説明

尿道閉塞診断

尿道閉塞を判断するシステムおよび方法が提供される。このシステムは、患者の尿流の近くに配置するためのトランスデューサ構成と、当該トランスデューサ構成と通信する制御装置とを備えている。トランスデューサ構成は、少なくとも尿流により生じる音波を受信し、これを示す出力信号を生成する少なくとも1の音響トランスデューサを備えている。制御装置は、出力信号を受信および処理し、尿道閉塞を示す出力信号の変化を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に医療装置の分野に属し、患者の尿道閉塞の定量的な診断の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大は、50歳以上の男性の半数以上に発現する広く知られた現象である。80歳では、約80%の男性が肥大した前立腺を有する。前立腺の肥大は、年齢に特有のホルモン障害に関連すると考えられており、良性前立腺過形成またはBPHと呼ばれている。少数の事例では、前立腺肥大は前立線癌に関連する。
【0003】
原因はともあれ、肥大した前立腺は、膀胱の制御の問題を引き起こす。これは、前立腺が膀胱頸部の下の尿道を取り囲んでいるからである。肥大した前立腺は尿道を圧迫し、尿道の形状を変形させ、尿道の断面積を減少させる。緊急の状況では、尿道が完全に閉塞されることがある。
【0004】
尿道の閉塞の定量的な診断は、前立腺障害の早期発見に有用であり、すなわち、医薬または他の適切な治療の予測できる。既に膀胱の制御障害がある事例では、定量的な診断は、事例の重大性を判断し、治療法の効果が失われたことを監視するのに有用である。
【0005】
大局的な見地から、尿道閉塞の定量的な診断は、幾分複雑な下部尿路症状(LUTS)のスクリーニングおよび診断処置で行われるいくつかの一般的な検査のうちの一つである。下部尿路症状は、身体の神経系、膀胱/尿管の自律神経系、排尿筋および括約筋等の障害を含むいくつかの要素に関連している。したがって、前記スクリーニング処置は、患者に尿道障害を引き起こす複数の医学的状態を区別するのに必須である。
【0006】
したがって、尿道閉塞の認識および定量的な診断を容易且つ単純化することは、閉塞が存在する事例のみならず、閉塞の存在を否定する反対の事例にも必要不可欠であり、これにより的確な診断をもたらす。
【0007】
一般に前立腺の状態の定量的な検出に用いられる方法は、前立腺の肥大を調べるデジタルの直腸検査、レンズを尿道および膀胱に挿入して異常がないか調べる(局部麻酔下の)膀胱鏡検査、腫瘍または閉塞を明らかにする染料が静脈に注入された場合の尿道のX線放射からなる静脈の腎盂像、前立腺の超音波検査の技術を含む。後者は通常、前立腺を調べる直腸のプローブを利用し、且つ時折癌を検出できる経直腸的超音波断層法(TRUS)と、腹部に配置される装置を利用した経腹壁的な超音波検査の2つの方法のうちの一つを用いて実現される。TRUSを経腹壁的な超音波検査と比較すると、TRUSは、前立腺の体積または尿道閉塞の程度を測定するのが非常に正確であり、一方、経腹壁的な超音波検査は、排尿後の残尿の正確な測定を提供し、TRUSよりも侵襲的でなく費用が安い。
【0008】
前立腺の状態の定量的な検出のためのさらに別の周知な技術は、尿流量測定(uroflowmetry)検査に基づく。これは、尿流の速度を電子的に測定することにより、膀胱に閉塞がないかどうかを判断することを目的とする。しかしながら、この検査は、BPHだけでなく、尿道の異常、弱った膀胱筋、または他の原因によることもある閉塞の原因を特定することができない。この技術によると、患者は、検査前の数時間は排尿しないように、また膀胱を満たし、排尿を強く促すために多量の流体を飲むように指導される。この検査を行うために、患者は、尿流量測定器が備え付けられた特別なトイレに排尿する。正確性を保証するために患者が排尿中に動かないことや、患者が通常通り排尿し、膀胱を空にするために緊張せず、あるいは尿流を阻止しないようにすることは重要である。自意識が原因の緊張または自制などの多くの要因が尿流に影響を与えることがあり、このため、専門家は検査を少なくとも2回行うことを推奨している。尿流率は、1秒当たりに通過する尿をミリリットルで算出する(mL/s)。ピーク時の尿流率の測定値が記録され、Q[最大]と呼ばれる。Q[最大]が大きくなるにつれ、患者の尿流率がよくなる。12mL/sよりも小さいQ[最大]の人は、尿閉の危険性が尿流の強い人の4倍である。測定値Q[最大]は、閉塞の重症度を判断し、治療の成功を判断する基礎として用いられる。しかしながら、これは多くの理由により非常に正確ではない、すなわち、尿流は個人によって異なり、また検査によっても異なる。患者の年齢を考慮しなければならない。通常、尿流率は人間の年齢に従って減少し、Q[最大]は通常、若者で25mL/sよりも多く、年配者で10mL/sよりも少ない。Q[最大]のレベルは、症状の重症度に対する患者の感じ方と必ずしも一致しない。
【0009】
現在利用されている非侵襲的な方法は、尿道の閉塞を個別に判断し、またはこれの定量的な測定を行うことができない。例えば、尿流量測定は、膀胱の内圧が分からない限り、閉塞および/またはその重症度を必ずしも教えるわけではない。これは、低い尿流率は、尿道閉塞の問題というよりはむしろ排尿筋の問題であることがあり、一方で、通常検出される尿流率は、尿道閉塞により生じる特定の流れ抵抗を補正する付加的な腹部/膀胱の圧力に起因することがあるため、必ずしも通常の尿道を示すわけではない。したがって、膀胱の内圧の同時測定と組み合わした尿流量測定が、様々な要因(すなわち、尿道の流れ抵抗および腹部/膀胱の圧力)の区別を可能にするために求められている。しかしながら、膀胱の内圧測定は、侵襲的な処置、すなわちカテーテルを膀胱に挿入することが必要である。この処置に伴う不都合および感染症の危険性により、その使用頻度は低く、特別な事例にのみ適している。
【0010】
米国特許第6,063,043は、受動的な音響により患者の膀胱尿管逆流現象の有無を検出する方法を開示している。この技術によると、患者の排尿の開始直前の患者の腹部の音が増幅され、増幅された音の膀胱尿管逆流現象に特有の音声信号の有無が検出される。信号の存在は、患者の膀胱尿管逆流現象の存在を示している。
【0011】
米国特許第6,428,479は、癌などの前立腺異常を検出する技術を開示している。この技術は、前立腺の血液に含まれる造影剤の流入の動力学の超音波測定、および/またはスポークのような前立腺の血管パターンにおける病気に関連する非対称の観測を用いる。
【0012】
WO05/067392は、前立腺を画像化する超音波および磁気共鳴用に調整された直腸プローブを開示している。このプローブは、超音波画像プローブと、MRIプローブと、超音波プローブおよびMRIプローブを結合するリンクとを備えている。MRIプローブは、直腸プローブの外側の領域を画像化するMRIの静的な磁界を生成する第1の磁界源と、MRI画像領域内の細胞核を励起させる時間により変化する磁界を生成する第2の磁界源と、励起された細胞核からのNMR信号を受信し、これを示すMRL画像データを生成するレシーバとを備えている。
【0013】
WO05/004726は、腫瘍を含む領域のドップラー血流画像(Doppler flow image)を分析する方法を開示しており、この領域は、骨盤、子宮付属器、子宮、卵巣、胸、前立腺、肝動脈、肝臓を含む。この技術によると、ドップラー血流画像は、3次元のフロー表現として表され、腫瘍の悪性の可能性を判断するために、3次元のフロー表現の速度スペクトルを特徴付ける少なくとも1のパラメータが算出され、これにより、ドップラー血流画像を分析する。
【0014】
米国特許第6,863,654は、治療要素を患者の前立腺に正確に設置するために、リアルタイムで患者の尿道の解剖学的な方向を特定する方法を開示している。この技術は、外部の膨張可能な画像用の袋(imaging bladder)を備えるカテーテルを利用する。このカテーテルは、通常、画像用の袋が前立腺の治療位置に整列されるまで患者の尿道に挿入される。画像装置の画像プローブは、尿道の近接部分に且つ前立腺の治療位置に対して操作可能に配置される。画像装置は、前立腺の治療位置のリアルタイムの画像を取得するために作動する。画像用の袋は、画像用の袋の内部と尿道壁との間の音響インターフェースの電源を入れ、これを明確にする必要がある場合に充填される。尿道の境界は、尿道に対する治療要素の適切な配置を特定するために、治療要素を配置する際に音響インタフェースで特定および表示される。
【0015】
RU2224464は、局所的な前立腺の血液循環の超音波によるドップラー反響測定(echometric)検査を用いた方法を開示している。定量的および定量的な指標(インデックッス)が決定される。この技術によると、慢性前立腺炎は、1.1よりも大きい脈拍の指標と、実際に健康な人よりも4.5cm/s少ない静脈の血液循環を検出することにより診断される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本分野では非侵襲的に尿道閉塞を即座に示す技術の必要性があり、これにより、患者が実際に物理的な症状を経験する前に、下部尿路症状(LUTS)のスクリーニングおよび診断の処置を短縮し容易にするのを補助する。
【0017】
本発明は、尿道閉塞により尿流が様々な断面積の流路を通過し、これにより通常の尿道の尿流の特性と異なる特性である尿の乱流が生じるという事実を利用する。本発明は、このような尿の乱流が部分的に狭められた尿道内で固有の周波数の音を発生させることを発見した。したがって、乱流に特有の音の認識は、尿道の尿流路における流れを阻止するものを示しており、これの周波数および大きさは、閉塞のパーセンテージ範囲を示し、トランスデューサインタフェースと閉塞の位置との間の距離を示す。
【0018】
本発明の一般的な一の態様は、尿道閉塞を判断するシステムを提供し、このシステムは、少なくとも患者の尿流により生じる音波を受信し、受信した音波を示す出力信号を生成する少なくとも一の音響トランスデューサ(acoustic transducer)を有するトランスデューサ構成と、出力信号を受信および処理し、尿道閉塞を示す電気的な出力の変化を判断すべく、トランスデューサ構成と通信する制御ユニットとを備えている。
【0019】
トランスデューサの音響インタフェースを患者の尿流により生じる音波を受信する位置に配置するために、トランスデューサ構成を患者の尿流の近くに配置する特別に設計された位置決め装置を提供することが好適である。
【0020】
制御装置は、電気信号を増幅させる増幅器を備えてもよい。制御装置は、背景ノイズを削除し、異なる周波数の信号成分を区別するフィルタリング装置を備えてもよい。フィルタリング装置は、他の周波数の波長成分を破棄するとともに、分析のために電気信号から所定の周波数範囲の波長成分を分離するように構成してもよい。このようなフィルタリング装置は、様々なアルゴリズムを介した分析のために、背景ノイズを破棄し、または異なる周波数の波長成分を管理するように構成してもよい。
【0021】
本発明のいくつかの実施例によると、制御装置は、部分的に狭められた尿道内の尿流により生じる固有の音に関連する周波数範囲に関連する情報に基づいて、特定の物理的なモデルによりプログラムされる。本発明のいくつかの実施例によると、このモデルは、前記周波数範囲内の音波の大きさに関連する情報を利用してもよい。参照データは、様々な病気の状態に対応する異なるレベルの音波のパラメータを含むことが好適である。受信した音波の分析により、患者の状態の変化(dynamics)を判断できる。
【0022】
本発明の別の一般的な態様によると、尿道閉塞を判断するシステムが提供され、このシステムは、(i)少なくとも音波を受信でき、受信した音波を示す出力信号を生成可能な少なくとも一の音響トランスデューサを有するトランスデューサ構成と、(ii)患者の尿流により生じる音波を受信する位置に音響インタフェースを配置するために、患者の尿流の近くにトランスデューサ構成を配置する位置決め装置と、(iii)出力信号を受信および処理し、尿道閉塞を示す電気出力の変化を判断すべく、トランスデューサと通信する制御装置とを備えている。
【0023】
さらに別の一般的な態様によると、尿道閉塞の判断に用いられる方法が提供され、この方法は、患者の排尿中に尿流により生じる音声信号を検出し、これを示す出力信号を生成するステップと、尿道閉塞の状態を示す尿流の乱れを示す出力信号の変化を判断すべく、前記出力信号を処理および分析するステップとを備えている。
【0024】
本発明のさらに別の態様によると、尿道閉塞の状態を判断するために、前述したシステムで用いられるトランスデューサ用の位置決め装置が提供され、このトンランスデューサ用位置決め装置は、患者の尿流の音波を取得するために、少なくとも一のトランスデューサを患者の身体に固定するように構成された調整可能な固定機構を備えている。
【0025】
トランスデューサ構成は、予測される問題の中心を包囲する異なる位置、あるいは生殖器に沿った異なる位置から音波を取得するために、検査中に同時に動作する複数のトランスデューサ(少なくとも3つのトランスデューサであり、それぞれが少なくとも音響レシーバである)を備えることが好適である。制御装置は総てのトランスデューサと関連付けられており、トランスデューサにより取得された結合された音響データに基づいて診断する。
【0026】
本発明者により開発されたシステムは、排尿中の尿流の音の連続的な分析を提供する。しかしながら、診断のための総てのセッション情報を利用する必要はないことに留意すべきである。排尿中に取得される音情報の一部は、個別に選択および分析してもよい。同じセッションの音情報の選択された部分の個別の分析は、最後の診断が行われる前に比較してもよい。
【0027】
本発明のシステムはタイミング参照(timing reference)を必要としないが、他のタイミング参照は有用である。例えば、本発明のシステムは、取得した音波から生じる電気信号の分析が尿流量測定により測定される尿流率を示すデータを同時に必要とするため、尿流量測定システムの動作と同期するように構成してもよい。音響データと尿流率データ双方の組み合わされた分析は、検査における完全な排尿サイクルに沿って継続して行うことができる。
【0028】
トランスデューサ用位置決め装置は、トランスデューサ構成(これのインタフェース)を患者の身体に取り付けできるように構成してもよく、これにより尿道内で生じた音波を身体組織を介して伝わる後に受信する。
【0029】
代替的に、トランスデューサ用位置決め装置は、尿道内で生じる音波を空気中の尿の自由流れを介して(すなわち、音波を元の位置から患者の身体の外側の位置に伝える媒体として尿流を利用することにより)受信するために、空気中に自由にトランスデューサ構成を配置できるようにしもてよい。例えば、これは、生殖器に取り付けでき、患者の身体の外部の尿流路に配置するためにリングから突出する1以上のトランスデューサを担持するリング状の要素でもよい。
【0030】
トランスデューサ用位置決め装置は、患者の尿流に応じて発生する音波を取得するためにトランスデューサに取り付けるように構成された調整可能な固定機構を備えてもよい。
【0031】
また、本発明のいくつかの実施例によると、尿道閉塞の状態を判断するシステムは、様々な他の尿流のパラメータ、例えば速度特性を判断するように構成されている。この目的のために、トランスデューサ構成は、周知のドップラー測定モードで動作する(尿道閉塞の状態を判断するために同時に使用してもよく、または使用しなくてもよい)音響トランシーバを備えてもよい。
【0032】
本発明を理解し、実際にどのように行われるかを知るために、好適な実施例が、添付図面を参照することにより非限定的に例示により説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
図1を参照すると、尿道閉塞の状態を監視する本発明の監視システム1の一例を概略的に示されている。システム1は、少なくとも音波を受信でき、これを示す電気出力を生成可能な1以上の音響トランスデューサを有する音響トランスデューサ構成2や、音響トランスデューサ構成の出力に(ワイヤまたは無線信号伝達を介して)接続可能な制御装置20などの主要な構造部分を備えている。後者は、位置決め装置(図示せず)により運ばれ、関心のある領域に対して音響トランスデューサ構成2を適切に配置する。
【0034】
音響トランスデューサ構成2は、1以上の音響トランシーバを備えてもよい。音響トランスデューサ構成2は、1以上の音響レシーバ(マイクロホンまたは加速時計)を備える(本発明の目的に十分な)受動装置(passive unit)でもよい。このような音響レシーバはアナログ電気出力を提供するように構成してもよく、または受信した音波を示すデジタル出力を提供するアナログデジタルコンバータを備えてもよい。
【0035】
システムは、尿道閉塞の状態以外の様々な尿流に関するパラメータ、例えば尿流の速度特性を判断するように構成してもよい。この目的のために、音響トランスデューサは、ドップラー測定を実現するように構成され、動作可能である。この種の測定の原理は、本質的に周知であり、本発明の部分を形成しないため、特別に説明する必要はないが、この事例におけるトランスデューサ構成は、音声信号を関心のある領域に送信でき、関心のある領域からこれらの信号の反響を受信可能ないわゆる「アクティブ」装置として構成されることに留意すべきである。
【0036】
制御装置20は、特に(以下にさらに詳細に説明する特定の参照データを格納するための)メモリユーティリティ20Aと、(受信した音波を示すデータを分析するために所定のアルゴリズムがプログラムされた)データ処理および分析ユーティリティ20Bと、ディスプレイまたは他のデータ表示ユーティリティを有する制御パネル20Cとを備えるコンピュータシステムである。
【0037】
図2を参照すると、前述したシステム1で使用するのに適したトランスデューサ構成を示している。本実施例では、トランスデューサ構成2は、通常17において関心のある領域の周り、すなわち尿流の領域の周りに円形配列を形成する空間的に離れて構成された4つの音響トランスデューサにより形成される。本発明はこの特別の実施例に限定されず、通常は少なくとも1の音響トランスデューサが利用可能であることを理解すべきである。
【0038】
本実施例では、リング形状のフレーム11と、それぞれがリング状のフレームに形成された個別の開口13を通過する複数の放射シャフト12(本実施例では4本のシャフト)とを備えるトランスデューサ用位置決め装置10が提供される。各シャフトは、フレーム11の外側の第1の端部15と、フレーム11の内側の第2の端部16とを備えている。各シャフトは、リング状のフレームの中心の方を向いたプレート状の部材14が設けられている。シャフト12は、開口13の中を移動できることが好適であり、リングの中心に対するプレート14の位置は、開口13を介してシャフトを移動させることにより調整できる。
【0039】
シャフトは、開口の内側面と、これに接するシャフトの外側面との間の摩擦により開口にしっかりと固定される。別の実施例では、シャフトは開口の面を合致するねじが設けられ、したがって、開口を介したシャフトの調整は、ねじのようにシャフトを回転させることにより行われる。さらに別の実施例によると、シャフトは、本体部分の大きさにプレート14の位置を自動的に調整するためにバイアスがかけられており、これらの各部分の間に挟まれる。
【0040】
通常、少なくとも1のプレートはトランスデューサ17を担持してもよく、他のプレートはリングを身体の周囲に配置するために利用してもよいことに留意すべきである。
【0041】
トランスデューサ17は、制御ユニット20に接続できる。無線接続の場合、トランスデューサ17および制御装置20は、IR,音、またはRF信号送信/受信に基づく適切な通信ユーティリティが設けられる。限定ではないが特定の実施例では、トランスデューサ17は、配線18、シャフトを通過する配線19により制御装置20に接続される。
【0042】
トランスデューサ用位置決め装置10は、フレーム11が生殖器の根本の部分を覆うような状態で患者の生殖器に配置し、装置を生殖器に固定するためにシャフトを調整してプレート14を生殖器に接触させて使用する。トランスデューサ17を有する少なくとも一のシャフトは、下側から尿道の近くの生殖器に接触するのが好適である。
【0043】
したがって、トランスデューサが適切な位置に固定された後、患者は排尿を要求され、尿流により生じる受信した音波を示すデータが、制御装置20により記録および処理される。尿流の状態を示す関連する情報が表示される。
【0044】
尿道閉塞の状態またはこのような様々な状態は、事前に生成され制御装置のメモリユーティリティに格納された参照データと比較した強度および/または周波数の変化などの音波のパラメータの対応する変化として特定される。前述したように、この変化は尿道閉塞による尿流の乱流特性により生じる。
【0045】
図3は、尿道閉塞の状態を判断する本発明の方法を示している。
【0046】
図に示すように、参照データが提供される(ステップI)。参照データは、正常で非常に異なる病状のために、周波数および時間の関数として尿流により生じる音波を示す。参照データは、患者の様々なグループのためのパラメータ、例えば、異なる年齢を有することが好適である。
【0047】
特定の患者の測定されたデータが収集される(ステップII)。この測定されたデータは、患者の排尿中に尿流領域に対して異なる位置から音響トランスデューサの配列により受信した音波を示している。測定されたデータは、周波数および時間の関数のような音波の形式である。
【0048】
測定されたデータは参照データを用いて処理される(ステップIII)。測定されたデータの処理は、ノイズの低減および参照送信の標準化を目的とするアナログ処理と、周波数および時間変域(domain)の取得された標準化された信号のデジタル処理(ステップIV)を含んでいる。
【0049】
通常、総ての音声信号は、アナログディジタイザを介した最初のパスにより記録され、アナログの音声信号を時間ベクトルに対する振幅のデジタルシーケンスとして格納する。本実施例では、このようなベクトルはさらに信号処理され、特に、FFT(高速フーリエ変換)フィルタは、各アクティブ要素(各トランスデューサ)に属する各信号から周波数および移送を抽出するために利用できる。
【0050】
処理されたデータが参照データと比較され、生理的な異常の存在および病状の程度を示す比較結果が、医師または患者自身であるユーザに表示される(ステップVI)。
【0051】
以下は、尿道閉塞の状態を監視する本発明の技術を利用した実験結果である。本発明は、2つのグループ、排尿の問題が報告されている55歳以上の男性を含む第1のグループ(以下、「患者グループ」と称する)と、排尿の問題のない30以下の男性を含む第2のグループ(以下、「参照グループ」と称する)に実施された。
【0052】
実験で使用された音響装置は、(音響トランスデューサを構成する)マイクロホンまたは加速時計と、増幅器と、デジタルデータレコーダとを備えている。「加速時計」の語は、ここでは例としてのみ利用されており、他の好適な音響構成要素を使用してもよい。
【0053】
加速時計を使用した可能な例は、できるだけ精巣の近くの生殖器の根本にそれを手動で配置する。この位置では、尿道は通常、トランスデューサ(加速時計)が配置可能な生殖器の外側からの距離が最小になる。
【0054】
加速時計は増幅器の入力に接続され、これの出力は制御装置(このデータ処理装置および分析装置)に接続され、代替的に増幅器は、制御装置の構造部分でもよいと理解すべきである。増幅器は30dB増幅用に調整された。
【0055】
参照グループの被験者No.2に実施された例示的な実験結果と比較した患者グループの被験者No.1に実施された例示的な実験結果がここで説明される。
【0056】
図4は、被験者No.1の排尿前、排尿中、および排尿後に取得された32秒の音波に応じた加速時計により生成される電気信号の振幅対時間を示した図である。
【0057】
排尿の開始および終了の瞬間はそれぞれ、垂直な線LおよびLにより示されている。線Lの前および線Lの後の信号は、身体への加速時計の取り付けおよび取り外しのノイズを含むノイズ信号である。水平な線Lにより示される線Lと線Lとの間の排尿間隔のセクションが分析のために採取された。このセクションの拡大図が図5に示されている。
【0058】
図5は、図4に示す図の部分的な拡大図である。この図は、被験者No.1の排尿中に生じる音波から加速時計により取得された電気信号の振幅対時間を示しており、分析のために図4の全体図から抽出したものである。
【0059】
図6は、図5に示す信号セクションの周波数範囲が0から3KHzであるdBスケール対波周波数のスペクトルパワー密度の図である。図7は、周波数範囲が0から1Khzの図6に示す図の拡大図である。図から分かるように、200Hz付近の周波数範囲の音響エネルギーが著しく集中しており、図6および7のグラフの線上の丘Hのように表されている。
【0060】
図8から10は、変更すべきところは変更しつつ、参照グループ(健康な被験者)の被験者の検査から得られる図5から7に示すのと同様である。見て分かるように、参照グループの被験者の検査による図には、顕著な丘が確認されない。2つの図を比較することにより、被験者No.1の図における200Hz周波数範囲の著しいエネルギー集中は、被験者No.1のBPHから生じ得る尿道閉塞の病状に相当するという結論が導かれる。
【0061】
この特定の例は発明を部分的にのみ示している。本発明は、位相分析、様々な位置における様々な要素から同時に取得される異なる信号の比較などの信号分析の様々な他の態様を利用できると理解すべきである。
【0062】
当業者であれば、添付の請求項により規定される本発明の範囲を逸脱することなく、本明細書に示した本発明の実施例に様々な修正および変更を加えることができることは容易に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、尿道閉塞の状態を判断する本発明の監視システムの主要な要素のブロック図である。
【図2】図2は、本発明のシステムで利用される好適な音響トランスデューサ構成の構成を例示している。
【図3】図3は、尿道閉塞の状態を判断するのに用いられる本発明の方法の一例のフロー図である。
【図4】図4は、実験結果を示している。
【図5】図5は、実験結果を示している。
【図6】図6は、実験結果を示している。
【図7】図7は、実験結果を示している。
【図8】図8は、実験結果を示している。
【図9】図9は、実験結果を示している。
【図10】図10は、実験結果を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道閉塞を測定するシステムであって、当該システムが、
患者の尿流の近くに配置するトランスデューサ構成であって、少なくとも患者の尿流により生じる音波を受信でき、これを示す出力信号を生成可能な少なくとも1の音響トランスデューサを備えるトランスデューサ構成と、
前記出力信号を受信および処理し、尿道閉塞を示す出力信号の変化を測定すべく、前記トランスデューサ構成と通信する制御装置と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記トランスデューサ構成を前記患者の尿流の近くに配置する位置決め装置を備え、前記トランスデューサの音響インタフェースが、前記患者の尿流により生じる音波を受信する位置に配置されることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置は、周波数が20乃至1000Hzの音を測定するように事前にプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記制御装置は、周波数が約200Hzの音を測定するように事前にプログラムされていることを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記トランスデューサ構成が、前記尿流に対して異なる位置の音波を収集すべく離設された複数のトランスデューサを備えることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記トランスデューサ用の位置決め装置が、患者の生殖器に取り付けるリング状のフレームとして構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記リング状のフレームが、前記トランスデューサの円形配列を備えることを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記リング状のフレームが、離設された開口の配列と、当該開口に取り付けられる対応するシャフトの配列とを備え、各シャフトはその遠位端であって前記リングの内側にプレート状部材が形成され、前記プレートの少なくとも一つが前記音響トランスデューサを担持することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項6に記載のシステムにおいて、前記リング状フレームが、離設された開口の配列と、前記開口に取り付けられた対応するシャフトの配列とを備え、各シャフトは、その遠位端であって前記トランスデューサを担持する前記リングの内側にプレート状部材が形成されることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のシステムにおいて、前記トランスデューサ構成が、1またはそれ以上の音響トランシーバを備え、前記システムが、前記尿流の1またはそれ以上のパラメータのドップラー測定を行うように構成され且つ操作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項5に記載のシステムにおいて、少なくとも2の前記トランスデューサが、音響トランシーバとして構成され、前記システムが、1またはそれ以上の前記尿流のパラメータのドップラー測定を行うように構成され且つ操作可能であることを特徴とするシステム。
【請求項12】
尿道閉塞を測定するシステムであって、当該システムが、
少なくとも音波を受信でき、これを示す出力信号を生成可能な少なくとも1の音響トランスデューサを備えるトランスデューサ構成と、
前記トランスデューサの音響インタフェースが患者の尿流により生じる音波を受信する位置に配置されるように、前記トランスデューサ構成を前記患者の尿流の近くに配置する位置決め装置と、
前記出力信号を受信および処理し、尿道閉塞を示す出力信号の変化を測定すべく、前記トランスデューサ構成と通信する制御装置と、を備えることを特徴とするシステム。
【請求項13】
尿道閉塞の測定で使用する方法であって、当該方法が、
患者の放尿中に尿流により生じる音響信号を検出し、これを示す出力信号を生成するステップと、
前記出力信号を処理および分析して、尿道閉塞の状態を示す尿流の乱れを示す出力信号の変化を測定するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
尿道内の尿流により生じる音波と所定の基準を比較する方法であって、当該方法が、
尿流の音波を取得するステップと、
前記音波を電気信号に変換するステップと、
前記電気信号をデータ処理装置に送信するステップと、
前記所定の基準と比較可能なデータを抽出すべく、前記電気信号に所定のアルゴリズムを実行するステップと、
前記抽出されたデータと前記所定の基準を比較するステップと、を備えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項2に記載のシステムで使用されるトランスデューサ用の位置決め装置であって、患者の尿流の音波を取得すべく、少なくとも1のトランスデューサのインタフェースを患者の身体に固定するように構成された調整可能な固定機構を備えることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−520560(P2009−520560A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546831(P2008−546831)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/IL2006/001463
【国際公開番号】WO2007/072484
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508186657)ピー.スクエア メディカル エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】