説明

局側集線装置およびアクセス制御方法

【課題】アップリンクにおいて帯域を有効に利用することが可能な局側集線装置を提供すること。
【解決手段】PON IF部2は、複数のPON回線のそれぞれに接続される。アップリンクIF部1は、複数のPON IF部2によって受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数のPON回線からのユーザデータの送信タイミングを制御する。したがって、アップリンクにおいて帯域を有効に利用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の宅側装置が媒体を共有してデータの伝送を行なう媒体共有型通信であるPON(Passive Optical Network)に関し、特に、データをイーサネット(登録商標)フレームのまま伝送を行なうEPON(Ethernet(登録商標) PON)を複数回線収容し、上位ネットワーク(以下、アップリンクと呼ぶ。)に多重する局側集線装置、アクセス制御装置およびアクセス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。それに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)などのブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
これに関連する先行技術として、下記の特許文献1および非特許文献1に開示された技術がある。特許文献1に開示された局側集線装置においては、バッファメモリ、受信部、送信部およびPON IFが、複数のPON伝送路A,B,…,Zのそれぞれに対応して設けられる。制御部は、PON伝送路A,B,…,Zを介して受信される通常フレームが競合しないように制御フレームを生成し、PON伝送路A,B,…,Zへ送出する。
【0004】
また、非特許文献1には、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))やOAM(Operations, Administration and Maintenance)プロトコルが規定されており、MPCPメッセージによる新規宅側装置の登録方法、帯域割当要求、送信指示などが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−253881号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図21は、特許文献1に開示された局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を示す図である。図21においては、PON回線1およびPON回線2からのユーザデータフレームを多重してアップリンクに送出する場合を示している。PON回線1におけるレーザオフ期間と、PON回線2におけるレーザオン期間とをオーバラップさせることにより、帯域を有効に利用するものである。
【0008】
しかしながら、アップリンクにおいてPON回線1からのユーザデータフレームとPON回線2からのユーザデータフレームとの間には、PON回線2におけるレーザオン期間、同期期間、および管理用フレーム送出期間と同程度の未使用帯域が発生しており、帯域を十分に有効利用しているとは言えない。
【0009】
また、たとえば、PON回線1の転送レートとPON回線2の転送レートとが異なる場合には、アップリンクにおける未使用帯域がさらに多く発生してしまうことになる。
【0010】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、アップリンクにおいて帯域を有効に利用することが可能な局側集線装置、アクセス制御装置およびアクセス制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある局面に従えば、複数の受動的光ネットワークを収容する局側集線装置であって、複数の受動的光ネットワークのそれぞれに接続される複数の受信手段と、複数の受信手段によって受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するインタフェース手段とを含む。
【0012】
インタフェース手段は、複数の受信手段によって受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するので、アップリンクにおいて帯域を有効に利用することが可能となる。
【0013】
好ましくは、インタフェース手段は、受信手段による受信タイミングとアップリンクへの送信タイミングとのずれが小さくなるように送信タイミングを制御する。
【0014】
インタフェース手段は、受信手段による受信タイミングとアップリンクへの送信タイミングとのずれが小さくなるように送信タイミングを制御するので、アップリンクの帯域をさらに有効に利用することが可能となる。
【0015】
さらに好ましくは、受動的光ネットワークのすべての上り転送レートとアップリンクの上り転送レートとが同じであり、インタフェース手段は、複数の受信手段が受信したユーザデータをバッファに蓄積せずに、スルーでアップリンクに送信する。
【0016】
インタフェース手段は、複数の受信手段が受信したユーザデータをバッファに蓄積せずに、スルーでアップリンクに送信するので、バッファが不要となり、装置のコストを削減することが可能となる。
【0017】
さらに好ましくは、インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレーム期間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように受信タイミングを制御する。
【0018】
インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレーム期間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように受信タイミングを制御するので、アップリンクにおいてユーザデータフレームを連続して送信することが可能となる。
【0019】
さらに好ましくは、複数の受動的光ネットワークの中でアップリンクの上り転送レートよりも上り転送レートが遅い宅側装置を含む受動的光ネットワークがあり、インタフェース手段は、アップリンクよりも上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータをアップコンバートしてアップリンクに送信する際、上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータの最後が、アップコンバートしてアップリンクに送信されるユーザデータの最後よりも早くなるように受信タイミングを制御する。
【0020】
複数の受動的光ネットワークの中でアップリンクの上り転送レートよりも上り転送レートが遅い宅側装置を含む受動的光ネットワークがあり、インタフェース手段は、アップリンクよりも上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータをアップコンバートしてアップリンクに送信する際、上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータの最後が、アップコンバートしてアップリンクに送信されるユーザデータの最後よりも早くなるように受信タイミングを制御するので、アップリンクの帯域をさらに有効に利用することが可能となる。
【0021】
さらに好ましくは、インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレームをアップリンク速度で伝送するのに要する時間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように受信タイミングを制御する。
【0022】
インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレームをアップリンク速度で伝送するのに要する時間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように受信タイミングを制御するので、アップリンクにおいてユーザデータフレームを連続して送信することが可能となる。
【0023】
本発明の別の局面に従えば、複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの受信タイミングを制御するアクセス制御装置であって、複数の受動的光ネットワークから受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御する手段と、送信タイミングを含んだグラントを受動的光ネットワークに接続される宅側装置に送信指示する手段とを含む。
【0024】
本発明のさらに別の局面に従えば、複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの受信タイミングの制御をコンピュータに実行させるためのコンピュータ・プログラムであって、複数の受動的光ネットワークから受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するステップと、送信タイミングを含んだグラントを受動的光ネットワークに接続される宅側装置に送信指示するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のある局面によれば、インタフェース手段は、複数の受信手段によって受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するので、アップリンクにおいて帯域を有効に利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態における局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を説明するための図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における局側集線装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】4to1MUX31の構成例を示すブロック図である。
【図4】アクセス制御部11をソフトウェアで実現する場合の構成例を示す図である。
【図5】アクセス制御部11の初期化処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図6】割込み処理ルーチンの手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】ディスカバリ処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】タイムアウト処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】TOCn処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】メッセージ受信処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】レジスタ要求処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】レジスタ確認処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】デレジスタ処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図14】レポート受信処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図15】RTT更新処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図16】帯域割当処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図17】PON通信部21の構成例を示すブロック図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態における局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を説明するための図である。
【図19】本発明の実施の形態における局側集線装置100の接続例を示す図である。
【図20】本発明の第2の実施の形態におけるPON通信部21’の構成例を示すブロック図である。
【図21】特許文献1に開示された局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態における局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を説明するための図である。本実施の形態においては、PON回線1のユーザデータフレーム送出期間と、PON回線2のレーザオン期間、同期期間、レポートフレーム送出期間および管理用フレーム送出期間とがオーバラップするようにアクセス制御を行うものである。これによって、PON回線1からのユーザデータフレームと、PON回線2からのユーザデータフレームとが連続してアップリンクに送出されるようになる。ここで、連続して(または稠密に)とは、最小IFG以上、最大オーバヘッド未満の間隔をもってアップリンク上に送出されることをいう。最大オーバヘッド時間は、レーザオン期間、同期期間、レポートフレームおよび管理フレーム送出期間に相当する時間のことである。
【0028】
なお、図1においては同期期間の後にレポートフレーム、管理用フレーム、ユーザフレームの順に宅側装置から送信されるとしているが、フレームの順序は任意である。PON回線2のバースト長(時間)からIFGおよびプリアンブルを含むユーザデータフレーム期間とレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間だけオーバラップするようにアクセス制御を行えばよい。この場合、前後のバースト間でユーザデータフレームがオーバラップするかもしれないが、後述のFIFOで遅延調整した上でアップリンクに配置するので、ユーザデータフレームの衝突を回避できる。また、オーバラップさせる時間は上記例を最大として、それ以下の時間としてもよい。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施の形態における局側集線装置の構成例を示すブロック図である。この局側集線装置は、アップリンクIF(Interface)部1と、N個のPON IF部2とを含む。なお、図2においてN=16とし、16のPON回線i(i=1〜16)が集線される構成としているが、PON回線の数はこれに限定されるものではない。
【0030】
PON回線は、Passive(受動的)であることに限定されない。一般には分岐を光カプラで行うが、能動的な光スイッチで代替してもよい。ここでのPON回線はMPCPによって複数の宅側装置を収容する回線という意味である。
【0031】
アップリンクが10GE(10ギガビットイーサネット(登録商標))であり、PON回線が10GEPON(10ギガビットイーサネット(登録商標)PON)である場合について説明するが、アップリンクがGE(ギガビットイーサネット(登録商標))であり、PON回線がGEPON(ギガビットイーサネット(登録商標)PON)であってもよい。
【0032】
アップリンクIF部1は、アップリンクおよび各PON回線の上りアクセス制御を行なうアクセス制御部11と、アップリンクとの間でフレームの送受信を行なうアップリンク送受信部12と、アップリンク送受信部12によって受信された下り信号を各PON IF部2へ出力するDEMUX13と、各PON IF部2からの上り信号を多重してアップリンク送受信部12へ出力する集線部14とを含む。
【0033】
また、PON IF部2は、PON回線との間で信号の送受信を行なうPON送受信部22と、PON回線に接続される宅側装置とのデータリンクを終端するとともにアップリンクへの主信号の中継を行なうPON通信部21とを含む。
【0034】
DEMUX13は、アップリンク送受信部12によって受信された下り信号を各PON
IF部2へ出力する。DEMUX13は、アップリンク送受信部12からの下り信号をそのまま各PON IF部2に送出するようにしてもよいし、下りフレームの内容を解析してフレームの送信先を識別し、選択的にPON IF部2に送出するようにしてもよい。識別方法としては、VLAN(Virtual Local Area Network)タグで識別するようにしてもよいし、MAC(Media Access Control)アドレスで識別するようにしてもよい。
【0035】
集線部14は、4回線を多重する複数の4to1MUX31によって構成され、この複数の4to1MUX31を多段接続することにより所望の多重数Nを実現するものである。本実施の形態においては、5つの4to1MUX14を多段接続することにより16to1MUXを実現している。
【0036】
図3は、4to1MUX31の構成例を示すブロック図である。この4to1MUX31は、各PON IF部2に接続される4つの入力部41と、各入力部41に接続される4つのFIFO(First In First Out)42と、各FIFO42からフレーム蓄積量の通知を受け、FIFO42に蓄積されたフレームの出力を制御するMUX制御部43と、マルチプレクサ44と、マルチプレクサ44からのフレームを次段の4to1MUX31またはアップリンク送受信部12に出力する出力部45とを含む。
【0037】
入力部41は、PON IF部2からの高速なシリアル信号を低速なパラレルの内部信号に変換してFIFO42に蓄積する。内部信号は、64ビット、156.25Mbpsとすることができる。FIFO42は、フレームの蓄積状況をMUX制御部43に通知する。
【0038】
MUX制御部43は、FIFO43の状態を監視しており、フレームが蓄積されているFIFO2から排他的にフレームを取り出し、マルチプレクサ44を制御しながら出力部45に出力する。
【0039】
出力部45は、マルチプレクサ44から受けたフレームを高速なシリアル信号、たとえばXAUI(10Gbps Attachment Unit Interface)信号に変換して出力する。
【0040】
後述のように、アクセス制御部11は、PON回線の上り信号をそのままスルーしてアップリンクに出力できるようにアクセス制御を行なっているので、FIFOの容量は少なくてもよい。すなわち、このFIFOは、精度に依存するぶれやバースト内でのユーザデータフレームの配置の差などによる一時的な衝突を回避したり、入出力間におけるクロック周波数の微小なずれを吸収したりするものである。なお、アクセス制御部11がPON回線間の割当間隔に余裕を持たせるようにすれば、4To1MUX31のFIFO42およびMUX制御部43を削除し入力部41からマルチプレクサ44へスルーする構成も可能である。このとき、マルチプレクサ44は入力部41が制御するか、単に論理和のようなものでよい(データを出力しない期間は論理0の信号を出力する。)。
【0041】
PON通信部21とアクセス制御部11とは制御線で接続されており、MPCPフレームの送受信はPON通信部21が行なうが、MPCPメッセージはPON通信部21をスルーし、アクセス制御部11が終端する。このとき、PON受信時のタイムスタンプ追加やPON送信時のタイムスタンプ上書きをPON通信部21で行なうようにしてもよい。そうすることにより、RTTやタイムスタンプドリフトがアクセス制御部11の内部処理遅延に依存しなくなり、より正確となる。なお、アクセス制御部11と各PON通信部21とは共通の時計を有しているものとする。
【0042】
図4は、アクセス制御部11をソフトウェアで実現する場合の構成例を示す図である。なお、このアクセス制御部11をハードウェアによって実現してもよいことは言うまでもない。
【0043】
このアクセス制御部11は、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)52と、RAM(Random Access Memory)53と、共有メモリ54と、入出力部55と、時計タイマ56とを含む。
【0044】
CPU51がROM52に記憶されたアクセス制御プログラムを実行することにより、アクセス制御部11の機能が実現される。また、RAM53は、アクセス制御を行なう際に使用される各種情報を保持する。この各種情報の詳細は後述する。
【0045】
入出力部55は、PON IF部2に接続され、メッセージの入出力を制御する。入出力部55は、PON IF部2によって受信されたメッセージ信号を入力すると内部形式に変換し、共有RAM54の入力メッセージキュー(Qin)に追加する。このとき、Qinが空の状態から空でない状態になると、CPU51に対して割込みをかける。
【0046】
また、入出力部55は、CPU51からの指示に応じて共有RAM54内の出力メッセージキュー(Qeg)に蓄積されたメッセージをPON IF部2に出力する。
【0047】
時計タイマ56は、現在時刻(ctime)を計時する時計としての機能と、所定時間をカウントするカウンタの機能とを有している。時計タイマ56のctimeの値は、CPU51によって参照される。
【0048】
時計タイマ56は、後述するディスカバリタイマ(TD)およびロジカルリンクタイマ(TLij:i=1,2,…,N:j∈{PON IF iのLLID})として機能する場合には、カウント値がCPU51によって設定された値になると、CPU51に割込みをかけてカウントアウトを通知する。
【0049】
図5〜図15は、アクセス制御部11の処理手順を説明するためのフローチャートである。ここで、RAM53に保持される各種情報について説明する。
【0050】
最終割当時刻(TEi:i=1,2,…,N)は、レーザオフ期間(Toff)とレーザオン期間(Ton)とのオーバラップを前提としており、グラント期間の最終時刻からToff分を差し引いた時刻である。図1においては、たとえばPON回線1のユーザデータフレームの終了時刻(レーザオフの開始時刻)が最終割当時刻となる。この最終割当時刻は、RAM53内にN個のPON IF毎に保持される。
【0051】
グラント期間に最終フレーム後の最小IFG(フレーム間ギャップ)が含まれない場合には、最終割当時刻に最小IFGを加える。なお、オーバラップしないことを前提として、Toffを差し引かないようにしてもよい。
【0052】
全体最終割当時刻(TEz)は、RAM53内にただ1つだけ保持される時刻であり、基本的には最後に割り当てたPON IF kの最終割当時刻であるが、例外もあり得る。この例外については、後述する。
【0053】
ディスカバリ順リスト(dLST)は、ディスカバリ処理を行なうPON IFの順序をリスト形式で保持するものであり、たとえば1→2→…→N→1などのように設定される。
【0054】
ロジカルリンク情報(LLTij:i=1,2,…,N:j∈{PON IF iのLLID})は、ロジカルリンク毎にテーブル形式でRAM53内に保持される情報であり、ロジカルリンク状態(LLstat)、レポート状態(RPstat)、管理フレーム用レポート情報(RPm)、ユーザデータ用レポート情報(RPu)、およびRTT(Round Trip Time)情報を含む。レポート情報は、簡単には最新のレポートを反映するものでよいが、キュー形式になっていてもよい。
【0055】
ロジカルリンク状態(LLstat)は、ロジカルリンクの状態を示す情報であり、未登録、登録中、登録済の状態がある。
【0056】
レポート状態(RPstat)は、当該ロジカルリンクのレポートが有効であるか、無効であるかを示す情報である。
【0057】
管理フレーム用レポート情報(RPm)は、レポートされた管理用フレームの送出に要する時間を示す情報である。
【0058】
ユーザデータ用レポート情報(RPu)は、レポートされたユーザデータフレームの送出に要する時間を示す情報である。
【0059】
アクセス制御部11には、PON IF間の割当順と、PON IF内でのロジカルリンクの割当順とが与えられている。割当順は、単純なラウンドロビンでもよいが、重みを考慮したラウンドロビン、割当周期を差別化するために階層化したラウンドロビン、帯域計算に基づき割当て過ぎたロジカルリンクに対する割当をスキップするもの、などであってもよい。
【0060】
割当順については、一般的なスケジューリング技術として体系化されており、本発明は特定のスケジューリング技術には依存しない。ただし、同一のPON IFへの割当を連続させないようにすることで、本発明の効果を高めることができる。
【0061】
また、本発明は、割当を行なうタイミングとは無関係であり、レポートフレームを受信する度に割当を行なうようにしてもよいし、レポートフレームを集中的に集めてから割当を行なうようにしてもよい。
【0062】
図5は、アクセス制御部11の初期化処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、入力メッセージキューQinおよび出力メッセージキューQegを空にし、ロジカルリンク情報LLTij(i=1,2,…,N:j∈{PON IF iのLLID})をすべてNULLにし、最終割当時刻TEiをすべて現在時刻ctimeにし、全体最終割当時刻TEzをctimeにし、ディスカバリ順リストdLSTに1→2→…→N→1を設定する(S11)。
【0063】
次に、ディスカバリタイマTDに、ディスカバリ周期discovery_intervalをNで割った値を設定する(S12)。このTDは、NのPON回線に対して順番にディスカバリ処理を行なうときの間隔であり、TDが経過する毎に次のPON回線のディスカバリ処理を行なう。
【0064】
次に、割込みが入るまで待機する(S13)。割込みが入ると(S13,Yes)、割込み処理ルーチンに移る(S14)。
【0065】
図6は、割込み処理ルーチンの手順を説明するためのフローチャートである。まず、割込みの種類によって分岐する(S21)。割込みがQiが空でないことを示す場合には(S21,Qin非空)、メッセージ受信処理に移る(S22)。割込みがTDのカウントアウトを示す場合には(S21,TD満了)、ディスカバリ処理に移る(S23)。また、割込みがTLijのカウントアウトを示す場合には(S21,TLij満了)、タイムアウト処理に移る(S24)。
【0066】
なお、割込みの優先順位は、Qinが空でない場合の割込みが最も高く、TD満了、TLij満了の順に低くなるものとする。
【0067】
図7は、ディスカバリ処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、dLSTの先頭をkとすると、PON IF kに対するディスカバリゲートメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、開始時刻はTEkまたは現在時刻の遅いほうを基準とする(S31)。
【0068】
次に、ディスカバリ期間の終わりを新しいTEkとし、dLSTを次のPON IF部に進める(S32)。そして、ディスカバリタイマTDをセットし(S33)、処理を終了する。
【0069】
図8は、タイムアウト処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、LLTijのLLstatが登録中であるか否かを判定する(S41)。登録中でなければ(S41,No)、LLTijにタイムアウト情報を記録する。そして、過去のタイムアウト情報を参照して、所定期間内におけるタイムアウト数TOCijを求める。ここで、最大許容値をTOCmaxとする(S42)。
【0070】
次に、TOCijとTOCmaxとを比較し、TOCijがTOCmax以下であれば(S43,No)、図9に示すTOCn処理に移る。また、TOCijがTOCmaxよりも大きければ(S43、Yes)、デレジスタ処理が行なわれる(S44)。
【0071】
ステップS41において、LLTijのLLstatが登録中であれば(S41,Yes)、デレジスタ処理が行なわれる(S44)。
【0072】
図9は、TOCn処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、PON IF iのLLIDjに対するゲートメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、レポート強制フラグを立ててレポート強制指示を行なう。また、開始時刻はTEiまたは現在時刻を基準とし、グラント長はレポートフレームのみを送信できる量とする(S51)。
【0073】
そして、当該グラントのレーザオフの始まりを新しいTEiとし、これにある程度のずれ時間を見込んだ時刻をタイマTLijにセットして(S52)、処理を終了する。
【0074】
図10は、メッセージ受信処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、宅側装置がメッセージに記録したタイムスタンプをT1とし、PON通信部21がメッセージの受信時に追加したタイムスタンプをT2とする。
【0075】
まず、Qinから先頭メッセージを取り出し(S61)、メッセージの種別がレジスタ要求であれば(S62,レジスタ要求)、レジスタ要求処理を行なう(S63)。メッセージの種別がレジスタ確認であれば(S62,レジスタ確認)、レジスタ確認処理を行なう(S64)。
【0076】
メッセージの種別がデレジスタ要求であれば(S62,デレジスタ要求)、デレジスタ処理を行なう(S65)。メッセージの種別がレポートであれば(S62,レポート)、レポート受信処理を行ない(S66)、帯域割当処理を行なう(S67)。
【0077】
ステップS63〜S65またはS67の処理が終了すると、Qinが空か否かを判定する(S68)。Qinが空でなければ(S68,No)、ステップS61に戻って以降の処理を行なう。また、Qinが空であれば(S68,Yes)、処理を終了する。
【0078】
図11は、レジスタ要求処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、このレジスタ要求は、PON IF iのMACアドレスがmの宅側装置からの要求とする。
【0079】
まず、レジスタ要求があった本PON IFに対して新しいLLIDを割り当て、LLIDjとする。そして、LLTijのLLstatに登録中を設定し、RPstatをNULLにし、RTTに(T2−T1)を設定する(S71)。
【0080】
次に、PON IF iに対するレジスタメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、DA(Destination Address)をmとし、LLIDをjとする(S72)。なお、このLLIDはレジスタメッセージ内に記載し宅側装置へ通知するものであって、フレームのヘッダ部分に記載するLLIDはブロードキャストLLIDである。
【0081】
次に、PON IF i、LLIDjに対するゲートメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、開始時刻はTEiまたは現在時刻を基準とする。また、グラント長はレジスタ確認フレームだけを送信できる量とする(S73)。
【0082】
最後に、当該グラントのレーザオフの始まりを新しいTEiとし、これにある程度ぶれ時間を見込んだ時刻をタイマTLijにセットして(S74)、処理を終了する。
【0083】
図12は、レジスタ確認処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、RTTの再計算を行ない、当該ロジカルリンクのRTT更新処理を行なう。このとき、ドリフトが規定値を超える場合(S81,NG)、処理を終了する。
【0084】
また、ドリフトが規定値以内であれば(S81,OK)、LLTijのLLstatを登録済みにし、PON IF i、LLIDjに対するゲートメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、レポート強制フラグを立ててレポート強制指示を行なう。また、開始時刻はTEiまたは現在時刻を基準とする。好ましくは、過去の予約順を参照して同じPON IFを間隔が開いた位置に配置するほうがよい。そして、グラント長はレポートフレームのみを送信できる量とする(S82)。
【0085】
次に、当該グラントのレーザオフの始まりを新しいTEiとし、これにある程度ぶれ時間を見込んだ時刻にタイマTLijをセットし(S83)、処理を終了する。
【0086】
図13は、デレジスタ処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、PON IF i、LLIDjをデレジスタするものとする。まず、PON IF i、LLIDjに対するデレジスタメッセージを構成し、Qegに入れる(S91)。そして、LLTijのLLstatをNULLにし(S92)、処理を終了する。
【0087】
図14は、レポート受信処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、PON IF i、LLIDjからのレポートを受信するものとする。まず、RTTの再計算を行ない、当該ロジカルリンクのRTT更新処理を行なう。このとき、ドリフトが規定値を超える場合(S101,NG)、処理を終了する。
【0088】
また、ドリフトが規定値以内であれば(S101,OK)、LLTijのRPstatを有効にし、RPmを管理フレーム用レポートキューqueue0_reportに更新し、RPuをユーザフレーム用レポートキューqueueK_reportの合計に更新し(S102),処理を終了する。
【0089】
図15は、RTT更新処理の手順を説明するためのフローチャートである。まず、新たなRTTを(T2−T1)に更新し(S111)、新たなRTTと元のRTTとの差がドリフトの最大値DRIFTmaxより大きいか否かを判定する(S112)。
【0090】
新たなRTTと元のRTTとの差がDRIFTmax以下であれば(S112,No)、LLTijのRTTに新たなRTTを設定し(S113)、RTT更新処理が成功したものとする(OK)。新たなRTTと元のRTTとの差がDRIFTmaxよりも大きければ(S112,Yes)、デレジスタ処理を行ない(S114)、RTT処理が失敗したものとする(NG)。
【0091】
図16は、帯域割当処理の手順を説明するためのフローチャートである。なお、PON IF i、LLIDjに帯域を割り当てるものとする。まず、LLTijの管理用フレーム送出に必要な時間RPmとレポートフレーム送出に必要な時間REPORT_lengthとの和をMLとし、LLTijのユーザデータフレーム送出に必要な時間RPuをULとし、バースト先頭のオーバヘッド時間(レーザオン期間Ton+同期期間SyncTime)をOVLとする。そして、ML、UL、OVLおよびToffの和と、グラント長の上限値GLmaxとの小さい方の値をグラント長GLとする。
【0092】
全体最終割当時刻TEzからOVLおよびMLを差し引いた時刻をTSzとする。PON IF iの最終割当時刻TEiとバーストギャップburst_gapとの和をTSiとする。また、現在時刻ctimeとRTTと宅側装置の処理時間proc_timeとの和をTScとする。そして、TSz、TSiおよびTScの中で最も遅い時刻をTSとする(S121)。
【0093】
次に、TSから現在時刻ctimeを差し引いた時間と、グラントが先行しすぎることを防ぐためのシステム定数TooFarとを比較する(S122)。TS−ctimeがTooFarよりも小さくなければ(S122,No)、TS−ctimeがTooFarよりも大きくなるまでウェイトまたはスリープを行ない(S123)、ステップS121に戻って以降の処理を繰り返す。
【0094】
また、TS−ctimeがTooFarよりも小さければ(S122,Yes)、PON IF i、LLIDjに対するゲートメッセージを構成し、Qegに入れる。このとき、レポート強制フラグを立ててレポート強制指示を行なう。また、開始時刻を(TS−RTT)とし、グラント長をGLとする(S124)。そして、TEiに、(TS+GL−Toff)を設定する(S125)。
【0095】
次に、ULが0よりも大きいか否かを判定する(S126)。ULが0であれば(S126,No)、TEzを更新せずにステップS128に進む。また、ULが0よりも大きければ(S126,Yes)、TEzにTEiを設定する(S127)。
【0096】
最後に、TEiにある程度ぶれ時間を見込んだ時刻にタイマTLijをセットして(S128)、処理を終了する。
【0097】
なお、単純さを優先して、MLをULに含めるようにしてもよい。また、グラント開始時刻を最善のものから意図的にずらすようにしてもよい。
【0098】
処理の最後に、LLTijの当該ロジカルリンクのレポートを無効にする。ただし、レポート情報がキュー形式であって次のエントリがある場合には、レポート有効のままレポートキューを更新する。
【0099】
図17は、PON通信部21の構成例を示すブロック図である。このPON通信部21は、DEMUX13からの信号(内部形式信号)を入力する入力部61と、入力部61に入力された信号を蓄積するFIFO1(62)と、FIFO1(62)に蓄積されているデータを取り出して信号形式を変換した上でPON送受信部22に出力する送信処理部63と、PON送受信部22から入力されるフレームの種別を判断して選択的に出力する受信処理部64と、受信処理部64から管理フレームを受けて処理する管理フレーム処理部65と、受信処理部64からMPCPフレームを受けて処理するMPCPフレーム処理部66と、受信処理部64からのユーザデータフレームを受け取り信号形式を変換して集線部14に出力する出力部68とを含む。このPON通信部21は、1つまたは複数のLSIで実現されるのが一般的である。
【0100】
送信処理部63は、FIFO1(62)にデータが蓄積されている場合には、データを取り出して信号形式を変換した上でPON送受信部22に出力するが、管理フレーム処理部65またはMPCPフレーム処理部66が送信すべきフレームを有している場合には、そのフレームの出力を優先する。このとき、MPCPフレームが最優先される。また、必要ならばタイムスタンプを上書きしてもよい。
【0101】
管理フレーム処理部65は、OAM、認証、暗号設定などの管理フレームを処理する。この処理の内容自体は本発明と無関係であるので、その詳細な説明は省略する。この処理の結果または自発的に必要となった管理フレームを構成し、送信処理部63に送信を要求する。また、処理の結果として、あるロジカルリンクの維持ができない状態となれば、MPCPフレーム処理部66に当該ロジカルリンクのデレジスタを指示する。
【0102】
MPCPフレーム処理部66は、受信処理部64から入力されるMPCPフレームの種別に応じた処理を行なう。MPCPフレームがレジスタ要求フレームの場合には、認証を行なう。認証結果が正しければ、レジスタ要求メッセージをアクセス制御部11に転送する。なお、認証を行なわずにアクセス制御部11にメッセージを転送してもよい。また、まずアクセス制御部11にメッセージを転送して登録させてから、管理フレーム処理部65が別のプロトコルで認証を行なうようにしてもよい。
【0103】
MPCPフレームがデレジスタ要求フレームまたはレジスタ確認フレームの場合、これらのメッセージをアクセス制御部11に転送する。このとき、タイムスタンプを追加するようにしてもよい。
【0104】
MPCPフレームがレポートフレームの場合、タイムスタンプドリフトをチェックし、違反していればデレジスタメッセージをアクセス制御部11に転送する。なお、このチェックをアクセス制御部11で行なうようにしてもよい。また、違反していなければ、レポートメッセージをアクセス制御部11に転送する。
【0105】
MPCPフレーム処理部66は、これらのメッセージをアクセス制御部11に転送するときに、タイムスタンプを追加するようにしてもよい。
【0106】
MPCPフレーム処理部66は、ロジカルリンク毎にレポートフレームのインターバルを監視し、接続性を判断する。そして、ロジカルリンクが切れたと判断した場合、または管理フレーム処理部65からデレジスタ指示を受けた場合には、当該ロジカルリンクのデレジスタメッセージをアクセス制御部11に転送する。なお、この処理をアクセス制御部11で行なうようにしてもよい。
【0107】
なお、PON通信部21が図示しないローカルアクセス制御部を有していてもよい。このローカルアクセス制御部は、PON回線の上りアクセス制御を単独で行なうものであり、そのアクセス制御方法は従来技術に従う。PON通信部21およびMPCPフレーム処理部66は、設定によってMPCPメッセージのやり取りを外部、たとえばアップリンクIF部1のアクセス制御部11と行なうか、ローカルアクセス制御部と行なうかを切替えることができる。
【0108】
以上説明したように、本実施の形態における局側集線装置によれば、アクセス制御部11がPON回線からのユーザデータフレームがアップリンクにおいて連続して送信されるように各PONの帯域割当を行なうようにしたので、アップリンクにおける帯域を有効に利用することが可能となった。
【0109】
(第2の実施の形態)
図18は、本発明の第2の実施の形態における局側集線装置におけるアクセス制御方法の一例を説明するための図である。図18においては、PON回線1の上りバースト信号の転送レートが10Gbpsであり、PON回線2の上りバースト信号の転送レートが1Gbpsの場合を示している。本実施の形態においては、PON回線1のユーザデータフレーム送出期間と、PON回線2のユーザデータフレーム送出期間とがオーバラップするようにアクセス制御を行なうことにより、アップリンクにおける帯域をさらに有効に利用するものである。
【0110】
PON回線2の転送レートがPON回線1よりも遅いため、PON回線2のユーザデータフレーム列をアップリンク速度にアップコンバートして、アップリンクに隙間なくユーザデータフレームを配置するようにしている。
【0111】
図19は、本発明の実施の形態における局側集線装置100の接続例を示す図である。図19(a)に示すように、このシステムは、局側集線装置100と、転送レートαの宅側装置A101−1と、転送レートβの宅側装置B101−2と、複数の光カプラ102とを含む。転送レートαと、転送レートβとはそれぞれ異なっている。
【0112】
図19(b)に示すように、上り光信号(波長O)と、転送レートαの下り光信号(波長C)および転送レートβの下り光信号(波長L)とは波長多重されており、1つのPON回線上で独立した信号伝送が可能である。一方、転送レートαの上り光信号の波長と、転送レートベータの上り光信号の波長とがオーバラップしている。そのため、図19(c)に示すように、それぞれの光バースト信号が衝突しないように時分割多重することで、1つのPON回線上で独立した信号伝送を行なうようにしている。
【0113】
たとえば、宅側装置A101−1はGE−PON用であり、宅側装置B101−2は10GEPON用であり、転送レートαが1Gbpsであり、転送レートβが10Gbpsである。これらの転送レートは総称であって、実際の転送レートは符号形式や符号処理の前後で若干変化する。PON回線に誤り訂正符号が用いられ、実際の有効データレートが減少する場合には、有効データレートをPON回線のレートと考えればよい。
【0114】
また、本実施の形態においては、波長Oは1260〜1360nm、波長Cは1480〜1500nm、波長Lは1574〜1580nmとし、α<βとするものとする。
【0115】
図20は、本発明の第2の実施の形態におけるPON通信部21’の構成例を示すブロック図である。図17に示す第1の実施の形態におけるPON通信部21と比較して、レートの異なるユーザデータフレームが蓄積されるFIFO3(71)およびFIFO4(72)が追加されている点と、PON送受信部、入力部、送信処理部、受信処理部、および出力部の機能が異なっている点のみが異なる。したがって、重複する構成および機能の詳細な説明は繰り返さない。
【0116】
PON送受信部22’は、波長C・レートαの光信号と、波長L・レートβの光信号とを同時に送信することができる。PON送受信部22’は、送信処理部63’からレートαの信号とレートβの信号とを受け、波長C・レートαの光信号と波長L・レートβの光信号とに変換してPON回線に出力する。
【0117】
また、PON送受信部22’は、波長Oのデュアルレート光バースト信号を受信することができる。PON送受信部22’は、PON回線から受信した光信号を電気信号に変換して、受信処理部64’に出力する。
【0118】
図20においては、PON送受信部22’内でレートαおよびレートβに応じた同期処理を行ない、レート別の電気信号として受信処理部64’に出力する。なお、これらの同期処理は受信処理部64’で行なうようにしてもよい。レートの区別は、受信信号から自動認識してもよいし、当該バーストの送信をグラントした情報に基づいて予め受信するレートを決めておくようにしてもよい。
【0119】
アップリンクIF部1のDEMUX13および集線部14との間の入出力信号は、アップリンクのレートに即した単一のレートであり、たとえば10ギガビットイーサネット(登録商標)の10Gbpsである。ここではβに等しいとする。
【0120】
入力部61’は、アップリンクIF部1のDEMUX13からの信号を受け、ロジカルリンクとそのレートとを判断し、レートに応じたFIFOに信号を出力する。この出力信号は、レートに応じた内部信号形式に変換される。
【0121】
送信処理部63’は、FIFO1(62)またはFIFO3(71)にデータが蓄積されている場合、個別にデータを取り出して信号形式を変換した上でPON送受信部22’に転送する。MPCPフレーム処理部66または管理フレーム処理部65が送信すべきフレームを有している場合には、これらのフレームが優先されるが、フレームの宛先ロジカルリンクによってレートが判断され、そのレートの信号に挿入される。その信号にデータが流れている場合には、フレームの区切りに挿入される。
【0122】
受信処理部64’は、PON送受信部22’からの各レートのフレームの種別を判断し、レートαのユーザデータフレームの場合にはFIFO4(72)に蓄積する。受信処理部64’は、受信時刻やLLIDによって不適切なフレームをフィルタリングしてもよい。
【0123】
出力部68’は、受信処理部64’からユーザデータフレームを受け取る他に、FIFO4(72)からデータを取り出し、信号形式を変換した上でアップリンクIF部1の集線部14に出力する。FIFO4(72)からデータを取り出す開始タイミングは、MPCPフレーム処理部66から指示される。
【0124】
以下に、アクセス制御部11の処理において、第1の実施の形態と異なる点を説明する。本実施の形態においては、グラント長が時間を表すものとする。すなわち、1Gと10Gとのロジカルリンクに同じグラント長を与えた場合、10Gのロジカルリンクは1Gのロジカルリンクよりも10倍の情報を伝送することができる。
【0125】
ディスカバリゲートは、レート単位で送出される。したがって、ディスカバリ期間に受信するレジスタ要求の信号レートは予約されており、単一レートとなる。さらに、ロジカルリンク情報にレート種別を加え、レジスタ要求を受付けるときに、当該レートをレート種別に記録する。アップリンクのレートがβであり、同じレート(β)を有するロジカルリンクと、これより遅いレート(αとする)を有するロジカルリンクがあることが前提となる。
【0126】
次に割当てるべきPON IF kのロジカルリンク(Lとする)レート種別がαである場合、TSzの計算方法が次の通りとなる。すなわち、グラント長は時間単位なので、グラント長の計算は第1の実施の形態と同様である。レートαでUL時間に伝送されるデータ量をレートβで伝送するときに要する時間をULBとする。TEzにULBを加えた時刻をTEznとする。TEznをレーザオフの起点とし、グラント長とバーストオーバヘッド時間(Ton+SyncTime)とを差し引いた時刻をTSzとする。
【0127】
グラント情報をPON IF部2に送出する際に、レート種別と出力開始可能時刻TUSとを付加する。TUSは、新しい全体最終割当時刻からULBを引いたものとする。TUSはPON通信部21’の出力部68’に通知され、FIFO4(72)からデータを取り出すタイミングを指示する。FIFO4(72)への書き込みは低速なため、読み出し側でFIFOのアンダーランが生じないようにするためである。
【0128】
図20において、PON通信部の上り方向にレートごとに信号を分離したが、PON回線の上り信号は図19に示すように多重されているので1つのFIFOを経由するパスに統合することも可能である。この場合、受信処理部64’は、受信信号のレートに応じてFIFOに書き込む速度を加減する。
【0129】
α>βの場合、TSzの計算と全体最終割当時刻の更新は次の通りとなる。すなわち、グラント長は時間単位なので、グラント長の計算は第1の実施の形態と同様となる。レートαでML時間、UL時間に伝送されるデータ量をレートβで伝送するときに要する時間をそれそれMLB、ULBとする。全体最終割当時刻TEzからOVLとMLBとを引いた時刻をTSzとする。
【0130】
選択された開始時刻をTSとすると、TSにOVL、MLB、ULBを加えた時刻をTEとする。新しい全体最終割当時刻は、本割当がUL>0である場合はTEとする。UL=0である場合は最終割当時刻を更新しない。
【0131】
以上説明したように、本実施に形態における局側集線装置においては、上りレートがアップリンクのレートより低速の宅側装置が存在する場合でも、当該宅側装置からの上りバースト信号を早く送出させるようにアクセス制御を行ない、転送レートの遅い当該宅側装置からのユーザデータフレーム列をFIFOに蓄積しアップリンクへ送出するタイミングを調整するとともに、アップリンク速度にアップコンバートして送出し、アップリンクに隙間なくユーザデータフレームを配置するようにしたので、アップリンクにおける帯域をさらに有効に利用することが可能となった。
【0132】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0133】
1 アップリンクIF部、2 PON IF部、11 アクセス制御部、12 アップリンク送受信部、13 DEMUX、14 集線部、21 PON通信部、22 PON送受信部、31 4to1MUX、41 入力部、42,62,71,72 FIFO、43 MUX制御部、44 マルチプレクサ、45 出力部、51 CPU、52 ROM、53 RAM、54 共有メモリ、55 入出力部、56 時計タイマ、61 入力部、63 送信処理部、64 受信処理部、65 管理フレーム処理部、66 MPCPフレーム処理部、68 出力部、100 局側集線装置、101 宅側装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受動的光ネットワークを収容する局側集線装置であって、
前記複数の受動的光ネットワークのそれぞれに接続される複数の受信手段と、
前記複数の受信手段によって受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように前記複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するインタフェース手段とを含む、局側集線装置。
【請求項2】
前記インタフェース手段は、前記受信手段による受信タイミングとアップリンクへの送信タイミングとのずれが小さくなるように前記送信タイミングを制御する、請求項1記載の局側集線装置。
【請求項3】
前記受動的光ネットワークのすべての上り転送レートとアップリンクの上り転送レートとが同じであり、
前記インタフェース手段は、前記複数の受信手段が受信したユーザデータをバッファに蓄積せずに、スルーで前記アップリンクに送信する、請求項2記載の局側集線装置。
【請求項4】
前記インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、前記第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレーム期間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように前記受信タイミングを制御する、請求項3記載の局側集線装置。
【請求項5】
前記複数の受動的光ネットワークの中で前記アップリンクの上り転送レートよりも上り転送レートが遅い宅側装置を含む受動的光ネットワークがあり、
前記インタフェース手段は、前記アップリンクよりも上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータをアップコンバートして前記アップリンクに送信する際、前記上り転送レートが遅い宅側装置からのユーザデータの最後が、前記アップコンバートしてアップリンクに送信されるユーザデータの最後よりも早くなるように前記受信タイミングを制御する、請求項2記載の局側集線装置。
【請求項6】
前記インタフェース手段は、第1の受動的光ネットワークのバースト信号と、第2の受動的光ネットワークのバースト信号とをオーバラップさせ、オーバラップする時間が、前記第2の受動的光ネットワークのバースト長からユーザデータフレームをアップリンク速度で伝送するのに要する時間およびレーザオフ期間に相当する時間を除いた時間の少なくとも一部となるように前記受信タイミングを制御する、請求項5記載の局側集線装置。
【請求項7】
複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの受信タイミングを制御するアクセス制御装置であって、
前記複数の受動的光ネットワークから受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように前記複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御する手段と、
前記送信タイミングを含んだグラントを前記受動的光ネットワークに接続される宅側装置に送信指示する手段とを含む、アクセス制御装置。
【請求項8】
複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの受信タイミングの制御をコンピュータに実行させるためのコンピュータ・プログラムであって、
前記複数の受動的光ネットワークから受信されたユーザデータが、アップリンクにおいて稠密に並ぶように前記複数の受動的光ネットワークからのユーザデータの送信タイミングを制御するステップと、
前記送信タイミングを含んだグラントを前記受動的光ネットワークに接続される宅側装置に送信指示するステップとをコンピュータに実行させる、コンピュータ・プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−213238(P2012−213238A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174935(P2012−174935)
【出願日】平成24年8月7日(2012.8.7)
【分割の表示】特願2007−322212(P2007−322212)の分割
【原出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】