説明

尿レシーバ

【課題】尿レシーバ着用者が排泄した尿を尿レシーバの外へ速やかに導き出す。
【解決手段】尿レシーバ着用者が排泄する尿を処理するための尿レシーバ102が、容器部112と吸引部180とを含む。容器部112は、透液性シート124とともに尿吸引用空間160を形成する。その透液性シート124は、周壁部150の頂縁部分が画成する開口を覆っている。吸引部180は容器部112の周壁部150を貫通する吸引管154を含み、吸引管154が容器部112を形成している熱可塑性合成樹脂によって周壁部150と一体的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝たきり老人、寝たきりの病人、身障者等であって、自分では排尿の時期をコントロールしたり排泄した尿を始末したりすることが困難な人が使用する自動尿処理装置に適用可能な尿レシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの老人等には、自分の意志で排尿の時期をコントロールしたり自力で尿の後始末をしたりすることが困難な場合がある。このような場合の尿処理方法として、尿道口の近傍に尿レシーバを当てがい、尿が排泄されると、それを吸引ポンプによって吸引してタンクに導く自動尿処理装置が提案されている。吸引ポンプは、尿タンク内の空気を吸引して、そのタンクと大気圧との差圧により、尿を空気とともに尿レシーバから導尿チューブを介してタンクへ導くことができる。
【0003】
このような自動尿処理装置に使用される尿レシーバとして、断面がコの字形を成し平面形状がほぼ矩形を成す非通気性の外皮シートに収尿材を納め、この収尿材の表面に難通気性の表面シートを配置し、外皮シートの底面に形成した導尿口から延びる導尿チューブを尿タンクにつなぎ、吸引ポンプの吸引力により尿をレシーバから尿タンクへ導くようにするものが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−267517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の尿レシーバは、導尿チューブとの接続口となる導尿口が、収尿材を被覆している外皮シートで形成される底面の側に設けられている。このものは、吸引ポンプを作動させて吸尿する際に、収尿材の縁部に留まる尿を完全に吸尿することが困難であった。また、導尿口を収尿材の縁部に届くように設けると、導尿口に接続する導尿チューブを外皮シートと表面シートとで挟むような状態となり、導尿チューブの近傍では、表面シートと外皮シートとを確実にシールして両シート間の気密性を保持するということが難しく、尿レシーバにおける吸尿の効率を低下させるおそれがあった。
【0005】
本発明は、従来の尿レシーバが有する上記問題に鑑みてなされたものであり、尿レシーバにおける吸尿効率の向上を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、防漏性の容器部と、前記容器部に前記容器部の内外を貫通するように形成されていて前記容器部の外に設けられる尿吸引機構へ接続可能な吸引部と、前記容器部の開口を覆う透液性シートとを含み、前記尿吸引機構による負圧の作用下に前記透液性シートを透過させて前記容器部内へ吸引した尿をさらに前記負圧の作用下に前記吸引部を介して前記容器部の外へ排出させることが可能な尿レシーバである。
【0007】
かかる尿レシーバにおいて、本発明が特徴とするところは、次のとおりである。前記容器部は、互いに直交する長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、かつ、底部と前記底部から前記厚さ方向へ起立して前記底部を囲繞する周壁部とを有していて、前記周壁部の頂縁部分によって前記開口が画成されている中空のものであり、前記開口を覆う前記透液性シートが前記頂縁部分に対して固定されることによって、前記容器部と前記透液性シートとが尿吸引用空間を形成しており、前記吸引部が前記尿吸引用空間内に向かって口を開く尿吸引用開口と前記尿吸引用空間外に向かって口を開く尿排出用開口とを有していて前記周壁部を貫通する導尿用の吸引管を含み、前記吸引管が前記容器部を形成している軟質弾性材料によって前記周壁部と一体的に形成されている。
【0008】
本発明の一実施態様において、前記容器部が、前記周壁部の頂縁部分に前記容器部の外側へ広がるフランジ部を有し、前記透液性シートが前記フランジ部の上面に対して固定されている。
【0009】
本発明の他の実施態様において、前記尿排出用開口は、前記負圧を作用させるための前記尿吸引機構における導尿チューブを接続できるように形成されている。
【0010】
本発明のさらに他の実施態様において、前記吸引管は、前記尿吸引用空間に向かって延びた先端に前記尿吸引用開口を有し、前記尿吸引用開口が、前記周壁部の一部分および前記周壁部から前記容器部内側へ突出するように形成されたリブのいずれかと対向していて、前記一部分および前記リブのいずれかと2〜7mm離間している。
【0011】
本発明のさらに他の実施態様において、前記透液性シートのJIS L 1096、セクション6.27.1に規定される通気性が湿潤状態において0〜100cc/cm/秒の範囲にあり、乾燥状態において20〜200cc/cm/秒の範囲にある。
【0012】
本発明のさらに他の実施態様において、前記透液性シートがレーヨン繊維を40重量%以上含むものである。
【0013】
本発明のさらに他の実施態様において、前記容器部が熱可塑性合成樹脂によって形成されており、前記透液性シートは前記容器部のフランジ部と向かい合う部位に前記容器部の熱溶融温度とほぼ同じであるかそれよりも低い熱溶融温度を有する熱可塑性合成樹脂材料を含み、前記熱可塑性合成樹脂材料を溶融させることにより前記透液性シートが前記フランジ部に固定されている。
【0014】
本発明のさらに他の実施態様において、前記熱可塑性合成樹脂材料が熱可塑性合成繊維からなる透液性の不織布であって、前記不織布が前記透液性シートと重なり合って前記容器部のフランジ部に固定された状態で前記容器部の開口を覆い、前記透液性シートの前記通気性は、前記透液性シートがこれと重なり合う前記不織布と一体になることによって満たされている。
【0015】
本発明のさらに他の実施態様において、前記熱可塑性合成樹脂材料が不透液性のフィルムであって、前記容器部のフランジ部から前記容器部の外側に向かって広がっていて前記容器部の内側に向かって広がることのないものである。
【0016】
本発明のさらに他の実施態様において、前記容器部の前記底部には、前記厚さ方向の下方から前記透液性シートに当接して前記透液性シートの前記底部に向かっての撓みを阻止可能な複数の隆起部が形成されている。
【0017】
本発明のさらに他の実施態様において、前記容器部は、柔軟弾性材料によって形成されており、前記長さ方向を前記尿レシーバ着用者の身体の上下方向に一致させるものであり、複数の前記隆起部が前記長さ方向と前記幅方向とに整列する状態で形成されている。
【0018】
本発明のさらに他の実施態様において、前記尿レシーバは、尿レシーバ着用者の肌と前記透液性シートとの間に位置して前記着用者の尿の排泄を検知することが可能な電気的センサを有している。
【0019】
本発明のさらに他の実施態様において、前記電気的センサの少なくとも一部分は、透液性であってかつ排泄物中の固形分が前記電気的センサに接触することを防ぐことが可能なシート状フィルタによって被覆されており、さらに、前記電気的センサと前記フィルタとの間には、厚さが少なくとも0.7mmであり、孔径が少なくとも2mmである複数の透孔を有していて前記厚さ方向において実質的に非圧縮性であるシート状スペーサが介在している。
【0020】
本発明のさらに他の実施態様において、前記尿レシーバは、前記幅方向の両側それぞれに前記長さ方向へ延びる防漏堤を有しており、前記防漏堤は、不透液性シートで形成されていて、前記幅方向における外側寄りの縁部と前記長さ方向における両端部とが前記尿レシーバにおいて固定された状態にある一方、前記幅方向における内側寄りの縁部が固定されておらず、かつ、前記長さ方向へ弾性的に伸長・収縮可能な状態にある。
【0021】
本発明のさらに他の実施態様において、前記容器部は、その外面側が不透液性シートによって被覆されており、前記不透液性シートは、前記容器部の周縁から前記容器部の外側へ広がる部分が、前記容器部の内面側にあって前記容器部から前記外側へ広がるシート材料に接合している。
【0022】
本発明のさらに他の実施態様において、前記不透液性シートが熱可塑性合成樹脂フィルムおよび前記フィルムと前記フィルムの外面側に接合した不織布とからなる積層シートのいずれかである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、吸引部における導尿用の吸引管が容器部に一体的に成形されていて、容器部における周壁部の頂縁部分に透液性シートが固定されているから、容器部と吸引機構との接続は容易かつ確実であり、周壁部の頂縁部分と透液性シートとの固定も容易かつ確実になって、尿レシーバの気密性を高めることが容易になる。
【0024】
容器部にフランジ部が形成されている態様のこの発明では、透液性シートと容器部との固定が極めて容易かつ確実になる。
【0025】
尿排出用開口が導尿チューブを接続可能に形成されている態様のこの発明では、尿レシーバが扱いやすいものになる。
【0026】
尿吸引用開口が周壁部やリブに接近して形成されている態様のこの発明では、透液性シートが容器部の内側へ撓むことがあっても、その透液性シートが尿吸引用開口と周壁部やリブとの間に入ってその開口を塞ぐという問題を生じない。
【0027】
透液性シートの通気性が規定されている態様のこの発明では、尿吸引機構の吸引ポンプを作動させたときに、尿吸引用空間内を速やかに負圧にすることができ、尿の容器部内への流入が容易になる。
【0028】
この発明におけるその他の態様と、それによって得られる作用、効果とは、以下の実施形態において詳述される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る尿レシーバの詳細を説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る尿レシーバ102が使用されており、その尿レシーバ102と組み合わせられる尿吸引機構100aを含んだ自動尿処理装置100の概略構成図である。なお、尿レシーバ102は、それを着用する者の肌に向ける内面側とその反対側であって着用者の着衣に向ける外面側とを有するもので、図ではその外面側の部材が部分的に破断した状態で示されている。
【0031】
自動尿処理装置100は、着用者(図示せず)が排泄した尿を尿レシーバ102に集めて処理することができる装置である。その尿レシーバ102は、着用者の尿道口近傍の肌に当接して排泄された尿を受け容れるトレー状の容器部112を含み、自動尿処理装置100は、この容器部112に接続される継手部材104、導尿チューブ106、尿タンク106a、ポンプユニット108、電気配線116等からなる尿吸引機構100aを含む。
【0032】
ポンプユニット108は、尿レシーバ102に集めた尿を取り出して溜めておくことができる尿タンク106aと、尿レシーバ102に設けられていて排尿のあったことを検知する尿センサ118をポンプユニット108へ電気的に接続するための電気配線116と、配線116を介して尿センサ118から送られる信号に基づいて作動する吸引ポンプ(図示せず)とを備える。尿レシーバ102では、容器部112の周壁部に形成された尿排出用開口114に対して継手部材104を介して導尿チューブ106が接続される。ポンプユニット108から延びる配線116の先端には、尿レシーバ102に設けられた尿センサ118の電極218a,218b等(図3参照)を配線116へ電気的に接続するためのクリップ120が取り付けられている。かような自動尿処理装置100は、尿センサ118により尿が排泄されたことを検知し、その検知したことに基づく信号によってポンプユニット108に含まれる吸引ポンプを作動させて尿タンク106a内の空気を吸引することにより、着用者が排泄した尿を容器部112の内部へ吸引し、その吸引した尿を継手部材104と導尿チューブ106とを介して吸引して、尿タンク106aに集めることができる。
【0033】
図2は、尿レシーバ102の着用方法の一例を示す図である。尿レシーバ102は、T字ベルト300の股間ベルト部301の内面側に粘着剤や商品名マジックテープ(登録商標)で知られるメカニカルファスナ等を使用して固定されている。尿レシーバ102の容器部112は、その大部分が着用者身体の上下方向へ延びてその内側が着用者の尿道口とその周辺の肌とに向かい合うとともに、下端部分が緩やかに湾曲しながら肛門へ向かうように延びた状態で着用される。T字ベルト300は、胴ベルト部302の両端部がメカニカルファスナ等の連結手段303を介して分離可能に連結されており、股間ベルト部301は一端部が胴ベルト部302に縫合される一方、もう一端部がメカニカルファスナ304を介して分離可能に胴ベルト部302に連結されている。なお、尿レシーバ102は、図示例の着用手段の他に、開放型のおむつやパンツ型のおむつ、おむつカバー、失禁患者用パンツ等適宜の手段を使用して着用することができる。
【0034】
図3は、尿レシーバ102の内面側を示す平面図である。図4は図3のIV−IV線に沿う切断面を示す図であり、図5は図3のV−V線に沿う切断面を示す図であって、これら図4,5では、尿レシーバ102の厚さ方向R(図4参照)において重なり合うべき各部材が一部のものを除いて互いに離間した状態で示されている。
【0035】
図3、4において、尿レシーバ102は、着用者身体の上下方向に一致させる長さ方向Pと、長さ方向Pに直交する幅方向Qとを有し、長さ方向Pの両端部近傍で幅が広く、中央部で幅が狭くなっている。尿レシーバ102はまた、厚さ方向Rを有し、容器部112の上方には、その厚さ方向Rの下方から順に、不透液性のバックシート122、難通気性の透液性シート124、拡散シート126、クッションシート128、尿センサ118、尿センサ保護用のスペーサであるスペーサ130、尿センサ保護用のシート状フィルタ132、透液性肌当てシート134、および防漏堤136が重ねられている。
【0036】
また、尿レシーバ102を平面的にみると、防漏堤136の上端部と下端部とのそれぞれが、第1、第2エンドシート138,140で被覆されている(図3参照)。
【0037】
尿レシーバ102を着用中に便が排泄されて、肌当てシート134が便で覆われると、尿レシーバ102は尿を吸引することができなくなる。そこで、尿レシーバ102には、便センサ144が設けられている。便センサ144では、図4における熱可塑性合成樹脂フィルム142c,142dの上面にアルミ蒸着等によって電極143a,143bが形成されていて、そのフィルム142c,142dが2枚のカバーシート142a,142bで被覆されている。カバーシート142aは透液性のものであって、便中の水分が電極143a,143bに向かって透過可能である。かような便センサ144では、電極143a,143bが尿検出用電極218a,218bに並行して長さ方向Pへ延びていて、図3,5における下端部分145bがエンドシート140から下方へ延出している。その下端部分145bが便で汚れると、便中の水分がカバーシート142aを透過して、電極143a,143bが電気的につながると、配線116に含まれている電源116a(図1参照)から電流が流れてポンプユニット108における警報器に信号を送り、便の処理と尿レシーバ102の交換とを促すことができる。
【0038】
容器部112は可撓性のもので、例えば、軟質ポリエチレンやシリコンゴム等の軟質弾性材料を使用した射出成形その他適宜の成形手段によって作ることが可能で、長さ方向Pにも幅方向Qにも湾曲させることができる。図4,5における容器部112の頂縁部分にはフランジ部152が形成されていて、そのフランジ部152にはバックシート122が上方から重なり、フランジ部152の全周にわたって部位122aにおいて溶着または接着により接合している。なお、容器部112の構造の詳細は、図6において説明される。
【0039】
バックシート122は、尿レシーバ102で受け止めた尿が尿レシーバ102の外に漏れるのを防止するための手段であり、ポリエチレン等の柔軟な不透液性フィルムやそのフィルムと不織布との積層シート等で形成される。例えば、図4において、バックシート122には厚さ30μmのポリエチレンフィルムが使用される。バックシート122の長さと幅は、適宜の寸法を選ぶことが可能であるが、図4,5のバックシート122は図3の尿レシーバ102の輪郭とほぼ一致するように作られている。
【0040】
透液性シート124は、透液性は高いが通気性が低い難通気性もので、容器部112の開口を覆っていて、周縁部124aがバックシート122に対して、より好ましくはバックシート122とバックシート122を介してフランジ部152の全周とに対して部位124bにおいて溶着または接着により上方から接合して、固定されており、容器部112と協働して尿吸引用空間160を形成している。尿吸引用空間160は、難通気性である透液性シート124で開口が閉じられることによって、尿レシーバ102に向かって排泄された尿を吸引処理する際に、容器部112内を容易に負圧にすることができる。この透液性シート124には、不織布、例えば、22g/mのスパンボンド不織布と10g/mのメルトブローン不織布と22g/mのスパンボンド不織布とからなるSMS不織布を、好ましくは界面活性剤で親水化処理して使用することができる。透液性シート124が難通気性であるとは、このシート124の通気性をJIS L 1096のセクション6.27.1に規定される通気性測定方法のA法に従って測定したときの値が、湿潤状態において0〜100cc/cm/秒の範囲にあり、より好ましくは0〜50cc/cm/秒の範囲にあり、また、乾燥状態においては20〜200cc/cm/秒の範囲にあり、より好ましくは20〜100cc/cm/秒の範囲にあり、さらに好ましくは20〜50cc/cm/秒の範囲にあることを意味している。この通気性を測定する際の湿潤状態とは、不織布を20℃、RH60%の条件下に少なくとも24時間放置したときの重量を乾燥時のシート重量とし、この不織布を3分間浸水した後に5分間吊り下げて水切りしたときの重量を湿潤時のシート重量とし、これらの重量に基づいて下記の式(1)で算出される不織布の含水率が100%以上の状態にあることを意味している。
含水率=(湿潤時のシート重量−乾燥時のシート重量)/(乾燥時のシート重量)・・式(1)
【0041】
拡散シート126は、レーヨン等の親水性繊維を40重量%以上含み、坪量10〜30g/mを有する不織布やティシュペーパ等のシート材料で形成され、尿レシーバ102の着用者が尿を排泄したときに、その尿を速やかに拡散させて透液性シート124を広い範囲にわたって短時間で湿潤状態にするために使用されるもので、透液性シート124に対して溶着または接着により間欠的に接合している。透液性シート124が広い範囲にわたって湿潤状態になると、尿吸引用空間160を形成している容器部112の内部が速やかに高い真空度になり、容器部112内への尿の吸引を促進することができる。図のように透液性シート124と重ね合わせて使用される拡散シート126は、透液性シート124よりも高い通気性と透液性とを有する。
【0042】
クッションシート128は、例えば、坪量20〜30g/mのサーマルボンド不織布等で形成され、着用者の排尿初期段階で瞬間的に尿を受け止める機能を有する他に、尿レシーバ102の組立工程において、尿センサ118や尿センサ保護用ネットであるスペーサ130、尿センサ保護用のフィルタシート132等を尿レシーバ102における所定の位置に置くためのキャリヤシートとしての機能を有する。クッションシート128は、拡散シート126に対して溶着または接着により間欠的に接合している。クッションシート128は、透液性シート124よりも高い通気性と透液性とを有する。
【0043】
尿センサ118は、ポリエチレンフィルム等の可撓性の熱可塑性合成樹脂フィルム260と、その上に導電性塗料を印刷等の手段によって塗布することにより形成された一対の電極218a,218bとを有し、これらの電極218a,218bは、フィルム260に形成されている開口171の両側それぞれに設けられていて、尿レシーバ102の長さ方向Pへ互いに平行して延びている。図3において、かような電極218a,218bの上端部は、エンドシート138の上縁から延出していてクリップ120(図1,2参照)によって把持される。この尿センサ118では、一対の電極218a,218bが尿を介して電気的につながると、ポンプユニット108に対して尿が排泄されたことを知らせる信号を出すことができる。尿センサ118は、厚さ方向Rにおいて、透液性シート124の上面側に設けられるもので、拡散シート126やクッションシート128が使用されない場合の尿センサ118は、透液性シート124に対して直接的に接合される。しかし、尿センサ118にはクッションシート128を使用して、尿センサ118をそのクッションシート128に対して溶着または接着により接合して一対の電極218a,218bの幅方向Qにおける離間距離を一定に保つことが好ましい。幅方向Qへ互いに離間させた電極218a,218bどうしの間ではフィルム260の開口171からクッションシート128をのぞかせる。
【0044】
図4において、尿センサ118は、それを保護するために、熱可塑性合成樹脂製メッシュシートで形成されていて少なくとも0.7mmの厚さを有するスペーサ130と坪量15〜25g/mのスパンボンド不織布等で形成されたシート状フィルタ132とによって上方から覆われている。スペーサ130とフィルタ132とは、溶着または接着により互いに固定することができ、またこれら両者130,132をクッションシート128に対して溶着または接着により固定することもできる。スペーサ130は、湿潤状態にあるフィルタ132とセンサ118とが接触し続けることを防ぐことができるように、特に尿レシーバ102が着用者の体圧を受けたときにこれらが接触し続けることを防ぐことができるように、フィルタ132とセンサ118とを厚さ方向Rにおいて離間させておくために使用されている。かかるスペーサ130は、着用した尿レシーバ102が体圧やその他の圧力を受けても、実質的にはその厚さが変化することのないようなメッシュシートで作られていて、透液性シート124よりも高い通気性と透液性とを有するものでなければならない。そのメッシュシートの目の大きさは、尿の透過を妨げることがないように、少なくとも2mmの径を有していることが好ましい。フィルタ132は、排泄物のうちの固形分が尿センサ118に付着して尿センサ118が恒久的に通電状態になるというような誤作動が生じることを防ぐためのものであって、透液性シート124よりも高い通気性と透液性とを有する。
【0045】
フィルタ132の上方に位置する肌当てシート134は、坪量が15〜25g/mのサーマルボンド不織布の如き柔軟にして透液性を有するシートで形成されている。肌当てシート134は、着用者の尿道口とその周辺の肌とに向かい合い、尿が排泄されたときに、その尿が尿レシーバ102の内部に向かって速やかに移行することを妨げることがないもので、親水性のものである場合と撥水性のものである場合とがある。肌当てシート134は、透液性シート124よりも高い通気性と透液性とを有し、フィルタ132に接着または溶着により接合されることが好ましい。
【0046】
図4に示された左右一対の防漏堤136は、尿が肌当てシート134の上を幅方向Qへ流れて尿レシーバ102から横漏れすることを防止するためのものであって、幅方向Qにおいて尿レシーバ102の外側寄りに位置する外側縁部136bと長さ方向Pにおいて尿レシーバ102の両端寄りに位置する両端縁部136c,136d(図3参照)とが肌当てシート134に接合される一方、尿レシーバ102の幅を二等分する中心線でもある図3のV−V線寄りに位置する内側縁部136eが肌当てシート134に接合されておらず、その内側縁部136eには弾性部材136aが長さ方向Pへ伸長された状態で取り付けられている。防漏堤136は、尿レシーバ102が着用者の肌に当接するように長さ方向Pにおいて湾曲すると、弾性部材136aが収縮して内側縁部136eが肌当てシート134から離間するように起立する。防漏堤136は、肌に直接触れる部位であるから、柔軟な熱可塑性合成樹脂フィルムやそのフィルムと不織布との積層シート等によって形成され、好ましくは不透液性である。防漏堤136の端縁部136c,136dそれぞれの近傍は、エンドシート138とエンドシート140とのそれぞれによって被覆されている(図3,5参照)。
【0047】
図3,5において、下方に設けられたエンドシート140の近傍における防漏堤136どうしの間には、着用者の臀裂を埋める手段として、柔軟にして弾性を有するサーマルボンド不織布等で形成された嵩高な繊維塊146が取り付けられている。この繊維塊146は、尿が臀裂を伝わって流れようとする時に、その流れを止めて尿を容器部112の方向へ導くことができる。かかる繊維塊146の取り付け位置は、男性用の尿レシーバ102と女性用の尿レシーバ102とで、違いをつけておくことが好ましい。例えば、女性用の尿レシーバ102の場合に、図3および図5に示すように繊維塊146をエンドシート140の近傍に取り付けたとすると、男性用の尿レシーバ102の場合には、繊維塊146を女性用のそれよりも上方寄りに取り付けることが好ましい。
【0048】
好ましい尿レシーバ102は、厚さ方向Rにおける容器部112の下方に、2枚の被覆シート142a,142bと、これら被覆シート142a,142bによって覆われた左右一対の便検知用電極143a,143bとを含む便センサ144を有する。電極143a,143bは、熱可塑性合成樹脂フィルムにアルミ蒸着を施すことによって形成されている。被覆シート142a,142bには、例えば、坪量15〜21g/mを有する透液性のスパンボンド不織布を使用することができる。図5の長さ方向Pにおいて、便センサ144は、その端部145bがエンドシート140から下方へ延出する一方、端部145aが、エンドシート138から上方へ延出し、かつ、尿センサ118よりもさらに上方へ延出している。尿レシーバ102を着用すると、便センサ144の端部145bが肛門寄りに位置する。便が排泄されて、端部145bに便が付着し、その便が被覆シート142a,142bのいずれかを透過して両電極143a,143bをつなぐと、便センサ144は通電状態となってポンプユニット108に備えられた表示部(図示せず)において排便があったことを知らせる信号を出すことができる。また、端部145aにおいて露出している電極143a,143bは、クリップ120によって把持されて配線116と電気的につながる。被覆シート142a,142bを疎水性の不織布で形成しておけば、尿レシーバ102の着用者の汗で一対の電極143a,143bが電気的につながって、便センサ144が誤って排便があったと認識して信号を出すということがない。被覆シート142a,142bは、容器部112とバックシート122とに溶着または接着により接合している。
【0049】
尿レシーバ102は、肌当てシート134が便で覆われると尿を吸引できなくなるため、便センサ144によって便の存在が検知されたならば、速やかに交換することが好ましい。
【0050】
図6は尿レシーバ102に含まれる容器部112の斜視図であり、図7は図6のVII−VII線断面図であり、図8は図6のVIII−VIII線断面図であり、図9は図6の容器部112に継手部材104が取り付けられた状態を示す図8と同様な図である。
【0051】
これらの図に示された容器部112は、互いに直交する長さ方向Pと幅方向Qと厚さ方向Rとを有する中空のもので、底部148と、底部148の周縁部分から容器部112の外側に向かって傾斜しながら厚さ方向Rへ起立する周壁部150と、周壁部150の頂縁部分から外側へ水平方向に広がるフランジ部152とを有する。フランジ部152の内面(図7における上面)には、バックシート122が溶着または接着により接合し、固定される(図4参照)。バックシート122は、フランジ部152における平坦な上面に対して接合されるので、接合作業が容易であるばかりでなく、バックシート122とフランジ152との間から尿が漏れることがないように水密な状態で接合することが容易である。
【0052】
図6で明らかなように、容器部112には、その内部へ流入した尿を集めてそれを外部へ排出するための吸引部180が形成されている。吸引部180は、容器部112の幅方向Qの略中央部において長さ方向Pへ延びる導尿用の吸引管154と、吸引管154の内端部、すなわち図の左端部において容器部112の内部に向かって開口している尿吸引用開口156と、図8の右端部において容器部112の外部に向かって開口している尿排出用開口114とを有する。好ましい尿吸引用開口156は、容器部112の長さ方向Pにおいて対向している周壁部150a,150bのうちで、尿レシーバ102を着用したときに下方に位置する周壁部150aの内面に対して、その内面との離間距離が2〜7mmとなるように接近して形成される。例えば、吸引管154の内径が4〜6mmのときに、尿吸引用開口156と周壁部150aとの距離は3mm程度にすることが好ましい。このように尿吸引用開口156が周壁部150aに接近していると、尿レシーバ102が図2の如き着用状態にあって容器部112が湾曲し、透液性シート124が容器部112の内側へ垂れ下がることがあっても、間隔が狭い尿吸引用開口156と周壁部150aとの間には垂れ下がり難く、尿吸引用開口156が透液性シート124によって塞がれるというような問題が生じない。吸引管154はまた、一方の周壁部150aからこれに対向するもう一方の周壁部150bに向かって内径を徐々に拡大させながら尿排出用開口114にまで延びている。尿排出用開口114は、図8に示すように、フランジ部152の下側に、好ましくはフランジ部152から少なくとも3mm離間して形成される。そのような尿排出用開口114は、継手部材104の挿入が容易であるうえに、挿入した継手部材104の影響でフランジ部152の内面が歪むということもない。
【0053】
容器部112の内部には、尿を吸引ポンプで吸引する際に透液性シート124の垂れ下がりやたわみを抑えて透液性シート124と容器部112の底部148との間の空間を維持することができるように、即ち容器部112と透液性シート124とで形成される尿吸引用空間160(図10参照)を維持することができるように複数の略円錐台形状の隆起部158が長さ方向Pおよび幅方向Qへ直線を成すように所要の間隔をあけて形成されている。尿レシーバ102を肌に当てると、容器部112は、隆起部158どうしの間が案内となって、長さ方向Pにも幅方向Qにも容易に湾曲する。
【0054】
図10は、容器部112にバックシート122および透液性シート124を接合する過程の一例を示す図である。容器部112のフランジ部152には、バックシート122とすべきシート材料を当接して熱溶着、高周波溶着、ホットメルト接着剤による接着等の接合手段によって接合する。次に、このシート材料は、フランジ部152の内側にある部分Lを切り取ってバックシート122とし、このバックシート122の内面(図における上面)に透液性シート124を載せて、その透液性シート124をバックシート122にたいして、またはバックシート122とフランジ部152とに対して接合する。
【0055】
透液性シート124と協働して尿吸引用空間160を形成している容器部112では、吸引管156の尿排出用開口114に導尿チューブ106を接続してからポンプユニット108の吸引ポンプを作動させて尿タンク106a内を負圧にすると、導尿チューブ106、継手部材104、吸引管154を介して尿吸引用空間160を負圧にすることができ、容器部112の外にある尿を透液性シート124を介して容器部112の内側へ導き、さらにその尿を容器部112の周壁部150a(図8参照)近傍に集めて尿吸引用開口156から尿タンク106aへと排出することができる。
【0056】
図11,12は、この発明の実施態様の一例を示す図4,5と同様な図である。図11,12の尿レシーバ102は、図4,5のそれと異なりバックシート122を使用していないもので、透液性シート124の周縁部124aが部位124bにおいて容器部112のフランジ部152の全周に溶着または接着により接合し、固定されている。尿レシーバ102の長さや幅を短くしなければならない場合には、図示例の如くバックシート122を省いて尿レシーバ102を作ることができる。この場合の尿レシーバ102では、防漏堤136やエンドシート138,140を不透液性シートで作って容器部112のフランジ部152と水密状態で接合し、容器部112の尿がフランジ部152を伝って容器部112の外側へ流れ出ることがないようにすることが好ましい。フランジ部152は、尿レシーバ102の着用感を悪くすることがないことを条件に、上下方向Pの寸法や幅方向Qの寸法を自由に設定することができる。
【0057】
この発明において、尿センサ118を正常に機能させるには、図示例のごとく肌当てシート134やフィルタ132、スペーサ130等で尿センサ118を被覆しておくことが好ましいが、図11,12の尿レシーバ102において、スペーサ130、フィルタ132、肌当てシート134、防漏堤136、便センサ144のいずれかを省いてこの発明を実施することも可能である。また、この発明において、図5の如くにバックシート122を使用する場合に、バックシート122をフランジ部152に水密状態で固定し、そのバックシート122の内面に対して透液性シート124を接合して、透液性シート124をフランジ部152に対して間接的に固定するならば、透液性シート124に含まれる尿が尿レシーバ102の外へ滲出することの防止が容易になる。ただし、この発明が透液性シート124をフランジ部152に対して直接的に固定する構造を除外するものでないことは、図11,12に示すとおりである。
【0058】
図13は、図6の容器部112とは態様の異なる容器部112についての斜視図であって、この容器部112もまたこの発明において使用されるものである。この容器部112は、長円形に作られており、周壁部150には、三条のリブ150cが形成されている。容器部112の幅方向Qの中央部では吸引管154が長さ方向Pへ延びていて、吸引用開口156がリブ150と対向しており、吸引用開口156とリブ150との離間距離が2〜7mmの範囲にある。容器部112の底部151(図14参照)には、複数の隆起部158が形成されている。その隆起部158は、丈がフランジ部152とほぼ同じレベルにある丈の高い第1隆起部158aと、第1隆起部158aよりも丈が低い第2隆起部158bとを含んでいる。
【0059】
図14,15は、図13の容器部112が使用されている尿レシーバ102の一態様を示す図4,5と同様な図であるが、厚さ方向Rにおいて重なり合う部材が互いに離間した状態で示されている。この尿レシーバ102は、容器部112の外面側に不透液性のバックシート122を有し、そのバックシート122が容器部112の周縁から長さ方向Pと幅方向Qとに延出している。容器部112の内面側には、接合用シート200と、難通気性の透液性シート124と、クッションシート128と、尿センサ118と、スペーサ130と、フィルタ132と、肌当てシート134と、防漏堤136とが図示の如く順に重なっている。
【0060】
接合用シート200は、容器部112のフランジ部152と透液性シート124との接合を容易にするために使用されている。例えば、容器部112がポリエチレン製のものであって、透液性シート124がレーヨン繊維やポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維等で形成されていてポリエチレンと比べて溶融し難いものである場合には、容器部112を形成している樹脂の溶融温度とほぼ同じであるかそれよりも低い溶融温度の樹脂を含む材料、例えばポリエチレンとポリプロピレンとからなるサイド・バイ・サイド型の複合繊維からなるスパンボンド不織布を接合用シート200として使用する。フランジ部152と透液性シート124とは、これら両者間に介在する複合繊維に含まれたポリエチレンを溶融させながら、厚さ方向Rから加圧することによってフランジ部152の全周にわたって容易に接合する。かような接合用シート200は、図示例の如く容器部112におけるフランジ部152と頂部開口との全体を覆うように使うことができる他に、フランジ部152のみを覆うように使うこともできる。
【0061】
図14,15の透液性シート124は、図4,5における透液性シート124と拡散シート126との機能を兼ね備えているもので、例えば繊度1〜6dtex、長さ20〜60mmのレーヨン繊維を少なくとも40重量%含むスパンレース不織布によって作られる。透液性シート124はまた、60重量%を限度として繊度1〜6dtex、長さ20〜60mmの熱可塑性合成繊維を含むことができる。透液性シート124は、その通気性が、図4の透液性シート124と同様に湿潤状態において0〜100cc/cm/秒の範囲にあって、乾燥状態では20〜200cc/cm/秒の範囲にあり、また、図4の拡散シート126と同様にレーヨン繊維を少なくとも40重量%含むことによって、尿を速やかに拡散させることができる。透液性シート124はまた、それ自体が単独で規定の通気性を有していることが好ましいものではあるが、図14,15の如く容器部112の開口全体を覆う接合用シート200と重なり合うとともに少なくとも部分的に接合した状態で使用される場合には、重なり合った透液性シート124と接合シート200とが図4における透液性シート112としての規定の通気性を満たすものであってもよい。
【0062】
クッションシート128は、図4,5のクッションシート128と同じ材料で形成することができ、透液性シート124と同じ大きさを有する。
【0063】
尿センサ118は、フィルム260の内面に導電性塗料を塗布することによって尿検知用の電極218a,218bが形成されているもので(図16参照)、フィルム260が長さ方向Pにおいてバックシート122の両端部近傍にまで延びている。フィルム260の内面には、便検知用電極143a,143b(図16参照)も形成されている。
【0064】
スペーサ130は、図4,5のスペーサ130と同じ材料で形成することができ、透液性シート124と同じ大きさを有する。スペーサ130は、長さ方向Pへ延びるものではあるが、便検知用電極143a,143bにおける便検知部144d,144e(図16参照)を覆うほどまでには下方へ延びていない。
【0065】
フィルタ132と肌当てシート134とのそれぞれは、図4,5のフィルタ132と肌当てシート134と同じ材料で形成することができ、フィルタ132は透液性シート124と同じ大きさを有する。肌当てシート134は、長さ方向Pの寸法が透液性シート124と同じであるが、幅方向Qの寸法が透液性シート124よりも大きくて、バックシート122とほぼ同じに作られている。
【0066】
図15に示されているように、尿レシーバ102の長さ方向Pにおける両端部のそれぞれには、エンドシート138とエンドシート140とが設けられている。これら両シート138,140は、防漏堤136の長さ方向Pにおける両端部(図示せず)のそれぞれを図3と同様に覆っている。図14,15において、互いに重なり合う透液性シート124と、クッションシート128と、尿センサ118と、スペーサ130と、フィルタ132と、肌当てシート134とは図4,5と同様に接合している。しかし、バックシート122は、容器部112の底部外面に粘着剤等を介して接合していることに加え、容器部112のフランジ部152から延出する部分がバックシート122の上方にある肌当てシート134やその他のシートと接合している。防漏堤136は、肌当てシート134や肌当てシート134の周縁から延出しているバックシート122に接合している。
【0067】
なお、図15において、便検知用電極143a,143bの便検知部144d,144eは、便の水分を透過可能な不織布製カバーシート201によって被覆される。カバーシート201の上方にあるエンドシート140には、エンドシート140で検知部144d,144eを覆い隠すことがないように、透孔202が形成されている。透孔202は、尿レシーバ102の着用者の肛門近傍に位置させる。
【0068】
図16は、図14,15に示された尿レシーバ102に使用されている尿センサ118の部分破断平面図である。尿センサ118は、不透液性の熱可塑性合成樹脂フィルム260の内面に一対の尿検出用電極218a,218bと、一対の便検出用電極143a,143bと、断線検出用回路250とを有しており、電極218a,218b,143a,143bの大部分と断線検出用回路250の全体とが絶縁塗料による塗膜170によって被覆されており、図ではその塗膜170の一部分が破断した状態で示されている。フィルム260には、幅方向Qの中央部に長さ方向Pへ並ぶ開口171,172が形成されている。開口171と172との間にはブリッジ183が形成されている。また、一対の電極218a,218bも一対の143a,143bも、開口171,172を挟んで対向するように形成されており、断線検出用回路250は、一対の尿検出用電極218a,218bの端部どうしをつなぐように延びている。図16において、尿検出用電極218aは、塗膜170に形成されている小孔169aからのぞく尿検出部175aを有する。尿検出用電極218bは、塗膜170に形成される透孔(図示せず)からのぞく尿検出部175bを有する。便検出用電極143a,143bは、尿センサ118の下端部寄りに塗膜170によって被覆されることのない便検出部144d,144eを有する。また、尿検出用電極218a,218bの上端部にはコネクタ部218c,218dが形成されており、便検出用電極143a,143bの上端部にはコネクタ部244a,244bが形成されている。これらのコネクタ部218c,218dと244a,244bとは、図2のクリップ120によって把持される。一対の尿検出用電極218a,218bの間において、尿検出部118dどうしが尿によってつながると、電流が流れてポンプユニット108を作動させることができる。また、一対の便検出用電極143a,143bの間において、便検出部144d,144eどうしが便または便に含まれる水分によってつながると、電流が流れて図4,5の尿レシーバ102の場合と同様に排便のあったことを知らせることができる。
【0069】
なお、断線検出用回路250には、電源116a(図1参照)からの微弱な電流が常時流れており、例えば尿検出用電極218bが損傷を受けて断線した場合に、ポンプユニット108に付属する断線警報器(図示せず)を作動させ、その断線を知らせて尿レシーバ102の交換を促すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、尿を効率よく速やかに吸引することが可能な尿レシーバの生産が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】尿レシーバを含む自動尿処理装置の概略構成図。
【図2】尿レシーバの着用状態を示す図。
【図3】尿レシーバの平面図。
【図4】図3のIV−IV線切断面を示す図。
【図5】図3のV−V線切断面を示す図。
【図6】容器部の斜視図。
【図7】図6のVII−VII線断面図。
【図8】図6のVIII−VIII線断面図。
【図9】容器部に継手部材が挿入されている図8と同様な図。
【図10】容器部にバックシートおよび透液性シートを接合する工程を示す図。
【図11】実施態様の一例を示す図4と同様な図。
【図12】実施態様の一例を示す図5と同様な図。
【図13】図6と異なる態様の容器部の斜視図。
【図14】尿レシーバの一例を示す図4と同様な図。
【図15】尿レシーバの一例を示す図5と同様な図。
【図16】尿センサの平面図。
【符号の説明】
【0072】
100a 尿吸引機構
102 尿レシーバ
112 容器部
112a 頂縁部分
114 尿排出用開口
118 センサ
124 透液性シート
130 スペーサ
132 フィルタ
136 防漏堤
136b 縁部
136c 端部
136d 端部
136e 縁部
148 底部
150 周壁部
150a 周壁部
150c リブ
152 フランジ部
154 導尿部
156 尿吸引用開口
158 隆起部
160 尿吸引用空間
180 吸引部
200 熱可塑性合成樹脂材料
P 長さ方向
Q 幅方向
R 厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防漏性の容器部と、前記容器部に前記容器部の内外を貫通するように形成されていて前記容器部の外に設けられる尿吸引機構へ接続可能な吸引部と、前記容器部の開口を覆う透液性シートとを含み、前記尿吸引機構による負圧の作用下に前記透液性シートを透過させて前記容器部内へ吸引した尿をさらに前記負圧の作用下に前記吸引部を介して前記容器部の外へ排出させることが可能な尿レシーバであって、
前記容器部は、互いに直交する長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、かつ、底部と前記底部から前記厚さ方向へ起立して前記底部を囲繞する周壁部とを有していて、前記周壁部の頂縁部分によって前記開口が画成されている中空のものであり、前記開口を覆う前記透液性シートが前記頂縁部分に対して固定されることによって、前記容器部と前記透液性シートとが尿吸引用空間を形成しており、前記吸引部が前記尿吸引用空間内に向かって口を開く尿吸引用開口と前記尿吸引用空間外に向かって口を開く尿排出用開口とを有していて前記周壁部を貫通する導尿用の吸引管を含み、前記吸引管が前記容器部を形成している軟質弾性材料によって前記周壁部と一体的に形成されていることを特徴とする前記尿レシーバ。
【請求項2】
前記容器部が、前記周壁部の頂縁部分に前記容器部の外側へ広がるフランジ部を有し、前記透液性シートが前記フランジ部の上面に対して固定されている請求項1記載の尿レシーバ。
【請求項3】
前記尿排出用開口は、前記負圧を作用させるための前記尿吸引機構における導尿チューブを接続できるように形成されている請求項1または2記載の尿レシーバ。
【請求項4】
前記吸引管は、前記尿吸引用空間に向かって延びた先端に前記尿吸引用開口を有し、前記尿吸引用開口が、前記周壁部の一部分および前記周壁部から前記容器部内側へ突出するように形成されたリブのいずれかと対向していて、前記一部分および前記リブのいずれかと2〜7mm離間している請求項1〜3のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項5】
前記透液性シートのJIS L 1096、セクション6.27.1に規定される通気性が湿潤状態において0〜100cc/cm/秒の範囲にあり、乾燥状態において20〜200cc/cm/秒の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項6】
前記透液性シートがレーヨン繊維を40重量%以上含むものである請求項5記載の尿レシーバ。
【請求項7】
前記容器部が熱可塑性合成樹脂によって形成されており、前記透液性シートは前記容器部のフランジ部と向かい合う部位に前記容器部の熱溶融温度とほぼ同じであるかそれよりも低い熱溶融温度を有する熱可塑性合成樹脂材料を含み、前記熱可塑性合成樹脂材料を溶融させることにより前記透液性シートが前記フランジ部に固定されている請求項2〜6のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項8】
前記熱可塑性合成樹脂材料が熱可塑性合成繊維からなる透液性の不織布であって、前記不織布が前記透液性シートと重なり合って前記容器部のフランジ部に固定された状態で前記容器部の開口を覆い、前記透液性シートの前記通気性は、前記透液性シートがこれと重なり合う前記不織布と一体になることによって満たされている請求項7記載の尿レシーバ。
【請求項9】
前記熱可塑性合成樹脂材料が不透液性のフィルムであって、前記容器部のフランジ部から前記容器部の外側に向かって広がっていて前記容器部の内側に向かって広がることのないものである請求項7記載の尿レシーバ。
【請求項10】
前記容器部の前記底部には、前記厚さ方向の下方から前記透液性シートに当接して前記透液性シートの前記底部に向かっての撓みを阻止可能な複数の隆起部が形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項11】
前記容器部は、柔軟弾性材料によって形成されており、前記長さ方向を前記尿レシーバ着用者の身体の上下方向に一致させるものであり、複数の前記隆起部が前記長さ方向と前記幅方向とに整列する状態で形成されている請求項10記載の尿レシーバ。
【請求項12】
前記尿レシーバは、尿レシーバ着用者の肌と前記透液性シートとの間に位置して前記着用者の尿の排泄を検知することが可能な電気的センサを有している請求項1〜11のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項13】
前記電気的センサの少なくとも一部分は、透液性であってかつ排泄物中の固形分が前記電気的センサに接触することを防ぐことが可能なシート状フィルタによって被覆されており、さらに、前記電気的センサと前記フィルタとの間には、厚さが少なくとも0.7mmであり、孔径が少なくとも2mmである複数の透孔を有していて前記厚さ方向において実質的に非圧縮性であるシート状スペーサが介在している請求項12記載の尿レシーバ。
【請求項14】
前記尿レシーバは、前記幅方向の両側それぞれに前記長さ方向へ延びる防漏堤を有しており、前記防漏堤は、不透液性シートで形成されていて前記幅方向における外側寄りの縁部と前記長さ方向における両端部とが前記尿レシーバにおいて固定された状態にある一方、前記幅方向における内側寄りの縁部が固定されておらず、かつ、前記長さ方向へ弾性的に伸長・収縮可能な状態にある請求項1〜13のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項15】
前記容器部は、その外面側が不透液性シートによって被覆されており、前記不透液性シートは、前記容器部の外側へ広がる部分が、前記容器部の内面側にあって前記容器部から前記外側へ広がるシート材料に接合している請求項1〜14のいずれかに記載の尿レシーバ。
【請求項16】
前記不透液性シートが熱可塑性合成樹脂フィルムおよび前記フィルムと前記フィルムの外面側に接合した不織布とからなる積層シートのいずれかである請求項15記載の尿レシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−22785(P2009−22785A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262169(P2008−262169)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【分割の表示】特願2006−188783(P2006−188783)の分割
【原出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】