説明

尿の値に基づいて薬剤を投与するためのシステムおよび方法

【課題】尿の値を考慮に入れて自動化された方法で正しい薬剤パラメータで薬剤を供給する。
【解決手段】本発明は、患者に薬剤を投与するためのシステムと方法に関し、患者(2)の尿の値を測定するための少なくとも1つの第1の測定デバイス(7、8)と、測定された尿の値(6)を分析するための少なくとも1つの第1の分析デバイス(6)と、測定・分析された尿の値(6a)に基づいて各患者(2)に投与される薬剤の第1の薬剤パラメータを計算するための少なくとも1つの第1の計算デバイス(13)と、計算された共通の薬剤パラメータで各薬剤を供給するための少なくとも1つの供給デバイス(1)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者に薬剤を投与するためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、患者は、特に集中治療室内では、1つ以上の供給デバイスを用いて例えば静脈内に薬剤と適切な人工栄養素とを供給されて治療される。供給デバイスは、患者の血液循環において前もって実行された血液像/血液ガス解析に応じて所定のレベルに患者の生体の血液の値を保つ薬物注入ポンプであることができる。
【0003】
このタイプの全ての供給デバイスは、また薬剤および/または栄養素を投与するためのシステムに統合されるとき、供給デバイスを用いる供給のための根拠を形成するために医師または追加的な臨床治療者による値の入力をあらかじめ必要とした。ここで、例えば、量の値、供給されるべき時間間隔、一時的な供給停止などが次の薬剤の供給のための根拠として入力される。
【0004】
この供給の前に患者からの血液サンプルの通常手作業による採血が行われ、それは臨床治療者の介在を必要とする。また、続いてこの供給を実行するために、薬物注入ポンプのような供給デバイスの入力機能の必要な専門知識を有する追加的な臨床治療者が必要とされる。
【0005】
通常そのような点滴治療は、特に尿の値を含むとき、今日では目標値を定めない。むしろ通常の手続きは、臨床治療の経験および/または事前に定められた標準、プロトコル、指示、仕様などを基に、尿の値の状態および/または血液の値の状態に基づいて注入率を設定する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それ故に、本発明の目的は、患者への薬剤の投与のためのシステムと方法であって、尿の値を考慮に入れて自動化された方法で正しい薬剤パラメータで薬剤を供給することができるシステムと方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を持ったシステムと、請求項10の特徴を持った方法とによって達成される。
【0008】
本発明の中心概念は、患者に薬剤を投与するためのシステムが以下のデバイスを含むことである。:
患者の尿の値を測定するための少なくとも1つの第1の測定デバイス;
測定された尿の値を分析するための少なくとも1つの第1の分析デバイス;
測定・分析された尿の値に基づいて投与される薬剤の第1の薬剤パラメータを計算するための少なくとも1つの第1の計算デバイス;および、
計算された共通の薬剤パラメータで各薬剤を供給するための少なくとも1つの供給デバイス。
【0009】
そのようなシステムは、測定された尿の値を有利に考慮に入れて、供給デバイスによって投与される薬剤の薬剤パラメータを計算することを可能にする。例えば、分析デバイスと計算デバイスを用いて、以前に測定された尿と血液の値の関数として供給デバイスによって有効成分フロセミドを自動的に患者に投与することができる。これは、有効成分の最適な投与のために、および注入率の最適な設定のために測定された値の付加的な制御を可能とし、そこで、有効成分フロセミドの代わりに、また他の薬剤を供給することができる。
【0010】
また、尿の測定値と血液の分析評価から、例えば尿、クレアチニン、リスクなどの矛盾する値を検出し、計算デバイスが自動的に訂正することができる。また、計算デバイスは、個々の測定値の間、およびこれらの値の間の関係に生じる差を考慮に入れて最適化された注入値を計算することができ、従って、絶対値の測定に頼らない。また、注入値、例えば注入率の計算において計算デバイスは、この患者の以前に測定された値の時間順の配列と順序、およびそれらの相対的な重要性を考慮に入れることができる。
【0011】
第1の測定デバイスによって測定される尿の値は、上述した値はもちろん、さらに例えばpH値、タンパク質含有量、尿のグルコース含有量、尿の亜硝酸塩含有量、尿のビリルビン含有量、尿のケトン含有量、尿の細菌量、および/または尿沈渣結果であることができる。
【0012】
好都合にも、第2の測定デバイスが患者によって排出される尿の量を測定し、接続された第2の分析デバイスを測定された尿の量を分析するために使用することができる。また、第2の測定デバイスが患者の傷からの分泌物の量を測定することができ、それに応じて第2の解析デバイスがこれを解析することができる。
【0013】
これは、第2の計算デバイスによって排出された体液と供給される液体の量から患者の身体の体液平衡を計算することができることを確保する働きをする。排出された体液は、例えば、前もって測定・分析された尿の値と測定・分析された分泌物の値であることができ、供給される液体は供給される液体薬剤であることができる。第2の薬剤パラメータはこれから計算される。
【0014】
第3の測定デバイスは、ECG、EEGなどのデータのような患者の生体の値を測定する働きをし、接続された分析デバイスは測定された生体の値を分析する働きをする。第3の計算デバイスによって、第3の薬剤パラメータが測定・分析された生体の値に基づいて計算される。
【0015】
好都合にも、共通計算デバイスによる自動化された方法で、第1の薬剤パラメータ、第2の薬剤パラメータ、および第3の薬剤パラメータから共通の薬剤パラメータを計算することができる。これは、最適化された注入率で点滴を始めるために、計算された尿の値、計算された血液の値、体液平衡の値、および生体の値から得られる全ての薬剤パラメータを考慮に入れて最適化された共通の薬剤パラメータを計算することができるという結果を生じる。
【0016】
好都合にも、また、第1の測定デバイスを用いて患者の血液の値を測定し、第1の分析デバイスによって分析し、第1の計算デバイスを使って第1の薬剤パラメータを計算することができる。
【0017】
従って、多数の測定された値を考慮に入れて、特に尿の値を考慮に入れて、完全なシステムの自動化された機能と薬剤投与のための関連した方法が提供される。そして、そこではそれぞれの値、薬剤パラメータ、および他のデータの移動が自動的に生じることができる。また、患者の治療のための提案される点滴のために決定される薬剤パラメータと栄養素パラメータを、治療される患者のベッド上の対応するディスプレイに臨床治療者を支援するために提案されるパラメータまたは各データとして表示することが考えられる。それで、臨床治療者はこれらの表示されて入力されるデータによって薬物注入ポンプを設定することができる。
【0018】
個々の測定デバイス、分析デバイス、および計算デバイスから、お互いに、および例えば1つ以上の薬物注入ポンプである注入システムへの自動化された安全な移動を確保するために、これらのデータは、患者ID、測定された時間、検査サンプルが採取された時間、関係する測定デバイスの識別、測定デバイスの品質クラス、および追加的な品質の特徴を含むデータプロトコルを用いて転送される。
【0019】
また、体液平衡が自動的に起こり、排出された体液の決定が複雑な重み付けテクニックによって実行されないことは好都合である。むしろ、望ましくは全ての排出された測定可能な体液の量は自動的に決定され、人体によって失われた残りの体液は計算によってシミュレーションされる。これらの排出された体液は、容易に決定できる液体の薬剤または栄養素の形式で供給される液体と比較される。
【0020】
患者への薬剤の投与のための本発明に係る方法では、以下のステップが実行される。:
少なくとも1つの第1の測定デバイスによって患者の尿の値を測定するステップ;
少なくとも1つの第1の分析デバイスによって、測定された尿の値を分析するステップ;
少なくとも1つの第1の計算デバイスを用いて、測定・分析された尿の値に基づいて各患者(2)に投与される薬剤の第1の薬剤パラメータを計算するステップ;および、
少なくとも1つの供給デバイスを用いて計算された共通の薬剤パラメータで各薬剤を供給するステップ。
【0021】
望ましい実施形態によれば、本発明に係る方法において、患者の身体の体液平衡は、排出された体液の測定と計算、および供給された液体の測定と計算によって、計算され、および/または決定されて実行される。
【0022】
追加的な有利な実施形態が従属項から生じる。
長所と特徴が図面とともに以下の記載から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る薬剤の投与のためのシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
薬剤(例えば、フロセミド、インスリンなどのような有効成分または医薬)の自動的な投与のための図1に示されるシステムは、患者2の身体内に個別に間違って設定された値の処理のための複数の薬物注入ポンプを持った自動化された注入システム1である。
【0025】
参照符号3が付された集中治療中の患者2は、自動化された注入システム1から関連付けられた注入率で薬剤を投与される。そのとき、薬剤の量、投与期間、および追加的なパラメータの変化が適切に考慮される。
集中治療中の患者2は、1つ以上の測定デバイス4、7、8、または9を用いて、彼の尿の値を優先しながらさまざまな角度から分析されることができる。
【0026】
例えば、測定デバイス8を用いて、患者2から尿と血液の検査サンプルを採取することによって尿の値および/または血液の値が集中治療室で自動的に測定されることができる。個別には、参照符号6aで示すように、尿の値は、尿のpH値、尿のタンパク質含有量、尿のグルコース含有量、尿の亜硝酸塩含有量、尿のビリルビン含有量、尿のケトン含有量、尿の細菌量、および尿沈渣結果である。血液の値は、個別には、グルコース値、乳酸塩値、電解質値(Na、CL、K)、であるpO値、pCO値、薬剤レベル値、カルシウム拮抗薬値(血圧)、およびプロポフォール値(鎮静状態)である。
血液の値は、参照符号6bによって示される。
【0027】
更に、尿と分泌物の量の値が、第2の測定デバイス9を用いて、望ましくは自動的に測定されることができる。これらから尿の量と分泌物の量が分析デバイス10によって決定される。
第3の測定デバイス4を用いて、望ましくはセンサを用いて、自動的にECGとEEGの値および同様の値のような生体パラメータが第3の分析デバイス5で分析されて決定される。
【0028】
全ての分析デバイス5、6、および10から分析された値は、望ましくは自動的にそれぞれ関連付けられた第1の計算デバイス11、第2の計算デバイス12、および第3の計算デバイス13へ送られる。患者識別番号、測定が実行された時間、検査サンプルが採取された時間、各測定デバイスの識別、測定デバイスの品質クラス、および割り当てられた品質特性のようなデータを付加的に含むデータプロトコルによって参照符号14、21、および22に従う値の移動が起こる。
【0029】
第1の計算デバイス11において、注入システム1による薬剤および/または栄養素の投与のために関連のある薬剤パラメータと栄養素パラメータについての計算が実行される。ここで、実行される体液平衡のために、排出される全ての体液、すなわち、例えば測定された分泌物の量と尿の量、および例えば液体薬剤と液体栄養素のような供給デバイス(注入システム1)によって供給される液体の平衡が生じる。
【0030】
次のコメントは注入される液体対排出される体液のそのような平衡に適用される。:
人類は、様々な方法で体液を排出することが知られている。まず、尿と傷の分泌物が取り除かれ、集中治療中の患者のために自動的にかつ直接測定される。直接測定可能な体液に加えて、呼吸によって排出される水蒸気、身体の皮膚を通る蒸発、および排せつ物による体液の排出などのように間接的に確立される追加的な体液がある。これらの体液の量は、体表面積と体温などを考慮に入れた生理学的モデルによって決定される。
【0031】
第2の計算デバイス12を用いて、注入システム1によって投与され、そこで適切に栄養素と関連付けられる薬剤のために第2の薬剤パラメータを計算することができる。
第3の計算デバイス13を用いて、測定された尿および/または血液の値に基づいて注入システム1によって投与される薬剤と栄養素のために薬剤パラメータと栄養素パラメータを計算することができる。
計算された薬剤パラメータと栄養素パラメータは、有線または無線で、望ましくは暗号化されて注入システム1へ参照符号15、16、および17に従って送信される。
【0032】
点滴、または投与されるそれぞれの薬剤および/または栄養素の注入率の変化で参照符号18、19、および20に従って計算デバイス11、12、および13にフィードバックが生じ、これらの変化が薬剤パラメータおよび/または栄養素パラメータの再計算で考慮に入れられることができる。
全ての計算デバイス11、12、および13は共通計算デバイスと組み合わされる。
【0033】
ところで、また尿の値と血液の値を研究室内で測定デバイス7によって決定することができる。
異なる測定デバイスによって矛盾する値が測定される場合、計算デバイス11、12、および13はこれらを考慮に入れて個々の測定デバイスの重み付けとそこで測定された値とを考慮して対応する訂正を適用することができる。
【0034】
また、薬剤パラメータおよび/または栄養素パラメータの決定において計算デバイスが測定の時間順の配列、測定の順序、および測定の品質を考慮に入れることが考えられる。また、薬剤パラメータおよび/または栄養素パラメータの決定において、お互いとの関連および他の測定デバイスからの他の値との関連で個別に決定された値の関係と差が考慮に入れられる。
【0035】
本出願書類における全ての特徴の開示は、先行技術に関して個別にまたは組み合わせにおいて新規性を有する本発明に本質的であると主張される。
【符号の説明】
【0036】
1 注入システム
2 患者
3 薬剤
4 第3の測定デバイス
5 第3の分析デバイス
6 第1の分析デバイス
6a 尿の値
6b 血液の値
7 研究室内の測定デバイス
8 集中治療室での測定デバイス
9 第2の測定デバイス
10 第2の分析デバイス
11 第1の計算デバイス
12 第2の計算デバイス
13 第3の計算デバイス
14 データプロトコルによる値の移動
15 注入システムへの薬剤パラメータと栄養素パラメータの移動
16 注入システムへの薬剤パラメータと栄養素パラメータの移動
17 注入システムへの薬剤パラメータと栄養素パラメータの移動
18 計算デバイスへのフィードバック
19 計算デバイスへのフィードバック
20 計算デバイスへのフィードバック
21 データプロトコルによる値の移動
22 データプロトコルによる値の移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のための薬剤投与システムであって、
前記患者(2)の尿の値を測定するための少なくとも1つの第1の測定デバイス(7、8)と、
測定された前記尿の値(6)を分析するための少なくとも1つの第1の分析デバイス(6)と、
測定・分析された前記尿の値(6a)に基づいて前記各患者(2)に投与される薬剤の第1の薬剤パラメータを計算するための少なくとも1つの第1の計算デバイス(13)と、
計算された共通の薬剤パラメータで各薬剤を供給するための少なくとも1つの供給デバイス(1)と、
を備えることを特徴とする薬剤投与システム。
【請求項2】
尿の値(6a)、pH値、タンパク質含有量、尿のグルコース含有量、尿の硝酸塩含有量、尿のビリルビン含有量、尿のケトン含有量、尿の細菌量、および/または尿沈渣結果を前記第1の測定デバイス(7、8)で測定することができることを特徴とする請求項1に記載の薬剤投与システム。
【請求項3】
前記患者(2)によって排出される尿の量を測定するための第2の測定デバイス(9)と、当該第2の測定デバイス(9)に接続されており、測定された前記尿の量を分析するための第2の分析デバイス(10)とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤投与システム。
【請求項4】
前記患者(2)の傷から取り除かれた分泌物の量を前記第2の測定デバイス(9)で測定し、前記第2の分析デバイス(10)によって分析することができることを特徴とする請求項3に記載の薬剤投与システム。
【請求項5】
測定・分析された尿の量と測定・分析された分泌物の量のような排出された体液の量から、および供給される液体薬剤のような供給される液体の量から前記患者(2)の身体の体液平衡を計算し、かつ第2の薬剤パラメータを計算するための第2の計算デバイス(11)を備えることを特徴とする請求項3または4に記載の薬剤投与システム。
【請求項6】
ECG、EEGなどのデータのような前記患者(2)の生体の値を測定するための第3の測定デバイス(4)と、当該第3の測定デバイス(4)に接続されており、測定された前記生体の値を分析するための第3の分析デバイス(5)とを備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の薬剤投与システム。
【請求項7】
測定・分析された前記生体の値に基づいて第3の薬剤パラメータを計算するための第3の計算デバイス(12)を備えることを特徴とする請求項6に記載の薬剤投与システム。
【請求項8】
前記第1の薬剤パラメータ、前記第2の薬剤パラメータ、および前記第3の薬剤パラメータから共通の薬剤パラメータを計算する共通計算デバイスを備えることを特徴とする請求項7に記載の薬剤投与システム。
【請求項9】
前記患者(2)の血液の値(6b)を前記第1の測定デバイス(7、8)で測定し、前記第1の分析デバイス(6)によって分析し、前記第1の計算デバイス(13)を使って前記第1の薬剤パラメータを計算することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の薬剤投与システム。
【請求項10】
患者(2)に薬剤を投与するための薬剤投与方法であって、
少なくとも1つの第1の測定デバイス(7、8)によって前記患者(2)の尿の値を測定するステップと、
少なくとも1つの第1の分析デバイス(6)によって、測定された前記尿の値(6a)を分析するステップと、
少なくとも1つの第1の計算デバイス(13)を用いて、測定・分析された前記尿の値(6a)に基づいて前記各患者(2)に投与される薬剤の第1の薬剤パラメータを計算するステップと、
少なくとも1つの供給デバイス(1)を用いて計算された共通の薬剤パラメータで各薬剤を供給するステップと、
を備えることを特徴とする薬剤投与方法。
【請求項11】
前記患者(2)の身体の体液平衡が、排出された前記体液の測定と計算、および供給された前記液体の測定と計算によって計算されることを特徴とする請求項10に記載の薬剤投与方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−520718(P2013−520718A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553354(P2012−553354)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053245
【国際公開番号】WO2011/107568
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(595141166)ベー.ブラウン メルズンゲン アーゲー (6)
【Fターム(参考)】