説明

尿検査方法及び尿検査用キット

【課題】ヒト血清アルブミンやα−酸性糖蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有している物質を非侵襲的、かつ簡便・迅速に測定するための方法及びキットを提供する。
【解決手段】被検者の尿試料と、ヒト血清アルブミン及びα−酸性糖蛋白質の少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブとを接触せしめ、前記サイト特異性プローブの遊離形の量を測定することを特徴とする尿検査方法;並びに前記方法を実施するために用いるキットであって、ヒト血清アルブミン及びα−酸性糖蛋白質の少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブを含む尿検査用キット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト血清アルブミン又はα−酸性糖蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブを用いる尿検査方法及び尿検査用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
生体内における薬理効果の強弱は、標的組織への遊離形薬物の移行量に大きく依存し、
その主要な調節因子の一つが血清蛋白結合である。生体内に吸収された薬物は、循環血液中に移行した後、程度の差はあるものの様々な血清蛋白質と結合する。このような血清蛋白質の中で、薬物の蛋白結合を大きく左右するものに、ヒト血清アルブミン(以下「HSA」という。)やα−酸性糖蛋白質(以下「AGP」という。)がある。それらの蛋白質分子上の主な薬物結合サイトに、例えば、HSAではサイトI及びサイトIIの2個、AGPでは一つの結合サイトが存在している。更に、HSAには遊離脂肪酸の結合サイトがサイトII近傍に存在するため、遊離脂肪酸の増大によりサイトIIは著しく阻害される。この遊離脂肪酸は1日のうち数回大きな幅で変動することが知られている。加えて、肝障害時のビリルビンや腎障害時の尿毒症物質などの内因性物質による各結合サイトへの阻害の影響も重要である。
【0003】
また、内因性物質以外でも蛋白結合力が強く血中濃度が高い薬物は、各々の結合サイトを阻害する場合があるため注意が必要である。もし遊離脂肪酸や結合阻害能を有する薬物等により特定の結合サイトが大きく阻害されれば、その結合サイトに結合していた薬物の遊離濃度は一時的に増加し薬効の増強を生じる可能性が高くなる。これは少ない投与量で薬効を高める効果的な投与法として積極的に利用できる。
【0004】
本発明者らは、既に、血液中の血清を用いHSAやAGPの結合サイトの結合能の差異を利用し、血清内の微環境の変動を把握するための薬学的分布診断法を確立している(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、血清等の血液試料を用いる検査は患者に穿刺するため侵襲性が高く、頻繁に繰り返すことは困難である。肝障害や腎障害時に尿中に排泄される内因性物質においては、その尿中濃度変化を経時的に調べることによって、病態変化を非侵襲的に評価することが可能になるが、指標となる物質を尿中から抽出する操作を伴うため煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3833151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、HSAやAGPの結合サイトに対して特異的結合性を有している物質を非侵襲的、かつ簡便・迅速に測定するための方法及びキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)被検者の尿試料と、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブとを接触せしめ、前記サイト特異性プローブの遊離形の量を測定することを特徴とする尿検査方法。
(2)HSA及び/又はAGPの結合サイトに対して特異的結合性を有している物質の尿試料中の量を測定するために行う前記(1)に記載の方法。
(3)薬物又は内因性物質の蛋白質結合度を測定するために行う前記(1)又は(2)に記載の方法。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法を実施するために用いるキットであって、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブを含む尿検査用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、HSAやAGPの結合サイトに対して特異的結合性を有している物質を非侵襲的、かつ簡便・迅速に測定するための方法及びキットを提供することができる。本発明の方法及びキットを用いることにより、薬物の治療効果の予測、薬物の適切な選択・投与量の決定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は患者個々の経時的病態変化を想定した場合の本発明の分析方法の一例の概略を示す。
【図2】図2は患者AとBの比較を想定した場合の本発明の分析方法の一例の概略を示す。
【図3】図3は各サイト特異性プローブ(左:ワルファリン;右:イブプロフェン)の遊離形分率の変化を示す。
【図4】図4は経時的に採取した試料(A1とA2)を用いて、各サイト特異性プローブ遊離形分率の変化から試料に含まれる物質量の経時変化を評価する場合の本発明の分析方法の一例の概略を示す。
【図5】図5は含有物質や量が不明な複数の試料(AとB)を用いて、各サイト特異性プローブ遊離形分率の変化から各試料に含まれる物質量の多少を評価する場合の本発明の分析方法の一例の概略を示す。
【図6】図6は各サイト特異性プローブ(左:ワルファリン;中:イブプロフェン;右:ベラパミル)の遊離形分率の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、HSAやAGPの結合サイトに対して特異的結合性を有している物質(薬物又はその他の有機化合物)を非侵襲的に測定するためのものであり、検査試料として尿試料を用いる。
【0012】
ネフローゼ症候群の患者のように、蛋白尿陽性の尿中にはHSAやAGPが含まれているが、腎機能が正常な患者の尿中にはHSAやAGPは含まれていない。
【0013】
尿試料は使用前に前処理、例えば、希釈や、濾過、留去、濃縮、妨害物質の不活性化、試薬の添加などをしてもよい。
【0014】
本明細書において「薬物」とは、生物学的な活性を期待されて利用されるものであれば何ら制限はないが、例えば治療目的で投与されるものなどが挙げられる。該薬物としては、合成医薬品、蛋白質、ペプチド、微生物、アミノ酸、核酸、ホルモン、ステロイド、ビタミン、抗生物質、治療薬、それらの代謝物などが挙げられる。該薬物としては、代表的には生体蛋白質(好ましくはHSA、AGP)に存在する結合サイトに結合する活性を有するものあるいは該結合サイトに結合する部位を少なくとも一つ有するものが挙げられる。
【0015】
本発明においては、薬物又はその他の有機化合物等の物質に対する結合サイトを有している蛋白質として、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質を用いる。腎機能が正常な患者の尿中にはHSAやAGPは含まれていない。
【0016】
HSAには複数の結合サイトが存在することが知られており、例えば以下のサイトに下記のような薬物又はその他の有機化合物が結合することが知られている。
【0017】
HSA分子上の結合サイト
1)サイトI:ワルファリン、フェニルブタゾン、ダンシル−L−アスパラギン、フェニトイン、アザプロパゾン、バルプロ酸、ジクマロール、インドメタシン、ブコローム、3−カルボキシ−4−メチル−5−プロピル−2−フランプロパン酸など
2)サイトII:ジアゼパム、L−トリプトファン、ダンシルサルコシン、イブプロフェン、バルプロ酸、サリチル酸、ジクマロール、インドメタシン、インドール酢酸、インドキシル硫酸など
3)サイトIII:ジギトキシンなど
4)ビリルビンサイト:ビリルビンなど
【0018】
また、AGPでは、例えば以下のサイトに下記のような薬物が結合することが知られている。
【0019】
AGP分子上の結合サイト
1)塩基性薬物結合サイト:ベラパミル、クロルプロマジン、ジソピラミド、リドカインなど
2)酸性薬物結合サイト:ジクマロールなど
3)酸・塩基共通サイト:プロプラノロールなど
【0020】
使用プローブ物質としては、HSA又はAGPの結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブを、目的に応じて1種又は2種以上組み合わせて用いることができるが、その物質同士の交叉反応により当該測定に悪影響を与えないものを組み合わせることが好ましい。
【0021】
代表的な場合、フェニトイン、ジアゼパム及びジソピラミドの組合せなどが挙げられる。例えば、HSA分子上の結合サイト、すなわち、サイトI、サイトII、サイトIIIなどに特異的に結合する物質を任意に選択し、同様にAGP分子上の結合サイトすなわち、塩基性薬物結合サイト、酸性薬物結合サイトなどに特異的に結合する物質を任意に選択し、それらのうちの複数のものを使用し、好適には複数の結合サイトにつき、その結合性(結合阻害)を定量することが挙げられる。
【0022】
薬物又はその他の有機化合物としては、公知のものであってもあるいは新規なものであってもよいが、生体に存在する結合サイトを有する蛋白質に結合するものが挙げられ、例えば、メルク・インデックス (Susan Budavari (Ed.), The Merck Index: an encyclopedia of chemicals, drugs, and biologicals, 13th Edition, Whitehouse Station, N.J.: Merck Research Laboratories Division of Merck, 2001) などに記載のものなどが挙げられる。
【0023】
本発明方法では、尿試料と、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブとを接触せしめる。この際の混合の順序は特に制限されない。例えば、尿試料に、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質、前記サイト特異性プローブを順次添加してもよく、また、HSA及びAGPの少なくとも1種の蛋白質を含む水溶液、例えば緩衝液に、前記サイト特異性プローブ、尿試料を順次添加してもよい。
【0024】
異種サイト特異性プローブ間の相互作用を防止する点から、サイト特異性プローブの添加濃度はHSA及びAGPの添加濃度の1/10以下にすることが好ましく、1/20以下にすることが更に好ましい。
【0025】
また、添加試料によって増加した各サイト特異性プローブの遊離率をサイト間で一律に評価できる点から、各サイト特異性プローブは、HSA及びAGPへの結合能がほぼ同じものを選択することが好ましい。
【0026】
本発明の分析方法の具体例の概略を図1、2、4及び5に示す。
例えば、図4に示す方法では、HSA、AGP及び各種サイト特異性プローブを含有する緩衝液を調製し、経時的に採取した一定量の尿試料A1とA2を添加する。その後、それらを限外濾過し、得られたろ液より、各種サイト特異性プローブの遊離濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、標識イムノアッセイ法、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)等で測定する。添加した尿試料中には血液から除去された尿毒症物質(例えば、インドール酢酸、インドキシル硫酸、3−カルボキシ−4−メチル−5−プロピル−2−フランプロパン酸)や遊離脂肪酸などの内因性物質が多く含まれており、それらの物質によりHSAとAGPの結合サイトに結合していたサイト特異性プローブが置換され遊離サイト特異性プローブ濃度が増大する(この逆の結合増強も起こる)。これら各種サイト特異性プローブの結合阻害の程度や変動パターンと尿の生化学検査値及び透明度・色などの変化の関係を解析することで、体内で生じている動態学的変化を尿中内の経時的変化から把握することができる。
【0027】
なお、ネフローゼ症候群の患者のように、蛋白尿陽性の尿試料には、HSA及びAGPが含まれているので、尿試料中のHSA及びAGPが検査結果に影響するのを防止する必要がある場合には、尿試料の添加量を一定量以下にすることが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
(実施例1)
(方法)
健常人から採取した尿(A)にHSAを溶解して疑似ネフローゼ尿を調製した(A1;HSA100μM、A2;HSA300μM)。また、別の健常人から採取した尿(B)についても同様に疑似ネフローゼ尿を調製した(B1;HSA100μM、B2;HSA300μM)。HSAの薬物結合サイトの結合能を評価するために、各サイト特異性プローブとして、ワルファリン(サイトI)及びイブプロフェン(サイトII)を最終濃度が10μMとなるように疑似ネフローゼ尿に添加して、試験液を調製した。試験液を限外ろ過して得たろ液中の各サイト特異性プローブ濃度(遊離形濃度)をHPLCを用いて測定し、遊離形分率を求めた。
【0030】
サイト特異性プローブの遊離形分率=[サイト特異性プローブの遊離形濃度]/[サイト特異性プローブ総濃度(10μM)]
【0031】
HPLC測定条件
移動相;アセトニトリル:0.1M酢酸緩衝液(pH5.7)=35:65
カラム;Sunniest C18(5μm)4.6mm i.d.×150mm
カラム温度:40℃
流速;0.5ml/min
測定波長;ワルファリン(励起波長309nm、蛍光波長405nm)、イブプロフェン(励起波長223nm、蛍光波長285nm)
【0032】
患者個々の経時的病態変化を想定した場合の本発明の分析方法の一例の概略を図1に示す。
患者AとBの比較を想定した場合の本発明の分析方法の一例の概略を図2に示す。
【0033】
(結果)
結果を図3に示す。
(1)A1とA2又はB1とB2における各サイト特異性プローブの遊離形分率の差異は、患者の腎臓の病態が変化したこと(この場合は腎尿細管へ漏出したHSA濃度の変化)を示す。したがって、サイト特異性プローブの遊離形分率の変化を経時的に調べることによって、患者の病態の重症度を評価することが可能になる。
【0034】
(2)A1とB1又はA2とB2における各サイト特異性プローブの遊離形分率の差異は、AとBの尿中物質の量や割合が異なることを示す。
【0035】
(3)(1)と(2)における各サイト特異性プローブの遊離形分率の差異からは、患者の病態や尿中物質の変化を簡便に評価することが可能になるが、これらの結果から薬物投与計画を企てることも可能になる。例えば、薬理作用部位が腎尿細管中にある薬物で、特に蛋白結合性の高い薬物(利尿薬など)は、尿細管中でHSAと強く結合すると薬理効果に影響する遊離形濃度(蛋白非結合形濃度)が低下し、薬理作用部位への移行が減少するため治療効果が減弱する。この薬物の効果的な投与計画を(1)のケースで考えてみると、各サイト特異性プローブの遊離形分率は、A2よりもHSA濃度の低いA1(又はB2よりもB1)において大きいことから、A1(又はB1)の状態で薬物を投与すると薬物とHSAの結合が阻害されて遊離形濃度が上昇するため、治療効果も増強する可能性が高くなる。次に、(2)のケースで考えてみると、各サイト特異性プローブの遊離形分率は、A1よりもB1(又はA2よりもB2)において大きいことから、B1(又はB2)の状態で薬物を投与すると、薬物とHSAの結合が阻害されて遊離形濃度が上昇するため、治療効果も増強する可能性が高くなる。
【0036】
(実施例2)
(方法)
HSA20μM、AGP20μMを67mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解し、これらの薬物結合サイトに結合する各サイト特異性プローブ(2μM)を添加して試験液(300μL)を調製した。サイト特異性プローブは、HSAのサイト特異性プローブとして、ワルファリン(サイトI)及びイブプロフェン(サイトII)を用い、AGPのサイト特異性プローブとして、ベラパミルを用いた。次に、この試験液に一定量(100μL)の試料(3人の健常男性から採取した尿A、B、Cを用いた。コントロールには緩衝液を用いた。)を添加し、限外ろ過法により得たろ液中の各サイト特異性プローブ濃度(遊離形濃度)をHPLCを用いて測定し、遊離形分率を求めた。
【0037】
サイト特異性プローブの遊離形分率=[サイト特異性プローブの遊離形濃度]/[サイト特異性プローブ総濃度(2μM)]
【0038】
HPLC測定条件
移動相;アセトニトリル:0.1M酢酸緩衝液(pH5.7)=35:65
カラム;Sunniest C18(5μm)4.6mm i.d.×150mm
カラム温度;40℃、
流速;0.5ml/min
測定波長;ワルファリン(励起波長309nm、蛍光波長405nm)、イブプロフェン(励起波長223nm、蛍光波長285nm)、ベラパミル(励起波長278nm、蛍光波長312nm)
【0039】
経時的に採取した試料(A1とA2)を用いて、各サイト特異性プローブ遊離形分率の変化から試料に含まれる物質量の経時変化を評価する場合の本発明の分析方法の一例の概略を図4に示す。
【0040】
含有物質や量が不明な複数の試料(AとB)を用いて、各サイト特異性プローブ遊離形分率の変化から各試料に含まれる物質量の多少を評価する場合の本発明の分析方法の一例の概略を図5に示す。
【0041】
尿の評価の場合は、尿中尿素窒素(UN)濃度(血中ではBUN濃度)を生化学検査値として測定することで、尿毒症物質を含む尿中物質の総濃度をおおよそではあるが推察できる。
【0042】
(結果)
結果を図6に示す。
(1)尿A、B、Cにおいて、ワルファリンとベラパミルの遊離形分率はコントロールに対して大きくなり、イブプロフェンの遊離形分率はコントロールに対して著しく増大した。これより、尿A、B、Cには、HSAやAGPの結合に影響する物質が存在し、特に、サイトIIに結合する物質が多量に存在するか、又はサイトIIに対する結合定数の大きな物質が存在することが示唆された。実際、尿中には腎から排泄された尿毒症物質であるインドール酢酸やインドキシル硫酸のようなサイトIIに強く結合する物質が存在する。本診断法により、尿毒症物質を含む尿中物質の存在を類推できる。
【0043】
(2)尿A、B、Cに存在する蛋白結合に影響する尿中物質の量の多少について考えてみると、ワルファリン、イブプロフェン及びベラパミルの遊離形分率は、それぞれ尿B、尿C及び尿Cが最も高かったことから、尿BはサイトIに結合する尿中物質の量が最も多いこと、尿CはサイトIIとAGPに結合する尿中物質の量が最も多いこと、尿Aは蛋白結合に影響する尿中物質の量が3つの試料の中で最も少ないことがわかった。これは、尿中に排泄される種々の尿中物質の量は個人の生体環境によって異なっているためであり、本診断法により、各結合サイトに結合する尿毒症物質を含む尿中物質の量の多少についても調べることが可能になった。
【0044】
(3)尿A、B、Cの尿中尿素窒素(UN)濃度(血中ではBUN濃度)は、尿Aが378mg/dL、尿Bが356mg/dL、尿Cが446mg/dLであり、尿Cが最も高かった。この結果は、尿Cが尿Aや尿Bよりも各々の結合サイトの結合を最も強く阻害する要因の1つであることを予測させる。
【0045】
(実施例2の補足)
本診断法は、試料の液量が少量であっても試料中に含まれる物質の量的変化を評価することが可能であること、また、HSAやAGPは試料の液量よりも多い緩衝液中に存在するため、蛋白質が試料の液性の影響を受けることがなく、サイト特異性プローブの遊離形濃度変化を正確に評価することが可能になるなど、これまでみられなかった画期的な分析法である。また、必要に応じて高感度かつ安定した評価を行うために、使用するサイト特異性プローブや測定条件を変更・追加することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の尿試料と、ヒト血清アルブミン及びα−酸性糖蛋白質の少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブとを接触せしめ、前記サイト特異性プローブの遊離形の量を測定することを特徴とする尿検査方法。
【請求項2】
ヒト血清アルブミン及び/又はα−酸性糖蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有している物質の尿試料中の量を測定するために行う請求項1記載の方法。
【請求項3】
薬物又は内因性物質の蛋白質結合度を測定するために行う請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法を実施するために用いるキットであって、ヒト血清アルブミン及びα−酸性糖蛋白質の少なくとも1種の蛋白質と、該蛋白質の結合サイトに対して特異的結合性を有しているサイト特異性プローブを含む尿検査用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−57562(P2013−57562A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195187(P2011−195187)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)