説明

尿タンクおよび尿処理装置

【課題】運搬しても尿がこぼれない尿タンクを提供すること。
【解決手段】尿タンク30は、対象者から排泄された尿を溜める尿処理装置に用いられ、略箱状のタンク本体31と、このタンク本体31の内部に配置された、尿を高吸収して保持する吸収体41と、を備えている。これにより、液体である尿がタンク本体31内に流入すると、吸収体41が尿を吸収してゲル状や固形状となる。したがって、尿タンク30を運搬する際に、尿が飛散しないから、尿がこぼれるのを防止できる。また、尿が吸収体41に吸収されるので、尿の揮発性が低下し、尿タンク30から放出される臭気を低減できる。さらに、尿が吸収体41に吸収されることにより、尿の酸化、分解を抑えることができ、尿を尿タンク30に長時間溜めておいても、雑菌の繁殖を抑えることができ、衛生的である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者から排泄された尿を溜める尿タンクおよびこの尿タンクを備えた尿処理装置に関し、例えば、老人、入院患者、身障者等の排尿を補助できる。
【背景技術】
【0002】
従来より、老人、入院患者、身障者等では、自分の意思で排尿を制御することが困難になる場合がある。この場合、排尿を補助する装置として、尿処理装置が利用されている。尿処理装置は、例えば、排泄された尿を受止める尿レシーバと、この尿レシーバに導尿チューブを介して接続された尿タンクと、尿レシーバに設けられた尿検知センサと、尿検知センサで尿が検知されると、尿レシーバ内の尿を導尿チューブを介して尿タンクに圧送するポンプ機構と、を備えている(特許文献1〜5参照)。
【0003】
以上の尿処理装置では、尿レシーバを対象者に着用させるだけで、対象者から排泄された尿を尿レシーバが受け止める。すると、この受け止めた尿を尿検知センサが検出して、ポンプが駆動し、尿レシーバ内の尿を尿タンクに圧送する。したがって、対象者から排泄された尿を、尿レシーバから尿タンクに迅速に移動できるから、尿レシーバの装着感を快適な状態で維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−191852号公報
【特許文献2】特開平10−43289号公報
【特許文献3】特開平11−342144号公報
【特許文献4】特開2000−152953号公報
【特許文献5】特開平11−206825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した尿処理装置では、ある程度の量の尿が尿タンク内に溜まると、この尿を廃棄する必要がある。この場合、導尿チューブを尿タンクから取り外し、尿タンクをトイレまで運搬して、尿をトイレに捨てた後、尿タンクを再び設置場所まで運搬して、尿タンクに導尿チューブを接続する。しかしながら、尿タンクをトイレまで運搬する間に、尿がこぼれるおそれがあった。
【0006】
本発明の目的は、運搬しても尿がこぼれない尿タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)対象者から排泄された尿を溜める尿処理装置に用いられる尿タンクであって、略箱状のタンク本体と、このタンク本体の内部に配置された、尿を高吸収して保持する吸収体と、を備えていることを特徴とする尿タンク。
【0008】
ここで、「対象者」とは、自分の意思で排尿を制御することが困難な者を意味し、例えば、一部の老人、重篤な入院患者、身動きの取り難い身障者等が該当する。また、本明細書でいう「吸収体」は、尿を吸収するとともに、この吸収した尿を保持するものであり、その種類は問わないが、具体的には、パルプや高吸収性樹脂(super absorbant polymer、通称SAP)等の高吸収性材料からなる。このうち、SAPは、尿の成分と分子レベルで結びつくことにより、尿を吸収するものである。
【0009】
この発明によれば、タンク本体の内部に吸収体を配置したので、液体である尿がタンク本体内に流入すると、吸収体が尿を吸収してゲル状や固形状となる。したがって、尿タンクを運搬する際に、尿が飛散しないから、尿がこぼれるのを防止できる。また、尿が吸収体に吸収されるので、尿の揮発性が低下し、尿タンクから放出される臭気を低減できる。さらに、尿が吸収体に吸収されることにより、尿の酸化、分解を抑えて、尿を尿タンクに長時間溜めておいても、雑菌の繁殖を抑えることを期待できる。
【0010】
(2)前記吸収体は、消臭性および/または抗菌性を備えるものであることを特徴とする(1)に記載の尿タンク。
【0011】
ここで、「消臭性」とは、不快な匂いを消す性質をいい、「抗菌性」とは、細菌の繁殖を抑制する性質をいう。この発明によれば、吸収体を消臭性および抗菌性を備える複数の粒状物で構成したので、尿タンク内を衛生的な状態に維持できる。
【0012】
(3)前記吸収体は、小単位に分割されて形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の尿タンク。
【0013】
この発明によれば、吸収体を小単位に分割して形成したので、吸収体の偏りを防止できるので、吸収体が塊で存在することによるゲルブロッキング現象を極力抑えることができる。
【0014】
(4)前記吸収体の小単位は、前記タンク本体の上下方向に並んで配置されていることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の尿タンク。
【0015】
吸収体は尿を吸収すると膨張するが、この吸収体の膨張は、タンク本体の壁面で規制されるおそれがある。そこで、この発明によれば、吸収体の小単位をタンク本体の上下方向に並んで配置したので、吸収体の各小単位が膨張する空間を確保でき、尿を確実に吸収できる。また、吸収体全体に均一に尿を吸収させることができるので、吸収体を効率的に利用できる。
【0016】
(5)前記吸収体を収納しかつ通液性を有する収納袋を備えていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の尿タンク。
【0017】
ここで、「通液性」とは、液体、具体的には尿を透過させる性質をいう。この発明によれば、尿タンクに吸収体を収納しかつ通液性を有する収納袋を設けたので、吸収体がタンク本体の内部に分散するのを防止できるから、吸収体を容易に取り扱うことができる。特に、収納袋に複数の分包を設け、吸収体の小単位を各分包に収納すれば、吸収体を均整のとれた状態で維持できるから、吸収体を容易に持ち運びできるうえに、廃棄する際の取り扱いも容易になる。
【0018】
(6)前記収納袋は、水解性または水崩壊性を有することを特徴とする(5)に記載の尿タンク。
【0019】
ここで、「水解性」および「水崩壊性」とは、収納袋が尿に浸ると、この尿で収納袋が崩壊して原形をとどめないように小片状にこなされる性質をいう。吸収体は、尿を吸収して膨張するが、このとき、吸収体の膨張を収納袋が拘束することにより、吸収体の膨張が抑制され、尿タンク内の尿を全て吸収しきれない場合がある。しかしながら、この発明によれば、収納袋を水解性または水崩壊性を有する材料で形成したので、尿で収納袋が水解または水崩壊するため、吸収体の膨張を収納袋が拘束しないから、尿タンク内の尿を確実に吸収できる。
【0020】
(7)前記タンク本体は、紙で形成された基材と、この基材の表裏面のうち少なくとも一方に積層された防水層と、を有する防水性シートで形成されていることを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の尿タンク。
【0021】
ここで、防水層は、例えば、紙で形成された基材上に樹脂をコーティングして形成される。この発明によれば、タンク本体を、基材および防水層を有する防水性シートで形成したので、尿タンクを使い捨てできるから、尿タンクの洗浄作業が不要となり、尿タンクの使い勝手を向上できる。
【0022】
(8)前記タンク本体は、色の変化により尿の成分を検出する試験紙を保持する試験紙保持部と、この試験紙を外部から視認可能な窓と、を備えていることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の尿タンク。
【0023】
(9)前記吸収体には、色の変化により尿の成分を検出する試薬が含有され、前記タンク本体は、前記吸収体を外部から視認可能な窓を備えていることを特徴とする(1)から(7)のいずれかに記載の尿タンク。
【0024】
ここで、「尿の成分を検出する」とは、例えば、ph、タンパク定性、ブドウ糖定性、ウロビリノゲン定性、ビリルビン定性、ケトン体、潜血反応、亜硝酸塩、白血球反応を検出することが含まれる。尿は、人間の体から排泄された汚物であるが、健康状態を示す目安でもある。そこで、この発明によれば、タンク本体内に尿の成分を検出する試薬を含有させたり試験紙を配置したりするとともに、これら試薬や試験紙を視認可能な窓を設けた。よって、窓を通して試験紙または試薬の色の変化を確認することにより、尿の成分を分析して、健康状態を確認できる。
【0025】
(10)排泄された尿を受止める尿レシーバと、この尿レシーバに導尿チューブを介して接続された尿タンクと、前記尿レシーバに設けられた尿検知センサと、前記尿検知センサで尿が検知されると、前記尿レシーバ内の尿を導尿チューブを介して尿タンクに圧送するポンプ機構と、を備える尿処理装置であって、前記尿タンクは、(1)から(9)のいずれかに記載の尿タンクであることを特徴とする尿処理装置。
【0026】
この発明によれば、尿処理装置を、尿レシーバ、尿タンク、尿検知センサ、およびポンプ機構を含んで構成した。これにより、尿タンクからの尿の飛散を防止できるので、ポンプ機構に尿が流出して、ポンプ機構が故障するのを防止できる。また、尿タンクから放出される臭気を低減できるので、例えば、脱臭フィルタのような脱臭装置を小型化できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の尿タンクおよび尿処理装置によれば、次のような効果が得られる。タンク本体の内部に吸収体を配置したので、液体である尿がタンク本体内に流入すると、吸収体が尿を吸収してゲル状や固形状となる。したがって、尿タンクを運搬する際に、尿が飛散しないから、尿がこぼれるのを防止できる。また、尿が吸収体に吸収されるので、尿の揮発性が低下し、尿タンクから放出される臭気を低減できる。さらに、尿が吸収体に吸収されることにより、尿の酸化、分解を抑えて、尿を尿タンクに長時間溜めておいても、雑菌の繁殖を抑えることを期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る尿処理装置を示す模式図。
【図2】前記実施形態に係る尿レシーバの模式図。
【図3】前記実施形態に係る尿タンクの斜視図。
【図4】前記実施形態に係る吸収体および収納袋の斜視図。
【図5】前記実施形態に係る吸収体に尿が全く吸収されていない状態を示す尿タンクの断面図。
【図6】前記実施形態に係る吸収体の下段に尿が吸収された状態を示す尿タンクの断面図。
【図7】前記実施形態に係る吸収体の中段に尿が吸収された状態を示す尿タンクの断面図。
【図8】前記実施形態に係る吸収体の上段に尿が吸収された状態を示す尿タンクの断面図。
【図9】本発明の変形例に係る試験紙保持部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1には、本実施形態に係る尿処理装置の模式図が示されている。
【0030】
尿処理装置1は、対象者(着用者)から排泄された尿を溜めるものであって、排泄された尿を受止める尿レシーバ11と、この尿レシーバ11に導尿チューブ12を介して接続された尿タンク30と、尿レシーバ11に設けられた尿検知センサ14と、尿検知センサ14で尿が検知されると、尿レシーバ11内の尿を導尿チューブ12を介して尿タンク30に圧送するポンプ機構20と、を備える。
【0031】
尿レシーバ11は、対象者の股間に装着されて、対象者の排尿部から排泄される尿を受け止めるものであり、一定方向に延びるすり鉢形状となっている。この尿レシーバ11は、図2に示すように、防漏シート111、支持シート112、通液性シート113、空間保持材114、難通気性シート115、一時貯液シート116、および、ギャザー117を積層して形成されている。このうち、防漏シート111および支持シート112には、貫通孔118が形成され、この貫通孔118に導尿チューブ12が挿入される。
【0032】
防漏シート111は、非通水性の薄肉のシートである。支持シート112は、弾力性を有する素材で形成され、防漏シート111の全面に亘って接合されている。通液性シート113は、支持シート112の全面に亘って接合されている。
【0033】
空間保持材114は、複数の粒状物で構成される。この空間保持材114を構成する粒状物は、通液性シート113の表面に、固定されていない状態で、一段に並んで配置されている。なお、空間保持材114を複数の粒状物で構成したのは、尿を吸引する空気層(吸尿空間)を多く確保するためである。また、これら粒状物を固定しないのは、柔軟性を確保するためである。
【0034】
難通気性シート115は、空間保持材114を覆うとともに、端部で支持シート112を挟んで防漏シート111に接合されている。一時貯液シート116は、尿を一時的に溜めておくものであり、例えば、嵩高で低密度の不織布が用いられる。対象者は一回毎に一定量の尿を排泄するため、この尿を導尿チューブ12から排出するのに時間がかかる。そのため、一時貯液シート116に尿を一時的に溜めておく必要がある。ギャザー117は、一時貯液シート116に立設されており、装着時に対象者に密着することにより、対象者の動作や姿勢の変更等による横漏れを防止するものである。
【0035】
図1に戻って、尿検知センサ14は、2つの電極141を有している。尿レシーバ11が尿を受け止めると、2つの電極141が尿に浸って導通し、検知信号が尿検知センサ14からポンプ機構20に送信される。
【0036】
図3には、尿タンク30の斜視図が示されている。尿タンク30は、略箱状のタンク本体31と、このタンク本体31の内部に収容されて尿を吸収する3つの吸収部材40と、を備えている。このタンク本体31の内面には、銀・銅等を主成分とする化合物(ゼオライト)が添加された樹脂がコーティングされている。
【0037】
タンク本体31は、上面に開口326が形成された略箱状の尿収容部32と、この尿収容部32の開口326に開閉可能に取り付けられた蓋部33と、を備える。
【0038】
尿収容部32は、色の変化により尿の成分を検出する試験紙321と、この試験紙321を外部から視認可能な窓323と、を備えている。窓323は、尿収容部32の一側面の一部に形成されている。試験紙321は、短冊状のプラスチック片に試薬を含ませて乾燥した濾紙を貼り付けて形成される。この試験紙321は、両面テープ等の接着材を用いて、窓323の内側に貼り付けられており、吸収部材40を交換する際に、一緒に交換してもよい。したがって、窓323の内側の面で、請求項に記載の試験紙保持部が構成される。この試験紙321は、最大10項目程度を同時に検査できる複合試験紙である。なお、この検査項目の例を以下に挙げる。
【0039】
【表1】

【0040】
蓋部33には、導尿チューブ12が接続される導尿口331と、後述する吸引チューブ21が接続される吸引口332とが形成されている。
【0041】
各吸収部材40は、尿収容部32の内部に立てかけた状態で配置される。なお、図3では、各吸収部材40は起立しているように見えるが、実際には、尿収容部32の内面に立てかけられている。この吸収部材40は、図4に示すように、尿を高吸収して保持する吸収体41と、この吸収体41を収納しかつ通液性を有する収納袋42と、を備えている。
【0042】
吸収体41は、消臭性および抗菌性を備える複数の粒状物で構成されている。この理由は、単位体積当たりの表面積を広く確保して、吸収速度を向上させるためである。
【0043】
収納袋42は、互いに対向配置した2枚の通液性シート421を熱接着させて形成されている。この収納袋42は、内部を複数の区画に仕切ることにより形成された12個の分包422を備えている。各分包422は、それぞれ所定量の粒状物を収容することにより、吸収体41を小単位に分割して収容する。したがって、図3に示すように、吸収体41の小単位は、タンク本体31の上下方向に並んで配置されている。
【0044】
図1に戻って、ポンプ機構20は、吸引チューブ21を介して尿タンク30に接続されたポンプ22と、このポンプ22を回転駆動させるモータ23と、このモータ23を制御する制御回路24と、この制御回路24に電源を供給するバッテリ25と、を備える。ポンプ22は、図示しない脱臭フィルタを内蔵しており、吸引チューブ21から吸引した空気を、脱臭フィルタを通して、排気口221から排出する。
【0045】
このポンプ機構20によれば、尿検知センサ14から制御回路24に検知信号が送信されると、制御回路24は、検知信号を受信して、モータ23に駆動信号を送信する。すると、モータ23は、ポンプ22を駆動させる。これにより、ポンプ22は、吸引チューブ21を介して尿タンク30内の空気を吸引して、尿タンク30内の負圧にする。この尿タンク30内外の圧力差により、尿レシーバ11内の尿が導尿チューブ12を通って、尿タンク30内に移動する。一方、吸引チューブ21を介して吸引された空気は、ポンプ22内の脱臭フィルタで脱臭された後、排気口221から排気される。
【0046】
以上の尿処理装置1によれば、排尿された尿は、尿レシーバ11にて受止められる。すると、この尿は尿検知センサ14で検知されて、ポンプ22によって、尿レシーバ11から導尿チューブ12を介して尿タンク30に貯蔵される。
【0047】
ここで、タンク本体31への尿の流入に伴う吸収部材40の変化について、図5〜図8を参照しながら説明する。まず、タンク本体31に尿が全くない状態では、図5に示すように、吸収部材40は全く膨張していない。この状態で、タンク本体31に尿が流入すると、この尿はタンク本体31の下部に溜まる。すると、吸収部材40の下段の分包422は、流入する尿を吸収して膨張する。その結果、図6に示すように、タンク本体31内の尿は、全て、吸収部材40の下段の分包422に吸収される。
【0048】
さらに、タンク本体31に尿が流入すると、吸収部材40の下段の分包422だけでは尿を吸収しきれず、タンク本体31内部に尿が溜まって、吸収部材40の中段の分包422も尿に浸る。すると、図7に示すように、吸収部材40の中段の分包422は、流入する尿を吸収して膨張する。
【0049】
以上の尿処理装置は、具体的には、以下のように構成される。
1.尿レシーバ
防漏シート :PE製フィルム 厚み15μm
支持シート :発泡PEシート 厚み2mm
通液性シート :ナイロン製平織りメッシュシート(線径約0.04mm、打込み本数
100本/1cm)
空間保持材 :発泡スチレン製ビーズ(直径約6mm)
難通気性シート:SMS不織布(54g/m
一時貯水シート:サーマルボンド不織布(目付:225g/m、厚み:20mm、密度
:0.01g/cm3)
防漏シートおよび支持シートに形成された貫通孔:φ6mm
2.導尿チューブ:シリコーン製(内径φ4mm、外径φ6mm、長さ1000mm)
3.尿タンク
タンク本体
外形寸法:40mm×100mm×200mm(材質:アクリル)
導尿口 :内径φ4mm
吸引口 :内径φ4mm
窓 :20mm×75mm(材質:アクリル)
吸収体 :SAP12.6g(0.35g×36区画)、吸収速度(Vortex法)
:30sec、吸収倍率:60(g/g)保水倍率:40(g/g)
収納袋 :90mm×150mm(分包は、22.5mm×50mm×12)、ナイ
ロン製平織りメッシュシート製(線径:約0.04mm打込み本数:10
0本/1cm)
4.ポンプ機構
吸引チューブ:シリコーン製 内径φ4 外径φ6 長さ500mm
ポンプ :真空ポンプ(応研精工(株) Rolling Pump RTS27A04)
【0050】
したがって、本実施形態によれば以下の効果がある。
【0051】
尿タンク30をタンク本体31と吸収部材40とを含んで構成したので、液体である尿がタンク本体31内に流入すると、吸収部材40が尿を吸収してゲル状や固形状となる。したがって、尿タンク30を運搬する際に、尿が飛散しないから、尿がこぼれるのを防止できる。また、尿が吸収部材40に吸収されるので、尿の揮発性が低下し、尿タンク30から放出される臭気を低減できる。さらに、尿が吸収部材40に吸収されることにより、尿の酸化、分解を抑えて、尿を尿タンク30に長時間溜めておいても、雑菌の繁殖を抑えることを期待できる。
【0052】
吸収体を消臭性および抗菌性を備える複数の粒状物で構成したので、尿タンク30内を衛生的な状態に維持できる。
【0053】
吸収体41を小単位に分割して形成したので、吸収体の偏りを防止でき、吸収体が塊で存在することによるゲルブロッキング現象を極力抑えることができる。
【0054】
吸収体41の小単位をタンク本体31の上下方向に並んで配置したので、吸収体41の各分包422が膨張する空間を確保できるから、尿を確実に吸収できる。また、吸収体41全体に均一に尿を吸収させることができるので、吸収体41を効率的に利用できる。
【0055】
尿タンク30に吸収体41を収納しかつ通液性を有する収納袋42を設けたので、複数の粒状物で構成した吸収体41が分散するのを防止できるから、吸収体41を容易に取り扱うことができる。
【0056】
収納袋42に複数の分包422を設け、吸収体41を分包422に分割して収納した。これにより、吸収体41を均整のとれた状態で維持できるから、吸収体41を容易に持ち運びできるうえに、廃棄する際の取り扱いも容易になる。
【0057】
タンク本体31を、色の変化により尿の成分を検出する試験紙321を保持する試験紙保持部と、この試験紙321を外部から視認可能な窓323とで構成したので、窓323を通して試験紙321の色の変化を確認することにより、尿の成分を分析して、健康状態を確認できる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0059】
例えば、前記実施形態では、タンク本体31をアクリル製としたが、これに限らず、紙で形成された基材と、この基材の表裏面のうち少なくとも一方に積層された防水層と、を有する防水性シートで形成してもよい。このようにすれば、尿タンクを使い捨てできるから、尿タンクの洗浄作業が不要となり、尿タンクの使い勝手を向上できる。
【0060】
また、前記実施形態では、収納袋をナイロン製平織りメッシュシートで形成したが、これに限らず、収納袋を水解性または水崩壊性を有する材料で形成してもよい。このようにすれば、尿で収納袋が水解または水崩壊するため、吸収体の膨張を収納袋が拘束しないから、尿タンク内の尿を確実に吸収できる。
【0061】
また、前記実施形態では、試験紙321を窓323の内面に貼り付けたが、これに限らない。すなわち、図9に示すように、試験紙保持部を322を、窓323と、この窓323の内側に所定間隔おいて取り付けられた板部材324と、を含んで構成する。この窓323と板部材324との間に試験紙321を差し込むことにより、試験紙保持部322は、試験紙321を保持する。このようにすれば、試験紙321に接着材を貼り付ける必要がなく、容易に試験紙321をタンク本体31の内部に保持できる。また、吸収体に色の変化により尿の成分を検出する試薬を含有させ、タンク本体に、吸収体を外部から視認可能な窓を設けてもよい。
【0062】
また、前記実施形態では、尿収容部32の側面の一部に窓323を設けたが、これに限らず、尿収容部の側面全面を窓としてもよい。また、尿タンク30の容量、吸収部材40の個数、吸収体41の量は、対象者の尿の量によって、適宜設定されてよい。
【実施例1】
【0063】
実施例1を次の手順で製造した。まず、パルプとSAPとを混合した吸収体サンプルに消臭剤を添加し、密閉容器に入れた。その後、吸収体サンプルの中央部へ生理食塩水に溶解させた悪臭物質を100ml投入した。この悪臭物質は、ジメチルアミン=0.2wt%、アセトルアルデヒド=0.01wt%、n−酪酸=0.2wt%とした。なお、ガスの発生を防止するため、5℃の室内で調整した。
【0064】
また、比較例1として、悪臭物質のみを密閉容器に入れたものを用いた。つまり、比較例1は、吸収体サンプルを用いていない点が実施例1と異なる。
【0065】
この実施例1および比較例1のヘッドスペースガス濃度を、検知管を用いて測定した。ここで、検知管としては、ガステック社製、アミン=180、アセトアルデヒド=92M、n−酪酸=81Lを用いた。また、安定的にガスを発生させるため、37℃の室内で測定した。実施例1および比較例1のガス濃度と時間との関係を表2に表す。
【0066】
【表2】

【0067】
表2から、実施例1は、ジメチルアミン、アセトアルデヒト、n−酢酸の各ガス濃度が比較例1よりも低いことが判明した。これにより、吸収体に臭気低減効果があることを確認できた。
【符号の説明】
【0068】
1 尿処理装置
11 尿レシーバ
12 導尿チューブ
14 尿検知センサ
20 ポンプ機構
30 尿タンク
31 タンク本体
41 吸収体
42 収納袋
321 試験紙
322 試験紙保持部
323 窓
421 通液性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者から排泄された尿を溜める尿処理装置に用いられる尿タンクであって、
略箱状のタンク本体と、このタンク本体の内部に配置された、尿を高吸収して保持する吸収体と、を備えていることを特徴とする尿タンク。
【請求項2】
前記吸収体は、消臭性および/または抗菌性を備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の尿タンク。
【請求項3】
前記吸収体は、小単位に分割されて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の尿タンク。
【請求項4】
前記吸収体の小単位は、前記タンク本体の上下方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項3に記載の尿タンク。
【請求項5】
前記吸収体を収納しかつ通液性を有する収納袋を備えていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の尿タンク。
【請求項6】
前記収納袋は、水解性または水崩壊性を有することを特徴とする請求項5に記載の尿タンク。
【請求項7】
前記タンク本体は、紙で形成された基材と、この基材の表裏面のうち少なくとも一方に積層された防水層と、を有する防水性シートで形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の尿タンク。
【請求項8】
前記タンク本体は、色の変化により尿の成分を検出する試験紙を保持する試験紙保持部と、この試験紙を外部から視認可能な窓と、を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の尿タンク。
【請求項9】
前記吸収体には、色の変化により尿の成分を検出する試薬が含有され、
前記タンク本体は、前記吸収体を外部から視認可能な窓を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の尿タンク。
【請求項10】
排泄された尿を受止める尿レシーバと、この尿レシーバに導尿チューブを介して接続された尿タンクと、前記尿レシーバに設けられた尿検知センサと、前記尿検知センサで尿が検知されると、前記尿レシーバ内の尿を導尿チューブを介して尿タンクに圧送するポンプ機構と、を備える尿処理装置であって、
前記尿タンクは、請求項1から9のいずれかに記載の尿タンクであることを特徴とする尿処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−165887(P2009−165887A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112672(P2009−112672)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【分割の表示】特願2003−423276(P2003−423276)の分割
【原出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】