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)、
・2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、
・2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)塩酸塩、
・2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、
・2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、
・2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル)プロピオンアミド]、
・2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、
・2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物があげられる。
4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草)酸、アンモニウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)、ナトリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)およびカリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)が好ましい。
【0025】
油溶性パーオキサイドの言及できる例として、
・ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジデカノイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、
・サクシノイルパーオキサイド、
・クミルヒドロパーオキサイドおよびtert−アミルヒドロパーオキサイドなどの有機ヒドロパーオキサイド、
・ジエチルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ[2−エチルヘキシル]パーオキシジカーボネート、ジ[4−tert−ブチル]シクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシジカーボネート、
・tert−アミルパーピバレート、tert−ブチルパーピバレート、tert−アミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエートおよびクミルパーオキシネオデカノエートなどのパーエステルがあげられる。
【0026】
水溶性パーオキサイドに言及できる例として、
・過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムなどの無機パーオキサイド、
・tert−ブチルヒドロパーオキサイド、
・過酸化水素、
・過ホウ酸塩があげられる。
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムおよび過硫酸アンモニウムが好ましく、過酸化水素も好ましい。
【0027】
本発明による方法へのフリーラジカル発生剤(B)の導入方法については、可変にすることができる。
したがって、(B)が単一のフリーラジカル発生剤からなる場合、フリーラジカル発生剤全体をステップ(1)で導入してもよいし、一部をステップ(1)で導入し、残りをステップ(2)で導入してもよい。ステップ(2)での導入は、好ましくは連続的に行う。
(B)が少なくとも2種のフリーラジカル発生剤からなる場合、一部分のフリーラジカル発生剤をステップ(1)で導入し、他をステップ(2)で、好ましくは連続的に導入することができる。
(B)が少なくとも2種のフリーラジカル発生剤の混合物からなる特定の場合では、混合物全体をステップ(1)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0028】
本発明による方法では、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成用に(C)分子ヨウ素を用いる。使用する分子ヨウ素は、分子ヨウ素自体の形をとってもよいし、その前駆物質の形をとってもよい。
前駆物質という表現は、重合媒体中で分子ヨウ素を形成できる化合物を意味する。このタイプの前駆物質に言及できる例として、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化カリウムなどのアルカリ金属のヨウ化物があげられる。前駆物質については、重合媒体に酸化剤(D’)を加えることで、分子ヨウ素に変換可能である。この目的で使用可能な酸化剤(D’)は、以下に詳細を示す酸化剤(D)の定義に合ったものである。
【0029】
(A)のモル数に対する分子ヨウ素(C)のモル数は、好都合なように、少なくとも2.5×10-5、好ましくは少なくとも5×10-5、特に好ましくは少なくとも10-4である。さらに、(A)のモル数に対する分子ヨウ素(C)のモル数は、好都合なように、最大で10-1、好ましくは最大で10-2である。
【0030】
ステップ(1)でリアクタに導入される分子ヨウ素(C)またはその前駆物質と酸化剤(D’)とのモル比は、好都合なように、少なくとも50%である。
分子ヨウ素(C)またはその前駆物質ならびに酸化剤(D’)が、ステップ(1)で、すなわち、ステップ(1)の初めからまたはステップ(1)の間に、リアクタに100%導入されるのが好ましい。これらについては、ステップ(1)で一度に導入してもよいし、ステップ(2)の開始前に連続注入してもよい。
【0031】
本発明による方法では、(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤を使用するが、そのうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい。
少なくとも1種の酸化剤(D)という表現は、重合のプロセスで、1種または複数の酸化剤(D)を使用できることを意味する。
本明細書の残りの部分において、単数形または複数形で用いられる酸化剤という用語は、特に明記しないかぎり、1種または複数の酸化剤である。
【0032】
酸化剤(D)という表現は、ヨウ化物イオンを酸化して分子ヨウ素にすることができる化合物を意味する。言葉を変えると、ヨウ化物イオンが酸化されて分子ヨウ素になり、酸化剤が還元されてその還元形態になるような形でヨウ化物イオンとの間で酸化/還元反応を生じることができるため、酸化還元電位がI2/I-カップルの酸化還元電位(0.53)よりも大きい化合物を意味する。
本発明による酸化剤(D)の水溶性は、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも20g/l、特に好ましくは少なくとも30g/lである。
【0033】
水溶性が少なくとも10g/lである酸化剤(D)のうち、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、MnO4-、ClO-、ClO2-、ClO3-イオンを生成する化合物、マンガン(III)の塩および鉄(III)の塩、たとえば、クエン酸鉄、クエン酸鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、アセチルアセトン酸鉄、臭化第二鉄(ferric bromide)、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄などに特に言及することができる。
過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムおよび過酸化水素が好ましい。
【0034】
少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)という表現は、酸化剤(D)のうちの少なくとも1種がフリーラジカル発生剤(B)のうちの1種、特に水溶性フリーラジカル発生剤(B)のうちの1種であることを意味するか、酸化剤のいずれもフリーラジカル発生剤(B)のうちの1種ではなく、特に水溶性フリーラジカル発生剤(B)のうちの1種ではないことを意味する。
【0035】
本発明の方法によれば、水性相の酸pHを低下させて反応の収率を改善すると好都合である。
本発明による方法への酸化剤(D)の導入方法については、可変にすることができる。(D)全体をステップ(1)で導入してもよいし、一部をステップ(1)で導入し、残りをステップ(2)で導入してもよい。導入は、好ましくは連続的に行う。ステップ(2)での導入は、好ましくは連続的に行う。
好ましくは、(D)全体をステップ(1)の開始から転化度が70%に達するステップ(2)の時点までの間にリアクタに導入する。
【0036】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の油溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちのいずれも(B)のうちの1つではない)と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性懸濁液における重合の方法または水性微小懸濁液における重合の方法のいずれかであって、上述したステップ(1)〜(3)を含み、好ましくは水性懸濁液における重合の方法である。
本発明による方法の文脈において上記にて一般に定義した特徴は、本発明による方法の第1の好ましい実施形態に適用される。
【0037】
フリーラジカル発生剤が油溶性である本発明による方法の第1の好ましい実施形態の特定の場合では、この方法で、(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤を使用する。
本発明による方法の第1の好ましい実施形態の特定の場合では、酸化剤のいずれもフリーラジカル発生剤(B)のうちの1つではないのが好都合である。
本発明による方法の第1の好ましい実施形態の特定の場合では、好ましくは単一の1種類の油溶性フリーラジカル発生剤(B)を使用する。
【0038】
この第1の好ましい実施形態によれば、好ましくは、酸化剤(D)として単一の1種類の酸化剤が用いられる。好ましい酸化剤(D)は過酸化水素である。
この第1の実施形態によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、添加される酸化剤(D’)は、好ましくは過酸化水素である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))の総モル数は、好ましくは少なくとも0.5、特に好ましくは少なくとも1.5、極めて特に好ましくは少なくとも2、非常に好ましくは少なくとも3である。少なくとも4の比が特に好都合である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))の総モル数は、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で9である。
【0039】
第2の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
本発明による方法の文脈において上記にて一般に定義した特徴は、本発明による方法の第2の好ましい実施形態に適用される。
【0040】
本発明による方法の第2の好ましい実施形態によれば、酸化剤(D)のうちの少なくとも1種が水溶性フリーラジカル発生剤(B)のうちの少なくとも1つであってもよく、酸化剤(D)のうちの少なくとも1種が水溶性フリーラジカル発生剤(B)のうちの1つであると好ましい。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))およびフリーラジカル発生剤(B)の総モル数は、好ましくは少なくとも1.5、特に好ましくは少なくとも2、極めて特に好ましくは少なくとも2.5、非常に好ましくは少なくとも3である。少なくとも4の比が特に好都合である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))およびフリーラジカル発生剤(B)の総モル数は、好ましくは最大で11であり、より好ましくは最大で10である。
【0041】
本発明による方法の第2の好ましい実施形態の第1の特に好ましい変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つである1種の酸化剤と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
【0042】
第1の特に好ましい変形例の第1の二次変形例(subvariant)によれば、本発明の方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)である1種の酸化剤と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
フリーラジカル発生剤および酸化剤は、好ましくは、過硫酸ナトリウムと、過硫酸アンモニウムと、過硫酸カリウムと、から選択される。
【0043】
この第1の二次変形例によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、この酸化剤(D’)は、フリーラジカル発生剤(B)および酸化剤(D)であってもよいし、(B)以外の酸化剤(D’)、たとえば過酸化水素であってもよい。酸化剤(D’)は、好ましくはフリーラジカル発生剤(B)および酸化剤(D)である。
【0044】
第1の特に好ましい変形例の第2の二次変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される2種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つである1種の酸化剤と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
フリーラジカル発生剤のうちの一方は、好ましくは、アンモニウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)と、ナトリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)と、カリウム4,4’−アゾビス(4−シアノバレラート)と、から選択され、酸化剤(D)でもある他方は過酸化水素である。
【0045】
この第2の二次変形例によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、この酸化剤(D’)は、好ましくは酸化剤(D)であり、このため特に好ましくは過酸化水素である。
第1の二次変形例のほうが、第2の二次変形例よりも好ましい。
【0046】
本発明による方法の第2の好ましい実施形態の第2の好ましい変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、各々が(B)のうちの1つである2種の酸化剤と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
【0047】
この本発明による方法の第2の好ましい実施形態の第2の変形例によれば、方法では、過硫酸ナトリウムと、過硫酸アンモニウムと、過硫酸カリウムと、から選択される過硫酸塩を使用し、かつ、過酸化水素を使用する。
この第2の変形例によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、この酸化剤(D’)は、2種の酸化剤(D)のうちの一方であってもよいし、2種の酸化剤(D)以外の酸化剤であってもよい。酸化剤(D’)は、好ましくは2種の酸化剤(D)のうちの一方であり、このため特に好ましくは上述した過硫酸塩または過酸化水素のうちの1つである。
【0048】
本発明による方法の第2の好ましい実施形態の第3の変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つではない1種の酸化剤と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性エマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
【0049】
第3の好ましい実施形態によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の油溶性フリーラジカル発生剤および/または水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性ミニエマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
本発明による方法の文脈において上記にて一般に定義した特徴は、本発明による方法の第3の好ましい実施形態に適用可能である。
【0050】
第3の好ましい実施形態の第1の好ましい変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の油溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちのいずれも(B)のうちの1つではない)と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性ミニエマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
【0051】
フリーラジカル発生剤が油溶性であるこの第1の好ましい変形例によれば、方法では、(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤を使用する。
同じ変形例によれば、酸化剤のうちのいずれもフリーラジカル発生剤(B)のうちの1つではないのが好都合である。
同じ変形例によれば、好ましくは単一の1種類の油溶性フリーラジカル発生剤(B)を使用する。さらに好ましくは、酸化剤(D)として単一の種類の酸化剤が用いられる。好ましい酸化剤(D)は過酸化水素である。
【0052】
第3の実施形態のこの第1の好ましい変形例によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、添加される酸化剤(D’)は、好ましくは過酸化水素である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))の総モル数は、好ましくは少なくとも0.5、特に好ましくは少なくとも1.5、極めて特に好ましくは少なくとも2、非常に好ましくは少なくとも3である。少なくとも4の比が特に好都合である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))の総モル数は、好ましくは最大で10、より好ましくは最大で9である。
【0053】
第3の好ましい実施形態の第2の変形例によれば、本発明による方法は、(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1つが(B)のうちの1つである)と、
を用いて、ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するための、水性ミニエマルションにおける重合の方法であって、上述したステップ(1)〜(3)を含む方法である。
【0054】
フリーラジカル発生剤が水溶性であるこの第2の変形例によれば、方法では、(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1つが(B)のうちの1つである)を使用する。
同じ変形例によれば、好ましくは単一の1種類の水溶性フリーラジカル発生剤(B)を使用する。さらに好ましくは、酸化剤(D)として単一の1種類の酸化剤が用いられる。水溶性フリーラジカル発生剤および酸化剤(D)は、特に好ましくは同じ化合物である。酸化剤(D)およびフリーラジカル発生剤(B)は、特に好ましくは、過硫酸ナトリウムと、過硫酸カリウムと、過硫酸アンモニウムと、から選択される。
【0055】
この第3の実施形態の第2の変形例によれば、分子ヨウ素(C)が前駆物質の形で用いられる例示的な場合では、重合媒体に酸化剤(D’)を加えてヨウ素を生成する必要があり、添加される酸化剤(D’)は、好ましくはフリーラジカル発生剤(B)および酸化剤(D)である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))およびフリーラジカル発生剤(B)の総モル数は、好ましくは少なくとも1.5、特に好ましくは少なくとも2、極めて特に好ましくは少なくとも2.5、非常に好ましくは少なくとも3である。少なくとも4の比が特に好都合である。
分子ヨウ素のモル数に対する酸化剤(酸化剤(D)および任意に酸化剤(D’))およびフリーラジカル発生剤(B)の総モル数は、好ましくは最大で11であり、より好ましくは最大で10である。
【0056】
第1、第2および第3の実施形態の中では、第2の実施形態が特に好ましい。第2の実施形態の変形例の中では、分子ヨウ素の使用を伴う第1の特に好ましい変形例の第1の二次変形例が特に好ましい。
【0057】
界面活性剤を用いる場合は、これが単一の界面活性剤からなるものであれば、その全体をステップ(1)で導入してもよいし、一部をステップ(1)で導入し、残りをステップ(2)で導入してもよい。ステップ(2)での導入は、好ましくは連続的に行う。
少なくとも2種の界面活性剤を用いる場合は、一部分の界面活性剤をステップ(1)で導入し、他をステップ(2)で、好ましくは連続的に導入することができる。
少なくとも2種の界面活性剤の混合物を用いる特定の場合では、混合物全体をステップ(1)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0058】
本発明によるブロックコポリマーを調製するための方法では、第1のブロックのために、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)を好都合なように、用いる。
【0059】
少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられる)という表現は、重合のプロセスで1種または複数のエチレン性不飽和モノマーを使用でき、2種以上のモノマーを用いる場合は、そのうちの1つがメインモノマーになることを意味する。
メインモノマーという表現は、モノマー混合物の少なくとも100/n質量%(これは、得られるポリマーのモノマー単位の少なくとも100/n質量%を生成することになる)の割合で存在するモノマーを意味し、nはモノマー混合物中のモノマー数である。
【0060】
本発明の方法の第1の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、から選択される。
【0061】
スチレンの誘導体のうち、p−tert−ブチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−ブロモスチレン、p−クロロスチレン、m−(1−クロロエチル)スチレン、p−フルオロスチレン、p−トリフルオロメチルスチレン、m−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロスチレン、p−アセトキシスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−エポキシスチレン、p−アミノスチレン、p−スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸のアルカリ金属塩、p−クロロメチルスチレン、パーフルオロオクチルエチレンオキシメチルスチレン、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドおよび3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナートについて言及できる。スチレンが特に好ましい。
【0062】
アクリル酸の誘導体という表現は、アクリル酸の塩、たとえば、アルカリ金属塩、トリメチルシリル、tert−ブチル、テトラヒドロピラニル、1−エトキシエチルまたはベンジル基で保護されたアクリル酸、アルキルアクリレート、アクリロニトリル、アクリルアミドおよびその誘導体を意味する。
アルキルアクリレートのうち、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、グリシジルアクリレート、ベンジルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレート、2−トリメチルアミノエチルクロリドアクリレート、3−スルホプロピルアクリレートのカリウム塩、フルオロアルキルアクリレート、たとえば、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシルアクリレート、アクリル酸アリル、アクリル酸ビニル、糖およびヌクレオシド、保護または未保護、たとえば、2−β−D−グルコピラノシルオキシエチルアクリレート、n−ブチルα−フルオロアクリレート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチルアクリレート、カルボキシエチルアクリレート、テトラヒドロピラニルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、アクリレートマクロモノマー、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)アクリレートおよびポリ(ジメチルシロキサン)アクリレートについて言及できる。ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが特に好ましく、n−ブチルアクリレートがなお一層好ましい。
【0063】
アクリルアミドの誘導体のうち、N,N−ジメチルアクリルアミド、tert−ブチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−アセトアミドアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドのメチルエーテル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩のうちの1つ(たとえば、3−アクリルアミド−3−メチル酪酸ナトリウムといったナトリウム塩など)、N−イソプロピルアクリルアミドに言及することができる。
メタクリル酸の誘導体という表現は、メタクリル酸の塩、たとえば、アルカリ金属塩、トリメチルシリル、tert−ブチル、テトラヒドロピラニル、1−エトキシエチルまたはベンジル基で保護されたメタクリル酸、アルキルメタクリレート、メタクリロニトリル、メタクリルアミドおよびその誘導体を意味する。
【0064】
アルキルメタクリレートのうち、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、ボルニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、フルオロアルキルメタクリレート、たとえば、1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロデシルメタクリレート、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニル、テトラヒドロピラニルメタクリレート、2−(N−モルホリノ)エチルメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2−トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド、2−アミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、3−スルホプロピルメタクリレートのカリウム塩、糖およびヌクレオシド、保護または未保護、たとえば、5’−メタクリロウリジン(methacrylouridine)、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチルメタクリレート、N,N−ジメチル−N−メタクリルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニウムベタイン、アセトアセトキシエチルメタクリレート、カルボキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、メタクリレートマクロモノマー、たとえば、ポリ(エチレンオキシド)メタクリレートおよびポリ(ジメチルシロキサン)メタクリレートについて言及できる。メタクリル酸メチル、ブチルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルメタクリレートが特に好ましい。
【0065】
メタクリルアミド誘導体のうち、N,N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、[3−(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリドおよびメタクリロイルアミノプロピルジメチルアンモニウムスルホベタインに言及することができる。
ジエンモノマーのうち、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンおよびイソブテンに言及することができる。ブタジエンおよびクロロプレンが特に好ましい。
ビニルエステルのうち、酢酸ビニル、ビニルトリフルオロアセテート、バーサティック酸ビニル、tert−デカン酸のビニルエステル(ベオバ(VeoVa)10)、ネオノナン酸のビニルエステル(ベオバ(VeoVa)9)およびピバル酸ビニルに言及することができる。酢酸ビニルが特に好ましい。
【0066】
ビニルエーテルのうち、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、2−クロロエチルプロペニルエーテル、3−ブロモ−n−プロピルビニルエーテル、4−クロロ−n−ブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、n−ブチルジエトキシビニルエーテル、n−ヘキシルエトキシビニルエーテル、メチルジプロピレングリコールビニルエーテル、シクロヘキサンジエタノールモノビニルエーテルおよび2−エチル−ヘキシルエトキシビニルエーテルに言及することができる。
【0067】
ピリジンのビニル誘導体のうち、4−ビニル−ピリジン、3−ビニルピリジン、2−ビニルピリジンおよび1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタインに言及することができる。
ビニルスルホン酸の誘導体およびビニルホスホン酸の誘導体のうち、その塩ならびにそのエステルに言及することができる。
N−ビニルモノマーのうち、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルカルバメート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリジノンおよびN−ビニルイミダゾールに言及することができる。
【0068】
以上のことから、この第1の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、ジエン、ビニルエステル、ビニルエーテル、ピリジンのビニル誘導体、ビニルスルホン酸およびその誘導体、ビニルホスホン酸およびその誘導体、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルカルバメート、N−ビニルカプロラクタムまたはN−ビニルピロリジノンから選択される。
【0069】
さらにメインモノマーについて、これと共重合可能な1種または複数のモノマーを第1のブロックの調製に使用してもよい。共重合可能なモノマーとして、上記にてメインモノマーとして列挙したモノマーに非限定的に言及することができるが、以下のタイプすなわち、マレイミド、マレイン酸塩、フマル酸塩およびアリル化合物ならびに、本発明の文脈で定義したもののようなイタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸およびハロゲン化ビニルモノマーにも非限定的に言及することができる。
【0070】
この第1の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、より好ましくは、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、メタクリル酸およびその誘導体、ジエン、ビニルエステルおよびビニルエーテルから選択される。
この第1の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、最も好ましくは、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体およびメタクリル酸およびその誘導体から選択される。
【0071】
この第1の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーを、アクリル酸およびその誘導体およびメタクリル酸およびその誘導体から選択した場合に、良好な結果が得られている。
本発明の方法の第2の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーをハロゲン化ビニルモノマーから選択する。
ハロゲン化ビニルモノマーは、塩素化ビニルモノマーおよびフッ素化ビニルモノマーから好都合なように、選択される。
【0072】
フッ素化ビニルモノマーという表現は、脂肪族であり、唯一のヘテロ原子が1つまたは複数のフッ素原子であり、任意にさらに、1つまたは複数の塩素原子であるモノエチレン性不飽和フッ素化モノマーを意味する。言及できるフッ素化ビニルモノマーの例としては、クロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロパン、過フッ素化ビニルモノマー、たとえば、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン、塩素原子を有さず、フッ素原子数が1であるフッ素化ビニルモノマー、たとえばフッ化アリルおよびフッ化ビニル、さらには、塩素原子を有さず、フッ素原子数が2であるフッ素化ビニルモノマー、特にフッ化ビニリデンがあげられる。
【0073】
フッ素化モノマーに水素原子が含まれない場合、これはパー(ハロ)フルオロモノマーと呼ばれる。
好適なパー(ハロ)フルオロモノマーの非限定的な例は、とりわけ、
・テトラフルオロエチレン(TFE)およびヘキサフルオロプロペン(HFP)などのC2〜C8パーフルオロオレフィン、
・クロロトリフルオロエチレンのようなクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C2〜C6パー(ハロ)フルオロオレフィン、
・一般式CF2=CFORf3(式中、Rf3は、−CF3、−C25、−C37などのC1〜C6パー(ハロ)フルオロアルキルである)を満たすパー(ハロ)フルオロアルキルビニルエーテル、
・一般式CF2=CFOX01(式中、X01は、パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピル基のような1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C12パー(ハロ)フルオロオキシアルキルである)を満たすパー(ハロ)フルオロ−オキシアルキルビニルエーテル、
・一般式CF2=CFOCF2ORf4(式中、Rf4は、−CF3、−C25、−C37などのC1〜C6パー(ハロ)フルオロアルキルあるいは、−C25−O−CF3などの1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6パー(ハロ)フルオロオキシアルキルである)を満たすパー(ハロ)フルオロ−メトキシ−アルキルビニルエーテル、
・パー(ハロ)フルオロジオキソールである。
【0074】
フッ素化モノマーが少なくとも1つの水素原子を含む場合、これは水素含有フッ素化モノマーと呼ばれる。好適な水素含有フッ素化モノマーの非限定的な例は、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンおよびフッ化ビニルである。
フッ素化モノマーまたは水素含有フッ素化モノマーと共重合可能な1種または複数のモノマーを第1のブロックの調製に利用してもよい。
【0075】
以下、コモノマー(CM)という用語は、1種のコモノマーおよび2種またはそれよりも多いコモノマーの両方を包含することを意図するものである。コモノマー(CM)は、とりわけ、水素化(すなわちフッ素原子を含まない)[以下、コモノマー(HCM)]またはフッ素化(すなわち少なくとも1つのフッ素原子を含む)[以下、コモノマー(FCM)]のいずれかが可能である。
好適な水素化コモノマー(HCM)の非限定的な例は、とりわけ、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどのビニルモノマー、メタクリル酸メチル、アクリル酸、メタクリル酸およびヒドロキシエチルアクリレートのようなアクリルモノマーならびに、スチレンおよびp−メチルスチレンのようなスチレンモノマーである。
【0076】
好適なフッ素化コモノマー(FCM)の非限定的な例は、とりわけ、
・ヘキサフルオロプロペン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレンなどのC3〜C8フルオロ−および/またはパーフルオロオレフィン、
・フッ化ビニルなどのC2〜C8水素化モノフルオロオレフィン、
・1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデンおよびトリフルオロエチレン、
・式CH2=CH−Rf10(式中、Rf10は、C1〜C6パーフルオロアルキルである)を満たすパーフルオロアルキルエチレン、
・クロロトリフルオロエチレンのようなクロロ−および/またはブロモ−および/またはヨード−C2〜C6フルオロオレフィン、
・式CF2=CFORf1(式中、Rf1は、−CF3、−C25、−C37などのC1〜C6フルオロ−またはパーフルオロアルキルである)を満たすフルオロアルキルビニルエーテル、
・パーフルオロ−2−プロポキシ−プロピルのような式CF2=CFOX0(式中、X0は、1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C12オキシアルキルまたはC1〜C12(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たすフルオロ−オキシアルキルビニルエーテル、
・式CF2=CFOCF2ORf2(式中、Rf2は、−CF3、−C25、−C37などのC1〜C6フルオロ−またはパーフルオロアルキルであるか、−C25−O−CF3のような1つまたは複数のエーテル基を有するC1〜C6(パー)フルオロオキシアルキルである)を満たすフルオロアルキル−メトキシ−ビニルエーテル、
・フルオロジオキソールである。
【0077】
好ましくは、第1のブロックの調製には、
・TFE;パー(ハロ)フルオロモノマー/水素化コモノマーのモル比30:70から70:30で、任意に、TFEおよび/またはCTFEと水素化コモノマーの総量に対して1種または複数のコモノマーを0.1から30モル%の量で含有する、TFEおよび/またはCTFEとエチレン、プロピレンまたはイソブチレン(好ましくはエチレン)との混合物、
・TFEとパーフルオロアルキルビニルエーテル(perfluoalkylvinylether)(特にパーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル(perfluoroethylevinylether)、パーフルオロプロピルビニルエーテルおよびその混合物)および/またはパー(ハロ)フルオロジオキソールからなる群から選択される少なくとも1つのパー(ハロ)フルオロモノマーとの混合物、
・フッ化ビニリデン(VdF)またはVdFと少なめの量、一般に0.1から15モル%の1種または複数のフッ素化コモノマーとの混合物(1種または複数の水素化コモノマーを任意にさらに含む)が用いられる。
【0078】
塩素化ビニルモノマーという表現は、脂肪族であり、1つまたは複数の塩素原子を唯一のヘテロ原子として有するモノエチレン性不飽和塩素化モノマーを意味する。言及できる塩素化ビニルモノマーの例としては、塩素原子数が1である塩素化ビニルモノマー、塩素原子数が2である塩素化ビニルモノマー、トリクロロエチレン、1,1,3−トリクロロプロペンおよびテトラクロロエチレンがあげられる。
塩素化ビニルモノマーの第1の好ましいファミリは、塩素原子数が1である塩素化ビニルモノマーからなる。塩素原子数が1である塩素化ビニルモノマーの言及できる例は、塩化アリル、塩化クロチル、特に塩化ビニルである。これと共重合可能な1種または複数のモノマーを第1のブロックの調製に利用してもよい。塩化ビニルと共重合可能なモノマーのうち、スチレンなどのスチレンモノマー、n−ブチルアクリレートおよびメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリルモノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル、エチレン、プロピレンおよびブタジエンなどのオレフィンモノマーに、非限定的に言及することができる。酢酸ビニルが特に好ましい。好ましくは、塩化ビニルが、第1のブロックの調製に用いられる唯一のモノマーである。
塩素化ビニルモノマーの第2の好ましいファミリは、塩素原子数が2である塩素化ビニルモノマーからなる。塩素原子数が2である塩素化ビニルモノマーの言及できる例は、1,1−ジクロロプロペン、1,3−ジクロロプロペン、2,3−ジクロロプロペン、特に、塩化ビニリデンである。これと共重合可能な1種または複数のモノマーを第1のブロックの調製に利用してもよい。
【0079】
塩化ビニリデンと共重合可能なモノマーのうち、塩化ビニル、ビニルエステル、たとえば、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリル酸、エステルおよびアミド、メタクリル酸、エステルおよびアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、スチレン誘導体、ブタジエン、オレフィン、たとえば、エチレンおよびプロピレン、イタコン酸および無水マレイン酸に非限定的に言及することができるが、また、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)またはその塩のうちの1つ(たとえばナトリウム塩など)ならびに、酸2−スルホメタクリル酸エチル(2−SEM)またはその塩のうちの1つ(たとえばナトリウムなど)などの共重合可能な界面活性剤などにも非限定的に言及することができる。
【0080】
塩化ビニリデンと共重合可能な好ましいモノマーとしては、塩化ビニルおよび/または無水マレイン酸、イタコン酸および一般式
CH2=CR89
(式中、R8は、水素およびメチル基から選択され、R9は、基−CNおよび基−CO−R10(式中、R10は、基−OH、基−O−R11(式中、R11は、任意に1つまたは複数の−OH基を有する、1から18個の炭素原子を含有する直鎖または分枝状のアルキル基と、2から10個の炭素原子を含有するエポキシアルキル基と、合計で2から10個の炭素原子を含有するアルコキシアルキル基と、から選択される)から選択され、最後にR10はまた、−NR1213基(式中、R12およびR13は同一または異なっており、水素と、任意に1つまたは複数の−OH基を有する、1から10個の炭素原子を含有するアルキル基から選択される)から選択される)から選択される)で表される(メタ)アクリル酸モノマーから選択される少なくとも1つのモノマーがあげられる。
【0081】
塩化ビニリデンと共重合可能な特に好ましいモノマーは、塩化ビニルおよび/または無水マレイン酸、イタコン酸ならびに、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミドおよびN−メチロールアクリルアミドに代表される(メタ)アクリルモノマーから選択される少なくとも1つのモノマーである。
【0082】
本発明の方法の第2の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、塩素化ビニルモノマーから選択され、より好ましくは、塩素原子数が2の塩素化ビニルモノマーから選択される。この第2の変形例によれば、ブロックコポリマーの第1のブロック用のメインモノマーとして用いられるエチレン性不飽和モノマーは、最も好ましくは塩化ビニリデンである。
【0083】
好ましくは、これと共重合可能な1種または複数のモノマーを第1のブロックの調製に利用する。より好ましくは、塩化ビニリデンと、これと共重合可能なモノマーとの混合物を第1のブロックの調製に利用して、第1のブロックに少なくとも50質量%の塩化ビニリデンが含まれるようにする。
第1のブロックに含まれる塩化ビニリデンの量は、第1のブロックに対して50から95質量%の範囲であると都合がよく、好ましくは60から95質量%、特に好ましくは70から95質量%の範囲である。
第1のブロックに含まれる塩化ビニルの量は、第1のブロックに対して0.5から50質量%の範囲であると都合がよく、好ましくは0.5から40質量%、特に好ましくは0.5から30質量%の範囲である。
第1のブロックに含まれるイタコン酸および/または(メタ)アクリルモノマーの量は、第1のブロックに対して1から50質量%の範囲であると都合がよく、好ましくは2から40質量%、特に好ましくは2から30質量%の範囲である。
【0084】
ブロックコポリマーの第1のブロックを合成するためのエチレン性不飽和モノマー(A)の導入方法については、可変にすることができる。
このため、(A)が単一のエチレン性不飽和モノマーからなる場合、このモノマー全体をステップ(1)で導入してもよいし、一部をステップ(1)で導入し、残りをステップ(2)で導入してもよい。ステップ(2)での導入は、好ましくは連続的に行う。
(A)が少なくとも2種のエチレン性不飽和モノマーからなる場合、一部分のモノマーをステップ(1)で導入し、他をステップ(2)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
(A)が少なくとも2種のエチレン性不飽和モノマーの混合物からなる特定の場合では、混合物全体をステップ(1)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0085】
ステップ(2)に沿ってリアクタの内容物を反応させるために、フリーラジカルを内部生成する手段を利用する。この目的のために、特に内容物を加熱または強力な光線に曝露することが可能である。
リアクタの内容物を反応させる温度は、少なくとも30℃であると都合がよく、好ましくは少なくとも40℃である。さらに、最大で200℃であると都合がよく、好ましくは最大で120℃である。
ステップ(2)については、エチレン性不飽和モノマーが特定の限度内で反応するまで継続すると都合がよい。エチレン性不飽和モノマーの転化度が好ましくは少なくとも82%になるまでステップ(2)を継続する。エチレン性不飽和モノマーの転化度が好ましくは最大で100%になるまでステップ(2)を継続する。
【0086】
ステップ(3)によれば、ブロックコポリマーの第1のブロックをなすポリマーを含む水性分散液が得られる。任意のステップ(4)をさらに実施してもよく、その過程で、余分なフリーラジカル発生剤を分解できる化学物質を導入するおよび/または(A)のうち未反応の部分を抽出することによって、反応を停止させる。これらの操作は、リアクタ内またはリアクタの外で同時または逐次的に実施できるものである。
(A)のうち未反応の部分が十分な揮発性を有する場合、内容物に真空を加えおよび/またはスチーム蒸留によってリアクタの内容物を抽出すると都合がよい。
ステップ(4)の後に任意のステップ(5)を任意に実施してもよい。このステップでは、ステップ(3)で得られる水性分散液からポリマーを単離する。
【0087】
リアクタの内容物からポリマーを単離するための上述したモノマー除去処理以外に使用可能な技法は、当業者間で周知のあらゆる分離法であり、特に、遠心分離および流動床での乾燥(特にポリマーが懸濁液でのプロセスによって生成されたものである場合)ならびに、噴霧または凝集による乾燥(特にポリマーがエマルションまたはミニエマルションでのプロセスによって生成されたものである場合)である。これらの操作は、リアクタの外で行うと都合がよい。
好ましくは、ステップ(4)および(5)を実施せず、ステップ(3)で得られる水性分散液をそのまま利用する。
ブロックコポリマーの第1のブロックを調製するステップ(3)で得られるブロックコポリマーの第1のブロックをなすポリマーを、後に、ブロックコポリマーに第2のブロックを加える目的で、水性分散液におけるフリーラジカル重合によって好都合なように重合する。
【0088】
このため、本発明による方法は、好ましくは、ブロックコポリマーの第2のブロックが、
(p)上記ステップ(3)で得られたブロックコポリマーの第1のブロックをなすポリマーと、
(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)と、
(b)場合によりジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1つのフリーラジカル発生剤と、
(d)場合により水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(b)のうちの1つであってもよい)と、
を用いて調製され、
(1’)(p)と、各化合物(a)、(b)および(d)の各々の少なくとも一部とをリアクタに導入し、
(2’)化合物(a)、(b)および(d)の各々の残りを導入しながらリアクタの内容物を反応させ、
(3’)2つのブロックを有するブロックコポリマーを含む水性分散液を得る
ステップを含むことを特徴とする。
【0089】
水性分散液、水性分散液における重合、分散助剤、乳化剤、疎水性作用剤が意味するものは、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に関連して本出願の最初の部分で定義されている。
ブロックコポリマーの第1のブロックを合成するステップ(3)で得られるブロックコポリマーの第1のブロックをなすポリマー(p)については、ステップ(3)で得られる水性分散液から単離した上で使用してもよいし、そうでなくてもよい。好ましくは、ポリマー(p)をステップ(3)で得られる水性分散液の形で使用する。
ブロックコポリマーの第2のブロックを、ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤の存在下または非存在下で調製する。好ましくは、少なくとも1種のフリーラジカル発生剤の存在下で調製される。
【0090】
ブロックコポリマーの第1のブロックの合成にあたってフリーラジカル発生剤(B)に対してなされる定義、例および開発された好ましい選択肢は、ブロックコポリマーの第2のブロックの合成時に用いられるフリーラジカル発生剤(b)にも適用される。ブロックコポリマーの第2のブロックの合成に用いられるフリーラジカル発生剤(b)は、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に用いられるフリーラジカル発生剤(B)と同一であっても異なっていてもよい。
【0091】
本発明による方法へのフリーラジカル発生剤(b)の導入方法については、可変にすることができる。
このため、(b)が単一のフリーラジカル発生剤からなる場合、このフリーラジカル発生剤全体をステップ(1’)で導入してもよいし、一部をステップ(1’)で導入し、残りをステップ(2’)で導入してもよい。ステップ(2’)での導入は、好ましくは連続的に行う。
(b)が少なくとも2種のフリーラジカル発生剤からなる場合、一部分のフリーラジカル発生剤をステップ(1’)で導入し、他をステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
(b)が少なくとも2種のフリーラジカル発生剤の混合物からなる特定の場合では、混合物全体をステップ(1’)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1’)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0092】
ブロックコポリマーの第2のブロックは、分子ヨウ素の非存在下で好都合なように調製される。
ブロックコポリマーの第2のブロックは、水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(b)のうちの1つであってもよい)の存在下で調製してもよいし、非存在下で調製してもよい。好ましくは、少なくとも1種の酸化剤の存在下で調製される。
【0093】
ブロックコポリマーの第1のブロックの合成にあたって酸化剤(D)に対してなされる定義、例および開発された好ましい選択肢は、ブロックコポリマーの第2のブロックの合成にも適用される。ブロックコポリマーの第2のブロックの合成に用いられる酸化剤(d)は、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に用いられる酸化剤(D)と同一であっても異なっていてもよい。
本発明による方法への酸化剤(d)の導入方法については、可変にすることができる。(d)全体をステップ(1’)で導入してもよいし、一部をステップ(1’)で導入し、残りをステップ(2’)で導入してもよい。導入は、好ましくは連続的に行う。ステップ(2’)での導入は、好ましくは連続的に行う。
好ましくは、(d)全体をステップ(1’)の開始から転化度が70%に達するステップ(2’)の時点までの間にリアクタに導入する。
【0094】
ブロックコポリマーの第2のブロックの合成は、ブロックコポリマーの第1のブロックの合成について定義したような水性懸濁液、水性微小懸濁液(microsuspenion)、水性エマルションまたはミニエマルションにおいて行うことができる。定義、例および好ましい選択肢は、上述したものと同じである。
界面活性剤を用いる場合、これが単一の界面活性剤からなるものであれば、その全体をステップ(1’)で導入してもよいし、一部をステップ(1’)で導入し、残りをステップ(2’)で導入してもよい。ステップ(2’)での導入は、好ましくは連続的に行う。
少なくとも2種の界面活性剤を用いる場合は、一部分の界面活性剤をステップ(1’)で導入し、他をステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入することができる。
少なくとも2種の界面活性剤の混合物を用いる特定の場合は、混合物全体をステップ(1’)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1’)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0095】
本発明によるブロックコポリマーを調製するための方法では、第2のブロックのために、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうち1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)を好都合なように、用いる。
ブロックコポリマーの第1のブロックの合成にあたってモノマー(A)に対してなされる定義、例および開発された好ましい選択肢は、ブロックコポリマーの第2のブロックの合成時にモノマー(a)にも適用される。
【0096】
ブロックコポリマーの第2のブロックを合成するためのエチレン性不飽和モノマー(a)の導入方法については、可変にすることができる。
このため、(a)が単一のエチレン性不飽和モノマーからなる場合、このモノマー全体をステップ(1’)で導入してもよいし、一部をステップ(1’)で導入し、残りをステップ(2’)で導入してもよい。ステップ(2’)での導入は、好ましくは連続的に行う。
(a)が少なくとも2種のエチレン性不飽和モノマーからなる場合、一部分のモノマーをステップ(1’)で導入し、他をステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
(a)が少なくとも2種のエチレン性不飽和モノマーの混合物からなる特定の場合では、混合物全体をステップ(1’)で導入してもよいし、混合物の一部をステップ(1’)で導入し、同じ混合物の残りをステップ(2’)で、好ましくは連続的に導入してもよい。
【0097】
ステップ(2’)に沿ってリアクタの内容物を反応させるために、フリーラジカルを内部生成する手段を利用する。この目的のために、特に内容物を加熱または強力な光線に曝露することが可能である。
リアクタの内容物を反応させる温度は、少なくとも30℃であると都合がよく、好ましくは少なくとも40℃である。さらに、最大で200℃であると都合がよく、好ましくは最大で120℃である。
【0098】
ステップ(2’)については、エチレン性不飽和モノマーが特定の限度内で反応するまで継続すると都合がよい。エチレン性不飽和モノマーの転化度が好ましくは少なくとも60%になるまでステップ(2’)を継続する。エチレン性不飽和モノマーの転化度が好ましくは最大で100%になるまでステップ(2’)を継続する。
ステップ(3’)によれば、2つのブロックを有するブロックコポリマーを含む水性分散液が得られる。任意のステップ(4’)をさらに実施してもよく、その過程で、余分なフリーラジカル発生剤を分解できる化学物質を導入するおよび/または(a)のうち未反応の部分を抽出することによって、反応を停止させる。これらの操作は、リアクタ内またはリアクタの外で同時または逐次的に実施できるものである。
(a)のうち未反応の部分が十分な揮発性を有する場合、内容物に真空を加えおよび/またはスチーム蒸留によってリアクタの内容物を抽出すると都合がよい。
ステップ(4’)の後に任意のステップ(5’)を任意に実施してもよい。このステップでは、ステップ(3’)で得られる水性分散液からブロックコポリマーを単離する。
【0099】
リアクタの内容物からブロックコポリマーを単離するための上述したモノマー除去処理以外に使用可能な技法は、当業者間で周知のあらゆる分離法であり、特に、遠心分離および流動床での乾燥(特にポリマーが懸濁液でのプロセスによって生成されたものである場合)ならびに、噴霧または凝集による乾燥(特にポリマーがエマルションまたはミニエマルションでのプロセスによって生成されたものである場合)である。これらの操作は、リアクタの外で行うと都合がよい。
【0100】
2つのブロックコポリマーに、さらにブロックを加えるのであれば、好ましくは、ステップ(4’)および(5’)を実施せず、ステップ(3)で得られる水性分散液をそのまま利用する。しかしながら、ブロックコポリマーが2ブロックコポリマーである場合、2ブロックコポリマーを単離できるように好ましくはステップ(4’)および(5’)を実施する。
3ブロックコポリマーまたは4ブロック以上からなるコポリマーが望ましい場合、2ブロックコポリマーの場合で上述したような水性分散液におけるフリーラジカル重合によって、ステップ(3’)で得られた2ブロックコポリマーをさらに重合してもよい。
【0101】
本発明による水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合の方法は、好ましくは、第1のブロックが、(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、から選択される)を用いて調製され、第2のブロックが、(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、ハロゲン化ビニルモノマーから選択される)を用いて調製されるブロックコポリマーを調製するための方法である。
本明細書でモノマーについて先に定義した好ましい選択肢は、本発明による好ましい方法にも適用される。
【0102】
より一層好ましい方法は、(A)が少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、から選択される)であり、第2のブロック(a)に用いられるメインモノマーが塩化ビニリデンである方法である。
好ましい方法の場合、コポリマーの第1のブロックと第2のブロックとの質量比は、好都合なように、少なくとも0.1である。この比は好都合なように、最大で1である。
【0103】
本発明によるブロックコポリマーを調製するための水性分散液におけるフリーラジカル重合の方法には、多数の利点がある。
成長ポリマー鎖からモノマー自体へのフリーラジカル活性の移動(モノマー反応への移動)および/または非リビングポリマー鎖へのフリーラジカル活性の移動(ポリマー反応への移動)に対して固有の影響されやすさを有する周知のモノマーを使用しているのにもかかわらず、制御される他とは異なる特徴を特徴とする。
従来技術において説明され、制御剤としてヨウ素を用いる標準的な方法と比較した場合、本発明による方法は、水性分散液において調製されるコポリマーの数平均(または質量平均)分子量の制御ならびに、場合によってはその多分散性の制御の改善を可能にする。したがって、理論分子量と実験分子量との差が、従来の方法の場合よりも顕著に低いことは留意するに値する。
【0104】
本発明によるブロックコポリマーを調製するためのフリーラジカル重合の方法のもうひとつの極めて重要な利点は、先に重合されたものと同一または異なるエチレン性不飽和モノマーとポリマーとをさらに反応させることで、水性分散液において調製されるポリマー鎖の成長を再開可能であることにある。これとは対照的に、フリーラジカル重合の「従来の」方法によれば、通常はこのタイプのブロックコポリマーを合成することは不可能である。
【0105】
本発明によるフリーラジカル重合の方法のもうひとつの利点は、ヨウ素化有機鎖移動剤などの通常は高価で不安定かつ調製や取り扱いが困難な開始材料を用いる必要がないことにある。
第2の実施形態の第1の特に好ましい変形例の第1の二次変形例に特有の最後の利点は、費用経済(cost economics)ならびに、作業時の健康および安全面で、特にメインモノマーが塩化ビニリデンであるブロックを1つ有するブロックコポリマーを調製するための産業工程に極めて適していることにある。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなくこれを例示する目的を有するものである。
【0107】
モノマー転化の判定
アルミニウム皿での重量分析によって、モノマー転化度を求めた。このために、周知の量の水性分散液を秤量して分けた。これに1グレーンのインヒビターを加えて重合を停止させ、水と残留モノマーとを材料から蒸発させた。ポリマーの乾燥抽出物を真空内で40℃にて乾燥させた後に回収し、以下の式によって転化度を計算した。(Esf−Eso)/(Esth−Eso)。式中、Esfは最終乾燥抽出物、Esoは初期抽出物、Esthは100%転化での理論最終乾燥抽出物である。
【0108】
分子量の判定
式(1)に基づく式すなわち
n,intended=(モノマー質量)/(2×nI2、initial)+MA-I (式1)
を適用して、100%転化の場合の想定分子量(Mn,intended)を求めた。この式によれば、nI2、initialは分子ヨウ素の初期モル数、MA-Iは鎖末端の分子量(Aはフリーラジカル発生剤由来の鎖末端、Iはヨウ素原子)である。
転化を考慮して、Mn,th=(モノマー質量)×(モノマー転化)/(2×nI2、initial)+MA-Iによって理論分子量(Mn,th)を求めた。
【0109】
温度を30℃に制御して、ショウデックス(Shodex)RIse−61屈折率検出器とミルトン・ロイ(Milton Roy)ウルトラ−バイオレット(Ultra−Violet)質量分析検出器と2本の300mmカラムとを備えたスペクトラ・フィジックス・インストルメンツ(Spectra Physics Instruments)SP8810ポンプを用いて、テトラヒドロフランに溶解させた乾燥試験片での立体排除クロマトグラフィによって、実験分子量(Mn,exp)を求めた(ポリマー・ラボラトリーズ(Polymer Laboratories)5μm混合−C PL−ゲルカラム−モル質量範囲:2×102〜2×106g.mol-1)。テトラヒドロフランを流量1ml.分-1で溶離液として使用した。ポリマー・ラボラトリーズ(Polymer Laboratories)のポリスチレン標準を用いて較正を実施した。質量はポリスチレン換算質量である。
多分散指数PDI=Mw/Mnは、立体排除クロマトグラフィで求められる重量平均分子量と数平均分子量との比である。
【0110】
平均直径の判定
実施例1〜3では、光の後方散乱とドップラー効果とを利用したナノトラック・パーティクル・サイズ・アナライザ(Nanotrac Particle Size Analyzer)250(マイクロトラック・インコーポレイテッド(Microtrac Inc.))の粒子分析器によって、水性分散液(dp)の粒子の平均直径を求めた。
実施例4〜6では、光の後方散乱を利用したゼータマスター(Zetamaster)V1−26粒子分析器(マルヴァーン(Malvern))によって、水性分散液(dp)の粒子の平均直径を求めた。
【0111】
乾燥物質含有量の判定
メトラー・トレド(Mettler Toledo)HR 73 ハロゲン湿度計を用いて水性分散液の乾燥物質含有量を求めた。求められた量(Mi約3g)の試料をアルミニウム製のカプセルで濾紙に分散させた。質量(Mf)が安定するまで試料を120℃で加熱した。試料の乾燥物質含有量DMは、比Mf/Mi*100であった。
【0112】
表面張力の判定
プレート付きのデジタル張力計K10(クルス(Kruss))を用いて20℃で水性分散液の表面張力を求めた。測定温度で水性分散液を安定させた。次に、プレートを水性分散液に浸漬し、水性分散液からプレートを引き出しながら装置で表面張力を測定した。
【0113】
最低成膜温度(MFFT)の判定
ローポイント(Rhopoint)から入手したMFFT−バー(Bar)60装置を用いて水性分散液の最低成膜温度を求めた。それに沿った温度勾配で調節した表面に水性分散液を堆積させた。次に、この水性分散液を窒素流下で乾燥させ、装置に沿って異なる温度で乾燥させるようにした。水性分散液が乾燥時に透明で粘着性の膜を形成しはじめた温度としてMFFTを求めた。
【0114】
機械的安定性の判定
回転時に水性分散液の機械的高剪断を生じるロータとステータとからなる装置を用いて、水性分散液の機械的安定性を求めた。この処理の間、剪断によって水性分散液が不安定になり、結果として凝集が生じて電力消費量が増した。機械的安定性については、判定対象となった電力消費量の増加を得るまでに必要な時間として求めた。
【0115】
接着性試験
バーコーターを用いてポリエチレンテレフタレート(PET)膜に水性分散液を塗布した後、40℃で乾燥させて、分散液に含まれるポリマーの膜が被覆されたPET膜を得た。この分散液に含まれるポリマーの膜を刃物で細く切断した。テープ片をカット(cut)に対して垂直にして切断場所(cut place)に渡し、手で引き抜いた(pulled off)。PET膜と分散液に含まれるポリマーの膜との接着性が良好であれば、引っ張った後、分散液に含まれるポリマーの膜はPET支持体の表面に残ったままになった。接着性が弱いと、分散液に含まれるポリマーの膜はテープの表面に残った。良好な再現性を保証するために、試験を5回繰り返した。
【0116】
使用した材料
アクリル酸メチル(MA、アルドリッチ(Aldrich)、99%)、塩化ビニリデン(VDC、フルカ(Fluka)、99.5%)およびn−ブチルアクリレート(BuA、アルドリッチ(Aldrich)、99%)を使用前に真空内での蒸留によって精製した。
ヨウ素(I2、アルドリッチ(Aldrich)、99.8%)、1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム(ランカスター(Lancaster)、99%)および過硫酸カリウム(KPS、アルドリッチ(Aldrich)、99%)を入手時のまま利用した。イオン交換カラムに通して水を脱イオン化した。
メルソラト(Mersolat)H40(ナトリウムアルカンスルホネート(alcanesulphonate)、LANXESS)、過硫酸アンモニウム(NH4PS、ユーロパーオキシド(Europeroxydes)>99%)および亜硫酸水素ナトリウム(プロデキム(PRODECHIM)>95%)を入手時のまま利用した。
【0117】
実施例1(本発明による)
水110gを250ml容のガラス製リアクタに入れ、アルゴンで30分間完全にパージした。1−ヘキサデカンスルホン酸ナトリウム(0.308g、M=328.49g.mol-1、0.0938mmol)を水(10g)に入れた溶液をアルゴン流下でリアクタに加え、続いてI2(0.1912g、M=253.81g.mol-1、0.753mmol)をBuA(15g、M=128g.mol-1、117mmol)に入れた溶液を加えた。最後に、KPS(0.912g、M=270.31g.mol-1、3.37mmol)を30gの水に入れた溶液を加えた。次に、250rpmで攪拌しながら反応媒体の温度を85℃に制御し、7時間光を遮断してアルゴン下で重合を行った。
水性分散液(dp)のモル[KPS]/[I2]比、想定分子量(Mn,intended)、重合時間、転化度、理論分子量(Mn,th)、実験分子量(Mn,exp)、多分散指数(P
DI)および粒子の平均直径を表1にあげておく。
【0118】
実施例2(本発明による)
実験の再現性を制御する目的で反応時間を8.5時間にのばしたこと以外はまったく同じ条件で、実施例1を2回繰り返した。得られたデータを表1にあげておく。
【0119】
【表1】

実験分子量(Mn,exp)と理論分子量(Mn,th)との比はそれぞれ、0.82および0.87すなわち1に極めて近く、極めて良好な制御を証明している。
【0120】
実施例3(本発明による)
実施例1で調製した種分散液(seeding dispersion)を用いて、ポリBuA−b−[ポリMA−VDC]ブロックコポリマーを調製した。
このために、180mlの脱イオン水と、0.081gのKPSと、実施例1で得られた水性分散液59.89g(質量7400g/molでポリマー3.08g)とを300ml容のステンレス鋼リアクタに導入し、アルゴンの気泡を送って20分間パージした。次に、4.9gのVDCと1.1gのMAとからなる混合物をリアクタに導入し、250rpmで攪拌を開始した。次に、85℃の温度でのリアクタの加熱を開始した。重合温度に達した後、メルソラト(Mersolat)H40(5gの水に0.15g)の溶液をリアクタに30分間注入した。温度を8時間保ち、続いてオートクレーブを脱気した。
【0121】
水性分散液(dp)の重合時間、転化度、理論分子量(Mn,th)、実験分子量(Mn,exp)、多分散指数(PDI)および粒子の平均直径を表2にあげておく。
理論分子量(Mn,th)については以下の式を用いて計算した。
n,th=Mn,第1のブロック+[(モノマー質量)×転化度/(ポリBuA−Iのモル数)]
=7400+(4.9+1.1)×0.68/(3.08/7400)
=7400+9800
=17200g/mol
理論分子量(第2のブロックのモノマーに関して転化を考慮)と実験分子量との間に良好な相関すなわち、実施例1で得られたポリBuAのリビング特性の兆候が認められた。
【0122】
【表2】

実験分子量(Mn,exp)と理論分子量(Mn,th)との比は0.84すなわち1に極めて近く、極めて良好な制御を証明している。
【0123】
実施例4(本発明による)
1700cm3の水を乳化剤メルソラト(Mersolat)MH40の2.19g/lでの溶液300cm3と一緒に3リットル容のエナメルリアクタに入れ、100rpmで攪拌を開始した。140mbarの第1の真空を操作した後、窒素でパージし、続いて140mbarの第2の真空を維持した。攪拌速度を100rpmに維持した。続いて、4.51gのI2を事前に可溶化しておいた360gのBuAを吸引によってリアクタに導入した。さらに、85℃に達するようにリアクタを加熱し、この温度をすべての重合で維持した。続いて、NH4PSの187.8g/lでの溶液100cm3をリアクタに導入した。この導入は、重合開始点(時刻t0)と対応していた。t0+2時間30分の時点で、2時間、乳化剤メルソラト(Mersolat)の56.9g/lでの溶液の注入が50cm3/時の速度で開始された。t0+5時間の時点で、反応を停止させた。次に、未反応のモノマーをフラッシュし、脱気した後、真空下にて65℃で1時間、ストリッピングを操作した。
【0124】
水性分散液(dp)の重合時間、転化度、乾燥物質含有量、想定分子量(Mn,intended)、理論分子量(Mn,th)、実験分子量(Mn,exp)、多分散指数(PDI)および粒子の平均直径を表3にあげておく。
【0125】
【表3】

実験分子量(Mn,exp)と理論分子量(Mn,th)との比は0.94すなわち1に極めて近く、極めて良好な制御を証明している。
【0126】
実施例5(本発明による)
実施例4で調製した水性分散液1620g(すなわち、質量8969g/molのポリマー200g)を乳化剤メルソラト(Mersolat)MH40の26.55g/lでの20cm3の溶液と一緒に3リットル容のエナメルリアクタに導入し、150rpmで攪拌を開始した。140mbarの第1の真空を操作した後、窒素でパージし、続いて140mbarの第2の真空を維持した。攪拌速度を200rpmまで増した。続いて、700gのVDCと100gのMAとを含有するモノマーの混合物を吸引によってリアクタに導入した。さらに、65℃に達するようにリアクタを加熱し、この温度をすべての重合で維持した。続いて、NH4PSの81.2g/lでの溶液50cm3をリアクタに導入した。この導入は、重合開始点(時刻t0)と対応していた。次に、乳化剤メルソラト(Mersolat)H40の144.5g/lでの溶液を5時間のあいだ20cm3/時の速度で導入した。6時間経過後、リアクタ内の圧力降下によって示されるように重合が終了した。次に、未反応のモノマーをフラッシュし、脱気した後、真空下にて65℃で1時間、ストリッピングを操作した。
【0127】
水性分散液(dp)の重合時間、転化度、乾燥物質含有量、理論分子量(Mn,th)、実験分子量(Mn,exp)、多分散指数(PDI)および粒子の平均直径を表4にあげておく。
得られた水性分散液の表面張力を、上記にて詳しく説明したようにして測定したところ、29mN/mであり、機械的安定性は185分、最低成膜温度は5℃(測定装置の限界)未満であった。PET膜への接着性は優れており、ブロックコポリマー膜とPET膜との間に剥離は観察されなかった。
【0128】
【表4】

実験分子量(Mn,exp)と理論分子量(Mn,th)との比は0.97すなわち1に極めて近く、極めて良好な制御を証明している。
【0129】
実施例6(比較例)
650cm3の水を乳化剤メルソラト(Mersolat)MH40の40%での溶液1.752gと一緒に3リットル容のステンレス鋼リアクタに入れ、200rpmで攪拌を開始した。140mbarの第1の真空を操作した後、窒素でパージし、続いて140mbarの第2の真空を維持した。攪拌速度を250rpmまで増した。続いて、875gのVDCと250gのBuAと125gのMAとを含有するモノマーの混合物を真空によってリアクタに導入した。さらに、65℃に達するようにリアクタを加熱し、この温度をすべての重合で維持した。次に、メタ重亜硫酸ナトリウムの3.75g/lでの溶液100cm3と、NH4PSの0.5g/lでの溶液50cm3とを順にリアクタに注入した。この導入は、重合開始点(時刻t0)と対応していた。乳化剤メルソラト(Mersolat)H40を38.3g/lとNH4PSを0.125g/lとで含有する溶液を6時間のあいだ100cm3/時の速度で導入した。6時間経過後、リアクタ内の圧力降下によって示されるように重合が終了した。次に、未反応のモノマーをフラッシュし、脱気した後、真空下にて65℃で1時間、ストリッピングを操作した。
【0130】
水性分散液(dp)の重合時間、転化度、乾燥物質含有量、実験分子量(Mn,exp)、多分散指数(PDI)および粒子の平均直径を表5にあげておく。
得られた水性分散液の表面張力を、上記にて詳しく説明したようにして測定したところ、43mN/mであり、機械的安定性は117分、最低成膜温度は11.7℃であった。すべての試料で剥離が観察されたことから、PET膜へのランダムコポリマーの接着はなかった。
【0131】
【表5】

【0132】
実施例5のブロックコポリマーと同じ組成(VDC/MA/BuAを質量で70/10/20)であることが特徴の比較例6を従来の非制御エマルションプロセスで重合したところ、モノマーがランダムに分布した。非制御プロセスを用いると、分子量が高めになった。鎖構造の違いを示す最も大きな差は、成膜温度と接着性である。ブロックコポリマー(実施例5)の場合、ポリブチルアクリレートブロックのガラス転移点が低く、低温でポリマー粒子の膜の融合が生じるのに対し、実施例6のランダムコポリマーでは、低Tgモノマーが鎖に沿って分散していることから、成膜温度の低下が小さい。同様に、ポリブチルアクリレートブロックでも、糊として作用してPET膜へのブロックコポリマー膜の接着が保証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックコポリマーの第1のブロックの合成に、分子ヨウ素と水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤とを用いて、少なくとも1つのブロックがハロゲン化ポリマーのブロックであるブロックコポリマーを調製するための、水性分散液におけるコントロールドフリーラジカル重合の方法。
【請求項2】
ブロックコポリマーの第1のブロックが、
(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)と、
(B)ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤と、
(C)分子ヨウ素と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、を用いて調製される方法であって、
(1)化合物(A)、(B)、(C)、(D)の各々の少なくとも一部をリアクタに導入し、
(2)化合物(A)、(B)、(C)、(D)の各々の残りを導入しながらリアクタの内容物を反応させ、
(3)ブロックコポリマーの第一のブロックを構成するポリマーを含む水性分散液を得る
ステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の油溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちのいずれも(B)のうちの1つではない)と、
を用いる、水性懸濁液における重合の方法であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(A)および(C)以外に、
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、
を用いる、水性エマルションにおける重合の方法であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つである1種の酸化剤と、
を用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、かつ(B)である1種の酸化剤と、
を用いることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される2種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つである1種の酸化剤と、
を用いることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(B)水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、各々が(B)のうちの1つである2種の酸化剤と、
を用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lであり、(B)のうちの1つではない1種の酸化剤と、
を用いることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
(A)および(C)以外に、
(B)油溶性ジアゾ化合物と、油溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の油溶性フリーラジカル発生剤および/または水溶性ジアゾ化合物と、水溶性パーオキサイドと、から選択される少なくとも1種の水溶性フリーラジカル発生剤と、
(D)水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、
を用いる水性ミニエマルションにおける重合の方法であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
ブロックコポリマーの第2のブロックが、
(p)ステップ(3)で得られたブロックコポリマーの第1のブロックをなすポリマーと、
(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、ハロゲン化ビニルモノマーと、から選択される)と、
(b)場合により、ジアゾ化合物と、パーオキサイドと、ジアルキルジフェニルアルカンと、から選択される少なくとも1種のフリーラジカル発生剤と、
(d)場合により、水溶性が少なくとも10g/lである少なくとも1種の酸化剤(このうちの少なくとも1種が(B)のうちの1つであってもよい)と、を用いて調製される方法であって、
(1’)(p)と、各化合物(a)、(b)および(d)の各々の少なくとも一部とをリアクタに導入し、
(2’)化合物(a)、(b)および(d)の各々の残りを導入しながらリアクタの内容物を反応させ、
(3’)2つのブロックを有するブロックコポリマーを含む水性分散液を得る
ステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
第1のブロックが(A)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、ジエンと、ビニルエステルと、ビニルエーテルと、ピリジンのビニル誘導体と、ビニルスルホン酸およびその誘導体と、ビニルホスホン酸およびその誘導体と、N−ビニルモノマーと、から選択される)を用いて調製され、第2のブロックが(a)少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、ハロゲン化ビニルモノマーから選択される)を用いて調製されるブロックコポリマーを調製するための方法であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(A)が、少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー(このうちの1種がメインモノマーとして用いられ、スチレンおよびその誘導体と、アクリル酸およびその誘導体と、メタクリル酸およびその誘導体と、から選択される)であり、第2のブロック(a)に用いられるメインモノマーが塩化ビニリデンであることを特徴とする、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2009−541567(P2009−541567A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517266(P2009−517266)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056778
【国際公開番号】WO2008/003728
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591001248)ソルヴェイ(ソシエテ アノニム) (252)
【Fターム(参考)】