説明

尿器

【課題】使用者に負担をかけることなく、排尿量の計測を簡易且つ的確に行えるようにする。
【解決手段】排尿口3を有する尿器本体1と、該尿器本体1の上面部1aに設けられる持ち手2と、排尿量を計測するために前記尿器本体1に設けられる目盛5とを備え、該目盛5を、前記尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で読み取り可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿を受けるために瓶状に形成された容器に関するものであり、特に排尿量を容易に計測することのできる尿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の尿器としては、例えば次のようなものが存在する。即ち、この従来のものは、前方側に排尿口を有する瓶状の尿器本体と、該尿器本体の上面に設けられる持ち運び用の持ち手と、前記尿器本体の側面に設けられる線状の計測用目盛とを備えている。
【0003】
また、尿器本体の後方側には平面部が設けられており、これを下向きにして尿器本体を起立させた状態で排尿量の読み取りができるように、前記目盛は平面部と平行に形成されている(特許文献1)。このように尿器本体に目盛を設けることにより、排尿量の変化を的確に把握することが可能となり、患者等の体調管理や健康状態のチェックを行うことができる。
【0004】
かかる尿器を使用する場合は、持ち手を把持しつつ受口を身体に当てながら排尿が行われる。そして、排尿後には持ち手を把持しながら尿器本体を起立させた状態で、或いは尿器本体の平面部を台上等に載置した状態で、その目盛を読み取って排尿量が計測される。
【特許文献1】実開昭50−145195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の尿器ように、排尿量を計測する際に持ち手を把持してわざわざ尿器本体を起立状態に保持したり、或いはこの状態でその平面部を台上等に載置するのは、非常に煩雑である。
【0006】
また、起立状態で台上等に載置した尿器本体は、その形状からして安定性に欠けるという欠点も有しており、不用意に横転して排尿が漏洩するという虞も多分にあった。
【0007】
更に、横臥状態にある使用者が排尿後に自ら排尿量を確認するために、尿器を起立状態にする操作は必ずしも容易なものではなく、その際に尿をこぼす虞もある。たとえ尿器を起立状態にすることができても、この状態で排尿量を正確に読み取ることは困難である。
【0008】
それ故に、本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用者に負担をかけることなく、排尿量の計測を簡易且つ的確に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る尿器は、排尿口を有する尿器本体と、該尿器本体の上面部に設けられる持ち手と、排尿量を計測するために前記尿器本体に設けられる目盛とを備え、該目盛が、前記尿器本体の下面部を下向きにした状態で読み取り可能に構成されたものである。
【0010】
かかる尿器を使用して排尿を行う場合は、通常は持ち手を把持しつつ尿器本体の下面部を下向きにした状態でなされる。排尿後はその儘使用者等が尿器本体の下面を下向きした状態に保持したり、この状態で机や台上等に載置して、その目盛を読み取り排尿量を計測する。
【0011】
これによると、排尿後にわざわざ尿器本体を起立状態に回動して排尿量を計測する従来のものと比較して、その計測を簡易に且つ安定した状態で行うことができる。
【0012】
また、横臥状態にある使用者でも尿器を起立状態にすることなく、目盛の正確な読み取りが可能となる。
【0013】
更に、前記目盛は、尿器本体の下面部と平行に設けられた線状の第1目盛で構成してもよい。
【0014】
これによると、尿器本体の下面部を下向きにした状態で目盛を読み取ることが可能となり、排尿量を計測することができる。
【0015】
また、前記目盛は、下面部と平行に設けられた線状の第1目盛と、該第1目盛に直角に形成されて、前記尿器本体を起立させた状態で読み取り可能な線状の第2目盛とで構成することも可能である。
【0016】
これによれば、尿器本体の下面部を下向きにした状態だけではなく、尿器本体を起立させた状態でも第2目盛を読み取ることにより排尿量を計測することが可能になる。即ち、その時の状況等に応じて柔軟に対応することができて、使い勝手も良好である。
【0017】
また、前記目盛は点状に形成してもよい。かかる点状の目盛によれば、これだけで尿器本体の下面部を下向きにした状態、及び尿器本体を起立させた状態での読み取りが可能になる。外観的にもすっきりしたデザインとなる利点もある。
【0018】
更に、前記目盛の側方には排尿量を示す数値を設けてもよい。これによれば、数値の読み取りによって、排尿量を迅速且つ的確に計測することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、使用者に負担をかけることなく排尿量を容易且つ的確に計測することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、排尿が貯えられる瓶状の尿器本体1と、該尿器本体1の後方側上面部1aに取付けられる持ち運び用の持ち手2と、前記尿器本体1の後方側一側面に設けられる筒状の排尿口3と、該排尿口3に着脱自在に取付けられる受口4とを備えた女性用尿器の正面図である。これらの各部材は、可撓性を有する合成樹脂で形成されており、尿器本体1は透明又は半透明に形成されている。また、尿器本体1の下面部1bは略平面状に形成されており、通常は同図に示すように、この下面部1bを下向きにした状態で机や台上等に載置される。
【0021】
尿器本体1の一側部には目盛5が設けられている。この場合、目盛5は尿器本体1の両側部に設けてもよい。かかる目盛5は、尿器本体1の下面部1bと平行に複数形成された線状の第1目盛6と、これに垂直に連設された第2目盛7とからなり、略Lの字状に形成されている。また、第2目盛7の側方には排尿量を示す数値8が100ml毎に100mlから700mlまで形成されている。尚、尿器本体1の形状は所謂扁平状であるために、第1目盛6の各目盛の間隔は第2目盛7のそれよりも狭くなっている。また、各目盛6、7の間隔は等間隔ではなく、尿器本体1の形状に応じて不均一となっている。
【0022】
尿器本体1の後方側の上面部中央には、図2に示すような断面略Tの字状の凸部9が前後方向に設けられ、その後方側の上部両側面には平面略三角形状の係止部10が突設されている。持ち手2は環状の把持部2aと、尿器本体1に取付けられる取付部2bとからなっている。把持部2aの裏面には、図1に示すように後方側に位置ずれさせて凸状部11が突設されている。
【0023】
従って、尿器の前後が視覚では判別できないような夜間等に於いても、使用者は把持部2aを把持して凸状部11に触れることにより、尿器が前方或いは後方の何れの側を向いているかを容易に判別することができる。これにより、誤って排尿口3側を下方に向けてしまい、受口4から尿が漏洩するという事態を適切に回避できる。
【0024】
また、持ち手2の取付部2bの下面中央には、図3に示すように、尿器本体1の凸部9がスライド可能に嵌着される断面略Tの字状の凹部12が前後方向に形成されている。かかる凹部12に前記凸部9を嵌着して、持ち手2が尿器本体1に取付けられる。尚、持ち手2の凹部12の後方側の所定位置には、図4に示すように、前記凸部9の係止部10が係止される幅広の溝部13が設けられている。この溝部13に係止部10を係止させることにより、持ち手2の尿器本体1からの離脱が阻止される。
【0025】
前記受口4の一端側に設けた筒状部30の端面には、図5に示すように取付孔31が環状に形成されている。この取付孔31の外側に位置する内面には内向凸部32が環状に形成され、且つ内側に位置する内面には外向凸部33が環状に形成され、該外向凸部33は前記内向凸部32よりも少し奥側に配置されている。かかる取付孔31内に前記排尿口3を嵌入して、受口4が尿器本体1に取付けられる。排尿口3の外周面には、図6に示すように二条の環状膨出部34、35が管軸方向に所定間隔を有して設けられている。受口4を排尿口3に嵌入した際には、同図の如く先端側の環状膨出部34が受口4の取付孔31の奥部分に係合する。一方、他方の環状膨出部35の内面に取付孔31の外向凸部33が嵌合すると共に、環状膨出部35の外面が内向凸部33と係合する。これにより、受口4は排尿口3に確実且つ強固に取り付けられることになる。このため、受口4が排尿口3から不用意に離脱して、尿が漏洩するという事態は生じ難くなる。更に、両部材者間のシール性も大幅に向上するので、取付部分から尿漏れが生じることを良好に回避できる。
【0026】
また、排尿時に於ける身体との良好な密着性を確保するために、受口4の他端側の左右両側面は略半円状に切欠かれている。更に、受口4の筒状部30には、図5に示すように半円状の尿口36が開設されている。その上部に位置する壁面37には、両端に取付孔(図示せず)を有する取付部38が設けられている。尚、尿器の不使用時には受口4に蓋体(図示せず)が装着される。
【0027】
また、尿器本体1内に貯えられた排尿が、受口4の尿口36から外部に漏洩しないように、該尿口36には逆止弁39が設けられている。かかる逆止弁39は、前記尿口36を閉塞するための略半円状の弁本体40と、弁本体40の背面に幅方向に所定間隔を有して対向配置された取付片41とからなっている。各取付片41の内側に突設した軸部(図示せず)を受口4の取付孔に回動自在に嵌入して取付けられる。
【0028】
本実施形態に係る尿器は以上のような構成からなっている。次に、これを使用して排尿量を計測する場合について説明する。
【0029】
先ず、持ち手2の把持部2aを把持しつつ、受口4が身体と接触するように引き寄せ、陰部を排尿口3に相対させて排尿を行う。排尿は通常、尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で行われる。このようにしてなされた排尿は、受口4の逆止弁39を開放し、排尿口3を介して尿器本体1内に貯えられる。
【0030】
尿器本体1に貯えられた排尿の量を計測する場合は、例えば尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態を維持するようにして持ち手2を把持すればよい。この場合、第1目盛6は尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で読み取り可能に構成されているために、かかる第1目盛6を読み取って、排尿量を計測することができる。
【0031】
従って、従来のように尿器本体1をわざわざ起立状態に回動させて計測する必要は一切なく、排尿から排尿量の計測に至るまでの一連の操作は、横臥状態でも容易に行うことができる。これにより、使用者たる患者等の計測操作が簡略化されて、該使用者にかかる負担は軽減される。
【0032】
また、排尿量の計測に当たっては、必ずしも上記の如く尿器本体1を把持しつつ行う必要はなく、例えば机や台上等に尿器本体1の下面部1bを載置する通常の載置状態で行っても構わない。これによると、尿器本体1を起立状態で台上等に載置した状態で行っていた従来の場合よりも、尿器本体1を安定させた状態で排尿量の計測が行え、尿器本体1の横転による排尿の漏洩等という事態を考慮する必要もなくなる。
【0033】
更に、本実施形態に係る尿器は前記第1目盛6のみならず、これに垂直に設けた第2目盛7を有してなるために、例えば尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で第1目盛6が読み取れず、排尿量を計測できないような場合は、従来通り尿器本体1を起立状態にして第2目盛7を読み取れば、排尿量を計測することができる。即ち、その時の状況等に応じて柔軟に対応することが可能であり、使い勝手も大変良好である。
【0034】
また、上述したように、尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で行う排尿中に於いても、使用者等は第1目盛6を読み取ることも不可能ではなくなり、その利便性が向上することになる。
【0035】
更に、このようにして貯えられた排尿は、受口4の逆止弁39により外部へ漏れることはない。従って、使用者は持ち手2を把持しつつ、尿器を所定の位置に収納等することも容易に行うことも可能となる。
【0036】
また、受口4に触ることなく持ち手2を把持しつつ排尿を行える点、受口4と排尿口3との取付構造や逆止弁39の採用等により、尿漏れの発生を抑制できる点に於いて、衛生的な使用が可能になるという利点もある。
【0037】
更に、本実施形態に係る尿器は、全体の構成が極めて簡易であるために、その製作も容易に且つ安価に行えるという実用的な利点もある。
【0038】
尚、上記実施形態に於いては、第1目盛6と第2目盛7とにより目盛5を構成しているが、本発明は決してこれに限定されるものではない。例えば、第1目盛6のみで目盛5を構成しても構わない。要は、目盛5が尿器本体1の下面部1bを下向きにした状態で読み取り可能に構成されればよいのである。
【0039】
また、目盛5は上記実施形態のような線状に限られるものではなく、例えば図7に示すように点状等に形成することも可能である。かかる点状の目盛5によれば、これだけで尿器本体1の下面部を下向きにした状態、及び尿器本体1を起立させた状態での読み取りが可能になる。また、外観的にもすっきりしたデザインとなる利点もある
【0040】
更に、目盛5は上記実施形態の如く尿器本体1に刻印する他、例えば別途印刷したり、シールを貼着して設けても構わない。
【0041】
また、目盛5の側部に形成した排尿量を表す数値8も必要に応じて設ければよいものであり、省略することも可能である。
【0042】
更に、尿器本体1には起立状態での排尿量の計測に備えて、後端部を平面状の載置面を設けてもよい。
【0043】
また、女性用の受口4を装着した尿器について説明したが、本発明の対象は決してこれに限定されるものでない。本発明を男性用の尿器に適用したものを図8に示している。開口部側の形状等が相違する他には大きな違いはなく、略同様の構成からなる各部材には、上記実施形態と同様の番号を付している。この場合も、女性用尿器の場合と同様の作用効果を得ることができる。但し、受口4は必要に応じて設ければよく、必ずしも本発明の必須のものではない。尚、受口4の開口部には蓋体50を装着しており、不使用時に装着される。
【0044】
その他、尿器本体1、持ち手2、排尿口3及び受口4の各部の形状等の具体的な構成も、本発明の意図する範囲内に於いて任意に設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明は、歩行が困難でトイレに行けない病人や高齢者がベッドで寝た儘の状態で使用する尿器について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】尿器の全体構成を示す正面図である。
【図2】尿器本体の上面に設けた凸部を示す斜視図である。
【図3】持ち手の下面設けた凹部を示す斜視図である。
【図4】(a)及び(b)は尿器本体と持ち手との取付状態を示す断面図である。
【図5】受口を示す断面図である。
【図6】受口と排尿口との取付状態を示す断面図である。
【図7】他の実施形態に係る尿器の全体構成を示す正面図である。
【図8】他の実施形態に係る男性用尿器の要部を示す正面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 尿器本体
1a 上面部
1b 下面部
2 持ち手
3 排尿口
5 目盛
6 第1目盛
7 第2目盛
8 数値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排尿口を有する尿器本体と、
該尿器本体の上面部に設けられる持ち手と、
排尿量を計測するために前記尿器本体に設けられる複数の目盛と、を備え、
該目盛が、前記尿器本体の下面部を下向きにした状態で読み取り可能に構成されてなることを特徴とする尿器。
【請求項2】
前記目盛が、下面部と平行に設けられた線状の第1目盛からなる請求項1記載の尿器。
【請求項3】
前記目盛が、底面と平行に設けられた線状の第1目盛と、
該第1目盛に直角に形成されて、前記尿器本体を起立させた状態で読み取り可能な線状の第2目盛と、からなる請求項1記載の尿器。
【請求項4】
前記目盛が、点状に形成されてなる請求項1記載の尿器。
【請求項5】
前記目盛の側方に排尿量を示す数値が設けられてなる請求項1乃至4の何れか一つに記載の尿器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−63746(P2010−63746A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234648(P2008−234648)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】