説明

局部洗浄ノズル

【課題】ビデ洗浄に適した柔らかい洗浄が可能な局部洗浄ノズルを提供する。
【解決手段】洗浄水に空気を混入させる空気混入部24と、洗浄水と空気とを混合しながら通過させる内部噴流構成部19と、混合室31と、噴出口を29備え、上流側より空気混入部24、内部噴流構成部19、混合室31、噴出口29の順で連接した構成とすることにより、空気混入部24で混入した空気は内部噴流構成部19を流れる内に一部が水と空気が分離するが、混合室31で再び水と空気が細かく混ざりあい、噴出口29からは細かく混ざりあった状態で噴出するため、柔らかい洗浄感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部に向けて洗浄水を噴出して局部洗浄を行う衛生洗浄装置に使用する局部洗浄ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、人体局部に向けて洗浄水を噴出して洗浄を行う衛生洗浄装置が普及している。衛生洗浄装置はトイレ室内という比較的に狭い空間で使用することもあり、掃除のしやすさやデザイン性からコンパクトであることが望まれている。
【0003】
一般的にヒータで加熱した湯で局部を洗浄するが、衛生洗浄装置にはこの洗浄水を貯めておく貯湯タンクが備えられている。衛生洗浄装置をコンパクトにするにはこの貯湯タンクを小さくする必要がある。しかしながら貯湯タンクが小さい場合、貯えられた湯量が少ないため、短時間で湯温が低下してしまい使用者に不快感を与えてしまう。これを解決するには洗浄水量を少なくする必要がある。
【0004】
また貯湯タンクではなく、瞬間的に水を温める熱交換機を備えた衛生洗浄装置もある。熱交換機のヒータの昇温能力にも限りがあるため、少ない水で良好な洗浄感を与える必要がある。
【0005】
さらに地球環境の保護が重視される昨今、省エネに対する意識も高まりつつあり、単に局部を洗浄するだけでなく、少ない水で洗浄を行うことが求められている。
【0006】
従来、この種の衛生洗浄便座の洗浄ノズルはノズル先端に流体素子を組み込むことにより、噴流を前後方向に揺動偏向させて洗浄範囲を拡大し、噴流が周期的に人体に当たることにより少ない水量で良好な洗浄感を得ている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
また、洗浄ノズルの噴流を偏向させる手段として、上記流体素子は用いず、ノズルの噴出口を機構的に偏向させる手段を有するものがある(例えば特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら前記従来構成では、洗浄ノズルの先端部に流体素子あるいはノズルの噴流出口を機構的に偏向させる手段を取り込む必要があり、流体素子あるいはノズルの噴出口を機構的に偏向させる手段は動作原理から所定の大きさが必要であるため、ノズル先端が形状的に大きくなる他、構成部品が高い精度が必要で信頼性を確保する上で十分な配慮が必要であり、またこれらのコストが高いという課題を有していた。
【0009】
前記課題を解決するため洗浄水に空気を混入することで、見かけの水量を増やす手法がある(例えば特許文献3参照)。空気混入の場合は、ノズル先端の形状を小さくでき、また機構部品の精度も要求されない。
【0010】
空気混入を行う場合、ノズル先端部で空気を混入させることは困難であり、局部洗浄ノズルの上流である一次側で空気を混入させることが一般的である。
【特許文献1】特公昭63−60182号公報
【特許文献2】特開2003−232068号公報
【特許文献3】特開平10−18391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、局部洗浄ノズルの一次側で空気を混入した場合、水と空気が混合された洗浄水が流路を通過する過程で、水と空気が分離してしまう。吐出孔から噴出する際には、水・空気・水・空気というように交互に流れ出し、断続流となる。
【0012】
断続的に洗浄水が局部に当たることで、人体に強い洗浄であるという感覚が生じるため、オシリ洗浄に効果的である。しかしながら、柔らかい洗浄感を求められるビデ洗浄には逆に強すぎて不向きであるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明の局部洗浄ノズルは、上流側から、洗浄水に空気を混入させる空気混入部と、洗浄水と空気とを混合しながら通過させる内部噴流構成部と、混合室と、噴出口を連接した構成のとしたものである。
【0014】
これにより水と空気が分離することなく、混ざりあった状態で噴出するため、柔らかい洗浄が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノズル先端部に混合室を設けることにより、水と空気が混ざりあった状態で噴出するため、柔らかい洗浄が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の発明は、洗浄水に空気を混入させる空気混入部と、洗浄水と空気とを混合しながら通過させる内部噴流構成部と、混合室と、噴出口を備え、上流側より空気混入部、内部噴流構成部、混合室、噴出口の順で連接した構成とすることにより、空気混入部で混入した空気は内部噴流構成部を流れる内に一部が水と空気が分離するが、混合室で再び水と空気が細かく混ざりあい、噴出口からは細かく混ざりあった状態で噴出するため、柔らかい洗浄感を得ることができる。
【0017】
第2の発明は、特に第1の発明の内部噴流構成部の断面積を、混合室の断面積よりも小さい構成とすることにより、内部噴流構成部より噴流として混合室内に流入するため、混合室内でより確実に空気と水を細かく混合すことができる。
【0018】
第3の発明は、特に第1または第2の発明のノズル本体の外面の少なくとも一部を薄肉金属で構成することにより、ノズル全体を樹脂で構成した場合より肉厚を薄くすることができるので、ノズル全体がコンパクトになるとともに、金属の場合汚れが付着し難くなるため清潔性が増す。
【0019】
第4の発明は、特に第1〜3のいずれか1つの発明の内部噴流構成部をノズル本体内部に略円筒状の部材を挿入することで構成することにより、ノズル全体を一体で構成するよりも、内部噴流構成部を高精度で形成することができるため、高品質のノズルを低コストで作ることが可能となる。
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施に形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における局部洗浄ノズルの概略の構成を示した模式図、図2にノズル本体の断面図を示し、図3は本発明の局部洗浄ノズルを搭載した温水洗浄便座の構成図である。
【0022】
図3に示すように、本発明の局部洗浄ノズルを搭載した温水洗浄便座は、水道配水管(図示せず)に接続された分岐水栓1よりストレーナ2、逆止弁3より定流量弁4に接続され、定流量弁4にて流量が一定流量以上流れないように制御されて、止水電磁弁5に至る。止水電磁弁5から、バキューム弁6に接続され、バキューム弁6は、バキューム弁6以後の水回路で負圧が発生した場合には、この負圧を解除する方向に弁が作動する。バキューム弁6以降の水回路には、流量検知手段7と熱交換器8と熱交換器8の出口に接続された水ポンプ9と水ポンプ9の出口に接続された流路切換弁10が接続され、流路切換弁10にはオシリノズル11、ビデノズル12、ノズル洗浄ポート13とが各々接続されている。
【0023】
ビデノズル12には本発明の混合室を備えた局部洗浄ノズルが装着され、空気と水を混入した状態で噴出するため、柔らかい洗浄感がビデ洗浄に適したノズルが構成される。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態の局部洗浄ノズルは、樹脂で形成した略円筒形状のノズルシリンダ14内に、ノズル本体15が摺動自在には収容してある。ノズルシリンダ14の一端部には洗浄水が流入するノズル流入口16が一体に設けてあり、他端部にはノズル本体15が出入りするノズルシリンダ口17が設けてある。
【0025】
図2に示すように、ノズル本体15は複数の部材で構成してあり、樹脂製のノズル後端部18と内部噴流構成部19がステンレス製のノズル管20を介して一体に形成してある。
【0026】
ノズル後端部18の外形は、ノズルシリンダ14の内径より僅かに小さい直径のノズルフランジ21とシリンダー口17より僅かに小さい直径のノズル基部22が一体に形成してあり、ノズル後端部18の内部には、ノズルフランジ21側から漸次径を小さくした絞り部23と、絞り部に連接した小径の空気混入部24と、空気混入部24から漸次径を拡大した圧力回復部25が連接した貫通穴が設けてあり、空気混入部24の側面部とノズル基部22の外面を貫通する空気吸入口26を設けることによりエジェクタ27が構成されている。
【0027】
内部噴流構成部19は略円筒形状であり、外径はノズル管20に挿入できる大きさであり、内径はノズル後端部18の圧力回復部25の拡大した径と略同径をしており、その全体をノズル管20内に挿入している。
【0028】
ノズル管20は肉厚0.3mmから0.5mm程度のステンレス製のパイプの先端を塞ぎ、先端近傍部の外周面上方の一部を平らに形成した平面部28に噴出口29を開口している。ノズル管20の根本部分はノズル後端部18のノズル基部22に挿入してあり、ノズル管20とノズル基部22間にはOリング30が設置してあり、ノズル管20とノズル基部22間の隙間から洗浄水が漏れない構成となっている。また、ノズル管20とノズル基部22の固定は、ノズル管の一部を外面より凹没させたカシメ部20aにより固定している。
【0029】
ノズル管20の平面部28を形成した内部には内部噴流構成部19が挿入されていない部分は空洞となっており、この部分が混合室31となっており、混合室31の断面積は内部噴流部19の内径の断面積より大きくなっている。
【0030】
ノズル本体15とノズルシリンダ14との間には、スプリング32が挿入され、ノズル本体15はノズルシリンダ14の内部に収納されるように弾性支持されている。またノズル後端部18のノズルフランジ部21にはパッキン33が設置してあり、ノズル本体15がノズルシリンダ14より突出した状態で、ノズルシリンダ14とノズルフランジ21とはシールされ、洗浄水が漏れない構成となっている。
【0031】
以上のように構成された局部洗浄ノズルについて以下その動作、作用を説明する。
【0032】
まず、局部洗浄ノズルのノズル流入口16に洗浄水が供給されると、ノズルシリンダ14内に洗浄水が流入して、ノズルフランジ21を押圧しスプリング32が圧縮されることにより、ノズル本体15はノズルシリンダ口17より押し出される。ノズルフランジ21がノズルシリンダ14の先端位置まで達すると、パッキン33がノズルシリンダ口17の外周部に当接することによりノズルシリンダ口17は密閉されて、洗浄水はノズル本体15の内部に流入しノズル本体15の先端にある噴出口29に至る。
【0033】
その間、局部洗浄ノズルに供給された洗浄水は、まず絞り部23と空気混入部24と圧力回復部25から構成されるエジェクタ27に供給される。洗浄水は絞り部23で加速され高速で空気混入部24を通過する際には圧力が大気圧より減圧されることにより、空気吸入口26より空気が吸入され、空気と水が混入された状態で圧力回復部25より内部噴流構成部19に流入する。内部噴流構成部19を通過する際は洗浄水と空気は大きな粒子に分離した状態で流れ混合室31へ流入する。
【0034】
断面積の小さい内部噴流構成部19より断面積の大きい混合室31に流入した洗浄水と空気はノズル管20の先端部に衝突し渦流が発生することにより、水と空気がより細かく混合し噴出口29より局部に向けて噴出される。内部噴流構成部16からの洗浄水の噴出速度が速いほどノズル管20の先端部への衝突力が大きくなり、空気と水が細かく混ざりあい、より柔らかい洗浄が実現する。
【0035】
以上のように、本実施の形態の局部洗浄ノズルは、エジェクタと内部噴流構成部と混合室を備えることにより、洗浄水と空気を細かく混ざりあった状態で噴出することにより、柔らかい洗浄感を得ることができ、ビデ洗浄に最適な局部洗浄ノズルを提供することができるものである。
【0036】
なお、本実施の形態においては、空気の混入方法としてエジェクタを利用した自然吸気方式を採用したが、これに限るものではなく、空気混入装置を備えて空気を混入してもよい。
【0037】
また、ノズル本体の駆動を水圧を利用した方式について説明したが、モータを使用した駆動方式でもよい。水圧を利用した場合安価であり、モータを利用した場合は安定した駆動性能を得ることができる。
【0038】
また、ノズル管の材料としてステンレスを採用したが、これ以外に銅、真鍮、アルミやそれらの合金等の耐蝕性を備えた金属材料の使用が考えられる。特に銅を含んだ金属材料の場合抗菌作用を備えており、ノズル管を清潔に保つために好適な材料となり、金属材料を使用する事により高温での除菌が可能である。また、金属材料以外でも各種の樹脂材料の使用が考えられる。また、ノズル管とノズル基部22の固定はカシメでおこなったが、接着等の他の方法でもよい。
【0039】
また、本実施の形態では、ノズル後端部と内部噴流構成部は、加工にしやすさから別部品として構成したが、これに限るものではなく、一体で構成する事も可能であり、また2部品以上に分離する事により同様な効果を得ることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明にかかる局部洗浄ノズルは水と空気を細かく混合し、柔らかい洗浄感を得ることができるものであるので、一般のシャワー装置の用途の適用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における局部洗浄ノズルの模式図
【図2】本発明の実施の形態1におけるノズル本体の断面図
【図3】本発明の実施の形態1にの局部線状ノズルを使用した温水洗浄便座の構成図
【符号の説明】
【0042】
15 ノズル本体
19 内部噴流構成部
24 空気混入部
29 噴出口
31 混合室


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水に空気を混入させる空気混入部と、洗浄水と空気とを混合しながら通過させる内部噴流構成部と、混合室と、噴出口を備え、上流側より空気混入部、内部噴流構成部、混合室、噴出口の順で連接した構成の局部洗浄ノズル。
【請求項2】
内部噴流構成部の断面積が、混合室の断面積よりも小さい構成の請求項1に記載の局部洗浄ノズル。
【請求項3】
ノズル本体の外面の少なくとも一部を薄肉金属で構成した請求項1または2に記載の局部洗浄ノズル。
【請求項4】
内部噴流構成部をノズル本体内部に略円筒状の部材を挿入することで構成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の局部洗浄ノズル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−336197(P2006−336197A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−158719(P2005−158719)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】